ワシカマギリ、クリス、もう一つの並行世界(アナザー)の翼とクリス
クラゲウルフ、響と並行世界の響、天羽奏と源十郎
あまりにも分かりにくいので、誰がどの怪人と戦っているか載せます。
書いてる作者でも迷う、翼とクリスに至っては三人だからね。
=響たち=
一見、静かな風景にも見える日本家屋。
しかし、その中庭では、電流が流れる光と音がし打撃音も聞こえる。
一瞬だが、電流でバチィッ!と音がすると共に、その黒い体毛をした顔が一瞬だけ光る。
「クラァァァァゲェェェェェッ!! 大人しく死ねぃ!」
「クソッ! あの触手で近付けね!!」
クラゲウルフの体から出るクラゲの触手、響たちにとってかなり厄介と言えた。
伸縮自在のクラゲウルフの触手は、それこそ自在に操り庭に置いてある巨石をも破壊する威力。
更には、
「うわああああああっ!!」
「師匠! アアアアアッ!!」
クラゲウルフの触手に触れた源十郎が悲鳴を上げ、それに気を取られた並行世界の響の足がクラゲウルフの触手を蹴り悲鳴を上げる。
二人の体には痺れる感覚と共に筋肉が痙攣する衝撃と痛みが走った。
「旦那ッ!!響ッ!!」
「またあの衝撃…一体…」
奏が源十郎と並行世界の響の名を叫び、響が両腕のガントレットを見る。
既に、クラゲウルフの触手に触れてしまい、触れた個所のガントレットが焦げ付いている。
触れるだけでも、此処までのダメージがある以上、接近戦主体の響や源十郎にはクラゲウルフは厄介な相手と言えた。
「クラァァァァッ! 驚いたか人間ども、冥土の旅にもう一つ面白いものを見せてやる!!」
苦しむ響たちを見て、クラゲウルフはそう言うと左腕を触手状になっている右腕に触れる。
瞬間、空から光が走ると共に轟音が響く。
『うわああああああッ!!!!!』
クラゲウルフの右腕が左腕に触れた瞬間、響たちの体に激痛が走り悲鳴が木霊する。
大人の源十郎ですら、断末魔を上げる程だ。
突然体に奔った衝撃で、響たちの体から煙が出る。
その様子に、クラゲウルフの裂けた口が吊り上がり笑う。
「一体…なにが…」
「…まるでカミナリが直撃したみたいな衝撃が…」
「クラァァァァゲェェェェェッ!如何だ、特異災害ども!俺の偉大な能力の凄さが!」
謎の攻撃に困惑する響たちに自身の能力を見せつけるクラゲウルフ。
奏が槍のアームドギアを杖代わりにして立ち上がると、響たちも何とか立ち上がる。
しかし、体からは湯気の様に煙が立ち源十郎共々かなりのダメージを受けているようだ。
「俺の体は電流を+と-に分けれる、そしてプラスとマイナスを接触させた時、俺の体から強力な放電現象を起こさせる!」
「放電現象だ!?」
「だからって一体…」
クラゲウルフの言葉に奏と並行世界の響が反応する。
尤も、放電現象と聞いても響たちにはチンプンカンプンのようだったが、
「放電現象…つまり、貴様はカミナリを操れると言うのか!?」
唯一、大人であり知識もあった源十郎だけがクラゲウルフの言葉の真の意味に気が付く。
「クラァァァァララァァァァッ!その通りだ、風鳴源十郎!何度でも落ちる雷にシンフォギアはどの位持つ!?」
そう言うとクラゲウルフは、もう一度左腕を右腕に接触させる。
=クリスと
「何かデカい音がしたぞ!」
「まるで落雷みたいな音だったよ」
平行世界のアナザー翼とアナザークリスが屋敷の中庭に響いた轟音に驚く。
クリスもアームドギアのボーガンをワシカマギリに撃ちつつ轟音のした中庭が気になった。
「キィーーーーーラァーーーーーーッ!!クラゲウルフの方は順調のようだな!」
クリス達とは異なり、クリスの撃ったボーガンを払い除けワシカマギリが勝ち誇ったように言う。
その時、クリスはワシカマギリが口にした「クラゲウルフ」と言う言葉に気付く。
「おい、如何いう事だ!?」
「襲撃してきたのはアナタだけじゃない…?」
クリスとアナザークリスがワシカマギリに問いただす。
