絶対、総集編で時間を使い過ぎた…
ゲルショッカーのペスト作戦から幾日か。
開発されたワクチンにより人々は正気に戻りペストから回復し日常へと回帰する。
その際に、破壊された街も幾分か元に戻りつつある。
日本政府は公式には、特殊な流行り病と発表しているが人々の間では「ショッカーの仕業」と疑われている。
マリアの秘密結社ショッカーの公表により、人々の間では大きな事件の陰にはショッカーが居り、今回の騒動もショッカーの仕業ではと不安がっている。
日本政府としても、それは分かっているが今更あのマリアの発表を事実無根にする事は出来ず、またショッカーが壊滅したと言っても、ゲルショッカーがメディアを占領して自分たちの存在を暴露されれば政府の威信にも関わる上にパニックになる可能性がある。
日本政府としても慎重に動くしかなく、野党すらショッカーの問題に首を突っ込むことは少なかった。
そんなある日の事だ。
「そう言えば、君たちの学業は如何した?」
特異災害対策機動二部課の指令室に並行世界の響と翼にクリスが揃って話し合ってる時に源十郎が政府の事後処理の報告書を読んでいた時だ。
報告書を読み終えた時にふと気になった源十郎が口にしていた。
少なくとも、此方の響たちはリディアン音楽院に通い今も学院に行って勉学や友人と過ごしている。ならこの三人はと思った。
「アタシと先輩はもう卒業してるよ」
「私も、今年で卒業します」
対する、並行世界の響たちもあっけらかんと答える。
ツバサとクリスは既にリディアン音楽院を卒業しS・O・N・Gに所属しており任務に専念し、ヒビキも今年で卒業予定だった。
その言葉に源十郎が、前にツバサたちから自分たちは『少しだけ未来から来た』事を思い出し軽く謝罪しその話は終わった。
終ったが、並行世界の翼とクリスが「学院か」「懐かしいな」と呟きを聞くヒビキ。
「ツバサさん…クリスちゃん…! そうだ」
懐かしながらも寂しそうに見えたヒビキの脳裏に電流が走る。
思い立ったが吉日とばかりに源十郎に相談する。
その一時間後
「さあ、やって来た先はリディアン音楽院♬」
「…おい、ちょっと待て」
「立花……」
現在、ヒビキたちはリディアン音楽院の門の前に立っている。
テンションの高いヒビキに待ったをかけたのが並行世界のクリスで翼は汗をかいて頭を抱えている。
此処が、自分たちの世界のリディアン音楽院なら大した問題はない。
だが此処は、並行世界のリディアン音楽院であり、現在この世界の響たちが通っているのだ。
「何だって此処に…」
「ツバサさんとクリスちゃんが寂しそう? 懐かしそうだったから、それに私もこの世界の皆がどうなったか気になって」
「だからって、立花だけでなく
響だけでなく、卒業した筈の翼とクリスもリディアン音楽院の制服姿であった。
これは、ヒビキがこの世界の源十郎に頼み込み本部に保管されていた響たちの予備の制服を借りていたのだ。
卒業間近とはいえ現役生のヒビキは兎も角、卒業した筈の自分たちが再びリディアン音楽院の制服を着るとは思えなかったツバサと並行世界のクリスは懐かしさと恥ずかしさを感じていた。
尚、ヒビキはアナザー翼や子供マリアたちも誘ってはいたが既に断られていた。
「…本当に懐かしいな、私の体にピッタリだ」
「そうか? アタシは胸周りが窮屈なんだけど…」
「アハハ…正直、私も胸やお腹とか…後お尻周りも心なしか…」
「お前は太ったんじゃねえ?」
「酷いよ、成長って言ってよクリスちゃん! …でも、確かに未来からは最近食べ過ぎとか言われたいけど…」
「………」
ヒビキとクリスのやり取りを複雑な心境で見るツバサに守衛代わりで門の前に居る黒服たち。
そうこうしてる内に、リディアン音楽院から終業のチャイムが流れチラホラ帰る生徒にヒビキたちは苦笑いしつつ門を潜った。
「うう~ん、世界が違っても学院は変わって…変わってる?」
「…中庭に置かれていた銅像の痕があるな、代わりに小さなクレーターか…」
「たぶん、隕石で砕かれたんだろう。植物も吹き飛んだり、枯れてるヤツが多いな」
何人かの帰宅する生徒を見送ったヒビキたちは、よく使っていた中庭にも顔を出したが如何にも自分たちの世界とは違う光景が見に入る。
幸いにも、この世界の響や翼たちのクラスメイトとは会わなかったことが救いか?
