改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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132話 並行世界から、こんにちはっ!

 

 

 

「平行世界だとッ!?」

 

ガニコウモルとの死闘が終り十数分後、特異災害対策起動二課本部の指令室で男が大声を出す。

そして、男の前には響たちが居た。

 

「…驚きすぎですよ、師匠」

「いや、驚くだろう!」

 

源十郎の様子に響が「驚きすぎ」と言うがクリスが当然の反応をする。

響たちはガニコウモルとの戦いが終わり本部へと戻って司令官である源十郎に報告していた。

その過程で本部が探知したガングニールといった聖遺物の反応は並行世界の自分たちのギアだと説明する。

 

「…本当に並行世界の君たちなのか?」

「本人が言うには、ギアを見せてもらいましたがゲルショッカーが用意したイミテーションの類では無く特異災害で造られたギアと同一でした」

「これをゲルショッカーがワザワザ用意した感じでも無いなしな」

 

そう言うと、クリスは自身のペンダント状のギアを掌に載せる。

このペンダントこそシンフォギアのギアであり特異災害が櫻井理論で製造された響たちの鉾だ。

これをワザワザ、ゲルショッカーが複製した可能性は低いとクリスは判断している。

 

「あのイグナイトって力も強いよね、前に一回見たけど今回の戦いでより強さが分かるよ」

 

前に並行世界で並行世界のクリスのイグナイトを見ていた響。

源十郎たちには言えないが、擦れ違いでの戦闘で響もイグナイトの力を見ているが、今回は第三者として見て改めてイグナイトの力に驚愕している。

 

「なんだ? 前に一度って()()()()()()()()()でもしたのか?」

「う、うん…」

 

響の発言に引っかかりがあったクリスが「共闘」したのか聞く。

尤も、勘違いで攻撃されイグナイトを使われたとは響としても言いたくはない。

ショッカーがゲルショッカーとなり、ゲルショッカーの改造人間ガニコウモルは強敵だった。

恐らく、自分たちだけでは力及ばず敗れる可能性が高い以上、並行世界のシンフォギア装者との共闘は必要だと考えてる響。

 

「それにしても平行世界か…博士の言っていた事は本当だったか」

「…気が狂って壊れたんじゃなかったんだな」

 

平行世界という言葉に翼がそう言うとクリスが返答する。

その博士とは、勿論

 

「勿論、この僕ッ! 英雄の中の英雄、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスゥゥゥゥゥッ!!」

 

「うわッ!?ビックリした!」

「ウェル博士?」

「…何時もよりテンションが高いな…」

 

いきなり何処からともなく現れたのはウェル博士。

その突然の登場にクリスは驚き、響はウェルの名を呟き翼はいつも以上に異様にテンションが高いウェル博士に引いている。

よく見ると、ウェル博士の目の下にクマがあるのが分かる。

 

「ほらね、並行世界あるでしょ!僕の言ったとおりだ、バンザーイッ!英雄たる僕の言う事は常に正しいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!ヒャッホッォォォォォォォォォ!!」

 

「うわ…何時もよりおかしくね?コイツ」

「完全にハイになっているな…」

 

いつも以上のテンションのウェルにドン引きするクリスと翼。

一見、狂気にでも落ちたのかとも思ったが苦笑いしてる響が口を出す。

 

「ウェル博士、暫く私の体の事や師匠の指示でショッカーの技術力の解析とかで碌に眠れてないようで…」

「今日で完徹五日目です♪ テンション上げなきゃやってられい程ですよ。僕はまだ記録上では牢獄内の筈なんですが………因みに僕に与えられた部下たちも同じで、そこの脳筋の藁人形を作ろうとしています♬ヘケッ!」

 

ウェル博士は色々限界だった。

その様子を見て増々ウェル博士にドン引きする翼とクリス。

よく見れば、彼のトレードマークとも白衣もヨレヨレで何処か汚れても居る。

 

「…オッホンッ!ウェル博士には、林で回収したショッカー戦闘員の遺体とゲルショッカーのガニコウモルの性能について質問の為に来てもらった」

 

