改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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響のストレスぶち切れ回


141話 擦れ違いの果て

 

 

 

『ブラック将軍、三体も投入した怪人たちが軒並み死んだようだが…』

「はっ、新たに現れた平行世界のシンフォギア装者の邪魔もありクモライオンたちは死にました」

 

風鳴本家での戦いの後、ブラック将軍は本部に戻り鷲に絡まる蛇のエンブレム越しで作戦の結果を報告する。

結果は、ゲルショッカーの怪人たちの全滅だったが、ブラック将軍は言い訳一つせず報告する。

 

『それでブラック将軍、この作戦の失敗した原因は分かってるのか?』

「一つは怪人たちがシンフォギア装者を舐めていた事でしょう、もう一つは土壇場で新たなる平行世界のシンフォギア装者の乱入かと」

 

エンブレム越しの首領の問いに淡々と答えるブラック将軍。

事実、響たちを襲ったクラゲウルフを始めとした怪人は響たちを嬲り殺しにしようと痛めつけ別の並行世界のシンフォギア装者の助太刀が間に合ってしまった。

 

嬲る癖は、怪人の欠点とも言えるが邪悪なる組織であるゲルショッカーは別段禁止する気は無い。

響たちを恐怖のどん底に突き落とし、自分たちに敵対した事を後悔させ殺すのもゲルショッカーの目標でもある。

 

『では、次の作戦は?』

「悪戯に怪人を増やして襲わせても無駄でしょう、並行世界の立花響たちにはまだ多くの仲間が居るやも知れません。それに立花響たちが平行世界のシンフォギア装者と直ぐに連携出来るかは別問題、此処は搦め手でいきましょう」

 

首領の問いにそう答えたブラック将軍の顔に邪悪な笑みが浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで君たちも並行世界の装者…で良いのか」

「そうですね」

 

風鳴本家の戦いも終わり、本部に戻った一同は一旦傷の手当てや休息の為、皆を一旦休ませた後、源十郎が新しく来たシンフォギア装者たちの話を聞いていた。

源十郎とて、クラゲウルフとの戦闘で疲労しウェル博士から取り付けた腕を見せるよう言われてるが、特異災害での最高責任者である以上、新たに来た並行世界のシンフォギア装者と話さねばならなかった。

 

「それで君が…」

「はい、私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴです。この世界で言うマリア姉さんの妹のような存在です」

 

先ず初めに源十郎と会話したのは幼そうな少女に見えるセレナだった。

源十郎も緒川の仕事でマリアの妹がセレナという名前の少女だというのは知っていたが、こうして並行世界のシンフォギア装者として会う事に若干の戸惑いを感じている。

 

2~3、幾つか聞きたい事を聞いた後源十郎は別の相手と会話する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、私はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。特殊部隊「APPLE」の隊長よ」

「同じく、副隊長のセレナ・カデンツァヴナ・イヴです」

「風鳴源十郎だ、よろしく頼む」

 

セレナと会話後、次に源十郎が話すのは屋敷の門でクリスたちと共闘した並行世界のマリアともう一人のセレナだ。

セレナの時と同じく自分たちを助けてくれたことに礼を言う源十郎。

マリアは、ツンとした態度でも笑みを浮かべ、セレナがそれに返答している。

 

「それにしても、並行世界故か姉妹が逆転する事もあるんだな」

「ム…」

「あ…」

 

少し話した源十郎は、ふとそんな事を零した。

源十郎にはセレナが姉でマリアが妹だと思ってしまったのだ。

それを聞いた、マリアは一気に機嫌が悪くなりセレナが困ったような表情をする。

 

「ど…どうしたんだ?」

「…何でもない」

「ええと…」

 

口が滑った源十郎は、マリアの表情を見て若干焦り出す。

マリアは言う気は無いが、見かねたセレナが溜息をつくと事情を話し、源十郎が驚きの声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…最後に君たちは…」

「…月読調」

「暁切歌デース!よろしくデース!」

 

大人セレナからの驚きの報告を聞いた源十郎が最後に話し合うのは、自分たちの方を手助けしてくれた二人のシンフォギア装者の二人、平行世界の月読調と暁切歌だった。

平行世界の響たちから少しは聞いていたが、元FISのマリア、調、切歌も自分たちの仲間として働くらしかったが、この二人はある意味単独で動いてるらしい。

 

今は、シンフォギアから白衣を纏った月読調と特異災害が用意した洋服を着てる暁切歌。

尤も、源十郎の記憶より平行世界の調の目付きが鋭い気がする。

 

「君たちには改めて感謝の言葉を述べたい」

「…別に」

「困った時はお互い様デース」

 

源十郎がクラゲウルフとの戦いで自分たちを助けに来た事を改めて感謝する。

平行世界の調は淡々と言うが、もう一人の切歌は元気そうに返事をする。

対照的な二人に源十郎が苦笑いをする。

 

「…クラゲウルフの言葉に、先程の君の体…暁くん、君の体は…」

「…それについては私が説明する」

 

