先日、YouTubeで「五人ライダー対キングダーク」をやってました。犬に吠えられて正体を現す怪人には笑えた。
もしかして、VS地獄大使や仮面ライダーV3の映画もやってたの?
もしやってたら見逃した~(泣
翼がサイギャングを破る少し前
「ヒョォォォォォォォォォォォォッ!!」
ジャガーマンの右腕が響を目掛け放たれ、響も黙って受ける気はないと腰のバーニアで辛うじて避ける。
獲物を失ったジャガーマンの腕はそのままアスファルトを叩きつけアスファルトを切り裂く。
「ハアアアアアアッ!!」
っと反撃とばかりに響もガントレットのギアを引っ張った腕でジャガーマンの腹部を殴りギアが戻る衝撃も合わせる。
響の渾身の一撃を受けたジャガーマンだが、地面を少し強制移動しただけで大したダメージは無さそうだ。
だがそこへ、幾つものミサイル降り注ぎジャガーマンへと命中する。
クリスが腰のパーツを広げ小型ミサイルの雨を降らし響の援護を行ったのだ。
━━━クリスちゃん…ありがとう…
心の中でクリスに礼を言う響は腕のパーツを引っ張りまた渾身の一撃の準備をした。
ジャガーマンの体力でクリスの小型ミサイルは倒せる程の威力はない。
何とかジャガーマンを疲弊させ一気にトドメを刺すしかないと響は考えていた。
その所為で煙が晴れ響の目は疑うような物をみた。
「よっしゃー!」
「上手くジャガーマンの防御を貫いたようね」
クリスとマリアの歓声を上げる。
ジャガーマンの両腕が吹き飛び傷口から血のような赤い液体と機械の金属部分が丸出しとなった。
響は知らないが、歴戦の戦いの中で並行世界のクリスのミサイルは小型だろうと威力が増しているのだ。
そのミサイルが直撃したことで叩き落そうとしたジャガーマンの腕が吹き飛んだ。
━━━クリスちゃんの攻撃が効いたんだ、なら今度こそ!
理由はよく分からない響だが千載一遇のチャンスとばかりに腰のブースターで一気にジャガーマンに迫ろうとする。
腕を構えトドメの一撃を放つ。それが響の目的だった。
しかし、ジャガーマンの目に赤い光が宿ると共に息を一気に吸い込む。
ヒョォォォォォォォォォォォォッ!!!
ジャガーマンの今までにない雄叫びにクリスとマリアが耳を塞ぎ、雄叫びの衝撃波が迫る響の壁となる。
咆哮の衝撃により体がピリピリと痺れる響が目にしたのは、雄叫びを上げたジャガーマンの腕が再生していく姿だ。
両腕の傷口から鉄やコードが延びそれが腕の形になると人工筋肉が覆いかぶさり即座に黒い皮膚となった。
「早いっ!」
響とて今まで多くの怪人を相手にしてきたがジャガーマン程の回復能力を持った怪人など見たこともない。
何より欠損していた両腕が即座に再生したのは驚愕とも言えた。
「取り付いてもあの再生能力かよ」
「カルマノイズはこれだから…私たちで再生能力を上回る程のダメージを与えるわよ!」
尤も、カルマノイズと何度となく戦ってきたクリスとマリアは何となくだが予想はしていた。
カルマノイズの厄介さは呪いと再生能力だと認識している二人は戸惑う響をよそにジャガーマンへの攻撃に参加する。
「ふむ…ジャガーマンにあそこまでの回復能力は無かった筈だが、あの黒いノイズ…興味深いなぁ」
ビルの屋上でジャガーマンの回復速度を見ていた地獄大使が呟いた。
その手には血で滴る鞭を握り視線を戻し同意を求めるように「そうは思わんか?」と言う。
視線の先には息を荒げ体中から血を流すヒビキの姿が、
「ハア…ハア…そんなこと私が知るか…」
地獄大使の問いにハッキリ答えるヒビキ。強がってはいるがヒビキの脳は体中の悲鳴を聞いていた。
━━━想像よりも強い…舐めていたつもりは無かったけど、戦った怪人を超えている…
地獄大使の鞭の前にヒビキは防戦一方だった。
