改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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124話 地獄の使いが動くとき

 

 

 

『…先日未明、太平洋側600キロにあったじごく島が消滅しました。政府発表によりますと、じごく島付近の海底火山が噴火しその影響によるものと言われています。尚、じごく島に在住していた島民千人の行方は未だに分かっておりません。じごく島は嘗て世界大戦時での海軍基地としても使用され……嘗ては罪人を島送りに……米軍との戦いの様相でじごく島と……それでは次のニュースです』

 

テレビにより島一つが消滅した事が一般人に知らされる。

反応はまさに様々であり、身内を無くした者、故郷を無くした者、親類が居なくなった者と居るが大多数の人間は無関心でもあった。

 

田舎に特定災害ノイズが出れば、その田舎は全滅する事が多々あり人々の関心は消え、ある意味当たり前の反応になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

=???=

 

「シャフトの交換急げ!」

「誰かレンチ持ってないか!?」

 

男たちの声が響く人口の光が支配する大きな部屋。

そこかしこで、戦闘員が慌ただしく動き幾つのも火花…溶接している。

此処はショッカーのアジトであり巨大な格納庫として使用している。

戦闘員たちが何か大きい物を溶接したりしている。

 

「ジェネレーターの接続を急げ!」

「メインは最後に回せッ!」

 

其処には幾つものケーブルが繋がれ手足を取り除かれたゴライアスがあり戦闘員がそのゴライアスに取り付いて作業している。

 

 

 

 

 

 

 

「ええいっ!忌々しいシンフォギア装者共がッ!!」

 

薄暗い部屋の中、何かを破壊する音が響く。

同時に男の怒号も聞こえていた。地獄大使が心血を注ぎ最大基地にする予定であった、じごく島のアジトを失ったのだ。

予定していた計画が全て水の泡になり直属の配下であった強化怪人も全滅。それどころか世界征服の計画すらままならなくなっている。

 

「イーッ、こうなれば海外に行かせた再生怪人たちや工作員を呼び戻しますか!」

 

戦闘員の一人がそう提案する。

現在、地獄大使はある目的で復活させた再生怪人や工作員を中国や欧州、アメリカに行かせている。

目的は、有能な科学者の拉致や有力者と思しき人物の下調べなのだ。

有力者や権力者のゆすりや集り、時には身内を拉致して強制的にショッカーに協力させる。

ショッカーは昔からこの手で勢力を拡大してきた。

今回も地獄大使はその手を使おうとしていたが為に再生怪人を海外に送っていた。

 

「…いや、ワシの強化怪人すら敗北した以上、再生怪人を呼び戻したところで立花響を始めとしたシンフォギア装者に勝てるとは思えん。それに奴等には別の命令を送る」

 

少しでも戦力を増やすべきだと言う戦闘員の提案に地獄大使は否定する。

自身の子飼いでも強化されていた改造人間が負けたのだ。多少の強化をした再生怪人では響たちを倒せないと判断した。

そんな再生怪人でも地獄大使は別の利用法を思いつく。

 

「いっそ、世界征服を諦めショッカー科学陣にはアメリカや中国に亡命させるべきか?奴等ならば改造人間の技術は魅力的な筈だが…」

 

そう言ってモニターのスイッチを入れる地獄大使。

アメリカも中国や欧州も、科学の力でノイズを倒す改造手術や脳改造の技術は欲しい筈。特にアメリカは先史文明時代の技術を終わらせ神秘からの独立をしようと躍起になっている。

調子の乗ったアメリカなら日本に対して嫌がらせもすると読んだ地獄大使。

その時、何人かの戦闘員が部屋に入った。

 

「イーッ、格納庫より接続工事が完了したとの報告が入りました!」

「化学班より調査結果が報告されました。お受け取り下さい」

「調査部より例の情報を得られました!」

「例の調整が完了しました」

 

報告をしていた戦闘員がそれぞれ地獄大使に書類らしき物を渡す。

パラパラとめくる地獄大使だが、次第にいかめしかった表情に口の端が吊り上がる。

 

「ふむ…どうやらまだツキは此方にありそうだ」

 

先程までの怒りは何処にいったのか、地獄大使は笑い声を上げる。

その姿はまさに人外に見える程の気迫があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間が経った特異災害の本部である潜水艦内部。

