「はぁ~」
響が溜息をつく。
現在、歌の練習の授業でまた歌えなかった響が、先生に休んでいろと言われ席についていた。
皆が歌う中、響は窓の外をぼんやりと見る。
思い出すのは昨日の事だ。
『響くんの家族?』
『はい、私が無事なのを知らせて貰えれば』
『…まだ、知らせてなかったのか』
『ショッカーの襲撃や師匠との特訓で……それに下手に知らせればショッカーに嗅ぎつけられて…』
『良くて人質。最悪命がないか』
『…はい』
『一応、我々で保護する手もあるが…』
『でも、それってほぼ軟禁状態になるんでしょ。少なくともショッカーを倒すまで…』
『そうなるな』
『お母さんはともかくお祖母ちゃんの健康が心配で。それに、それをやるとショッカーに気付かれる可能性が』
『…なら、秘密裏に守らせるしかないか。調査部から腕利きを出そう。それから、君が無事な事は俺が伝えておく』
『ありがとうございます』
ショッカーに嗅ぎつけられないよう、弦十郎が手を打つと言ってくれて安心する響だが、心の何処かで不安にも思う。
「……花…ん」
緒川の調査でショッカーの勢力は響の想像以上だ。
それに怪人達の能力も未知数だ。
「た…花さん!」
ショッカーの技術が高いという事は、怪人達の能力も…
「立花さん!!」
「ひゃい!?」
大きな声に反応する響。
見ると、担任の先生が響を見下ろしていた。
「立花さん!見学しろとは言いましたが外を見てて良いとは一言も言ってませんよ!」
「は、はい!」
外を見ている響に気付いた担任が声を掛け続けていたが一向に返事も反応もしない事で先生が怒った。
そのまま先生の説教は授業が終わるまで続き、反省文を書かされる事になった。
「…今、戻った」
「あらお帰りって、ほっぺ如何したの?」
特異災害対策機動部二課本部。
用事があると言って出かけた弦十郎が帰ってきたが了子が弦十郎の頬を赤くしてる事に気付いた。
それに、髪も出かけた時よりもボサボサしていた。
「響くんの家に行って事情を話そうとしたら誘拐犯と勘違いされてな…警察も呼ばれて大変だった」
弦十郎は昨日、響に言ったように響が無事な事を伝えに響の家に向かった。
家に着いたまでは良かったが、響の母親と祖母との会話で響を誘拐した犯人と思われた。
娘を返してくれと泣き叫ぶ母親に警察に通報する祖母。
なんとか説得しようとしたら逆上した母親のビンタが弦十郎を襲う。
通報により近くに居た警官が到着し錯乱する母親と祖母と警官に身分を明かす。
警察は直ぐに納得したが錯乱する母親と祖母の説得に骨が折れた。
「最終的にはなんとか説得できた。此方の詳しい事情は言えんかったが毎日一回は響くんが電話すると言って納得させた」
「…それ、響ちゃん知ってるの?」
「だから、響くんが戻ってきたらまた説得だ」
了子が呆れたような顔をして仕事に戻る。
弦十郎は疲れたとばかりにソファーに座る。
子供を心配する親の姿をまじまじと見せられたのだ。
「…つくづく…俺達とは違うな…」
弦十郎は一人呟く。
「…やっと終わった」
響が一人、日の暮れかけた教室で反省文を書き終えた。
うっかり、力が入って何本の鉛筆が無駄になったか、
「あ、終わった?ビッキー」
「え?」
声に反応すると、扉から安藤創世を始めとした昨日話した三人がいた。
さらに後ろには、
「響…」
「…未来」
昨日、絶交した小日向未来も居た。
一瞬、目が合うが響は直ぐに視線を外す。
その姿に、未来が胸が締め付けられる思いがした。
「それで何か用?安藤さん」
「
その時、響の携帯の着信が鳴る。
響は、ポケットから携帯を取り出し画面を見た後、電源を切る。
特異災害対策機動部特注でとにかく頑丈な携帯で響が使っても壊れない仕様だった。
