改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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やっと吉井ダン先生のシンフォギアの漫画を揃えた。

原作通りとはいえ原作通りだけど、打ち切りみたいな終わり方だな…


108話 不器用な親子

 

 

 

何発もの銃声が響く指令室。

その場にいる全ての人間が一点に向け銃撃している。

指令室の空気は完全に煙に汚染され何人もの人間が咳き込むが未だに銃を撃ち続ける。

やがて弾が尽きたのか少しずつ銃声が減り最後に源十郎が撃っていた銃からカチカチと言う引き金音しかしなくなった。

 

何人かの息遣いと機械音が聞こえる室内で不思議な静寂さ辺りを支配して。

敵はノイズの様に弾を素通り出来ない。幾つもの弾丸が当たり人間なら原形すら溜めてない程の銃撃だった。

誰もが息を呑む中、指令室の煙が晴れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~…終わったか?」

 

そんな中、標的だったモスキラスは五体満足どころか傷一つ追っていない。

誰もが絶望する中、源十郎は一人打開策を考えていた。

 

━━━やはり普通の拳銃は勿論、小銃も駄目か!徹甲弾の申請を却下されたのは痛いな…

 

本来なら特異災害対策起動部二課は武装を小銃だけでなく威力の高い徹甲弾も申請していたが、日本政府が却下したのだ。

元々銃に対する拒否感もあるが、紛失や犯罪組織に横流しされる可能性がある、ということで拒否された。

勿論、特異災害対策起動部二課は政府の機関、国の決定には従わねばならない。

 

━━━徹甲弾ならまだ有効かも知れんかったものを!

 

この時ばかりは、源十郎も自分たちの申請を却下した政府役人を恨まざるえなかった。

 

「さて…嬲り殺しと行こうか!」

 

特異災害対策起動部二課職員たちの銃撃が止むや、次は自分の番だとモスキラスが動き出す。

モスキラスの姿が一瞬消えたように見えた源十郎の前にモスキラスの顔が映りこむ。

直後、首への圧迫感と脚が浮遊してる感覚が襲った。

源十郎の首はモスキラスに握られ宙に浮かされていたのだ。

 

「ぐわッ!?」

「指令ッ!」

 

「先ずは一人目だ、風鳴源十郎の首を圧し折ってやるッ!!」

 

先ずは源十郎を亡き者にしようとするモスキラス。

自分たちの世界より弱い源十郎は改造人間にする魅力もない。聞けば特許も取ってる発明家らしいが調べてもショッカーの興味を引く物はない。

利用価値もない邪魔者など抹殺するに限る。

 

源十郎の首を絞めてるのを見ていた職員も何とかしようとする者もいた。

銃に弾を補充してモスキラスの腕を撃つもの、その辺で拾った棒で殴りかかる者。

しかし、銃弾はモスキラスに効かず殴りかかっていた職員も羽虫を追い張るように弾かれてしまう。

 

「虫けら共がお前たちの処刑はコイツの後だ、それまで待っているんだな!」

 

ただ一言、そう言った。

源十郎の首を絞めてる方の腕の力を上げるモスキラス。

最初はモスキラスの腕を握り足で何とか反撃していた源十郎の抵抗もドンドン弱くなる。

このままモスキラスに首の骨を折られるかと思われたその時、

 

「待て、モスキラス」

 

モスキラスに待ったをかける言葉が聞こえた。

指令室の出入り口の方に目を向けたモスキラス。其処に居たのは、

 

「何だ、さそり男。まさか風鳴源十郎を殺すなと言うのか?」

 

モスキラスを止めたのは別の通路で人間狩りをしていた、さそり男だ。

源十郎の始末を邪魔したさそり男にモスキラスが「何故、邪魔をする」と聞く。

内容次第では処刑もあり、だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

銃声後、静まり返っていた指令室。

その室内では何かを殴る鈍い音と男の短い悲鳴のような物が響いている。

 

「グハッ!」

 

「シュシュシュシュシュッ!どうした風鳴源十郎! 俺の世界のお前はもっと強いぞッ!!」

 

