改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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暑いとホントにしんどい…
っと思ったらちょっと涼しくなった?

今更ですが、新 仮面ライダーSPIRITSが最終回を迎えたそうです。
コミック派なので最終巻が楽しみです。


今回の文字数は4万越え…。
前後に分けたのに!!


145話 今明かされる響の過去 死神博士編 後編

 

 

 

源十郎が一旦映像を止めて数分。

休憩を取って、落ち着きを取り戻した響たちが部屋へと戻り再びソファーに座る。

一部のシンフォギア装者も深呼吸などをして心身ともに落ち着ける。

それを確認した源十郎は映像を再開させた。

 

「未来がショッカーに捕まってる所からだね」

「未来さんが響さんを元に戻してって言いましたデス!」

「…当然、覆水盆に返らず…か」

「それに対してあの娘は死神博士たちに悪魔って罵ってるわ」

「今更過ぎるな…」

「死神博士も地獄大使も完全に開き直ってるな」

「未来の想いをショッカーに塗り替える!?」

「私の響への気持ちを? …ヤダ~」

「向こうの小日向も拒否してるが、意にも返さないか」

「今更になって後悔してるわね、何から何まで遅いのよ」

「マ…マリアちゃん、未来が泣いちゃうからこれ以上は…」

 

子供マリアが、画面に映る未来の浅はかさを言うが響が未来の眼に涙が溜まってる事に気付き止めようとする。

 

その間も映像に映る未来も自分が浅はかだったと気付くが後の祭り。

一人泣く未来の姿を暫く見続けたウェル博士。

 

その後、エアキャリアのミーティングルームで話すマリアたち。

内容は、マリアたちの記憶通りとも言えるが所々違っている。

 

「ショッカー戦闘員が偶に巡回してるから警戒してるわね」

「よっぽど、ショッカーに聞かれたくないんだろうな」

「マムが、友人の力も借りてショッカーの息のかかってないエージェントと協力しようとしていたのね」

「でも、マムの友人はもう…」

「殺されてたデス…」

「…ウェルもその事を話しに来たわね」

「…コイツ、一体どっちの味方なんだ!?」

 

マリアたちの会話に入るウェル博士の姿を見て憤る奏。

森でマリアたちに死神博士を倒すと言いながら、その死神博士と共にノイズにマリアたちを襲わせ脳改造した響も見逃した。

一体、どれがウェル博士の真意なのか本人からメモリーチップを渡された響たちにも分からない。

だが直後に、ウェル博士がマムたちにある相談をする。

 

「! 未来を装者に!?」

「コイツ、未来を利用するつもりか!?」

「待て、雪音。案外これは名案かも知れない」

「そうね、小日向未来が神獣鏡の装者に適合できると知れば死神博士も迂闊に改造人間には出来ないかも知れない」

「あ、死神博士も面白がって納得した」

 

ウェル博士の提案を聞いた死神博士は少し考えて笑みを浮かべ「やってみろ」と言う。

その言葉に、死神博士に気付かれぬようホッとした表情をするウェル博士。

 

その後、ウェル博士はマリアと共に格納庫…未来の入る檻の前に居る。

 

「未来…」

「落ち込んでるわね」

「小日向がマリアたちに気付いた」

「………」

「未来さんを見て、マリアがセレナを思い出してるデス」

「…あんま似てねえだろ?」

「そう言う事じゃないよ、ツバサ」

「ウェル博士が喋り出すと未来が怯えだした」

「改造手術されると勘違いしてるのか?」

「あら、ちゃんと中止が告げられたわ」

「未来が凄い喜んでる」

「そんな小日向未来にウェルが釘を刺してるわ」

「うわ…アイツの記憶を引き合いに出したぞ」

「檻に閉じ込められてる少女にそう言うと、事情を知らなかったら詐欺を働こうとしか見えないわね」

「それ以前の問題だろう」

 

ウェル博士が未来にある提案をし、数時間後。

マリアたちを乗せるエアキャリアが海の上を飛ぶ。

目的は、フロンティアの沈んでいる海域だった。

 

「マリアたちが動き出したって事は、ショッカーも動き出したって事だな」

「…この時点でフロンティアの沈んでる場所は判明していたのよ」

「なら、動くか」

「…マムの具合が悪そうデス」

「マムの病は、ドクターや死神博士が見てくれてるけど…」

「どうせ奴等の事だ、完治なんてさせる訳ねえな」

「だろうね…」

 

「エアキャリアのセンサーに反応?」

「確か、この時は…」

「アメリカの哨戒艦艇か!?」

 

源十郎は声に響たちは嘗てのフロンティアの前哨戦を思い出す。

マリアたち……厳密にいえば、ウェル博士がほぼ独断でソロモンの杖からノイズを出しアメリカの艦艇に襲い掛かった事だ。

あの時の事を思い出したマリアは自身の唇を噛み、調と切歌は互いの顔を見る。

 

そのして、アメリカの哨戒艦艇は、マリアたちの記憶通り襲われたが襲った相手はノイズだけ…ではない。

 

響たちは戦慄していた。

映像の中のアメリカ兵がノイズに接触し灰となる何時もの光景。

可哀そうだと思うが、ノイズが相手なら当たり前の光景、だが響たちが戦慄したのは別の物だった。

 

アメリカの哨戒艦艇の横から見たことない潜水艦が現れると共に何者かが哨戒艦艇に乗り込んだ。

ショッカーの怪人、カブトロング、ナメクジラ、フクロウ男、ヒルゲリラ、イソギンチャック、そしてギリザメスだ。

それらがノイズと共に米兵を襲いだした。

 

「む…惨い!」

「ノイズとは違って攻撃は届くけど…」

「並みの銃器じゃ倒すどころか、傷一つつかないなんて」

「カブトムシの改造人間の硬度も凄いな、バズーカ砲が直撃してもビクともしない」

「それどころか、左腕のハサミで兵士を切り刻んでいるわ」

 

「空を飛ぶフクロウの怪人も厄介だな」

「ああ、空を飛ぶのもそうだが目が光った瞬間、兵士たちが一瞬で骨になってやがる」

「本人の言う、殺人レントゲンと言う奴だろう」

 

「白い軟体生物の奴も厄介よ」

「カタツムリかしら?」

「…殻を背負ってないからナメクジじゃない?」

「ナメクジが、炎を吐いたり人間を溶かす液体を吐くのか?」

 

「あの緑色のヤツは何だ?」

「頭から血を流してる感じだけど…」

「! 兵士を捕らえて…血を飲んでる!?」

「吸血系の怪人だな」

「確か…名前はヒルゲリラじゃなかったか?」

 

「イソギンチャクの化け物が竜巻を起こした!?」

「それだけじゃない、竜巻で兵士たちを飛ばして頭上の口に飲み込んでいる」

「食ってやがるのか!?」

 

「最後は、向こうの私と翼が戦ったギリザメスね」

「口から吐いた火炎で何人もの兵士が黒焦げにされている…」

「死神博士め、六体の怪人を投入したのか」

 

響たちは、怪人やノイズに蹂躙される光景を見るしか出来ない。

途中、通信を受け取ったのか米国の増援の艦艇も来たが、死神博士の持つソロモンの杖で出現ノイズに蹂躙される結果になった。

映像を見ている響たちは拳を握り見続ける。

 

その時だ、響たちも聞き覚えのあるが聞こえて来た。

 

「…この歌」

「調デス!」

 

切歌の言う通り、月読調の声で唄う歌が聞こえると共に頭部のツインテールに付いてるユニットから小型の丸鋸を発射する。

その丸鋸で次々と戦闘員とノイズが倒れていく。

 

「よし、ノイズも戦闘員も次々と倒しているぞ!」

「このまま全滅させれば…」

「…駄目だ、調くんのギアがカブトムシの怪人に止められた」

「不味い、止まれば狙い撃ちだ! 何とかして動かなくては…」

「…それどころか調のアームドギアが砕かれた!」

「怪人の言葉からして、チビっこの抹殺命令が出たみたいだ!」

「他の怪人たちも調ちゃんに襲い掛かった!」

 

響の言う通り、調を殺そうと一斉に襲いだす怪人たち。

調も簡単にはやらせないと怪人の攻撃を避け反撃しようとするが、新たに出したアームドギアを壊され命中しても掠り傷を作るのが精一杯だった。

 

「…駄目だ、数の差もそうだが実力でも向こうのが上だ」

「! フクロウの怪人の眼が光った!」

「咄嗟にアームドギアの巨大丸鋸を壁にした」

「だが、盾にした丸鋸が爆発して月読が吹き飛ばされた!」

「倒れた調にカブトムシの怪人がハサミを振り下ろそうとしている」

「逃げるデス、調!!」

 

切歌が声を荒げるが、倒れた向こうの調は爆発した衝撃の所為か、動くのも困難だった。

そのまま、カブトロングのハサミが調に突き刺さるかと思われた時、一本の緑色の鎌がカブトムシの前に突き刺さる。

 

「向こうの私デス! 向こうの私が調を助けたデス!」

「切ちゃん、落ち着いて」

「何だ…怪人を無視して、向こうの切歌が調に抱き着いた?」

「待って、切歌ちゃんの手に!」

「注射器? !Anti LiNKER!?」

「お…思い出したデスゥ!!!」

 

切歌が先程と打って変わり、叫ぶように取り乱す。

この世界の切歌も調にAnti LiNKERを打ち一時的無効化した。

映像の調もシンフォギアが解け普段着になった。

突然の事で怪人たちは咄嗟に動けず、二人の様子を見ているようだった。

その間にも、二人が一言二言話すと水柱が上がり何かが飛び出し自分たちの居る哨戒艦艇の真上に移動する。

 

「ミサイル!?」

「っという事は!」

「翼さんとクリスちゃんだ!!」

「丁度、二人が飛び出して雪音クリスが怪人たちにミサイルを撃ったわね」

「? だが、何時もの奴より火力が低いように見えるが…」

「どうやら、あれは煙幕の様だ。 突然の攻撃と慌てた怪人たちの一体を向こうの私が切り捨てた」

 

翼の言う通り、煙幕で視界を塞がれた怪人の一体…ナメクジラが翼のアームドギアの剣に切り倒され爆発四散する。

それを見ていた調は翼たちの乱入に驚くが、切歌はそうでもなく小さくガッツポーズをとる。

しかし、怪人たちもやられっぱなしという訳でもない。

直ぐにイソギンチャックが竜巻を起こしクリスの張った煙幕を吹き飛ばし翼とクリスの姿を露わにする。

 

「竜巻で煙幕を散らした!?」

「器用な奴だ」

「直ぐに雪音が動こうとしたがフクロウの方が先に動いたか!」

「クリスちゃんが吸血する怪人の鞭に捕まった!」

 

映像では、フクロウ男の殺人レントゲンを咄嗟に避けてたクリスだが、すぐさまヒルゲリラの鞭に足をからめとられる。

助けに行こうとする翼もカブトロングとギリザメスが立ちはだかり、クリスの援護には行けなかった。

 

「分断されたか!?」

「数の差をいかしてるな」

「映像が向こうのアタシになったぞ」

「クリスちゃんが吸血怪人とフクロウが戦ってるね」

「あの吸血怪人、雪音クリスの血を狙ってるわね」

「男の血が不味くて若い女の血が美味しい?」

「言ってる事がキモいデス」

「あっ、クリスがアームドギアのガトリング砲で怪人たちを攻撃したぞ」

「…でも、怪人を倒せる程の威力じゃないわね」

「如何やら、向こうの雪音も想定していたようだ」

「一瞬で先輩が大きなミサイルを出して二体に撃った!」

「フクロウの方は飛び回ってミサイルを振り切ろうとしてるが、吸血怪人は早々にガードして防いだ!」

 

ヒルゲリラが腕をクロスしてクリスの大型ミサイルのダメージを最小限にする。

クリスの攻撃を防いだヒルゲリラが反撃に移ろうとするが、爆発の煙が晴れクリスの方に視線を向けるとヒルゲリラが度肝を抜かれる。

クリスは、既にアームドギアを狙撃銃に変えヒルゲリラを狙っていたのだ。

そして、クリスの指が狙撃銃の引き金を引き、ヒルゲリラの胴体に大きな風穴を開ける。

 

「やったデス!!」

「吸血怪人が爆発した、やっつけた!」

「…向こうのアタシ、かなりやるな」

「ああ、上手く煙幕や囮を利用している。長くショッカーと戦ってる所為か?」

「もしかして、ここのクリスちゃんよりやり手?」

「…うるへー」

 

響の意地悪な質問に頬を膨らませつつ、そう言ったクリス。

映像では、もう一機の大型ミサイルに追われてるフクロウ男が飛び回る途中で殺人レントゲンでミサイルを落としていた。

 

一方、向こうの翼もカブトロングとギリザメスに激しい鍔迫り合いが起き火花が何度も散る。

剣の得意な翼とは言え、二体の怪人との接近戦は防戦に徹している。

 

「翼さんの方も厳しそうだね」

「剣の腕自体見れば、私の方が勝っているようだが、体力と力で上回っているな」

「あれはオレでも受けるのは厳しいかな?」

「…とは言え、ちょっと押され気味だね」

「! ギリザメスが、口から火炎を吐いたわ!」

「翼が炎に呑まれた!?」

「炎で翼の姿が見えない…」

「これじゃ…待って、歌が聞こえる」

「歌? …この歌って!」

「翼さんの歌だ!」

「炎から飛び出してカブトムシの怪人と交差した!」

「カブトムシの怪人のハサミが壊れた!」

「翼さんの風輪火斬だ!」

「カブトムシの怪人を撃破したわ!」

 

これで、翼とクリスがそれぞれ怪人を一体ずつ撃破した事で響たちもお祭りのようにはしゃぐ。

映像では、残った怪人が仲間を倒された事に驚愕などをしているが直ぐに翼たちを睨みつけ臨戦態勢に入る。

その時、海上から水柱が上がると何かが翼たちの乗る船の甲板に着地する。

 