其処には、緑豊かな乙女たちの憩いの場…とは言い難く立派な乙女の像があった場所はクレーターがあり、緑豊かだった木々もも幾つ枯れていたり薙ぎ倒された跡がある。
恐らくは、隕石とそれに伴う異常気象の所為だろう。
あまりの変わりようにヒビキたちも絶句する。
一見、自分たちの世界と同じに見えたが隕石の落下跡とか間近で見ると改めてヒビキたちも実感する。
話には聞いていたし、隕石の影響を受けた街の様子も見ていたがショックを隠し切れないヒビキたち。
「ん? あれって」
その時、ヒビキが中庭の端で人影が動いてる事に気付いた。
「…おおよしよし、捨てられちまったのか。お前」
クリスが誰かに話しかけている。
普段のクリスを知る者なら、今のクリスの口調は優しく穏やかだと気付くだろう。
尤も、クリスの周囲には、誰も居ない。 …いや居るにはいる。その正体は…
「黒い子猫か」
「可愛い、モフらせて!触らせて!」
「うわあああああああああああああっ!!!???」
背後からの突然の声に絶叫を上げるクリス。
この世界のクリスが小さな黒猫と戯れてるのを見たヒビキとツバサの声だ。
それを見て、呆れつつ懐かしさも覚える並行世界のクリスだった。
「おま…何時から! って、お前そんな性格だっけ? ってあれ? もう一人のアタシ? って事はお前ら平行世界の奴等か!?」
経ずかしさもあったが、ヒビキの態度に違和感を覚えつつ慌てふためくクリスだが、もう一人の自分である並行世界のクリスも目に入ると少しずつだが冷静さを取り戻すクリス。
その後、何とか落ち着きクリスと並行世界のヒビキたちが囲むように黒猫を見下ろす。
「なるほど…段ボールに入れられていた黒い子猫か」
「ああ、それもご丁寧に段ボールには「ひろって下さい」って書いてる」
「捨て猫だね、完全に」
この世界のクリスが黒い子猫を見つけたのは偶然だった。
授業が終わり帰る途中に鳴き声が聞こえ顔を出すと黒い子猫が段ボールの中で鳴いていたのだ。
哀れに思ったクリスが子猫に呼びかけてる途中、並行世界のヒビキたちが声を掛けた。
「それにしても、クリスちゃんが子猫を拾うって前にもあったね」
「あの時の話か?」
「確か、里親を募集したな」
「何だ、並行世界のアタシも猫を拾った事があるのか」
平行世界のヒビキたちは、以前にクリスが猫を拾いエサを上げてた事を思い出す。
コンビニで牛乳とパンを買って猫に与え、不審に思ったヒビキたちがクリスを追跡して判明した。
「今回も里親を募集するのか?」
「…普通ならそうなんだが」
「正直、無理じゃねえ?」
平行世界のクリスが今回も里親を探すかと聞くがツバサが渋い表情をし、この世界のクリスも「無理じゃね」と言う。
ヒビキが「如何して?」と口にすると、
「我々の世界とこの平行世界、状況は全く異なる」
「お前らの世界がどうかは知らねえけど、今の一般人にペットを飼う余裕があるかと言われるとな…」
ヒビキたちの世界はある程度平和で、人々も普通に暮らしている。
過去にフィーネや錬金術師が暴れはしたが、復興も進み人も普通の生活に戻っている。
対するこの世界は、平行世界と同じフィーネが暴れフロンティアが浮上したのは同じだがショッカーが暴れた事による被害も絶大であった。
平行世界と照り合わせ、過去の行方不明者は並行世界の比ではない程多く、ショッカーの被害も半端ではない。
特に、この世界の「フロンティア事変」に相当する「ショッカー事変」では世界中に隕石が落ちた事による物的被害と環境の被害もある。
その際に家を失った人間もごまんといる。
そんな世界でペットを飼う余裕がある人間がどの位居るだろうか?
