「…翼さん達が突入してもう二時間ですね」
「ああ…」
特異災害対策起動部二課の本部になりつつある潜水艦内。
その指令室にてオペレーター席に座る友里あおいと黙ってモニターを睨む風鳴源十郎が短い会話をする。
もう直ぐ、この潜水艦が特異災害対策起動部二課の司令部になり活動する事になるので他の部署では職員が忙しなく動いているが、司令部は機械音だけで静かなままだった。
「…翼たちからの連絡は?」
「…以前ありません。妨害電波の所為で連絡が取れません」
源十郎が翼と連絡が取れないかと聞くが、藤尭朔也がそう返答する。
妨害電波。これにより特異災害対策起動部二課の動きはだいぶ縛られていた。
通信がとれない以上、源十郎たちも翼たちに指示が出来ず全ては翼たちの判断に任せるしかなかった。
「…ノイズの時もそうだったが、何も出来んことが此処まで歯がゆいとは」
「ショッカーが現れてからは特にそうですね」
「現状は翼さん達に任せるしかありませんからね…」
ノイズを相手にしていた時もそうだったが未成年を戦わせざるえない事に源十郎たちは悔しさを感じずにはいられなかった。
特に、ショッカーとの戦いは妨害電波を出し本部とシンフォギア装者たちとの連携が断ち切られたのだ。
これでは、助言も出来ない上に現場判断で翼たちの重荷を背負わせてしまう。
「せめて、奴等の妨害電波を無効化出来れば…」
「…難しいだろうな、俺も色々手を打ってるが奴等の妨害電波を解析しきれん」
「…台風も本格的に近づいてます、無事に帰ってきてほしいですね」
外は既に台風の影響で風が強くなり海岸付近の波も段々と高くなっていく。
状況が分からないが、源十郎たちは皆の無事を祈ることしか出来ない。
「ハアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ホホーーーッ!!」
響がフクロウ男の翼を引き千切り、地面へと落とし何度も胴体に拳を打ち込む。
その後も、地面に倒れたフクロウ男の腹部に何度も拳を打ち付け、コンクリートの地面にヒビが入る。
「調子の乗るな、立花響!アーブルッ!」
「!?」
声と殺気に気付いた響は、フクロウ男を殴ると共に拳の威力でその場から離れる。
直後に、自分の殴っていたフクロウ男に赤い火球が突っ込んできて爆発する。
着地した響が火球が来た方向を見ると、
「ゴースター…」
「ゥウオーッ!立花響、必ず殺す」
復讐に燃えるゴースターが響に向け火球を放つ。
勿論、黙って受ける響ではなく、直ぐに回避し拳をゴースターに放つが、
「アーブルッ!」
「か、固い!」
響の拳はアッサリと弾かれ、殴った手を押さえる響。相も変わらずとんでもない強度のゴースター体だ、並みの攻撃ではビクともしない。
一旦距離をとった響、如何するべきか思考するが周りに居た怪人たちはそんな響に関係ないと攻撃を仕掛ける。
翼も奏も苦戦を強いられている。
二人とも今まで多くのノイズを殲滅し一対多の戦いは慣れている方だ。
しかし、基本的に突っ込んでくるノイズに比べ怪人は自己の判断で手を変え品を変え様々な戦術を使て来る。
「ヤーーーッ!」
トラックの屋根を飛び回る翼が巨大化させた剣でヒトデンジャーを切りかかるが、ヒトデンジャーの強度も並ではない。
アッサリと剣が弾かれるが、それを見越していた翼は弾かれた勢いでヒトデンジャーの顔面に蹴りを入れヒトデンジャーをトラックの屋根から蹴落とす。
「フゥ…!?」
「弾丸スクリューボールッ!!」
ヒトデンジャーとの戦闘で一息つこうとした翼だが殺気を感じると共に剣を構えた直後、丸い物が翼に突っ込んでくる。正体はアルマジロングの弾丸スクリューボールだ。
とっさに反応した翼は巨大化させた剣で受けるが、
「クッ…!」
思った以上の威力に歯を食いしばる翼。
それでも何とか押し返そうとし、剣とアルマジロングの弾丸スクリューボールの接触部分に火花が散る。そして、とうとう翼が耐え切れずバランスを崩しトラックの天井から足を踏み外した。