じごく島の戦いから丸一日経ち、激戦を終え休息なり治療を受けていた響たちが指令室に集まる。

 

「今回はよくやってくれた、ショッカーの大規模アジトは無事消滅した。改めて礼を言わせてくれ」

 

源十郎がヒビキやクリスたちの前でそう言って頭を下げる。

共に戦い大分経つが、響やマリアたちは別の世界のシンフォギア装者でありヒビキに至っては正式に特異災害に入った訳では無い。

だからこそ、源十郎は協力者である響たちに礼を言っていたのだ。

 

「でも島の人たちが…」

「ええ、助けられなかったわね」

 

未来としては島の住民が既にショッカーに殺されていた事を心の中で引き摺っている。

それに同調するようマリアも言うが、未来とは違い既に割り切って表情をしている。

マリアたちも助けれるのなら民間人だろうが軍人だろうが助けるが間に合わない事も多い。

だからといって何時までも引き摺る装者たちではない。

直ぐに打倒地獄大使に向け顔を引き締める。

 

「あれだけのアジトを失ったんだ、あのオッサンのケツに火でも付いたんじゃねえか」

「お、言えてるな」

 

場の空気を察したのか、クリスと奏が明るく言う。

少しだけ指令室の空気が良くなるが、響としては懸念もあった。

 

━━━あのアジトを失った地獄大使は次にどう動くだろう?手持ちの強化怪人も減ったし力を入れていたアジトも失った。私たちもどの位、地獄大使を追い詰めている。

 

自分と同じ地獄大使はこの世界の出身ではない。手持ちの戦力も何れは尽きると考える響。

その場合、自分とは違い現地勢力の協力が無い地獄大使が如何出るかを考えていた。

そんな響の様子にヒビキが気付く。

 

「…なに?如何したの?」

「あ、…うん、何でもないよ。…何でも」

 

ヒビキが心配で響に軽く肘を当て「如何したの」か聞くが響は一瞬思考して「何でもない」と言う。

地獄大使の次の行動など考えても無駄だと思ったのだ。どちらにせよ、ショッカーが世界征服を諦める事はない。

 

「ショッカーが今後、如何出るかは分からないが注意しておいた方がいいだろう。そうそう、響くんに伝えなければならんことがある」

 

「「え?」」

 

源十郎の最後の言葉に響とヒビキが少し驚いた声を出す。

そして、互いの顔を見合わせ「どっち?」と声が揃う。

その反応にクリスとマリアだけでなく未来も奏も噴き出した。

 

「お前ら、双子かよ!」

「反応がソックリすぎるっ!!」

 

特にクリスと奏が爆笑し、未来が微笑ましく見守った。

内心「響が双子だったらこんな反応するかな?」と考える。

そして、その反応に響は乾いた笑いを出しヒビキに至っては目付きが更に悪くなり不機嫌になる。

 

「……スマンスマン、俺が伝えたかったのはこの世界のヒビキくんだ」

「…私?」

 

ヒビキの反応に源十郎が頷き口を開こうとした。

 

「…!指令、エージェント達から緊急連絡がッ!!」

「何だと!?」

 

友里あおいが緊急連絡が入ったと源十郎。

インカムを受け取った源十郎暫くの間黙って報告を聞いている。その内に顔色が優れなくなる。

そして、報告を聞き終えた源十郎は響たちに視線を合わせる。

 

「…良い情報と悪い情報が入った。どっちから聞きたい?」

 

突然の事でヒビキは辺りを見回す。

源十郎の言葉が分からなかった訳ではない。言葉の意味が一瞬分からなかったのだ。

クリス達の表情は何とも言えないといった感じで響の方を向くと、響はゆっくりと頷く。

意を決したヒビキは口を開く。

 

「い…良い情報から…」

「…昨日、君たちが休んでる最中にエージェントがある少女と会い保護した」

「…保護?…誰」

「……この世界の小日向未来くんだ」

「!?」

 

『未来に会える!?』

 

ヒビキの脳裏にその言葉と小日向未来との思い出がよみがえった。

ツヴァイウィングのライブの悲劇の後、親の仕事の都合で引っ越しせざる終えず碌のお別れすら言えなかった思い出。

一時は憎み忘れようとしたが別世界の未来と触れ合ううちに記憶が蘇る。

 

