改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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急に熱くなってきた…夏だな…


110話 エレキボタルの地獄の舞 ターゲットは…

 

 

 

病院や特異災害対策起動部二課本部で戦闘が起こってる頃、雨の降りしきる街を一人の少女が駆けていく。

傘も刺さずにカッパすら来ていない少女の体は既に雨で濡れ切っており水分を吸った衣服が重くのしかかる。

 

「…失敗したかな、ここまで雨が酷いなんて」

 

雨の中走る少女…奏と同じくギャラルホルンで並行世界から移動した未来が少し後悔している。

雨の様子から直ぐに止むかと思っていたが、雨の勢いは変わらなかった。

 

━━━早く響を助けたかったから奏さんとは別行動してるけど…響は何処に居るんだろ? 響が好きだった場所かな

 

未来としても全く当てがない訳ではない。元の世界の響を熟知しているので響の好きな場所とかには心当たりがあったのだ。

尤も、並行世界の響にどの程度あてはまるかは分からなかったが、

 

「とは言っても…このお店…無くなってる…」

 

未来の目の前には火事で焼け落ちた店がある。響とよく言った思い出の店だが、この様子では到底開店してるとは思えない。

その後も、未来は響との思い出の場所を巡るが別の店だったり廃墟になっていたりと悉くが未来の期待を裏切る。

 

「この公園も荒れてる…私たちの世界と違い過ぎる…」

 

未来が最後に辿り着いたのは小さいころ、響と遊んだ小さな公園だった。

自分たちの世界なら小さいながらも近所の子供たちが遊びに来る遊具もある公園だが、未来の素人目からしても錆びだらけの放置された遊具に雑草が生えまくっている。

恐らくは近所の住民にすら忘れられた公園なのだろう。

 

━━━どうしよう…私の当てが殆ど無くなちゃった…これじゃ響を助けるなんて…ん?

 

「あれって?」

 

思いつく場所が全てダメだった未来が溜息を漏らすと視線の端に人影が写る。

フードを着込み横顔が僅かしか見えなかったが、未来は自然と、その人影の下に走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処にも居ないか…」

 

灰色のフードを被った少女…ヒビキは狭い路地を見てそう呟く。

今朝方、響の姿が消えた後ずっと雨の中を探していたのだ。

それこそ、廃ビルの部屋という部屋、廃墟化した店の内部や人家、放置されたゴミ箱の中すら一通り目を通した。

 

「何処に行ったの?さっさと戻ってこい…」

 

響が部屋から消えた後、ヒビキはずっと雨の中を探し続けていた。

確かに、響の体の事は聞いたし疑いもしたが、あれだけ泣き叫んでいた姿を思い出して頭を振るう。

 

「あの涙が嘘だなんて…とても思えないよ」

 

響が居なくなる前に流した涙。それを思い出したヒビキは足に力を入れ歩く。

同情した、という気持ちがないは嘘にはなる。それでも泣いてる娘を放置出来ないのもヒビキだった。

 

━━━服が雨を吸って重いな…こんな雨の中、何処をほっつき歩いているんだか!「あの…」!?

 

独り言を考えていたヒビキだったが、雨音と共に女性の声に気付く。

その声に何処か懐かしい気分になったヒビキが振り返ると自分と同じ年齢の少女が自分と同じく傘も刺さずに立っていたのだ。

 

そしてヒビキは少女の顔を見て息を呑む。

 

━━━胸が…痛い…?

 

更に胸が…心臓が激しく鼓動する。ヒビキとしても少女の顔は何処かで見た記憶もあるが不思議と思い出せない。

それでも自身の呼吸が乱れ心臓が騒ぐことで焦りが見えるヒビキ。

 

「やっぱり、アナタはこの世界の響なんだね!」

「…え?」

 

そして少女の口から思わぬ言葉が出てヒビキが反応する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまりアンタも並行世界から来たの?」

「うん、私の名前は小日向未来。友達を…親友を助ける為に来たの」

 

二人は雨から逃れる為、廃墟となった店の中で服の端を絞りつつ雨宿りをしてる。

序とばかりに未来がヒビキに自己紹介をし目的も話した。

 

