フェイタル・バレット 〜新説〜   作:アークコピル

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情報屋 〜アルゴ〜

《鼠のアルゴ》、そう呼ばれるオイラは今日もSBCグロッケンの片隅で情報屋として活動していた。

 

「まいドー」

 

今日も情報はよく売れる。その中でも特に最近売れているのは、アファシスを手に入れたニュービーの話だ。

オイラとしては、てっきりアファシスはキー坊のヤツが手に入れると思っていた。あの大会で最大の目玉とされていたレアアイテムが、先日行われた大型アップデートで実装されたアファシスである可能性があるという情報を仕入れ、高値で売り付けたのは自分だからだ。

 

――まっ、情報を生かすも殺すも情報を買った客次第。今回キー坊には運がなかったということダナ。そして逆に運が良かったのはあのニュービー……

 

あの大会の後、すぐさま噂のリアルラック最強ニュービーについて調査を開始した。といっても、大した調査をすることもなく、彼のプレイヤー名とアバターは判明した。そしてその情報を仕入れたオイラは思わず、持っていたタブレット端末を落としそうになった。

そのニュービーを、オイラは知っていた。ただ知っているだけではない。この数年は会っていないが、少なくとも初めてアイツと出会ったのは、キー坊と出会った時期とそう変わらない。

アイツ――ガー坊に関する情報は飛ぶように売れる。とはいえ、売るのはあくまでガー坊がGGOに来てからの情報だけだ。当然ながら、リアルの情報は売らない。これは誰の情報であってもだ。そして、たとえリアルでない過去の情報であったとしても、売りはしない。

 

「なのに、本当に人気者は大変ダナ」

 

アイツの情報を求める客のほとんどは興味本位なだけだ。噂のニュービーがどういったプレイヤーなのか、少し興味があるというだけの、いわゆる野次馬根性をもった者たち。彼らの場合、大した情報でなくとも満足していくものだ。

しかし、一部のプレイヤーは違う。アイツが将来凄腕のプレイヤーになると予想してということならばともかく、明らかにそれとは別の理由のプレイヤーたちもいる。

特にアイツにご執心なのはイツキとツェリスカだ。トッププレイヤーに名を連ねる二人に注目されているというのは、果たして彼にとって運がいいのか、悪いのか。イツキの方は全く彼のことを知らずに知りたがっているようだが、ツェリスカの方はどうもリアルのアイツを知っているかのような素振りを見せていたため、それとなく探りを入れてみたのだが、残念ながらかわされてしまった。

 

――それにしても、アイツもキー坊並みにモテてるんじゃナイカ……?

 

少なくともアイツには幼馴染みのクレハと、アファシスのシャロ、いやレイが常に傍に入ることは分かっている。そしてツェリスカもアイツに興味をもっている。先日アイツの情報を買いに来たレインも、今は行動を共にしている。そして先ほど訪れた金髪ショートの少女もまた、レインと同じように彼のことを知っており、彼を追いかけてこの世界に来たように見えた。そして他にももう一人……

 

そんなことを考えていたところに、件の彼が声をかけてきた。

 

「久しぶり。アルゴ」

 

 

 

 

久しぶりに会った彼女は、相変わらず猫の髭のようなペイントを頬にしていた。ちなみに彼女の髭の理由は知っている。なぜなら以前、自分も同じ目に遭ったことがあるからだ。

声をかけると、少し驚いたように目を見開いたあと、いつものイタズラっぽい笑みを浮かべた。

 

「ああ。久しぶりダナ、ガー坊。なかなか元気にやってるそうじゃナイカ」

 

「おかげさまで。アルゴも元気そうだね」

 

「アア。おかげさまでナ。アファシスの情報を買いに来たのカ?」

 

「さすがに耳が早いね。そう。三つ目のパーツの情報が欲しいんだ」

 

「そろそろ来るかと思って仕入れておいたゾ。お値段の方は……それなりだがナ」

 

アルゴはニヤリと笑って手でお金のハンドサインをする。

 

「分かってるよ。言っておくけど、値段はお友だち価格じゃなくていいから」

 

「おやおや。オネーサンとお友だちを止めるってのかい? 寂しいナア」

 

そう言ってアルゴはうそ泣きをする。

 

「公私混同は避ける主義なんで」

 

「ちぇー。ま、いいケドナ。ほら、お値段はこのくらいだ」

 

そうして俺は情報を聞き、クレジットを支払った。

 

「お前さんもオイラに売りたい情報があればドンドン売ってくれていいんだゼー。熱心なファンもいることだしナー」

 

「なんだよそれ……ところで……」

 

「言っておくが、あくまでもお前さんがGGOに来てからの情報だけだ。売るのも買うのも……ナ」

 

「……ありがとう」

 

「なあに、それが元々のオイラのポリシーさ。それに、あっちの世界の頃のことは、口止め料をたんまり貰っちまったからナ」

 

「もう使い道のないお金でしょう?」

 

「まあナ。けど、あの時には価値のあったものサ。後から使えなくなったとしても、あの取引は有効なのサ」

 

「そうですか……」

 

お互いに目をそらし、雲一つない青空を眺める。ほんのわずかに、懐かしさをのぞかせる表情をして……

やがてアルゴが呟く。

 

「アア。ヒースクリフ、茅場晶彦がSAO全ての情報屋に支払ったガー坊に関するあらゆる情報の口止め料は、今でも有効サ。少なくとも、オイラにとってはナ……」

 

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