源十郎は、クラゲウルフの時の戦いで暁切歌を「貴様、人間ではないな」と言う言葉が引っかかり、クラゲウルフの電撃で切歌の着ていた服などが炭化し裸になった際、胸から腹をなぞったラインが黒塗りで関節部には緑のラインが入っていた。更には、片腕を取り外しショットガンの様な物をクラゲウルフの顔面に撃った。

そんな切歌の体に疑問を感じた源十郎が質問しようとすると代わりに平行世界の調が軽く説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マリアさんがお姉さん!?」

「たまげたなあ…」

 

翌日、本部で休んだ響とクリスは源十郎から聞いた情報を翼に聞き驚きの声を上げた。

先に聞いていた翼すら驚愕したのだ、仕方あるまい。

何しろ、一緒に居るセレナと比べればマリアの背丈は調や切歌並みしかない。半面セレナは自分たちの知るマリア並みの大きさなのだ。…背も胸も。

何も知らない人間が見れば誰しもがマリアの方が妹だと言うだろう。

 

「どうやら、マリアは呪いの力で成長出来なかったらしくてな…」

「成長を妨げる呪い?」

「マリアに呪いを掛けた奴は何考えてんだ?」

 

クリス達は、わざわざマリアに呪いを掛けた者が何の為に掛けたのか不思議だった。

もしも、ショッカーのような組織なら邪魔者は容赦なく殺す。

それを年を取らない呪いだけ掛ける。マリアに呪いを掛けた者の目的が読めない。

 

「マリアに呪いを掛けた者の正体を考えても仕方ない…しれにしても、マリアの妹のセレナが生きている並行世界か」

「…確か、代わりにマリアさんが亡くなってるんでしたっけ?」

 

翼たちが会話を切り替え、訃堂たちの援護に行ったマリアの妹セレナの話をする。

響もクリスもちゃんと顔を見てないが、何処となくマリアに似た少女だと翼は言う。

 

「セレナは、こっちのマリアのアガートラムのシンフォギアを使用してる。…攻撃方法は微妙にマリアと違う気がするが」

「姉が使っていた者を妹が使うか、こっちの世界のマリアに教えるのか?」

 

翼の言葉にクリスはふと拘束されているマリアたちに伝えるか聞く。

死別してるとはいえ、マリアとしてもセレナに会いたいのではと考えてだ。

 

「…いや、仮に伝えてもマリアたちは日本政府の許可が無い限り出すことは出来ない。それにこんな情勢だと面会も許可が下りにくい。セレナの事を教えても会えないまま彼女が元の世界に戻った時、傷つくのはマリアたちだろう」

 

翼としてもマリアに並行世界とはいえ、妹のセレナに合わせてやりたいとは思う。

しかし、マリアは未だに元FISとして拘束され、日本政府としても簡単には合わせる事は出来ない。

ついでに言えば、翼たちの所属する特異災害対策機動部二課ももう直ぐ国連の直轄になるという事で政治で面倒な事になっている。

これなら、正式に国連の直轄になって要請した方がまだ良いだろうと考える翼。

 

「じゃあ、暫くは黙ってた方が良いか…」

「うん…」

 

部屋にマリアを期待させて無駄足になるかも知れない以上、クリスもマリアへの報告を止める事を考え響も頷く。

期待が裏切られる時の思いなどクリスも響もごめんだ。

平行世界の自分たちを見て、将来的にマリアたちが仲間として共に戦うのなら猶更だ。

 

「最後に月読と暁だが、どうも暁の体はアンドロイドだそうだ」

「!」

「アンドロイド!?」

 

翼の言葉にクリスは驚く声を上げるが、響は納得したような表情をする。

クラゲウルフの電撃を受けても無傷で済み、腕を取り外して銃のような物でクラゲウルフの顔面を撃った。

生身の人間なら不可能な行動だが、アンドロイドの体ならあるいは。

 

「如何いう事だよ! まさか、アイツ等の世界にもショッカーみたいな組織が…」

「いや…そう言う事では無く、本物の暁は五体満足で生きていて並行世界で活動する時にあの体を使用してるそうだが…」

「?」

 

翼の説明を聞いて頭に「?」が浮かぶクリス。

説明している翼もクリスに近く、平行世界の調がアンドロイドの切歌の体を造ったらしいがそれ以上は正直分からなかった。

平行世界の調と切歌に何があったのか? 調が何故、切歌のアンドロイドを造ったのか? 並行世界に居る切歌の意識をアンドロイドに送る手段、全てが謎でもある。

 

一応、源十郎の方からも平行世界の調に聞いたが黙秘し、それで終わってしまった。

 

「…なんだ」

 

その時、ふと響の口から零れた言葉。

平行世界の調たちの話で翼とクリスには届かなかった。

 

その後、翼は並行世界に自分と訓練にクリスも並行世界から来た装者に会いに行き、その場には響だけ残った。

 

翼やクリスの様に平行世界のシンフォギア装者とは特に会いたいとも思っていない響は完全に手持ち無沙汰となる。

こういう時は本部に用意された部屋に籠って適当な本でも読もうかと考えた響。

 

「ああ、居た!響!」

「!?」

 

そう考えていた響の耳に聞き慣れた少女の声が聞こえ振り向く。

其処には、嬉しそうに手を振り近づく未来の姿が。

 