ウェル博士の謎のハイテンションに源十郎は咳払いを一つしてウェル博士を呼んだ理由を話す。

響たちの戦闘後、ゲルショッカーに殺されたと思しき戦闘員たちの遺体を特異災害のエージェント達が回収しウェル博士に送られたのだ。

それはそれとして、ウェル博士からは「いい加減休ませろ」という無言の圧力を感じていたが

 

「僕は検死官になった憶えはないんですけど…戦闘員ですが、体には手術痕が少なかったですね、恐らくは洗脳なりして操っていたんでしょ。ガニコウモルについてはカニとコウモリの特徴を確認しました、合成怪人の話もハッタリではないでしょう」

 

そう言って、ウェル博士はまとめた資料を源十郎に投げる様に渡す。

言葉はさっきより落ち着いてたが、イライラしてるのは分かる。

後の、緒川の調査で殺されていたショッカー戦闘員の殆どは過去1~2年前の内に行方不明になり捜索願が出されていた者たちだったと判明する。

 

「…ご苦労だった、ウェル博士。 後で飴やラムネを送っておく。それから日本政府に陳情していた機械が搬入される予定だ」

「…もっとちゃんとした糖分が欲しいんですがね、政府からはやっと立花響用の調整機械やパーツが届くんですか、僕が要請してどの位経ってるんですか!」

 

やる事を済ましたのか、ウェル博士はグチグチ文句を言いながら指令室を後にする。

その足取りは少しフラ付いていたが、響たちは見送る事しか出来なかった。

 

「…ところで、その並行世界の翼たちは?」

「あ…アイツ等なら…」

 

ウェル博士の退室後、暫しのの沈黙が流れた後に源十郎が並行世界から来た響たちの居場所を聞く。

この場には、この世界の響と翼、クリスしか居なかったからだ。

源十郎の質問にクリスが答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲルショッカーだとっ!?」

 

場所…どころか世界自体が変わり、此処はS・O・N・G本部の指令室。

その指令室内に男…この世界の源十郎の声が木霊する。

そんな源十郎の前には平行世界に行っていた筈のヒビキたちが居る。

 

実は、ガニコウモルとの戦闘後、ツバサが自分たちの世界の源十郎への報告の為に単身戻りヒビキとクリスを先にこの世界の特異災害に行かせようとしたが、以前にマリアが一人の時にショッカーの襲撃で洗脳された記憶のあるクリスが止め、用心して三人とも元の世界に戻り源十郎に報告したのだ。

源十郎は、報告された内のゲルショッカーに反応する。

 

「はい、元の構成員だったショッカー戦闘員を粛清したとガニコウモルとブラック将軍を名乗る男から」

「…多分だが、あのブラック将軍はゲルショッカーの大幹部だと思う」

「うん、それ位の凄みがあった」

 

本部のモニターに気に吊るされたゲルショッカー戦闘員やブラック将軍の姿が映り、合成怪人というガニコウモルとの戦闘シーンも映る。

 

「うわ~、悪そうな顔デス」

「顔だけじゃない、能力も高いよ切ちゃん」

 

六人の装者がガニコウモルに蹂躙されている光景に切歌と調は額に汗を浮かべて眺める。

自分たちに比べ、ツバサやヒビキたちは適合率も高く強い。そんな彼女たちすらなすすべないガニコウモルの力に驚いている。

 

「ガニコウモルだけじゃないわね、戦闘員もショッカー戦闘員の倍以上の能力よ」

 

同じくモニターを見るマリアはガニコウモルだけでなくゲルショッカー戦闘員にも注目する。

ショッカー戦闘員に比べ派手な見た目だが能力の高さはアルカノイズ並みだと判断する。

 

モニターにはガニコウモルに苦戦する二組の響たちだが、此方の世界のヒビキたちがイグナイトを使い何とかガニコウモルを討伐する様子が映る。

しかし、調や切歌を震え上がらせたのは次の光景だ。

 

