フェイタル・バレット 〜新説〜   作:アークコピル

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再会 ~リユニオン~

ゆっくりと目を開けると、そこは無骨な鉛色の建造物が建ち並ぶ街だった。

GGOへのログインは無事に成功したようだ。

ただ、ある一点を除けばの話ではあるが……

 

「やっぱりな……」

 

GGOにおける最初のキャラクリにおいて、本来は自らの姿は選ぶことは出来ない。どうしても自分でキャラクターの外見を選びたければ、課金しなければならない。しかし、最近あるアップデートがあり、現実の自分と同じ姿であれば、無課金で設定できるというものだ。

もっとも、ほとんどの人はプライバシー的にその設定をすることはしない。主にこの機能を使うのは芸能人や動画投稿サイトに自分のプレイ動画を挙げる人々だけだ。

少年はそのどちらでもないが、この機能を使った。その理由は単純。幼なじみにすぐに見つけてもらうためだ。例え数年間会っていなかったとしても、現実の自分と同じ姿であれば、気づいてくれるのではないかという期待を込めてのことだ。プライバシーの問題に関しては、自分の顔をみてもすぐに気づくような人はいないだろう、という考えだった。

 

――けど、やっぱりやめておいた方がよかったかなぁ……

 

少年はすぐ近くにあった建物のガラスに写る自分の姿を見てため息をついた。

顔や背格好はまさに現実の自分と瓜二つであった。そう、瓜二つ。そんな人間が、いかにもゲームチックなレザーの服に胸にプレートというような格好となっている。

 

「これじゃあ、ただのコスプレじゃないか……」

 

もちろんコスプレイヤーの方々のコスプレ姿は好きだ。けれどもいざ自分がとなると、簡単には割りきれない。

 

「いや、割りきろう」

 

ほんのちょっと前だって似たようなものだったのだ。少しすればすぐになれるだろう。

そうやって意識して前向きになろうと両頬を叩いてみると、ふと横から声をかけられた。

 

「お待たせー! イベント大会の参加登録が混んでて、参っちゃった」

 

声のした方へ振りかえると、ピンク色のサイドテール少女が立っていた。

 

「ちゃんとログイン出来たみたいね、待った?」

 

「クレハ……」

 

おもわず、その名を呟く。

 

「え? そうだけど、どうしたの? 一応、聞くけどあんた……」

 

「ちょっと待った。こっちでリアルネームはマナー違反でしょ? 俺の名前はほら、この通り、"ガイア"だよ。メールで教えたでしょ?」

 

「あはは。そうね。ごめん。って私の名前、教えてたっけ?」

 

「昔からゲームの名前は決めてたじゃん。お互いに」

 

「ふふっ。それもそうね。」

 

「けど、よくわかったね。やっぱり現実と同じ姿にしてて正解だった?」

 

「まあ、それもそうだけど、やっぱり雰囲気ね。それで一発でわかったわ」

 

「雰囲気ってどういう?」

 

「うーん。人付き合いが面倒臭いとか言ってるわりにお人好しな感じかな? 突然呼び出したのに初めてのVRMMOに来てくれるレベルの」

 

「それって雰囲気か?」

 

「まあまあ、いいじゃない! とにかくありがとね。来てくれて。さぁ! 早速大会に行こう!」

 

こうして少年――ガイアとその幼なじみ――クレハはGGOでこれから開かれるイベント大会の会場へと足を運んだ。

 

 

 

 

イベント会場につくと、なにやらイケメンが女の子たちに囲まれていた。

 

「うわ! イツキさんだ! あの人も大会に出るのかな?」

 

クレハもそのイケメン――イツキに興味があるのか、驚いている。

 

「クレハも好きなの?」

 

おもわず訪ねてしまう。

 

「ち、違うわよ。まあ、確かにあの人はGGOのトッププレイヤーで格好いいし、ファンの子も結構いるみたいだけど、私は別にそんなんじゃないから! 私はああいうイケメンじゃなくて……そのぉ……」

 

なにやら急にもじつきだしたクレハを見ていると、その件のイツキ氏がこちらに近づいてきた。

 

「やあ、君たちも大会に参加するの? 君はたしかクレハ君だったよね。噂は聞いているよ。あちこちのスコードロンを渡り歩いて、そのクレバーな戦況分析で貢献しているって」

 

「えっ! あっはい! ありがとうございます!」

 