「未来…」

「久しぶり…って程でもないけど、元気?」

 

電話では何度か話しているが、直接会うのは響がこの世界に戻った時と治療を終えた時でゲルショッカーの出現後、こうして会うのは久ぶろだと言える。

響としても久しぶりに会いたいと思う反面、顔を合わせづらいとも考えていた。

 

「どうして…此処に…」

「前に電話で話したでしょ、私も暫く寝泊まりした方が良いって。緒川さんが迎えに来てくれたの、平行世界の響たちにも会ってみたいし」

 

未来はゲルショッカーの出現後から源十郎たちが保護するよう働きかけていた。

ノイズもバビロニアの宝物庫を閉じた以上、問題は無い。

平行世界の響たちから、アルカノイズを錬金術師が造って運用すると言うがまだ問題は無い筈だ。

 

未来を保護する最大の理由は、ゲルショッカーの存在だ。

ノイズとは違い、悪辣で汚い手も平気で使う悪の組織。響の親友の未来を放置するとも考えられない、並行世界に飛ばされた響もその世界の未来を人質にされたという。

ゲルショッカーも狙う可能性が高いという事で、未来は保護も兼ねて本部で暫く学園に通う様になる。

本来なら、響の母親とお祖母ちゃん、未来の両親も保護すべきだが、どちらも家や仕事の関係で特異災害のエージェントの護衛に留まっている。

 

「後で、平行世界の響たちに挨拶しないと」

「…そう」

 

ゲルショッカーから身を守る為とは言え、ほぼ拘束に近い感じもするが未来にとって平行世界の響たちに会うのも楽しみと言えた。

反面、響はそれを面白くは思ってないが口には出さない。

 

その時、未来の腹から音が響いた。

 

「…あはは、お腹空いたね」

「…食堂にでも行く?」

 

未来が空腹だと知ると響は本部の食堂に行く事にした。

普段の響なら、水を飲みに行く位で立ち寄らない場所。翼とクリスも偶に談笑してるイメージしかないが響が未来を案内するように足を運んだ。

 

「…げ」

「誰か居るの?」

 

食堂に着き、扉が開くと響は思わず声を出す。

未来が響の背から覗くと誰かが座っておりドンブリを平らげていた。

 

「ん~~、美味しい! 元の世界でも美味しいけどこの世界のかつ丼も美味しい!!」

 

声の主は、箸を片手にドンブリを掻っ込み舌鼓を打つ。

未来としては懐かしい光景に思わず呆然とし響は眉を顰めている。

食堂の入り口に二人が居るのに気が付いた声の主がドンブリと箸から口を放す。

 

「ああっ! この世界の私と未来だ!オーイ、こっちこっちっ!!」

 

平行世界の響が入り口に立つ響と未来を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

それから、響と未来は平行世界の響と同じテーブルに座り未来と響に話しかけ未来がそれに答える。

平行世界の響が一人で居るのは、翼たちの模擬選をして運動して空腹になった平行世界の響が一抜けして食堂で食べに来ていただけだ。

平行世界の響の話から、他の平行世界の装者ももう直ぐ食堂に来るそうだ。

 

「いや~、この世界の未来も未来だね~」

「何それ、おかしい♬」

 

響を他所に未来と平行世界の響の会話は弾んでいる。

平行世界の響は、自分の良く知る親友の未来と変わりない程話しやすく、未来もショッカーに拉致される前の響が帰って来たような感覚でお互いに盛り上がる。

反面、それを横目でチラ見しながら水を飲む響。

 

「公園でふらわーのおばちゃんが…」

「え、おばちゃん公園で炊き出ししてるの!?」

 

━━━話の輪に入れない…未来ともう一人の私…本当に私なの?

 

何度か響も未来と平行世界の響との会話に混ざろうとするが、少し話すと未来と平行世界の響だけが会話し、響は放置され気味になる。

 尤も、それも仕方ないと言えた。平行世界の響の話はシンフォギアだけでなく平行世界の未来との思い出、学院での生活にクラスメートの面白話、他の平行世界での体験など多岐に渡る。

 反面、響の方はショッカーの話を抜きにすれば皆無に近く、フロンティアの騒動後も暫くマリアと共に拘束されていた程度だ。

圧倒的に響は話のネタを持っていない、逆に平行世界の響はロボットやはぐれ錬金術師と話のネタは幾つもある。

勝負になる訳が無い。

 

平行世界の響と未来の談笑を水を飲みながら聞く事しか出来ない響は自身でも気付かず奥歯を噛みしめた。

心なしか、未来の笑顔を久しぶりに見たような感じがする響。

 

━━━私の…私の日向…改造人間じゃない人間の私と…

 

 

 

「それでね…ってアレ? そっちの私は何か食べないの?」

 

未来との談笑中、ふと平行世界の響が響の方を見てそう言った。

自分や未来の前には頼んだ料理があり、平行世界の響と未来は美味しそうに食べているが、この世界の響は水だけ飲んでる事に引っかかったのだ。

 

「あ…」

「ひ、響はちょっとダイエット中で…」

 