「ごめん、用事ができた」
それだけ言って響は荷物を片付け、教室から出ようと席を立つ。
「!待ちなさいよ!」
その態度に板場弓美が待ったをかけ響の腕を握る。
「放してくれない?」
「あんたと未来がどんな関係でどれくらいのつき合いかなんて知らないわ!でも、友達なんでしょ!?親友なんでしょ!?」
「放して…」
「未来…昨日泣きながら電話してきたんだよ!」
「弓美!?」
「板場さん!?」
「あんた達だって聞いたでしょ!未来の泣き声!あんたと未来に何があったかわ知らない。でも、ただの喧嘩ならもう仲直りしなさいよ!」
「放してぇ!!」
響の大声にビクッと硬直し手が離れる。
「ただの喧嘩?それだったらどれだけ良かったか。…もう私に関わらないでぇ!」
それだけ言って響は教室をでる。
その後ろ姿を見守る事しか出来ない四人。
「…何なのよあいつ!」
弓美が悔しそうに地団駄を踏む。
「弓美…」
「何であいつが泣きそうな顔するのよ!普通逆でしょ!」
響の泣きそうな顔に釈然としない弓美達だった。
「これで、未来にも完全に嫌われたかな?」
ちょっと寂しいけど少しは安心出来る
私が近くに居なければショッカーも未来の存在に気付かないかも知れない
あの後、私は反省文を職員室の担任に渡して今は地下鉄の駅の入り口に居る
本部からノイズの迎撃要請が出たんだ
駅の階段を見ればノイズが今にも襲い掛かりそうだ
「今はあんた達に感謝したあげる」
私は心にもない事を言ってシンフォギアに変身する
ノイズに感謝?あいつ等の所為で私はショッカーに狙われたんだ
あの時、丁度いいタイミングで話を切り上げたんだ
帰る途中、板場弓美に止められたけど
「でも流れ星か…」
私だって未来と…皆と見たかった
皆と楽しみたかった
でも、私にそんな余裕はない
ノイズだけならまだしも
ショッカーは他の人を犠牲にしてでも私を捕らえようとする
もし、捕らえられたら今度こそ脳改造される
私が私でなくなるのも怖いけど、ショッカーの尖兵にされれば師匠も了子さんも翼さんも…そして未来も…
そんなのは絶対嫌だ!
『響くん、一際強力なノイズの反応がある!翼を向かわせたから無茶はするな!』
「分かりました。私は私の出来ることをします」
私の拳や蹴りが次々とノイズを砕いていく。
師匠との特訓で普通のノイズには苦戦しない程だ。
途中、葡萄みたいなノイズが自分の体の一部を切り離して爆発させてきたが問題ない。
逃げたノイズを追わな「イーッ!」い!?
戦闘員!?
もうショッカーが嗅ぎつけたの!?
何時もは、ノイズが全滅した後に来るくせに!
「私の邪魔をするな!」
もう戦闘員との戦いにも慣れた
私の拳が戦闘員を次々となぎ倒す
此奴らを倒して残りのノイズを……
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ…少しは闘るようになったようだな!」
!?この不気味な鳴き声
咄嗟に声のした方を見ると、其処には緑色の体に棘のあり口元が赤くショッカーのベルトを着けサボテンの様な棍棒を持った怪人
「…サボテグロン」
「教官と言わんか。まぁ、貴様は出来損ないだったがな」
嘗て、私の教官役をしてた怪人、魔人の異名を持つサボテグロンが居る
更には、
「クワックワックワッ」
「ウヒュー!」
「ウククククク!」
右手が蛇で蛇の様な見た目をした怪人、コンドルを基にしたにはクチバシの代わりに鋭い牙を生やし腕から腰に掛けモモンガのような皮膜を持つ怪人、黒と赤の爬虫類のような姿をした怪人
「コブラ男にゲバコンドル、ヤモゲラス。そして多数の戦闘員…一人に対して大袈裟じゃない?…!?」
何時の間にか師匠たちと連絡が取れなくなってる
妨害電波?
