改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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8話 響の心

「…辛うじて一命はとりとめました。ですが容体が安定するまで絶対安静。予断の許さない状況です」

「よろしくお願いします」

 

あの戦いの後、風鳴翼は病院に運ばれ緊急手術となった。

風鳴翼の担当医と弦十郎が先程のやり取りをした。

 

「…それから立花響くんですが…家で見るのは難しいですね」

「そんなに重症なんですか!?」

「いえ、もう直ぐ動けるようにはなりますが…我々があの体を見るのは不可能と言っていい。我々ですら見たことない機械に原子炉、心臓は妙な金属の所為でレントゲン検査も出来ない。脳は一部機械化され迂闊に触れない。あの体に我々が出来る事はありません。どうやって彼女に取り付けたのか医者として興味がありますよ」

「そう…ですか…」

「…こんな事言いたくはないんですが彼女は本当に人間なんでしょうか?人間そっくりのロボットと言われたら私は納得してしまう」

 

この病院の医者は特異災害対策機動部二課との繋がりもあり優秀であった。

そんな、彼らですら響の体を見るのは不可能だと判断した。

そして、この医者は響を恐れている。いや、この医者だけではない。

響を見た医者や看護師は少なからず響を恐れる。

当然だ。

あれだけの機械が拒否反応もなく正常に動いているのだ。投薬もせず。

 

「私がこんな事を言うのはあれですが、彼女の体は異端技術の固まりと言っていい」

「異端…技術…」

 

弦十郎は心で「それでは響くんが聖遺物みたいじゃないか」と考える。

そして、それだけショッカーの技術も高いということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、昼

響はリディアンの屋上のベンチに座っていた。

風が響の頬を撫でる。

 

「うん…分かってる。暫くは会えないけど…うん。じゃあね、お母さん」

 

響が携帯の電源を切る。

弦十郎の説得で家に電話していたのだ。

最初は、母親が頻りに「元気か?」「病気してないか?」と聞かれ響も焦った。

それでも、久しぶりに聞く母親やお祖母ちゃんの声を聴けて嬉しかった。

しかし、これ以上話すと家族に会いたいという気持ちが強くなると考えた響は「そろそろ授業だと」言って電話を切った。

 

「…ゾル大佐…」

 

響は暗い気持ちになりかけた所で宿敵の名を呟く。

思い出すのは昨日の事。

 

 

 

風鳴翼を入院させ、響も即退院して特異災害対策機動部二課本部でまたミーティングを行っていた。

 

「…指令、出ました」

 

オペレーターの一人がキーを操作し、モニターにある人物が映る。

ショッカーのゾル大佐だ。

 

「やはり出たか」

「…本名、バカラシン=イイノデビッチ=ゾル。ドイツ国防軍の大佐でナチスにも所属していたようです。欧州でも未だにA級戦犯として手配されてます。間違いなく100年前の人間です」

「それだけではありません。ゾル大佐はあのアウシュビッツのガス管理人としても有名だったようです」

「ガス管理人?」

「…アウシュビッツには収容された人間を使って毒ガスの実験をしていたなんて言われてるのよ。たぶんそれね」

 

オペレーター達の報告と了子の言葉に一同は声もでない。

まさか、本当にナチスが現代まで生き残っていたとは。

 

「ナチスと関係があったと聞いたが、奴自身がナチスだったのか!」

「…噂じゃアウシュビッツ強制収容所には人間を改造していたっていう都市伝説まであるのよね。…やだ、現実味帯びてきたじゃない」

 

「更に、指令。これを見てください」

「ん?この映像は?」

 

モニターには中東と思しき場所と爆発する映像が流れた。

 

「3年前に起こった中東での爆弾テロです。ハト派の政治家が殺され民衆にも多大な被害を出した事件ですが私が見て欲しいのはこれです」

 

オペレーターの友里あおいがキーを弄り、モニターの一角を拡大する。

そこには、

 

「え?」

「ゾル大佐だと!」

 

かなりぼやけてるが、映像にはゾル大佐らしき人物が映っていた。

 

