改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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106話 恐るべき死の吸血魔 がんばれ!マリア

 

 

 

病院内、最早待合室の機能を失ったホール。床には瓦礫が散乱し椅子の破片も転がっている。

その中で幾つもの金属音が響き、火花が飛び散る。

 

マリアの短剣とシラキュラスの注射器がぶつかり合い発生した火花だ。

戦いはシラキュラスの溶解液と力に苦しむマリアが明らかに押されている。

 

「ならっ!」

 

短剣を蛇腹状態にしたマリアは、その剣を操り鞭状にしてシラキュラスを攻撃し体に巻き付け動きを止めようとする。

拘束さえ出来れば、瓦礫に埋まったクリス達の捜索をと、考えている。

マリアの目論見は上手くいき、蛇腹剣がシラキュラスの体に巻き付く。

 

━━━よし、これなら

 

自身のシンフォギア、アガートラームがシラキュラスを捕らえた事に安堵するマリア。

だが、

 

「こんな物で俺を捕らえたと思ったか!?」

 

アッサリと体に巻き付いた蛇腹剣を弾き返し、拘束を解く。

それどころか、弾かれた蛇腹剣を握り一気に引っ張るシラキュラス。

 

「なっ!」

 

予想外な事とシラキュラスの力の前にマリアの体はなすすべなく足が床から離れシラキュラスの方に引っ張られる。

そして、シラキュラスの方に引っ張られたマリアはそのまま右腕で首を掴まれる。

 

「如何にシンフォギア装者と言えど、所詮は女だ。 人間を超えた改造人間の力に敵うと思うな!」

 

「ぐっ、舐めないでもらえるかしら? そんな女にアンタたちの仲間は大勢やられてるのよ…」

 

シラキュラスの言葉にマリアは苦しそうにも笑ってそう答える。

鳴いて許しを請うかと思っていたシラキュラスもこれには驚く。

 

「女性軽視なんて今時古臭いのよ、さっさと手を離して貰えるかしら?」

 

「ふん、随分と肝が据わっている。ならば!」

 

何を思ったかシラキュラスはマリアは床に叩きつける。

叩きつけられたマリアは口から血を吐き、マリアの周りの床にはヒビが入る。

 

「な…なにを…」

 

「お前のような奴は直ぐに殺しては面白くない。 自分だけ助けてくださいと命乞いしろ!」

 

シラキュラスの言葉に「そんなこと…」と言おうとしたマリアだったが直後に腹部に痛みと圧迫を感じ言葉が出なかった。

見れば、シラキュラスの足に吐いてある黒いブーツがマリアの腹部にあった。

 

「どの位耐えられる?女!」

 

それからというもの、シラキュラスは何度もマリアの体を踏みつける。

踏みつけられる度にマリアの口から血が飛び散り、シンフォギアの装甲にヒビが入り水色のインナーにも亀裂が入る。

辛うじてマリアのシンフォギアアガートラームがマリアを守っている。

もし、シンフォギアが無く生身で受ければマリアの腹部は破裂し内臓が飛び散っていただろう。

 

「そらそらッ! 命乞いしろ、自分だけ助けてくださいと言ってみろ!!」

 

最早勝負は決した、そう判断したシラキュラスはひたすらマリアを甚振る。

仲間を殺られたのもあるが、シンフォギア装者のプライドを圧し折り涙と鼻水を垂らし命乞いさせたい欲望が芽生えたのだ。

何よりも、シンフォギア装者に命乞いさせればショッカーでも一目置かれ地獄大使に次ぐ大幹部になれるかもしれない。

 

そして、何度目かのシラキュラスの踏みつけがマリアを襲うが寸での所でシラキュラスの片足を払い脱出、一瞬態勢を崩したシラキュラスも直ぐに立て直す。

 

「ちっ、まだ心が折れんか…」

 

「私の…信じる…正義…の為にも!」

 

心が折れなかった事にシラキュラスは残念に思うが、そろそろ始末するかと切り替える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、強い!?」

 

「このシラキュラス、搦め手だけと思うなッ!!」

 

マリアがシラキュラスの腕から脱し、またもや短剣と注射針が激突する。マリアの短剣を弾いてシラキュラスの針がマリアの顔に迫る。

 

すんでのところでシラキュラスの注射器を回避したマリアだが、シラキュラスの右腕がマリアの長髪を掴み壁に叩きつける。

壁に背中を強打し血を吐くマリアだが、腹部にシラキュラスの足が押し付けられた。

 