「キィーーーーーラァーーーーーーッ!何時、襲撃者が俺だけだと言った!?既に屋敷にはゲルショッカーの改造人間クラゲウルフとクモライオンが潜入し行動を開始している!!」
「「「!?」」」
ワシカマギリの発言により、屋敷の中でも既に戦闘が始まってる事を知る。
響たちに通信したにもかかわらず救援が無い事に不思議に思っていたクリスにもやっと合点がいった。
それと同時に、自分たちへの救援は期待できないという事だ。
「あんな怪人が三匹だとぉ!?」
「ゲルショッカーはどんだけあの爺さんを消したいんだよ!」
「お前たちが風鳴訃堂を守る為に動くのは予想済みだ、お前たちが集まるだろうと俺を始めとしたゲルショッカーの改造人間を送り込みお前たち、シンフォギア装者を一網打尽にするブラック将軍の作戦よ!!」
アナザー翼の脳裏にサソリトカゲスと同じような怪人が三体浮かぶ。
クリスの声に勝利を確信したワシカマギリがブラック将軍の策を話す。
ブラック将軍は、訃堂を始め響たちシンフォギア装者たち邪魔者を集め一網打尽にする作戦を立てた。
その為にも、訃堂一人殺すには過剰な戦力と言えるゲルショッカーの怪人三体を送ったのだ。
仮に、響たち特異災害対策機動部二課が訃堂を見捨てたのなら、それはそれで問題ない。
訃堂を抹殺した後、「おのれ可愛さに老人一人を見捨てた」とレッテルな情報を流し響が「ツヴァイウィングのライブ会場の惨劇の生き残り」と流せば、後は勝手に世間が敵視する。
なんなら、ゲルショッカーが裏で「ツヴァイウィングの会場の悲劇」を盛り上げてやれば、後は勝手に人間同士が争うと考えるブラック将軍。
「分かったか、今日がお前たちの命日だ!! 貴様たちシンフォギア装者の首をこの鎌で刈り取ってやる!」
そう言うと、ワシカマギリは左腕の鎌を見せた後、両羽をクリス達に向ける。
瞬間、ワシカマギリの羽から飛び出す羽がクリス達に弾丸の様に撃たれた。
=訃堂と護国の仲間たち=
屋敷の一室。
蝋燭の灯りを光源にしていた部屋の内部から幾つもの金属音と断続的に灯りが薄らいでいる。
その時、部屋の襖が破られ風鳴翼が外に転がる。
「先輩!?」
「小娘、余所見をするな!!」
同じ世界の先輩である翼が外に放り出された事に意識を持ってかれるクリスに訃堂が注意する。
何しろ目の前には、もう一人の翼が剣を振ってクモライオンを攻撃している。
しかし、翼の剣をアッサリと掴むクモライオンは、カウンターとして翼に拳を向ける。
クモライオンが翼の顎に当たるかと思った時、翼は剣を手放してバク転して回避する。
翼の顎をクモライオンの拳がかすり翼の背中に冷汗が流れる。
「報告よりもすばしっこい装者が、なら逃げられなくするだけだ!! クモォォォラァァァァイッッ!!」
翼や訃堂の動きがデータを越えている事に気付いたクモライオンが両手を口元に当てた直後、クモライオンの口からピンク色の何かが飛び出す。
同時に翼や訃堂の首に何かが巻き付く。
「ぬっ!これは…」
「…糸…なのか…?」
自分たちの首や手首に巻き付くピンク色の糸。
引っ張ろうが剣で切りつけようが決して切断出来ず、それどころか糸で締め付ける箇所に電撃みたいな衝撃が起き力が入らなくなる。
「儂の命にも等しき群蜘蛛でも切れぬだと!? ぐわあああああ……」
「し…痺れる…」
訃堂が自身の愛刀であり風鳴家の宝刀とも言える群蜘蛛ですらクモライオンの糸が切れない事に驚愕する。
それでも、クリスが糸を引き千切ろうとしたり翼がアームドギアの剣で切ろうとするが、結果は訃堂と変わりない。
「見た目は…ショボいテープなのに…」
「荷物を縛るときの…スズランテープに見えるが…強度が段違いだ…」
「クモォォォラァァァァイッッ!! そのまま絞め殺してやる!」
苦しむ翼と並行世界のクリスにクモライオンはそう言い切って糸を引く力を強める。
翼と並行世界のクリスは愚か、訃堂すら力が抜け畳に膝をつける。
クモライオンの糸にこのまま絞め殺されるかと思った時だ。
「やらせんっ!!」
