改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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前回のあらすじ

ギャグマンガ日和のOP風

響「頼れる仲間は本当は知らない人~♪ 顔もシンフォギアも同じだけど本当は知らない人~♪ …泣きたい」


104話 ヒビ割れる絆 ショッカーの大進撃

 

 

 

………此処は何処?

暗くてジメジメしている…周りを見ても誰も居ない…寂しいな…

あっ、クリスちゃん! おおい、クリスちゃん! …消えちゃった…

マリアさん!? マリアさん、此処は一体何処…消えた? 

 

それからも師匠に翼さん、調ちゃんや切歌ちゃんの姿が見えて大声で呼んでみたけどみんな無反応で直ぐに消えちゃう…如何して!? 如何してみんな消えちゃうの!?

 

『それはお前が化け物だからだ』

 

クリスちゃんの声?私が化け物って如何いう事!?私は普通の人間だよ

 

『いいえ、立花響。 お前はショッカーの怪人と同じ化け物だ』

『…人間に化けてるなんて…卑怯』

『二度と私と調に近づかないで下さい!』

『悪いが俺は化け物を弟子にした覚えはない』

 

消えた筈のマリアさんや調ちゃん、切歌ちゃん、師匠まで私を責める

嫌だ…嫌だよ!如何してみんな私をそんな目で見るの?私は人間の立花響だよ!

 

『ねえ、響』

 

あっ、未来!? 未来なら私が人間だって分かるよね!!

 

『響、自分の手とかちゃんと見た方がいいよ』

 

手? 私の手が如何したってナニコレ?

私の手が見たことない金属の塊が!!手だけじゃない、足もお腹も背中も胸も顔も金属の感触が…

 

『ほら響って化け物なんだよ』

 

嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幾つもの機械音が響くと同時に人口の呼吸音が聞こえる。

部屋の中は明るく、ベッドの上には響が眠っており腕には幾つもの点滴が打たれている。

此処は、S・O・N・Gが特異災害対策起動部二課の時代にお世話になった病院であり何人もの医者が響の診察をしていた。

 

商店街で突然倒れた響が救急車で運ばれ手当てを受けていたのだ。

 

「それで、先生。 響くんの様子は…」

「…分かりません、ここまでの急速な衰弱なんて本来はありえない。 もしかして依然読ませてもらった精神リンクの可能性もあります」

 

響が倒れた報告を聞いた源十郎が響の治療を行っていた医者に状態を聞くが、あまり役に立つとは言えなかった。

医者からすれば、響は謎の衰弱しており原因も不明。

 

「精神リンクだと、まさかここまでだとは…」

 

医者から「精神リンクが原因だは?」と言われた源十郎は奥歯を噛み締める。

過去には別の事件で翼やクリスが精神リンクの影響を受けた事があるが此処まででは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは恐らく、響さんの精神が翼さんやクリスさん以上に影響されてるようです」

「あの二人以上…」

 

日本政府から間借りしている仮説本部に戻った源十郎は報告を聞き調べていたエルフナインからそう聞いた。

エルフナイン曰く、響の精神は翼やクリス以上に繋がりやすい可能性だ。

 

「…つまり、向こうの響くんに何かあったと言うのか?」

 

響がこれまでにない程の精神にダメージを受けたのだ。向こうの世界で何かが起きたと考える方が正解だろう。

向こうで何があったかはまだ分からないが源十郎は嫌な予感を感じていた。

 

 

 

 

「あの…私を向こうに行かせてください!!響を助けたいんです!」

 

 

 

今まで二人の会話を聞いていた少女、小日向未来が声を大にして訴えた。

響が倒れてから離れたがらなかった未来だが、響の精神に影響が出たのなら自分が助けに行きたいと訴える。

 

「未来くん、確かに向こうの状況次第では援軍も必要かも知れんが…」

「戦闘経験が浅い未来さんだけでは厳しですね」

 

S・O・N・Gの中で小日向未来だけは未だに経験が浅く、未熟な装者と言えた。

幾ら向こうにクリスとマリアが派遣されてるとはいえ、未来一人だけで行かせられないとも思った。

しかし、

 

「今は翼しか居ないのがな…」

 