━━━小日向未来…やっぱり…でもそれより…

 

「親友…」

「うん、精神リンク…病気で倒れたみたいで…」

 

未来はヒビキに精神リンクの説明をする。

精神リンクとは、並行世界の同一人物の精神が作用し此方の世界の人間に悪影響がでる物だ。

未来の世界の翼もクリスも精神リンクで不調に陥ったことがあり、遂には響も倒れてしまった。

 

「…それで、そっちの世界の私が倒れた?」

「…うん、だから私は響を助けたくてこの世界に…あれ?」

 

自分の世界の響を助ける為に並行世界へ来た未来だが、この世界の響を助けるプランを考えてはいなかった。

精神リンクとは、言うなれば精神が激しく不安定になれば起こりえる現象だと聞いた。

なら、この世界の響の精神を安定させればいい。

しかし、此処で未来は目の前の立花響と会話して違和感を感じていた。

未来の目から見ても、目の前の響はちゃんと自分と会話できるうえに普通に精神が安定しているように見える。

表情は少し寂しそうに見えるが、自分たちの世界の響に悪影響を与える程には見えない。

 

「…たぶん、その精神リンクはワタシじゃない…」

「え?」

 

そして、ヒビキの口からも否定の言葉が出る。

 

 

 

 

 

 

「アンタも知っているでしょ、もう一人のワタシを…」

「う…うん、クリスとマリアさんから聞いてるよ…」

 

未来の脳裏には本部で見た二人の響の姿を思い出す。

ジャガーマンと呼ばれる怪人がカルマノイズと融合し苦戦しつつ翼が絶唱を歌い倒した後にクリス達と話す響と大幹部地獄大使の攻撃を食らって吹き飛ばされた響の姿を。

そして本部を襲った響そっくりの敵の姿も思い出す。

 

S・O・N・Gの本部が襲撃されることなど一度や二度ではない、それでも残忍に機械的ではなく意思を持って人間を殺し、藤尭朔也を手にかけた敵を響だとは思いたくない未来。

直では見ていないが記録映像で此方の世界の響と響が戦ってる姿も確認している。

 

「ワタシさぁ、今まで生きてきて自分程呪われた人間なんて居ないと思ってたの」

「ひ、響は呪われて何て…」

「その慰めも懐かしく感じるけど続けるよ、ワタシさぁ特に性格の所為か貧乏クジを引くことが多くて、前は人助けが趣味だったの」

 

響の独白に未来は声は出さないが「知っている」と心の中で同意する。

必ずしも報われたりお礼を言われたりはしないが、響の人助けは未来が一番近くで見続けている。

 

「助けたまでは良いんだけど、『余計なお世話』とか言われたり、途中で助けた人が悪い人で危うく警察のお世話になりかけた時があるんだ」

 

ヒビキは、ツヴァイウィングのライブの事件が起こる前は並行世界の響と同じ人助けが趣味と言えた。

道に迷ってる人が居れば道を教えたり交番に連れて行き、落とし物で困っている者が居れば一緒に探し、猫が高い場所で立ち往生すれば昇って助けたりなどしていた。

しかし、その悉くが上手く行っていた訳ではない。

時には案内してる筈が余計に迷わせたり、探し物を踏んで壊したり、立ち往生してるかと思った猫が響が近づくとアッサリと地上に降りたりなど失敗も多い。

それでもめげずに日常を過ごしていたヒビキに起こったのがツヴァイウィングのライブ事件だった。

 

あの事件以来、仲の良かった友人たちは離れ、ヒビキに助けられた人たちにも石を投げられた事で人間不信に陥り、遂には家族にも…

 

「ワタシね、ワタシ以上に呪われた人間なんて居ないと思ってた。でも、その子は…もう一人のワタシは、わたし以上に…」

「…その子も…並行世界の響?」

「…うん」

 

未来の言葉にヒビキはゆっくりと頷く。

 

「詳しくは言わない。 もう一人のワタシの事情は他人が気安く喋っていい内容じゃないから」

 