「人体が燃えてる…!」

「はぐれ錬金術師でも此処までやる奴なんて居ないデス」

 

逃げ遅れたゲルショッカー戦闘員が苦しみだし倒れた後に燃えだす姿だ。

死ぬ直前までクスリを欲しがるゲルショッカー戦闘員の反応と三時間という言葉に調と切歌も何となくだが想像できる。

 

「口封じ兼裏切り防止と言ったとこか」

「十中八九、そうだろうな」

「…冷酷さはショッカーの時からそんなに変わってはないでしょう」

「指令、戦闘員が焼けた地面の土からは何も発見できなかったそうです」

 

クリスや源十郎たちが話しているとオペレーター席に座る友里あおいがそう報告する。

ツバサたちは、一旦平行世界へ戻る前にゲルショッカー戦闘員が燃えた地面の土を持ち帰りS・O・N・Gの研究員に渡していた。

ゲルショッカー戦闘員の言うクスリの情報を得る為だったが、その研究員も何の成果も得られなかった。

 

「エルフナイン、そっちは?」

『…ダメです、錬金術方面でも調べましたが何も出てきません。…恐らく錬金術を使ってない可能性が…』

「…そうか」

 

研究員と共にエルフナインにも調べてもらっており、ツバサが何か掴めたか聞く。

しかし、ツバサの期待もエルフナインの返事で立ち消える。

エルフナインの返答に残念と思いながらも、錬金術でない以上

 

━━━全部がゲルショッカーの科学力なのか!?

 

何時だったか、「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」と聞いた覚えがあると考えるツバサ。

他の装者や源十郎も沈黙し、良く分からないヒビキだけが「えっと…皆どうしたの?」と不思議がっている。

 

その後、報告の終えたヒビキたちは少し休んでからゲルショッカーの居る世界に行く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……っという訳です」

「なるほど…」

 

翼とクリスの報告に源十郎は納得する。

ショッカーと戦ったと思えばゲルショッカーになり、強力な合成怪人とも戦ったのだ。報告の為に戻るのも仕方ないだろう。

取り敢えず、此方に来てゲルショッカーへ共闘すると言う情報で源十郎も胸をなでおろす。

それだけゲルショッカーの改造人間ガニコウモルの強く、響たちだけでは勝てない可能性が高い。

だが、平行世界のツバサたちシンフォギア装者も加われば勝てる確率は高くなる筈。

 

「…平行世界のツバサたちか…よし、準備しておくか」

「準備?」

 

ふと、源十郎の呟きに翼が反応する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある山奥…あるいは打ち捨てられた廃墟の地下。

その地下の一室にて巨大なモニターが設置されており、画面にはイグナイト化したシンフォギアを纏うヒビキたちとガニコウモルの姿が映っており、画面前には黒いヘルメットを被ったブラック将軍が居る。

 

『ブラック将軍、ガニコウモルが敗れたようだな』

「そのようですな、首領。例の並行世界から来たシンフォギア装者のイグナイト…中々の代物ですな」

 

ゲルショッカーのエンブレムから首領の声が響きブラック将軍が返答する。

自分たちの配下であり強力な怪人だったガニコウモルが敗れた映像が流れるがブラック将軍の表情に焦りはない。

寧ろ、唇の端を歪め笑みを浮かべてる姿はシンフォギア装者が見れば不気味な表情として背中に冷や汗が流れるだろう。

 

「そう…中々ですがその程度、最終的に勝つのは我々です、首領」

 

ブラック将軍の声が部屋内に届くと同時にモニターの映像が切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

何時もの人気のない森林公園の一角が突如光ると同時に三人の人影が現れる。

 

「…あの光のトンネル、何度通っても慣れねえな」

「あははは…」

「文句を言っても始まらんぞ、雪音」

 

人影の正体は、並行世界のシンフォギア装者のヒビキたちだ。

元の世界に情報を伝えた後に少し休んで再びこの世界に来たのだ。

三人は談笑しその場を移動してこの世界の特異災害対策機動二課本部に向か網と歩き出した時だ。

 