響が衰弱して倒れ、調と切歌は未だに入院。となれば、残った風鳴翼だがそうするとS・O・N・Gで戦える装者が居なくなりノイズが出た時に対応が出来なくなる。

せめて調か切歌が復帰するまで待って欲しいのが源十郎の本音であるが、そうなると響の容態は深刻になる可能性が高い。

少数精鋭の辛いところでもある。

 

「せめて誰か一人だけでもつけられれば…」

 

 

 

 

 

「なら、アタシが一緒に行こうか?」

「キミは…!」

 

悩む源十郎の耳にある女性の声が聞こえ振り向くと心強い彼女の姿がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく分らんが、都合よく装者どもが分断してくれたようだ」

 

とあるショッカーアジトにて、廃墟とした商店街で響とクリスの戦闘記録を見ていた地獄大使。

クリスの一方的な攻撃に翻弄される響の姿を笑いながら見ている。

響に向かわせた再生怪人は全滅したが、悪魔祭りがある限り何度でも蘇る。

それよりもクリスの力に注目する地獄大使。

 

「だが、あれは一体何だ? イグナイトは兎も角、あの金色の花が出た後のシンフォギアは? 一見エクスドライブにも見えるが…」

「しかしエクスドライブ程のエネルギーは検出されてません、恐らく別物かと…」

「…アマルガムと呼称されるシンフォギアより、結社で使われる錬金の反応あり」

 

地獄大使の呟きに解析していたショッカー科学陣から報告があがる。

 

「錬金術だと? まさか向こうの世界では結社と組んでいるというのか? それだと少々面倒だな。 まあ此処で考えても詮無きことか、今は一刻も早くシンフォギア装者の抹殺しなければ…装者どもの動きは?」

「イーッ! 雪音クリス及びマリア・カデンツァヴナ・イヴは風鳴翼の見舞いに病院に行ってます。立花響はもう一人の方と外れ雨の中、歩き回っているようです」

 

クリスとマリアは現在、翼のお見舞いに病院に居り、響も単独行動をしている情報を掴んだ。

 

「そうなれば、特異災害対策起動部二課本部もガラ空きか、良し!行け、お前たちの出番だ!!」

 

ブリュリュリュリュッ!!

               ブゥゥーヨンッ!!

  ビリュリュリュッ!!                  

 

地獄大使の命に雄叫びのように声を荒げる怪人たち。

ショッカーの魔の手が装者たちにふりかかる。     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告は聞いている。あの立花響は偽物だと判断したのか」

「…ああ」

 

翼の問いにクリスが短く返答する。

此処は翼の病室…ではなく病院の屋上へと続く階段付近だ。

晴れていれば病院の屋上で日光浴しながら話すのもありだったが天気はあいにくの雨。

とある理由で病室で話す気にならなかったのでこの場所になったのだ。

 

「それで、偽物と思われる立花響を捕まえようとした時に…」

「ゴライアスが出たんだろ?一応報告で聞いている」

 

不機嫌そうにクリスが答えた後にマリアが続けて言い二人の不運に苦笑いを浮かべる翼。

 

「それにしても、その立花響は本当に偽物だったのか?」

「…それについちゃ間違いないと思う。傷を負った時に傷口から金属が見えた。あれは怪人たちと同じ金属だ」

「私もそれは目撃したわ…」

「…その割にはマリアは複雑そうな顔をしているな」

 

偽物だとは思っているクリスだが、マリアは引っかかるものを覚え何か悩んでいる。

短い付き合いながらもマリアの表情で気付いた翼がそう言うと、

 

「…いくつか腑に落ちない点があるのよ。確かに私はショッカーの用意した立花響と元の世界に戻った時、ショッカーに良いように利用された。 …そこら辺記憶が曖昧だけど…」

「らしいな」

「まだ記憶が戻んねえのか?」

 

あの日、ギラーコオロギの殺人音波で操られたマリアだが、操られてる間の記憶が非常に曖昧であり尋問を受けたショッカーアジトの場所すら覚えてはいない。

それでも、響に似た娘が地獄大使と会話している記憶はあった。

 

