改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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寒さの所為で手がかじかむ。

毎年今年は寒いな~、と思う作者です。


138話 ゲルショッカー 死の配達部隊!

 

 

 

 

一部明かりが点き幾つ物機械が置かれた部屋。

中では、蛇に巻かれた鷲のエンブレムが彫られたヘルメットを被った軍服の男…ブラック将軍が佇んでいる。

そして、ブラック将軍の前には人一人が余裕で入れるガラス管が置かれ中で気泡が上がる。

その気泡が何かに当たった後、上へと消えるのを冷たい目で見るブラック将軍。

 

「中の状態は如何なっている?」

「ギーッ、細胞の数値が安定しました。もう間もなくロールアウト出来るかと」

 

ブラック将軍の問いに白衣を着たゲルショッカー科学陣が答えると共に用意していた資料をブラック将軍へと渡す。

資料に目を通したブラック将軍は満足いくデータでも得たのか口の端を吊り上げ首を縦に振る。

直後、別の白衣を着たゲルショッカー科学陣がブラック将軍の下へ来て報告をする。

 

「例の()()()の改造手術が開始されました、吉報をお持ちください」

 

例の志願者。ブラック将軍が廃工場で会ったゲルショッカーに入りたいという変わり者たち。

イタズラや特異災害の罠の可能性もあったが、ブラック将軍が敢えて簡単な暗号をネットで流し郊外の廃工場へと誘き寄せた。

特異災害対策機動部二課を警戒しつつ、暗号を解いて廃工場まで来た人間の下見も兼ねブラック将軍自身が迎えた一団。

それが志願者と呼ばれた者たちだ。

 

「それにしても、あの者たちの組織に入った動機がアレとはな。立花響にとっても因果な物だ。…おっと、もうこんな時間か」

 

後に、志願者たちの動機や過去を調べたブラック将軍が更に口の端を更に吊り上げ不気味な笑顔を作る。

ブラック将軍の調査で志願者たちにはある共通点が…

 

そう物思いに更けていたところ、設置されていた時計の時刻を見て呟くブラック将軍。

その場を後にし、ブラック将軍が部屋を出る。

 

部屋には白衣を着たゲルショッカー科学陣たちとオレンジがかった茶髪が浮かぶガラス管だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の深夜。

時計が0時近くなり風鳴本家の一室。空は完全に日が沈み僅かながらの月夜が辺りを照らす。

その部屋の中には着物を着た風鳴訃堂が刀を傍に置き座禅し、周囲には何本もの火の点いた蠟燭が置かれている。

更に、風鳴訃堂の前には二人の翼も座禅していた。

 

他のメンバーも中庭を歩いたり門の方で警戒したり夜食を作り時間まで仮眠していたりでまちまちだ。

 

 

 

 

 

 

 

「クチュンッ! …ああ、寒み~」

 

丁度、風鳴家の玄関である門の前でクシャミをするアナザー翼。クシャミする声は可愛かったがその後が親父臭い。

門番という訳ではない、単純に風鳴訃堂と距離を置きたいためこの場所に居ただけだ。

アナザー翼がクシャミをした事で傍にいたアナザークリスがポケットからハンカチを取り出してアナザー翼に渡す。

 

チーンと鼻をかんでハンカチを返すとアナザークリスは嫌な顔一つせず受け取って仕舞う。

その様子に顔をしかめたのはこの世界のクリスだ。

 

「うへ~……」

 

クリスは並行世界のアナザークリスがアナザー翼相手に尽くしてる様子が少し信じられない様子で内心、本当に並行世界の自分か疑ってもいた。

それぐらいアナザー翼を甲斐甲斐しく世話をしていたからだ。

 

「よくもまあ、アイツの世話が出来るな…」

「慣れてるから」

「へへぇ~オレのクリスだぜ」

 

クリスが並行世界のアナザークリスによくアナザー翼の世話が出来るなと言うと、アナザークリスは微笑んで見せアナザー翼がアナザークリスの肩を抱きクリスにアピールする。

その言葉で何となくだが二人の関係が分かったクリスは顔を赤くする。

 

「それにしても今は真冬か?えらい寒いな」

「…季節的にはもう夏になるんだけどな…地球に落ちた隕石の影響でまだ寒いんだよ」

「隕石…この世界に来る前に聞いていたけど…そこまでの戦いが…」

 