この世界のクリスはそう言ったのだ。
「里親は正直期待出来ないな」
「そうか…」
クリスの言葉に並行世界のクリスが残念がる。
里親が期待できない以上、自分たちで買うか保健所に連絡して連れて行ってもらうしかないだろう。
保健所は論外としても、自分たちで飼うには学院や特異災害対策機動部二課の任務で家を空ける事が多いので生き物を買うには難しい。
これにはツバサも口を挟まず考え子猫と戯れるヒビキ。
「それにしても可愛いでちゅね❤ ちゅ~…痛っ!」
撫でたり抱き上げたりする中、子猫にチューしようとして嫌がられ引っかかれた。
「ん?」
「何してんだ立花…」
「この子人懐っこくて甘えん坊だからいけるかなって思ったんだけどな…」
ヒビキの顔に子猫に引っかかれた傷が出来ても舌を出して笑う。
その姿に苦笑いするツバサに二人のクリス。
特にこの世界のクリスはヒビキのこの姿に違和感を感じつつも落ち着く気分になる。
すると、ヒビキが再び口を開く。
「ねえ、この子の里親が無理なら本部で飼えない?」
「本部だぁ? 通信機やシンフォギアの調整用の機械とかあって無理じゃねえ?」
「…いや、猫も躾が出来ると聞く。 トイレを教え込めれば早々に粗相もしないだろう、それにこの世界の本部にも癒しは必要だろ」
ヒビキのアイデアにクリスは否定的だが、ツバサが乗り気だった。
捨てられた子猫を救いたいという気持ちもあったが、この世界の特異災害対策機動部二課で働く職員たちの事も考えてだ。
特異災害対策機動部二課は政府の機関であり、その特性上殉職する人間も多い。
ただでさえノイズへの対応に錬金術師がアルカノイズといった危険物を造るからだ。
だが、この世界ではショッカーが暴れツバサたちの居る並行世界と比べると倍以上の殉職者が出ていると聞いている。
その所為か、ツバサの目からしてもこの世界の特異災害の職員は常に気を這っておりリラックスしてる様子もない。
その為に、子猫を買ってアニマルセラピーも出来るのではと考えたのだ。
「なるほど…」
「お前、分かってて言ってるのか?」
「取り敢えずは、オッサンに話して見ないとどうしようもないだろうな」
ツバサの言葉を聞いたヒビキと二人のクリスは黒い子猫を本部で飼えないか源十郎に聞く事にした。
その時、子猫の眼が怪しく光る。
同時刻。
復興の進む街中で、何人かの少女が歩いている。
「アレって翼さんじゃ…」
「雰囲気とか違くない」
「でも、似てるね」
何人かの通行人が一人の少女を見て口々に「歌手の風鳴翼では?」と言うが今一確信が持てず過ぎ去っていく菅良を見る。
「言われてるね、ツバサ♬」
「勘弁してくれよ、クリス~」
「やれやれ…」
「平行世界の同一人物デスからね~」
通行人の言葉を聞いてにやけ顔のアナザークリスがそう言うと苦笑いしつつ氾濫するアナザー翼。
そんな二人のやり取りに呆れ顔のアナザー調とアナザー翼をフォローしようとするアナザー切歌。
何故、この四人が街中を歩いてるのかと言えば、平行世界のヒビキの「一緒にリディアン音楽院行かない?」を蹴ったついででしかない。
まぁ、本部にばかり籠っていても気が滅入るのもあったが。
これまでにも行き交う通行人たちに「歌手の風鳴翼では?」と言われるアナザー翼だが、平行世界の風鳴翼だけに間違ってはいないが間違ってるというややこしい状態でもある。
「…それにしても、建物も直って来てるね」
「民家はまだまだだが、商業施設とかは新しく建て替えたヤツが多いな」
「…物流は経済の基本」
「ただ、値段が高いのがキビしいデス。前に平行世界の私から聞いた値段が良いデス」