「良かったじゃねえか、未来に会えるぞ!」

 

そう言って、ヒビキの肩を叩いたのはクリスだった。

クリスとしては理由は知らないが、親友である筈のヒビキと未来が離れ離れになっているのはどうにも納得できない。

何より、元の世界の二人を知っている以上、出来れば一緒に居た方が良いと考える。

そしてそれは、クリスだけでなく状況の分からない翼以外皆そう思っている。

 

「…うん」

 

ふと響の方を見たヒビキ。響は何も言わず笑みを浮かべて首を縦に振る。

『また未来と会える』そう考えるとヒビキの胸に温かいモノが溢れてくる気さえする。

しかし

 

「…悪い情報は?」

 

それ以上に圧し掛かるのは源十郎の言っていた悪い情報だ。

未来が保護されたのが良い情報なら悪い情報は? とヒビキも知らず知らずの内に額に汗が浮き出る。

そして源十郎の口が重く開く。

 

「…ついさっき連絡が来た、小日向くんを保護していたエージェント達が全滅して小日向くんが消えた」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=源十郎が連絡を受ける数分前=

 

とある都内のホテル。

その内部のとある一室に一人の少女が椅子に座っている。

黒い髪に大き目のリボンで後ろ髪を結んでいる少女…小日向未来である。

 

「あの…何時になったら響に会えるんですか?」

「すいません、上の指示でアナタの保護を最優先しているんで…」

 

既に何度か質問したのだろう、未来の質問に答える黒服の女性。

 

未来はやっとお小遣いが溜まって、嘗て自分が引っ越した街に戻った。目的は大事な幼馴染兼親友の立花響を探す為だ。

実は未来は、これまでにも街に来ており響を探していたが結果はお小遣いがなくなっての時間切れ。

これまでにも相当な小遣いを使っている未来。それでも未来の頭には諦めの文字が浮かばなかった。

今回も未来は響を探す為に来たのだが

 

「失礼、小日向未来さんですね?」

「は…はい」

「日本政府機関特異災害です。立花響の事についてご同行願います」

「響っ!?わ、わかりました!」

 

政府機関の人間である黒服から響の名を聞いた未来。

居ても立っても居られず未来は黒服に促されるまま政府御用達のホテルに来た。

響に会えるという願いが叶うと思ったが一晩待っても響は来ず、それどころか時間が経つごとに不安が増してくる。

 

━━━よく考えれば何で政府が響の事を?響何かやっちゃった?

 

未来には政府機関と響の繋がりなど分からない。

だからこそ、未来は響が法に触れるような事をしたのではと不安になっていた。

響の性格を知っている未来だが、重苦しい空気を纏う特異災害の黒服の雰囲気で嫌な予感が次々と湧き出る。

 

その時、未来の居るホテルの一室の電気が消えた。

 

「…停電?あ、ついた」

 

停電何て珍しいなと思っていた未来だが、数秒もせず電灯が再びつく。

しかし、またもや消えつくを繰り返す。

同時に未来の護衛役だった黒服たちもお互いの顔を見合い拳銃を手にする。

突然、頃福たちが銃を取り出した事に驚く未来だが、妙な音がしている事に気付く。

箱の中に砂を入れ振り回してるような音。

 

━━━あれ、この音って前にテレビで聞いたような。…確かある毒蛇の…」

 

そこまで考えた時だ。

 

「ガラァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

突如、目の前の床を突き破り何かが飛び出してきた。

電気が点滅してる事で詳細までは分からないが、明らかに人間のシルエットではない。

 

「小日向未来を逃がせッ!急いで増援を呼べ、他の奴は私に続いて撃てぇーっ!!」

 

隊長と思しき黒服の女性が叫ぶように言うと、一人の黒服の女性が椅子から転げ落ちた未来の腕を引っ張る。

直後に、未来の背後から乾いた破裂音…銃声が響く。

未来には訳が分からない、政府の人間に任意同行され付いた先のホテルで待機してるとノイズでもない化け物が乱入し銃声が響いている。

過去に、響と見た映画を思い出すが今はそれどころではない。

 

「此処に隠れてください!」

「隠れてって、此処クローゼットじゃ…」

 