尤も、ヒビキも響の事情を詳しく説明しなかった。

未来としてもそれは正しいと思い頷く。響と似てるが似てるだけ、辛い過去を無理に聞き出すほど未来としても無作法ではないつもりだ。

 

「アナタが言うには、響の精神リンクはもう一人の…「静かに…」!」

 

未来がそう呟いた時、響が何かに気付いたのか、静かにするよう言う。

ヒビキの言葉に未来も即座に口を閉ざし僅かに時間が流れる。

 

「…雨音で聞こえなかったけど戦闘音が聞こえる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前たちの中にも赤い血を流す奴がいるんだね」

 

降り注ぐ雨の中、地面も壁もボロボロとなった廃墟地帯で一人の少女が佇んでいる。

雨の所為で髪がぐっしょり濡れているが、間違いなくシンフォギアを纏った響だった。

そして、響の周りには沢山の黒タイツ…戦闘員が横たわっている。序に言えば響は息絶えた戦闘員の足を引き摺っていた。

心なしか響の体に黒いオーラのような物が漂う

 

問題は殆どの戦闘員は巨大な力に潰されたように拉げ、中には腕や頭が付いていない戦闘員の死体もある。

見る人間が見れば響らしくないと言うだろう。

 

「ええい、殺せ!殺せ! 立花響を殺すのだ!!」

 

戦闘員の一人がそう大声を出すと、響の前に居た数人の戦闘員が武器を片手に突っ込む。

しかし、響は自分に突っ込んでくる戦闘員に向け引き摺っていた戦闘員の体を引っ張り一気に投げつける。

 

「イッ!?」

 

一体の戦闘員が響の投げた戦闘員に命中し吹き飛ばされ、注意の削がれた別の戦闘員に響が逆に突っ込むと共に拳を入れる。

しかし、その力は普段より強く戦闘員の体を貫通した。

 

「お前たちの所為だ…お前たちの所為だ…お前たちの所為でッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

「何…コレ…」

 

戦闘音の聞こえた現場に来た未来とヒビキだが、見た光景に言葉を失う。

ただでさえ荒れていた道路の至る場所が陥没し戦闘員の死体が転がり、壁にも減り込んだ戦闘員や壁をぶち破って倒れている戦闘員もいた。

そして、倒れている戦闘員の殆どが死んでいる。

 

「この人たちって…確か…」

「戦闘員…ショッカーの兵隊どもだよ…」

 

未来の声にヒビキが答える。

未来としても倒れた男たち…戦闘員の事は知ってる。クリス達が戻る度に記録として見ていたからだ。

黒タイツに黒マスク、数もノイズ並みに出て死を恐れず戦い死ねば緑色の泡や液体になって消える。

 

この戦闘員たちも何者かと戦った事は想像に難しくない。

そして、その何者かは恐らく…

 

「まさか、響が!?」

「たぶん…でもこの戦い方…あの子らしくない…」

 

ヒビキの言葉に黙って同意する未来。

世界は違えども、モニター越しでヒビキを庇う姿から自分の知ってる響とそう変わらないと考えていた。

引き千切られたり、頭を踏み潰すようには到底見えない。

 

ピー!ピー!ピー!…ガガッ

 

「「!?」」

 

唖然とする二人の耳に機械音が聞こえる。

音のした方を見てみると小さいながらも黒い長方形の箱の様な物が見える。

 

「なに?」

「静かに…これって通信機?」

 

ヒビキが音のする黒い物を取るとソレには小さなアンテナも付けられ、簡易的なボタンも付けられた質素な通信機だ。

ご丁寧に裏にはショッカーのシンボルである翼を広げた鷲のワーク入りだ。

 

「…凄い自己顕示欲」

「分かりやすくていいんだけどね…」

 

ショッカーの自己顕示欲に苦笑いを浮かべる二人。

その時、通信機から赤い光が付くと声が聞こえだす。

 

『此方、第三戦闘員部隊! 既に半分の戦闘員が敗れた、壊滅は間もなく!』

『増援まで持ちこたえろ、計画の遂行が第一だ!』

『もうダメだ、残った戦闘員も片手で数える『うがあああああああああっ!!!』ブチィ!