防御が間に合わなかった場所には痛々しいミミズ腫れや皮膚が裂け出血。片腕のシンフォギアのガントレットパーツに至っては破壊されている。
首に巻いているマフラーにも響の血が付き所々赤黒く染まっている。
「ふん、どうやらシンフォギア装者に愛想は無いようだ。 まぁいい、お前の躯を晒して立花響への見せしめにするもの面白かろう!」
「!」
地獄大使がそう言い終わると同時に手にしてる鞭を振る。
脚部のジョッキを使ってジャンプして躱すヒビキだが、自分の居た場所に鞭が当たったコンクリートにヒビがはいったのを見て背筋を寒くする。
躱された地獄大使も直ぐに鞭を移動させるために振るいヒビキの追撃に入る。
「フハハハハハ! どうした!? ワシの知る立花響はもっと素早く動けるぞ!」
挑発混じりの言葉にヒビキは気にする暇がない。
縦横無尽に動く鞭はヒビキにとって厄介過ぎた。移動しようとした先に鞭が打たれ、足を止めれば脚部や腰に鞭が当たり凄まじい痛みがヒビキを襲う。
打たれる度にヒビキの悲鳴が漏れ、地獄大使の表情は残忍に笑う。
地獄大使にとってヒビキは敵ではなく獲物扱いだった。
響たちとジャガーマンが戦う交差点付近では三人の歌が流れ一見、ハーモニーにも聞こえるがそれぞれが別の歌を歌い攻撃している。
それぞれの歌を歌い、ジャガーマンと戦う。響が接近戦、クリスが援護射撃の中長距離、マリアがオールラウンダー的なポジションで近接や距離を取る戦い方をしている。
響の拳で、クリスが銃撃でジャガーマンの体に当てるが、大したダメージも無いのか、ジャガーマンの俊敏な動きに翻弄される響。
今もジャガーマンの爪を両腕のガントレットでガードするが勢いが消えず吹き飛ばされる。
尤も、数多の怪人と戦ってきた響だ。
空中で態勢を立て直すと叩きつけられる筈のビルの壁に足をつけた直後に蹴り上げるようにし、更に脚のジャッキを動かしジャガーマンの方に戻り、拳を当てていく。
「上手い戦い方ね」
マリアの言葉にクリスも頷く。
戦闘スタイルは自分たちの知る響の徒手空拳とほぼ同じだが対ノイズよりも対人と言える動きだった。
クリスもマリアも響に負けじと歌い、クリスはガトリング砲で援護を、マリアもアガートラームの左腕の籠手を変形させ砲身のようにして響の援護にはいる。
響との接近戦をやるジャガーマンの体にクリスのガトリング砲の弾丸が当たり、マリアの砲撃も受ける。
体が欠けようが吹き飛ぼうが即座に再生するジャガーマンだが、クリスとマリアが鬱陶しいと感じるのに時間はかからなかった。
「先二うるサイハエどもヲ潰すかァ」
「え? …!?」
ジャガーマンの呟きを聞いた響は「何のことか」一瞬わからなかったが、次の瞬間には自身の脚をジャガーマンんが握っていた。
ジャッキを動かし腰のブースターも使って何とか移動しようとする響だがジャガーマンの握力の前にピクリとも移動できない。
「その為にハお前がガ邪魔ダアァァァァァァ!!」
そう言い放つジャガーマンの腕が響ごと引っ張り、響を地面へと叩きつける。
「カハァ!?」
腹部や胸に強い衝撃と激痛を感じた響の口から唾液が飛び出しそれと共に咳き込む。
更にジャガーマンはそのまま響の足を放さず左右や前後の地面に叩きつけ、最後にはハンマー投げのように響を振り回して放置されたバスに投げられた。投げられた響は受け身を取れずバスに命中し穴をあける。
その様子に冷や汗を流すクリスとマリア。
「まだあれだけの力が…」
「あの馬鹿、大丈夫かよ!?」
ジャガーマンの力がまだある事に驚くマリアと響の心配をするクリス。
クリスの隙を見つけたジャガーマンはそのまま飛び掛かる。
「クリス!」
「!?」