廊下を出て階段から未来を逃がそうとしていた黒服の女性だが、廊下や階段には既に戦闘員が陣取り脱出は不可能と判断した。

隙を見て、別の部屋に入った黒服の女性はその部屋にあるクローゼットに未来を隠す。

 

「良いですか、何があっても出てきちゃダメよ。これが終れば立花さんに会えるから」

「響…」

 

響に会えると考えた未来だがその間にクローゼットが閉まる。

その後、数発の銃声が響き静かになった。状況の分からない未来はそのままクローゼット内に座り込む。

政府関係者にホテルに連れられ怪物が現れ避難先がクローゼット内部、もう未来には訳が分からなかった。

一つ確かなのは未来が響に会いたいという思うだけだ。

 

━━━響…会いたい…会いたいよ、響!

 

会って話がしたい、触れ合いたいし抱き着きたい。未来にとって響の割合は大きい。それこそ異性に恋する少女のように。

 

「…音が消えた?」

 

聞こえていた銃声が消え静寂がクローゼット内を支配する。

騒ぎが治まったにしては、黒服の女性が来ない。

未来が立ち上がってクローゼットの扉に手をかける。女性には出てきちゃいけないと言われたが不安な未来にはそれよりも此処から出たいという感情が大きくなる。

そして、ゆっくりと扉を開こうとした瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。

 

「小日向未来、俺と一緒に来てもらおう。ガラァァァァァァ」

 

目の前には血を流し倒れた黒服の女性と蛇の化け物がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所と時間が戻り特異災害の指令室。

 

「これが、小日向くんが浚われた様子だ」

 

指令室のモニターに当時のホテルの内部が映る。

未来を護衛していた部屋に怪人が現れ、護衛の黒服たちが銃で応戦するが一人また一人と殺されていく。

 

「…ヒデェ」

「片手で引き裂いてる…」

「噛み付かれた即死した?毒持ちか」

 

映像は悲惨の一言だ。ホテルの監視カメラと黒服たちに持たせていた小型カメラの映像には男だろうが女だろうが怪人は受けようがお構いなしで淡々と黒服たちを殺害する。

そして、とうとう未来の隠れているクローゼットまで来ると黒服の女性が銃を撃つがアッサリと首を圧し折られ殺されてしまう。そして、怪人がクローゼットの扉に手を掛けた所で映像はストップした。此処までしか映像のデータが無かったのだ。

 

思わず口元を押さえるクリス達。やはり、ノイズとは違う殺し方に改めて恐怖する。

中でも未来と親友だったヒビキの顔色が悪い。

 

「…未来は…未来は何処に!?」

「特異災害のエージェントが救援に着いた時にはもう…恐らく怪人に連れ去られたようだ」

 

黒服たちの死体は引き千切られたり吹くしか残ってなかったりしているが殆どがそのまま残されており小日向未来の死体及び服は残ってはいない。

服ごと溶かされた可能性もあるが、ショッカーが未来の存在を知っていれば十中八九連れ去ったと考えている。

 

「ショッカーなら間違いなく小日向未来を拉致するわね」

「アタシ等に対する切り札って奴か?アイツ等らしいやり方だ」

 

ショッカーなら、此方にも関係のある小日向未来は最高の獲物と言える。

人質にするもよし、目の前で殺すもよし、死体を見せつけるだけでも、装者の心を揺さぶれる。

現に

 

「未来が…どうして、未来が…私の所為?」

 

既にこの世界のヒビキの精神が不安定になっている。このままで冷静に戦えるとは思えない程の動揺だ。

 

「…!来ました、ショッカーからの強制通信です!!」

 

『!?』

 

そんなヒビキを嘲笑うかのようにオペレーター席に座っている藤尭朔也がショッカーからの通信を報告。

その報告にクリス達にとっても予想通りでありジッとモニターを睨みつける。

直後、特異災害対策機動二課本部のモニターに地獄大使がデカデカと映る。

 

『これはこれは、ご機嫌いかがかね。特異災害どもよ』

 

「地獄大使!」

「コイツが…」

 

噂でしか知らない奏が源十郎たちの反応でモニターに映る男が地獄大使だと知る。

モニター越しとはいえ、画面越しに出る迫力を奏も感じ取り額に一筋に汗が流れる。

追い詰められてる筈の地獄大使が薄ら笑いを浮かべてる事で皆の考えが一致する。

 

「未来を…未来を返せッ!!」

 

