ピー!ピー!
「はい、退いてね! 近すぎると動かせないよ!!」
混乱する交差点にて一台のパトカーがサイレンを鳴らし乗っている警官も支給されているホイッスルを鳴らして近づく。混乱状態の道路だが一般人の車は渋々パトカーの前を開け進み降りると二人の警官が出てくる。
目的は道を塞ぐ大型トラックを撤去及び下調べだ。
「一体どこの馬鹿だ? こんな所にトラックを放置するのは!?」
「おい、このトラック先日に運送業の会社から盗難届が出た奴だぞ」
「盗難車か、ますます何でこんな所に放置してるんだ?」
その大型トラックは盗難車ある事を知った警官が軽く調べる。
運転席には誰も居らず鍵も刺したままだ。これならレッカー車を呼ばなくても動かせるなと考えた警官だが、相棒であるもう一人の警官に呼ばれる。
呼ばれて行ったのはトラックの荷台の扉だ。
「どうした?」
「荷台から変な音が聞こえるんだよ」
「音?」
相棒の言葉に警官が荷台に耳を近づけると何かが移動する音と幾つもの呼吸音が聞こえる。
これには互いの顔を見て呆然とする警官。
「おい、まだかよ!」
「早くしてよ! 仕事に遅れちゃう!」
「私は膝が悪いんだぞ!」
警官たちの反応に周りで見ていたドライバー達から野次が飛ぶ。彼らとしてはさっさとトラックを退けて移動したいのだ。
車を置いて歩くという手もあるが、それでは自分の車が通行の邪魔をしレッカーで運ばれ罰金を取られる可能性がある。
「まさか人が乗ってるのか? 誘拐か密入国者?」
「念の為、本部に応援を頼む。 俺は開けて確かめる」
一人が無線で連絡、もう一人が荷台の扉を調べ鍵がかかってない事を確認しゆっくりと荷台の扉を開ける。
もし誘拐された人間ならパニックにならないように、密入国者でも同様と言える。
そして、扉を開けた瞬間黒い影のようなものが飛び出すと同時に
こうして交差点及び永田町の長い一日が始まる。
警官がトラックの荷台を開ける少し前、
廃ビルの壁が何かにぶつかり崩れる。
其処には黒い人型が横たわり間もなく緑色の泡を出し消滅する。壁は内部から壊れ、その先にはシンフォギアを纏った響が拳を前に突き出している。
「ハア…今日はやたら多いな…」
「偶に襲ってきてもここまで数じゃなかったのに」
響の言葉に答えたのはこの世界の立花響だ。現在、二人は拠点としている廃ビルでショッカー戦闘員の襲撃を受けている。
何時ものチョッカイや様子見ではない。響が夜中に相手をしている戦闘員の数倍の数がおり、自分たちを囲っている。
既に響とヒビキも何人もの戦闘員を倒してるが一向に減った様子がない。
「キィ~リィ~! 流石は、我らの邪魔もの立花響! しかし、此処がお前たちの墓場となるのだぁ!!」
「「!?」」
廃ビルの入口から不気味な鳴き声と共に戦闘員の者ではない気配が近づく。
警戒を強める二人の目には、新たなる怪人が現れた。
「…虫?」
「私の知らない怪人か…」
「そう言えばお前は俺の事を知らんかったな、カミキリキッド! 貴様らを地獄に送る改造人間の名だぁ!!」
響たちへ名乗ったカミキリキッドは「キーリー!」と鳴き声を上げると火炎を吐き二人を攻撃する。
元々警戒していた為難なく躱した二人の響だが、周囲には戦闘員にカミキリキッドの炎が朽ち果てたソファーやテーブルに燃え移り周囲は火事となる。
熱気や煙が充満しつつある廃ビルの中で響たちは戦いを強いられていた。