「僅かだけど、ショッカーに捕まっていた時に立花響の姿は記憶があるけど…違和感を感じるのよね」

「違和感?」

「さっきクリスが戦っていた時の立花響を見て気付いたのよ。 あの時の立花響は地獄大使と何か話していたんだけど、普段の立花響と比べて機械的?な喋り方だったと思う」

「機械的? そりゃあの偽物の中には本物の機械が埋め込まれてるんだろ、今までの怪人も見たことない装置が詰め込まれてたしな」

 

マリアの「機械的」と言う発言にクリスはそう返答する。

クリスとマリアも改造人間と戦う前にロボット兵などとも戦っている。尤も、強さは雲泥の差と言えるが。

響の体から金属片が見えた以上、あの立花響は響のデータから造られたロボットの類だとクリスは考えていた。

 

「…残念だが私はもう一人の立花響と話した事がないから何とも言えないが、不自然なのは確かだな」

「ええ、私たちの目を誤魔化す為にショッカーの怪人と戦っていたにすれば、目的が不明ね。もう一人の立花響を殺すにしても浚うにしても、時間がかかり過ぎている」

 

自分たちがゴライアスの相手をしてる間に態々連れて行ったんだ。好感度稼ぎにしては、おそらくこれ以上ないレベルだろう。

なら、何故いつまでも一緒に行動してるという疑問が湧いてくる。

 

「そりゃ…ショッカーがあの馬鹿を使って何かをやらせる…為? あの馬鹿に向けている殺意もカモフラージュ…にちゃあ高すぎる気がするな」

「どっちにしろ情報が無さすぎるのよね」

 

此処にきてクリスとマリアは自分たちが持つショッカーの情報が致命的に足りない事に気付く。

ショッカーの最終目標は世界征服だが、あるとすればそれだけだ。

何処に基地があり、次の狙いは何か? 地獄大使以外にも大幹部は存在するのか? っといった情報すら無いのだ。

 

「あら?もうこんな時間?」

 

翼と色々話し込んでいたマリアがふと時計を見る。

翼の面会に来た時の時間から2~3時間が過ぎている。

 

「もうそんなに経ったのか、二人もそろそろ本部に戻るのか?」

 

なんてことない翼の質問だったが、二人は目を逸らして何も言わない。

だからと言って帰るそぶりすらない事で、翼の脳内にある考えが浮かぶ。

 

「戻れない、或いは戻りたくないと言うのか? …もしかして本部に来ているのか、お爺さまが…」

 

クリスもマリアも翼の質問に返答せず頷くだけだった。

 

 

 

 

事の起こりはクリスが響と戦った翌日、

外が雨という事で指令室に備えられたソファーでのんびり過ごしていると風鳴一族の長にして護国の鬼、風鳴訃堂の怒鳴り声が二人の耳に入る。

 

『このたわけどもが、ワシの送った人員を消費させるだけでなく、ショッカー一味の立花響を逃がしたそうだなっ!!!』

 

指令室に訃堂の怒鳴り声が響き渡る。

その報告は源十郎のレポートがまだ提出されておらず上の人間は知らない筈だが、恐らくは訃堂のシンパである誰かが流したのだろうと深く考えるのを諦める源十郎。

 

「ま、待ってください。あの立花響くんがショッカーの一員だというのはまだ確証を得てません。それにショッカーの怪人たちも手強く装者意外が相手ですと消耗は避けられず…」

『風鳴の血を引く男が言い訳をするなっ!!どうやら本当にワシの教育が悪かったようだな、今日は直々にそっちに行って一から鍛えてやるわっ!!!』

 

源十郎が何とか訃堂の怒りを鎮めようと訃堂に説得するが、余計に怒らせただけでモニターには訃堂の怒りの顔がアップされ途切れる。

それを見ていた職員の中に「うわあ~」という声も聞こえた。

 

その後、巻き込まれるのは勘弁だとしてクリスとマリアは訃堂が到着する前に避難。

翼の見舞いに来ていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まぁ私もあと少しで退院出来る。その時にでも立花響と話をしてみたいな。 後の話は病室でしないか?」

 

取り敢えず本部に訃堂が来たことは考えない事にして二人にそう呼びかける翼。

尤も、翼の提案にクリスとマリアがジト目になる。

 

「あの部屋かよ…」

「翼…あんたは掃除って言葉知ってるかしら?」

「何だ?二人とも、慣れれば快適なんだぞ!」

 