「ぬっ!?」
先に部屋の外に飛ばされていた並行世界の翼が剣を持ち足のブレードを広げ回転しクモライオンの吐いた糸にぶつかる。
並行世界の翼の回転でクモライオンの糸から火花が上がるが、それだけだった。
訃堂やクリスたちの首を絞めつける糸の力は依然としており健在だった。
「…驚かせやがって、貴様程度の力では俺の糸は切れんぞ!!」
訃堂たちの始末を優先し、半ば忘れていたもう一人の翼の乱入に肝を冷やしたクモライオンだが、翼一人の技ではクモライオンの糸を切断する事は出来ない。
訃堂たちを始末した後に如何料理してやろうか考える。………故に見逃した。
「抜剣ッ!!!」
「なにっ!?」
平行世界の翼は、自分の力だけでは糸の切断が出来ないと分かるや即座にイグナイトを起動させる。
技の最中にイグナイトを使われたクモライオンが驚愕してる内に、イグナイトの黒いシンフォギアになった翼は脚のブースターの火力を上げ、回転を速める。
何度も火花を上げる内にクモライオンのピンク色の糸が千切れ訃堂たちは解放された。
尤も、翼は回転を上げた事で勢いが殺せず、屋敷の襖と天井を切り裂いてしまう。
「おじい様、申し訳ありません」
「ゴホッゴホッ…構わん、人間は兎も角、屋敷は建て直せば済む」
屋敷内を荒らした事に思わず謝罪する平行世界の翼。
咳き込みつつ、大して気にしてないと言う訃堂。クモライオンの糸で殺されかけたのもあるが、壊れたのなら直せばいいの精神もある。
一方。糸が千切れたクモライオンは少しふら付きつつも直ぐに態勢を立て直す。
「技の最中にイグナイトを使えるとはな、少し驚いたぞ風鳴翼!」
翼がイグナイトを使い黒いシンフォギアを纏うが、クモライオンは慌てず千切れた糸を口から外してそう言った。
地獄大使からのデータとサソリトカゲスの時のデータで既にイグナイトの情報は得ている。
以前のデータより幾分か腕を上げている翼やクリスだが十分勝てると判断した。
咳き込んでいた訃堂も直ぐに持ち直し、復帰した並行世界のクリスと共に即座に刀を構える。
平行世界のクリスも抜剣しイグナイトになるが、クモライオンは慌てず片手で口を押える。
「こっから反撃開始…になりゃ良いんだけどな…」
「…気を付けろ、雪音。この怪人にイグナイトが何処まで有効かは…」
「最早、イグナイトなど襲るるに足らず。貴様らの死刑執行を再開してやる!」
「雪音クリス及び風鳴翼がイグナイトを使用したか…計算通りだな」
屋敷の屋根に立つブラック将軍がゲルショッカー戦闘員の報告を聞き満足そうに笑みをつくる。
訃堂たちは愚か、屋敷の門前も中庭でもゲルショッカーの怪人が有利に戦っている。
「だが、念には念を入れる事にしよう」
「ギーッ!」
「ギーッ!!」
ブラック将軍の合図に屋敷の門、部屋内、中庭と何人ものゲルショッカー戦闘員が現れ怪人たちの補佐や追撃を行う。
ただでさえ、一体の怪人に苦戦する響たちは更に窮地に落とされる。
=クリス、アナザー翼とクリス=
「戦闘員だぁ!コイツだけでも苦労してるのに…」
「余所見をしてる場合か、俺のブーメランの威力を見よ!!」
突然のゲルショッカー戦闘員の横殴りにクリスもアナザーの二人も完全に不意を突かれるも、それぞれアームドギアのガトリング砲と剣で迎撃する。
その隙を見逃すワシカマギリではない。左腕の鎌状の腕を取り外すとワシカマギリはその腕をクリス達に投げる。
投げられた鎌状の腕は回転しブーメランの様になりクリスの方に向かう。
「! なっ…!」
ワシカマギリの鎌状のブーメランに気付いたクリスが咄嗟にアームドギアのガトリング砲でガードする。
ガトリング砲で防御した事で何とかクリスには接触しなかったが、持っていたガトリング砲はアッサリとブーメランに切り裂かれ驚愕するクリス。
「何だ、本当にブーメランみたいな動きだ!」
「切れ味もとんでもなくあるよ!」
ゲルショッカー戦闘員の相手をしつつ、ワシカマギリの投げた鎌のブーメランを見たアナザー翼とアナザークリスが声を荒げる。