東京の上空、一機のヘリが猛スピードで進む。行き先は永田町。
特異災害対策起動部二課が用意したヘリで内部には翼及びクリスとマリアも乗っている。
「はあ!? 動物が解き放たれた!?」
本部からの緊急通信を聞いたクリスが怒鳴るように聞く。
マリアも翼も言葉には出さなかったが驚愕している様子である。
『そうだ。 奴らは動物…それもライオンや熊といった肉食獣やサイやカバをトラックに荷台に入れて街中に解き放ったんだ!』
『トラックを調べていた警官が荷台に載っていた熊に襲撃され死亡! 同時に各地に止めていたトラックからも動物たちが飛び出して一般人を襲撃! 現場は混乱してるわ!』
源十郎と友里あおいの報告にクリスもマリアも絶句する。
その間にも下から幾つものパトカーと救急車のサイレンが聞こえてくる。
『更に厄介な事が二つ残っている!』
そんな重苦しい空気の中、源十郎の口から更に情報が飛び出しクリスとマリアどころか翼すら頭を抱える。
「や…厄介な事とは?」
『要人や官僚の避難が済んでないのが一つだ。 今日、国会には多くの政治家が来ていて彼らの避難させなければならない。 運が悪いことに現場では要人も少ないながらも巻き込まれたようだ。 そしてもう一つは「記憶の遺跡」だ!』
「記憶の遺跡?」
「何だよそりゃ?」
初めて耳にする言葉にクリスとマリアがそれが何かを聞く。内心、凄まじく嫌な予感がしてるが。
『永田町地下には聖遺物を保管する「記憶の遺跡」があるんだ。 あそこには多数の聖遺物と完全聖遺物が保管されている!』
「何だと!?」
「深淵の竜宮みたいなのがまだあったの!?」
『…竜宮も知っていたか。 全ての異端技術を一か所に纏めるわけにはいかんのだ。 万が一の為に幾つかの異端技術を分散して保管しているんだ』
日本政府は少なくない量の聖遺物を所有している。 物がモノだけに博物館に置く訳にもいかず、また纏めて奪取されるのを防ぐ為、或いは研究目的で深淵の竜宮や記憶の遺跡以外にも日本各地の政府機関で聖遺物を保管している。
そしてその内の一つが永田町地下に存在する記憶の遺跡なのだ。
「それじゃあ、ショッカーの目的は記憶の遺跡の聖遺物!?」
『正直分からん! 何しろ政治家や官僚でも記憶の遺跡を知る者は少ない、だから注意して戦ってくれ!』
源十郎の言葉にマリアもクリスも溜息を漏らす。
知ってるのか知らないのかは分からないが地下に注意しつつ戦わなければならない事で既に疲労を感じていた。
現場に辿り着いたクリスとマリア、そして翼だが現場を見て絶句する。
先ず目に入ったのは、何か大きいものに踏まれ潰れた乗用車と流れる血。その傍には腹を食い尽くされた銃を持った男と頭が穴だらけになった虎の死骸。
「ウッ!?」
「オエッ!」
これには幾つもの並行世界で戦ってきたクリスとマリアを思わずえづき口を手で塞ぐ。
ノイズの殺され炭化する人間を見てきた。アルカノイズに分解され赤い煙になった人間も見てきた。
時には、結社の元関係者が起こした事件により殺された者もいるが、ここまで惨い死体を見たことは無かった。
遠くの方で銃声と獣の咆哮、人々の悲鳴が聞こえ急いで先に向かう。
「撃てぇ! 撃てぇ!」
「民間人の避難を急がせろっ!!」
「マズイ! 来たぞぉ!!」
パオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!