突然の事で反応できずにいると未来が咄嗟に言い訳を考えて平行世界の響に伝える。

同時に響も自分の体の事を平行世界の響たちには伝えていない事を思い出す。

とは言え、響としても言いたい情報ではない以上、未来の言い訳に任せるしかない。

 

「ダイエット? 食べ過ぎても運動すればそんなに体重何て増えないと思うけど…そう言えば翼さんは夜九時以降は食べないって言ってたな…」

 

未来の言い訳に納得したのか、平行世界の響はそれ以上の追及はせず目の前の料理を食べる。

先程まで食べていたかつ丼も器だ柄が残り、同じく注文していた唐揚げ定食も美味しそうに食べる。

 

「ん~~、唐揚げのサクサク感と口の中に入れた時の肉汁がたまらない~っ! 私たちの世界の唐揚げより美味しいかも!」

 

平行世界の響の食レポに未来は苦笑いを浮かべるが、響にはただ不快なだけだった。

まだ響がショッカーに拉致される前、家族で食べた母の唐揚げの味を思い出し握っているコップにヒビが入る。

最早、響の舌は味を感じない。

並行世界の響を見て、自身の中に言い知れない物が広がる感じのする響。

 

「この唐揚げ包んで貰えないかな? 元の世界のお父さんたちにもあげたいよ」

「…お父さん?」

 

唐揚げが本当に美味しかったのだろう、平行世界の響が持ち帰りを考え両親やお祖母ちゃんにお土産として持って帰れないか考え、口に出した。

その平行世界の響の「お父さん」という言葉に響も反応した。

そして、それを見逃さなかった平行世界の響は、話を広げるチャンスだとも思った。

 

響が未来と自分の会話に入れてないのを平行世界の響も分かってはいた。

未来だけでなく、平行世界の自分とも楽しくお喋りがしたい平行世界の響は共通の話題になるかもと期待した。

 

「この世界のお父さんたちも元気?」

「………」

 

平行世界の響がそう口にすると響は顔を下に向け黙ってしまう。

未来は、慌てて響と平行世界の響の顔を見てアワアワしだし、その態度で平行世界の響も何となくだが察しがついた。

 

━━━そうか…この世界のお父さんも家族を置いて失踪したんだ…

 

問題は、平行世界の響が完全に思い違いをした事だった。

平行世界の響は、この世界の父親も誹謗中傷に耐えられず家族を置いて逃げ出したと思ってしまった。

この事が、後に平行世界の装者との関係が一時的にギスギスし、後の並行世界の響がこの時の自分をぶん殴りたいと本気で思ったそうだ。

 

「…全く、お父さんには困るよね」

「「!?」」

「いくら、周りからの嫌がらせされたからって私たちを置いて逃げちゃうんだもん。暫くバイト三昧で食べていたようだけど…私と会って、また一緒の家族になりたいなんて言うもんな…情けないお父さんだよ」

「ひ、響!?」

 

未来には訳が分からなかった。突然の父親を貶める様に言う平行世界への響に、背後から大きくなる気配。

何とか平行世界の響の口を閉じたいが良い案が浮かばない。その間にも平行世界の響は二人にお構いなく喋り続ける。

 

「今だから笑えるんだけど、お父さん私の姿をテレビで見てたらしくて、また一緒に住みたいなんて言ってさ、私にお母さんに言ってくれないかって。元気そうで安心したけど、情けない姿を見て私ったら…」

 

会話を続ける平行世界の響。思い出すことに集中していたのだろう、持っていたコップを握り潰し奥歯を嚙みしめ過ぎて口の端から血が出ている響に気付かない。

その様子に気付かない平行世界の響を何度か止めようとする未来だが、平行世界の響は気付かずに話を続ける。

 

「でもね、キャロルちゃんの時に見直してさ…仲直り出来たんだよ。だからこっちの私も…」

 

「きっと仲直り出来る」そう言いかけた時、平行世界の響に衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部の食堂までの通路。

何人かの職員が行き交う中、青い長髪した女性と銀髪の女性が歩いている。

 

「…いててて、こっちの世界の先輩も容赦ねえな」

「たるんでるぞ、雪音。常在戦場の心得を忘れるな」

「へいへい」

 

平行世界の翼とクリスだ。

共に訓練室で複数のノイズや怪人と模擬戦後、こっちの世界の翼とも模擬戦をしていたのだ。

気の済むまで模擬戦をした後に先に仲間の響が向かった本部の食堂に向かってる途中だった。

 

「返事は『はい』だろう。…そう言えば雪音」

「ん?」

「この世界の立花にちゃんと謝罪したのか?」

「…マリアから聞いたのか?」

 

平行世界の翼から響への謝罪を聞かれる平行世界のクリス。

平行世界のクリスは、前の世界での響への暴言に悩んでおり何時か謝罪したいと思っていた。

マリアから事情を聞かされていた平行世界の翼としても、連携の関係で仲直りはして欲しいと思っていた。

 

「…分かっちゃいるんだけどな、タイミングが…」

「こっちの世界に来てゲルショッカーとの戦闘が何度もあったからな、仕方ないと思うが」

 

平行世界のクリスとて、何度か響に接触して謝罪しようとしていた。

しかし、ゲルショッカーの度重なる侵攻や平行世界の装者と話し合いなどで響への謝罪が遅れていたのだ。

とは言え、こっちの世界の響も響だと考えクリスとも和解できると思っていた。

 

 

 

 

 

ガシャーーーンッ!!