「食い殺シテやるゾ、小娘!!」
ジャガーマンが大きく口を上げ鋭い牙が光りクリスに襲い掛かる。
ガキィン!っという音が響き、マリアがクリスの方を見る。
「ガギッギギギギギ…」
「舐めんじゃねえぞ、怪人野郎!」
其処には片手に持っていたガトリング砲に付けられた二本の銃身の内一本を咥えたジャガーマンとアームドギアのガトリング砲を盾にしたクリスだ。
何てことは無い、クリスは持っていたガトリング砲の銃身を咄嗟に盾にしジャガーマンに咥えさせたのだ。尤も、ジャガーマンの力に対抗するのは難しく押し倒される形で片足でもガトリング砲を支えていたが、
それを見てホッとするマリアだが、ジャガーマンが咥えている砲身にヒビが入っていく。ジャガーマンの顎の力にアームドギアの強度が負けているのだ。
「「!?」」
「こんナモのが盾二ナルと本気で思ッタか!? マヌけ!」
遂には砲身が砕けジャガーマンの牙がクリスの胸元まで迫る。
「マヌケはテメェだ!!」
既に展開していた腰部アーマーから出したミサイルポッドから小型ミサイルを一斉発射。
ジャガーマンを中心に大爆発を起こし、逃げる余裕の無かったクリスが地面を転がりマリアが受け止める。
「無茶するわね、相変わらず」
「へへへ…見たか? あいつのマヌケ面…」
爆発が近かったとはいえ、シンフォギアのまま転がった事でクリスの体には擦り傷程度しかない。先程ジャガーマンの爪にやられた傷も大分回復している。
とはいえ、痛みがクリスに襲いちょっと涙目になっている。
「何か凄い爆発がしたようだが…」
「翼!?」
背後から声が聞こえ振り向くとサイギャングと戦う為離れた風鳴翼が自分たちの方に近づいていたのだ。
近づくにつれ翼の体は煤だらけで一部のシンフォギアの装甲にヒビが入ってるのを見て、向こうも激戦だった事を悟る。
「そっちは倒せたみたいだな」
「正直ギリギリだった」
クリスの言葉に溜息を洩らしつつそう言う。
少なくとも怪人は一体倒した。それが分かっただけでもクリスとマリアの闘志が蘇る。
そうこうしてる内にクリスのミサイルで発生した土煙が治まってきてジャガーマンの影が見えた。
「!」
「顎が吹き飛んでる!」
「それだけじゃない、顔や頭の半分も消えている!」
煙から出てきたのは下顎が消え、顔と頭の半分しかないジャガーマンの姿だった。
普通に考えれば怪人といえどこの姿になれば致命傷であり死んでいてもおかしくはない。
しかし、ジャガーマンはそんな姿でも息をしており、体の黒さに反して舌がやたら赤くなって伸びている。
「やったか?」
翼の言葉が聞こえたのか、ジャガーマンの残った半分の顔についている目が赤く光り此方をみたような不気味さを感じる。
そして、
「ウソ…」
「マジかよ…」
マリアもクリスも絶句する。
クリスのミサイルが全弾命中し顔の半分と下顎の欠けたジャガーマンが回復していくのだ。
腕の時と同じ、傷口から金属片が伸び筋肉に包まれていく。
そして、アっという間にジャガーマンの姿はミサイルを受ける前の状態に戻った。
「あんな状態でも回復するのかよ!? こいつ、何時になったら倒れるんだ!!」
「…怪人と融合したカルマノイズがここまで厄介なんて…こっちも体力が尽きそう」
ここまでやってもジャガーマンを倒せない事に二人は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
クリスとマリアも今まで多くのカルマノイズを倒してきた。しかし、怪人と融合した目の前のジャガーマンの耐久力も回復力も今までの比ではない。結構な時間戦い続けてきた二人も限界が近いのだ。
「…2人とも、いいだろうか?」
そんな二人の様子に翼は意を決したように二人に声を掛ける。