「翼っ!」
「余所見をしてる暇があるか?天羽奏!」
トラックの天井から落ちる翼を助けに行こうとする奏だが、その隙を怪人たちは見逃すほど甘くはない。
鞭のような物が奏の首に巻き付き、驚いた奏はうっかりガングニールの槍を離し掛けてしまう。
視線の先にはシードラゴンの一体が右腕の鞭を首に巻き付けていたのだ。
「邪魔をすんじゃ…!?」
奏はシードラゴンを目視し「邪魔をするな」と言おうとした直後、とんでもない衝撃が自身の体に走る。
直ぐには気付かなかったが、奏は自分が高圧電流を喰らっている事を知る。
「俺様の電流は12000ボルト、そのシンフォギアと生身はどの位耐えられる!?イィィチィィィッ!!」
「うああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
シードラゴンの電流に奏が悲鳴を上げる。
奏の体にはまさに暴力と言えるほどの電流が走り、シンフォギア一部からも煙が出る。
「奏!」
「奏さん!!」
翼も響も奏の悲鳴に気付き援護しようと動くが、
「なっ!?」
「えっ!?」
「馬鹿め、隙だらけだぞ! ニィィィチィィ!」
「お前たち実に分かりやすいな、タァァーーーーーツッ!!」
シードラゴンの一体が奏の腕に鞭を絡め、翼と同じ響の首にもう一体のシードラゴンの鞭が絡む。
二人が直ぐに鞭を離そうと手を伸ばす。が、
「うわああああああああああああああああああああああ!!!」
「ああああああああああああああああああああああああ!!!」
振り解くよりも早く絡まった鞭から膨大な電力が流れ二人の体。
12000ボルトの電流に、奏は愚か響すら悲鳴を上げる。廃工場内には三人の女性の悲鳴が響き渡り周りにいる怪人もその姿を見て薄ら笑いを上げる。
まるで、響たちの苦しむ姿を楽しむように。
「響ーーーーーーッ!!」
「…惨い事を」
ショッカーの用意したモニターで響たちが電流で苦しむ姿を見て響の名を叫ぶ未来。
モニターには、響や翼、奏たちが複数の怪人と戦う姿が映る。
クリス達とて、今まで多くのノイズやロボットなどと戦ってきたが、それらに比べれば怪人たちの攻撃はかなりの物だと思う。
火や雷、あらゆる物を溶かす溶解液などが飛び交う地獄のような光景だ。
「いいぞ、もっと苦しませろ!地獄の様な苦しみを与えるのだ、そうすればより質の良い復活エネルギーとなる!」
「て…てめぇ…」
そして、そんな響たちの姿を笑って喜ぶ地獄大使。
その様子にクリスは血が滲むくらい唇を噛み締め地獄大使を睨みつける。
ショッカーにアッサリと囚われ、シンフォギアも無効化され素っ裸で縛られてるのだ。己の不甲斐なさと地獄大使のやり方がひたすら気に入らなかった。
クリスの視線に気付いた地獄大使はゆっくりとクリス達の方に視線を向ける。
「ワシが憎いか?雪音クリス。ならばもっと憎め、その憎しみもまた、質の良い復活エネルギーの元になるのだ。おっと、そう言えば怪人がまた減っていたな。おい、次の生贄を連れて来い!」
「イーッ!」
クリスの殺気を込めた視線も地獄大使とってはそよ風程度でしかなく、不気味にニヤと笑って見せる。
そして、戦闘員に更に生贄を連れて来るよう命じる。
それから間もなく二人の戦闘員が扉を開け中へと入る。
二人の戦闘員の間には一人の若い女性が連れられていた。拷問でも受けたのか、来ていた服はボロボロで一部が露出していた。
「嫌…助けて…助けて…」
「大人しくしろッ!!」
連れられた女性は抵抗のつもりか足を動かさず二人の戦闘員に引き摺られる。
しかし、戦闘員は女性の髪も掴み面倒な荷物だという風に引き摺った為、女性の足から血が流れる。尤も、戦闘員は一切気にしなかった。
「酷い…」
戦闘員たちの女性の扱いに未来が思わず呟いた。