隕石と言う言葉にアナザークリスがそう言うとクリスは「まぁな…」と言う。

天候そのものは、大気に浮かんでいた塵も大分薄まり、太陽の陽も戻っては来たが完全ではない。恐らく今年の夏は冷夏どころではないだろう。

 

「そんだけの激戦かよ」

「………」

 

死神博士とのフロンティア争奪戦の話は長くなりそうな上に、クリス自身もあまり言いたくない。現にアナザー翼の質問に答えなかったクリス。

クリスの反応を知ってからアナザー翼とアナザークリスは察したのか、それ以上聞こうとしなかった。

 

「お疲れさまです!」

「あ…ああ、お疲れ…」

 

その時、そんなクリスたちに話しかけた者がいる。

その人物は風鳴訃堂の部下の黒服の一人で本来は門番の役目があったが諸事情によりクリスたちに門番を代行してもらっていた。

 

「何か変わった事は?」

「特には…」

「寒い以外は何にも」

 

黒服に「変わった事があったか?」と聞かれるがアナザー世界の二人がそう答えた。

黒服たちも平行世界の翼を見て驚愕するが人間は慣れる者。今ではアナザー翼が気軽に黒服と会話をすることが増えていた。

今も、黒服とアナザー翼が談笑しかけていた。

 

「それにしても、0時まであと少しだぞ」

「本当に来るんでしょうか?」

「たぶんな、奴等はこういうのでハッタリにしない」

 

時間までもう間もなくとなるが辺りには自分たちと黒服以外誰もいない。

本当に来るのか疑問に思うアナザークリスにクリスは「来る」と答える。

ショッカーの頃から戦って来たクリスは、これがハッタリではないと半ば確信している。

その時、暗闇の方から砂利を踏む音がした。

 

『!?』

 

一体何時から居たのか?

誰しもが暗闇の中には人っ子一人い無かった筈の場所に誰かが立っている。

見た感じ黒尽くめの様な上に道を照らす街灯が遠い為、全容の確認すら困難だった。

 

「…誰か居るのか?」

 

シンフォギア装者たちの空気を察したのか、門番としての役割を思い出したのか黒服が暗闇の陰に近づく。

見間違いならそれでよし。関係ない人影なら帰るよう促すだけだ。

 

「この辺りは関係者以外侵入が許されていない直ちに立ち退きを……」

 

黒服が職務上の規定を言い人影にその場を立ち去るよう言う。

その時、クリスたちの見守る中、時計は0時を指し風鳴本家の置時計が鳴ると共にシンフォギア装者たちの身に着けていた時計も時を知らせる。

 

自身の時計も鳴りアラームを止めるアナザー翼だが、直後に何かが落下した音とボールのような物が転がり自身の脚に当たる。

 

「…げぇ!?」

 

当たったボールのような物に視線を向けるアナザー翼だが、その口からは恐怖の混じった声が漏れる。

 

「…ウッ!」

「チィッ!」

 

アナザー翼の声に視線が向く二人のクリス。

足元に転がった物の正体にアナザークリスは口元を押さえ小さな声が漏れ、クリスは舌打ちをする。

その正体は、先程まで自分たちと話していた黒服の頭部だ。

 

クリスが視線を戻すと、首の無くなった黒服の体は力なく倒れ、その前には黒服以上の黒尽くめの男がいる。

黒服の血が地面に広がるが黒尽くめの男は躊躇もせず血を踏みクリス達に近寄る。

 

「時間だ、想定通り小娘どもも要るな。 死んで貰うぞ、シンフォギア装者ども!」

 

そう言うと、黒尽くめの男が両腕をクロスさせる。

瞬間、黒尽くめの男の姿が変わり両脇から先端が灰色の白い羽が生え、右腕が多いな鳥の足の形をし左腕は鎌の様に曲がった白い角の様な物になり頭部は大きなカマキリの様な目に口からは何本も牙が生えている。

 

「ワシカマギリ!貴様らに死を送る死の配達人だ、風鳴訃堂と共に死ねぇッ!!」

 

クリスたちは怪人の襲撃を受ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリス達が怪人と遭遇する直前の時。

風鳴訃堂の居る部屋にて、風鳴訃堂は目を瞑り精神を集中し二人の翼も同じように目を瞑っていた。

すると、部屋の襖が開き誰かが入る。

 

「ふぁ~…ねみぃ…」

 

その正体は仮眠していた並行世界のクリスだ。

単純に風鳴訃堂の特訓で消耗した事で飯を食った直後に仮眠を取っていた。

 

