フェイタル・バレット 〜新説〜   作:アークコピル

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黒の剣士 ~キリト~

自らを包んでいた光が消えると、そこにはクレハはいなくなっていた。否、正確にはガイアの方がいなくなったというべきであろう。先ほどまでいた部屋は学校の教室ほどの広さであったが、今はもっと広い空間が広がっている、ちょっとした広間のような場所であった。辺りにとくに目立ったものはなく、強いて言うならば、目の前にカプセルのようなものがあるくらいであろうか。

 

――もしかしたらクレハが喜ぶものが入っているかもしれない

 

ガイアはゆっくりとカプセルに近づくと、それにそっと触れた。

次の瞬間、ポーンという機械音と共に、音声が流れ始めた。

 

《プレイヤー認証……マスター登録、開始……》

 

《ユーザー名"ガイア"……登録完了》

 

するとカプセルが動きだし、驚いたガイアは思わず後ずさる。

やがて2メートルほど高く上がると、カプセルの蓋がゆっくりと開き、中から少し癖毛のある金髪のショートヘアーの美しい少女が出てきた。少女は浮かぶようにカプセルから出てくると突然落下した。

 

「危ない!」

 

ガイアはなんとか少女を受け止めるが、それと同時に右後方から銃撃音がし、後ろから着弾音がした。

振り向くとそこには、遠方からこちらを狙撃したのであろう亜麻色の髪の長い少女と紫色に輝く光剣をもった黒ずくめの少年がいた。そして今まさに、少年が光剣を構え、こちらへと突撃してきたところだった。

 

 

 

 

『ごめん。キリト君!』

 

「いや、問題ない」

 

作戦では、アスナの狙撃一撃で仕留めるか、あるいはそれでHPが残るようであっても、その残りを俺が光剣で一気に片をつけるつもりだった。

 

――けど、まさかアスナの狙撃をかわすとはな……

 

まだGGOにコンバートして日は浅いが、それでもアスナの狙撃の腕はどんどん成長している。それに対し、見たところ相手はニュービー。そんな彼がアスナの狙撃をかわせるとは驚きだった。

 

――ただのビギナーズラックか、それとも……

 

どのみち手は抜かない。ニュービー相手に心苦しいが、今回だけは例え相手がニュービーだろうとトッププレイヤーであろうと引き下がるつもりはない。

 

「はぁ!」

 

俺は全力で目の前のニュービーに対し、斬りかかった。この速さで斬りかかれば、例えかわすことはできても、反撃することはできないであろう。

しかし、そのニュービーは俺の予想に反し、かわすでも、反撃するのでもなく、両手を広げて後ろの少女をかばった。

 

「マス……ター……?」

 

そんな彼を見て、少女が呟いた。

目の前の彼の行動と少女の言葉に、彼を切り裂くはずだった剣の威力が一瞬落ちる。その結果、光剣は彼を斜めに斬り裂くものの、HPを全損させるまではいかず、わずかに残ってしまう。

 

「くっそぉぉ!」

 

彼はそう叫ぶと腰から筒状の物体を取り出した。

 

――まさか!?

 

彼の取り出したそれは、紛れもない光剣だった。

彼は光剣を起動させると、下からその赤い光の剣を凪払った。

俺はなんとか後ろに飛び退き、それをかわす。しかし彼はすかさず立ち上がり、追撃してくる。俺も応戦し、お互いのフォトンの光が交差し、火花を散らす。

一撃一撃はステータスの差のせいかそこまで重くはない。しかし、彼の気迫はとてつもないものだった。しかし、経験したことがないわけではない。この、本気の命のやり取りのような戦い。これは……

 

「「……ッ!」」

 

お互いの光剣が手から離れ、宙を舞う。しかしそれが床に落ちる前に、俺はハンドガンを、そして彼はサバイバルナイフを取り出す。互いに構え、再び戦闘を開始しようとしたその時、少女の声が響いた。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「そっちこそ、銃を下ろして。あと、そっちのあなたも。この子の仲間なら、ナイフを捨てて」

 

振り返るとピンクのサイドテールの少女がこちらに銃を向けており、さらにその後ろにはアスナがその少女の背中に銃を突きつけている。

それにしても、すかさず背後をとるどころか、そのまま人質にしてしまうとは、さすがです。アスナさん。けれども……

 

「待て、アスナ。銃を下ろしてくれ。それには二人も。俺はもう、戦うつもりはない。残念だけど、間に合わなかったからな」

 

ハンドガンをホルスターにしまいながら二人の様子をうかがうと、少女はいまだ銃を構えていたが、すでに少年の方はナイフを持つ手を下ろしていた。そして先程までの気迫は嘘のように消えていた。

 

「わかった。クレハ、大丈夫。下ろしていいよ」

 

少年が少女に向かって言う。

 

「うぅ……わかったわよ。けど、間に合わなかったって、どういうこと?」

 

クレハと呼ばれた少女が、訳がわからないという風に訊いてくる。

 

「あぁ、それはすでにこのアファシスが彼をマスターとして認めてしまったってことさ」

 

俺は目の前の少年を見ながらそう言った。

そして一方の彼は、後ろのアファシスを振り返り、不思議そうに首を傾けた。

 

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