源十郎の腹を殴り床に蹲ると後頭部を踏みつけるさそり男。

さそり男の目はじつに楽しそうにし、源十郎の頭をタバコの火を消すようにこすりつけ、何度も頭部を踏みつけ源十郎の額が床に打ち付けられる。

 

「指令ッ!」

「止めてッ!!」

 

その姿に職員たちは大声を出すが、皆動けないでいる。

何しろ彼らの近くには赤いサソリ…さそり男の使役する人食いサソリが尻尾を向けていたのだ。源十郎が逆らったり逃げだそうとすれば即座に職員を殺す気だ。

事実、さそり男は見せしめとして職員の一人に人食いサソリの毒液を浴びさせ目の前で殺した。

それを見た時点で源十郎が逃走も抵抗も止めた。

 

 

 

 

「苦しめ、苦しむがいい! 並行世界と言うだけで此処まで違うとはなッ、風鳴源十郎!!」

 

「何故…そこまで俺を…」

 

源十郎には分からなかった。

さそり男は自分を憎み、嬲っている。それは理解出来たが、源十郎は此処まで恨まれてる事が不思議で仕方なかった。

まだ、特異災害対策起動部二課指令になる前、公安で働いていた事が犯人逮捕とかはせず、後方支援で味方をサポートをしていた自分が何故恨まれてるのか分からないのだ。

 

━━━こんな仕事だ、職員の遺族から恨まれる事はあるが、此処までの憎しみは感じたことがない。だが、この怪人に恨まれる理由など、 …待て、さそり男はさっき何て言って俺を嬲っていた。 確か「並行世界というだけで」 !

 

だが、分かったところでどうしようもない。

平行世界の自分ならさそり男にも反撃できるだろうが人質にされた部下の職員たちが如何なるかは…

 

━━━それに、さそり男を何とかしたとしても…

 

再度、頭を踏みつけられた源十郎の目に此方の様子を見ているモスキラスの姿が写る。

さそり男が風鳴源十郎の殺害に待ったをかけた時、モスキラスとの空気が殺気に塗れていたが、

 

『殺すなら俺に殺させろ! 奴には屈辱を受けているッ!』

 

なんて事は無い、自分で源十郎を殺させるよう頼み込んだのだ。

それだけ、さそり男の源十郎への恨みが凄かったのだろう。尤も、それを聞いたモスキラスは少し笑った後二つ返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さそり男め、はしゃぎ過ぎだ。 だがまぁいい、今頃は病院で雪音クリスも風鳴翼もマリアも死んでいるだろう。…そして、立花響も」

 

目の前で源十郎が一方的にサンドバックにされる姿を見てモスキラスは呆れつつも待機する。

多少時間が掛かろうが問題はない。自分以外に地獄大使が送り込んだ強化改造人間がシンフォギア装者を殺し、特異災害対策起動部二課本部に対する援軍など存在しない。

日本政府が気付く可能性もあるが警官隊や自衛隊程度、ショッカーの敵ではない。

 

━━━とは言えだ

 

「さそり男、遊びもそろそろにしろッ! この後は地獄大使が進めている作戦に参加する時間が無くなるぞッ!」

「チっ、そう言えばそうだった」

 

源十郎の始末を譲ったモスキラスだが、流石に時間が経ち過ぎた事でさそり男に警告すると共にこの後の予定も思い出させる。

それに対し、さそり男も舌打ちをするがモスキラスの言葉に納得し倒れている源十郎の赤い髪を引っ張って無理やり目線を上げ左腕の電磁バサミを源十郎の首へと持っていく。

一気に源十郎の首を文字通り切り落とそうと言うのだ。

 

「名残惜しいが、此処までだな源十郎! 死ねぇ!!」

 

「ぐっ…すまない…みんな…」

 

絶体絶命のピンチに源十郎は打つ手がない事に死を覚悟した。

そして、源十郎の首がさそり男の電磁バサミで切られるかと思った時、

 

 

 

 

「…愚息とは言え、他人の息子に何をしてる!?」

 

 

 

「!?」

「なにっ!?」

 

突如、指令室の出入り口から声がしたかと思えばモスキラスの目の前に何かが一瞬で通り過ぎ、さそり男の右腕に喪失感が走り、源十郎は首を掴まれたまま床に尻もちをつく。

 