「ゴフッ!」

 

「もう命乞いなど如何でもいい、俺の注射針でお前を刺し殺してやるッ!! お前が死ねばこの世界の特異災害対策起動部二課に協力するシンフォギア装者は全滅だ! 貴様の世界のS・O・N・Gも直ぐに滅ぶ!俺たちの天下がくるのだ!!」

 

シラキュラスの力がマリアの想像を超えていた。

単純な強さもそうだが、溶解液と血を吸った人間を操る能力に大苦戦を強いられ遂に追い詰められる。

強さもそうだが、残忍性すら今までの敵対組織を上回る存在にマリアは肝を冷やす。

 

何とか脱出したいマリアだが、体力は消耗しシンフォギアもボロボロの状態では難しい。

覚悟を決めるかと考えたマリアの耳に瓦礫を踏む音が聞こえた。

 

「…翼?」

 

もしやクリスが援護に来てくれたかと期待したマリアの目に埃だらけの翼の姿が映る。

その手にはアームドギアの剣が握られ、まだ戦う気かも知れない。

 

「ん? 何だ、まだ生きてたのか。 まぁいい、この小娘を始末した後処理すれば済む」

 

チラ見で翼の存在を確認したシラキュラスは、最早翼に興味はない。

後で始末する為にその場で待機しろと言い、マリアに向け左腕の注射器を向ける。

マリアを刺し殺す気だ。

一気にトドメを刺そうとするシラキュラスの左腕がマリアの目にはやけにユックリに見えた。

 

━━━私はここまでなの? ゴメンね、セレナ、マム…調や切歌を最後まで守れなくて…

 

マリアが死を覚悟した時、シラキュラスの背中から爆発が起こり、突然の衝撃により腕の力が弱まりマリアはシラキュラスの腕から脱出する。

突然の事に驚きマリアが目を白黒させる中、シラキュラスが悲鳴を上げ剣を構えた翼が確認できる。

 

シラキュラスの背中を攻撃したのは翼だった。

よく見れば翼の口にはあの牙が消えている。

 

「か…風鳴翼っ!! 貴様、自分が何をしたのか分かってるのか!?」

 

「…私が何をしたかと?当然分かっている」

 

━━━操られてる翼がシラキュラスに逆らってる!?ッというか喋った!?

 

マリアの驚きも何のその、翼は更に言葉を続ける。

 

「よくも防人の私を操ってくれたな! あまつさえ友を攻撃させたな!!」

 

「き、貴様…まさか正気に戻ったと言うのか!?」

 

翼の敵意がシラキュラスに行き、言葉を発した事により正気に戻った事に気付く。

その姿にシラキュラスはパニックになる。

 

「馬鹿な、吸血人間と化した人間が自力で戻るなどありえん! いったいどうやって!」

 

 

 

 

 

 

「おっと、間に合ったな」

「ク…クリス?」

 

翼が正気に戻ったのならと、シラキュラスは右腕で人質にしようとマリアの首を掴もうとしたが、すんでのところでクリスがマリアの手を引き移動しシラキュラスの右腕が空ぶる。

クリスが無事な姿を見てホッとするマリア。

 

「雪音クリス!? 貴様まで生きていたのか! しかしどうやって…」

「これな~んだ?」

 

マリアを盾にしようとしたが、クリスの姿も確認したシラキュラスが更に慌てる様に言うとクリスは何処からか取り出した瓶を笑いながら見せる。

マリアから見てもクリスの笑顔は輝いているように見えた。

クリスが揺らす度に瓶の中身の青い液体が揺れラベルにはご丁寧に「解毒剤」と書かれている。

 

「ク…クリス、まさかそれを?」

「まぁ、アタシも怪しいとは思ったけどな…」

 

「そっそれは吸血人間の解毒剤!?何故貴様がソレを!」

 

どう見ても罠にしか見えない解毒剤にマリアは呆れた顔をしてクリスを見る。

尤も、シラキュラスの今まで以上の慌てように中身は本物のようだ。

 

 

 

 

 

 

クリスと翼がマリアと合流する少し前、翼が天ノ逆鱗で乗員の待合室の床を粉砕した時まで遡る。

 

「イツ…ツツ…此処は?」

 

翼の天ノ逆鱗で瓦礫に呑まれたクリスが意識を戻した時に周囲を見渡す。

病院の地下施設なのかタイル張りされた部屋で電灯がチカチカと点滅を繰り返す。

ふと横を見れば共に落ちたのかシンフォギア姿の翼が気を失っている。

 