警官が必死に民間人を逃がし、暴れる動物に向け拳銃を発砲する。牽制になればいいが、中には手負いになった事で狂暴性が跳ね上がることもある。しかし、素手で大型の動物を止めれる訳もなく中には急いで自衛隊の派遣も要請されている。
そんな中、凄まじい咆哮と共に停まっているいる何台もの乗用車が吹き飛ばされ自分たちの方へ向かう巨大な影が迫る。
「ゾウだ…暴れゾウだぁ!!」
特徴である長い鼻で次々と車も警官も民間人も薙ぎ倒し、それでも止まることのない巨体。
動物園の名物にもなっていた像が拳銃の銃弾に怯みもせず次々と民間人も警官も踏み潰していく。
それを小高いビルの屋上で眺める地獄大使。その顔には笑みを浮かべ笑い声まで上げている。
「ふふふ…まさに順調と言ったとこか。 国会の方はどうだ?」
「イーッ! 別動隊が突入し警備員や何人かの政治家を殺害しましたが現在議会の広間で立て籠もってます!」
地獄大使は永田町の街を責めると同時に国会での答弁のために集まった政治家たちの皆殺しも目的である。
あわよくば政治家や官僚を殺し、日本を大混乱にさせる手も考えている。
しかし、戦闘員の報告は地獄大使とって面倒の一言であった。
「ちっ、戦闘員だけで済ますには時間が掛かり過ぎるか。 ならばサイギャングを向かわせるのが…いや、時間切れか」
いっその事、待機させているサイギャングに議事堂を責めろと言うべきか悩む地獄大使の目にある物が映りその考えも断念する。
丁度、ゾウが暴れてる場所の爆発が起き、何か巨大な物が倒れる音がした。
地獄大使の目にはクリスが腰部分から小型ミサイルを撃ち、ゾウが息絶え倒れた姿だ。
「予定より少々早いがサイギャングに作戦開始を伝えろ」
「イーッ!」
一方、ゾウに向かいミサイルを撃ったクリス達は、
「…今まで色々な敵を撃ってきたが、ゾウは初めてだ…胸糞悪い」
「仕方ないわ。ショッカーの命令を聞いて暴れる以上、私たちにとっても敵よ!」
マリアは短剣を蛇腹状態にして振り回しハイエナや鷲、カラスなどを叩き落していく。
少し離れた場所でも翼が暴れるゴリラを剣の錆にし、次の暴れる動物の相手をする。
「ゴリラって優しい動物って聞いた筈なんだが…」
「ショッカーの所為で狂暴化してるんでしょ。 手加減が出来る相手とも思えないわ」
本来なら動物園を逃げ出した動物は捕獲される事が多い。
しかし、今回の場合は多くの人間が巻き込まれ死者が続出し、政治家の多くも巻き込まれた事で特異災害対策起動部二課には動物の始末が命令され源十郎はそれを三人に告げていた。
報告では間もなく到着する自衛隊にも動物の射殺命令が下りその準備に入っている。
「クマの鎮圧も終わった。 次に…?」
クマを一刀両断した翼がクリスとマリアに声を掛け、別の所で暴れる動物の下へ行こうとしたが、翼の耳にある音が聞こえてくる。
そして、その音が自分たちに近づいている事に気付く。
「どうした?」
「バイクのエンジン音が近づいている…」
「生き残りか、自衛隊の先遣隊かしら」
翼の報告を聞いてクリスもマリアも翼の向いている目線の先を見る。
丁度、T字路になっており、クリスとマリアの耳にもバイクのエンジン音が聞こえ此方に向かってる事に気付く。
一般人が移動してるのなら自分たちが来た所から移動すれば逃げ出せるよう出来るし、自衛隊の先遣隊なら現場の指示を出す必要がある。
そう思っていたのだが、
「なっ!?」
「チッ!」
姿を見た時に、翼は驚愕しクリスは舌打ちをする。
少し考えれば不自然が多かった。バイクのエンジン音は一つではなく複数、来た方向は永田町の中心部の方、民間人にしては多すぎるし、自衛隊なら来た方向が不自然。
即ち、
「戦闘員よ!!」
黒いタイツにマスク、骨の印が入ったショッカー戦闘員。
そして、それを率いるのは
「掛かれぇぇ!!」
サイギャングだ。
サイギャング並び、多数の戦闘員がバイクに乗りクリスやマリア、翼を襲撃する。
「マリアさん達がショッカー戦闘員の襲撃を受けました!」
「やはり来たか!」
特異災害対策起動部二課本部でもクリスたちがショッカー戦闘員の襲撃を受けた事は直ぐに知らされた。
司令部には各所からの被害報告、自衛隊からの報告等が集まり非常に忙しいと言えた。
特異災害対策起動部二課の職員も鎮圧に乗り出しているが此方もショッカーの襲撃を受け苦戦している。
「これだけの行動を起こした以上、奴らの狙いは一体…」
そんな中、源十郎はこのような行動を起こしたショッカーの狙いが何かを考えている。
今までは街を襲撃したりはしたが、ノイズの直後もあり目撃者は少ない上、政府も並行世界から来たという悪の秘密結社などまともに取り合わなかった。
「それがある意味、ショッカーの隠れ蓑になっていたがこれで表に出る気なのか?」
これだけの行動、更には多数の政治家や官僚が巻き込まれてるのだ。これでショッカーのことは無視できなくなる。
だが、それはショッカーにも言える事だった。
闇に隠れ人を襲い、更には多数の民間人を浚った事もある奴らが何故、永田町で行動を起こしたのか?