「ヒヒヒヒヒヒ、それだけショッカーがお前に注目しているという事だ。かかれぇ!!」
サボテグロンの声を合図に怪人や戦闘員が私に一気に群がる。
私は咄嗟にジャンプして戦闘員の一人を蹴り上げる。
「隙あり!」
コブラ男が右手の蛇を伸ばし私に巻き付けようとするが逆にその蛇を掴んで引っ張る
引っ張られたコブラ男に顔面に一撃を入れてその反動を利用し少し離れた場所に着地する
一撃を受けたコブラ男もあっさりと立ち上がる
致命傷には到底及ばなかったようだ
でも、前より十分…
「甘いわ!」
次の瞬間、わき腹に重い一撃を受ける
気付いた時には私は壁に激突した
「グフッ!」
口の中を切ったのか血が飛び出る
見ると私の立っていた場所にサボテグロンがサボテン棍棒を振り切ってる姿だった
「戦い方は良くなったがそれだけだ。ノイズや戦闘員には有効だろうがショッカー怪人の相手ではない!」
「ウヒェー!」
!?ゲバコンドルがいきなり目の前に!?
近くに寄る素振りすら見えなかったのに!
ゲバコンドルの猛攻に私は防戦一方だった
「ゲバコンドルは初期の怪人達の長所を集めた怪人として造られた実験体だ。蜘蛛男達とは比べ物にならんだろ!」
このままじゃ不味い!
なんとか脱出したいが周囲は戦闘員と三人の怪人が邪魔をする
多勢に無勢だ
「ゲバコンドル!そのまま出来損ないを殺せ!その後、適当に若い女を襲っていいぞ!」
その言葉に反応したのかゲバコンドルの攻撃が激しくなるが私の頭の中に疑問が生じる
「若い…女を…襲うって…?」
「特別に教えてやろう。ゲバコンドルのエネルギー源は若い女の血だ」
!
つまり私を始末した後、若い女性が狙われる
最悪、未来やあの三人が…ダメ!
私は攻撃するゲバコンドルの腕を掴み、態勢を変えて一本背負いのように投げる
投げられたゲバコンドルは、ヤモゲラスと何人かの戦闘員を巻き込む
「ほう~、やるではないか。狩りはこうでなくては「イーッ!」なって如何した?」
1人の戦闘員が慌ててサボテグロンに駆け寄る
戦闘員が慌てて後ろの方を指さし「ノイズ」と言った
見ると、葡萄のような房を持ったノイズが房を切り離し地下鉄駅の天井を爆破した
「なにぃ!?」
「イーッ!?」
その爆発は凄まじく、崩れた天井や倒れる柱の下敷きになる戦闘員に爆発の余波を受ける怪人達
包囲網が崩れた!
私は急ぎ、ノイズが天井に開けた穴に近づく
爆破したノイズが駆け上がって外に出るのが見えた
後ろを見れば、怪人や戦闘員も爆発の煙や瓦礫で私への対応が遅れて居る
狭い場所は不利だ
私もノイズを追うように穴から出る
「逃げたぞぉ!追えぇぇぇぇぇ!!」
サボテグロンの声を尻目に私は地下鉄から脱出した
先に、ノイズを倒さないとと考えた直後にノイズに向かって巨大な斬撃が襲う
ノイズはあっさり倒され誰かが空から降りてきた。…翼さんだ
着地した翼さんは私と目を合わせてもくれない
たぶん嫌われている。でも…でも…例え受け入れられなくても、
「私だって守りたいんです!家族を!世界を!…親友を。…だから!」
受け入れてもらえなくてもいい
それでも、一緒に戦ってほしい
「だから?っでどうするんだよ!」
!
翼さんとは別の声がした
まさか、ショッカーが追い付いてきた!?
声のした方を見る
月明かりが照らす中、白い鎧に両肩から紫上の突起物、顔をバイザーで隠してるけど声で女性だと分かる
「ネフシュタンの…鎧…」
翼さんが呟く
ネフ…何だって?