ブーメランとして戻って来た左腕をワシカマギリはもう一度投げる。次の目標はアナザー翼とアナザークリスだ。
「うわあっ!」
「きゃああ!」
アナザー翼もアームドギアの剣で咄嗟にガードするがアッサリ折られ、アナザークリスに至っては態勢を崩して尻もちを突き、アナザークリスの相手をしていたゲルショッカー戦闘員の首が切り落とされる。
目の前に持ちて来たゲルショッカー戦闘員の首に悲鳴を上げるアナザークリス。
「上手く凌いだ様だが、貴様らの不利は変わらん! 俺の鎌で貴様らの首を掻っ切ってやる!」
部下であるゲルショッカー戦闘員を巻き込んだと言うのに、ワシカマギリは一切気にせず再び鎌状の左腕を投げる。
=訃堂とゆかいな仲間たち=
既に灯りの消えた室内には幾つ物金属音と何かが倒れる音が響く。
僅かな月明かりの中、キラッと何かが輝く。
訃堂の持つ群蜘蛛と翼のアームドギアの剣の輝きだ。
暗くて見え難いが、訃堂たちは周りにいる青タイツの人間たち…ゲルショッカー戦闘員の相手をしている。
ゲルショッカー戦闘員も素手では無く短剣や槍を持って襲い来る。
「くっ、コヤツ等、相も変わらず数だけは多い!」
「はい!」
訃堂と翼の剣が襲い掛かるゲルショッカー戦闘員を次々と切り捨てる。
しかし、数が数だけに取り囲まれた二人は自然と互いの背中を庇い合うように背中と背中を向ける。
訃堂としても、ショッカーアジトの一斉検挙の際、富士に造られたショッカー基地を潰す時にショッカー戦闘員を撫で斬りにした事があるが、ゲルショッカーの戦闘員の強さに少し手を焼いている。
一方、並行世界の翼たちはイグナイトのままクモライオンとの戦いに入っている。
剣や脚のブレードで戦う平行世界の翼に対し、並行世界のクリスはイグナイトを纏っても威力の上がったガトリング砲での援護に留まっている。
「クッソ…室内だとアタシの火力がいかせねえ…」
クリスの戦術は大火力にある。
ガトリング砲だけでなく腰部の小型ミサイルや大型ミサイルを出して大火力で敵を焼くのがクリスの役割と言って良いい。
しかし、平行世界の響がいた時の指令室でもそうだったが、火力の出し難い場所ではクリスの火力も封じられてしまう。
狭い密室空間や家屋といった場所ではクリスの大火力も生かしきれない。
下手にミサイルを出せば爆発した瞬間、この家屋は吹き飛ばされ訃堂たちも巻き込む。尤も、クリスも内心爆発に巻き込まれても訃堂なら平気そうな気もするが。
イグナイトモジュールで強化されたクリスのガトリング砲が直撃してもクモライオンに大したダメージはない。
「クモォォォラァァァァイッ! 雪音クリスめ、ハエみたいにうっとおしいマネをしおって!」
「雪音ばかり見ていると怪我するぞ!」
尤も、クリスの援護自体まったくの無駄でもない。
大したダメージが無いとはいえ、裏を返せばノーダメージという訳ではない。チクチクと体力を削るクリスにクモライオンの精神も同時に削られる。
そして、クリスによって作られた隙を平行世界の翼が見逃さずに少しでも自分への注意が散漫になれば顔面や体に天羽々斬の一撃を加えている。
「クモライオンは平行世界の装者のイグナイトに翻弄されているが他は順調のようだな」
ダメ押しのゲルショッカー戦闘員を加え、シンフォギア装者たちを追い詰めつつある事に満足するブラック将軍。
ゲルショッカー戦闘員が訃堂たちに倒されているが決して訃堂たちも無傷ではない。
ほんのわずかな隙を見つけては背中にも切り傷を与えている上に、それは翼も同様だ。
「クモライオンの方はシンフォギア装者を殺した後の、ワシカマギリとクラゲウルフを援護に向かわせれば十分だろう。ワシカマギリもそうだが、クラゲウルフの方も決着が付きそうだ」
ブラック将軍は、屋敷の屋根の上から中庭に視線を向ける。
其処には丁度、何度目かのカミナリを落としたクラゲウルフの姿と辛うじて立つが体や腕の付け根部分から煙を出す響と源十郎がおり、奏と並行世界の響が地面に突っ伏している。