 

回線が途切れた直後、通信機から砂嵐のような音が聞こえる。

ヒビキと未来は互いの顔を見合う。二人とも雨に濡れているが汗も混じって流れる。

 

「今の声って…響?」

「…分からない…あの子に声にちゃぁ獣のようにも聞こえたけど…」

 

通信機から聞こえた響の声に信じられないという反応をするヒビキ。

逆に未来は一つの可能性を考えていた。

 

━━━似てる…カ・ディンギルを巡る戦いでクリスが落とされた時の響の暴走に…!

 

そう考えた未来はヒビキが握っていた通信機を手にすると備え付けられている幾つかのボタンを押す。

いきなりの事にヒビキが反応できない。そして、幾つかのボタンを押した時に、また声が聞こえてきた。

 

『立花響、第五戦闘員部隊を突破! 雑木林まで後少し』

『ビリュリュリュリュリュリュッ! 計画は順調だ、もう間もなく立花響は俺のワナに飛び込む』

 

「「!?」」

 

通信機から戦闘員とは違う声質と言葉の内容に息を呑む二人。

響は順調に戦闘員たちを倒しているがソレ自体が罠だった。

二人は急ぎ、響が向かったと思われる雑木林の方に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イーッ!?」

 

一体の戦闘員が木にぶつかり貫通する。

その所為で幹の太かった木が圧し折れ、地面へと倒れていく。

 

そして、戦闘員を殴り飛ばした少女…響がただそれを見ていた。

 

「ハア…ハア…やっと全滅したかな…うっ!」

 

今まで響は数えるのも馬鹿らしい数の戦闘員を薙ぎ倒してきた。

今日だけでも、今まで戦った戦闘員の総数を超えるんじゃないかと言う程に、

そして、数時間は雨の中で戦い続けた響の足が縺れ雨に濡れた地面に尻もちをついてしまう。

戦闘員ばかりとは言え、絶え間なく現れては響に休む時間も与えず四方八方から現れては攻撃を仕掛けられていたのだ。

 

「ちょっとだけ…仰向けになろうかな。 雨だけど…この体なら問題ないよね…」

 

疲労がピークになったのか、周囲を見回して戦闘員の気配が無い事を確認した響がそのまま体を倒して地面に大の字になる。暴れた所為か響の体に纏っていた黒い物も若干薄れている。

雨が降り、通常ならびしょ濡れになるうえに風が吹いて体温を奪い風を引くかも知れないが、今の響にはこれが気持ちよかった。

 

ショッカーの改造手術により、響の体は改造人間にされ殆どが機械や金属で構成される体が風邪を引くことは無い。

その事実に便利だとは思うが、反面悲しくもあった響。

 

━━━もうクリスちゃんにもマリアさんにも、もう一人のワタシにも頼れない。 一人で戦わなきゃ!

 

響が戦闘員たちと戦ってたのは襲って来たからのもあるが、ショッカーの戦力を削る為でもある。

 

自分の体の秘密を知られた以上、もう共に戦う事は出来ないと考え響は一人でショッカーと戦う事を選んだのだ。

 

━━━その為には、奴等のアジトを見つけないと…いっそ戦闘員を捕獲くして吐かせようかな。…でもアイツ等喋れない奴も多いからな…

 

響を始めとした元の世界の装者たちも大勢の戦闘員を倒し時には捕らえる事もあった。

しかし、尋問しようにも殆どの戦闘員は「イーッ」としか言えないようにされ普通に喋る事すら不可能な者も多かった。

 

尤も、使い捨て前提の戦闘員程度が知ってる情報も何処まであるかは…

 

━━━如何にか怪人…または喋れる戦闘員を捕らえたいけど…

 

如何にかショッカーの怪人、或いは戦闘員の捕縛を考える響は雨が降る中、目を閉じて考える。

改造手術の影響で睡眠は取れないが体を休ませることは出来るとして偶にやる。

 