これまで何人もの人間が悪魔祭りの生贄にされるのを見てきたが、まだマリアやクリス、未来が慣れるとは到底思えない。
「待ちなさい!」
女性をぞんざいに扱うショッカーのやり方に腹を立てつつも、女性を助けられないかと声を出すマリア。
しかし、戦闘員はマリアの声を無視して女性を祭壇へ運んでいく。
既に何度も制止する声を上げるクリスにマリア、未来だが地獄大使がそれを一度として飲んだりもせず、戦闘員もマリアたちの声を全く意に介さず女性を祭壇の上に乗せた。
「「「うああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」」」
「苦しめ、苦しむがいい!」
その頃、廃工場内では未だに奏や翼、響の絶叫が響き渡る。
遂には、翼のシンフォギアからも煙が出て来た。
「お、風鳴翼のシンフォギアも壊れてきてるか」
「シンフォギアさえ無ければ、あいつ等を自由にしても良いんだろ。肉を食わせろ!久しぶりの若い女の肉だ!」
「俺は血だ、血を吸わせろ!」
「落ち着け、悪魔祭りの生贄の為に生かして連れて行くんだ。…死なない程度にしろよ」
怪人たちが、苦しむ響たちを見て雑談する。
シードラゴンの電撃で、奏も響たちも動けずただ苦しむしかない。こうなってはお終いだと判断したのだ。
「これでシンフォギア装者は全滅だ、この世界は我らの物になる!」
怪人の一体がそう宣言した。他の怪人たちもそれに異論はなくそれぞれが笑い声を上げ、中には他の怪人とハイタッチする者もいる。
地下には、マリア、クリス、未来を捕獲。地上の廃工場では、響、奏、翼がもう直ぐ無力化される。
怪人たちは勝利を確信した。
「そ…なこ…さ…い…」
「ニィィィチィィ、動けなくなったところで解放してやる!有難く思え」
シードラゴンの一体がそう言うと、締め付けている鞭の力を入れる。
中途半端に抜け出せないようにだ。
「ぜ…たい…誰も…い…」
「これで小娘どもも…ん?」
響の首に鞭を巻き付けたシードラゴンが違和感を覚える。
少しずつだが、響の腕の力が上がっている気がした。そしてその力は徐々に強くなっている気がする。
「な…なんだ、立花響にまだこれ程の力が…「絶対、誰も死なせるもんかあああああぁぁぁぁぁ!!!!」!?」
響の首を絞め電撃を流していたシードラゴンだったが、今までにない程の力に一気に引っ張らっれる。
これには怪人たちも行動が遅れた。直ぐに響を取り押さえようと怪人たちが近づくが、
「グワーッ!」
「何だ!?グワーッ」
「立花響め、シードラゴンを振り回して俺たちに当てて来た!?」
「見ろ、シードラゴンが子供の玩具みたいになっているぞ!!」」
突然の真横からの衝撃に吹き飛ばされた。
一瞬、何が起こったのか理解が遅れたが一体の怪人が響が振り回しているシードラゴンの所為だと気付いた。
そう、響はシードラゴンの鞭を握りハンマー投げの如く、振り回して自分に迫る怪人たちを迎撃したのだ。
「なんて女だ!」
響の行動に度肝を抜いた怪人の一体がそう叫ぶ。
未だにシードラゴンの電流を受けながらも響は、シードラゴンの鞭を掴んでシードラゴンそのものを振り回し怪人たちを攻撃、牽制する事に成功したのだ。
「え、遠距離攻撃が出来る奴は立花響を狙え!」
「ギュアー!」
「イヒッヒッイヒッ!」
響の逆襲に慌てた怪人が遠距離攻撃が出来る怪人が対応しろと言い、ドクガンダーとアマゾニアが両手を響に向けミサイルを放つ。
そのまま、ミサイルは一直線に響に進み命中するかと思われたが、響は振り回していたシードラゴンで全てのミサイルを叩き落す。
「ギュアー!?」
「何だと!?」
これには今までも響たちと戦っていた怪人たちも驚いた。
ほぼ殴る事でしか戦う事の無かった立花響が此処まで起用に立ち回り自分たちを翻弄している。その事実が怪人たちの動きを鈍らせた。
「…今だ!」
怪人たちの動揺に気付いた響は、ハンマー投げの如く引っ張り回しているシードラゴンを更に力を入れて振り回しある一点を見た。