「あれは…」

「ショッカーに捕まってた立花響…ね」

「…とうとう出てきやがったか」

「また『変身』て言ってシンフォギアを纏ったわ」

「相変わらず、金色に光るベルトをしてるわね」

「向こうの翼さんと先輩の視線が向いた…」

「! 何だよ今の言葉…」

「まるで、ロボットが喋ってるみたい」

「前よりも、頭の中も弄られてる」

「こんなんで元に戻るのか?」

「本当に、どうやってあの立花響になったのかしら?」

 

再び、向こうの翼とクリスの前に現れた立花響。

彼女からでる言葉は、人間というより機械的な事にショックを受ける響たち。

その中でクリスとマリア、未来だけ前の世界で出会った立花響を思い出す。

自分たちの知る立花響より、性格が暗めだがこんな状態では無かった筈だと思っている。

 

そう思っていると、映像からは聞いた覚えのある聖詠が聞こえると強烈な光を放つ。

 

「おいっ!」

「あの聖詠…」

「…神獣鏡のシンフォギア」

「あの時と同じバイザー」

「あの英雄狂い、ダイレクトフィードバックで未来さんを操る気デスか!?」

 

強烈な光を出して現れた少女。

それは、響たちも知る響やクリスの親友にして同じ部屋のソファーに座る少女、向こうの世界の未来だった。

過去に、切歌の言うダイレクトフィードバックで操られた未来は響たちと望まぬ戦闘をやらされた事を思い出すこの世界のシンフォギア装者たちと源十郎と緒川。

 

悪の組織であるショッカーなら、そのダイレクトフィードバックも喜んで使うだろうと想像に難しくない。

そして、響たちの予想通りギアのバイザーを付けたまま未来が響と共に翼たちへ攻撃する。

 

「これじゃ、フロンティア事変の二の舞じゃねえか!」

「いや、あの時は立花は味方だった…その立花すらショッカーに操られている」

「…アレ?」

 

向こうの世界の未来が翼たちにレーザーを撃つ姿を見てクリスと翼が奥歯を噛みしめる。

だが、響だけは映像の未来の様子に、ふとした違和感を感じていた。

どうやら、画面向こうの源十郎も違和感を感じたらしい。

 

「あっ、映像が本部の潜水艦の指令室に移ったわ」

「当たり前だけど、本部の方も慌ててるわね」

「…また、ショッカーから強制通信!?」

「死神博士の顔が、どアップで映ったデス」

「相変わらず不気味…」

「相も変わらず向こうのアタシ等の墓場を作りやがって」

「死神博士が面白い物だと?」

「「「…!?」」」

「何だよ…これ…」

「ロボットの設計図?」

「いや…これは…」

「…たぶん、向こうの私の体の中だよ。それも、かなり詳細な…」

「「「「「!?」」」」」

 

響の言葉に翼たちは愚か、アナザー調以外の並行世界のシンフォギア装者も響と画面に移る機械の設計図らしきものを交互に見る。

響も思い付きや適当に言った訳では無く、何か確信したよう言う。

その影で、クリスは自身の手を見つつ握ったり開いたりを繰り返した。

 

向こうの世界の立花響がショッカーに拉致され改造手術されたのは聞いてはいたが、想像以上に響の内部に元々の肉体が少ない事に気付く。

更には、翼やクリスたちは愚か、研究者のアナザー調すら見たことない機器や装置に眉を顰める。

 

「…でも、今更これを見せて何が目的?」

「なっ、立花を返す!?」

「嘘…」

「信じられません!」

「…ちょっと、待って!」

 

突然、死神博士が立花響を返すと聞き、画面の向こうの源十郎も、この場に居る響たちも信じられないと声に出す。

死神博士の目的が読めない事で頭を回転させる一同。

その時、向こうの響の体内の映像を思い出したアナザー調が持ってきていたノートパソコンを起動しキーを打ち込む。

数分、或いは数秒の時間が経つとアナザー調は珍しく奥歯を噛みしめる。

 

「! …最悪」

「な…何がデスか?」

「…あの娘…爆弾にされてる」

『!?』

 

アナザー調の言葉に今度こそ、その場にいた一同は絶句した。

殆どが見知らぬ機器だったが、辛うじて知っている装置に不自然なコードを見つけ脳細胞をフル回転させたアナザー調は、自身すら信じられないながらも愛用のノートパソコンにデータを入力し何度もシミュレートした結果だった。

 

丁度、画面向こうの特異災害対策機動二課本部でも響の仕掛けに気付く。

だが、その内容は更にショッカーの邪悪さを思い知る。

 

「そんな…」

「爆弾は爆弾でも…」

「向こうの私を反応兵器に…」

「それもツングースカ級だと…」

「ヒデぇ事をしやがって!」

「響は死神博士の最高傑作じゃなかったの!?」

「…最高傑作は、また作ればいいだと!?」

「ドクターとは別次元でマッドね」

シンフォギア装者殲滅作戦?」

「相変わらずのネーミングだが…」

「アタシ等にとっちゃ、ドンピシャ過ぎる」

「立花を殺せば止まるらしいが…そうなればもう、私たちは戦えないだろうな…」

「…そこまでして、向こうのアタシ等を殺したいのかよ」

 

死神博士の作戦。

それは、脳改造した立花響の体内に核分裂する時限式の爆弾を仕掛け、翼やクリス諸共抹殺しようとしていた。

翼とクリスの性格を考えれば、恐ろしい程の効果がある作戦だ。

 

この時の、響たちはショッカーの恐ろしさと共に手段を選ばない異常性に翼たちへの強い殺意に恐怖を覚える。

今までも、色々な敵と戦った響たちも世界蛇以上の畏怖を感じる程に。

 

「…映像が、向こうの私たちに変わった」

「向こうのクリスちゃんが必死に向こうの私に呼びかけるけど…」

「ますます向こうの響の喋り方がおかしくなってる」

「このまま、立花響と小日向未来を相手にするのは…アっ」

「未来がイソギンチャクの怪人を消し飛ばした?」

「なに、事故?」

「…違う、未来は操られて何て居なかったんだよ!!」

「小日向のバイザーも開いた目は正気だ…だが、何故?」

 

パンパカパーン!

わーい! なぜなにウェル博士!!

 

「何か始まった!?」

「…今度は何だよ」

「あっ、ウェル博士と私と切ちゃんの人形が出て来た」

「…地味に可愛くないデス」

 

『ウェル博士、ウェル博士』

『デース』

『何だい?月読調くん』

『どうして、小日向未来さんは洗脳されなかったの?』

『デース』

『それはね、シンフォギアとなった神獣鏡が脳改造した事による能力が未知数だったのが表向き』

『表向き?』

『デース』

『僕もマリアも最初から死神博士に従う気なんて皆無だったんですよ。言い訳も準備してましたしね』

『死神博士の目を欺いたんだ、すごーい』

『デース』

『でも、シンフォギアを初めて纏った小日向未来さんが、いきなり怪人たちと戦えるのは何で?』

『デース』

『それはね、僕の用意したダイレクトフィードバックのおかげなんです』

『ダイレクトフィードバック? それって何?』

『デース』

『ダイレクトフィードバックとは、元々米国の機関で僕を始めとした科学者が………元々米国は………機械で聖遺物を制御する事を目標として………ですが、下手をすると取り付けられたシンフォギア装者の思考も制御され………ですが、その技術がショッカーに漏れてる可能性が………おっと、話が長くなってしまいましたね。

まあ要するにこのダイレクトフィードバックで小日向未来の戦闘をサポートしてるんです!』

『…博士…話長い…』

『…デース』

 

「あっ、終わった」

「私の人形、デスしか言ってないデース!!」

「まあ、明らかに機械音声だったから…」

「話が長かったけど、要は未来は最初から洗脳されてないって事か」

「向こうのウェル博士のファインプレイだな」

「…あんまり褒めたくはないけどね」

 

正直、ウェル博士が動いてくれて助かった。

しかし、マリアも響たちも素直にウェル博士を称えるのに抵抗もあった。

 

映像には、ショッカー側から翼たちに合流した未来が二人と共に響とギリザメスとフクロウ男との睨み合いが起こる。

 

「未来が味方になって数は互角になったが…」

「…やはり、敵となった立花が厄介だな」

「暫く睨み合う形になるか…! 戦闘員が動いた!」

「潜水艦からもドンドン出てくる!」

「一体、何人乗ってるデスか!」

「戦闘員が動いても響や怪人たちは高みの見物だと」

「明らかに翼たちの消耗を待っているな」

「戦闘の基本ね」

「嫌な基本だな…」

「あ、ショッカーの潜水艦が爆発した!」

「アメリカ軍のイージス艦…援軍か!」

「…それって大丈夫なのか?」

 

ショッカーの潜水艦を破壊したのがアメリカ軍だと知り少し不安になる響たち。

何しろ、アメリカは事あるごとにシンフォギアを持つ日本政府を敵視して余計な事をやるのが多い。

ハッキリ言って、響たちも安心してアメリカ軍に背中を向けれるかと言われると即答できない。

 

しかし、映像では本部からアメリカ海軍が翼たちに協力すると言われ響だけホッとする。

翼たちは相変わらず懐疑的な目だが、エアキャリアに乗る死神博士がソロモンの杖からノイズを出し援軍のイージス艦を攻撃させたのを見て、やっと納得した。

 

映像では、死神博士が出したノイズにアメリカ軍人が銃で応戦するが結果は著しくない。

この様子を見て、翼たちはフロンティア事変の時の事を思い出しクリスに至っては拳を握りしめる。

映像のクリスもノイズを放置できず、翼たちから離れ米兵を襲うノイズを片付けに向かう。

 

「正直、雪音が抜けると厳しくなるが…」

「言ってる傍から、怪人と戦闘員が襲って来た!」

「調ちゃんと切歌ちゃんたちの方に怪人たちが行ってる!」

「そんな二人も下に翼が二人の援護に入ったわ!」

「『千ノ落涙』で戦闘員とノイズは片付いたけど、怪人が厄介ね」

「二対一だけど、何とか翼が二人の怪人を押してるな」

「しかし、守りながら戦うのは不利としか言いようがないか」

「今更な話でしょ」

「あっ。海から緒川さんが来て調を連れて行ったデス!」

「でも、ギリザメスが私たちを追っていった」

「ええっ! 向こうの切歌ちゃんが翼さんに切り掛かった1?」

「何してるデスか、私っ!」

 

平行世界の自分とは言え突然の事に慌てる切歌。

しかし、映像は其処で切り替わり未来と響が映る。

その映像を見て、フロンティア事変で操られた未来と敵対した時を思い出す響。

 

「…向こうの小日向が必死に呼びかけてるな」

「頭の中を弄られてる所為で聞く耳が無いわね」

「ショッカーの奴らめ!」

「このままじゃ、アイツは反応兵器に…」

「…不味い、立花響の限界時間が残り五分」

「それだけしかないの!?」

 

自信のノートパソコンで計算した向こうの世界の響の残り時間を呟くアナザー調。

残り時間の少なさに思わず声を上げるマリア。

響たちも心配そうに映像の響を見る。

 

「小日向と立花が歌いながら戦いだした!」

「未来の歌はあの時の奴だけど、ワタシはまたショッカーの歌か」

「未来のレーザーが全部避けられてるな…」

「その所為か、小日向未来の両腕付近の鞭を使って接近戦を仕掛けた!」

「でも、アッサリ掴み取られたデス!」

「響さんがカウンターを咄嗟に未来さんがガードした」

「今の動き…ダイレクトフィードバックのお蔭か」

「そのようですね」

 

響と未来の戦いは終始響の有利で進む。

幾らダイレクトフィードバックでサポートされてる未来でも歴戦の経験と躊躇いの無い攻撃に防戦一方といえた。

その時、映像が再び切り替わり特異災害対策機動二課本部の潜水艦が映る。

 

「また、場面転換?」

「忙しない!」

「待って、甲板で血塗れになってるのは…指令?」

「何で、旦那が血塗れに? …海面から何か飛び出した!?」

「あれは、ギリザメス!」

「そうか、月読を抱えた緒川さんを追ってたギリザメスが本部の潜水艦に接触したのか!」

「…だとすれば、ギリザメスは何の躊躇もなく本部である潜水艦を壊そうとするでしょうね」

「だから、俺が甲板でギリザメスの相手をしてるのか」

「でも、師匠の体が…」

「ギリザメスは、海を泳いで本部の周りをまわってるわね」

「迂闊にギリザメスを追えば海中に引きずり込まれ、甲板に居れば死角からの不意打ちか」

「汚ねえ…」

 

向こうの世界の源十郎の苦戦に響たちは指をくわえて見る事しか出来ない。

仮に、源十郎の代わりに自分たちが居たとしてもギリザメスに勝てるかと言われると難しい。

シンフォギア装者にとって、それだけ海中での戦いは厳しいと言える。

 

「立花…お前なら海中に引きずり込まれてもギリザメスに勝てるか?」

「…正直難しいですね、南氷洋での『棺』との戦いだったら海中に落ちても皆で歌ったフォニックゲインで如何にかしましたけど、ギリザメスと一対一は…」

 

翼の言葉に淡々と答える響。

この中で、海中で戦った事のある響と言えどギリザメスと海中戦は正直御免被りたいのが本音だ。

経験者の響がこう言うのだ、他のシンフォギア装者も言うに及ばずといえる。

 

そして、映像はまたも向こうの響と未来の戦いが映る。

突然の場面転換にクリスが「またかよ」愚痴るが二人の戦いを見守る。

 

「小日向がレーザーを撃ってるが、簡単には当たらんな…」

「それどころか、未来の持っていた扇が蹴り飛ばされたぞ!」

「アームドギアなら直ぐに補充できるから大丈夫よ。 …とは言え、押されてる事に変わりないわね」

「あっ、未来のレーザーが私の腕と足に当たった!」

「当たった場所のシンフォギアが砕けた」

「神獣鏡のシンフォギア殺しは健在デス!」

「このまま、未来のレーザーを浴びせ続ければ何れ…」

「! 待て、響くんの砕かれたシンフォギアが再生した!?」

「幾ら何でも早すぎだろ!」

「一体これは…死神博士からの通信?」

「…ネフシュタンだぁ!?」

「あの男、立花響のギアにネフシュタンの鎧の再生力を与えた?」

「こんな簡単に完全聖遺物の性能を模範出来るとは…」

「滅茶苦茶ですぅ!!」

 

聖遺物とは、異端技術のブラックアート。

現代の技術では再現不能な失われた過去の技術と言える。

それを、ショッカーは一部であるが、聖遺物の力を再現した。

錬金術や現代技術の分かるエルフナインすら絶叫する程の内容なのだ。

 

「ショッカーの技術はそこまでなのか!?」

 

これには、源十郎すら驚愕する。

ショッカーをただの悪の組織と認識していた風鳴源十郎も、次々とショッカーの技術を聞いていく内、脅威度が段違いに上がっていく。

 

━━━このままゲルショッカーを放置すれば、第二の世界蛇になるかもしれん!