だからこそ、響は気付くのが遅れた。

昼間と言えど薄暗い雑木林の中、更に雨の日で夜並みに暗い筈の森に緑色で光る二つの球体がまるで自分を観察している事に。

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

目を閉じ集中していた響も周囲の違和感に気付き、体を起こした。

すると、響の目の前に白や赤、青といった光が点滅している。

 

「…蛍? この東京で?それに大きいような…」

 

光の正体を蛍と考えた響。

尤も、直ぐに違和感に気付く。此処は大都会の東京だ、幾分か緑はあるが蛍は繊細な虫と聞く。都会っ子の響は自然の蛍など映像記録でしか見たことがない。

だがそれでも違和感には直ぐに気付く。記憶の中の蛍の映像と比べ、虫の光にしてはやけに大きいと感じていた。

 

「ビリュリュリュリュリュリュッ!! 一人で随分と寂しそうだな、立花響!」

 

「!?」

 

突然の第三者の声に響は直ぐに立ち上がり臨戦態勢に入るが、目に入るのは蛍のような光くらいだ。

気配はするが姿は何処にも見えない。

 

━━━灯り一つ無い中でも昼間のように見える筈なのに!

「私の目でも見えない?」

 

「残念だがお前は既に…俺の術中に居るんだよぉ!!」

 

姿の見えない敵がそう言い放った瞬間、響の足元からも幾つもの光が飛びあがる。

 

「!?」

 

咄嗟に手で払いのけようとする響だが、振っても振っても光の元は少し散るだけで、また直ぐに集まる。

響の行動は完全に鼬ごっこと言えた。

 

「如何だ、ショッカーが生み出した蛍は光は? 綺麗だと思わんか?」

 

「な、何を言って…!」

 

蛍を散らそうとする響の目に一際大きい緑色の光が出ると共に誰かが現れた。

首元に赤い膨らみのような物が首を包み、虫のような口元にナマズのような髭。目も大きく頭部には不気味な赤い瘤のような物が幾つもある。

 

「光れ、飛び回れ、踊り狂え!!地獄の舞で立花響に催眠術をかけてやるッ!!」

 

「さ…催眠術!?」

 

普通の人間ならともかく、響はショッカーに改造された改造人間だ。

今更、催眠術なんてと思う響だったが、自身の視界が徐々に黒く狭まってる事に気付く。

 

「そ…そんな!」

 

「改造人間ならば催眠術に掛からんと思ったか?マヌケ! この俺、エレキボタルさまのエレキ催眠は改造人間をも支配する性能なのだッ!!如何だ、エレキ催眠の威力は!? 苦しかろう! ビリュリュリュリュリュリュッ!!」

 

響の困惑の声に怪人…エレキボタルはそう言い放ち笑い声のような鳴き声を発する。

そうこうしてる内に響の視界は完全に閉ざされたが、それでも響はエレキボタルの声を頼りに拳を振るう。

 

「こんな催眠なんかで!」

 

「ふん、見えなければ攻撃など当たらんわ! 本来ならアッサリと殺してやるが…面白い事を考えた」

 

響の両腕をアッサリと抑えたエレキボタルは、楽しそうに響に語りだす。

なんとか、エレキボタルの拘束から逃れようとする響だが、戦闘員との連投の疲れで思うように力が出せない。

 

「面白い…こと?」

 

「俺のエレキ催眠でもう一人の立花響と殺し合わせてやるッ!」

 

エレキボタルの返答に響はハッとした表情をすると今まで以上に拘束から逃れようとあがく。

響を操り、もう一人の邪魔者であるこの世界の立花響と潰し合わせる。

力量的には改造人間の立花響が生き残るだろが、その時は始末するなり催眠状態で操り続けるのもありだとエレキボタルが判断した。

 

「誰がそんな…ッ!」

 

「逆らおうとしても無駄だ、もう俺の地獄の舞からは逃れられんッ!!」

 

エレキボタルがそう言い終えた途端、響の視界はゆっくりと戻るが響の目にはエレキボタルの姿が万華鏡のように幾つも見えた。

響の目が徐々に力を無くし目の下が青くなっていく。

 