「落ちた衝撃で気絶したのか?それよりマリアは無事か?」

 

何処か破損したのか室内灯が点滅を繰り返し、正直目に良くない室内だがクリスが他にも視線を送る。

マリアの姿は見つからず共に落ちていない事にホッとするクリスだが、予想外の物が見つかった。

 

「戦闘員? それにしちゃ白いが…」

 

何時のも戦闘員とは違い白い恰好をした戦闘員が倒れていたのだ。クリスは知らないがショッカー科学陣の一人だ。

恐らくは地下をぶち破った際に瓦礫に頭をぶつけたのかも知れない。

そして、クリスは棚も一緒に見つける。

 

「此処にショッカー戦闘員が居るなら何かあるかも知れねえな…解毒剤?」

 

棚にある幾つかの瓶を見ていく内にクリスは解毒剤と書かれた瓶を見つける。

中には毒々しいまでの青い液体が並々と入っている。

 

「…本物か?」

 

もしかすればショッカーの罠の可能性もある。

如何するべきか悩むクリスの耳に翼の声が聞こえ横目で見ると目覚める寸前だと気付く。

 

「………よし!」

 

このまま目覚め暴れられるならと意を決したクリスは解毒剤と書かれた瓶の蓋を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っとそんな感じだ」

「一か八かにも程があるわよ!」

 

クリスの説明にマリアはやはり呆れた顔をする。

一歩間違っていれば…解毒剤がただの毒物だったら翼の命は無かっただろう事は想像に難しくない。っというか、ショッカーならやりかねない。

此処は馬鹿正直に解毒剤の名を書いた戦闘員に感謝でもしとくかと思うマリア。

 

「馬鹿な、確かに病院地下には我々の保管庫が置かれていたがノーマルのシンフォギア装者の技で其処まで行ける物か!?」

 

ラキュラスの言葉通り、この病院の地下にはショッカーの基地が造られ其処にシラキュラスの解毒剤が保管されていた。

しかし、普通の病院の通路では辿り着けず、隠し扉と隠し階段を経由しなければ辿り着けない。

 

その筈だったが、計算を狂わせたのは皮肉にもシラキュラスの溶解液だった。

あの雨の様に降らせた溶解液で床の耐久力は大幅に下がり、通常では風鳴翼の天ノ逆鱗でも此処まで来ることは不可能だった場所がクリスが辿り着いたのだ。

 

シラキュラスに操られていた翼が解放され三対一の戦況になるクリスたち。

しかし、シラキュラスの攻撃に三人は押され出す。

 

「元に戻ったなら仕方ない!お前も死ねっ風鳴翼!!」

 

翼の剣劇を受けようが構わず突っ込んでいくシラキュラスの左腕の注射器が翼の頬を掠める。

その注射器に何かが巻き付く、マリアの蛇腹剣だ。

 

「翼、一旦距離を!」

「分かった!」

 

「馬鹿の一つ覚えみたいにまたコレか、小娘がッ!!」

 

シラキュラスは先程と同じく蛇腹剣を掴みマリアを体ごと引っ張うとする。

だが、直後に自身の真横から殺気を感じたシラキュラス。

見ると、剣を片手に翼が突撃して来る。

マリアが距離を取れと言ったのはブラフだった。

 

「チィ!」

 

マリアの蛇腹剣を引っ張るのを断念したシラキュラスは右腕で翼の剣を受け止める。

アッサリと自身の剣を握られた翼は眉を顰めた。

 

「捕らえたぞ、風鳴翼! 今直ぐお前の血を…グワーッ!?」

 

そのまま注射器を翼に向けるシラキュラスだが、直後に背中から爆発が起こると共に悲鳴を上げ右腕が緩む事で翼が脱出する。

翼が、煙を上げるシラキュラスの背を見た後に攻撃した者を見る。

腰の小型ミサイルポッドが開いたクリスが居る。

 

「よっしゃ、効いた!!」

「奴の弱点は背中よ、背中を狙え!」

 

今まで、攻撃の殆どが効かなかったシラキュラスにダメージが入った事で弱点を看破したマリアはクリスと翼にシラキュラスの背中を狙うよう指示を出す。

その後、三対一という数の利を生かすマリアたちにシラキュラスへのダメージが加速する。

 