「うおおおおおおおッ!俺の腕が!?」

 

「一体何が…!」

 

右腕が喪失した事でさそり男の声が木霊し、解放された源十郎もさそり男の右腕を外して状況を確認する。

さっきまで自分を殺そうとしていた、さそり男が切られた右腕を押さえこっちを見ていたモスキラスはゆっくりと近づいてい来る。

 

━━━さそり男の右腕が見事に切断されている。 こんな事、翼でも無理だ! 唯一出来るとすれば…

 

「親父…」

「やっと気づきをったか、愚息め」

 

源十郎が「親父」と呟いた直後に背後から声が聞こえた。

振り向くと、其処には先程まで護国の定義の言い合いをしていた老人、自分の父であり風鳴家の当主風鳴風鳴訃堂が刀を握り近づく。

 

「まったく、いいようにやられおって。だから体を鍛えろと言ったのだ」

「うぅ…」

 

風鳴訃堂が源十郎の方を見ず、そう言い捨てる。

源十郎も源十郎で自身の不甲斐なさを思い知り言い返すことも出来ない。

 

「このっ、このクソ爺が!!よくも俺の右腕を切りやがったな!!」

 

一方、訃堂に右腕を切り落とされた、さそり男はやっとパニックが治まったのか電磁バサミの左腕で右腕を押さえつつ怒気の混じった声を出す。

源十郎も視線を戻せばさそり男が訃堂を睨みつけている。

驚いた事に訃堂に切り落とされた右腕も再生を始めている。恐らく数分もせずに右腕が生え変わるだろう。

 

「ほう? ショッカーの化け物もしぶといようだな、ほれかかってこい」

 

「殺す…殺すッ!!」

 

怒気と殺気の混じった、さそり男に訃堂は右手の人差し指でこっちにこいと挑発する。

人間…それも年寄りに挑発されたさそり男は誘いにのり電磁バサミで切りかかる。

 

 

 

 

「よく見ておけ…愚息」

「え?」

 

源十郎の耳に訃堂の声が聞こえると共に、訃堂も刀を鞘から抜きさそり男に向かう。

直後、訃堂の刀とさそり男の電磁バサミが火花を上げる。

 

「死にかけの老人風情がッ!!」

 

「ふん、お前の目にはワシは死にかけの老人か」

 

一気に刀を振り、さそり男の電磁バサミを体ごと弾く訃堂。

弾かれたさそり男は着地して態勢を立て直すと同時に来ていた着物の上半身を脱ぐ訃堂の姿が。

 

「とくと見るがいい、護国の為に鍛え上げられたこの体をなッ!!」

 

「!?」

「…人間にしてはよく鍛えられてる」

 

訃堂の肉体にさそり男もモスキラスも驚く。

情報では、訃堂の年齢は百を超えてるとみられ普通の老人なら骨と皮だけの肉体の筈だ。

だが、訃堂の体は若々しく筋肉も十分にありすぎる。正直、顔を見なければ三十台と言われれば納得する程だ。

もし死神博士が、訃堂の体を見れば改造人間の素体にしたい程だろう。

 

「よく見ておくがいい、愚息よ! これが護国に身を捧げた漢の体よッ!!」

 

「更に筋肉が膨張した?」

「老い耄れ風情がッ!!」

 

訃堂が刀を構えると同時に肉体の筋肉が膨張する。

それをハッタリと思ったのかさそり男は訃堂に飛び掛かると同時に電磁バサミで首を切り落とそうとする。

 

訃堂の刀がさそり男の電磁バサミを弾くと同時に蹴りをさそり男に繰り出す。お返しにさそり男も再生した右手で訃堂の顔にパンチし、電磁バサミで追撃もする。

辛うじて避けた訃堂は片手だけで臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前の九字護身法を組むと一瞬目が赤くなる。

 

「!?」

 

「これぞ、護国の剣よッ!!」

 