モニターに映る地獄大使を睨んでいたヒビキが叫ぶように言う。

聞く人間が聞けばその様子は親とはぐれた幼子に見えただろう。

 

『フフフ、その様子なら既に知っているようだな。ならばこれを見ろッ!!』

 

「「「!?」」」

 

ヒビキの様子に薄ら笑いをしていた地獄大使は更に顔を歪め己を映すカメラを横にずらした。

そして、響たちが息を呑む。其処には青い十字架に縛られ気絶した小日向未来が拘束されている。

僅かに胸が動いてる様子から生きてはいるようだ。

 

「未来ッ!!」

「この野郎、未来をどうするつもりだ!」

 

『ハッハハハハハハッ!貴様らのその姿が見たかった!安心しろ、まだこの世界の小日向未来は生きている。返してほしくば、立花響ッ!ワシ等と貴様の因縁の場所に来るがよい!』

 

「因縁の場所?」

 

地獄大使の言葉に響は考える。

廃墟のビルや商店街や永田町に海沿いにあった海岸、消滅したじごく島を除いても地獄大使を始めとしたショッカーとの因縁は何処にでもある。

その内のどれかだと思った響。尤も、地獄大使はそれを見透かしていたようだ。

 

『どうやら勘違いしてるようだな。なら、これなら?』

 

モニター越しの地獄大使が合図を送る。

直後に、特異災害対策機動二課本部の指令室が揺れる。

 

「何だよ、この揺れ!?」

「か、海流が強制的に乱れています!…!指令、東京を中心に震度4の地震が!」

「震源地は…東京湾です!!」

「なんだとっ!?」

「東京湾!?地獄大使、まさか!」

 

揺れてるのは指令室だけではない、東京全体にも地震が襲い窓ガラスが割れ一般人はパニックになる。

そして、東京湾という言葉に反応する響。思えばこの揺れもあの時と同じと考える。

 

『フフフ…そのまさかよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

揺れ続ける東京湾地帯。

何人かの釣り人が周りを見て不安げになっていると

 

「おい、何だアレは!」

 

一人に釣り人が水中に何かの影がある事に気付く。

他の釣り人も覗く中、影はドンドン大きくなり海面から出る。そして、誰もが圧倒する巨大な島と建造物が現れたのだ。

 

「あ……大波だ、気を付けろ!!」

 

呆然とする中、島が浮上した影響で出来た波が大きく釣り人達は道具を放棄してその場を離れる。

波の影響で釣り人の道具が流された現場は不思議な静寂さに満たされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島が…浮上しただと…」

「…フロンティアかよ!」

 

一方、指令室のモニターでも東京湾に浮上した島を見て源十郎やクリスが反応する。

クリスに至っては嘗てマリアと敵対していた時に出現し戦いの地になった場所でもある。

そして、その島に見覚えのあった響は口を開く。

 

「地獄大使はアジトごと来ていた…」

 

『やっと気づいたか、マヌケ!』

 

響は、今までの地獄大使の戦力に納得した。

あの時、スーパー破壊光線砲を止める為に絶唱を唄いスーパー破壊光線砲をエネルギーと絶唱のエネルギーがぶつかり並行世界に転移した。

響は一人だったが、地獄大使はアジトごと並行世界に流されていた。

 

『ついでに見せてやろう。スーパー破壊光線砲を威力をなっ!!』

 

「ふ、浮上した島より高エネルギー反応!…ゴライアスのパターンと一致します!」

「何だとっ!?」

 

 

 

 

 

 

既に廃墟の団地からセットされたスーパー破壊光線砲の砲身先に光が纏う。

直後に、砲身から極太のレーザーらしき物が撃たれ港に命中する。

文字通り、港は蒸発したがそれだけではない。港に発射されたレーザーはそのまま直進する。

人も街を川を山をも飲み込んだレーザーは日本を横断するように蹂躙し遂には海外をも飲み込み地表を焼いて空に…宇宙に消えた。

 

 

 

 

 

「被害状況は!?」

「待って下さい、衛星との回線が不安定で…」

「指令、国会との連絡がつきません!」

 