恐らくは、もうゲルショッカー戦闘員だけでも響たちを始末出来るだろうとブラック将軍は判断する。
「…ブラック将軍、妙な報告が…」
「妙な?」
勝利を確信したブラック将軍だったが、一人のゲルショッカー戦闘員が何か報告した。
=響たち=
一方、その響たちの方だがクラゲウルフの雷に完全に押され電撃を浴びた事で奏と並行世界の響が倒れる。
辛うじて立つ響と源十郎だが、雷を受けた事で響の体温は上昇して体内で熱暴走を起こし源十郎は新しく付けた腕の結合部分が熱を持ってその身を焼いている。
どちらにせよ、響も源十郎も動き辛くなっている。
「如何した?立花響。 貴様の代名詞「カミナリを握りつぶす」は如何した?」
クラゲウルフの嫌味に響は奥歯を噛みしめる。
クラゲウルフとの戦いは響たちが苦戦を強いられている。触れるだけでもクラゲウルフの帯電している電流の所為で響や源十郎、奏のアームドギアの槍すら触れるだけでクラゲウルフの電流が響たちを押そう。
かと言って、下手に距離を取ればクラゲウルフの起こす放電現象により発生する雷で一方的に焼かれてしまう。
こんな時に遠距離攻撃の出来るクリスが居ない事を悔やむ響と源十郎。
「そろそろお前たちの相手は飽きた、もう一度俺のカミナリを受けた後は戦闘員にでも止めを刺させてやる」
クラゲウルフがそう言うと同時に響たちを取り囲むゲルショッカー戦闘員たちが一斉に短剣やレイピアを取り出す。
恐らくが、クラゲウルフの言う通りもう一度カミナリを受けた後の自分たちにトドメを刺す気なのだろう。
クラゲウルフの言葉を聞いた並行世界の響と奏が立ち上がろうとするが、何度もカミナリを受けた所為で碌に体に力が入らず手を動かすだけだ。
そして、響と源十郎も体の痺れが残っておりクラゲウルフの動きを止められない。
最早、万事休すかと思ったその時、
「ん? 何だコレは」
左腕で右腕に触れ響たちへの一撃を入れようとしたクラゲウルフの口からそう漏れた。
響がクラゲウルフの方を見るとクラゲウルフの頭上に頭部がピンク色をした30センチ位の人形が飛んでいる。
その人形は頭部にプロペラがあるのかピンク色の頭部の上で回転しクラゲウルフの傍をホバリングしていた。
響も源十郎もそれを唖然とし見ていた。
「ガキのオモチャか?あっち行け、邪魔をするな」
突然現れた人形にクラゲウルフは、邪魔だとばかりに手で追い払う仕草をする。
しかし、人形はクラゲウルフの手を器用に避け飛び続ける。それどころか一体だった人形が二体、三体と増えていく。
「ああ、五月蝿いガラクタが…!?」
いよいよクラゲウルフが体の触手を使って叩き落そうとした時だった。
三体の人形が一斉にクラゲウルフの方に腕を向けると、ピンク色の弾丸のシャワーと言える量が撃たれる。
これにはクラゲウルフも驚愕し咄嗟に腕でガードしピンクの弾丸を受ける。
直後に響たちを取り囲んでいたゲルショッカー戦闘員たちの方にピンク色のビームが降って大爆発を起こし、もう片方には緑色の線が走ると共にゲルショッカー戦闘員が次々と倒れる。
突然の事で唖然とし固まっている響と源十郎。
顔だけ動かす並行世界の響と奏は何か誘ったのか笑みを浮かべる。
「間に合ったようね」
「そうみたいデース!」
そんな二人に話しかけるかの様に響たちの前に現れる二人。
一人は、ピンクのシンフォギアを纏い白い球体の様な物に座る少女と黒っぽいジャケットと薄緑のシャツを着た金髪の少女だ。
「え…調ちゃんと切歌ちゃん?」
響が見覚えのある少女の名を呟く。その二人は、フロンティアの騒動後、暫く共に牢獄に入っていた元FISのシンフォギア装者の月読調と暁切歌だ。
しかし、呟いた響としても違和感を感じている。自分の知る少女たちとは若干の差異を感じる程度だが。後、調が座ってる白い球体も気になる。
「…その反応、アナタはこの世界の立花響ね」