トッププレイヤーに突然誉められたことで緊張しているのか、若干ガチガチになるクレハ。

一方のイツキは、今度はガイアに目を向ける。

 

「そっちの君は、初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」

 

「私の幼なじみなんです! ゲームはめちゃくちゃ上手いんですけど、GGOは今日が初めてなんです!」

 

ガイアの代わりにクレハが答える。

 

「初日からゲームに参加するなんて、冒険好きだね。そういうの嫌いじゃないな」

 

爽やかイケメンなイツキとその後、お互いに挨拶を交わすとその場で別れた。

 

 

 

 

「さてと! 大会まではまだ少し時間があるし、あんたの装備を整えないとね! 安心して! この日のために、クレジットは貯めてきたわ!」

 

クレハは元気よくそう言うと、ポケットをポンッと叩いた。

 

「いや、それは悪いよ。GGOってリアルマネーも絡むでしょ? クレハとそういうのはしたくないよ」

 

「えー。いいじゃない。これくらい。お礼よ、お礼! あんたは私のために来てくれたんだから。これくらいは必要経費よ。必要経費!」

 

「お礼だったら今度リアルで会おうよ。それでそのときにご飯でも奢って」

 

「いや、結局お金出してるじゃない」

 

「気分的に違うんだよ」

 

「けど、だとしたら装備はどうするの? この大会、さっきのイツキさんみたいなトッププレイヤーも出場するから、なるべく装備だけでもいいものを揃えておいた方がいいわよ。そうなるとやっぱりそれなりの額にはなるし……」

 

確かに、せっかく参加するのだからできることならクレハの足手まといになるようなことはしたくない。どうしたものかと辺りを見回していると、あるものが目に入った。

 

「あれなんかいいんじゃない?」

 

「あー、あれは駄目よ。やめといた方がいいわ」

 

ガイアが見つけたのは、あるミニゲームであった。ルールは単純に一直線の道を次から次へと銃撃してくるNPCの攻撃をかわし、最終的にそのNPCにタッチできたら勝ち、というものであった。

 

「あれ、最後の方になるとNPCがデタラメな攻撃してくるのよ。前に一度ニュービーが挑戦して成功してとんでもないレベルの賞金をゲットしたらしいけど、その後も結局だれもクリアできなくて、その成功もビギナーズラックだろうって言われているわ。ちなみに参加額は倍になったわ。運営もまさかクリアされるとは思ってなかったんでしょうね」

 

「へえ。そうなんだ」

 

確かに、ミニゲームの上に表示されている額はとてつもない額になっている。

 

「50万か……そんだけあったら足りるよな」

 

そう言うとガイアはしれっとキャッシャーに左手を置く。チャリンッと手持ちから1000クレジットが引かれる。ちなみに初期金額は1000クレジットであったから、これでめでたくガイアは文無しだ。ただし、このゲームをクリアできなかったらの話であるが……

 

「ちょっ、ちょっと! あんた何やってんのよ!」

 

「まあまあ、見ててよ。なんか、いける気がするからさ」

 

慌てる幼なじみをよそに、ガイアはスタート位置につく。

カウントが始まり、やがて0になる。

そしてガイアは勢いよく地面を蹴り、駆け出した。

 

 

 

 

「なんでよ……」

 

「どうしたの? クレハ?」

 

「なんでクリアしちゃってるのよ!」

 

そう。クリアしたのだ。しちゃったのだ。あのゲームを。結果として無事に50万クレジットを手にし、装備を整えて現在イベントに参加中というわけである。

 

「何でって言われてもなぁ……」

 

確かに最初こそ弾道予測線でかわすだけで簡単なもので、徐々に予測線を見たのでは間に合わなくなっていったが、そうなれば予測線なんて見なければいい。むしろ見えてるぶん邪魔になるから目を閉じて殺気を感じそれでかわしてあとはタッチするだけだった。

 

「いや、おかしいから。前にクリアしたニュービーも『弾道予測線を予測』とか意味わかんないこと言ってたみたいだけど、あんたの場合目を閉じるって……」

 

「まあまあ、いいじゃん。過ぎたことは。それより大会に集中しようよ。あんまり大声出しすぎると、他のプレイヤーに気づかれるよ」

 

「うっ……わかったわよ。ただし、これが終わったらちゃんとコツを教えてよね!」

 

 

 

 

「ねえ、それにしてもあんた、本当にVRMMOは初めてなの?」

 