「ネフシュタンの鎧だと!?」
「あらあら、やっと響ちゃんとの通信が回復したと思ったら」
「現場に急行だ!」
特異災害対策機動部二課にネフシュタンの鎧の情報が入るや弦十郎と了子は急いで現場に行く。
行方知れずとなっていたネフシュタンの鎧の回収の為に。
「この鎧の出自知ってんだ?」
「二年前、私の不注意で奪われた完全聖遺物…忘れるものか!あの時の失われた命を忘れるものか!」
二年前…ただの偶然だよね…
翼さんが叫ぶように剣を白い鎧の娘に向ける
このままでは翼さんと白い鎧の娘は戦う
その前に、
「待ってぇ!」
「「何だ!」」
私の声に翼さんも反応するけど私は白い鎧の娘の見続ける
「一つ聞かせて、あなたはショッカーなの?」
彼女がショッカーの一員なのか?
もし、ショッカーなら私と同じように改造人間にされたのか?
どうしても知りたかった
「ショッカーだ!?あんな連中と一緒にするな!」
その答えは予想だにしていないものだった
彼女は本気でショッカーに対する怒りを感じているようだ
ショッカーの事を知っている!?
「なら、私達が戦う事なんてない!話し合えば…」
「「
二人の声が重なり会い二人が互いの顔を見あう
「どうやらあなたと気が合いそうね」
「だったら仲良くじゃれ「ヒヒヒヒヒヒヒッ」!」
白い鎧の娘がしゃべり終える前に不気味な声が…
!忘れてた!
「見たぞ聞いたぞ!完全聖遺物のネフシュタンの鎧、我らショッカーが貰い受ける!!」
地面の一部が爆発し怪人が出てきた
「サボテグロン!」
「怪人だと!?」
「こいつが怪人?」
「イーーーーッ!」「イーッ!」
後ろの私が脱出した穴から戦闘員が次々と這い出して来る。
それに、
「逃げようとしても無駄だ」
コブラ男にゲバコンドル、ヤモゲラス
地下鉄の崩落を受けても無事なんて!
「ノイズだけでなく怪人まで来ていたとはな」
剣を構える翼さん
それに、ショッカーはあの白い鎧の娘も狙っている
ショッカーの味方じゃないなら共闘出来るかな?
「おい、そこのサボテン野郎!」
「ん?」
ネフシュタンの鎧を付けた少女がサボテグロンに話しかける。
サボテグロンもそれに反応する。
「お前達がショッカーか?」
「ほう、小娘がショッカーの名を知ってるとはな。その通り、俺は偉大なるショッカー怪人軍団の一人。サボテグロンだ!」
「お前達、ショッカーが内戦やテロを操ってるって本当か?」
「よく知ってるではないか。愚かな人間どもを操るなど簡単だ」
少女の質問にサボテグロンは答えていく。
この時、サボテグロンは機嫌が良かった。立花響や風鳴翼だけでなくショッカーが喉から手が出る程欲していた完全聖遺物。それが目前にあるのだ。
後は、目の前の少女を殺すなり拉致するなりすれば完全聖遺物が手に入る。
しかし、サボテグロンは気付かない。
質問に答えるたびに少女の怒気が上がってる事を。
「最後の質問だ、南米のバルベルデもお前たちの差し金か」
「…ヒヒヒヒヒヒ、死ぬ前に教えてやろう。バルベルデはショッカーの数ある実験場の一つに過ぎん。怪人や兵器の性能を試すのには良い場所だ」
その答えに少女の怒りは頂点となる。
「…そうか、ならお前らはアタシの敵だ!!」
その少女は何より戦争の火種を作る者を憎んでいる。
クリスの生い立ち上、ショッカーの存在を許さないと思う。
シンフォギア装者のショッカーへのスタンス
・立花響:自分と同じような犠牲者が出ないようショッカーを倒す。
・風鳴翼:防人の使命を果たす。
・雪音クリス:内戦やテロを操るなんて許さね!融合症例の捕獲?そんなの後だ!
「ショッカーの事、話過ぎたかしら…」