「…だらしないぞ、雪音!」

 

そんなクリスを注意したのは同じ平行世界の翼だった。何しろ今のクリスは寝起きという事で口の端に涎の痕とボサボサの髪形で他人には見せにくい姿となっている。

仲間である平行世界の翼も流石に苦言を呈す。

 

「しょうがねえだろ、爺さんのしごきでクタクタなんだよ。それよりそろそろ時間だけど奴等、本当にくるのか?」

「…愚かな、このひりつく殺気にすら気付かんか」

 

一眠りした並行世界のクリスがゲルショッカーが予告通りに来るのか疑問を口にすると風鳴訃堂が静かに答える。

その言葉に腹が立ったのか並行世界のクリスは風鳴訃堂を睨みつけ何か言おうとした時だった。

時刻が0時になり、風鳴本家の置時計が「ボ~ン~」と音を連続で出した。

クリスとしては滅多に茎事の無い音に耳を傾けていた。

 

「………! 其処だ!」

 

丁度、置時計の音が収まった時だった。精神を集中し座禅をしていた風鳴訃堂がカッと目を見開き刃渡り2~3㎝の小刀を懐から取り出し外に繋がる障子へと投げた。

投げられた小刀は、そのまま障子を貫通し外に飛び出して突き刺さる音がした。

 

「!」

 

翼が素早く障子を開き外の様子を確認する。

風鳴訃堂の投げた小刀は本家の柱に当たっており、翼が周囲を確認するが誰もいない。

しかし、風鳴訃堂の言っていたひりつく殺気を感じる。

 

「おい、何が起こって…」

 

平行世界のクリスが口を開きかけた時だ。

 

「流石は護国の鬼と言われる漢だ、勘が鋭い!」

 

「「!?」」

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

自分たちしか居ない筈の部屋に聞いたことも無い不気味な声が聞こえ、並行世界の翼とクリスに寒気が走り、この世界の翼は一早くシンフォギアを纏い剣を抜く。

遅れて並行世界の翼とクリスもシンフォギアを纏い室内を見回す。

 

「何処にも居ない…」

「また体を透明にでもしてんのか?」

 

「そんなに俺の姿を見たいか? ならとくと見るがいい、貴様たちをあの世に送る死神の姿をなっ!!クモォォォラァァァァイッ!!」

 

直後、部屋の電灯が点滅し自分たちの横に人影が現れ並行世界の翼とクリスが吹き飛ばされる。

その先には、

 

「現れおったな化け物め」

「これはまた不気味な姿だ」

 

翼が襲撃してきた怪人を見て「不気味」と言う。

自分たちの前に現れた怪人は鬣が生え左は巨大な猫型の肉食獣で右側は昆虫の複眼を持った怪人だ。

体には左側が毛で被われ右は黄色と緑の毒々しい色をして腹部には鷲に絡まる蛇のマークが入っているベルト。

 

「クモライオン、死への旅立ちに覚えておくがいい、クモォォォラァァァァイッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、怪人が出やがった! 屋敷の出入り口の門だ!』

「分かった、直ぐに行く! ほらっ」

「ま…待ってっ!」

 

屋敷の中庭で連絡を受けた響が並行世界の響の腕を引っ張る。

しかし、引っ張られたヒビキが抵抗し中庭で一旦、立ち止まる。

偶々一緒だったとはいえ、響としては出来れば一緒に行動したくは無いがゲルショッカーを倒す為にも文句を言う訳にはいかない。

 

「どうしたの?」

「敵が出たのは和室の方だよ、急いで翼さん達を助けに行かないと!」

 

急ぎたい気持ちを押さえ、ぶっきらぼうに響が聞く。

しかし、ヒビキの口から出た言葉は響も予想外だった。

響が仲間のクリスから屋敷の正門で、ヒビキは和室の方だという。

 

「場所が違う? …! まさか!」

 

響の脳裏に嫌な予感が走ると共にゲルショッカーならあり得ると考え直す。

尤も、その考えが正しければ響にとっても最悪といえた。

 

「おい、如何した!?」

 

その時、響たちの耳に聞き覚えのある女性の声が聞こえ振り向く。

すると、天羽奏と指令である源十郎が自分たちの方に向かってきている。

 

「師匠に奏さん!」

「翼やクリスから敵が出たって聞いたんだが、場所が和室と門だって言うんだ」

 