視線の先は、奏と翼に電撃攻撃している二体のシードラゴンだ。
「二人から、離れろーーーーーーーーッ!!!!」
そう言い放ち、響は振り回していたシードラゴンを二体のシードラゴンに向け投げつける。
「なっ!?」
「にっ!?」
後ろが騒がしいとは思ってはいたが、先ずは目の前のシンフォギア装者を相手にしていた二体のシードラゴンにとって、響の行動は完全に予想外だった。
電撃の所為で床に四つん這いになっていた奏と翼は、床に近い事で難を逃れたが、普通に立っていた二体のシードラゴンは振り回されたシードラゴンが直撃し、吹き飛ばされ奏や翼を捕らえていた鞭が外れる。
「ゴホっ!」
「ハア…ハア…」
シードラゴンの鞭から逃れた奏が咳き込みつつ息を整え立ち上がる仕草を見せる。しかし、翼は息が乱れ意識も混濁している。それでも生きてはいた。
その様子に心配しつつもホッとした響は振り回していたシードラゴンの鞭を手放す。
響が解放したシードラゴンはそのままの勢いで廃工場内の止めていたトラックに直撃し爆発四散した
更には、シードラゴンの爆発に停まっていたトラックにも引火し爆発、廃工場内に黒煙が発生し視界を悪くする。
「いかん、火を消せッ!」
「これではシンフォギア装者を見つけ辛い!!」
トラックが燃えた事に慌てて消火を指示する怪人たち。
別段、火事程度の炎や煙ではビクともしない体だが、煙の所為であまりにも視界が悪くなってるのが問題だ。
煙の所為で同士討ちになるかも知れない上に、視界に頼らない怪人が抜け駆けして響たちを倒されるのも困る。再生怪人であるうえで手柄は何よりも重要なのだ。何より、この廃工場内には可燃性の物がまだある、密輸した武器弾薬だ。
怪人たちが慌ててる姿を横目に響は未だに咳き込んでいる翼と奏の方に向かう。
「翼さん、奏さん、大丈夫ですか!?」
「ゴホッ!ゴホッ!」
「ハア…響かい、すまない助かった…」
響の声に翼が咳き込み、奏が息を整えて反応し礼を言う。
翼と奏の反応を見て、怪人たちや周囲を見回した響は二人の腰を掴んでその場を離れる。
「ちょ…響!」
「我慢して下さい、少しでも身を隠せる場所に」
響の突然の行動に驚く奏だが、響の返答に納得もする。
今は怪人たちが混乱しているがそれが治まれば、また攻撃が再開する。少しでも回復はしといた方がいいのは奏も分かってはいた。
丁度、奏と翼は怪人たちからは見え難いトラックの陰に下ろされる。
奏が一息つくと咳き込んでいた翼もやっと息を整えているところだった。
その様子に安心したのか、響は陰になっているトラックの天井に上った。
「…何処に行く気だい?」
「怪人たちの相手をします、二人はまだ休んでいてください」
奏の質問に響は淡々とそう答え、奏が止める間もなく腰のブースターを動かし怪人たちの方に向かう。
戦闘員が消火作業でトラックの鎮火に成功し、怪人たちが安堵すると同時に怪人の一体が吹き飛ばされた。
「立花響っ!」
「丁度いい、探す手間が省けたぞ!」
仲間が目の前で殴り飛ばされたが、響の姿を見つけた怪人たちは嬉々として響を取り囲む。
取り囲まれる響は、ゆっくりと拳を握る、脳裏には翼と奏が回復する前での時間稼ぎだけだ。
「負けない、お前たちなんかに!来いぃ!」
「…此処は…奏?」
「起きたかい、翼」
シードラゴンの電撃で軽く意識が飛んでいた翼が正気に戻り辺りを見回す。
そこで、トラックの陰から何かを覗いている奏に気付く。
「私たちは一体…!」
一瞬自分たちが何をしていたのかと考えた翼だが、即座にアームドギアである剣を持つ。
そんな翼に奏はヤレヤレといった表情で
「落ち着け、翼」
と言う。
その言葉に強張っていた翼の表情もだいぶ崩れ構えていた剣もおろす。
「…立花は?」
そこでやっとこの場に立花響が居ない事に気付いて奏に聞く。