マリアに背を向ければ蛇腹剣が飛び、クリスに背を向ければミサイルや弾丸が降ってきて、翼だと斬撃が来る。かと言って壁を背にすればクリスもマリアも翼も遠距離攻撃でシラキュラスの体力を削っていく。

当初の余裕は何処に行ったのか、シラキュラスの口から焦りが漏れ出す。

 

「き…貴様ら、羽虫みたいに!」

 

「あら? さっきまでの威勢は如何したのかしら?」

「何時も数で来るお前たちに言われたくない」

「もう、負け犬の遠吠え以下だな、シラミ野郎!」

 

三人の動きは、ハッキリ言って急増のチームワーク程度の動きだ。

それでも、シラキュラスを翻弄しダメージを与えるには十分と言えた。

 

「ええい、こうなれば!」

 

自身の不利を感じたシラキュラス右腕を上げる。

直後に何人もの戦闘員が二階から降りてきてクリス達に迫る。

 

「いまさら戦闘員か!」

「でも、それは悪手だったわね!」

 

「何ッ!?」

 

シラキュラスの判断は確かに悪手であった。

これがまだ、シラキュラスが血を吸った吸血人間ならばマリアたちも慎重に動き隙も付けた。

だが、戦闘員ではマリアたちの動きに隙が無く次々と倒れていく。

更には、

 

「くらいなっ!」

 

クリスが小型ミサイルで戦闘員ごとシラキュラスにミサイルを撃ち込む。

戦闘員の陰でミサイルの発見が遅れたシラキュラスに防ぐことも避ける事も間に合わない。

 

それはクリスの攻撃だけでなく、マリアの戦闘員を搔い潜りシラキュラスに迫る蛇腹剣や吹き飛んだ戦闘員を盾にしシラキュラスに見えないよう斬撃を叩きこむ翼。

 

「ぐっ、こうなれば!」

 

「逃がすか!」

 

戦闘員が壊滅すると同時にシラキュラスはジャンプして壁を蹴り、吹き抜けの階を上る。

クリス達も逃がすまいと後を追う。

シラキュラスの通る通路に弾丸や青い斬撃が放たれ病室のドアや病院の付属品が壊れていく。

内心、翼が院内の人に詫びを言うが今はシラキュラス打倒を優先していた。

 

 

 

 

扉が強引に開かれドアが破損する。

そんな事お構いなしに」シラキュラスが外へと出てきた。

病院の屋上だが、空には未だに雨が降り雨粒がシラキュラスの体を揺らしていく。

シラキュラスの目的はただ一つ、屋上に隠された爆弾の起爆スイッチだ。

病院は爆破しシンフォギア装者を巻き込む、例え生き残ろうが爆破した混乱で一旦撤退し機会を待つつもりだ。

 

━━━クッソッ! 万が一にも装者たちに見つからないよう屋上に置いていたのが仇になった!

 

「起爆スイッチ! あれさえ押せば…」

 

「其処までだ!」

 

屋上を移動しようとしていたシラキュラスの耳にマリアたちの声が聞こえる。

丁度、マリアとクリスと翼が屋上に来たのだ。

 

「しつこい連中だ!」

 

「しつこくて結構!」

「外道を許す訳にはいかん!」

「関係ねえ奴らを巻き込んだ事、忘れてねえからな!」

 

最早、起爆スイッチを探す暇もない。

シラキュラスは再びクリスとマリア、翼との戦闘に入る。

 

戦闘はほぼ一階での焼き直しといえた。

三人の連携にシラキュラスの体には幾つもの傷を負い、特に背中を中心で攻撃される。

 

「に…人間如きが…」

 

「まだ言うか!」

「その人間にアナタは敗れるのよ!」

「人を舐めるなよッ!!」

 

未だに人間を下に見るシラキュラスの声に三人が反論する。

人を操り、翼を操り、自分たちに襲わせ多くの被害者を殺害したシラキュラス。それが彼女たちには許せなかった。

 

「ほざけっ! 世界は我らショッカーの物だ、ウジ虫にも劣る人間如きが…」

 

「…此処まで性根の腐った奴は初めてだ」

「…もう喋らないで」

「お前と語る舌なんて持たん!」

 

シラキュラスの最後の声に三人は静かにキレていた。

自分勝手な言動、他人の命に何の興味もない、必要ならどんな汚い手でも使う。

クリスの脳内には話し合いが好きな少女も即殴り飛ばすだろうと結論付ける程の極悪さ。

 

その後、一瞬の隙を見逃さなかった翼がシラキュラスの片腕を切り落とし、クリスも続いてミサイルを撃ち込む。

ミサイルはシラキュラスに直撃し、吹き飛ばされたシラキュラスは宙に舞いそのまま屋上から落下していく。

 

 

 

リュ

リュ

リュ

リュ

!!