 

直後に翼とクリスの耳に何かが割れる様な音が聞こえた。

音がした場所は…自分たちの目的地でもある食堂だった。

 

「「!?」」

 

もしや、ゲルショッカーの怪人が現れたのでは!と考えた二人は急ぎ食堂に向かう。

途中の職員も異変を感じたのか源十郎たちに報告する者もいる。

そして、食堂の扉をバンっと勢いよく開き中に入る平行世界の翼とクリス。

 

「おい、如何した!?」

「何が…!」

 

食堂に飛び込んだ二人が見たのは、襟首を掴まれ食堂の壁に押さえつけられている響と押さえつけてる響の姿だった。

そして、押さえつけてる響を止めようと抱き着いてる未来。

 

「う…ぐぐ…苦しい…」

「お前に…お前にお父さんの何が分かる!!」

「止めて、響!」

 

「…! おい」

「あ…ああ」

 

何故二人の響が争ってるのか分からないが、平行世界の翼とクリスは未来と共に響を制止しようと動く。

最初は、響一人なら自分たちだけで十分だと思っていた。

 

「立花、止めろ!!」

「何してんだよ、このバカ!」

 

「うるさいっ!!」

 

しかし、二人の制止も意味をなさず弾かれたり突き飛ばされたりもする。

 

「いてっ!」

「な…なんだこの力!」

 

平行世界の翼は響の予想外の力に驚き、平行世界のクリスも転がりながらも直ぐに体勢を立て直しつつ何とか響を止めようとする。

しかし、二人と未来だけでは響は治まらず、騒ぎを聞きつけた他のシンフォギア装者も食堂に入り響を取り押さえようとする。

 

「止せ、立花!」

「一体何だってんだ!?」

 

その中には、この世界の翼とクリスも居り未来の説明で暴走してるのが自分たちの知る響だと教えられ何とか止めようと声を掛けたりするが、響は治まる事は無い。

 

「いい加減にしなさい!」

 

見かねた子供マリアがシンフォギアを纏い響を止めようとする。

しかし、相手は敵であるゲルショッカーの怪人ではない以上、子供マリアも全力を出す訳にはいかず手加減してしまう。

手加減して響が止まるかと言えばNOだった。

それでも、胸ぐらを掴まれていた平行世界の響を引き離すことに成功する。

 

「何をしてるんだ、響くん!」

 

政府の人間と話し合いから戻って来た源十郎が食堂に入って来た。

部下からの報告で急いで戻った源十郎だが実際に見るまで信じてはいなかった。

しかし、源十郎の目には他の装者と揉める響の姿を見て自身も止めに入る。

 

暫く、源十郎やシンフォギア装者たちの奮闘で源十郎が響の背後を取り動きを止めた。

 

「離せ、離して!!」

「落ち着け!落ち着くんだ、響くん!!」

 

源十郎が拘束するが響は暴れ続けて、あわや拘束が溶けかけた時一本のナイフが響の陰に刺さる。

途端、響の体は止まった。

 

「影縫い?」

「翼たちがやってないと言う事は緒川か」

「すいません、遅れました」

 

源十郎がそう指摘すると、何処からともなく緒川が謝罪しつつ姿を現す。

しかし、影縫いで響の動きを封じようが口までは封じられない。

 

「お前が…お前なんかが、お父さんを語るな!!」

 

「も…もう一人の私?」

 

響の掴まれていた襟首から解放された平行世界の響だが、響の怒号に近い声に呆然とした視線を送る事しか出来ない。

そんな、平行世界の響の前に万が一でも影縫いを破って響が飛び出すことを警戒した平行世界の翼とクリスが盾代わりとして前に出る。

 

「一体、如何いう事よ!」

 

「お父さんって、お前…」

 

突然の状況に子供マリアを始め平行世界のシンフォギア装者たちは訳が分からないと響を見る。

反面、クリスや響の経歴を知る者は察しがついたのか、響に同情的な視線を向ける。

そうしてる間に、響は源十郎と緒川が別室に連れて行こうとするが、

 

「お前も…お前もアイツ等と同じだ!私から全てを奪っていく、帰れ!帰ってよ、私の居場所を奪う奴は帰れぇ!!」

 

源十郎と緒川に拘束された響はあらん限りの暴言を平行世界の響に投げつけ泣きわめく。

その姿は、子供の癇癪と言っていい位の無様な姿と言えた。

 

「クソ…」

「立花」

 

それに続いてクリスと翼も食堂を後にする。

その場には響が暴れた事で破損した机や椅子、平行世界の装者たちと未来が残された。

それぞれの平行世界の装者がザワザワと話、自分たちも食堂を後にしていく。

その表情は困惑、呆れ、悲しみといったなんとも言えない表情となってる。

 

「あの…翼さん」

「…小日向?」

 