一瞬にしてさそり男を素通りしたように刀を振るう。

少し遅れて、さそり男の体は吹き飛び、左腕の電磁バサミもバラバラになると空中で爆発四散し他の職員を見張っていた人食いサソリの活動も停止して崩れさる。

護国の鬼は未だに衰えてはいない。

 

「ふぅぅぅ…」

 

さそり男を切り捨てた訃堂の口から息が漏れる。これ程動いたのは久しぶりだからだ。

額から汗が流れる中、訃堂の目はモスキラスに向かう。

 

「年の割には素晴らしい腕前だと認めてやろう、風鳴訃堂。 そうだ、お前もショッカーに入る気はないか? お前ほどの達人なら改造人間の素体にも十分だろう。 何よりショッカーの科学技術で若返る事すら可能だぞ」

 

仲間のさそり男が敗れたと言うのに、モスキラスは訃堂の腕前を褒め更にはショッカーに誘う。

源十郎はそんな訃堂に不安そうに視線を向けていた。

 

━━━親父は護国の為なら手段を選ばない人だ。自身が永遠に若くなれば俺たちや翼すら不要だと考えるかも知れん

 

源十郎の脳裏に訃堂の裏切りという言葉が過る。

自分たちも翼も日本を守るために育てた。人間が永遠と生きられるわけがないからだ、だがショッカーの科学技術で幾らでも若返るのなら自分に代わる者なぞ必要ない。

永遠に自分が護国をすればいいだけだ。

 

「親父…!」

「…若返りか、確かに魅力的よ。愚息どもに翼もまだ半人前もいいとこだ。第一どいつもこいつも不甲斐ない上にワシの言う事を聞こうともしない…」

 

チラッと源十郎の方を見た後に訃堂の口からいろいろ零れる。

「やれ、息子どもは気合が足りない」だの「翼が男であったならば」と愚痴が殆どだ。

 

「アイツが先立ってからは碌な事がない。 息子どももトンだ腑抜けばかりでワシの期待をとことん下回る、それにつけて上の方は何時まで経っても子づくりもせん…」

 

訃堂の口からは自分たちの文句しか出ない。これには源十郎も他の固まってる職員もどんな表情をしていいか分からず、思ったより好感触だと判断したモスキラスも訃堂の愚痴が終るのを待つ。

 

「果敢無き哉…とは言え貴様らの事はまるで信用出来んのも事実。…となれば、その科学技術もお前たちを叩きのめして奪ってくれるわ!」

 

暫く愚痴っていた訃堂だったが、持っていた刀をモスキラスに付き付けそう言い放つ。

どの位の技術か分からないが、訃堂はショッカーの科学技術を手に入れるつもりでいた。

 

「そうか、交渉は決裂か。 …なら死ぬしかないな、爺ィィィィッ!!!」

 

「やってみろ、青二才がァァァッ!!!」

 

モスキラスの拳と訃堂の刀がぶつかり火花を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッカーの怪人たちに襲撃された特異災害対策起動部二課本部。

夥しい血と灰が通路に放置される中、誰かの足音が響く。

 

「ハア、ハア…挨拶に来てみれば派手にやられてるな!これじゃS・O・N・G本部と同じじゃねえかっ!」

 

未来と別れた赤髪の女性だ。

本来なら、この世界の特異災害対策起動部二課に挨拶する程度だった筈が、中に入れば血塗れの惨劇の真っ最中。

 

「ノイズが相手なら此処まで血が飛び散らない。なら…旦那がヤバいッ!!」

 

十中八九ショッカーの襲撃だと判断した女性が目的は恐らく本部に居る人間の皆殺しだと考えダッシュで指令室へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、訃堂とモスキラスの戦う指令室では、

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

「温いぞ、クソ爺ッ!!」

 

訃堂の繰り出す斬撃を幾つも受けるモスキラスだが、その体には少しだけ傷つけるだけであり、逆にモスキラスの拳が訃堂の胴体に刺さる。

血を吐く訃堂、拳の勢いで後方に足をつけながらも吹き飛ばされる。

 

「ゴホッ!」

「親父っ!?」

 

源十郎は信じられなかった。さそり男を倒し護国の鬼と言われた風鳴訃堂も剣が全く通用しない。

 

「サソリの男を倒したのに…何で」

 