すると、奏はソッとトラックの陰から指を刺す。そして翼が陰から様子を見ると、
奏と翼の視線の先には、
「ハアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ケケケケケケケケケッ!?」
「ギュワー!?」
響の拳がサイギャングとドクガンダーを捉え殴る抜き、後ろから迫っていたハエ男に蹴りを入れる。
しかし、撃破するまでには至らず別の怪人が響へと攻撃する。
「クッ、踏ん張りが足りない!」
何時もの響なら腕のガングニールのパーツを引っ張り威力を上げるが、次々に迫る怪人たちを前にそんな暇はない。
結果、響は普通に拳と脚のジャッキで威力が少し上がった蹴りで対応するしかない。
翼と奏で協力していれば、まだガングニールのパーツを引っ張る暇は見つけれたが文句を言う暇すらない。
何とか隙を見つけガングニールのパーツを引っ張ろうと片手に手をかける。
「痛っ!」
突然の腕の痛みに見ると、片手のガングニールのパーツを引っ張ろうとした方の腕のガングニールを突き破り一本の鎌が突き刺さっている。
その鎌には鎖が付けられその先には、
「ギェギェッギェー! どうだ?立花響」
「…かまきり男」
かつて何度となく倒し怪人かまきり男の鎖鎌だった。
かまきり男に気付いた響は素早く笠利を一気に引っ張り、かまきり男を自分に近づかせた後に一気に腹部に一撃をいれ撃破する。
かまきり男が爆発した直後に痛みに視線を振るわせつつ、鎖鎌の鎖を引き千切って突き刺さった鎌を引き抜く。引き抜かれた鎌には響の赤い人造血液がベッタリとついている。
傷は直ぐに回復し貫かれたガングニールも元に戻るが、響には鈍い痛み残っている気がした。
そして、その鎌は自分を狙っていた怪人に向け投げる。
「そんな物が効くと思ったか、立花響!」
しかし、その怪人はゴースターだった為、鎌はあっさり弾かれ床に落ちる。
金属音が響くと共に再び怪人たちが響に迫る。
「不味い、直ぐに行こう!」
「…待て」
一人戦う響の姿に翼が加勢に出ようとするが、奏が翼の腕を引っ張り阻止する。
「何故だ、奏!このままじゃ立花が…」
「あれを見てみろ」
そう言うと、奏は響の居る方途は別の方を指差す。
一体何だと思いつつ奏が呼び刺した方を見てみると、
「シードラゴンに…かまきり男!?」
「ついさっき響が倒した、かまきり男がもう復活したんだ」
視線の先に響がいまさっき倒した筈のかまきり男が戦線に戻っている。ご丁寧に鎖鎌も健在だ。
さすがの翼もこれには早すぎると内心思った。
「今、響と合流してチマチマ倒しても無駄だな。奴らはアタシたちの想定以上に復活が早い」
「なら、猶更立花の援護を…」
「鼬ごっこだ、倒しても倒しても復活する以上…先に倒れるのはアタシたちだ」
本の僅かな間で怪人が復活し戦線へと戻る。カラクリは今一分からないが、たった三人で無限の兵力と化した怪人たちの相手など出来る訳が無い。
これが、ただのノイズならまだ戦いようはあるだろうが、ノイズを遥かに超える力量と狡猾な怪人たちだ。 いずれは圧し潰される。
「…ならどうすれば」
「一体一体倒しても無駄なら纏めて倒すしかない」
少しずつ倒しても駄目なら、いっそ一度に倒せばまだ希望があるかも知れない。
翼もこの奏の言葉に納得する。しかし、
「でも、奏…私にはそれだけの広範囲と怪人を倒せる程の攻撃法はない」
「ああ、アタシも流石には無理だ。だが当てはある」
翼からすれば、ノイズと違い耐久力も瞬発力もある怪人を倒せる程の広範囲攻撃は無くそれは奏も同じだ。
だが、奏には過去に響たちのS・O・N・Gと何度となく共闘した事であの事を思い出す。
しかし、それは天羽奏にとっても一種の賭けと言えた。
「ハア…ハア…」
響が肩で息をしながら拳を握る。
既に何体もの怪人を殴り飛ばし倒したりもしているが、未だに響は怪人たちに取り囲まれている。