最後に翼が食堂から出ようとすると未来が翼を呼び止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来て早々悪いけど、私たちはこの件から手を引くわ」

「姉さん!?」

 

食堂から出た平行世界のシンフォギア装者たちは、この世界の特異災害対策機動部二課本部の潜水艦では無くギャラルホルンで繋がったゲートの前に居る。

其処で、子供マリアは自分たちは手を引くと言い大人セレナがマリアを呼ぶ。

 

「…同感」

「調!?」

 

アナザー調もそれに同調する。

この場には、平行世界のシンフォギア装者しか居ないが子供マリアとアナザー調の言葉に皆が呆然とする。

 

「おい、本気かよ」

「その…理由を聞いても?」

 

奏と平行世界の響がそう言う。

口ではそう言ってるが、内心では答えを聞く前から想像は出来ている。

 

「決まってるじゃない、いきなりあんな癇癪を起す娘に背中なんて任せられないわ!」

「…正直、信用できない」

 

子供マリアとアナザー調がそう答える。

その答えにやはりかと反応する奏たち、世界征服を狙うゲルショッカーも強敵だが仲間である筈の平行世界の響と大いに揉めたこの世界の響。

まだ、自分たちは共闘なり訃堂に共に扱かれた仲だが子供マリアもアナザー調も屋敷での戦いが初めてだ。

その際の響の印象など覚えてる筈も無く、子供マリアとアナザー調もあれが響との初顔合わせでもあった。

結果、この世界の響の印象は最悪になった。

 

「ゲルショッカーが強敵なのはわかる、でもね後ろを任せられないってのは論外よ」

 

特に、一組織のリーダーである子供マリアはそう言って呆れた表情をする。

彼女の腕には自分だけでなく妹や部下たちの安全も掛かっている。

 

「それは…」

「………」

 

子供マリアに反論しようとした奏たちもこれにはぐうの音も出ない。

少なくとも、自分たちが接触していた時のこの世界の響は自分たちの知る響とそう違いは無い。多少の無口っぽ印象はあるが。

それでも、突然こちらに襲い掛かるとは到底思っても居ない。

響が暴れた理由が何処かにあると考える、その時、遅れていた並行世界の翼が戻って来た。

 

「遅くなってすまない、状況は如何なってる?」

「それが…」

 

並行世界のクリス及び奏から子供マリアたちがこの世界から手を引くと聞く並行世界の翼。

それを聞いて少し眉を顰める並行世界の翼だが、無理に止めることも出来ない。

彼女たちは仲間であり協力者だが部下では無いのだ。

 

「そうか…ただその前に聞きたいことがある。立花、この世界の立花と何を話していた?」

「え?」

 

並行世界の翼の質問に並行世界の響が反応する。

如何してそんな事を聞くのか今一理解してない並行世界の響はありのまま説明した。

 

「そうか…」

 

平行世界の響の説明を聞いて翼が頭を抱えた。

少なくとも、平行世界の響の説明は平行世界の翼にとっても最悪と言えたのだ。

 

「あの…翼さん」

「如何したんだい、翼」

 

平行世界の翼の様子に平行世界の響や奏が心配そうに声を掛け平行世界のクリスも「先輩?」と呟く。

口には出さないが子供マリアもアナザー調たちも平行世界の翼を見つめていた。

 

「…この世界の小日向未来から聞いた情報だ」

 

最後に食堂から出ようとした並行世界の翼を呼び止めた未来は、突然の響の暴走を謝罪していた。

その折に平行世界の翼が何故、響が暴れたのかと聞くと未来は重い口を開けて答える。

並行世界の翼は未来から聞いた情報をそのまま伝える事にした。

 

「…お父さんが…死んでる?」

「マジ…かよ…」

 

平行世界の翼から伝えられた情報に平行世界の響たちは絶句していた。

 

響の父である立花洸はショッカーに殺されていた。それどころか、響たちの前から失踪した訳では無くショッカーに拉致されていた。

当初、これを聞いた平行世界の翼も驚いていたが、並行世界では今まで奏が生きてる世界、シンフォギア装者が存在しない世界、マリアと調たちが出会ってない世界、マリアがFISどころか特殊部隊「APPLE」を率いていたりなど様々だ。

 

そして、この世界は悪の組織ショッカーが存在し響の父親が犠牲になった世界といえる。

 

「!」

「待て、立花。何処に行く気だ」

 

平行世界の翼の報告を聞いた平行世界の響は少し考え事をして、その場をダッシュしようとするが、平行世界の響が立ち塞がる。

見れば、平行世界の響は泣きそうな表情をしていた。

 

「謝らないと…この世界の私に謝らないと!」

 

ここにきて平行世界の響は、この世界の響が激怒した理由がやっと分かった。

この世界の父親はショッカーに殺されていた。

それを自分は話のタネだったとは言え侮辱したのだ、平行世界の響は自分が傷つけてしまったこの世界の響に申し訳なさが溢れ謝罪をしたいと思い行動しようとする。

 

「待て、今謝っても…」

「相手が冷静になるのを待った方がいいぞ」

 