クレハのその一言に一瞬びくりと震える。

 

「な、なんだよ急に。電話でも言ったでしょ? 初めてだって」

 

そうだ。VRMMOは初めてなのだ。少なくともクレハには、そう思っていて欲しい。

 

「えー。じゃあ、やっぱりあんたがゲーム上手いからってことかぁ。ミニゲームのこともそうだし、さっき一通りの動きを練習したときも動きがよかったし」

 

「クレハの教え方がよかったんだよ」

 

「なっ! あんたねぇ!」

 

ガイアの言葉にクレハは頬をほんのりと赤く染める。

 

「そういうとこ、本当に変わってないわよね。それにこれ、ホントによかったの?」

 

クレハはそう言って自分の髪に手を伸ばす。そこには彼女のピンク色の髪に映える黄色の紅葉の髪飾りがあった。

先程の賞金で装備を整えるとき、クレハにも買おうと思っていたのだが、自分が先にクレハからの申し出を断っていたこともあり、断られたのだ。けれどもあれだけの大金を自分だけで使うのもなんとなく気が引けたために、装備を整えたあとの余ったクレジットでこの髪飾りを買ったのだ。

 

「いいんだよ。俺がプレゼントしたくってしたんだから。それに、返品は不可だからな。俺が着けるわけにもいかないし」

 

「まあ、それもそうね。じゃあ、ありがたく受け取っておくわ。この借りは今度クエストとかで返すわ!」

 

そんな話をしていると、ふと気配を感じた。

 

「待って! クレハ!」

 

「え? どうしたの?」

 

「そこにいる人、出てきてもらえますか?」

 

ガイアが通路に積まれたコンテナに向かって話しかけると、そこから二人の人物が出てきた。一人はメガネをかけた少し神経質そうな青年。そしてもう一人は……

 

「イツキさんか……不味いわね。隙をみて逃げるわよ」

 

クレハが小声で伝えてくる。確かにトッププレイヤーであるイツキとその仲間であれば、まともに戦って勝てる相手ではないであろう。しかし……

 

「うーん。もしかして逃げる相談をしてる?いい判断だけど、背中を見せたら撃っちゃうよ」

 

「どうせ、前を向いてても撃つんでしょう?」

 

「正解、と言いたいところだけど、結果がわかっている勝負なんてつまらないからね。クレハ君はともかく、ニュービーの君じゃあ、一瞬だろうしね。そこで提案があるんだ」

 

「提案?」

 

「そう。この先に少し面倒臭そうなエネミーがいてね。もしかしたらトラップなんかもあるかもしれない。だから君たちに戦って欲しいんだ。負ければそこまで。勝てば見逃してあげるよ」

 

このイケメン、爽やかな笑顔でなかなかにエグいことを仰る。

 

「どうする?」

 

クレハが問いかけてくる。

 

「たぶん嘘は吐いていないと思う。どのみち戦いが避けられないのなら、せめて勝機のある方にしよう」

 

「ええ、そうね。私も賛成よ」

 

そしてガイアたちは、意を決してエネミーがいる部屋へと入っていった。

 

 

 

 

「いやー、一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなってよかったわねー」

 

あのあと、無事にエネミーを倒したガイアとクレハはその先の分かれ道でイツキたちと別れた。

 

「今回の目的はレアアイテム狙いなんだから、なるべく戦闘は避けるわよ」

 

「そうだね。さっきの戦いで弾も結構使っちゃったし」

 

「やっぱり武器は多少良いものにしても、ステータスが低いと威力も落ちるからねー。まあ、これからレベリングしてステータスを上げれば威力も上がるし、武器自体ももっと強いのが持てるようになるから、それまでは私がカバーしてあげるわ」

 

「うん。ありがとう」

 

そんな言葉を交わしながら進んでいくとある部屋へと到着した。

 

「ほら、見て!」

 

そう言ってクレハは可愛らしいステップで階段を上っていく。

 

「大抵こういう装置を操作すると、何かしら先に進めるものなのよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

なにやらクレハが装置をいじり始める。

すると心なしか辺りが明るくなってきた気がする。下を見てみると、本当に明るくなっていた。

 

「ちょっ、クレハ!?」

 

「え? ってえぇ!? 落ち着いて! ワープゲートよ! すぐに追いかけるから、動かないで!」

 

そのクレハの言葉を最後に、ガイアは光に包まれた。

 

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