「…記憶の遺跡目的だろうか?」
ショッカーの目的が読めない源十郎の額に一筋の汗が流れる。
ショッカーが記憶の遺跡の情報を知っていれば手に入れようとするのも分かる。だがその場合、ショッカーは何処で情報を手に入れたのか疑問に思う源十郎。
どちらにせよ、源十郎たちはモニター向こうのクリスたちを見守るしかない。
クリス達の居る現場では、戦闘がより激しくなっていた。
ショッカー戦闘員のバイク部隊の機動力に翼は愚か、歴戦のクリスとマリアすら苦戦させている。
クリスがガトリング砲で迎撃するが、狙いの半分も当たらず散開したバイク部隊に中々命中せず、偶に戦闘員やバイクに命中して爆発する事もある。
マリアは、蛇腹剣で牽制するがバイクの機動力や爆音に集中出来ずバイクの突撃の前に消耗を重ねる。
翼も短刀を雨のように降らす千ノ落涙や無想三刃ですれ違いざまに脚のブレードで戦闘員を切り捨てる。が、
「ケッケケケケケケケケケケッ!! どうしたシンフォギア装者ども、俺たちの世界のお前たちはもっと強かったぞ!」
「自慢して言える事か!?」
バイクに乗る怪人 サイギャングの言葉に思わずツッコんでしまうクリス。
一見、ふざけてる様に聞こえるがその体にはクリスの銃弾もマリアの蛇腹も翼の剣も何も通用しない。
サイギャングの体の硬度の前にクリスたちは完全に攻めあぐねている。
「あの二本角、とんでもなく固いぞ!」
「今のままなら勝てない。 …なら!」
マリアとクリスの視線が合い頷き合う。
考えてることは同じと感じ二人は胸元のギアを握り上に突き出す。
「「イグナイトモジュール! 抜剣!!」」
直後、クリスとマリアのシンフォギアが黒くなっていく。イグナイトを使ったのだ。
「雪音クリス及びマリア・カデンツァヴナ・イヴ、共にイグナイトを使用しました!」
サイギャングとクリス達の戦いを見張っていた戦闘員が地獄大使に報告する。
戦況は此方が押している状況でのイグナイト。形勢逆転かと思ったが、
「そうか、
イグナイトの情報を聞いて地獄大使は笑みを浮かべ呟く。
そして、地獄大使は懐から懐中時計を取り出し時刻を見る。直後、「もう間もなく」と言った。
その顔には勝利を確信したように笑う表情にも見えた。
イグナイトを纏ってからのクリスとマリアの前にバイクに乗った戦闘員も狂暴化した動物も次々と倒れていく。
攻撃力の上がったガトリング砲やミサイルで次々とバイクに乗る戦闘員を吹き飛ばし動物も牽制するクリス。
蛇腹状にした短剣を振り新体操のような動きで戦闘員を倒すマリア。
そんな二人を傍らで見守りながらもアームドギアを剣にして、戦う翼。
尚、それでも、
「多少攻撃力が上がったところで、俺を倒せる程ではないなぁ!!」
「冗談だろ!」
イグナイトで攻撃力が上がったにも関わらず、サイギャングの体に傷一つ付かない。
クリスの銃弾もマリアの蛇腹剣も先程とまるで変わらなかった。
その事に焦るクリスとマリア。
更に悪いことは重なり、特異災害対策起動部二課本部から緊急通信が入る。
『緊急事態だ!』
「こっちもだよ!」
「…何事ですか」
クリスの文句とも言える発言を無視したマリアが何事か聞く。
源十郎の声色からして本当に緊急の知らせだと考えたマリア。
『ノイズの反応だっ! それも大規模の!』
「「「!?」」」
直後に街中に二足歩行型や四足歩行型、タコ型のノイズが出現する。
更にビルの一角が崩れ大型のノイズまで現れ空には何時の間にか飛行型のノイズが飛び回っている。
「こんな時にノイズかよ!」
「でもこれはチャンスよ、ノイズは私達だけじゃなくショッカーにも襲い掛かる」
ノイズはバラルの呪詛により相互理解出来なくなった先史文明期の人類が同じ人類を殺すために造られた兵器。