「どうした?」
「何か閃いたのかしら?」
二人とも目の前のジャガーマンを警戒しつつ翼の言葉に耳を傾ける。
もしかすればこの状況を打開できるのではとも期待していた。
「ああ…私のとっておきだ。 少しでいい、時間を稼いでくれ」
「「…」」
翼の言葉で何となくだが察した二人は首を縦に振った。
「無茶するなよ、先輩」
「私も無茶は許さないわよ?」
翼にそう言うとクリスもマリアもアームドギアを片手にジャガーマンへの攻撃を再開する。既に再生し終わってたジャガーマンも二人を迎撃する為に動き出した。
その戦いを見守った翼は考えてることをボソッと口に出す。
「カルマノイズは生半可な攻撃では倒せず再生してしまう、怪人に融合し奴はとくに…ならば!」
翼には一つだけカルマノイズが取り付いたジャガーマンを倒す手を思いついていた。
だが、それをクリスやマリアに使わせるわけにはいかない。戦力的にもクリスとマリアでなく低い自分が使うべきだとも考えている。
その方法とは、
それは即ち…絶唱だった。
「クッ…やっぱり…」
「あの怪人は絶唱クラスのエネルギーでないと倒せないわね」
絶唱。それはシンフォギア装者にとって切り札と言える。
しかし、装者にもダメージがくる諸刃の剣。
故にクリスは翼の心配をし、マリアもそれでないとジャガーマンに勝つのは不可能だと考える。
「こんな時にアイツがS2CAを使えれば…」
クリスの目は大破したバスに向かう。
他者と手を繋ぐ事を特性とも言える響なら皆が絶唱を歌ってもダメージを極限まで抑える事が出来る。
それさえ出来ればカルマノイズが取り付いたジャガーマンにも勝てるだろう。
「無いものねだりしても仕方ないわ。 私たちも目も合わせない子が出来る事じゃない」
「…分かってる」
だがそれは、自分たちの世界の立花響の話だ。
この世界の響は迫害され他者を信じられなくなっている。そんな娘にS2CAは使えないと判断した。
その頃、バスに投げ出された響は、
「ウッ…此処は…そうか…私…意識が…」
ジャガーマンにバスに投げられた衝撃か少しの間、意識を失ってた響。
状況はどうなったのか確認しようとした時、
「!? 絶唱! この声…翼さん!?」
絶唱を歌う声が響の耳に届く。
更にはバスの隙間から絶唱を歌う翼の姿も確認でき、クリスとマリアがジャガーマンと戦っている。っと言うよりかは足止めをしていた。
「…そうか、絶唱でないとあの怪人を倒せないと思ったんだ」
確かに黒い怪人(ジャガーマン)は強い。それこそ響も大幹部のゾル大佐や死神博士の時のように苦戦している。
怪人との戦闘に慣れていない特異災害起動部二課の翼なら倒すために絶唱を選ぶだろう。
━━━! 考えてる場合じゃない、私のS2CAがない状態で翼さんが絶唱を使ったら…!
この時、響はまだ味方になる前のクリスと遭遇した戦闘を思い出した。
一触即発の空気の中、ショッカーの改造人間が襲撃し劣勢を覆す為に怪人たちの中心で絶唱を使った翼の事を。
━━━絶唱を歌ったら翼さんが! そんなのダメだ、こうなったら私がS2CAを使って翼さんのダメージを肩代わりするしか…!
響は翼の絶唱のダメージを肩代わりする事を選んだ。
例え、戦いの後に「あの力は何だ!?」とクリスやマリアに連行され特異災害本部に連れてかれ自分の体の秘密や並行世界の事がバレてしまうかも知れない。
だが、響は自分の体の秘密より見知った顔の誰かが苦しんだり倒れたりするのはもっと嫌だった。
腹を括った響が急ぎ翼の下に向かおうとする。だが、直後に自身の体に違和感を感じた、いや違和感は足の部分だ。
━━━足に何か引っかかっている? もしかして、拉げた車体に足が挟まってるのかな? …!?