「なんか…暑くね?」

「…うん」

「今日は気温が高いのか?」

 

昨日来た時より暑いと感じる三人。

ヒビキもツバサもクリスも額から汗が噴き出す。昨日は身震いする程冷えた筈なのに、今は夏か初夏の気温のように感じる。

一応、寒さ対策をしていた三人はたまらず用意していた手袋やマフラーを外し、S・O・N・Gの制服の上着を脱いだ。

 

「おいおい、昨日の今日だぞ!」

「…冬がいきなり夏になった気分…もしかして私たち来る世界、間違えたんじゃ…」

「…いや、此処は間違いなく昨日来た世界だ。向こうにガニコウモルが抉って倒れた巨木がある」

 

いきなりの熱さにヒビキが目的の世界と間違えたのではと言うが、軽く周りを見回っていたツバサがそれを否定する。

ツバサは昨日戦った現場も確認していた。

ヒビキが空を見るが、相も変わらず雲のような物が日光を遮断しているが、所々日差しがさしている。

 

「…じゃあ何なんだ、この熱さ?」

「可能性の話だが、ギャラルホルンに何かトラブルが起きて私たちは何か月後の世界に来た。 …とか?」

「…有り得ない、なんてことは言えないですね」

 

ツバサが仮定の話であるがギャラルホルンに誤作動があったのではと言い、ヒビキも否定できずに居る。

何しろ、完全聖遺物ギャラルホルンはS・O・N・Gでも未だに制御も解明も出来ていないのだ。

ツバサの仮定の話を否定できず、ヒビキもクリスも沈黙してしまう。

 

「…仮にそうだとしたら、ゲルショッカーの相手をこの世界のアタシ等がやったっていうのか」

「急いで本部に行こう!」

 

もしも、ツバサの仮定が正しければゲルショッカーの改造人間の相手を彼女たちしか出来ず、もしこの世界のシンフォギア装者が敗れていれば日本はゲルショッカーに征服されてるかも知れない。

昨日の時点で翼たちに本部が潜水艦だと聞かされていた為、自分たちの本部がよく停泊している港へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「街中は復興が進んでいるからゲルショッカーが占領した可能性は低いね」

「油断すんなよ、油断して背中を見せた瞬間、アイツ等は正体を現すんだぞ」

 

無事に特異災害対策機動二課の本部である潜水艦に到着し中に入るヒビキたち。

一応、街中を見て回ったが政府関係者の人間や建設業の人間、一部住人が復興をしておりゲルショッカーが占領したとは思えないヒビキ。

しかし、クリスはショッカーのやり方を知っている以上、ゲルショッカーも平気でだまし討ちするとヒビキに警告する。

取り敢えず、急いでこの世界の特異災害対策機動二課の司令官に会って聞こうと指令室に急いで早足で移動している。と

 

 

 

「ちょっと、待って下さいよ!予定時間はもう過ぎてるんですよ、彼女はまだ来ないんですか!!」

 

「ん?」

「へ?」

「は?」

 

通路を歩いてる途中、本部の一室で聞き覚えのある声が響き足を止める三人。

このまま通路を進んで指令室に向かえば良いのだが、声のしたドア付近から目が離せない三人。

 

「…ねえ、この声って…」

「アイツだよな…この世界でも特異災害で働いてるのか?」

「ありえないとは言い切れないのが…」

 

三人の脳裏には、ある英雄狂いの科学者の顔が浮かぶ。並行世界でも何度か会い会話もしたが彼女たちの中では未だに苦手な人物と言えた。

その時、ドアが開き白衣を纏った人間が出てくる。

 

「はぁっ!? 高速付近でゲルショッカー戦闘員の目撃情報が入って装者が全員出撃!? 馬鹿ですか、囮の可能性だって…おや?」

 

通信機を片手に音を立てて扉を開けたウェル博士だったが、人の気配を感じたのかヒビキたちの存在に気付く。

一方、ヒビキたちは予想通りの人間にヒビキですら小さい声で「うわあ…」と呟いてしまう。

 