既に体はボロボロで、シンフォギアは所々ヒビが入りインナーも破れ、頭のアンテナのような物も一本折れている。頭からも負傷したのか、傷が消えていても血が響の顔についている。
「どうした?立花響。抵抗せんのか?」
「此処までのようだな、立花響!」
響を取り囲むサボテグロンとアルマジロングがそう口を開く。
いくら響が怪人との戦いに慣れているとはいえ、流石に単身でここまでの数の差での戦闘は響としても初めてであり、終わりが見えない怪人たちとの戦いに響は疲弊してきている。
怪人たちもそれに気づいており、甚振るように響へ攻撃してきている。
━━━ヤバいな…限界が近い
響自身も改造された体とは言え、たった一人で此処までの怪人の相手に最早スタミナは残っていない。
そこまで時間も経ってない以上、翼も奏もまだ疲労の回復も終わってないだろうと考える。
「そろそろ死ねぇ、立花響!」
「!?」
トドメを刺そうと、響の背後にいたハリネズラスとアルマジロングが襲い掛かる。
疲労から対応が遅れた響は反応が遅れ、怪人たちの攻撃を喰らう事を覚悟する。
「アヤヤーーーッ!?」
「ヴアッ!?」
だが、響が目を瞑り覚悟をしても何時までも衝撃が来ない。
それどころか、怪人の悲鳴らしき物が響き、ソッと目を開けると、
「悪い、遅くなった響」
「お陰で十分休息を得られた」
アママジロングの腹部に槍が突き刺さり、ハリネズラスの方も何本も剣が突き刺さる。
両方の柄にはそれぞれの持ち主である女性が立っている。
「奏さん!翼さん!」
響の声が驚きと共に嬉しさが混じる。
そこには、奏と翼が復帰したのだ。
ハリネズラスとアルマジロングが爆発すると二人の髪が揺れる。
「ちっ、あと少しで立花響を始末出来たものを!」
「もう命令など知った事か、嬲り殺しにしてやるっ!」
あと少しで響を無効化で来た筈が、奏と翼の復帰で失敗し、激怒した怪人たちは地獄大使の生け捕りの命令を無視して響たちを本気で殺しにいく。
響たちも四方八方からの攻撃に回避しつつ、拳や蹴りを打ち込むが疲労の所為か怪人を怯ませるのがせいぜいだった。
━━━これじゃ、さっきと同じだどうす「響…」れば!
どうすればこの状況を打開できるか考えようとした響に奏が話しかける。
なんとか攻撃をかわし奏に視線を送る響。何か提案があるのかと期待もする。
「響、お前…S2CAを使えるかい?」
S2CA
それは、響が他者である仲間のシンフォギア装者と触れ合う事により放てる彼女たちの切り札。
絶唱を歌う事により威力を上げシンフォギア装者が受けるバックファイヤーを響が軽減して放つ威力は多大なエネルギーを出し相手に多大なダメージを与える。
「はいっ!」
奏の質問に響は元気よく頷く。
確かにこの状況ならS2CA有効そうとも言える。
「よし、翼!」
「ああ!」
響の返事を確認して奏が翼を呼ぶ。翼もガマギラーの鎖鎌との接近戦の最中に呼ばれ返事をしてガマギラーに蹴りを入れ怯んだ隙に奏の近くに行く。
必然的に、奏、響、翼の順となった。
「奏…本気で絶唱を歌う気?正直今の私でもバックファイヤーで死にかけたが…」
「だからってこのままじゃどっちにしろ嬲り殺しだ。アタシと響を信じな、失敗したら仲良くあの世逝きだけどね。響、ぶっつけ本番だが頼む」
「…はい」
絶唱を歌う事で不安がっている翼だが奏が無理矢理笑顔を作ってるのを見て結審する。
周囲には再び怪人たちが集まって来てるが、奏と翼は響の肩に手を当て目を瞑る。
「何をする気だ?貴様ら!」
「大人しく諦めれば直ぐに楽にしてやる!」
Gatrandis babel ziggurat edenal
「「「「!?」」」」
下卑た笑いをして響たちに近づいていた怪人たちがピタリと動きが止まった。
怪人の誰しもが響たちが何をしようとしてるのか予測出来なかったのだ。
「絶唱だと!?いかん、止めろ!!」
響たちの歌う絶唱にいち早く気付いたのは地下の地獄大使だ。