 

「何だ?死神博士が『良い物を見せてやる』ってよ」

「…どうせ碌な物じゃないわ」

「! 響が突然叫び出して黒くなった!?」

「これって…!」

「あの夜と同じじゃねえか!」

「…暴走」

「意図的に暴走させただと!!」

「あっ、別行動していた先輩が来たデス」

「死神博士が通信越しで先輩に話しかけた…」

「…『あの夜の再現』だと」

「やはり意図的に暴走させてるのか!」

 

映像の響がカ・ディンギル跡地での戦いで戦闘員どころか二体の怪人を瞬殺した時の暴走体にされた。

その事を知った響たちは腸が煮えくり返る程の怒りを感じると同時に死神博士の能力に驚愕する。

ブラックアートの聖遺物の能力を再現させ、非道な実験も平然と行うマッドサイエンティスト。

話し合いを望む響すら匙を投げる危険人物と言えた。

 

「暴走した響が拳でイージス艦を沈めた!」

「あんな物受けたら穴が開くってレベルじゃないぞ!」

「…画面越しからでも、とんでもない殺気を感じる」

「ノイズも戦闘員も巻き込んでる!?」

「…もう見境が無い」

「また死神博士からの通信?」

「しつけえな、かまってちゃんかよ!」

「向こうの先輩もしつこいって言ってるデス」

「本人が言うには最後の通信らしいけど…」

「仕掛け? 一体何を…!」

「私の記憶の一部…あの時の…」

「立花が迫害されてた時…」

「外道め」

「どもまでも腐ってやがる!」

 

一部のシンフォギア装者は知らないが、響は過去『ツヴァイウィングの悲劇』を生き残った事で一部の人間からバッシングされていた。

その所為で、父は耐えられずに失踪し響の家族も心の傷を負った。

響としても、当時の事はあまり思い出したくない負の記憶といえる。

そんな記憶だけが蘇った向こうの世界の響の気持ちはどんなものだろうか。

そんな響の記憶を利用する死神博士への怒りを募らせる一同。

 

「また、イージス艦が破壊された」

「目に見る物全てを破壊してる」

「向こうの雪音と小日向が呼びかけてるが…」

「ほぼ意味なしね、向こうの響さんの攻撃を避けるだけで精一杯」

「向こうのクリスちゃんが馬鹿って言ってボーガンを撃ってる」

「更にガトリングにミサイルも出したわ」

「…直撃してるのに怯みもしてない!?」

「頑丈さは私以上だな…」

「そんな事言ってるばあいじゃないよ、向こうのクリスが大型ミサイルも撃ったわ」

「ガトリングも続けて撃ってるけど…駄目だ、立花が咆哮を上げて雪音に飛び掛かろうとしてる!」

「腕を巨大化させて突っ込んできます!」

 

暴走した響へ攻撃し続ける向こうの世界のクリス。

しかし、その殆どの攻撃は暴走した響には効いておらず逆に腕をアームドギアで大型にした響が突っ込んでくる。

これには、画面を見守る響たちも手に汗握り、画面越しで向こうの世界のクリスを応援する。

その時、誰かの声が向こうの世界のクリスの耳に入りクリスは咄嗟に後方に飛ぶと、紫の光線がクリスの居た場所を通り、暴走した響に命中する。

 

「今の光って…」

「…神獣鏡」

「未来さんの神獣鏡のレーザーが当たったデス!」

「これで、向こうの響さん正気に…」

「駄目だ、レーザーを搔き消して脱出した!」

「嘘だろ、おい!」

「レーザーは当たった筈よ!」

 

映像で見ている響たちには、未来の神獣鏡のレーザーが響を飲み込む様子も見ており納得がいかなかった。

まさか、死神博士が何か小細工してるかもと考えると同時に映像の向こうの世界の未来の下に向こうの世界のクリスが合流する。

そして、僅かな会話の間に向こうのクリスは未来にレーザーがちゃんと当たってなかった事を伝え、暴走する響の気を引く。

 

「あれで当たってないだと!?」

「普通のギアの出力じゃ無理なのか?」

「なら、イグナイトやアマルガムを使えば…」

「向こうの響さん達が知らない技術だよ!」

「でも、このままだと響が…」

「………一つだけ手があるが…」

「翼さん?」

 

未来の通常の神獣鏡のレーザーが効かなかった。

ならば、出力を上げる為にイグナイトやアマルガムの話が出るが、錬金術師とも関わりがない向こうの特異災害対策機動部二課がそんな物、知る訳が無い。

その時、翼がある方法を思いつくが響たちにはハッキリと言えないでいる。

何しろ、翼の言う最後の手は響がキーだったからだ。

 

翼が苦虫を嚙み潰したよう表情をしていると画面から「ある歌」が聞こえる。

それも響たちが良く聞き歌う唄だ。

 

「この歌!?」

「絶唱!?」

「この声…未来が絶唱を歌ってる!」

 

絶唱

それは、シンフォギア装者にとってシンフォギアの力を限界以上に出せる力。

同時に自身の身を危険に晒す諸刃の剣。

威力は絶大だが、使った装者の命も危ない歌。

そして、翼が呟いた手がこれだった。

絶唱ならイグナイトやアマルガムが無くても、暴走した響のギアを打ち抜ける。

だが、それは響と共にS2CAを使ったら…だ。響の繋ぐ力を使えば絶唱の負担も低くなりリスクも下がる。

問題は、そのキーパーソンがショッカーに操られ暴走している響だという事だ。

 

その絶唱を、映像に映る小日向未来が歌っているのだ。

 

「未来が一人で絶唱!? 無茶だ!」

「先輩が止めるよう言ってるけど…」

「博士も珍しく血相を変えて止めようとしてるデス」

「…でも、未来は止めないよね」

「うん、もし画面向こうの私が私でも絶唱を歌うよ。 それで響を取り戻せるなら安いもんだよ」

 

響の言葉に何の躊躇いも無く答える未来。

未来が適当に言ってる訳では無い。それだけ、未来にとって響の存在は大事だったのだ。

映像では、絶唱を歌い切った未来が光に包まれた所だ。

 

「未来!」

「光が治まっていく…」

「あの娘は大丈夫なの?」

「……これは!?」

 

正直、響と未来以外、昨日今日いきなりシンフォギアを纏った未来が無事だとは思っていなかった。

無理な絶唱によるギアのバックファイヤー、最悪此方の世界のマリアの妹セレナのように命を落とす覚悟をする。

しかし、映像に映ったのはバイザーも消え色も明るくなった神獣鏡のシンフォギアを纏った未来がいる。

 

「エクスドライブだと!?」

「未来さんは無事デース!!」

「この土壇場でエクスドライブ…」

「…良かった」

「皆、慌て過ぎだよ。 向こうの世界の未来も元気だったんだし」

「そういえば…」

 

未来の無事な姿を見て一安心する一同。

そんな皆に響が「心配し過ぎ」と言い並行世界でも未来の姿を見ているという。

それに反応したのは翼だった。

 

その時、未来のエクスドライブの姿が映っていた映像がまたも切り替わり源十郎とギリザメスを映す。

 

「またかよ」

「いい加減、安定してほしいわね」

「だが、旦那たちの方も気にはなるな」

「さっきより指令の傷が増えてるわね」

「なっ、ギリザメスが一気に決着を付けようと指令に向かって飛び出した!」

「あの位置だと…狙いは心臓!」

「未来の事で焦ったか!」

「師匠が、飛び出したギリザメスの頭を捕らえた!?」

「向こうの指令からの言葉からして待ち受けてたらしいわね」

「オッサンの拳がギリザメスの顔面を殴った!」

「鼻のドリルを一撃で破壊したわ!」

「更に、ふら付いたギリザメスの顔面に回し蹴り」

「海に叩き落して爆発した!」

「凄いな、向こうの俺は」

「怪人と生身で戦える人は違いますね」

 

「あっ、翼さんと戦ってたフクロウが負けた」

「こっちはアッサリだな」

「翼がカタパルトに乗ってフクロウを追っかけたのは印象があるわね」

 

残った二体の怪人も倒された事で、死神博士が連れて来た怪人は全滅した。

その一方、映像はエクスドライブ状態となった未来の方に戻ると歌いながら暴走した響を見ている。

 

「向こうのアタシも言ってるけど良い歌だな」

「心が籠ってるわね」

「暴走してる響が怯んでる?」

「神獣鏡の光に圧倒されてるのかしら」

「未来さんが響さんに向けて神獣鏡のレーザーを撃ちました!」

「脚のジャッキと腰のブースターで縦横無尽に逃げるわね」

「でも、未来さんの極太レーザーが響さんを吞み込んだデス!」

「これで、立花の洗脳も…」

「ウェルから通信? …まだ心臓のガングニールが消えてない!?」

「なら、もう一度撃てば…」

「いや、小日向の体はもう限界だ! 吐血してアームドギアも使えなくなってる!」

「そんな…此処まできて…」

「……響を救えないの」

「まだだよ!」

 

時間切れ。

未来は言うなれば、LiNKERを使った即席のシンフォギア装者に過ぎない。

そのLiNKERも切れ、体には神獣鏡のバックファイヤーでダメージが蓄積されている。

もう一度、神獣鏡の大技である「暁光」を撃つことなど不可能だった。

これには、さしもの未来すら諦めの言葉が出る。

しかし、響だけは諦めていない。

 

「マリアさんたちがこっちと同じように動いてくれていれば…よし!」

 

響がそう言うと同時に、映像の未来も響を抱え空中へと飛び出す。

その先には、丁度エアキャリアから射出された小型ユニットが未来の出したレーザーを屈折させ仮面へと照射する。

未来は響を抱え、その照射する光の束に飛び込んだのだ。

 

「そうか、あれを利用したのね!」

「あれなら、立花の洗脳と心臓も助けられる」

「同時に面倒な事にもなるけどね」

「あっ、響さんと未来さんが海に浮かんでいるデス」

「米軍の脱出艇の破片に乗って、未来さんがそれを支えながら海に入ってる」

「アイツの意識が戻った!?」

「ショッカーの呪縛から逃れたのね」

「…でも、未来さん…目や口から血を流してる…」

「まるで、嘗ての私のようだな」

「翼さん……」

 

絶唱を使った代償。

ギアのバックファイヤーで体はズタボロの筈の未来は向こうの響の意識が再び途切れると共に力も抜け徐々に海の中に沈みかける。

直後に、ゴムボートで助けに来た緒川に二人とも回収され事なきを得た。

こうして、海上での戦いは終わったが

 

「うう…響さんが帰ってきて良かった…」

「…一時はどうなるかと思ったわ」

「殆どが、アタシ等の世界と同じ流れで、アイツがショッカーに拉致されるなんてな」

「でも、フロンティアが浮上しちゃった」

「…それにこの後も、雪音がマリアたちに降伏したように見せかけて潜入してるが、立花が意識を取り戻せるかだな…」

「クリスちゃんは、事前に切歌ちゃんに話を通してるけど大丈夫かな」

「響さん、フラグ的な事を言わないでほしいデース!」

 

「そう言ってる内に今度は、エアキャリアの内部が映ったわ」

「先輩を見て死神博士が怪しんでる?」

「当然、ギアは取られるけど…何とか入り込めたか」

「あれ、ドクターが切ちゃんを医務室に呼んだ?」

「私たちの時はそんな事無かった筈デス」

「嫌な予感がするわね…切歌が医務室に入ったわ」

「…ウェル博士は居ないな…! 戦闘員!」

「囲まれてるぞ!」

「まさか、バレちゃった!?」

「天井から怪人が!」

「あれ、確かプラノドンって奴だぞ!」

「切歌ちゃんが押し倒された!」

「この絵面、完全にアウトだろ!!」

「…やはり裏切りがバレていたのか!」

「あの怪人は暁の始末する為に!?」

「…どうやら違う様よ、死神博士が「直ぐに殺したら面白くない」って言ってるらしい」

「悪党め」

「戦闘員が何か持ってきた!」

「切歌ちゃんの鼓膜に付ける受信機?」

「アイツ等、切歌を操り人形にする気!」

「あの怪人の角が光ったらちびっ子が叫び出したぞ!」

 

響たちの目撃した、切歌がプラノドンに操られる姿を見て驚愕する一同。

無理矢理操るのもそうだが、クリスの企みが筒抜けであることが響たちにとっても問題だった。

このまま、切歌がいいように使われる事を心配するが、次に特異災害対策機動部二課本部の医務室が映る。

 

其処では、丁度意識の戻った響が源十郎と会話し未来の治療してるベッドの前まで移動した所だった。

未来の治療が終わっていたが人工呼吸器が取り付けられ点滴されてる状況だった。

 

「これは…」

「絶唱を使った代償だな」

「まるで、前の翼さんみたい」

「…自分を責めてるな、響のヤツ」

「! 未来が動いた!」

「意識があるの!?」

 

向こうの響が自分の所為と嘆いているとゆっくりとだが向こうの未来の手が響に触れる。

同時に「大丈夫」と声もかけた。

その様子に何人かのシンフォギア装者の眼に涙が溜まる事になる。

 