そんな平行世界の響にアナザー翼とアナザークリスが止めに入る。

彼女たちから見ても、この世界の響が食堂での暴れっぷりは相当な物だった。

少し時間をおいて向こうの響が冷静になるのを待って平行世界の響が謝罪するのが良いのではと考え口にした。

 

その後、他のシンフォギア装者たちも交えて響を止めてる途中、

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」

 

「え?」

「うわ…」

 

揉めてる平行世界の響の前に白衣を着た人物が飛び出した。

突然の事にセレナは「え?」驚き、平行世界のクリスは「うわ…」と声を出した。

その人物の正体は、

 

「ウェル博士?」

 

「そう僕こそが、あなた達の心の英雄! ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス!! 満を持して此処に見参!!」

 

この世界のウェル博士だった。

 

「誰も待ってないわよ」

「そもそも心の英雄って何だよ?」

 

子供マリアと平行世界のクリスの突っ込みが入るが、ウェル博士はお構いなしで話し続ける。

 

「おう、レディーたちはロマンという物をしらないようで!これでは、共にゲルショッカーと戦うなど夢のまた夢…いだあぁぁぁぁ!!」

 

ハイテンションに喋り続けるウェル博士だが、突然脚に痛みが走る。

見ればアナザー調がウェル博士の脚を蹴ったのだ。

 

「な…なぜ?」

「…うるさい、後テンションが高い」

 

何故、自分の足を蹴り上げたのか聞くウェル博士にアナザー調はシンプルにそう答える。

その言葉に青筋をたてるウェル博士だが、

 

「そ…それで、ウェル博士!我々の下に来た理由は?」

 

ウェル博士の不穏な気配を察した平行世界の翼がウェル博士に何しに来たのか質問する。

青筋を浮かべていたウェル博士だが、その質問が聞きたかったのか一気に表情が明るくなり。

 

「そう、僕が君たちの方に来たのは…これを渡す為です!!」

 

そう言ってウェル博士は懐から何かを取り出し平行世界の翼へと渡す。

受け取った平行世界の翼が見るとそれはメモリーチップのようだ。

 

「ウェル博士、これは?」

「特異災害対策機動部二課がショッカーと戦いだす記録の数々、その中にはこの世界の立花響の記録もあります!!」

 

ウェル博士が渡したメモリーチップ。

それは、特異災害対策機動部二課とショッカーとの戦いを記録しウェル博士が編集した映像だった。

 

「ルナアタックから君たちの言うフロンティア事変でのショッカーとの激闘が記録されています!これを見れば、この世界の立花響も何があったのか、分かりますよ!」

 

それを聞いた、平行世界の響たちは並行世界の翼に渡されたメモリーチップを見る。

確かに、この世界の立花響に何があったのかは知りたいし、今まで特異災害が如何やってショッカーと戦って来たのか興味はあった。

しかし、と考えた平行世界の響は並行世界の翼と見つめ合った後、並行世界の翼が持っていたメモリーチップを持ちウェル博士に向ける。

 

「ウェル博士、これ…返します」

「…一応聞いておきましょうか?何故です」

 

平行世界の響はメモリーチップをウェル博士に返却しようとした。

少し驚いて素に戻ったウェル博士が何故かと聞く。

 

「…こんなのフェアじゃないです、幾らなんでも人の過去を勝手に覗くなって…せめて私とこの世界の私が仲直りした後にでも…」

 

平行世界の響を始め、シンフォギア装者には触れてほしくない過去など幾らでもある。

だから、ウェル博士の渡したチップで勝手にこの世界の自分の過去を覗くのに抵抗があった。

 

「仲直り…してからですか…」

「はい」

「一つ聞きたいんですが、その仲直りするのは明日ですか?それとも明後日?」

 

平行世界の響の返答に眼鏡を光らせたウェル博士は疑問を口にする。

即ち、何時仲直りするのかという疑問だ。

 

「え…」

「まさか。一年後とか言いませんよね?ゲルショッカーが果たして待ってくれるでしょうか?」

 

ウェル博士としても、平行世界の響とこの世界の響が仲直りするの別段問題ない。

問題としたのは、何時仲直りするにかの期間だった。

このまま彼女たちが協力していくか協力を切るかはウェル博士には分からないが、協力するのなら早いうちにして欲しいと思っている。

 

「おい、そういう言い方は…」

「…あなた達は如何やら未だに他人事のようですね」

「う…」

 

ウェル博士の指摘に子供マリアが小さな声を出す。

思わず並行世界のクリスがウェル博士に文句を言おうとするが、ウェル博士の発言は止められなかった。

ウェル博士はまるで演劇を演じてるかのように体を動かし語る。

 

 

「そう!あなた達、並行世界のシンフォギア装者はこの世界が仮にゲルショッカーに支配されても自分たちは関係ないと思ってるでしょ!」

「そんなことは…」

「しかし! ゲルショッカーが果たしてこの世界だけで満足するでしょうか!?アナタ方、平行世界のシンフォギア装者に平行世界の存在は既に嗅ぎ付けている現状、ゲルショッカーが並行世界に侵攻しないといえますか?」

「それは…」

 