「俺をさそり男と一緒にするなっ!奴は再生された怪人だが、俺は強化改造を施された強化改造人間だッ!!」

 

指令室に居る一人の職員の呟きにモスキラスは、そう言い放つ。

正直、源十郎たちには再生やら強化とかは分からないがモスキラスがさそり男を超える実力者だという事が分かった。

 

「再生だろうと強化だろうと、貴様たちの好きにはさせんッ!」

 

血を吐いていた訃堂が再び刀を構えモスキラスへと切りかかる。

尤も、切りかかれたモスキラスは訃堂が振るった刀の刃を片手で握り、残った腕で訃堂の顔面を殴りぬく。

 

「ガフッ!!」

「親父!」

 

殴られた訃堂は持っていた刀を手放してしまい、そのまま吹き飛ばされた。

そして、その訃堂を源十郎が盾となり受け止める。もし、そのままならオペレーターたちの席にぶつかっていただろう。

源十郎が訃堂の顔を見ると殴られた場所か頭からも血が流れだす。

 

「年の割には大したものだと褒めてやろう、風鳴訃堂。だがこの程度で俺を倒せると思わん事だ!!」

 

そう言うと、モスキラスは掴んでいた訃堂不動の刀を刃ごと握りつぶす。

モスキラスの下には訃堂の刀の柄と刃だった金属片が散らばった。

 

「親父の刀が!」

「くっ、(なまくら)ではこの程度か…!」

 

訃堂の命にも等しい愛刀が砕けたと言うのに、訃堂の口から(なまくら)という言葉が出た事に驚く源十郎。

 

「なまくら? 何言ってんだ、アレは親父の命にも等しい…」

(なまくら)とワシの命にも等しい群蜘蛛の違いも分からんのか!馬鹿者!!」

 

源十郎は、幼いころから父である訃堂に護国の話と共に訃堂の愛刀である命と豪語する護国挺身刀・群蜘蛛。

風鳴家の宝刀で訃堂の全てと言っても過言ではない。

そんな訃堂が群蜘蛛を持たずにナマクラの刀を持ってきていたのだ。

 

「何故だ、親父! 群蜘蛛はアンタにとって…」

「…我が命にも等しき群蜘蛛を何時も持ち歩いていると思うでない…何より、お前たちに会うだけで、何故群蜘蛛をもっていかなければならん」

 

群蜘蛛は訃堂にとっても命であり切り札でもある。

そんな、群蜘蛛を持たず自分たちに会いに来たという事は、まるで…

 

「コイツは驚いたッ!護国の鬼と呼ばれ恐れられた男が家族との繋がりを切れんようだな!」

 

「………」

 

モスキラスが源十郎が頭の片隅で考えていた事を代弁するかの様に口から出る。

その言葉に訃堂が奥歯を噛み締めるような表情をし、源十郎にはそれが真実のようにも見える。

しかし、

 

━━━そんな事、ありえるのか?

 

源十郎とて、訃堂の下で十何年も過ごしてきた。結論から言えば、家庭での訃堂は最低の一言だ。

家族を顧みず護国にこだわり外国を敵視し、国民も蔑ろにしてきた。

大を救うためには小を切り捨てる。とも言うが、源十郎には訃堂は人間を見ていないのではと疑惑も持っていた。

百歳を超えているらしい訃堂の年齢は家族である筈の源十郎すら正確には知らず、上の兄も恐らく知らないだろう。第二次世界大戦を生き抜いた訃堂が何を見たのかは源十郎たちにも分からない。

 

そんな護国の鬼であり、度が過ぎる国粋主義者の訃堂が家族が大事などとは到底思えなかったのだ。

 

「親父…本当に…」

「…言う出ない…護国の為に全てを捧げた筈のワシが今更…家族など…」

 

源十郎が何か言おうとした時、訃堂が遮るようにそう言った。

その背中は何処か小さくも見えた。

 

「ブゥゥーヨオーンッ!! こいつはお笑いだ、死ぬ間際になって今更家族が大事だと抜かすとはなッ!!お前の人生、お笑いだな風鳴訃堂っ!!」

 

「…!」

 