そうしてる内に、場面は切り替わりマリアやウェル博士に死神博士がフロンティアに上陸し内部を歩く。

多数の戦闘員も居り少なからず重火器を持っている。

 

「とうとう、ショッカーがフロンティアに入って来たな」

「流石に私たちの頃より多いわね」

 

「切ちゃんの様子が明らかにおかしい」

「向こうの私も心配してるわね」

 

「ん? このフードを被ったヤツは誰だ?」

「フードを深く被ってる所為で顔が見えないな」

「体つきからして女だろうが…」

 

「クリスちゃんの扱い、やっぱり悪いね」

「既にバレてるからな…」

 

映像のマリアたちが間もなくフロンティアのジェネレータールームに到着する。

皆の目前に部屋の真ん中にある巨大な球体が聳える。

 

「此処がフロンティアの…」

「私、初めて見た」

 

翼と響がそれぞれ感想を言う。

シンフォギア装者の中で、フロンティアのジェネレータールームを見たのはマリアたちとクリス位だ。

未来も声には出さないが映像のジェネレータールームをマジマジと見ている。

すると、死神博士とウェル博士が真ん中の鎮座して言うる巨大な球体のオブジェに近づいていく。

 

「死神博士とウェル博士が球体に近づいた」

「ウェル博士がケースからネフィリムの心臓を取り出して死神博士に渡した」

「それを、フロンティアのジェネレーターにくっ付け、フロンティアを起動させたか」

「ネフィリムの心臓から血管みたいのが広がってジェネレーターにくっ付いてる!?」

「うわ…」

「相変わらず気持ちの悪いなあ…」

 

「マム以外、フロンティアのブリッジに行くみたいね」

「何でも良いけど、隠しカメラの性能の所為か見え難いな」

「ワガママ言わない」

 

海上での戦いの時より、少し画面が荒い事に文句を言うクリスと窘めるマリア。

恐らくは、死神博士に隠れてウェル博士が持っていたカメラで撮ったのだろうが、暗さも相まって見えずらい。

映像は、死神博士とウェル博士、そしてマリアを乗せたエレベーターの様な物に乗り、フロンティアのブリッジに来ている。

 

「此処か…」

「死神博士が、ウェル博士に何か渡せって言ってる」

「ウェル博士が渡したのは…注射器?」

「あれは…」

「LiNKER…ネフィリムの細胞の混じった…ね」

「死神博士がその注射器を自分の腕に刺した!? あの腕!」

 

注射を打った直後、死神博士の駐車した左腕が肥大化し灰色になった。

その腕は響たちも見覚えがあるネフィリムの腕だった。

しかし、この世界の響たちが見たのはウェル博士の物だったが。

 

「死神博士がネフィリムの…」

「そう言えば、向こうの博士の腕は正常だったな」

「死神博士が変な模様の球体に触ったデス」

「触った直後に周りが光り出した」

「…あれ、死神博士が何か言った?」

「確か…とりの…」

鳥之石楠船神(トリノイワクスフネノカミ)、別名『天鳥船(あめのとりふね)』とも言う」

「日本神話に出てくる神の乗る船ですね」

「神…アヌンナキか!」

「それがフロンティアの本当の名前…」

「何で、死神博士がそれを知ってんだよ!?」

「…死神博士は首領から聞いたそうだけど…」

「ショッカー首領…一体何者なんだ…」

 

今はもう失われたフロンティアの正式名。

それを知っていたショッカー首領が何者で何処でそれを知ったのか興味が出ると共に底知れない不気味な恐ろしさも感じる響たち。

そうしてる内に、話は進んでいく。

 

「人工重力装置GX?」

「聞いた事ない言葉デス」

「それを、フロンティアの底に取りつけて何する気だ?」

「! フロンティアが浮き出した!?」

「月も掴んでないのに!?」

「ショッカーは俺たちの知らない未知の技術を使った様だな」

「ショッカー大要塞フロンティア…」

 

響たちの予想通り、フロンティアを空中要塞として使用するショッカー。

確かに、空の上をフロンティアの様な巨大な建造物が要塞として起動すれば秘密結社であるショッカーが隠れる必要など無いだろうと考える源十郎たち。

 

更には、アメリカやロシア、中国から来た艦艇も合流しフロンティアへ引き上げられる様子も見る。

響たちも当初は、アメリカの介入やフロンティアの強奪にでも来たのかと考えたが、目が虚ろな兵士が戦闘員と共に動いてる事で違う事を察した。

 

「やっぱり、ショッカーはフロンティアを一大拠点にする気か」

「アメリカやロシアの兵士を操ってる?」

「一部正気な者も居るようだが…」

「デンジャーライト? また初めて聞くわね」

「画面の下部分に説明が書いてある。『デンジャーライトは、とある天才物理学科学者が開発してしまった殺人光線。それを手に入れたショッカーは航空機や飛行型ノイズの排除の為利用している』…殺人光線!?」

「何で殺人光線が対空に使えるんだ?」

「そういう風に改造した…から?」

 

ショッカーの謎の思考に戸惑う響たち。

 

その間にも、映像は死神博士の部下がフロンティアにうち上がった特異災害対策機動部二課本部の潜水艦が座礁している。

それを知った死神博士は戦闘員の迎撃部隊を向かわせ、再び視点をフロンティアの操作盤に向ける。

そこで、最後の仕上げに入るからだ。

 

「最後の目的だと?」

「マリアとウェル博士が慌てだしてる」

「…やっぱり月を落とす気だ、コイツ!!」

「今の言葉で二人とも固まってる、知らなかったのか?」

「てっきり、ウェルには話を通してると思ってたけど…」

「これ、完全にウェル博士も騙されてるね」

「死神博士、悪びれもしないなんて…」

「やっぱり、向こうのマリアの操作を受け付けない」

「マリアがドクターにネフィリムの細胞の入った注射器を要求してるデス」

「当然、予備なんてないか マリアがフィーネを騙っていた事がバレてる!」

「クソッ、何から何までショッカーの有利に進んでいやがる」

 

その後、マリアを煽った死神博士は「月の落下により人類が絶滅した後の身の振り方を考えろ」と言い一旦フロンティアのブリッジを後にする。

その場には、泣き出すマリアと何も言えないウェル博士が残った。

 

そして、場面は変わり特異災害対策機動部二課本部の中が映り、今まさにバイクにまたがった翼と源十郎が会話している。

 

「こっちもこっちで動きそうだな」

「翼のあの姿、見るの久しぶりだな」

「どうやら、向こうの私のこっちの世界の私と同じ行動をするようだな」

「警報が、敵はショッカー戦闘員のバイク部隊!」

「ノイズも少なからずいる」

「先輩にバイクで挑む気か」

「本部のハッチが開いて翼さんがとびだした」

「シンフォギアを纏った翼さんに戦闘員のバイク部隊が突っ込んでくる」

「風鳴翼のバイクが変形して歌いながら次々と戦闘員もノイズも倒していく」

 

向こうの翼の活躍で戦闘員のバイク部隊は壊滅した。

これで暫く、本部は大丈夫だろうと判断して向こうの翼はフロンティアの奥へと進む。

時を同じく、響の説得で調にギアが返却されマリアを救いに行く其処には…。

 

「わ、私がバイクに乗ってる!?」

「調の横をバイクで走ってるわね」

「ショッカーのアジトで見つけたバイクね」

「何か、久しぶりに見る感じるな」

 

調が己のシンフォギアのアームドギアで走行する中、その横を翼の予備のヘルメットを被った響がショッカーアジトで手に入れ保管されていたバイクで駆けまわっている。

翼だけでなく響もバイクに乗って走る事に驚く本人と、チラチラと響に視線を向ける事が多くなった翼。

そんな走る二人の方にも戦闘員のバイク部隊が襲い掛かる。

 

「まだ居るのかよ、戦闘員!」

「…ノイズより多くない?」

「それでも二人が薙ぎ払って進んでいくわね」

「…向こうの世界の私って、免許もってるのかな?」

「まるで映画みたいデス!!」

 

響が若干、的外れな事を考えていると、映像は下手なアクション映画以上の派手さを見せつける。

響が戦闘員のバイクから蹴落とし、調のアームドギアの鋸が戦闘員ごとバイクを刻み各所で爆発を起こす。

これには、切歌どころか平行世界のシンフォギア装者すら思わず声を出す。

そして、戦闘員のバイク部隊が全滅したと同時に、映像がマリアたちの方に戻る。

 

「ああ、面白かった」

「ツバサ、まだ映像は終わってないよ!」

「…とは言っても、こっちはまだデカい私がメソメソしてるだけなのよね」

「姉さん、そう言う言い方は…」

「何? 昔の私を罵られてる気分…」

「マリア姉さん、気にしない方がいいよ」

「マリアさんを慰めようとウェル博士が何か考えてるね」

「だが、色々と迷ってるな」

「頼りになるんだか、ならないんだか」

 

まんまと死神博士に騙された事で、マリアは未だに泣いておりウェル博士は逆転の手を考えている。

そんな二人の耳に届いたのはナスターシャ教授の叱り声だった。

 

「マムは何時ものマムらしいわね」

「ちょっと安心」

「でも、やっぱりウェル博士は騙されてたんだ」

「その話、今一信用出来ないけどな」

「ナスターシャ教授が二人に発破をかけてるな」

「結構良い人ね」

 

何とか、ナスターシャ教授の言葉で持ち直したマリアとウェル博士は死神博士が掌握してないシステムがないか調べ始める。

映像では見えないがナスターシャ教授も自身の居る制御室で何かできないか調べている。

 

その後、映像は切り替わり翼が源十郎に調と共に響も出撃した事を聞いた後に複数の戦闘員が自分の前に立ちはだかるが、翼の前に死神博士から送り込まれたクリスが立ちはだかる。

 

それと同時期に調と響の前に現れた者がいる。

 

「…切ちゃん」

「あの時は、切歌ちゃんは自分の意思で戦ったけど…」

「この世界の私は怪人…プラノドンに操られてるデス」

「プラノドンのヤツは暁に二人を殺させる気か」

「相変わらず汚ねえ連中だ」

「でも、響さんも居ればプラノドンとも互角に戦えるね」

「………」

「えっ、調が一人で戦うデス!?」

「確かにマリアたちの方も心配だが、月読だけでショッカーの怪人と操られてる暁が相手では…」

「向こうのおチビに説得されて行っちまったぞ」

 

マリアたちを助ける為、響を先に行かせ調は一人プラノドンと洗脳された切歌と対峙する。

 

一方、翼とクリスの戦闘も激しく、互いに技を出し周りの戦闘員が流れ弾で倒れていく。

そんな二人の戦いを面白く思わなかった死神博士は、クリスの援軍として怪人スノーマンを放つ。

スノーマンの鳴き声に驚く二人、殺気を感じた二人がその場を離れると巨大な大岩が降り地面を抉る。

 

「向こうのアタシと先輩の戦いに怪人を出したか」

「あんな巨大な大岩を投げれるとはな、とんでもない怪力の怪人だ」

「この怪人は一体…」

「ヒマラヤで捕まえた雪男!?」

「ピラザウルスといい、あの世界どんな魔境なんだよ!」

 

死神博士の発言に思わず声を荒げるクリス。

雪男とは俗に言うUMA(未確認生物)だ、ある意味完全聖遺物と別ベクトルで貴重といえる。

それを死神博士が改造したと言うので響たちも唖然としている。

死神博士が繰り出したスノーマンが翼に対し岩を投げつけクリスを援護している。

翼もクリスと戦いつつ反撃を試みるが当然の様に無傷であった。

 

その後も、調と操られた切歌との戦闘を見て心を痛めるマリアやナスターシャ教授のアドバイスなど、バイクに乗った響も翼から借りたヘルメットが砕かれても進むことを辞めずバイクで爆走する。

そして、調とプラノドンの戦いに場が映る。

 

「プラノドンがまたロケット弾を吐いて調を攻撃してるデス」

「向こうの切ちゃんが向こうの私に説得されてるけど、プラノドンの支配力が勝ってる!?」

「ああっ調の脚が!!」

「プラノドンの野郎、明らかに洗脳してるちびっ子を狙って撃ちやがった!」

「調が庇うと見越してた!」

「操られてる暁が死を懇願するとは…」

「切歌がフィーネの器!?」

「マジかよ」

「あ……」

「これは……」

「不味い、今の話を聞いたプラノドンが暁くんの脳髄を取り出す気だ!!」

 

調と切歌のやり取りを聞き、一部のシンフォギア装者切歌に視線を向けるが、切歌と調はバツが悪そうな顔で互いの顔を見合う。

その間も、映像の調はアームドギアで大型ノコギリを利用し宙を飛び片足のハンデを克服しプラノドンに空中戦を挑む。

 

「あっちもこっちも大変だね」

「…他人事みたいに言うな」

「私たちの方も大変だったが、ショッカーが関わり余計面倒な事になってるな」

「世界的犯罪組織が手を出すとこうなるのね、ウェルが味方とはいえ厳しいわね…ん?」

 

響たちが改めて世界征服を目的とするショッカーの存在する世界の厳しさを感じてるとㇷとマリアが何かに反応した。

 

『私はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。月の落下の被害を最小限にする為にフィーネを騙った者だ』

「あれ、これって」

「マリアの演説デス!」

「うわあ…」

「マリアが頭抱えた」

 

嘗て、この世界のマリアも世界を救う為、演説的な事を言ったが某人曰く優しいマリアとって緊急だったからしたものだ。

先の、初めての翼とのデュエットライブの時も決心するのに時間のかかったマリアとしては、この演説も恥ずかしいと言えた。

 

「これがマリアさんの演説か…」

「板場さんたちが見たってのはこれね」

「正直、まじまじと見ないで欲しい…」

 

映像のマリアは、当然この世界のマリアでは無いが過去の映像を見てる気分になり画面をちゃんと見れずに居る。

その間にもマリアの演説は進んでいく。

 

「概ね、あの時聞いた内容と同じだな」

「そうですね、米国と結社が関わてるのもこっちと同じ…もう一つ?」

 