「おお、私たちの知る並行世界の響さんとそっくりデース」
響の反応は正しかった。
この二人は、確かに月読調と暁切歌だがこの世界の人間ではない。
彼女たちもまた、楓たちと同じ平行世界から来た別の世界の少女たちだ。
「し…調ちゃ…ん…切…歌…ちゃん・・・久しぶり…」
「…久し…ぶり…だな…」
一方、調と切歌との面識があった並行世界の響と奏が二人に挨拶をする。地面に寝そべったまま。
二人は、未だにクラゲウルフのカミナリのダメージが抜けて無く口の方も電流で若干の痺れを残していた。
「助けに…来て…くれたんだね…」
「…先輩のお願いだから仕方なく…ね」
「助けに来たのは私たちだけじゃありまセ~ンよ、響さん」
平行世界の月読調と暁切歌がわざわざ此処に来たと言う事は自分たちを助けに来たと判断した並行世界の響。
調は若干頬を赤くして「先輩のお願いだから」と言う。
対して、切歌は助けに来たのは自分たちだけじゃないと告げる。
平行世界の翼の剣劇を素手で対抗するクモライオン。
平行世界のクリスの援護をものともせず、遂には平行世界の翼の首を掴む。
「グッ…!」
「先輩ッ!?」
「貴様との戦いも飽きたぞ、風鳴翼!イグナイトの性能も俺には大したことが無いと判明した、いい加減死ね!」
捉えた翼の首を掴むクモライオンは、もう片方の腕で平行世界の翼の肩を握る。
瞬間、とんでもない力を感じる平行世界の翼。
クモライオンは、そのまま首根っこを掴んだまま肩を引き千切ろうと力を籠める。
「先輩を話しやがれッ!!」
すぐさま平行世界の翼を解放しようとガトリング砲と腰部の小型ミサイルのポッドを展開する平行世界のクリス。
しかし、射線上にはクモライオンに捕まっている平行世界の翼がいる、下手に撃つことすら出来ない。
「貴様は、其処で風鳴翼が死ぬのを見て居ろっ!! 死ねっ! ……!?」
今まさに、クモライオンが並行世界の風鳴翼の肩を引き千切ろうとした。時だった。
どこからともなく二本の短剣が飛んできてクモライオンへと迫る。
咄嗟に、掴んでいた平行世界の翼を盾代わりにするが、その二本の短剣は器用に平行世界の翼を避けクモライオンの体を切り裂く。
「ぬおっ!?」
尤も、切り裂いたのは表層だけで、その傷も数秒もせずに消えてしまう。
しかし、驚いたクモライオンは、驚いた拍子に捕らえていた平行世界の翼を放してしまう。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「先輩、大丈夫か!」
解放された平行世界の翼だが、首への圧力が消えた故に足りない酸素を取り込もうと咳き込み、平行世界のクリスがそんな翼を解放しつつクモライオンから離れた位置に並行世界の翼を移動させる。
何度か咳き込む並行世界の翼の呼吸が安定してきた。
「ええい、あんなヘナチョコな短剣を投げたのは誰だ!!」
同時に態勢を立て直したクモライオンの怒号や室内に響く。
見れば、訃堂やもう一人の翼は未だにゲルショッカー戦闘員を相手にしており、仮に訃堂が援護したとしても短剣の軌道を変える事など訃堂とはいえ不可能だと判断したクモライオン。
「…私の攻撃でも傷も殆ど無いなんて…」
クモライオンが攻撃してきた相手を探してる時、何処からともなく破れた襖から少女の声が聞こえた。
声を聞いたクモライオンが素早く口からピンク色の糸を吐き、破れた襖を取り除く。
其処には、翼や響よりも若く幼く見える少女が居た。
「貴様がさっきの短剣を投げたのか! その命、無いものと……そのシンフォギア……マリア・カデンツァヴナ・イヴの物に似ているが何者だ!!」
怒気の混じった声で喋るクモライオンだったが、途中で少女の纏うシンフォギアが気になった。
胸元や腰回りが微妙に違うが、データで見たマリアのシンフォギアと何となくだが雰囲気が近いと感じるクモライオン。
一方、ゲルショッカー戦闘員を相手にしていた訃堂と翼も少女の存在に気付く。