絶唱で何をするかは今一分からんが、マリアのライブ会場の時のように竜巻の様なエネルギーを出されてはかなわんと、廃工場内にいる怪人たちに響たちを止めるよう指示を送る。
Emustolronzen fine el baral zizzl…「! 避けて!」
絶唱の半分を歌い終わった時、響が避けるよう言うと、奏も翼も閉じていた目を開ける。
其処に殺気を巻き散らした怪人たちが自分たちに迫る姿が。
響の肩にやっていた手も放しアームドギアを握り、怪人たちの迎撃に移る。
「アイツ等、絶唱を歌わせない気か…そらそうだわ」
「そんなこと言ってる場合!?」
態々目の前で歌ったのだ。
当然止めに来るだろうと笑ってしまう奏に文句を言う翼。
それを見ていた響は余裕が無い筈なのに奏みたいに笑顔になってしまう。苦しい筈なのに体力も限界の筈だが、一人じゃないと思えば響の体から力が出てくる気になる。
「ケケケケケケケケケッ!」
「クッ!」
とはいえ状況が良くなるわけではない。サボテグロンのサボテン棒をギリギリで躱す響。
翼の方も再び蜂女が刺突剣で挑み、奏はエイキングの稲妻をガードする。
「痛ッ…」
━━━向こうも簡単には歌わせないか、当然ちゃ当然だがこのままじゃジリ損なのもたしかだ。どうにか…
エイキングの稲妻をやり過ごした奏は絶唱を歌う為の起死回生の策を考える。
翼や響の方も見てみるが、どっちも複数の怪人を相手に防戦一方で少しずつだが距離も開けられてる。
「このままじゃ完全に分断され…あれは?」
視線を戻し目の前の怪人を相手にしようとした時、途中で奏の視線はある物を捉えた。
━━━あれは、消火されたトラック?そう言えば奴らはアレでアタシ等の相手を中断したね…なら!
視界には響によって破壊されたトラックが映り、奏は怪人たちを牽制する方法を思いつく。
迫る怪人をジャンプして避け、序に頭部を踏んでより高く飛ぶと持っていたガングニールの槍を下へと投げつける。
投げつけられた槍は幾つにも分裂し、そのまま地面に落下していく。
「ヌッ! …?」
「なんだ?何処を狙ってやがる?」
奏の攻撃に一瞬身構える怪人たち、だが槍は怪人たちの頭上を飛び越える。
てっきり自分たちを攻撃する為の行動かと思たが肩透かしだった事で奏を馬鹿にする怪人。
「ただのハッタリか!それとももう狙いも付けられない程疲弊したか?」
「…! 違う、あの女の狙いは!」
最初はそれに洗っていた怪人だったが、奏の槍が通り過ぎ落下するであろう場所に目を向けた怪人の一体が奏の狙いに気付いた。
落下地点には、物資を運ぶために用意された幾つもの大型トラック。
奏の複製した槍は寸分狂わずトラックに直撃する。直後、全てのトラックが爆発炎上。
中には燃料を運んでいたトラックもあり、大きな爆発を起こした。
「イーッ!?」
「誰か火を消してくれ!!」
炎に呑まれる戦闘員。中には転げ回って火を消そうとする者もいる。
戦闘員だけではない、戦っていた怪人たちにも火の手は襲う。
「くッ、これでは見えん!」
「天羽奏め、これが狙いか!」
しかし、殆どの怪人は炎に呑まれようがへっちゃらだ。
改造手術で生命力も耐久力も人間を圧倒している怪人たち、ゴースターのようにはいかないが多少のマグマにだって耐えられる。
だが、そんな怪人ばかりではない。
「ウヒィーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
「ヒィーアッ! 誰か助けてくれっ!!!!!!!」
「おい、クラゲダールとドクダリアンが火に呑まれてるぞ」
「あの馬鹿、あっちこっちに移動して火をつけてやがる!」
火を苦手とする怪人たちが慌てふためき、火を消そうと走り回る。
どれもが火を弱点とする怪人で仕方ないにも思えるが、火を広げる以上邪魔な存在でしかない。
「ええい、、五月蝿い!! 火炎弾!」
「ギャアアアアアアアアアアッ!!!」