そう考えた響は自分の足の方に目を向ける。足が挟まってるだけなら強く引っ張れば抜く事が出来る。
しかし、響の視界に入ったのは想定外の物だった。
椅子の一部か立っている時に持つ棒かは不明だが、曲がった金属の太い棒が太ももを貫通していたのだ。
「アグッ!」
この時になって響は自身の太ももに焼けるような激痛と異物感を感じた。
響の太ももは運が悪く、バスに突っ込んだ時に破壊した金属の棒が太ももを貫通していた。更に運が悪いのか特殊合金である骨に当たらず人工筋肉やコードが密集している場所でもあった。
もし骨に当たっていれば金属の棒は貫通せず、軽傷だった。
響は直ぐに動けなかった。
絶唱を歌い終えた翼。途端、翼の内側から莫大なエネルギーが溢れる。
「はああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
そして、手に持ったアームドギアの剣を大型にして、エネルギーを剣に集中させ一気にジャガーマン方に向け切り裂くように動く。直後に剣から光の玉のような物が出てジャガーマンの方に向かった。
「…今よ、クリス!」
「おう!」
翼の動きに気付いたマリアがクリスに合図して二人は急ぎジャガーマンから離れた。
「!?」
二人の動きに気付いたジャガーマンだが、翼の絶唱に気付いた時には遅く、翼の放った絶唱のエネルギーを乗せた斬撃はジャガーマンを包み込んだ。
「ヒョォォォォォォォォォォォォッ!?」
エネルギーに包まれジャガーマンは抵抗すれ出来ず吹き飛び放置されていたタンクローリーに接触、盛大に爆発した。
「…これが…防人の…歌だ…」
「翼!?」
絶唱を放った翼も口から血を吐き、地面へと倒れかけたところをマリアが抱きとめる。
翼は既に気を失っていた。
「大丈夫か!?」
心配そうにマリアに近づくクリス。その目はマリアに抱きとめられた翼に向いている。
翼の状態は口から血を吐いていて、如何見ても大丈夫とは言えない。
「取り敢えずは本部にヘリを要請したわ。 直ぐに来るとは思うけど…」
やはり響抜きの絶唱は危険極まりない。その事を改めて自覚する二人。
そんな二人の耳に誰かが近づく足音が聞こえ振り向いた。
「お前…」
「…何か用かしら?」
二人の目にはちょっと足を引きずった響が居た。
あの後、金属の棒を抜いた響は見た目だけでも回復したが片足には未だに激痛が走っている。
そんな状態でもクリスたちに近づいたのは翼の容態を知りたい為だ。
「その…翼さんの様子は…」
「…少し無茶したから入院は確定ね」
「そう…ですか」
翼の様子が気になっていたのかとクリスとマリアも、やはり世界は違えども響は響だと思った。
お節介で愚直で他人と関わりたがるお人よしの大食漢。
過去の迫害が無ければ…或いは傍に日向が居ればこの世界の立花響も自分たちの知る立花響と変わらない娘かもしれない。
「あの…さっきはすみませんでした。 失礼なことをして…」
二人が響に少しだけ笑みを浮かべると響の口から謝罪の言葉が出る。
失礼な事とは恐らく、声を掛けた自分たちを無視した事だろう。
一方、響の方も良心の呵責やこの世界の響の印象の悪化を避けたい思惑がある。
そして、何よりクリスとマリアとどうしても話したくなったのだ。
「失礼? ああさっきの事ね」
「気にすんなよ、目の前に敵がいたんだ」
クリスやマリアも先程の事は気にしていない。…と言えばウソになる。
それでも理由が理由だけに二人も理解していた。
「ヒョォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!」
「「「!?」」」
一瞬和やかな空気が流れるが、そんな空気をぶち壊すようにけたたましい雄叫びが辺りに響く。
三人の視線が一方向へと動く。それは燃え盛るタンクローリーの残骸だ。
「うそ…」
「…」
「マジかよ!」
三者三様の反応をするクリスたち。
彼女たちの視線は燃え盛る炎と夥しい煙から出てくる人影を捉えていた。
ジャガーマンだ。
「絶唱でも倒せないのか!?」
「こうなったら私が…」
「…! 待ちなさい! 様子がおかしい!」
翼の絶唱でも倒せないのかと絶望する翼。自分が率先して殴りかかろうとする響。
そんな二人を制止したマリアは何かに気付いた。