「あれは、マリアのシンフォギアに似ているが…彼女は一体?」
「…似ているな…」
翼も翼で少女の纏うシンフォギアが気になり、訃堂は昔資料で見た写真の面影を思い出す。
これには、訃堂たちに襲い掛かっていたゲルショッカー戦闘員も動きを止め現れた少女に注目している。
「…セレナ?」
「お前も来たのか…」
唯一少女の事を知っていた並行世界の翼とクリスが少女の名を言う。
「セレナ? …! まさかマリア・カデンツァヴナ・イヴの妹、セレナ・カデンツァヴナ・イヴだと!?あの小娘は何年も前に死んだと聞いたが…そうか貴様、並行世界のセレナ・カデンツァヴナ・イヴだな!」
「よくご存じですね」
自分の事を知るクモライオンのやたら説明的な言い方に困惑しつつセレナがそう答える。
クモライオンとの戦いにセレナが加わった。
一方、屋敷の門付近で戦闘していたクリスとアナザー翼とアナザークリスはワシカマギリの羽ミサイルと左腕のブーメランに苦戦していた。
下手な装甲も貫くダーツの矢のような羽ミサイルもそうだが、クリス達にとってワシカマギリの左腕の鎌状のブーメランが厄介極まりなかった。
触れればアームドギアもアッサリと切られ、自分たちのシンフォギアすらインナーごと裂かれクリスもアナザー翼たちも所々インナーも裂けあられもない姿になりつつある。体にも幾つもの傷が出来ており出血もしている。
「ええい、ちょこまかと逃げおって!大人しく死ね、キーーーーイッーーーーーーー!!」
もし、クリス達を襲っていた者が下卑た者だったら、クリス達の布の面積が無くなる事に喜んでいただろうが、ワシカマギリは何処までいっても怪人。ブラック将軍の命令を遂行するだけだ。
それ故に、クリス達への裸体には一切興味が沸かない。
そして、クリス達はクリス達で巻き込まれようと気にしないゲルショッカー戦闘員が思いの外、厄介でありワシカマギリの鎌状ブーメランを避け切れない原因でもある。
「ギーッ!」
「またか!?」
ワシカマギリのブーメランが飛び舞う中、アナザー翼のマントを掴み動きを制限するゲルショッカー戦闘員。
直ぐにアームドギアの剣を取り出しゲルショッカー戦闘員に突き立て倒すが、その感触にアナザー翼が顔を顰める。
━━━クッソ……嫌な感触だ…
長引く戦闘で疲労もあっただろうが、戦闘員とはいえ人型にトドメを刺した感触がいやに印象に残るアナザー翼。
過去には平行世界の翼たちと剣を交えたが此処までの感情にはならなかった。
それ故に、
「l 翼ッ!!
「!?」
アナザークリスの声に正気に戻った…までは良かったがワシカマギリのブーメランが目前まで迫っていた。
避けるのも、アームドギアの剣での防御も間に合わずアナザークリスの援護も間に合いそうにない。
クリスに至っては、槍を持ったゲルショッカー戦闘員の相手をしており、此方も援護が出来ない。
アナザー翼が「此処までか」と覚悟を決めかけた。
途端、上から何かが降り煙が舞う。
衝撃がアナザー翼にくるがそれ以上のものは無く、やがて煙が治まってくると金色と黒の壁の様な物が出て来た。
「…壁?」
「槍よ!」
一瞬、壁が降って来たのかと思ったアナザー翼だが頭上から別の声が「槍」だと伝えられる。
その声で上を見ると、壁の先から続く長細い柄の仁王立ちする人影が写る。
「俺のブーメランを弾く新手だと!? クモライオンかクラゲウルフは何をしている!」
突然の新手に、響や訃堂を襲っているクモライオンかクラゲウルフからの援護が来たのかと考えるワシカマギリ。
アナザー翼の壁となった形状で、風鳴翼か天羽奏辺りかと思ったが柄に乗っている人物像がやたら小柄な事に気付く。
弾かれたブーメランを回収したワシカマギリだったが、長細いピンク色の鞭の様な物が自分に迫ってる事に気付きジャンプして回避する。
ピンク色の鞭はそのまま地面に打たれるとアスファルトが一部粉砕された。
「この攻撃、雪音クリスどもでも風鳴翼でも無いな!何者だ!?」
「私が気を引いた筈なのに…」