訃堂の今までの人生をあざけ笑うモスキラス。

ショッカー組織に置いても訃堂の存在は邪魔でありターゲットの一つでもある。そんな男が家族に、いまさらこだわる。笑わずにはいられなかった。

 

「訃堂、お前の人生は全て無駄だったな! ブゥゥーヨオーンッ!『笑うな…』ん?」

 

「国の為に尽くした漢を…俺の親父を笑うなッ!」

「源…」

 

モスキラスの侮辱の声に源十郎が反発し声を荒げる。

子供の頃は尊敬し年を重ねるにつれて反発し擦れ違いが多くなった。それでも源十郎にとって訃堂は憧れであり何時かは超えたいと思う目標だった。

 

「親父…俺は護国についての事や国が如何とかは未だに分からん。 正直、親父をぶん殴りたいと思ったことも何度もある。それでもアンタは俺や兄貴にとってたった一人の父親だ!父親を守りたいと思って何が悪いッ!!」

「………」

 

「麗しい親子愛だな、感動した。ならば二人仲良くあの世に逝けぇ!!」

 

源十郎が訃堂を庇う発言にモスキラスはそう言い捨て飛び掛かる。

モスキラスにとって二人に親子愛があろうが、なかろうが関係ない。纏めて抹殺する気だ。

 

 

 

「よく言った、旦那ッ!!」

 

「!?」

 

そのまま飛び掛かり源十郎と訃堂の両名を殺そうとしたモスキラスだが、突然女性の声と自分に何か投げつけられた事に気付き、飛び掛かりを中止して咄嗟に後ろにさがる。

直後、モスキラスが居た場所に何かが突き刺さった。

 

「これは…槍?」

 

モスキラスの目の前には大き目な槍が突き刺さる。

先端が黄色く、所々白い柄に近い部分がは赤い大きな宝石のようにも見える。

 

「あ…あの槍は…」

 

そして、その槍を見て驚いたのが一人。

風鳴源十郎だ。

嘗て、翼とユニットを組みライブ中にノイズの襲撃を受けて絶唱を歌って亡くなった娘の所有する()()()()()()()()

 

「旦那も爺さんもよくやった。後は、アタシに任せなッ!」

 

「ブヨッ!?」

 

源十郎が懐かしんでいるとさっきと同じ女性の声が聞こえ、モスキラスに誰かが蹴りを放つ。

いきなり攻撃されたモスキラスだが、伊達に強化改造人間になった訳ではない。即座にガードし反撃で拳を振るうが、モスキラスの拳が空を切る。

 

「き…君はッ!」

「悪いが旦那、つもる話や聞きたい事が山ほどあるかもだけど、今やアイツを倒すのが先決だ」

 

その女性は何時の間にか刺さった槍を抜き、源十郎の前に立っている。

女性を見た訃堂もまた目を見開き驚いてるようにも見える。

そして、女性の正体にモスキラスも気付いた。

 

「き、貴様…!」

 

「それにしても、また鉄火場に遭遇するなんてね。運が良いんだか悪いんだか」

 

女性は前にもS・O・N・G本部で同じような体験をしていた。

尤も、その時は自分の知る立花響と瓜二つの少女だったが。

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ、お前が此処に居る!天羽奏! この世界でもお前は死んでる筈だッ!!」

 

 

 

 

 

 

源十郎と訃堂を救ったのは、嘗て亡くなった筈の天羽奏である。ショッカーも調査の際、天羽奏が死んでるのを確認している。

尤も、この天羽奏はこの世界の人間ではない。

 

「死んだ筈の小娘が何故生きている。…そうか、貴様も平行世界の…」

 

「平行世界はお互いさまだろ」

 

床に突き刺さった槍を抜いて構える奏。

その反応で目の前の天羽奏が並行世界の者だということに確信を持つモスキラス。何より、ショッカー響の記憶データから天羽奏の姿は確認されている。

 

だが、天羽奏がこの世界だろうが並行世界の出身だろうが関係ない。ショッカーの邪魔をする者は地上から抹殺するのが改造人間の役割だ。

 

「平行世界の装者が増えたところでッ! この場で死ぬムシケラが一匹増えた程度よ!!」

 