二人は知っている、翼の病室は物が溢れ散らかっている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、

私立リディアン音楽院にて、体操服を着て通路を歩く三人の生徒が居た。

その顔はどれもが見知った顔をしており、この世界の安藤創世、寺島詩織、板場弓美の三人だった。

 

「うわ~、雨が酷くなってるよ」

「こんな時に体育って嫌よね…」

「フフフ…場所は体育館ですから」

 

時間的余裕があるのか三人はのんびりと歩きながら喋る。普段から下らない話やファッション、時にはアニメの話で盛り上がったり引かれたりしている。

 

「そう言えばさ、ウチのクラスの子がまた休んでるとか」

「最後に見たのは何時でしたっけ?」

「確か…二週間位前じゃない? 確かあの時はテレビで「電光刑事バン」の復刻スペシャルで憶えていたし」

「…その子、進級出来るの?」

 

詩織と弓美の言葉に苦笑いした顔をしてそう言う創世。

何故か、教師たちがあまり問題にしていないが、一般的に考えれば其処まで不登校だと心配になってくる。

 

「ん?あれって…」

 

不登校の生徒の話をしていた三人の内、弓美が窓の外を見て呟いた。

外は相変わらず雨が降っている。

 

「どうしたんですか?」

「なに、犬でも見つけた?それとも電光刑事バン?」

「アンタ、あたしの事何だと思ってる? そうじゃなくて、あれ!」

 

弓美が窓の外に向かって指を刺す。

雨の所為で見え難かったので創世と詩織が窓に寄りかかったやっと弓美が見た物に気付いた。

 

「え?」

「お坊さん?」

 

それは、雨の中錫杖を突き三度笠を被った坊さんが着る袈裟のような物を着た三人組だった。

 

「きっとあれよ、虚無僧って奴」

「…いえ、虚無僧とは深編笠という顔を完全に覆った編み笠のような物を被っていて尺八を吹いている人の事です。あれはどっちかと言うと怪僧かと」

「で?その怪僧がなんでうちの学園に?一応先生に知らせてくる」

 

弓美と詩織が虚無僧やら怪僧とか話し、創世は怪しい人物が学園に入ってきた事を教師に知らせる為に廊下を走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シトシトと雨が降り注ぐ街。

空は昼間にも関わらず雨雲によって太陽光は遮断され薄暗くなっている。

こんな日は余程の事情が無い限り、外を歩き回る者は皆無と言える。特に廃墟付近には…いや一人だけ居た。

雨の中、傘も刺さずカッパの類も来ていない少女の影。響だ。

クリス達と敵対したショックで一晩中泣いていた響は一人になりたくてヒビキに黙って雨が降る廃墟を歩いていた。

 

━━━…如何してこんなことになっちゃったんだろ?

 

靴には既に大量の雨水が入り体も雨で濡れた服が体に張り付くが、響はそれを無視する。

頭の中では、如何してクリス達と敵対したのか、如何して戦っても辛いままなのか様々な事に悩んでいた。

 

━━━クリスちゃんやマリアさんは私の知っているクリスちゃんとマリアさんじゃなかった。 もう一人の私にも体の事を知られてしまった。 結局、私はあの頃と何も変わってないのかな…

 

響は思い出す。

嘗て、ショッカーのアジトから逃げ出し戦闘員の追っ手を躱しつつ過ごした響を、数日もしない内に師匠である風鳴源十郎に保護され特異災害対策起動部二課に入った事を。

 

━━━今更気付いたって、特異災害対策起動部二課に入れるわけ無いよね…体の事を知られた以上、もう一人のワタシとも一緒に居られない…久しぶりだな、独りって…

 

思い出すのは嘗ての雨の日。

未来が風邪で休み傘を隠され濡れて帰ろうとしたあの日だった。

 

━━━そっくりだな、あの時と…でもあの時はまだ生身の人間だったんだよな…それに比べて今のわたしは…

 

 

 

「あれ~、可愛い子発見♪」

 

物思いに耽っていた響の耳に男の声が聞こえた。

視線を向けた先には傘も刺さず派手な色をしたパーカーを着た男が二人いる。

一人は、パーカーから見える茶髪で鼻や耳には幾つものピアスをしており、もう一人の男は響を値踏みするように見て風船ガムを噛んでいて片手にはバットが握られている。

 