嘗て、マリアの演説を聞いていた源十郎と緒川も自分たちの時と同じで違いはないと考えていた。

しかし、映像のマリアから「もう一つ伝える」と言い、源十郎と緒川が自分たちの記憶にない事だと思った。

しして、マリアの口から語られたのは自分たちを騙した悪の秘密結社ショッカーの存在だった。

 

「マリアがショッカーの存在を暴露したのか」

「そう言えば、そんな風な事を言っていたような…」

「カミキリキッドやドクガンダーの言っていた事はこれね、やっと合点がいったわ」

「それにしても、改めてショッカーの存在を聞くと…」

「現実味がないデスね」

「あっ、コンサート会場での戦いの映像も流されてる」

「マリアもギルガラスの事を話して歌いだした」

 

マリアが歌いだし、人々にショッカーの存在を教えた事で秘密結社だったショッカーは表世界に引きずり出された。

その結果は、マリアはショッカー怪人からのヘイトを一身に受ける事になるが。

マリアの歌が流れ続けるが映像が切り替わる。

 

先ずは、翼とクリスの戦いだった。

 

「変わらずスノーマンの大岩に苦戦してるな」

「今、クリスちゃんを巻き込む勢いで翼さんに大岩を投げた!」

「アタシが生き残ればそれでよし、死んでも先輩を亡き者にすれば死神博士は損しないか!」

「…先輩、めっちゃ起こってるデス」

「ショッカーのやり方に起こってる」

「そんな、死神博士から通信が来たぞ。 …翼を始末する催促か」

「ソロモンの杖を見せびらかす様にしやがって…」

「! 翼さんが天ノ逆鱗で一気に勝負を決めに行った!!」

「りょ、両腕で止めた」

「それどころか、剣先にヒビが入ってるぞ!」

「…やっぱり、イグナイトかアマルガムがないとキツイかしら」

「翼がクリスの名を呼んだ!?」

「クリスちゃんが翼さんの意図に気付いたんだ、スノーマンを剣の下敷きにしてクリスちゃんのミサイルも爆発した」

「だが、その所為で足場が崩壊して二人とも行方不明だぞ」

 

翼とクリスが共倒れしたと思った死神博士は、クリスを罵りつつその場を後にする。

そして、次に調と切歌の戦いが映し出される。

 

「調は、もう地面に落とされてるわね」

「プラノドンの方が空じゃ有利だったか」

「シュルシャガナのアームドギアの高速移動で片足の負傷を補ってるけど…」

「操られた切歌が厄介ね」

「プラノドンが、またロケット弾を撃ちやがった」

「! 不味い、調が足の痛みで回避が遅れた!」

「このままだと、調ちゃんが…」

「! 調からピンク色のバリアが出た?」

「そうか、月読はフィーネの次の器」

「それでバリアが出たのか…」

「あははは…」

「切ちゃん?」

 

勘違いし、自分が次のフィーネだと考えていた事を思い出した切歌から乾いた笑い後を上げ心配そうに切歌の顔を覗き込む調。

当時より、だいぶ時間が過ぎたが未だに羞恥心を感じている切歌だった。

 

映像は続き、バリアを見たプラノドンが両方の翼をバタつかせ強風で調を吹き飛ばし岩に激突させる。

更には、岩に強打した調に切歌に絶唱を使う事を要求する。

 

「コイツ…」

「ショッカーめ、暁に無理矢理絶唱を歌わせる気か!」

「何で、どいつもこいつも絶唱を歌わせようとするんだよ!」

「…どうやらプラノドンは切歌の方をフィーネの転生体と思ってるのね」

「…また、映像が変わった」

 

次の映像は、死神博士はフロンティアの鍾乳洞らしき場所に辿り着いた処からだった。

ゆくゆくは、フロンティアをショッカーの大要塞として運用する以上視察は必要であり、此処もまたブリッジに戻る途中に立ち寄った程度だ。

しかし、その先に死神博士は思いもよらない物を見る。

 

「あっ、クリスちゃんと翼さん」

「…この部分は」

「翼だけ倒れてるわね」

「雪音クリスが「片付けた」って言ってソロモンの杖を要求してるわね」

「! 戦闘員が先輩の周りを囲んだデス」

「ショッカーが約束を守る訳が無い」

「いや、どうやら死神博士にとっては、まだ約束が守られてないようだ」

「ナイフを投げてそれで翼さんの首を要求ですか…」

「武士みてぇな事をしやがって」

「先輩が、渡されたナイフを死神博士に投げたデス!」

「部下の戦闘員が死神博士の盾になった!?」

「同時に倒れていた翼も立ち上がって戦闘員を倒してる」

「死神博士が懐から何か取り出した。 …黒い杖?」

「あれは…」

「黒い杖からノイズが!」

「間違いねえ、あれはショッカーの杖だ!」

「これが!」

 

クリスの言葉に奏以外の平行世界のシンフォギア装者が思わず画面を凝視する。

ソロモンの杖。完全聖遺物の一つでノイズを出現させ使役できる古代の異端技術。

それを、ショッカーが一部の再現に成功させたのを見て汗が滲み出る。

 

「これが、ショッカーの杖…」

「…報告では聞いていたけど」

「映像で見ると禍々しいデス…」

 

映像では、ショッカーの杖から出たショッカーノイズが先にソロモンの杖から出たノイズと結合し怪人の姿になる。

 

「ノイズを怪人に…」

「こうやって戦力を増やすつもりか、アイツ等」

「自己顕示欲の塊のクセに能力は本物だから質が悪い」

「『先史文明期の人間が作れた者を、何故ショッカーが作れないと思う』か、耳が痛いわね」

 

先史文明期の技術を再現させた事で、平行世界のシンフォギア装者たちも危機感を覚える。

何より、思想の危険性や手段を選ばない残虐性も平行世界のシンフォギア装者としては放置するには危険すぎた。

 

そして、映像はブリッジで歌うマリアを映す。

尤も、マリアの歌でさえ月遺跡を動かすほどのフォニックゲインが溜まらずマリアが弱音を吐く。

そんな、マリアに激を飛ばすが自分には無理と言うマリア。

 

「マリアがセレナの事を呼んでる」

「姉さん…」

「マリアの口から諦めの言葉が出たデス」

「…仕方ないだろうな、人類を救う為に今まで動いてきて…この結果では」

「正直、こんな場面は私も御免よ」

「ナスターシャ教授にウェル博士がマリアさんを休ませるよう言ってる」

「…アイツ、本当に英雄狂いか?」

「待て、誰か来たぞ!」

 

自信の歌も何の役にも立たないと絶望するマリア。

それでも尚、唄う様言うナスターシャ教授とマリアが消耗してると休ませようとするウェル博士。

そんなウェル博士の態度に偽物ではと考え始めるクリスとマリアたち。

 

そんな折に、ブリッジのエレベーターが動き誰かが侵入してきた。

エレベーターからは三人の軍服を着た男たちが入ってくる。

 

「何だ、コイツ等…」

「マリアの歌を聞いてやってきた?」

「軍人? 軍服が統一されてないようだけど」

「確か、アメリカ軍…中国軍…ロシア軍の将校の服だったな?」

「ええ、細部は微妙に違いますが…」

「他国の軍人が一体…」

「コイツ等もショッカーに洗脳されてるのか?」

「いや、マリアにストリップを要求している以上、シラフだろう」

「これだから男って奴は…」

「「………」」

「師匠と緒川さんが目を逸らしてる?」

「立花…そう言う事は喋らない方がいいぞ」

「待って、コイツ等の口ぶりから人間じゃない!?」

「ブリッジの中が突然暗くなったデス!」

「明るさが戻ったけど、三人とも怪人の姿になった…」

 

一瞬だけフロンティアのブリッジの中が暗くなり灯りが戻ると将校の制服を着ていた三人の軍人の姿が一瞬にして人外の物…怪人の姿となる。

緑と黒が目立つ虫の様な怪人に口から二本のホースが後頭部に繋がった岩石のような怪人。

それから、

 

「ザンジオー!?」

「響に倒された怪人が、もう復活している!?」

 

ガングニールの暴走した響に倒されたザンジオーまで居る。

映像のマリアもザンジオーが倒された事を指摘するが「改造人間は死なん!」と言い切る。

その後も、ザンジオー以外の怪人も名乗りを上げ元の軍服の持ち主も始末したと言う。

そんな怪人たちの姿を映したまま映像が切り替わった。

 

「アタシ等と死神博士の方に戻ったな…」

「…映画でも意識してるのかしらね」

「ノイズから怪人に変わった奴等がひたすら唸り声を出してるデス」

「まるで知能が無いみたい」

「それでも次々と倒してるわね」

「動きが随分と単調だな、とても人型の動きとは言えん」

「アタシ等が戦った時は、もうちょっと考えて動いてた感じだ。 技も出してたしな」

「死神博士が通信機で喋り始めたわ」

「…! 師匠と緒川さんが暴れてるんだ!」

「あの二人なら、並みの怪人でも手古摺るだろうな」

「あっ、先輩がアーマーパージした」

「男たちは見るんじゃねえ!!」

「…クリスちゃんが言うんだ、それ」

「やっぱり、恥ずかしさはあったんだな」

 

クリスの声に源十郎と緒川は咄嗟に目を瞑り両手で顔を隠す。

指の間から見ようとすらしない姿勢に「これがOTONAか」と思う奏以外の平行世界のシンフォギア装者。

 

「クリス先輩のアーマーパージで殆どの怪人と戦闘員を倒したデス!」

「アーマーパージした際の煙で死神博士が戸惑ってる」

「あ、煙からクリスちゃんが飛び出して死神博士に…」

「もうちょっと、状況を詳しく教えてくれ」

「雪音が死神博士の握っているソロモンの杖を掴みました」

「死神博士がクリスちゃんの事を「破廉恥な小娘」って言ってる」

「結構アッサリ手放した?」

 

幾ら向こうのクリスが引っ張っていたとは言え、ソロモンの杖をアッサリと手放す死神博士の姿に違和感を覚える翼。

映像は、ソロモンの杖を取り戻したクリスにノイズが襲い掛かるが翼が剣で薙ぎ倒しクリスを助けた。

その間に死神博士が逃げたが、追撃はせず響と合流する事を選ぶ翼。

 

そして、映像は調と切歌の方に戻る。

映像が切り替わった事で再び目を開ける源十郎と緒川。

 

「こっちはこっちで切歌の絶唱か」

「かなり憔悴している、プラノドンに痛めつけられたのか?」

「プラノドンも「こんな目にあわなかった」って言ってるから確定だろうな…クソが!」

「向こうの調くんが目覚めたぞ」

「絶唱を歌い切ってイガリマが巨大化した」

「何とか切歌ちゃんの攻撃を避けてるけど…」

「徐々に動きが追い付かなくなってる…」

「! 月読の背中にイガリマの刃が!」

「調っ!!」

「まさか…調ちゃん死んじゃった?」

「んな訳ねえだろ! 向こうじゃ会っちゃいねぇけど…」

「………あっ」

「………」

 

向こうの世界の調の背中にイガリマの刃が突き刺さる映像を見て息を呑む響たち。

誰もが絶句する中、切歌が何かを思い出し調はソっと響たちと視線を逸らす。

 

直後、調が死んだと思ったプラノドンが喜びの声を出すと共に倒れている調と力なく座っている切歌に近づく。

そして、泣いている切歌を捕らえようとした時、声が聞こえた。

 

「え、調ちゃん!」

「生きていたのかよ!?」

「だが、暁のイガリマは確実に月読の背中に致命傷の一撃を与えていたぞ!」

「そんな事、どうでもいいわ!二人が無事なら!」

「アハハ…」

「…ノーコメント」

 

調が生きている事を知り沸き立つ響たち。

そんな中、乾いた笑いと若干顔を赤くしコメントを拒否する切歌と調。

 

映像には、調が死んだと油断したプラノドンを不意打ちする調。

直ぐに態勢を立て直したプラノドンが再び切歌を操ろうとするが今度の切歌はうんともすんとも言わない。

焦るプラノドンの眼に地面に落ちてる自分の角が映る。

 

「今の調ちゃんの攻撃、プラノドンの角を狙ったの!?」

「しめた、これでもうプラノドンがちびっ子を操る事は出来ねえ!」

「画面の切歌もやっと解放されたって言ってるわ!」

「プラノドンの逆切れしているが、二人の怒声に黙ったな」

「二人の気迫に押されたんだろ、情けねえ」

「あっ、プラノドンが空を飛ぼうとしたけど切ちゃんの鎖に縛られた」

「そのまま、イガリマの断頭台で決まりデス!」

「千切れたプラノドンの上半身に調のアームドギアの攻撃がいったわね」

「よっぽど腹が立ったのね」

 

調と切歌の二人がプラノドンの撃破成功に歓声を上げる響たち。

響に至っては、座っていた調と切歌に抱き着く程だった。

源十郎と緒川も互いに顔を合わせホッと一息つく。

 

そんな響たちを他所に映像はフロンティアのブリッジに戻り、丁度死神博士も戻って来た。

映像では、勝手に管轄されていた場所を離れた怪人を叱る死神博士だが、怪人が「歌」と言うと視線をマリアたちに向ける。

 

「死神博士がマリアたちを凝視してるな…そのまま操作盤に近づいてる」

「! マムが死神博士に呼びかけた?」

「わざわざ死神博士にフォニックゲインを伝えるなんて…」

「案の定、月が落ちのを止める気はないか」

「マムは当然、ショッカーに忠誠なんて誓わないデス」

「! マムの居る遺跡を宇宙に発射した!」

「ショッカーに従わないのなら始末するか! こうも躊躇いも無いとは…」

「ウェル博士英雄の事をうんうん言ってるけど、ショッカーはその英雄すら必要としてない」

「マリアが怒りの声を上げてるな」

「そんなマリアの様子に死神博士がショッカーへの忠誠心は無いと判断したか」

「ウェルが慌ててるわね」

「うわっ! フロンティアのブリッジにバイクが突っ込んで怪人が一体巻き込まれた!」

「響だ!」

 