ヒビキたちは様々な並行世界に渡り事件を解決させてきたが、幾つかの並行世界にウェル博士が居り共闘してきた。

どの世界のウェル博士もクセが強く自分たちが引っ張り回される事が多いので彼女たちシンフォギア装者はウェル博士が若干苦手のようだ。

 

「何ですか、戻ってるのなら戻ってると言ってくださいよ! 変な服を着てるようですが…ほら行きますよ、政府に陳情していた装置の試運転です!」

「えっ…私っ!?」

 

そう物思いに耽っているとウェル博士はヒビキの手を掴み部屋へと連れて行く。

いきなりの事と予想外で驚くヒビキはアッと言う間に部屋の中へと連れてかれ、ツバサとクリスも急いで中へと入る。

 

部屋の内部には、ウェル博士と同じ白衣を着た人間が何人も居り、ツバサとクリスに気付くと挨拶をする。

恐らくはこの世界の翼たちと勘違いしてるのだろうが、ツバサとクリスの目を引いたのは見た事もない装置だった。

MRIが数台置かれ、SF映画に登場する様な装置が幾つもある。

ヒビキとウェル博士は、一台の装置の前に来る。それは、人一人入れる空間と周辺に何かを記録する装置らしき物が取り付けられている。

 

「それでは早速脱いでください」

「はい?…はいっ!?」

 

ウェル博士のいきなりの言葉にヒビキの思考は停止し、ついでにツバサとクリスもフリーズする。

彼女たちの知るウェル博士は、色々と濃い人物だが女の子にそんな事を言う人間では無かった筈だ。

そんなヒビキの反応に気付いてるのか気付いてないのか、ウェル博士は不思議そうな表情をする。

 

「何してんですか?アナタの体を見るには服は邪魔なんですよ。第一、この装置の仕様も確認する為に先ずは脱いで試すしかないんです。それにもう何度か脱いでるでしょ」

「何度もっ!?」

 

戸惑うヒビキにぶっきらぼうに言うウェル博士。

ウェルが響の担当医であり、死神博士の生体改造学も学んでいる以上、響の体調や調子を見る為、響の裸を何度も見ている。それだけ、響の体の中はデリケートと言えるが事情の知らない平行世界のヒビキはパニックになるだけだった。

 

━━━どうしてウェル博士がこの世界のわたしの裸を見てるの!?もしかしてそういう関係!?

 

ウェル博士の名誉の為に言うが、別段ウェル博士は響の裸を見て興奮はしていないし別段付き合ってる訳でもない。響の体を見れるのは現状、ウェル博士だけだ。

それを知る由もないヒビキは顔を赤くしアワアワとしている。

 

「…イ…」

「どうしました?早く脱いで…」

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

ヒビキの渾身のストレートがウェル博士を襲う。

突然の行動に、ウェル博士は反応できずヒビキのストレートアッパーを喰らい天井に体をぶつけた後床に倒れる。

シンフォギアの状態ではなかったが、源十郎との特訓と戦いの経験で腕を上げたヒビキにはこの位余裕だった。

 

これには最初も微笑ましく見ていたウェル博士の部下の職員たちも唖然とし、誰もウェル博士を助けに行けない。

それどころか、

 

「この変態野郎ッ!」

「ウェル博士、アナタという人はっ!!」

 

クリスとツバサが倒れたウェル博士に蹴りを入れウェル博士を罵倒する。

二人の目にはウェル博士がヒビキを無理矢理手籠めにしようとした様に見えたのた。

二人に蹴り続けられるウェル博士は、「まっ…やめ…なん…で…」と呻き声を出しているが二人がそれを気にする事は無い。

そして、ヒビキのほうは

 

「…汚されちゃった…汚されちゃったよ、未来~~~ッ!!」

 

ガン泣きして未来の名を呼ぶ。

最早、地獄絵図に近くウェル博士の部下の職員はオロオロするばかりだ。

 

 

 

 

「ウェル博士、遅れてスミマセン!」

 