五月蝿く走り回る事で業を煮やしたゴースターが火炎弾でドクダリアンを始末する。
仲間である筈だが、作戦の邪魔となった以上ドクダリアンは最早役には立たないと判断されたのだ。
他にもクラゲーダールが別の怪人に始末された。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「また絶唱だと!?」
「! 立花響どもは何処だ!!」
突如、廃工場内で響いてくる絶唱の歌声に怪人たちは響たちの姿を探す。
当然さっきまで響たちが怪人と戦っていた場所には居ない。
Emustolronzen fine el baral zizzl
「黒煙でろくに周りが見えん!」
「ガソリンと燃える焦げ臭さの所為で匂いも分からん!」
トラックというトラックが爆発炎上し発生した黒煙が廃工場内を満たし、燃え盛る炎で発生したガスの所為で匂いに敏感な怪人も響たちの存在をおえない。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「早く火を消せ!」
「消火剤も戦闘員も使い切った!地獄大使に消火剤を持った戦闘員を要請しろ!」
「…ダメだ、さっきの爆発で通信機がイカレた!直接、地獄大使に報告するしかない!」
火を消すための消火剤はさっきで使い切り、戦闘員もトラックの爆発に巻き込まれ全滅に近い。
怪人たちも普通の火事なら兎も角、トラックの燃料や別系統の燃料に引火した大規模な火災は簡単には消火出来ない。
Emustolronzen fine el zizzl
「…! 居たぞぉ! 立花響と天羽奏、風鳴翼だ!」
丁度、響たちが絶唱を歌い終えた直後怪人の一体に見つかり、全員が一斉に響の方に振り向く。
途端響たちを中心に巨大なエネルギーの波が押し寄せ、その影響により燃えているトラックが次々と火が消えていく。
「S2CAトライバースト!」
本来、絶唱を歌えば歌ったシンフォギア装者に負荷がかかる。しかし、S2CAは中心となる響に負荷が集中する。
シンフォギア装者にとって諸刃の刃ではあるが、威力も絶大だ。
「ええい、殺せ!殺すんだ!」
「立花響の首をとれ!」
まだ間に合うと判断した怪人たちが血相を変え響たちに迫る。
既に廃工場内には様々な色に光る空間となっており、一部の残骸が消滅する。
「私たちの勝ちだああああああああああ!!!!」
既に腕を合わせガントレットを一つにした響は一番前にいるゴースターに向けアッパーを入れる。
ゴースターが悲鳴を上げる間もなく体は崩壊し、響のアッパーは一気に上に上がる。
すると、エネルギーは虹色の竜巻状になり全ての怪人がエネルギーに呑まれ上空へと送られる。
「ウオオオオオオッ!」
「ビリュリュリュリュリュッ!」
蜘蛛男がエレキボタルが次々と爆発していく。
彼等だけではない、響の生み出したエネルギーの竜巻に呑まれた怪人は軒並み爆散していく。
やがて、竜巻は廃工場の天井を突き破り雨雲を裂き更に昇っていく。
「馬鹿な…こんな馬鹿な事が、イィィチィィィ!」
「圧倒的に俺たちが有利だった筈が、ニィィィチィィ!」
「何故負けた!?何故…タァァーーーーーツッ!!」
シードラゴン三体のエネルギーの竜巻の威力にバラバラとなり最後は爆発した。
そして、間もなく虹色の竜巻は消え廃工場だった場所には響たちしか立っていなかった。
一粒の雨水が響の頬に当たる。
再生怪人は全滅した。
響が並行世界で並行世界の奏と翼でS2CAをする話。現状、ショッカー墓場を打ち破るには再生された怪人、全て倒すくらいですかね。原作でも本郷が怪人を全滅させたらなんか爆発したし。
思いっきり高熱の火事の場で絶唱を歌ってますが、響はGX冒頭で火事の中歌ってたので大丈夫でしょう。
奏は、何度となく並行世界の響のS2CAを見た設定です。
尚、並行世界の奏と翼はS2CAぶっつけ本番。翼に至っては奏に軽く説明しただけ。