指令室は慌ただしく職員が動く。

スーパー破壊光線砲には当たってはいないが、被害状況が分からないのだ。

それどころか、外との通信すら繋がらない事で一部の職員がパニックになる。

シンフォギア装者たちも冷静とは言い切れない。

マリアもクリスも奏すら口が塞がらず唖然とし未来と翼は口元を押さえヒビキはこの世界の未来を気にする。

響だけが奥歯を噛み締め拳を強く握った。

 

「…!衛星の回線が復旧しました。モニターに出します!」

「「「「「「!?」」」」」」

「カ・ディンギル並みじゃねえか…」

 

衛星との回線が戻り、衛星軌道上から撮られた日本が映り、装者は愚か源十郎を始めとした職員たちは息を呑んだ。

東京が、いや日本が真っ二つになっていた。

ショッカーのスーパー破壊光線砲のレーザーが進路上にあった全ての物を焼き東京を貫通し埼玉、群馬、長野、新潟をも貫通し外国まで伸びている。

 

その威力にクリスは自分の世界にあったフィーネが造った兵器「カ・ディンギル」を思い出した。

 

「なんて威力だよ…」

 

奏が思わず呟く。マリア達は反応しないが内心、奏の言葉に納得する。

今までも、聖遺物や錬金術、或いは未知の技術など見たことあるが、化学でのここまでの被害はクリス達とてあまり経験が無かった。

 

『見たか、これがショッカーのスーパー破壊光線砲の威力だ。今より2時間後、小日向未来を処刑して再びスーパー破壊光線砲を撃つ。目標は…富士だ!』

 

「富士山だと!?」

 

地獄大使は日本を壊滅させる為、次の目標は富士山だと敢えて教える。

富士山は日本一高い山で休火山でもある。もし富士山の地下に棒材なエネルギーを加えれば噴火する可能性は高く。もし噴火すれば日本が大変な事になる。

 

そして、地獄大使は勝利を確信したのか高笑いして通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一時間後に無差別爆撃ですって!?」

「未来を見捨てる気かよ!」

 

地獄大使の通信から一時間。

最初はパニックになっていた職員たちも冷静さを取り戻し、政府との通信も回復した。

マリアや響たちが未来の救出作戦を考えていた時、源十郎の口から予想だにしない言葉を聞く。

 

「…これより一時間後に東京湾に出現した人工島の無差別爆撃が決まった」

 

冷静さを取り戻した政府は、関係閣僚を集め急ぎ会議する。

突然の攻撃で被害は甚大で巻き込まれた政府関係者もいる。シンフォギアを知る官僚たちが出したのは航空自衛隊が全力を持って爆撃を行い東京湾に現れた島の殲滅だ。

無論、源十郎たち特異災害対策機動部二課から小日向未来が人質になっている報告を聞いてはいるが、このままでは富士山を打ち抜かれ日本が壊滅するかもしれない。

政治家としても一人の少女よりも日本本土と多数の国民を守る事を選ぶ。

 

しかし、それを聞いたクリス達は激怒する。

 

「オッサン、正気かよ!未来を見捨てるのか!?」

「見損なったぜ旦那!」

「俺だって救いたいが…」

 

クリスと奏が源十郎の裾を掴み抗議する。源十郎とて、見捨てたいわけではない。

本来なら未来を救いにショッカーの浮上したアジトに乗り込みたいが、地獄大使が待ち伏せをしている可能性が高い上に政府の上層部も無駄に犠牲を出すべきではないと爆撃の指示をしたのだ。

 

クリス達が言い争う姿を見て、マリアは敢えて何も言わなかった。ショッカーのスーパー破壊光線砲の威力、日本の政治家が慌てるのも分かると考えている。

それは響も一緒だ。このままではこの世界の未来が殺されると考えたら胸に痛みを感じる。

如何するべきか話そうともう一人に自分が居た方を見た。

 

「…アレ?」

 

さっきまで居たヒビキの姿が何処にもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ…ハアッ…」

 

ヒビキは一人、特異災害対策機動二課本部の通路を走る。

目的は、この本部の潜水艦の出口だ。

 

「未来ッ、未来ッ…未来ッ!」

 

ヒビキの口から幼馴染であり大切な親友の名が出る。

ヒビキは源十郎が未来を見捨て無差別爆撃をすると聞いた時に部屋を出ていた。

 

━━━アイツ等は未来を見捨てる気だ!嫌だ、そんなの嫌だ!未来が本当に居なくなるなんて…認めない!!