 

鳴き声が小さくなると共に外から何かが落下した音がしクリス達が様子を見る。

丁度、地面に激突したシラキュラスが口から赤い泡を吐き、それが自身の体に触れていく。

シラキュラスの体が液状化していく。

 

「溶けてる?」

「自身の溶解液で溶けてるわね、皮肉なものね」

「気持ち悪い奴は最後まで気持ち悪かったな」

 

自身の溶解液が暴走してるのか、単に機密保持の為に仕込まれていたのかは分からないがシラキュラスの体が完全に液状化し爆炎を上げ黒い煙が空へと舞う。

暫く、その様子を眺めていたクリス達だがサイレンの音が近づいてくる事に気付く。

 

「パトカーと救急車?」

「アタシらが呼んだんだよ」

「シラキュラスの洗脳から解かれた時に連絡を入れた。やっと来てくれたようだな」

 

クリスと翼が事前に呼んでいる事を知ったマリアが安堵する。

 

到着した警官隊と救助隊は封鎖されていた病院の出入り口を抉じ開け突入。

操っていたシラキュラスが倒れた事で昏睡している被害者の救助、別の病院への移送が始まる。

持っていた解毒剤を後で救助隊に渡すかと考えるクリス。

現物がある以上、量産もそう難しくないだろうと考えている。

 

「兎に角、終わったわね」

 

そう言ってマリアが空を見る。

相変わらずの雨で雨粒が体を濡らすが、シラキュラスとの戦闘で火照った体には丁度良かった。

見れば、薄暗い雨雲から太陽の光が漏れている。恐らく、もう直ぐ晴れていくだろうと考えていた。

 

ズズズズッ…!!

 

「「「!?」」」

 

突然の轟音に三人が音のした方を見る。

視線の先には水の混じった砂埃が天高く待っている。

 

「アレって…」

「学園の方かよ!」

 

その場所こそ、私立リディアン音楽院があり特異災害対策起動部二課本部のある方だった。

 

「だが、何故あの場所が…」

「! シラミ野郎がオッサンたちも後を追うって言ったやつ!」

「あれは、私たちを片付けた後で自身が行くわけじゃなく、もう別の奴が行っていた!?」

 

クリスもマリアもシラキュラスとの戦闘の時に「源十郎たちも後を追う」とは聞いていた。

だが、それは自分たちを殺した後にシラキュラス自身が特異災害対策起動部二課に行くのだと思っていた。

だからこそ、二人はシラキュラスを倒した事で安堵していたのだ。

 

「クッ…!」

「うっ」

「如何した、二人とも!」

 

別の怪人が本部を襲ってる事を知ったクリスとマリアだが、直ぐに本部に向かおうとした時に眩暈を起こして床へとへたり込む。

その様子に翼が心配そうに声を掛ける。

 

「こんな時に疲労かよ…」

「シラキュラス相手に力を使い過ぎたかしら…」

 

クリスとマリアはイグナイトもアマルガムも使えない中、シラキュラスとの激闘により疲労困憊。

特に、一般人を盾にした吸血人間の所為で精神的疲労も大きかった。

これが戦っている最中なら良かったのだが、シラキュラスを倒した事で一気に緊張の紐が緩み疲労が一気に押し寄せた。

暫く、二人は戦力にならない。

そんな二人の様子に翼は一人頷く。

 

「私が行こう、二人は休んでてくれ」

「…それしか無さそうだな」

「悪いわね、翼。 少し休んだら追いつくから…無茶はダメよ」

 

二人の返事を聞いた翼は手摺から乗り出し下へと降りる。途中壁を蹴って落下しつつ移動し学園へと急ぐ。

屋上で休むクリスとマリアは翼の姿を黙って見ていた。

頬に当たる雨粒がやけに冷たく感じていた。

 

 

 

 

 




次、本部襲撃編。

話の都合上、病院の地下に解毒薬を安置。
原作のように別の廃病院だと話が作りにくかった…
物語を早くする為に解毒剤にもラベルを貼りました。原作の様に白戦闘員が持って逃げると原作とほぼ同じになると思って。

怪人図鑑によれば、シラキュラスの弱点は背中らしいです。
因みに、弱点を突かなかったら三人がかりでも危険な相手です。
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