偶々、奏と源十郎が合流した時に通信機から翼とクリスが交互に怪人の出現を知らせてきた。

直ぐに翼やクリスと合流しようとしたが翼とクリスの報告から和室なのか屋敷の正門のどっちに行くべきかと話してる内に響たちと合流した。

 

「翼さん達の方は和室でクリスちゃんたちの方は正門前……」

「師匠、これは多分…」

「…やはり同時に襲撃か」

 

ゲルショッカーの欺瞞の可能背もあったが響たちも同様の情報が入った以上、ゲルショッカーは二方面に怪人を送り出したかもしれない。

ショッカーの頃から怪人の複数投入はあったが、ゲルショッカーになってからは一体しか出なかった為に失念していた。

 

「同時に襲撃してきたならアタシ等も二手に分かれた方がいいな」

「はい、私ともう一人の私は別の方に…」

 

ゲルショッカーが二方面作戦をするなら自分たちも分かれて戦う。

数の差が多少減ってしまうが仕方ない。

一応は、風鳴訃堂のしごきで多少腕は上がってるようで多少減ってもそこまでの不利にはならない筈。

それが響だけでなく源十郎もそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

「じゃあ、私は奏さんと一緒に門のクリスちゃんを助けに行く!」

 

その考えも

 

「なら、俺たちは親父の援護を…「行かせてもらえると思ってるのか?」っ!!」

 

無駄になる。

 

突如、聞こえて来た不気味な声に響たちは咄嗟に互いの背中をカーバーしつつ辺りを見回す。

僅かな月の明かりが辺りを照らすが不気味な闇夜が広がりまともに見えるのは響だけだ。

そんな響の目でも敵の姿が見えず、見えるのは屋敷にある小さな池だけ。

 

「響くん、敵は?」

「すみません、師匠。怪人どころか戦闘員の姿すら…」

「え? こんな暗闇で見えるの?」

 

一応、響の能力を知っている源十郎が聞くが響の目では敵の姿を捉えることが出来ない。

そんな、響の言葉に「暗闇の中を見えるの?」と驚くヒビキ。口には出さないが奏も同じ反応だ。

その時、池から何かが飛び出し自分たちの方に迫る。

 

「危ないっ!!」

 

響の声に源十郎たちが一斉にその場を離れた。

直後、響たちの居た場所に細長い白い物が突き刺さる。

 

「なに、これぇ!?」

「白い…槍か!」

「…違う」

 

白く細長い物が地面に突き刺さるのを見て源十郎は槍かと思ったが、響はその突き刺さった物が途切れず池の中まで続いているのを目撃する。

 

「敵は池の中に…」

 

「良く気付いたな…立花響っ!!」

 

響が「池」と言った瞬間、白い槍のような物が引き抜かれると共に先程の声が池からハッキリ聞こえる。

全員が池の方に視線を向けると

 

クラァァァァゲェェェェェッッッ!!!!

 

不気味な雄叫びと共に池の中から水飛沫を上げ出てくる。

それは、一見毛むくじゃらだが頭部の半分と左肩部分が白いジェルの様な物が覆い右腕が白い触手になっている怪物が出て来た。

 

「ゲルショッカーの怪人!」

 

「俺の名はクラゲウルフ!貴様らに他のシンフォギア装者の援護には行かせん!貴様らは今日此処で風鳴訃堂と共に死ぬのだっ!!」

 

新たに現れたゲルショッカーの改造人間…クラゲウルフがそう言うと左半身の触手が蠢いた後に響たちの下に伸びる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…予定通り、シンフォギア装者が揃い踏みか。多少は鍛えたようだが、我がゲルショッカーの改造人間、ワシカマギリ、クモライオン、クラゲウルフにどの程度抵抗できる?」

 

風鳴本家の屋根に蠢く人影。

その影の正体はブラック将軍だ。

屋根の瓦を踏みしめ、シンフォギア装者の響たちが送り出した怪人に如何対抗するか見届ける気だった。

 

「今日が貴様らシンフォギア装者の命日にしてやれ」

 

ブラック将軍の声が不気味に闇夜に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作では捨て駒にされた死の配達人ですが、ブラック将軍が怪人を複数を寄こした為、ワシカマギリの正体に変更。
今回は、クモライオン、ワシカマギリ、クラゲウルフの三体が送られブラック将軍も本気を出してます。

クラゲウルフが何気にパワーアップ。
もし、今リメイクするならあの体のクラゲの職種も動くと思う。
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