ブリッジ内の空気が一触即発となった時、一台のバイクが中に侵入しバイクに乗っていた人物が飛び降り死神博士の前に立つ。

その人物こそ、外でバイクを爆走させていた響だった。

いきなり現れた響にマリアが「融合症例」と言うが即座に自分は立花響だと言い壊れたヘルメットを投げ捨てる。

 

「響さん、カッコいいデス!」

「えへへへ…」

「お前じゃなくて向こうのな」

「突然現れた響くんに涼しい顔をしているな、死神博士」

「あまつさえ、「ショッカーに戻りたくなったか」ですか、さすが大幹部ですね」

「マリアがマムの事で滅茶苦茶怒ってる」

「そんな、マリアに死神博士は随分と酷な事を…」

「明らかに挑発だろ」

「マリアさんがガングニールの槍で突撃した!」

「あの岩石っぽい怪人が死神博士の盾になって槍が弾かれた!?」

「更に拳を喰らって吹き飛んだマリアの口から血が!」

「赤い球まで吐いたわ」

「なんかめっちゃ暑そうなんだけど…マグマ!」

「マグマの改造人間て、もう生き物でもなんでもねえだろ!」

「シンフォギアって溶岩に耐性あるの?」

「…理論上は、中身の保証は出来ません」

 

響の質問に冷静に答えるエルフナイン。

シンフォギアは周りが火の海になろうがある程度は活動できる。

だが、シンフォギアが無事でも中の肉体が無事だとは言えない。

シンフォギアにあるバリアフィールドもノイズの炭化は防げるが熱を全て防げる訳では無い。

何より、溶岩は熱に咥えて火には無い粘着性がある。

シンフォギアやインナーに溶岩が付けば中の肉体が無事だとは到底言えない。

 

響たちも自身に溶岩が付着した事を想像し一瞬震える。

 

「映像の博士もマリアに注意するよう言ってるデス」

「でも、マムが死神博士も宇宙に飛ばされた所為で自棄に…」

「そこで、向こうの立花響が元気づけるのよね」

 

マリアがちょっと懐かしそうに言う。

映像でも、マリアの肩に触れ宥める響の姿が映る。

 

「マリアの槍に立花が聖詠を歌ったか」

「マリアのガングニールを立花が纏った時だな」

「これには死神博士も驚いてるわ」

「それどころか、死神博士がショッカーに戻れって言いだした。 それも幹部待遇みたい」

「まあ、向こうのアイツは当然断るわな」

「死神博士にとっても人類はムシケラ扱いか」

「!?」

「死神博士め、ツヴァイウィングの事件の事を語るか!」

 

死神博士が口にするツヴァイウィングの悲劇の話に響や翼、源十郎たちの顔色が強張る。

翼としてはこの世界の天羽奏を失い、響は一家諸共迫害され、源十郎はコンサート会場地下で実験し多数の部下を失い大けがを負った。

それぞれ、あまり思い出したくない過去ゆえ気軽に言いたくもない。

その空気を察してか、奏以外の平行世界のシンフォギア装者は質問を控えた。

 

尚、映像にはそんな人間が居ても響は「信じる」と言い切り、更に「人は言葉よりも深く繋がれる」と言う。

問答に飽きた死神博士は新たに怪人を呼び寄せ響を捕らえようと画策する。

 

「トドギラー…」

「寒い息を吐く奴デス」

「響さんを再び凍らせる気!?」

「…上手いこと避けた」

「ザンジオーが反対側で火炎を吐いた?」

「挟み撃ちにする気か!」

「でも、響は二体相手に互角以上に戦ってる」

「! 不味い、マグマの怪人がマリアを!」

 

映像には、マリアを背後から襲うとするゴースターの姿を見た向こうの響。

咄嗟にマリアの後ろに蹴りを放ちゴースターの拳と相殺する。

更に響はもう一本の脚でゴースターの顔面を蹴り、やっとゴースターはやっと怯んだ。

 

「何とかマリアを救えたか」

「死神博士め、怪人たちにマリアを狙わせやがった!」

「卑怯デス!」

「死神博士は、立花の弱点を熟知している」

 

立花響は、人助けが趣味な部分がある。

困っている人や泣いている子を放っておけない性格で、親友の未来からも「度が過ぎる」と言われるほどだ。

それは、ショッカーに拉致されてからも変わる事は無い。

 

そんな響が、マリアを見捨てるという選択など存在しない。

 

「マリアを守りながら三体の怪人を相手にするなんて無茶だ!」

「立花が避ければマリアに怪人の攻撃が当たるように配置してある」

「悪辣過ぎだろ!」

「このままでは嬲り殺しだ」

「! 師匠がブリッジに到着した!」

「でも、響のバイクに轢かれた怪人も出てきた」

 

死神博士の呼び声に響のバイクにぶち当てられたハエ男が復活し、足場の悪い通路で源十郎たちの相手をする。

その間に、死神博士はネフィリムと一体になった腕を使い床に穴をあけ其処から移動する。

司令塔であった死神博士の離脱により、一瞬だが怪人たちの動きが散漫となり響はこれをチャンスと思い先ずはザンジオーの腕を取りブリッジの外に放り投げる。

 

「怪人たちを次々と外に投げてるです」

「そうか、マリアから切り離せば立花も思いっきり戦えるか」

「よっしゃ、そのまま全員放り投げろ!!」

「怪人全てを外に放り投げて、立花響もそれを追うのね」

「オッサンと戦ってる怪人も何とか倒したな」

 

ブリッジでは、マリアと少し会話した響が放り投げた怪人を追い、源十郎と緒川も協力しハエ男を撃破した。

しかし、ホッとする間もなくフロンティア全体が揺れ出し本部から、あおいの緊急報告が入る。

 

「向こうのフロンティアも上昇してるんだね」

「結局、トチ狂った奴の思考は似てるって事だろ」

「ウェル博士が指令達に協力を申し出たぞ」

「…信じられんな」

「きっと、ウェル博士も正義に目覚めたんですよ」

「その割には足元が震えてるデス」

「まあ、ウェル博士が協力すれば通路も知ってそうだし最短距離で…追いつく…」

「床を殴って穴をあけた…」

「ウェル博士を担いで行っちゃったわね」

「滅茶苦茶抵抗してたね、ウェル博士」

「…俺の時は緊急だったからなんだが」

 

源十郎と緒川、ウェル博士の珍道中が始まる中、映像は外に飛び出た響を映す。

外に投げ飛ばした怪人を探していた響だが、途中で翼とクリスを見つけ合流する。

 

「向こうの私が翼さんとクリスちゃんと合流した」

「これで、あの怪人たちとも対等に戦えそうだな」

「! 響さんが翼さんに叩かれたデス!」

「ええ、私の時は無かったのに!?」

「…まあ、向こうの立花はやり過ぎた部分もあるからな…」

「直前までショッカーに拉致され脳改造されて操られてたんだ。アタシ等の時以上に心配だったんだろう」

「そんな~…」

「! 赤い火球が放たれた!」

「マグマの塊か」

「怪人か!」

 

源十郎の声と共に映像の響も「ゴースター」と言い、目の前の丘からゴースターとザンジオー、トドギラーが姿を現す。

翼もクリスも直ぐに臨戦態勢をとるが初めて見るゴースターと倒された筈のザンジオーがもう復活した事に内心驚く。

その時、翼たちに死神博士の強制通信が入る。

 

「ムシケラの次はドブネズミ扱いかよ」

「だけど、数はイーブンデス」

「待って、切ちゃん。何か聞こえる」

「……どっかで聞いた事あるな」

「! 何時の間にか翼たちの周りに怪人が」

「…カメストーンにギルガラスって倒した怪人たちが!」

「コイツ等も、再生怪人か!」

「…でも、とんでもない数デスよ!」

「敢えて言うなら、再生怪人軍団」

「アイツが前に最後のアジトで警戒していたのはコイツ等か」

 

クリスは、以前の世界で映像に映る響が何かに警戒していた事を思い出し、映像の再生怪人軍団を見てやっと納得した。

思えば、カ・ディンギルの時も倒した怪人が再生され再び並行世界の自分たちに戦いを挑んだのだ。

警戒するのは当たり前だ。

 

映像では、響たちと二三離した後、ゴースターの掛け声により一斉に再生怪人軍団が響たちへと殺到する。

響たちと怪人軍団の激戦が始まった。

 

一方、フロンティアのブリッジに残っていたマリアは落ち込でいたが、化けて出たのか幻かセレナの幻影がマリアに激を飛ばし、幼いころに聞いていた「リンゴ」の歌を口にする。

そして、それが世界中の人間に共鳴し、ナスターシャ教授が急ぎマリアに通信。

持ち直したマリアが、「世界最高のステージにする」と意気込む。

 

「…この時のマリアって躁鬱激しくねえ?」

「やっぱり、慣れない事はしない方が良いデス」

「切歌、余計な事言わない」

 

クリスと切歌とマリアの漫才が終了すると共にブリッジからの映像は終わった。

そして、映像は戻る。

 

「翼さんの剣が怪人を切り裂きましたデス!」

「先輩も翼さんの背中合わせで死角をカバーしてる」

「響も怪人を次々と倒しているよ!」

「トカゲロンが岩を必殺シュートで打ち出した!」

「その岩を砕いてトカゲロンを一撃で倒したぞ!」

 

ノイズとは別の怪人軍団と戦う向こうの世界の響たちに、響たちも応援しつつ鑑賞し続ける。

翼の剣さばきや響の格闘戦にクリスの援護に響たちも思わず唸る。

 

「向こうの私も、ノイズ戦より対人に近い剣さばきだな」

「今の動き良いね、私も参考にしようかな」

「向こうの翼さんが蜂女と剣で戦ってる!」

「蜂女は蜂女で翼に恨み骨髄だな」

「そりゃ、二度も負けてるからね。リベンジしたいんでしょ」

「かなり激しい鍔迫り合いね」

「不味い、先輩の剣が弾き飛ばされた!」

「剣を失った翼さんに蜂女が一気に剣を突き刺そうとした!」

「…逆立ちして回避なんてやるわね、翼」

「そのまま、逆立ちして回転して脚のブレードで蜂女を倒したな」

「でも、蜂女の剣で翼の太腿から血が出てるわね」

「…あの、一瞬で向こうの俺が逆立ちした瞬間、剣の先を微妙に変えた所為だな。 あの蜂女、前の時より強かったぞ」

 

アナザー翼が蜂女にそんな感想を語った。

彼女からしても、公園やカ・ディンギルで戦った蜂女より幾分か力が上がってるのに気が付く。

 

何はともあれ、蜂女を倒した翼だが蜂女との戦いで背後を守っていたクリスと距離を離され、チャンスとばかりに蜘蛛男とサソリ男が翼を襲撃しようとする。

 

「向こうの先輩が向こうのアタシと離れちまった隙をつかれた!」

「翼なら二体の再生怪人ぐらい倒せるわ! …態勢が崩れた?」

「蜂女にやられた太腿の痛みの所為だな、あの様子では痛みに気付くまで傷の事も気付かなかったんだろう」

「防人として、まだ未熟か」

「そんなこと言ってる場合じゃ…このままだと翼さんが」

「…小型ミサイルが翼さんに襲い掛かった怪人当たって爆発した!」

「先輩のミサイルデス!」

「クリスちゃん、間に合った~」

「多数の相手には互いに死角をカバーしつつ敵を減らす。 戦いの基本もちゃんとしてるな」

「あれ、地面が少し動いた? …!」

 

並行世界の翼とクリスが合流した様子に一安心していた響たちだが、響たちの一人が映像に映る地面の岩石部分が動いたように見えた。

次の瞬間、岩に扮していたゴーストが翼とクリスの体を抱え立ち上がった。

 

「ゴースター」

「岩に化けてやがった!?」

「蜂女は誘導していただと!?」

「二人が囚われた!」

「向こうの私も翼さんとクリスちゃんに気付いたけど…」

「助けに行こうとして、蔦と鎖鎌で動きを封じられたわね」

「ノイズと何もかも違いやがる」

「向こうのアタシと先輩が抵抗してるのにビクともしねえ」

「雪音がゼロ距離で撃っても傷一つつかないか」

「5000度の高熱に耐える体は伊達じゃないってこと?」

「このままだと二人の背骨が砕かれるです!」

「待て、死神博士から「待った」という通信が入った」

「…! 背骨を折るじゃなくて「焼き殺せ」だと!?」

「映像で見てるだけでも、ゴースターの周りの温度が上がってるのが分かる」

 

映像に映るゴースターの周囲の空気が歪んでいく様子にゴースター自身の温度が高熱になってる事に気付く一同。

翼もクリスも抵抗を続けるが、殴ろうが切ろうがゴースターの体にはビクともしない。

しまいには、嘗てフィーネがやった怪人の眼を攻撃してみたが、それも意味がない。

 

「目に攻撃すら効かないのか!?」

「どんだけ固いんだ、コイツ!」

「翼もクリスもドンドン抵抗が弱くなっていく」

「シンフォギアのバリアフィールドも効かないなんてッ!」

「あっ、向こうの私がドクダリアンの蔦を引っ張ってかまきり男にぶつけた!」

「二体の怪人を倒して解放された! これなら…」

「立花の足元が凍った!?」

「くっ、トドギラーの冷凍シュートか!」

「ギアの断熱フィードも役に立たないのかよ!」

「それどころか、シンフォギアごと立花響が氷漬けにされてるわ」

「何が何でも、立花を連れて行く気か!」

 

翼とクリスを始末し氷漬けにした響を捕獲するのが死神博士の目的だと判断した翼。

映像には、あれだけ抵抗していた翼とクリスもグッタリし大量に流れていた汗すら消えてしまう。

そんな二人を見て「止めて」としか言えない響。

当然、響が必死に叫んだところで、怪人たちが止める訳もない。

 

