フェイタル・バレット 〜新説〜   作:アークコピル

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メイド士官 〜レイン〜

どうしてこんなことになってしまったんだろう……

今、俺は正座をさせられている。ここは残影の荒野にある管理施設跡、そのボス部屋前だ。

目の前にはピンクのサイドテール少女、クレハそして士官服にメイドカチューシャをつけた赤髪のロングヘアーの少女が向かい合って立っている。二人は笑顔だが、どことなく恐ろしい雰囲気が漂っている。

ちなみにシャロは俺の横でおろおろしている。

このなんとも言えない状況になった発端は、凡そ数時間前に遡る。

 

 

 

 

「マスター! 大事なお話があります!」

 

ホームでクレハと談笑していると、シャロが元気よくそう言ってきた。

 

「どうしたのレイちゃん?」

 

「わたしは本来ならば貧弱なマスターをあらゆる面から徹底的にサポートできる超絶最強のアファシスType-Xのはずなのです! なのに! どういうわけか今のわたしは多くの機能を失っています! これでは貧弱なマスターを全然サポートできません! 一大事です!」

 

シャロは興奮した様子で一気に捲し立てる。

 

「ちょっと貧弱って言いすぎじゃない?」

 

「仕方ありません! 実際マスターは低レベルの低ステータスの貧弱プレイヤーなのですから!」

 

シャロは俺の言葉を意に介することなく、むしろさらに追い討ちをかけてくる。

 

――それにしても……

 

GGOのAIはみんなドSなのだろうか? この前、色々な銃の感覚を知りたいと思って、チュートリアルを受けてみたところ、そこのNPC教官がやたらとスパルタだった。ひたすら「クソ虫」と罵られ続け、ようやく誉めてくれたのは光剣を使ったときだった。

 

「まあ、こいつのレベリングにはわたしが付き合うからすぐにレベルは上がるわよ。それで、その機能を取り戻すことはできるの?」

 

「はい! それをお願いしたいのです! わたしの足りないパーツは全部で三つです! それらはSBCフリューゲルが地球に来たときの衝撃で散らばってしまいました! ちなみに場所の検討は最初の一つ以外一切つきません!」

 

「そうか、それじゃあその最初の一つをまず取りに行くか。どこにあるんだ?」

 

「残影の荒野の管理施設跡なのです!」

 

 

 

 

今までにもクレハやキリトたちがレベリングに付き合ってくれていたおかげで、管理施設跡の敵にはそこまで苦戦することはなかった。まず俺がキリトから教わった技術で敵エネミーからの銃弾を光剣で弾き、その隙に背後からクレハがロケットランチャーをうちこむ。時には二人で一緒にサブマシンガンで弾をばらまきもした。シャロには主に回復やバフといった支援を任せた。

 

「今のところ順調ね」

 

「はい! さすがお二人です! お見事な連携プレイでした!」

 

「そうか? まあ、確かにお互いなんとなく動きがわかるからな」

 

「そうよね。やっぱり幼馴染みだからかな?」

 

そんな話をしながらロックを解除したボス部屋の前に来たときだった。

 

「ガイくん?」

 

振り向くとそこには、士官服に赤いロングヘアー、頭にメイドカチューシャをつけた少女――レインが立っていた。

 

 

 

 

「レイン……?」

 

少女に対し、ガイアは呟く。その顔は懐かしむような喜びの表情と、同時にひどく怯えきったような、そんな複雑な表情をしているように見えた。

 

「やっぱりガイくんだー! 会いたかったよー!」

 

レインと呼ばれた少女は、ガイアの言葉に反応すると、あろうことかガイアに抱きついた。ガイアの方は固まっている。

 

「ちょっ! 何やってるのよ!」

 

わたしが叫ぶと、レインは「へ?」と一瞬固まり、ガイアの顔を見る。

 

「や、やあレイン……久しぶりだね……」

 

困ったような笑顔を浮かべるガイアに、レインは顔を真っ赤にすると、飛び退くように離れた。

 

「ご、ごめんね! ひ、久しぶりに会えたから嬉しくって、つい!」

 

レインは慌てて両手と首を振る。

 

「本当にごめんね! 彼女さんの前で!」

 

「ち、違うわよ! こいつとわたしは、そんなんじゃないわよ!」

 

「え? 違うの? よかったぁ……あぁ! ち、違うくてね! そうじゃなくて! ええっと……!」

 

「二人とも落ち着いて!」

 

わたしとレインがあわあわしていると、ガイアが両手で制してきた。

 

「レイン、ちょっといい? クレハ、シャロ、少しだけここで待っててくれるかな?」

 

私たちが了承すると、ガイアはレインを連れて、先程敵を倒したばかりの隣の部屋へと行った。その姿を見ていると、なんだかモヤモヤするような気がしたが、気のせいだと思うことにした。

 

しばらくすると、二人は戻ってきた。

 

「あー……紹介するよクレハ、こっちはレイン。むかし、ネトゲで知り合ったんだ。レイン、こっちはクレハ。俺の幼馴染みだ。で、こっちはアファシスのシャロ。レイって呼んであげてくれ」

 

「シャロなのにレイ?」

 

「マスターにつけてもらった名前はマスターだけのものなのです! なので皆にはレイと呼んでもらっています!」

 

「へえ、そうなんだ。よろしくね、レイちゃん!」

 

「はい! よろしくなのです!」

 

「それと、クレハちゃんもよろしくね!」

 

「ええ。よろしく。レインさん」

 

「レインでいいよ!」

 

「わかったわ。レイン。あのところで二人は……その……ほんとにただの友達?」

 

「え?」

 

「いや、ずいぶんと仲良さそうに見えたから……」

 

「いや別に彼と私はそういうのじゃないよ! 昔ちょっと一緒に住んでたってだけで……」

 

「一緒に住んでた!? 」

 

「げ、ゲームの中でだよ! リアルじゃないから!」

 

「そ、そうよね。ゲームよね……ゲームか……」

 

VRMMOが盛んになった今でも、そうでないゲームもたくさんある。そういったゲームで出会ったというのであればわかる。けれど、本当にそうなのだろうか……

 

「なあ、もうそろそろ自己紹介は終わりでいいんじゃないか?」

 

ガイアのその言葉に隣を見ると、何故かガイアは正座していた。

 

「あんたなんで正座してるの……」

 

「なんとなく……いたたまれなくて……かな?」

 

「もういいから立ちなさいよ。あんまり長居して他のプレイヤーと鉢合わせしてもいけないし、ところでレイン……ごめん。やっぱり馴れるまでレインさんでいいかな?」

 

キリトさんやアスナさんもそうだが、どうしても知り合ったばかりの人間には、さん付けしてしまう。

 

「うふふ。いいよ!」

 

「そう。ありがとう。ところでレインさんはレベルの方は……」

 

「それは大丈夫! 私、コンバートしてるから!」

 

「そう、なら一緒に行く?」

 

「いいの!? 行く行く!」

 

ガイアの方を見ると、「俺も構わないよ」と言って首を縦に振る。レイちゃんも「仲間が増えるのはいいことなのです! これもマスターの人望ですね!」と喜んでいた。

こうして、わたしたち4人はボス部屋へと足を踏み入れたのだった。

 

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