ウェル博士の言う通り、万が一ゲルショッカーが世界征服を果たした時、この世界だけで満足する可能性は低い。

自分たちと言う並行世界の人間が介入した事でゲルショッカーは並行世界の存在に気付き、その世界も手中に納めないと考えられない。

 

「ゲルショッカーには、並行世界に渡る手段何て無い筈よ!」

「ええ、()()そうでしょうね。ですが時間を掛ければ? ゲルショッカーの技術力は僕らの想像以上と言えますよ」

 

子供マリアがゲルショッカーに並行世界に渡る技術は無いと言うが、ウェル博士は時間を掛ければ可能性があると言う。

子供マリアやアナザー翼やセレナたちは今一分かってはいないが以前の並行世界で前組織であるショッカーの技術力を見た並行世界のクリスと奏は嫌な汗を流す。

 

完全聖遺物を鹵獲しエネルギーを取り出したり、短期間で島を要塞に改造したり、ギャラルホルンを調べる為に偽響を用意したショッカーだ。そんなショッカーを放棄した首領は新組織ゲルショッカーを立ち上げた。

確かに、ゲルショッカーを放置し続けるのは不味いといえる。

 

結局、ウェル博士の言葉を聞いて並行世界の翼がメモリーチップを受け取り並行世界の響を説得した。

そんな並行世界の装者たちを見て変なポーズを取るウェル博士。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェル博士が平行世界の響たちと会ってる頃。

特異災害対策機動部二課本部の一室から源十郎が出てくる。

 

「指令!」

「あのバカは…」

 

すると、源十郎を見つけた翼とクリス、未来が駆け寄る。

部屋の前でずっと待っていた、

 

「お前たちか…響くんはやっと落ち着いたようだ」

 

源十郎がそう言うと扉の閉った部屋の方を見る。

食堂で暴れた響は、源十郎と緒川がこの部屋に入れ落ち着かせようと響にずっと話していた。

この部屋は、一種の独房で懲罰房としての役割もあり本部の中でもかなりの頑丈を誇る部屋でもある。

尤も、響が本気で暴れればどの位持つやらと考える源十郎。

 

「…響と…会えますか?」

「未来くんか…本来ならダメなんだが…」

 

 

 

 

室内、裸電球が付いているだけの簡素な部屋。

その部屋の隅に膝を抱えて座り込む響。

微動だにしない姿に見る人間が見れば作り物のように見えるかもしれない。

そんな、部屋の扉が開くと未来が入る。

 

「…響」

「………」

 

未来が響に話しかけるが未来の声を聞いても響は身じろぎ一つしない。

そんな響の反応に未来もどうしていいか分からず響を見続ける事しか出来ない。

謎の沈黙が辺りを支配し数分が過ぎる。

 

「…私さ…」

「響?」

 

その場の空気に耐えられなくなったのか、或いは気まぐれか、響はやっと口を開いた。

 

「私さ…お父さんの悪口を聞いて頭に血が上って…」

 

其処まで言って、響の座る床に何がが滴る。

それが響の涙だと未来は直ぐに気付いた。

 

「響…」

「気付いた時にはもう一人も私に暴力を…私変わってなかった…あの頃から…ショッカーに拉致されていた時と…何も…」

 

響の時間は、ショッカーに拉致されていた一年半の時代で止まっていた。

それは、ショッカーから逃げ出し源十郎と出会い特異災害対策機動部二課に保護されても変わらなかった。

今も響の心はショッカー囚われている。

 

「…」

 

未来は何も言えず、黙って響の横に座り体を密着させる。

少しでも、響の心が軽くなるよう祈り。

 

 

 

 

 

 




一からアナザー調とアナザー切歌の説明はちょっと難しい。
調自体そこまでお喋りでもないし、アンドロイドの切歌の体も説明がムズイ。他の平行世界の装者が簡単と言う訳でもない。

ゲルショッカーの関係ない所で響たちに亀裂が。

平行世界の響にとって、父親との確執は過去の事で、この世界の響を元気づけようと共通(この言い方、問題ありそう)の父親の愚痴を言い合いたかっただけで馬鹿にするつもりはなかったんですが、この世界の響には最大の侮辱になったので。
とは言え、話のネタとはいえ原作の響に父親の話をして話が広がるか?という疑問が書き終わった辺りに湧いてきた。

響も響で、ショッカーに負わされた心の傷は如何にもならず、源十郎たちも余裕が無いのが実情です。
更に、平行世界の改造手術をされてない生身の自分が他の装者と仲良くし未来とまで気兼ねなく話始め余裕のない響の情緒もグチャグチャになっていまとうとう爆発。
ショッカー囚われず、自分以上に何も失ってない平行世界の響は響の憧れでもあり嫉妬の対象でもあります。

グレ響の時は、グレ響と二人で活動してる時間も長く、向こうの特異災害に保護された時も地獄大使との決戦まで短い方でしたから。

そして、またもや謝るタイミングを逃す並行世界のクリス。

次回は、本編響の過去を平行世界の響たちが見る、アニメで言う総集編のような話。
ハーメルでも偶にある、そのキャラの過去話ですね。
或いは、平行世界の響たちの反応集。
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