「二人はかなり危険な状態のようです!」

「翼さん!クリスちゃん!」

「落ち着け、立花」

「援軍が来たぜ」

「向こうの切ちゃんがゴースターに切り付けた!」

「平行世界の私、よくやったデス!」

「だが、暁のイガリマでも傷がつかないだと!?」

「だけど、マグマ野郎の体勢が崩れて先輩とアタシを手放したぞ」

「響の方も、調ちゃんの鋸で氷漬けにされた体が介抱した!」

「一気に逆転だ!」

 

響や翼たちが介抱され調と切歌が援軍としてきた事に大いに盛り上がる響たち。

映像では、再度響に冷凍シュートを撃ち込もうとするトドギラーを返り討ちにする響が映る。

更に、攻撃目標を切歌に切り替えたゴースター。その隙に、マリアがゴースターに捕らわれていた翼とクリスに水の入ったペットボトルを提供する。

 

しかし、そんな三人に迫る影。

翼とクリスがシンフォギアを纏ってないマリアに逃げるよう言うが、マリアは聞かない。

これには、死神博士も通信で煽るがマリアの「シンフォギアは、ある」発言に絶句する。

 

「マリアのアガートラムデス!」

「ガングニールも良いけど、アガートラムもマリアに似合ってる」

「アルマジロングの弾丸スクリューボールを鞭で弾いた」

「マリアがガングニールじゃないシンフォギアを見て怪人たちが戸惑ってる!」

「そのまま、マリアさんが短剣を鞭にして怪人たちを薙ぎ払ってる!」

 

「暁を追っていたゴースターも立花が相手をしている!」

「向こうの切ちゃん、危なかったよ」

「響の渾身の一撃でもゴースターには効いてない!?」

「なら、利くようにすればいいだけだよ」

「アイツ、腕のジョッキを目一杯引っ張た?」

「あれで殴れば…先に、ゴースターが響に火炎弾を撃った!」

「あの馬鹿、避けもしないで突っ込んだぞ!」

「向こうの立花は、こっちの立花より無茶をする!」

「燃えながらゴースターを殴りぬいた!?」

「ゴースターは倒したけど、本当に無茶をする」

「……私でも、これはちょっと無理かな…」

「当たり前だ、馬鹿!」

「絶対にやるな、立花。いいか、フリじゃないから!」

「翼さん、私を何だと思ってるの?」

 

映像の、向こうの世界の響の行動に若干引いている一同。

翼に至っては、響に絶対やるなと言い響も「あっ、はい」という反応をしつつ映像を見る。

映像では、ゴースターを倒した響は次にセミミンガとカメストーンを相手にする。

 

一方、調と切歌もムカデラスやサボテグロンといった怪人が立ちはだかる。

響たちに比べ、調と切歌の方が弱いと言い嘲笑う。

しかし、次の瞬間には二人が手を繋ぎ踊る様に動くと二体の体はバラバラとなり爆発四散する。

 

「あの怪人たち、油断し過ぎね」

 

マリアがそう呟いた。

 

 

「怪人たちも順調に倒してるな」

「響がセミの怪人とカメの怪人を撃破した!」

「マリアもサイギャングとアルマジロングを倒した!」

「残りは、ザンジオー一体ね …?」

「マリアさんが待ったをかけた?」

「ザンジオーに聞きたいことが、あるみたいデス」

「6年前のFISの施設の襲撃!!」

 

嘗て、マリアが所属していたFISの施設で事故が起き、その事故でマリアは妹であるセレナを失った。

それは、向こうの世界でも同じだが違う点があった。

ショッカーがFISの施設を襲撃し、丁度それで実験していたネフィリムが暴走したのだ。

 

幸いと言って良いのか判断に困るがセレナの絶唱で暴走したネフィリムと襲撃していたショッカーの怪人を撃破する事に成功したが、その所為でマリアはセレナを失った。

その襲撃した怪人がザンジオーだったのだ。

 

「私の時は、普通に実験中の事故だったけど…」

「ショッカーがいる弊害か?」

「でも、何でショッカーがFISを襲撃したんだろ?」

「おおかた、聖遺物を奪おうとしたんだろ」

「…いや、どうやらレセプターチルドレンも目的だったようだ」

「レセプターチルドレン…フィーネか」

 

ショッカーの目的が知れた事で少し納得するマリア。

映像では、マリアに罵詈雑言を飛ばすザンジオーに剣で切り捨てた。

これで死神博士が寄越した再生怪人軍団は全滅し響たちが勝った。

 

それを見届けホッとする一同。

画面には、辺りを見回しショッカーの増援が無い事を確認した後、死神博士を追う源十郎たちと通信し翼たちも死神博士の追跡に参加。

当然、マリアたちも同行する事になる。

しかし

 

「死神博士からの通信!」

「また、墓場デスか」

「この流れって…」

「巨大ネフィリムだ!?」

「ご丁寧に、腰にはデカいショッカーベルトも付けてやがる!?」

「…何処までも自己顕示欲が高い!」

「だが、攻撃方法はアタシ等の時と変わってねえ」

「とはいえ、強敵なのは変わりない」

「多少のダメージも直ぐに回復するわ」

「此処で、マリアさんの「歌がある」だね」

「映像の私たちもマリアに集まってるな」

 

翼の言う通り、映像に映る響たちはマリアの下へ集い、好機と見た死神博士が巨大ネフィリムに巨大な火炎を吐き出させ響たちを葬ろうとした。

しかし、マリアは一旦シンフォギアを解除し再び聖詠を歌う事により、シンフォギアの装着時のエネルギーで相殺し無事であった。

そして、六人で歌い合う。

 

「この歌、良いね」

「六人で初めて歌った曲デス」

「集まったフォニックゲインが立花に集まり、それを使ってネフィリムの火炎を殴り消す」

「アタシ等の時と大して変わんねえな」

「70億の絶唱だからね」

 

未来がそう言い切ると共に、映像の巨大ネフィリムが響たちに倒される。

それは、自分たちの世界でも変わらない出来事だった。

 

巨大ネフィリムを倒した事で映像は、死神博士の方を映す。

死神博士は、フロンティアの動力部、ネフィリムの心臓がある動力部付近で指揮をしていた。

 

「死神博士、滅茶苦茶怒ってる…」

「そりゃ、あれだけ自信満々だった怪人軍団もネフィリムも倒されたんだ」

「ざまぁみろデス」

「月の方もマムのお蔭で台無しになったようね」

「死神博士も追い詰められてるわね」

「通信機で誰かと話してるわ」

「師匠たちが到着した!」

 

響の言う通り、死神博士居る動力部に源十郎と緒川、ウェル博士が到着する。

戦闘員を薙ぎ倒し、死神博士に迫るが更なる戦闘員を出し源十郎たちを足止めする。

その間に、死神博士が操作盤に触れようとし緒川が拳銃で死神博士の影を撃つ。

 

「緒川さんの影縫いだ!」

「これで死神博士も動けない…!」

「既に対策してるだと!?」

「影縫いが無効なんて…」

「? 死神博士の腕から何か落ちた?」

「死神博士の左腕が炭化してる!?」

「ウェル博士、したり顔で何か言ってる」

「え、博士がやったんですか!?」

 

死神博士の腕の炭化がウェル博士が仕掛けた事。

この事実に響たちも驚き、アナザー調は若干ウェルの事を見直した。

 

「生物に自殺する細胞」

「…アポトーシス」

「向こうのオッサンが話を止めたぞ…」

「SFや科学系の映画好きな指令なら知ってたかも…」

「…今度、レンタルしてくる」

「死神博士が話題を戻したぞ」

「要は、あの時打った注射器の中にネフィリムの細胞と一緒にアポトーシスも仕掛けていた。と」

「完全聖遺物に細工って、本当に無茶苦茶です!!」

「あの言い方からして、マムも協力していた様ね」

「大学? ウェル博士、大学で何かあったのかな?」

「死神博士のヤツ、腕の炭化が広がってるのに随分と余裕だな」

「大幹部の意地って奴かしら」

 

クリスが腕の炭化が進行してるにも関わらず平然とウェル博士と会話してる死神博士を不気味に思う。

直後、ウェル博士と喋っていた死神博士は、響たちの予想外な行動にでる。

 

「死神博士が、炭化してない右腕で操作盤を弄ってる!?」

「ネフィリムの力が無くても動かせるのか!?」

「ある意味、本当に天才ってヤツか!」

「まさか、俺たちの時の様にネフィリムの心臓を切り離したのか!」

「…いえ、死神博士の言葉が本当ならフロンティアのジェネレーターを食い尽くすだけのようです」

「っと言うか…あの爺、自分の左腕を切り落とさせたぞ!」

「そう言えば、もう一人居たんだ!」

 

自信の左腕を切り落させるよう命令した死神博士の姿に何度目かの冷や汗を流す響たち。

そして、自分自身で応急処置を済ませた死神博士は改めて源十郎たちに視線を向ける。

 

「アッサリ自分で応急処置したね」

「…片腕だけなのになんて威圧感だ、映像越しでも感じるぞ」

「何か、ウェル博士が一兆度って言ってるんだけど…」

「あの時も自棄になったウェル博士がそう言ってましたね」

「あの野郎…」

「あっ、師匠が操作盤を壊してウェル博士が本気でキレてる」

「向こうのウェル博士が指令に辛辣なのはこれが原因?」

「…まあ、いきなり壊したら切れるわね」

「俺の時は緊急事態だったんだが」

「…え、私マムに脳筋だって思われてたの?」

「マリア、しっかりして」

「平行世界の話デス!」

 

映像のウェル博士から、信じられない情報を聞いたマリアは落ち込み調と切歌が慰める。

その間にも、フロンティアのジェネレーターを食い尽くしたネフィリムの心臓が死神博士の手に落ちる。

 

「なんか、さっきより禍々しく光ってない」

「それだけエネルギーは満ちてるんだろう」

「死神博士は、先ず地上にいる平行世界の私たちを始末する気か」

「師匠たちも簡単に行かせないって言ってるね…一号?」

「あのローブを着た奴だ!」

 

死神博士の左腕を切り落としたローブを着た人物。

その人物が源十郎たちの相手をしてる間に、その場をエレベーターの様にした死神博士が地上へと昇る。

戦いつつも、翼たちに通信を送る源十郎は死神博士が来る事を伝えた。

 

「向こうの私たちの前に現れるなんて…」

「もしかして、トチ狂ったウェル博士より強敵デスか?」

「偉大な目的って自分で言うのか?」

「死神博士が用意した相応しい者?」

「あの下のヤツと同じ姿をした奴が六人」

「新しい怪人でも用意したのか?…!?」

「…此処でか」

「改めて見るとショックね」

「六人の響!?」

 

死神博士が用意した六人が一斉にローブを脱ぎ捨てた先に居たのは自分たちもよく知る少女の顔。

立花響と同じ姿の少女がガングニールのシンフォギアを纏った姿だった。

 

「SH計画…」

「…これが、ショッカー響」

 

ショッカー響。

嘗て、響も一度戦った事のある偽物。

平行世界の立花響を拉致し、手に入れた響の細胞からクローン人間を作り出すショッカーの悪魔の戦士。

 

一応、知っており戦った事もある響としても目の前の映像にはショックを隠し切れない。

更に、ジェネレータールームで戦う源十郎たちの相手もショッカー響だった。

 

「七人の立花だと…」

「こうして見ると不気味だな、同じ顔だし」

「クリスちゃん、酷い」

「だけど、強さは本物ね」

「エクスドライブが押されてるデス!」

「戦い辛いのもあるだろうが…精神攻撃までするか」

「完全にアタシ等を標的にしてるな!」

 

映像の翼たちがショッカー響に押されている。

今の翼たちは70億の絶唱を受け、全員がエクスドライブだ。本来ならショッカー響程度の相手に苦戦しない。

しかし、死神博士は響たちの甘さを突き力の差をひっくり返した。

それは、映像で見る響たちも感じ取り死神博士の手腕に身震いする。

 

更には、

 

「何だ、上から何か降って来た!?」

「隕石!? 空から隕石の大群が!」

「向こうの私たちにだけ降り注いでるデス!」

「平行世界の隕石ってこれか!」

「…! 響が偽物を殴り飛ばした!」

「更に響さんの言葉でマリアたちの動きも戻った!」

「死神博士がショッカー響たちに「SHOCKER」を使えって言ってる」

「あのLiNKER以上の危険物…」

「アイツ等、躊躇いもなく使いやがった」

 

一切の躊躇いも無く、LiNKER以上の危険性の高いSHOCKERを使うショッカー響たち。

瞬間、ショッカー響たちのシンフォギア及び、身体すら黒くなり目が赤く光る。

一見、暴走のように見えるが死神博士が否定する。

 

その一方、ジェネレータールームでショッカー響と戦う源十郎も映る。

響たちとは違い、こっちは完全に源十郎が押していた。

 

「やっぱ、師匠強いね」

「流石ねえ…」

「本当に生身か疑うな」

「画面の指令も、自分は人間だと言ってるデス」

「最後は指令の拳で倒したか」

「でも、爆発しねえな」

「恐らく、指令はあのショッカー響を保護しようとしてるんじゃ?」

「「「「えっ」」」」

「俺ならやりかねんな…」

「あっ、師匠が近づいて会話してる」

「もしかして、オッサンが殴った事で正気に戻ったとか?」

「ウェル博士が何か叫んでる。…!」

「思考が重犯罪者!?」

「最初から響の思考じゃないって!」

「ショッカー響が、爆発してオッサンを巻き込んだ!!」

 

一瞬、源十郎がショッカー響を倒し保護しようとしていた事を見守っていた響たち。

しかし、ウェル博士が発する言葉と映像で言葉を失う。

そして何より、ショッカー響が何の躊躇いも無く自爆した事も響たちにはショックだった。

 

映像には、爆発の煙が治まり緒川が血相を変えて倒れている源十郎に近づく。

 

「緒川さんが、あそこまで慌てる姿は初めて見る」

「師匠の片腕が亡くなってる!」

「あの爆発で吹き飛んだの!」

「オッサンが、片腕を失ったのはコレの所為かよ!」

「ウェルが緒川さんを落ち着かせて処置に入った!」

 