「まさかこれも!?」

「分かりません。偶然か実行したのかは不明です。…ですが、この爆弾テロの犯人は未だに捕まっていません」

「更に、これがきっかけで収まりかけてた内戦が再開したそうです」

「ショッカーが内戦やテロを操ってるってこういうこと?」

「かもしれんな」

 

一同は再び静まり返る。

ゾル大佐が思っていた以上に大物だったからだ。

 

「それにしても、100年前の人間にしては随分と若いわね。子孫が名乗ってる可能性はないのかしら」

「…わからん。ショッカーの技術は未知数だ。それにしても、100年前の人間が何故今更…」

 

弦十郎はゾル大佐とのやり取りを思い出す。

 

『貴様…親父…あの人と何の関係が…』

『親父?ほう、あの頑固者が所帯をもっていたか。それにその反応、まだ生きてるようだな。それにしても、風鳴の血ならその強さも納得だ。貴様が改造人間になれば、さぞ素晴らしい怪人が出来るだろう。どうだ、ショッカーに入る気はないか?』

『………』

『だんまりか、まあいい。ならば言付けを頼むとしよう』

『言付けだと?』

『近々異国の友が会いに行く。そう伝えればいい。…そうそう、最後に一つ言っておこう。私の名を聞き、姿を見た者は必ず死ぬ。覚えておけ』

 

それだけ言って、ゾル大佐は弦十郎達の前から消えた。

ナチスの生き残りが親父に何の用だと考える弦十郎。

 

(あの護国の鬼に異国の友人?何の冗談だ)

 

「しかし、中近東のテロに関わってるかもしれない奴が日本に…」

「…どうしてでしょうね」

 

「私の所為です」

 

響の言葉に皆が一斉に響に視線を向ける。

響は、俯きながらも淡々と呟く。

 

「私が悪いんです。一年半前も今回の事も、私がショッカーから逃げた所為で怪人たちが翼さんにも…私の所為で翼さんは怪人たちの相手までしなきゃいけなかったんです。私が居なければ怪人たちも現れず翼さんも鎧の娘だけ相手にして今回みたいにはならなかったかも知れないのに…それなのに…全部私の所為で…」

「響くん?」

「響ちゃん?」

「挙句の果てに翼さんも師匠も了子さんもショッカーに狙われてしまって…全部私が悪いんです!生まれてきてごめんなさい。生きていてごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

「…了子くん」

 

泣きながら謝り続ける響に弦十郎は了子に視線を送る。

了子は頷き、響を医務室へと運んだ。

 

「…響ちゃん、そうとう参ってますね」

 

了子と響が退室した部屋で、オペレーターの藤尭朔也が呟く。

 

「仕方ないだろう。多感な時期にショッカーに拉致され体を改造され、一年以上の世間と隔離されてたんだ。そして、響くんは優しく責任感も強い、怪人や戦闘員との戦いに疲れてるのかもしれん」

「…怪人達も言うなればショッカーの犠牲者ですからね」

「ある意味、脳改造された響ちゃんと言ったとこでしょうか?」

「…かと言って、早瀬のように自らショッカーに入った者もいるだろうな」

「指令…やはり早瀬さんの事をまだ」

「分かってる。大人の俺が…俺達がしっかりしなければ…だが、それでもアイツは親友だったんだ…俺のかけがえのない…友だった」

 

弦十郎の呟きに誰も何も言えない。

親友だった男をその手で殺した。弦十郎にとっても心に傷を受けていた。

 

 

「響ちゃん、元の体に戻れないんでしょうか?」

「…私見だが、あそこまで改造されては…」

 

部屋に残った者たちは暗い顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

私はあの後、了子さんのカウンセリングを受けて何とか持ち直した

師匠たちはゾル大佐こそ、ショッカーの首領格と睨んでるけど…私が手術前に聞いた声とは違う気が…機械で声を変えてると言われればそれまでだけど

 

「ナチス…」

 

ナチス。第二次大戦で敗北して消滅した組織

でも、消滅した筈の彼らがショッカーを結成したの?