「俺のエレキ催眠で人形になってしまえ! 立花響ッ!!」

 

━━━頭がッ!! もう一人のワタシ…逃げて…

 

やがて響の意識は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから間もなく、街の方から二人の人影が雑木林に近づく。

雨の中、傘も刺さずに濡れているがヒビキと未来の二人だ。

 

「たぶんこの辺りだと思うけど…」

「もう一人の響は何処に…居た」

 

周囲は戦闘の後か、地面が陥没していたり木が圧し折れていたりなど凄まじかった。

そして、周囲を見回していると雑木林の草むらで人影を見つける。

誰よりも響を傍で見続けて来た未来はその姿を見て響だと確信する。響がシンフォギアを纏う時のインナーの姿だったからだ。

 

「響ッ!」

「無事か!」

 

未来とヒビキが響の下へ走り寄る。

しかし、二人は直ぐに違和感に気付く。雨が降ってるとはいえ、響は雑木林の中をただ立っているだけで微動だにせず、纏っているインナーから黒い靄のような物が見えた。

 

━━━あの黒い奴、前にも……!

「響ッ!!」

 

その黒い靄に見覚えのあった未来は響の名を叫ぶ。

未来は少なくとも二度ほど、近い状態を目撃していた。一つは、まだ響がシンフォギアを纏って間もないフィーネこと櫻井了子と戦ったかディンギルの攻防戦。

もう一つは、記録映像で見た小型のネフィリムに腕を食われた時だ。源十郎に無理を言って見せてもらい危うく吐きそうになった未来のトラウマの一つになっている。

 

どっちも映像越しだったが、その事が頭を過った未来は響の名を叫ぶように呼んだ。

 

呼ばれた響は未来の声が届いたのかゆっくりと振り向く。

自身の声に反応した未来とヒビキが一瞬安堵するが、即座に背筋が凍り付く。

 

振り返った響の顔は響のままだったが、目に力は無く、目の下には紫の色がついている。

 

「…誰だ、お前たちは?」

 

そして、響の第一声に未来もヒビキも奥歯を噛み締める。

響の口はそれこそ他人と喋るように、未来からすれば初対面の人間にもグイグイいく響とは思えない冷たい声だった。

 

見る人間が見ればすぐに気付いただろう。

今の響は死神博士の脳改造を受けた時と瓜二つだと

 

「誰って、ワタシだよ! この世界のもう一人の立花響だ!」

「私は…未来、小日向未来…だよ」

 

ヒビキは必死に自分の事を教え、未来は消極的ながらも自分の名前を言う。

昨日まで会っていた響はともかく、この世界に自分と同じ小日向未来が存在してるのか未来には判断できなかったからだ。

 

 

 

 

 

「いくら叫ぼうが無駄だッ! ビリュリュリュリュリュリュッ!」

 

二人の必死の言葉を嘲笑うように野太い声が響くと同時に雑木林から幾つもの光が飛び出してくる。

その光が一つになり人のような形となり声の主が出てくる。

 

「怪人!?」

 

「俺の名はエレキボタル! この立花響は俺のエレキ催眠にかかったのだッ!!ビリュリュリュリュリュリュッ…」

 

怪人エレキボタルが名乗りを上げ不気味な鳴き声も上げる。

ヒビキと未来は黙ってエレキボタルを見るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 




っという訳で三人目の刺客はエレキボタルです。
何話か前に東京都十日分の電力が消えたのが伏線のつもりです。

シンフォギアの原作だと、ノーブルレッドのミラアルクの『不浄なる視線』を弾いた響ですが今回はXVの翼以上に精神がボロボロ状態なためアッサリとかかりました。

尤も、ショッカーの洗脳、催眠能力はノーブルレッドより高いです。

蛍の方は、原作の仮面ライダーでも被害者の女性が「あんな大きい蛍は見た事ない…」と言っている以上、ショッカーが生み出した蛍ということで。

仮面ライダーはシンフォギアより遥かに洗脳、催眠能力持ちが多いです。そして、容赦なく使います。

ショッカーが響を再び手中に収めようとする動機は次の話にでも、
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