「彼女~、一緒にお茶しない。おススメの店があるんだよ!」

 

茶髪の男が響をナンパする。

響は知らないが、彼等はこの一帯の廃墟にチームを持つ半グレ集団の一員だ。

殺し以外の犯罪は一通りやっており警察もマークしている要注意集団としても知られている。

響をナンパしたのも上手く連れ込み集団で襲う為だ。

 

「しない」

 

男のナンパを響は拒否する。

響の心境もそうだが、男たちの雰囲気がかなり怪しいと響も感じてた。

例え、並行世界の人のいい響でもこのナンパは断るだろう。

そのまま響は二人の男の前から去ろうとするが、

 

「待てよ、このアマが」

 

バットを持っていた男が響の腕を掴む。男にとって茶髪の仲間のナンパが成功しようが失敗しようが如何でもいい。

断るなら無理やりにでも自分たちの拠点に連れて行く。

今回は男はそうしようとしていた。

 

「あってっちゃん、もう力づく?」

「お前のは手間がかかるんだろうが、さて一緒に行こうぜ」

「…放してください」

「お、結構上玉じゃねえか。 裏にでも流しても儲けが出そうだな」

「離して!」

 

男が下種な事を言って薄ら笑いを浮かべた時、響は少し力を入れ腕を振る。

パシッっという音と共に男の腕が離れた。

 

「あ~あ、折れちまったじゃねえか。治療代出して貰わないとな」

 

しかし、男はヘラヘラした顔をしてそう言う。

当然ながら普段の男なら骨折どころか傷一つない。相手にイチャモンをつけ金を奪ったり強引に連れて行く男の常とう手段の一つだ。

だが、それは普通の人間での話だ。

 

「てっちゃん!てっちゃん!!」

「何だ、五月蝿ねえな」

「手…てっちゃんの手が!」

「手が如何し…はっ?」

 

慌てる相棒の言葉に男が手の方を見る。響の腕を掴んでいた腕の関節が曲がってはいけない方向に曲がっている。

男は直ぐに理解出来なかったが、折れた腕に急速に痛みが走り、これが現実だと知る。

 

「イ、イデェよ、俺の…俺の腕が!!」

「ば、バケモンだ! 早く逃げようてっちゃん!!」

 

居れた腕を押さえ涙と涎で叫ぶ男を茶髪の男が誘導するように移動させる。

もうナンパとか拉致とか如何でもいい、この痛みを消す方が先だと響を無視して茶髪の男は手を振っただけで相棒の骨を折った響に恐怖心を抱き、一刻も早く離れて行った。

 

因みに余談であるが男たちのグループはショッカーにも狙われ怪人の素体として拉致されていたりする。

 

その場に静寂な空気が戻り雨音しか聞こえなくなった。

響は男を振り払った手を見て溜息をつく。

 

「…化け物…か、改めて言われると傷つくな…」

 

男の手を振り払った自分の手を見る響。

そこまで力を入れたつもりはない、寧ろ目の前を飛ぶ羽虫を振り払うようにしたつもりであったが、それだけでも大の男の骨が折れてしまった。

 

「あはは…今日は…力加減が上手くいかないな…」

 

試しに響は地面に落ちているアスファルトの破片を持ってみると一瞬で粉々に砕け散った。

響自身も其処まで力を入れていたつもりはない。恐らく、響の感情で力の制御が上手くいっていないのだろう。

 

━━━こんなんだからクリスちゃんも私の事を偽物扱いしたんだもんね。 何で私だけこんな目に合うんだろう

 

響の心には幾つもの思いが渦巻く。

本人も知らない内に、それは徐々に大きく育っていく。

 

━━━私は一度だってこんな力、望んだことなんてない。 機械の体なんて欲しくなんてなかった、それなのにクリスちゃんたちには敵視され、もう一人のワタシにも…

 

独り雨の中で立ち尽くす響。

その時、瓦礫の一部が落ちる音がして目線を向ける。

 

━━━そうだ…全部全部…全部全部全部全部全部全部…

 

「お前たちの所為だ…」

 

何時の間にか響を取り囲むように居る戦闘員たち。

その手には短剣や槍が握られ今に響を襲う腹積もりだったのだ。

 