分からない事が多すぎる

 

「…響」

 

懐かしく、今一番聞きたくない声がした

声のした方を見ると、やっぱり未来が居る

出来れば今日は会いたくなかったのに

 

「隣…良い?」

 

私は未来の言葉を無視する

そうすればきっと未来も私が嫌いになる筈だ

きっと…

 

「勝手に座るね」

 

何時までも、私が反応しないから未来が座ってしまった

どうしよう。未来が隣に居るだけで嬉しくなる

未来の手が私の手に重なる。暖かい…

 

「響、無理しないで」

 

やっぱ未来は凄いな。一年半以上会ってなかったのに私の事分かるんだもの

でも、

 

「無理なんてしてないよ」

 

やっぱり未来を巻き込む事は出来ない!

 

「嘘言わないで。私は響が響のままでいて欲しいの」

「私が私のまま?」

「そう、変わってしまうんじゃなく響のまま成長するんだったら私も応援する。だって響の代わりは何処にも居ないんだもの。居なくなって欲しくない」

 

 

 

「…何それ!」

「響?」

 

響の突然の反応に未来は息をのむ。

何時の間に手も放していた。

 

「私が私のままって何!?一年半前の私?それとも今の私?私だってこんな風に変わりたくなかった!普通に過ごしたかった!あいつ等に攫われて体を弄られえて化け物に…!」

 

そこで、響はハッとした。

未来に言っても仕方がない。むしろ、これ以上の会話は未来を危険に晒すと気付いた。

 

「響!その話どういうこと!?『あいつ等』って誰!?『体を弄られた』ってどういう事!?」

 

未来が響に詰め寄る。

何かしらの変化があったのは未来も分かってはいた。

しかし、響の口からは予想よりも酷い単語が出て未来も気が気でなかった。

 

「…ごめん!」

「響!?」

 

未来の質問攻めに響は屋上から逃げた。

響の目から涙が零れる。

そして、屋上に残された未来は去り行く響を心配そうに見ていた。

その日、響は早退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里離れた海の近い断崖絶壁。

交通の便が悪そうな場所に一軒の屋敷があった。

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

少女の悲鳴が屋敷から聞こえる。

 

「どう、クリス。少しは反省した?」

 

別の女性が悲鳴を上げた少女に声をかける。

屋敷の中では磔にされた少女と全裸の女性が少女の傍に立っている。

悲鳴を上げた少女はネフシュタンの鎧を着ていた少女だ。

 

「苦しい?可哀そうなクリス。あなたが悪いのよ、誘いだされたあの娘を此処まで連れてくれば良かったのに、無視してショッカーの怪人に夢中になった上に空手で戻って来るなんてね。何よりショッカーの前でソロモンの杖を使ったのは不味いわね」

「でも…」

「ん?」

「でも、ショッカーの連中を放置なんて出来ない…。戦いの原因を生み出すあいつ等をぶっ潰せば争いが減ると思ったんだ…」

「そうね、確かにショッカーは邪魔よ。でもね、ショッカーを潰したところでショッカーに代わる別の組織が出るだけよ」

 

クリスと呼ばれた少女の頬を触れた後、全裸の女性は傍にあったレバーを下ろす。

途端、クリスの体に激しい電流が襲う。

 

「うああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「可愛いわよ、クリス。私だけがあなたを愛してあげられる」

 

苦しむクリスの姿を楽しそうに見る女性。

暫く楽しんだ後、レバーを戻しクリスに触れる。

 

「聞きなさい、クリス。痛みだけが人の心を繋ぐ絆と結ぶ世界の真実だということを。さあ、食事にしましょうか」

 

女性の言葉にクリスは嬉しそうな表情をする。

しかし、クリスは気付かない。

女性が邪悪な笑みを浮かべてる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、間もなく特異災害対策機動部二課に凶報が入った。

自分達の後ろ盾だった広木防衛大臣が殺害された。




響「ショッカーの所為で私の心はボドボドだ!」

この作品の響は原作の響よりメンタルが脆いです。
原作通りの未来のセリフが響を余計に傷つけるという。

そして、ショッカーの所為で全く話題にならないクリス。
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