そう言い放ったモスキラスは槍を構える奏に突進する。

そのまま拳を振るい、蹴りも繰り出すが悉くが奏の槍に捌かれる。

一見、奏がモスキラスの攻撃を捌いて有利に見えるが、

 

━━━攻撃が重いっ!何度も受ければアタシの手がヤバい、何より此処は戦いづらい

 

奏が加勢に来たとは言え、場所は相も変わらず地下の特異災害対策起動部二課本部だ。

下手にシンフォギアの技を使おうものなら本部が崩壊して全員生き埋めになるかも知れない。

上手く、外に誘導したいが相手はノイズや暴れる無人兵器とかではなく悪辣な手を使うショッカーの怪人だ。喜んで此処を戦場にしようとするだろう。

 

━━━アタシが移動すればコイツは嬉々として旦那と爺さんたちを殺す。なら、無理矢理にでもコイツを外に放り出す。でもどうやって…!

 

「旦那、悪いがぶち抜かせて貰うぜ!」

 

モスキラスを外に追い出したい奏の頭にあるアイデアが浮かび源十郎たちにそう言った。

そして、そのまま槍を構えてモスキラスに突撃する。

 

「自棄でも起こしたか、死ねぇぇぇ!!」

 

理由が分からないが突撃して来るのならと、モスキラスは腕を伸ばして反撃の準備に入る。

突撃時に首を掴み一気に自分に引き寄せたら口の針で一気に血を始めとした体液を飲み干して殺してやろうと企んだ。

そして、奏が十分近づいた時に首を掴もうとし、

モスキラスの腕は宙を掴んだ。

 

「なにっ!?」

 

目前まで迫っていた奏の姿が消えたように見え、モスキラスの腕は誰も居ない場所を掴んだのだ。

 

「アタシは此処だあぁぁぁぁぁ!!」

 

「!?」

 

奏の声が舌から聞こえ、目線を下げた先には奏が滑り込むようにモスキラスの体の下にまで来ていた。

あの時、奏はスライディングするかのように床を滑りモスキラスの腕を回避し目を掻い潜ったのだ。

そして、奏が持つガングニールの槍はモスキラスに向に向けている。

 

「食らいやがれぇぇーーー!!」

 

奏がそう言い放つと同時に槍に取り付けられているブースターから火が噴き、モスキラスの体に当たると体ごと上へと昇っていく。

そして、モスキラスの体は本部指令室の天井にぶち当たる。

 

「グッ、こんな物がッ!!」

 

尤も、奏のガングニールの槍で刺された形になったモスキラスだが、槍は完全に突き刺さってはいない。

モスキラスの体は奏の想像以上に頑丈でモスキラスの動きを拘束しか出来なかった。。

一応、モスキラスを浮かせられていたが、抵抗が激しくなればこの拘束も解除されていまう。

 

「ぶち抜けぇ! ガングニールゥゥゥッ!!」

 

奏が言った途端、槍からは更に火を噴き、更には奏の腰のブースターからも火が噴く。

瞬間、モスキラスの後ろの天井にヒビが入り少しずつ崩れていく。

刹那モスキラスの後ろの天井を砕き奏ごと中に入り、その上の階の天井もぶち抜いていく。

 

「何だとッ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」

 

驚愕するモスキラスの声と奏の叫びが上の階に響いていく。

更には、槍の刺さらなかったモスキラスの体に奏の槍が少しずつ減り込んでいる。

 

 

 

そして、数秒もせずに私立リディアン音楽院の校庭から轟音と水にぬれた土埃が舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 




偶には人間臭い訃堂がいてもいいんじゃないかな。

訃堂のバックボーンが語られてない以上、好きなように捏造出来る。
特に翳り裂く閃光編だと影も形もないので、結果的に今回のような設定に。

そして、未来と一緒に来たのは並行世界の天羽奏でした。
因みに、奏がモスキラスごと天井をぶち抜いて外に出た土埃こそ病院の屋上で翼たちが見たものです。

訃堂の刀が愛刀の群蜘蛛ならモスキラスともっと互角に戦いました。
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