その時、研究室の扉が開くと少女が一人入って来た。

その少女こそ、この世界の立花響だ。

ウェル博士の部下は響の姿を見て「ふぁっ!?」と更に驚く。

 

「…えっと…?」

「たく、誰だよ!ゲルショッカー戦闘員て言ったのは!? 居たのは青タイツ穿いた下着泥じゃねえか!」

「そう言うな、雪音。人間誰しも間違いが…?」

 

響に遅れて翼とクリスも室内に入るが、部屋内の異変に直ぐに気付く。

自分たちと同じ姿の少女が床に座り込んで泣いて、倒れたウェル博士をリンチする二人。

ウェル博士の部下は自分たちと少女たちを交互に見て余計オロオロするばかり。

 

「何だ、この地獄絵図」

 

思わずこの世界のクリスが呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度は申し訳ありませんでした!!」

「あ…いや…」

 

あれから数分、場所は変わり指令室では、平行世界のツバサが源十郎に頭を下げ謝罪する。

そのツバサの背後には同じく頭を下げているヒビキと平行世界のクリスも居た。

 

あの後、響たちがウェル博士をリンチする二人を止め、一応事情を話して誤解を解きやらかしたツバサたちはこの世界の風鳴源十郎たちに謝罪している。

源十郎の傍らには包帯を巻かれミイラみたいになったウェル博士もいた。

 

「まったく…平行世界の装者がゴリラとは到底思いませんでしたよ。人の話も聞かずにいきなり顔面を殴って、倒れた僕を足蹴にするなんて…ああ、ゴリラは森の賢人でしたね。なら君たちはさしずめチンパンジー…いえ、猿以下の存在ですかね?」

「「「………」」」

 

ウェル博士の罵倒をグチグチと聞く平行世界のヒビキたち。

勘違いだったとはいえ、顔面を殴って事情も聴かずに倒れたウェル博士を蹴っていたのだ。多少の罵詈雑言は覚悟しなければならないと、あのクリスですら黙ってウェル博士の愚痴を聞いていた。

 

響たちもヒビキたちの背後で苦笑いしながら聞いている。

平行世界から来たヒビキたちの気持ちも分かるが、響の担当医役のウェル博士の勘違いからの攻撃には響たちも少し哀れに思う。

 

「まあまあ、ウェル博士もその辺で。彼女たちにも悪気はないだろうし…」

「悪気が無ければ、他人の顔を殴って良いんですかね? …僕はもう帰りますっ!装置の試運転は明日からですからね!」

 

ある程度愚痴ったウェル博士を源十郎が止める。

ある程度はスッキリしたのか、ウェル博士も文句を言いつつ指令室を後にする。

ウェル博士の反応に冷や汗を流しつつ視線をヒビキたちに向ける源十郎。

 

「済まなかったな、普段のウェル博士なら…厭味ったらしい方だが責任感はある方で…」

「存じています」

「気難しいのは変わらないね」

 

源十郎が出来もしないウェル博士のフォローをしようとしてツバサたちがそう返答する。

同時に、並行世界にもウェル博士の存在と何かやらかした事を確信する源十郎たち。

 

「ゴホンッ! …まあ、こんな空気になってしまったが…」

 

一度咳払いをした源十郎は改めて並行世界のツバサたちを見て何かを決心する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っという訳で、並行世界の友人たちの歓迎会だ!!」

『イエエエエエェェェェェェェェェェェーーーーーーッ!!!』

 

源十郎の掛け声と共に周りの職員が一斉に同調し中身の入ったグラスを掲げる。一応、職務中ということで酒ではない。

天井付近には「ようこそ、並行世界のシンフォギア装者たち」といった暖簾が掲げられている。

並行世界から来たヒビキたちもコップを持って苦笑いを浮かべている。

 

「何か懐かしいな…」

「…叔父様らしいと言えばそれまでだな」

「アタシの場合簡素だった記憶が…」

 

嘗て、ヒビキとクリスが初めて特異災害に来た時の記憶が蘇り懐かしい気分に浸り、ツバサは少し頭が居たのか片手で頭を押さえている。

 