「ぬあアあAAAAAAAAA!! どウした、ノイZU! もっト俺に力WO寄越セ!! 回復が追イ付いていNAIぞ!! 逃げヨウとSUるな!!」
「?」
「なあ、これって」
「ええ」
ジャガーマンが一人悶える姿に響はポカンとしていたが、クリスとマリアは察しがついた。
翼の絶唱のダメージで取り付いたカルマノイズに限界が来たのだ。
その証拠にジャガーマンの体は黒い霧のように爆ぜ、黒い靄がジャガーマンから逃げ出そうとしてるように見える。
「立てぇっ、野獣どもぉっ! ノイズどもぉッ! 怒り狂い、この『ジャガーマン』を助けに来いっ! ぎゃあぁぁぁぁぁぁあああっ!!」
取り付いたカルマノイズも力尽き、万事休すのジャガーマンの口から自分の操る動物やノイズを呼び寄せようとするが、周囲には既にジャガーマンとの戦闘の余波で動物もノイズももういない。
そして、ジャガーマンの悲鳴にも似た断末魔を上げ倒れると共に大爆発を起こす。
「うお!?」
「なんて風圧!?」
爆発の衝撃波が離れていたクリスとマリアにも吹き周囲のビルや店のガラスが割れる。爆発の衝撃波がそれだけ強かったのだ。
衝撃波が治まりクリスたちがジャガーマンの居た場所を見るとタンクローリーの燃料で燃えていた炎すら消し飛んでいる。
「…やったわね」
「最後まで喧しい奴だった」
カルマノイズに取り付かれたジャガーマンを倒した。その事でクリスもマリアも安堵する。
「………」
それを見届けた響は静かにこの場を離れようとする。
誤解を生まないようクリスたちを避け結果的に絶唱を使わせてしまった翼に合わせる顔がないと思ってだ。
「待てよ!」
そんな響に待ったをかけた娘が居る。
クリスだ。
「…何?」
さっさと立ち去ればいいものを、響の良心が邪魔をし立ち止まる。
響に待ったをかけたクリスも背を向ける響を見つつ脳裏にはこの世界に来る直前の記憶が蘇る。
それは、エルフナインとのやり取りだ。
『並行世界に行く前に少しいいですか?』
ある程度報告を終えたクリスとマリアが並行世界に行こうとした時、仲間であるエルフナインが呼び止める。
『どうかした?』
それに反応したのはマリアだった。
クリスも「どうかしたのか?」という反応で様子を窺う。
『向こうの響さんと接触する時に実は試して欲しい事があって』
『なんだ?』
『向こうの指令からの報告で、向こうの響さんは孤立無援の孤独感にいると思います』
『ええ、それこそショッカーという組織に狙われている』
『ですから…独りじゃないって教えてあげてほしいんです。 幾つか不明な点がありますけど、向こうの響さんの感情が流れてる以上、こちらの響さんの感情が流れてる可能性があります。 それならばきっとクリスさんたちの思いが伝わると思うんです』
『ああ、わかった』
エルフナインとのやり取りでクリスは響に色々救われた事を思い出し口を開く。
「あたしは雪音クリス。 18歳。 誕生日は12月28日で血液型はA型だ。 好きな物はあんぱんだ!」
「へ?」
クリスの突然の自己紹介に呆然とする響。思った反応と違い過ぎるからだ。
すると、クリスの傍にいたマリアも口を開く。
「わたしはマリア・カデンツァヴナ・イヴ。 23歳よ。 …こうしてると昔の事を思い出すわね」
「昔を思い出すのは年をとった証拠だってな」
「あら? お子様には言われたくないわね」
「お子様だぁ?」
マリアとクリスがいきなり口論しだす。尤も二人とも笑ってる以上、本気ではないだろう。
「…ぷっ!」
そんなやり取りを見ていた響は思わず吹き出す。まるで翼とクリスが初めて協力した戦いを思い出したのだ。
目的は同じはずなのに喧嘩して何時の間にか仲良くなる。
二人の口喧嘩を見て思い出し思わず口が滑る。
「
口を滑らせた事に気付いた響は自分の口を手で塞ぎ後ろを向く。
やっちゃったと思いつつ、もしかして気付いてないかなと期待して横目で二人の方を見た。
「クリスちゃん?」
「…立花響、あなた…もしかして…」
完全に聞かれてた。
クリスとマリアの視線が先ほどの温かいモノから少し冷たいものになったのを感じる響。
━━━わたしの馬鹿! クリスちゃんが初対面のわたしに挨拶しただけなのに…これじゃこの世界のワタシが常識がないうえに馴れ馴れしい女の子になっちゃう!!