 

「私だけでも助けに行くんだ!!」

 

誰も未来を助けないなら自分が助けると言うヒビキ。

全ては自分の日向を守る為にだ。

 

「!?」

 

しかし、そんな決意をしたヒビキの動きが止まる。片腕を何者かに掴まれたからだ。

振り返った先には居たのは…自分と同じ顔、同じ声の響だった。

ヒビキが居ない事に気付き抜け出したのだ。

 

「…なに?邪魔しないで!」

「何処に行く気?」

 

ヒビキの問いに響は淡々と答える。

それに苛立ったのか、ヒビキは響の手を振り払おうとするがビクともしない。

 

「…離して」

「何処に行く気?」

「離して」

「何処に行く気?」

「離してッ!!」

 

ヒビキが大声で話せと言う。特異災害対策機動二課本部の通路にヒビキの声が響き渡る。

それでも、響は手を放さず真っ直ぐヒビキを見ていた。

 

「何処に行くって?決まってる、未来を助けに行くっ!!」

「一人で?無茶だよ、地獄大使がああまで誘った以上何かあるよ」

「そう言って未来を見捨てるの?政治家たちみたいに」

「!?」

 

未来を見捨てると聞いて響は顔を歪ませる。

響だって未来を見捨てる気なんて無い。無いがクリスと源十郎が討論してる横でヒビキが動いたので一旦止めてるだけだ。

 

「私が未来を助ける!皆が行かなくても私だけでも未来を助けに行くんだ!!」

 

ヒビキの言う事は痛い程分かる。

響も週刊誌のゴシップで迫害された時、家族や未来が心の拠り所であり何ならショッカーに拉致されていた間も未来に会いたいと思っていた程だ。

それ故に響の回答も決まっていた。

 

「私も行く。私も加勢してアナタと未来を助ける」

「助ける?私を助けるって言った?」

 

だが、響の「助ける」と言う言葉にヒビキは変な反応をした。

 

「誰も……誰も、私を助けてくれなかった。

私が本当に助けて欲しかった時には助けてくれなかった!助けてくれるって言ったのに!

…何で…なんで今更私の前に来たの!?なんでもっと早く助けてくれなかったの!?」

 

ヒビキの脳裏に迫害され家族も巻き込んだ光景を思い出す。

世間からは石を投げられ、マスコミからは生き残った事について根掘り葉掘り聞かれ、クラスメイトだった娘たちもヒビキを無視したり目の前で陰口を叩いたり。

何より辛かったのは、親の仕事の都合で別れの言葉すら言えなかった未来だ。未来が近くにいてくれたら耐えられた。

 

響もヒビキの事情はそこまで詳しくはない。それでも狼狽するヒビキをソッと抱きしめる事は出来る。

ヒビキは泣いた。今までにない程、それこそ響が帰りたいと弱音を零した時のように。

やがてヒビキの鳴き声が小さくなり

 

「…お願い…助けて」

「うん!!」

 

ヒビキのか細い願いを響は頷いた。

いや、響だけではない。

 

「そうと決めらりゃ行こうぜ」

「ええ、地獄大使が何を狙てるのか気になるしね」

 

響の背後に源十郎との会話が終ったクリス達が居る。

クリスがマリアが奏が未来が翼がそれぞれシンフォギアを纏い響たちに笑顔を向ける。

地獄大使との最後の決戦がせまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地獄大使が最終決戦場として再び、東京湾にあるアジトを浮上。
スーパー破壊光線砲を発射。スーパー破壊光線砲と言うぐらいだしこの位の威力はあって欲しい。
劇中だと一発も撃たずに滝に破壊されたような?YouTubeの「仮面ライダー対じごく大使」を見たのは随分前で記憶が…

案の定、今度はこの世界の未来を人質にする地獄大使。

スーパー破壊光線砲の動力には鹵獲されたゴライアスを使ってます。
ゴライアスの性質上、真昼間にアジトが浮上しました。


久々の次回予告

地獄大使「立花響を始めとしたシンフォギア装者ども、いよいよ最後に戦いだ。今度こそ、此処が貴様らの墓場だ。しかし、ワシが相手をする前にお前たちに紹介する者がいる。次回「ショッカーの新たなる戦士!?」楽しみに待っているがいい、フッハハハハハ」
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