最早、ノイズを造った者は居ないというのに律儀に命令を守り未だに人類を殺している。
それは、ショッカー組織でも変わらず戦闘員や怪人を襲い掛かる。その光景をクリスたちは何度か見ていた。半面、クリスたちもノイズの百や二百、今更どうという事はない。
このままショッカー、ノイズとの混戦に入るかと思われた。
「ノイズが出た、やれぃ! ジャガーマン」
「お任せを」
「聞けぇーい、ノイズどもぉぉ!!」
バイクで迫る戦闘員、乱入してきたノイズを相手にしていたクリスたち三人の耳に野太い男の声が響き何事かと声のした方を見る。
其処には、牙を生やし毛むくじゃらの獣のような顔をし左肩に鎧のような物を付けた怪人が居る。
それだけではない、
「地獄大使!?」
その怪人の横には、あの日特異災害対策起動部二課本部に通信してきた男 地獄大使も居たのだ。
「部下がやられて尻に火でも付いたか、クソ野郎ッ!!」
クリスの挑発とも言える罵声が飛ぶ。しかし、地獄大使の目がクリスに向いただけで完全に無視する。
更に、怪人が言葉を続ける。
「この俺、ジャガーマンが命じる! 俺たちの命令通りに動きシンフォギア装者どもを殺せぇ!!」
怪人…ジャガーマンの声が永田町に響き、当然クリスたちの耳にも入る。故に分からなかった。
ジャガーマンと名乗る怪人がノイズに命令したことが。
ソロモンの杖もない。錬金術師が造ったアルカノイズでもない、通常のノイズだ。
それが命令を聞くとは到底信じられない。
しかし、一早くマリアが周辺のノイズを見て冷や汗を流す。
「何…これ…」
ノイズがイヤに大人しいと感じ周りを見渡すと人型も四足歩行型も大型も飛行型も、全てのノイズがまるでジャガーマンを見てるような反応だった。
━━━普通のノイズでも大きい音には反応するし近くの人間を襲う傾向があるわ。 でも全てのノイズがジャガーマンの話を聞いているみたい。 …!
「さあ、ノイズども! 我らショッカーの忠実な下僕となりシンフォギア装者を殺せぇ!」
マリアは咄嗟にクリスを突き飛ばし、翼の手を引っ張った。
直後も、二人の居た場所に幾つもの細長いものが通り過ぎ地面を抉る。
「ノイズが!?」
「アタシ等
「そのようだっ! …!」
一早く立ち上がった翼が迫るノイズを一体切り捨てる。だが、ノイズの陰で見えない場所から戦闘員のバイクが翼の腕に当たる。その威力により剣を手放してしまうが翼は即座に新しい剣を造り構える。
クリスも即座にアームドギアを取り出しガトリング砲に変えて戦闘員を牽制するが背後からノイズが攻撃し背中に衝撃を感じる。更に目の前が暗くなったと事に視線を向けるとライオンが唸り声を出し飛び掛かる。
マリアも蛇腹剣で戦闘員と動物を牽制するが、地面からタコ型のノイズが現れ奇襲される。
「一体何がどうなってんだ!? 何でノイズがアイツ等の命令を…」
ガトリング状態のアームドギアにライオンが噛み付き、クリスが抑え込まれ愚痴のように呟く。
自分たちの周りには戦闘員に動物、そしてノイズが犇めき合い愚痴の一つも言いたくなる。
「驚いたか? シンフォギア装者ども、これぞショッカーの技術力よ」
翼とマリアが互いの背中を守りあい、クリスが噛み付くライオンの鼻先を蹴り上げライオンを怯ませボーガンタイプも戻し迫るノイズを撃ち炭にした後に聞き覚えのある声が聞こえてくる。
声のした方を見ると地獄大使がこちらを見て笑っている。
「一体どうやってノイズを…」
「教えろクソ爺!」
「相も変わらず品の無い小娘だ。 …まあ良かろう、地獄への土産に教えてやる。ジャガーマンには動物を自在に操る改造声帯を取り付けてあるが、それに少々手を加えてな。 ソロモンの杖を参考に改造声帯から特殊な波長を出しノイズも同時に操れるようになったのだ」