「思った以上素早い」
鞭の攻撃を避けられた所為か、隠れていた女性と柄の上に立っていた少女が翼たちの前に降り立つ。
襲い掛かるゲルショッカー戦闘員を蹴飛ばしやクリスも二人の存在に気付く。
一人は、身長も高めで、序に胸もマリア並みの女性でもう一人は調や切歌より幼く見える少女だ。
大人の女性は兎も角、小柄の少女は何処かで見たような気もするクリス。
━━━あの二人のシンフォギアも何処かで……
「月読調や暁切歌よりチンマイ小娘のシンフォギア装者か?」
「…小さくて悪かったわね」
「まあまあ、
「ん?」
ワシカマギリの言葉に反応した小柄の少女。
そんな少女を慰める女性だが「姉さん」という言葉に引っかかる。
確かにクリスが見ても二人の顔つきは似通っており姉妹だとは思う。
しかし、「姉さん」と言ったのは明らかに身長の高い女性であった。
小柄な少女が身長の高い方を「姉さん」と言えば、クリスもまだ納得できる。
「おい、お前ら…」
クリスが二人に話しかけようとした。
「お、マリアとセレナか…助かったよ」
「お二人とも、お久しぶりです」
しかし、クリスの声が届く前にマリアに助けられたアナザー翼とアナザークリスが二人に礼を言いつつ会話する。
「へ…、マリア?」
二人の名前の内のマリアに反応したクリスは呆然としアナザー翼たちがマリアとセレナという女性と話す。
そして、半ば忘れられるワシカマギリは、今直ぐ襲うべきか情報入手を優先させるか迷った。
「月読調と暁切歌だと!あの小娘どもが解放されたという情報は入っていないぞ! …まさか貴様らも平行世界の装者だと言うのか!!」
場面は戻り、平行世界の響が調と切歌と話し終えると同時に三体の人形の総攻撃を喰らったクラゲウルフは、平然としており調と切歌を指差し怒号のような声を出す。
そして即座に、その調と切歌も並行世界の人間だと断定している。
そして、状況が今一読めない響と源十郎。
「…あれが怪人デスか、直で見るととんでもない迫力デス…」
「私のドローンの総攻撃を受けても大したダメージは無しか…」
並行世界のクリスからは聞いておりデータも見たが目の前にいるデータではなく本物の怪人の迫力に調の額から汗が出る。
クリスの持ってきたデータで以前よりも、人形…ドローンロボの性能も上げてきたがクラゲウルフにダメージが入った様には見えないので、調は内心少しだけショックを受ける。
「平行世界のシンフォギア装者が来ようが、ゲルショッカーの敵ではないわ!死んで貰う、クラァァァァゲェェェェェッ!!」
クラゲウルフの宣言をしてる間に倒れていた平行世界の響と奏が立ち上がる。
その目には、諦めという文字は無く武器を構える。
新たに現れた並行世界のシンフォギア装者も混じりゲルショッカーの改造人間との第二ラウンドが始まる。
クラゲウルフって単純に雷を出せるのか、雷を操れるだけのなのかよくわからん。
ブラック将軍の作戦で新宿駅に落とすって言っているけど…。
それにしても、見返してもワシカマギリの羽ミサイルがダーツの矢にしか見えん。
クモライオンの糸か絡む時の音が電流が流れるような音にしか聞こえねえ。
クラゲウルフの代名詞と言っている響の「カミナリを握りつぶす」はゲームの超ヒロイン大戦をしてるとよく聞くので。
因みに今回は響たちの方が相性が悪く、クラゲウルフの方をクリス、クモライオンの方を響が相手をすれば、もう少し有利に戦えました。
っと言うか、クラゲウルフに触れる事すら危険です。原作の仮面ライダーである本郷もクラゲウルフに触って滅茶苦茶ビリビリ火花を上げてました。
今更ながらに、怪人や幹部たちは基本的に響たちの事をフルネームで呼びます。
劇中でも本郷猛か仮面ライダーと言ってますからね。
今回で、並行世界の調と切歌に子供マリアとかが出る回ですね。
子供マリアの登場シーンは原作一期の翼がクリス襲撃時、響を助けたオマージュですが、相変わらず翼が何時到着したのやら?