響は直ぐに聖詠を口にしシンフォギアを纏う。

その顔は天気の所為か酷く黒く見え響の表情も見えない程だった。

 

 

 

 

 

 

そして、同時刻、

 

 

 

「本当に立ち寄らないのか?お茶位は出すぞ」

「いや、いいって!」

「退院した時にでも頂くわ」

 

翼が自分の病室の前で二人にお茶でもと言うが、二人は頑なにそれを拒否しその場を後にする。

残念な気持ちの翼だが、病室に戻ると自身の着替えを踏んで少し慌てる。

 

「いかんな、防人として早く退院しなければ…」

 

思わず独り言を言う翼。

本来なら、この独り言に反応する者は病室内には居ない筈だが、

 

「退院出来るといいなっ、風鳴翼!!ブリュリュリュリュッ!」

 

「!?」

 

突然、不気味な声と共に病室の電気が消えてしまう。

外は未だに雨が降り、昼間と言えど部屋の中は暗かった。

 

翼が咄嗟にシンフォギアのギアであるペンダントを握ろうとしたが、

 

「!? しまった」

 

入院中ともあり今日は偶々外していた。

キッと部屋の中を睨む翼だが、後ろ手でドアを開こうとしたが、

 

━━━くっ、ダメか!

 

既に病室の扉は開くことなく翼の力でも無理だろう。

 

薄暗い部屋の中で不気味な影が動き出す。

 

「ブリュリュリュリュッ! 探し物はこれかな? 風鳴翼!」

 

「姿を見せたらどうだ?ショッカーの怪人め」

 

不気味な影の手からシンフォギアのギアであるペンダントの影が写る。

シンフォギア装者の命ともいえるペンダントを盗られた翼は額から汗が流れながらも敵の姿を確認しよとする。

 

「見たいか?風鳴翼。 丁度いい、この病院で無事なのは貴様たち装者だけだ!」

 

ベッド脇から黒い影が飛び出し翼へと迫る。

 

「しまっ!?」

 

飛び出した怪人に首根っこを掴まれた翼は首筋に鋭い痛みを感じると共に意識が途切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処が特異災害対策起動部二課の入り口だな、行くぞ」

 

私立リディアン音楽院のある通路。

三人の僧たちの前に見える扉。特異災害対策起動部二課の本部に繋がるエレベーターだ。

私立リディアン音楽院に堂々と侵入し、アッサリとエレベータ前に来たのだ。

 

「待ちたまえ、君たち!」

 

その時、通路奥から警備員が来た。

創世達が教師に教えた後に教員たちが警備員を送ったのだ。目的は当然、学園の関係者でもない者を追い出す為。最終的には警察に連れて行く事も視野に入れている。

 

「ダメだよ、此処は学院の関係者以外立ち入り禁止だ」

「直ぐに退去してもらう。ごねるなら警察に通報しますんで」

 

「警察ですか……ふっふっふっふっふっ!」

 

警備員たちの退去命令に僧の一人が笑いだすと共に被っている三度笠で自信の顔を覆う。

そして、ほんの一瞬の内に三度笠を取っ払う。

 

「やれるもんならやってみろ! ブゥゥーヨンッ!!」

 

三度笠を取っ払った僧の顔が巨大な赤い複眼と鋭利な口をした怪人になった。

 

 

 

 

 

 

 




祝、前回の話で感想が初の二桁!

響に無印の頃のように再び暴走の兆候あり。理由は多分、情緒の不安定。
向こうの世界に行きたい未来に同行をしようかと言ったのは誰なのか?

今回のショッカーはクリスと翼の居る病院、装者が留守の特異災害対策起動部二課の本部、孤立した響の居る場所。と三か所の同時攻撃です。

海蛇男の回のように一か所ずつやるつもりです。


次回予告
マリア「私たちが病院を出ようとした時、出入り口が何時の間にかシャッターが下りて入院患者やお見舞いに来ていた人たちが突然私たちを襲いだす。
ダメよ、クリス! イグナイトやアマルガムを使えば一般人を巻き込んじゃう! 翼、アナタの力を…翼?
次回「吸血人間になった翼」ご期待ください」


ps
シン・仮面ライダーの賛が多いので今度見に行ってみます。
…映画代、もう少し安くならないかな…
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