「「「!?」」」
地獄大使の言葉に驚く三人。
ソロモンの杖もそうだが、それを解析してノイズを完全に操ってるのだと言うのだ。驚愕でしかない。
「さあ、既にお前たちの退路は存在しない。 このショッカー包囲網、抜けれるものなら抜けてみろぉ!!」
その言葉にクリスやマリア、翼が周囲を見る。
地面には未だに動物が自分たちを威嚇しバイクに乗った戦闘員もエンジンを吹かす。
空には飛行型のノイズや鷲やカラスが此方を伺っている。
「カラス供もお前たちの死肉を突きたいそうだ、大人しく死ねぃ!!」
ジャガーマンの言葉に空を飛ぶ鳥も自分たちの敵だと判断する。
逃げ場は何処にもない。そう確信した三人は奥歯をかみしめるが、諦めてはいない。
「なら…」
「押し通る」
「のみぃ!!」
状況は絶望的。周りの動物も戦闘員もノイズも全てが敵で自分たちの命を狙っている。
それでも彼女たちは諦めなかった。
特にクリスとマリアは数多の敵を打ち倒し仲間と共に生き残ってきた。
バイクと迫りくる戦闘員を切り捨てる翼とマリア。その頭上から飛行型ノイズが爪楊枝のように細くなり突撃するがクリスの弾丸が貫く。
三人は何とか連携して戦うが敵もさる者。大型の獣の陰に隠れノイズの奇襲攻撃に戦闘員とノイズの同時攻撃。更には大型ノイズに載った戦闘員と動物の同時攻撃に苦しめられる。更にサイギャングのパワー。
「連携攻撃!?」
「即席の部隊じゃないのかよ!」
この連携にはクリスもマリアも驚愕する。
数多の世界で戦ってきた二人も、此処までの連携には舌を巻く。
状況は劣勢とも言えるクリスたち。
それでも諦めずに戦い歌う。ショッカーに負ける訳にはいかないのは本部に地獄大使の通信からでも分かっている。地獄大使にこの世界を渡すわけにはいかない。世界征服を企む悪の組織に負ける事は許されない。
だからこそ三人は歌い続ける。歌い続け少しづつフォニックゲインも高まっていく。
故に三人の通信に凶報が入る。
『三人とも気をつけろ! 高出力のエネルギー反応が観測された!』
「高出力?」
「!?」
「こんな時にかよ!?」
源十郎からの報告に頭を傾ける翼だが、クリスとマリアは即座にエネルギーの正体に気付く。
何しろ、この場には三人の装者が歌って戦いフォニックゲインも高まっている。
「ん?何だあれは」
異変に気付いたのは地獄大使だ。全体の指揮をしていた為視野は広く偶然見つける。
地獄大使の視線の先には黒い靄のようなものが集まりやがて形となる。
そして其処には、ブドウのような頭部をしたノイズが現れる。最も通常のノイズとは違い黒かったが、
「最悪ね…」
マリアの言葉にクリスの額から汗が流れる。
カルマノイズが現れたのだ。
記憶の遺跡。本編だと聞いたことがありませんが一応XD世界にもあるという事で。
一応、翳り裂く閃光世界にも深淵の竜宮がある設定です。
劇中だと怪獣モドキが起動して後出しになった記憶の遺跡ですが、ショッカーという組織の存在によりクリスたちも事前に情報を入手。役に立ったかどうかは別問題ですが。
地獄大使の真の目的は、ノイズが大規模に出る予定の永田町にクリス達を誘い出し包囲して殲滅する為です。動物園から連れてきた動物もその為の駒でしかありません。
ジャガーマンが動物やノイズを操ってますが、実際に指揮をしてるのは地獄大使です。
地獄大使の指揮能力は高く、新仮面ライダーSPIRITSの10巻でも歴戦の戦士である本郷が怪人たちの連携に驚き真っ先に司令塔である地獄大使を先に倒そうとする程です。
そして、クリス達が歌いまくった事でフォニックゲインが上昇しカルマノイズが出現。