一方、響たちの方は、

 

「…お祭りかな?」

「指令はこういうの好きだからな…」

「遅れた祝勝会を思い出すな」

 

壁を背にヒビキたちの反応を見ていた。

平行世界の装者と交流し、団結を高めゲルショッカーに対峙するのは分かるし、その為の歓迎会だとも思っている。

問題があるとすれば、自分たちがついていけない事だ。

 

そんな自分たちを他所に平行世界の装者(自分たち)は既に料理を堪能したり、オペレーターの友里あおいからココアを貰って談笑している。

呆れつつも翼とクリスもその中に混じっていき、響一人だけ壁の花になっている。

 

━━━つまんないな…抜け出して未来の所に行こうかな…

 

出された料理は美味しそうだと思うが、食べる事の出来ない響には如何でもいい話だった。

見れば、並行世界のヒビキたちが源十郎の片腕が無い事に気付いて騒ぎ、源十郎が言葉を濁しつつ腕を失った理由を話している。

平行世界のヒビキたちが驚く姿を見て水の入ったコップを取って一口飲む響。

 

━━━やっぱり帰りたいな…

 

元気そうな並行世界のヒビキを見て帰りたいと思っている響。

少し話して平行世界の事情も少しだけ聞いた、彼女たち曰く「ショッカー」など聞いたこともないそうだ。

闇に隠れ見つかってないのかも知れないし、最初から存在してないのかも知れない。

ふと、ヒビキの方を見ると大き目の更に色々な食材を乗せて箸で美味しそうに食べている姿が。

 

━━━もしもショッカーが居なかったら、わたしも「ねえ」!

 

物思いに更けていた響の耳に今一番聞きたくない声が聞こえた。

見ると、ヒビキが何時の間にか自分の前に居り、山盛りの皿を自分の前に出していた。

 

「さっきから何も食べて無いよね、良かったらどう? 唐揚げとか美味しいよ♪」

 

どうやら、ヒビキは壁の花になっていた響が気になり料理を持って話しかけたのだ。

響は少し、料理とヒビキを交互に見て溜息を出す。

 

「ゴメン、今ちょっと食欲ないんだ…」

「ええ、そうなの残念だな」

 

響が断るとヒビキ残念そうにそう言って盛った料理を次々と口に入れていく。

その後も、ヒビキが一方的な会話をし、響は生返事で返答する。

時間にしてみれば数分も経っていない、それでも響にとっては数時間のように感じていた。

そして、話し終えたのか単純に皿の上の料理を補充しに行ったのかヒビキがその場を離れ響が一人の残る。

すると、響が持っていたコップを持つ手に力が入り砕けてしまう。

 

まるでそれが合図の様に響は扉に向かって歩き少し歩いた通路で膝を抱えるように座りだす。

 

「…私ってこんな嫉妬深かかったんだ…」

 

響は思い出す、ヒビキが美味しそうに料理を食べていたのを。ヒビキが楽しそうに仲間同士で話すのを。そして、ヒビキが楽しそうに自分に話しかけ一緒にゲルショッカーを倒そうと言った事を。

 響は今まで感じたことない感情に戸惑い、先程まであんなに会いたがっていた未来に今は会いたくないと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




XDの劇中でも、ヒビキたちが並行世界の本部の指令室で「定時連絡に来ました」と言って其処で初めて気付く場面が多いので今回もそれで。

ウェルが暴走気味ですが、何日も徹夜をしていればねえ…。
全ては、ウェル博士に変わる頭脳を持つネームドが櫻井了子(フィーネ)意外だとエルフナインしか居ない事。
エルフナインが加入すればウェル博士もたぶん楽になる。

響の感情は響の言う通り嫉妬、ですね。
ショッカーに拉致されず改造人間にもされずに元気にご飯を食べる姿を横で見る。ショッカーが悪いとはいえ響の感情はボロボロです。
え、翳り裂く閃光ではグレ響に嫉妬してなかった?
だって、グレ響は元気にご飯食べてなかったし…。
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