ショッカー響の捨て身の自爆により右腕を失い、意識も無い源十郎。

そんな源十郎の姿に緒川が取り乱すが、ウェル博士が何とか落ち着かせて源十郎の応急処置を行う。

 

源十郎たちの映像は其処で消え、場面は地上のショッカー響たちと響たちの戦闘を映す。

 

「師匠…」

「おいおい、平行世界のオッサンの元気な姿は見てるだろ。 普通に生きてるって」

「…うん」

 

「…こっちはこっちで、完全に向こうの私たちが押してるな」

「次々と倒して、最後の一人も倒したら皆爆発した」

「……見ていて気分が悪いデス」

「見てるだけでも精神にくるな」

「だけど、これで残りは死神博士ただ一人だ」

「死神博士が笑いながら黒いマントを外した?」

「響たちの前で脱いだマントをはためかして何を…!」

「死神博士が白い怪人になった!?」

「ゾル大佐、地獄大使に続いて死神博士も怪人だったか!」

「イカの怪人、イカデビルか」

「…変身したら、口調が違うわね」

 

死神博士も変身し怪人の姿になったことで響たちもざわつく。

今までも、大幹部だったゾル大佐も地獄大使も怪人だったとはいえ、改造人間を作っていた本人も怪人だったのだ。

 

「死神博士が怪人だからって!」

「数は六対一で向こうの私たちの方が有利だ」

「オマケに左腕を失ってるデス」

「…! イカデビルがネフィリムの心臓を取り出した!」

「フロンティアのジェネレーターを取り込んだネフィリムの心臓のエネルギーは地球すら危ないです!」

「あんな物をどうするつもりだ!」

「イカデビルがネフィリムの心臓を自身のベルトにくっ付けた! ネフィリムの心臓から血管みたいなのがイカデビルの体に広がってる!?」

「うわっ、キモ!」

「イカデビルの体が黒く変色して大きくなってる…」

「死神博士がネフィリムの心臓の力を取り込んだのか!?」

「現代科学と異端技術の合体!?」

「聖遺物合体怪人なんて、本当に無茶苦茶です!」

 

イカデビルとなった死神博士は自身の改造した体とネフィリムの心臓を融合させ、ネフィリムの力を取り込み体もさっきのネフィリム以上に巨大化させた。

その光景を見て、急いで響たちが攻撃するが先程の巨大ネフィリム以上に効果があるようには見えない。

逆に、火球と触手で返り討ちにされ響たちは体力を消耗する。

 

「あの時のネフィリムより小柄だけど…」

「手強さは段違いだな」

「こんなのどうやって倒せば…ウェルからの通信?」

「戦ってるマリアに通信って」

「……! 流れ星作戦!?」

「隕石誘導装置を使って地上の生命を根絶やしにする!?」

「あの時、街がボロボロになった隕石が…」

「…マジかよ」

 

向こうの世界が隕石が降り注いだのは知っていたが、それが死神博士との戦いだとは予想していなかった響たちは愚か平行世界のシンフォギア装者も絶句する。

何より「ルナ・アタック」があった以上、月の周りにある欠片を隕石に出来るショッカーの用意周到さにも響たちは絶句する要因だ。

現に映像の地球に次々と隕石が大気圏を突破し地表に吸い込まれていく。

 

「マリアさんの通信を聞いた響がイカデビルに!」

「立花の問いに答える気はないか」

「それどころか、クソ爺の言葉にまんまと乗せられてるじゃないか!」

「寸前の所でマリアに助けられて説得で持ち直したな」

「何とか、イカデビルの攻撃をいなしてるが、何時までも持たないぞ」

「あっ、クリスちゃんがソロモンの杖でバビロニアの宝物庫を開けた」

「そうか、バビロニアの宝物庫に閉じ込めれば隕石も操れない!」

「イカデビルがバビロニアの宝物庫に引っ張られてる!」

「! アイツ、マリアを!」

 

このまま、イカデビルがバビロニアの宝物庫に閉じ込められるかと思った時、イカデビルの触手がマリアを捕らえ共にバビロニアの宝物庫に入っていく。

当然、調と切歌…そして響たちもバビロニアの宝物庫に突撃する。

 

「バビロニアの宝物庫の中…久しぶりに見るな」

「私は、ちょっと前に見たわよ」

「相変わらず、ノイズが多いな」

「イカデビルの方もノイズを取り込みつつ、向こうのアタシたちを攻撃してるな」

「死神博士め、大口叩くだけあって手強い」

「…腹部にネフィリムの口を作ってマリアと私たちを食べさせようとしてる!?」

「見せつけて焦らせるつもりか」

「どんな敵より悪辣な手を使いやがって」

 

死神博士の悪辣さと、ネフィリムの力を取り込んだイカデビルの攻撃により響たちは劣勢に追いやられている。

その時、クリスがイカデビルの相手を響と翼に任せその場を離れる。

 

「クリスちゃんが何処か行った?」

「逃げた…無いわね」「無いな」「無い」「無いデス」

「…お前らの信頼がちょっと怖いぞ」

 

ハッキリとクリスが自分だけ逃げるわけがないと断言する仲間たちに嬉しいながらも少し引くクリス。

それから、暫く響と翼がイカデビルと戦う中、クリスが戻る幾つものミサイルを出しイカデビルへと撃つ。

 

「クリスちゃんが戻って来た!」

「ミサイルを撃つにしても不意打ちが目的でも無さそうね」

「先輩の撃った腹部のネフィリムに食べられた」

「! イカデビルの背中から爆発が起きたデス!」

「クソ爺が焦ってやがる」

「向こうの雪音の目的はショッカーがフロンティアに持ち込んだ反応兵器(核兵器)だったのか!」

「とんでもない物を持ち込んでるわね」

「でも、そのお蔭で逆転できた」

「マリアさんたちも解放されたよ」

 

「先輩が残った反応兵器を全部撃ったデス!!」

「全ての反応兵器がネフィリムの口に入ったな」

「イカデビルの体から次々と爆発が発生してる」

「…決着はついたな」

 

頭部に仕込んでいた隕石誘導装置も爆発し、巨大化したイカデビルの体も各所で爆発が起きている。

最早、死神博士に勝機はない。

映像の響たちもマリアと合流にバビロニアの宝物庫から脱出しようとする。

しかし、それを黙って見送る死神博士では無い。

 

「死神博士が、向こうの私たちを前に立ち塞がった」

「まだやる気か、クソ爺!」

「死神博士め、最早助からないからと響くんたちを道連れにするつもりか!?」

「敵ながらアッパレな行動デス!」

「生き汚いよりは…」

「何処までも厄介ね、死神博士」

 

巨大化したイカデビルの体で響たちを止めようとする死神博士。

しかし、響たちは互いに手を繋ぎ一直線へと進み、イカデビルを突破し地表に戻る。

何とか地上に戻った響たちだがバビロニアの宝物庫の入り口が開いたままで閉じなければならないが、地上に到達したときのショックで離れた場所に突き刺さっている。

 

「誰も動けないの!?」

「この時は、疲労やネフィリムを貫くのに大分力を使ったからな…」

「皆、出た時はボロボロだったね」

「確かこの時は…」

「未来さんが走ってソロモンの杖を投げ込んだデス」

「でも、この世界の未来さんは絶唱を歌ってボロボロ…」

「…! バビロニアの宝物庫から触手が伸びて響を捕らえた!」

「死神博士め、響くんだけでも始末するつもりか」

「あれ、本部から誰か走ってくるデス」

「まさか、未来!?」

「…いえ、あれは」

「オッサン!?」

 

ソロモンの杖が突き刺さってる場所に誰かが走って行く姿を見つけ未来かという響。

しかし、その人物は上半身が包帯塗れの源十郎だった。

源十郎は、残った片腕でソロモンの杖を引き抜くと穴目掛け思いっきり投げる。

 

「うわ…向こうの私に絡まっていた触手が打ち抜かれていった」

「未来の時より、威力凄くねえ?」

「痛そうデス」

「でも、これでバビロニアの宝物庫が閉じてイカデビルは消滅した!」

「向こうの私たちの勝利ね」

 

マリアの勝利発言に響たちと平行世界のシンフォギア装者たちもホッと息を吐き出す。

その後、戦闘が終わった事で自分たちの時と同じ浜辺で海を見て休む一同。

 

「今回もなんとか勝利したな」

「私たちの時と同じで浜辺で休んでるデース」

「あの時と違うのは未来が松葉杖をついてるのとウェル博士が私たちと会話してる事くらいかな」

 

「あの時は、日が沈む光で綺麗だったけど…」

「向こうは、薄暗い。時間帯は同じはずなのに」

「隕石による影響だろう、向こうの気象が異常なのも隕石の所為だ」

「大丈夫なのかしら、向こうの世界は」

「……大丈夫ですよ」

 

死神博士を倒したとはいえ、向こうの世界は大量の隕石とショッカーの影響で不安定さが増している。

ショッカーがゲルショッカーに変わりより戦いが激しくなると思い「向こうの世界」の心配をする仲間に響は言う。

皆が一斉に響に視線を向けると響は笑みを浮かべる。

 

「私たちも居るし、向こうの私たちも諦めてない。 それに向こうの世界にも歌はあるんです!」

 

そう言い切る。

 

 

 

「もうこんな時間かよ」

「今日はもう休むデース」

 

やがて、映像は終わり部屋にいたシンフォギア装者たちも時間が時間という事で解散し今日はS・O・N・Gが用意した部屋で休む事になる。

 

「マリアちゃん、調ちゃん」

「…」

「……分かった手伝う」

「前言撤回するわ」

 

響がアナザー調と子供マリアの名を呼びお互いに視線を合わす。

暫くお見合いしてると、アナザー調と子供マリアが折れ協力する事を約束した。

二人の言葉に喜ぶ響の姿を見て溜息の一つも漏らす。

 

尤も、アナザー調と子供マリアも響と視線を合わす前に手を貸すことは決めていた。

向こうの世界の響が()()()()()理由も判明したし、放置するには危険すぎる死神博士が死んだとは言えショッカー以上に危険なゲルショッカーがそれ以上の科学者が居ない保証はない。

それを確かめる為にも響たちと協力する気でいた。

 

「良かったよ、未来」

「そうだね、後は向こうの響と仲直りするだけだね」

「うん、ちゃんと謝って許してもらう」

 

アナザー調と子供マリアが協力する事に喜ぶ響が未来と共に部屋を後にする。

その様子を見届けたクリスも部屋から出ようとするとマリアが近づく。

 

「…納得はいった?」

「ああ…お前を使って本部に潜り込んでアタシの後輩を傷つけたのはショッカー響だ」

「あの娘には冤罪をかぶせちゃったわね」

「次はちゃんと謝る、アイツが望めば土下座だってするさ。 それでも許さないって言われたら……マリア、アタシと変わってくれるか?」

「…考えとくわ」

 

クリスの疑問だった地獄大使と共に居た響の正体は、立花響のクローンから造られたショッカー響だと理解した。

マリアを操りS・O・N・G本部で暴れ職員たちを殺し調と切歌を傷つけた。

そのこと自体は許せないが、前の世界で並行世界の立花響に吐いた暴言と一方的に攻撃した事に後悔を感じているクリス。

向こうの響に謝罪する事を決意するが、向こうの響が許さなかった場合にマリアと交代を考えていた。

共にゲルショッカーを相手にする以上、仲直り出来なければゲルショッカーに付け込まれる可能性がある。

 

尤も、マリアとしては向こうの響にちゃんと謝罪すれば許してもらえるのでは?っと感じてはいた。

どちらにせよ、クリスが謝罪しなければ始まらないのは確かだろう。

二人が会話をしつつ部屋を後にし、他のシンフォギア装者たちも部屋を出る。

 

そうして、部屋には翼と源十郎、緒川が残る。

三人は、暫く黙りその場は沈黙が支配する。

それを破ったのは源十郎だった。

 

「…翼、どう思う?」

「幾ら何でも我々の世界に似すぎています、フィーネとフロンティア…恐らくは向こうの世界にもキャロルやパヴァリア光明結社が行動を起こすかと…」

「ふむ、こっちの世界との差異はショッカーの存在位だが……何か引っかかる」

 

今までS・O・N・Gは数多の並行世界を渡って来た。

その中には、ルナアタックが起こらなかった世界や死んだ筈の人間が元気に生きてる世界など多彩ではあった。

しかし、フィーネが暴れフロンティア事変に酷似する事件が起きた世界は初めてといえた。

余りにも、自分たちの世界と似た事件が起きる世界。

源十郎を始め、翼や緒川も何かが引っかかっている。

しかし、その正体が掴めない翼たちは結局、時間が過ぎるのを待つしかなかった。

 

 

 

 

 




平行世界の響たちシンフォギア装者たちの中で激しく上下するウェル博士の株。
これで、性格が良ければOTONAの仲間入り出来たのだろうか?

クリスがやっと響に謝罪する決心をしました。
引っ掛かっていた本部を襲撃した響の正体がショッカー響だと確信したからです。

翼たちはショッカーの居る世界に何か引っかかりを覚えました。
伏線として利用できるかは作者次第です。

響たちの世界の米軍どころかアメリカ政府は余計な事しかしないので信頼度がマイナスです。
XDでも何度元凶となったか。

フロンティアの戦いを映像にして見ると忙しないな…。
アニメじゃよくある方だけど…。

シンフォギアのバリアフィールド云々と書いてますけど、GXじゃ初っ端で火事の中、響が平気そうに活動していたんだよな…。まあ、長時間は持たないという事で。

地獄大使編はありません。
あれは、グレ響の世界で戦った上に響だけの記録装置では足りませんので。

次回は、またゲルショッカー怪人との激闘。




終った!!!!
回想が此処まで面倒だとは思わなかった!どの情報を響たちに見せどういうリアクションをするか?
それなりに楽しいんだけど、何度も書いた小説やアニメを確認してたからキツかった。3万文字超えると本当に重い。
暫くはやりたくない。
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