下手すればこの世界の立花響の人間関係が完全に終わってしまう懸念を抱く響。
一方、
(なあ、こいつ初対面のアタシにクリスちゃんて…)
(私の事も、マリアさんってアッサリ言っていたし…まるで今までも一緒に戦ってきたような空気を出してるわね)
(ああ…試してみるか)
「なあ、お前もこの世界に来てたのか?」
「!?」
クリスの言葉に衝撃を受ける響。
━━━この世界? もしかしてクリスちゃん
クリスの言葉に反応した響が口を開こうとした。
しかし、直後に彼女体の傍の廃車状になった車に何かが落ちた。
三人がそれぞれ落ちたものに目をやる。と、
「なっ!?」
「…どういうこと?」
クリスとマリアは目が点となり言葉も出ず、響に至っては、
「もう一人のわたしっ!!」
そう言って落ちた物…響の傍に近寄る。
落ちてきた物とは、この世界の立花響だった。
その姿は、シンフォギアを纏っていたが殆どがボロボロでインナーの一部すら裂かれている。体や頬にも血が付着しており負傷しているのは火を見るよりも明らかだった。
「一体なにが…」
「サイギャングもジャガーマンも役に立たんとはな、こうなればワシ自らがお前たちに引導を渡してやろう」
クリスが何が起きてるのか考えようとした時、不気味な声が聞こえた。
三人がヒビキが投げられた方に振り向いた先には地獄大使と数多の戦闘員が此方に近づいてくる。何時の間にかビルの屋上から移動していたのだ。
「地獄大使ッ!!」
「とうとう自ら出てきたわね」
「へッ…部下がやられ過ぎて我慢できなくなったか!?」
響が地獄大使の名を言い、クリスとマリアも目の前に現れたに臨戦態勢をとる。
尤も、ジャガーマンとの激戦と負傷で二人の体力の限界も近い。
そんな状態で地獄大使と戦えるか不安に思う。
だが、そんな二人の耳に最悪の音が聞こえた。
「バイクのエンジン音?」
「…またかよ」
突然聞こえてきたバイクのエンジン音、それも最近聞いたばかりの音だ。
半ばゲンナリするクリスとマリアが視線を動かして音のする方角を目にする。
「カミキリキッド!?」
バイクに乗った者の正体に気付いた響がそう口にする。
地獄大使の反対方向にはカミキリキッドを始めとした戦闘員のバイク部隊がやっと合流した。
「キィーリィー! やっと追いついたぞ!」
「ふむ、丁度いいタイミングだな」
カミキリキッドの到着に邪悪な笑みを浮かべる地獄大使。このまま挟み撃ちにする魂胆だ。
まさに前門の虎後門の狼と言える。
クリスとマリアは疲労、響は負傷したヒビキを庇いつつ戦わねばならない。
響たちの圧倒的な不利な空気に僅かながらの静けさを感じるほどだ。
そして、その静けさを破ったのはマリアたちの無線だった。
『緊急事態だ! 急ぎその場から離れるんだ!!』
「そうしたいのは山々だけど…」
「この包囲、簡単に逃げられそうにないな…」
無線から源十郎の撤退指示が出る。二人もそうしたいが、先のショッカー包囲網よりマシだが逃げ難いよう戦闘員が配置されている。
遠くから銃声が聞こえる事から自衛隊が到着しただろうが、何処まで戦えるかは…
そう考えていたが、
『地下の記憶の遺跡から高エネルギー反応があった! 完全聖遺物が起動してそっちに向かっている!!』
「「はあ!?」」
てっきりショッカーから逃げるよう言っていると思っていた二人は思わず大声を出してしまう。
二人にとってこの場で完全聖遺物など寝耳に水だったからだ。
直後にクリス達の周辺が激しく揺れる。
「え? 地震!?」
「うわあ!!」
事情の知らない響はこの揺れを地震かと思い、クリスも激しい揺れに驚く。
「キーリー!?」
「何だ? 人工地震作戦は実行していない筈だが」
一方、地獄大使たちも突然の揺れに戸惑う。人工的に地震を起こさせる技術も保留しているのであまり慌ててはいないが、
それぞれが揺れに反応する中、クリスと響の間のアスファルトにヒビが入り一瞬膨らんだと思ったら何かが出てくる。
それは、全身がほぼ紫の両腕が突起のように細長く所々赤く光る4~5メートルはあろうかという怪物のような完全聖遺物。
これが記憶の遺跡に保管されていた自立起動型の完全聖遺物、ゴライアスであった。
ジャガーマンが絶唱を食らう場面は無印4話を参考にしました。
翼がクリスを吹き飛ばしたアレです。
ジャガーマンと言えば最後の断末魔。
ショッカー怪人ってあまり断末魔を言わないからジャガーマンはある意味新鮮に感じました。
シンフォギアのクロスでもジャガーマンを出したら絶対言わせたいと思ってました。
原作のXDの翳り裂く閃光より時間が経ってる設定なのでクリスもマリアもXD軸より一歳年をとってます。
響は響でクリスの「この世界」発言で年齢に気付いてません。
そして原作ではグレ響こと並行世界の響に自己紹介をしたクリスですが、こちらでは本編響に、そして響はうっかり口を滑らせる。
翳り裂く閃光での強敵というかお邪魔キャラといえばいいのかゴライアスが登場。…ショッカーの目の前で、