街が復興してきた事で、商品を売るスーパーや商店街も人が戻りつつある。
一部では、既に商売をしてる店もあるが、物不足の所為か商品が平均よりも高い。
過去に、平行世界の調たちから物価の安かった世界など聞いていたアナザー切歌は並行世界の調たちを羨ましがっていた。
「…お金足りないの?」
「調の研究の為にも節約はしときたいデース」
そんな、アナザー切歌の様子にアナザー調が「お金が無いのか?」聞くがアナザー切歌は調の為にも貯金はしておきたい。
そんな二人のやり取りにアナザークリスは微笑ましいと笑みを浮かべ、アナザー翼は「ピュ~」と口笛を鳴らす。
それなりに街を見て回り満喫するアナザー翼たち、そろそろ本部に帰ろうかと考えた時
「え~んえんえん、え~ん!」
「鳴き声?」
子供な鳴き声…が聞こえ、角を曲がった先には鳥かごの横で泣く赤い帽子を被った少年…男の子が居た。
この辺りは人通りが少ないのか男の子以外の人影はない。
「「!」」
「おい、クリス」
「切ちゃん…」
泣いている子供の姿を確認したアナザークリスとアナザー切歌が急いで駆け寄る。
その姿に一瞬呆気にとられるアナザー翼とアナザー調だが、互いの顔を見て溜息をすると二人の後を追う。
「どうしたの? ボク」
「怪我でもしたデスか?」
アナザークリスとアナザー切歌が少年の話しかける。
しかし、男の子は二人の顔をチラッと見ただけで泣き続ける。
アナザークリスとアナザー切歌がどうしたものかとお互いの顔を見ると追い付いたアナザー翼とアナザー調が追いつく。
「…泣いてばかりじゃ分からない」
「いじめか!? だったらいじめっ子をオレが殴ってやるよ」
「ツバサ!」
片手を拳にして自分の手を叩くアナザー翼がそう言うとアナザークリスが止める。
子供をなだめる演技かとも思ったが、放っておけば本当に殴りに行きそうだった。
「え~んえんえん…ちがうよ」
そんなやり取りを聞き泣いていた男の子が困り顔で説明をする。
「ぼくの ともだちが ピーコちゃんがかえなくなったから もらったんだけど おねえちゃんがかえないって いってかえしてこいって いったんだ」
「その子、カナリアね」
「姉ちゃんが反対してるなら、親を取り込め。 先ずは母ちゃんからだ」
「おかあさん いない」
「「「「…」」」」
姉が反対するなら親を味方に付けろと言うアナザー翼だったが、男の子の口から母親は居ないと聞きそれぞれが顔を見合わせ絶句している。
「なら、お父さんは?」
「しんじゃった」
男の子がハッキリそう言うとまたも絶句する一同。
男の子の両親は既に鬼籍であり、今は姉と二人暮らしで住んでいる。
「…それならペットを飼う余裕はないか」
「どっちか片方が居ないパターンはあるが両方かよ」
ノイズという特定災害はある以上、人の命は果てしなく軽い。それが世界の常識だ。
特に、この世界はショッカーという世界的犯罪組織もあり、より命が軽いといえた。
一応、行政が支援などしているが、ペットを飼う余裕なぞ無いのだろうとアナザー翼たちはそう考えた。
その考えが男の子にも伝わったのか、泣きそうに素振りをする。
「無理にでも友達に返した方が良いと思うデース」
「私もそれが良いと思うよ、返しづらいならお姉ちゃんも一緒に謝って…」
「むり ぼくのともだちの いえがいんせきでこわれて しんせきのいえに ひっこしちゃったんだ」
飼えない以上、貰ったという友達に返すよう提案するアナザー切歌とアナザークリス。
しかし、男の子の口からはそれも出来ないと理由も言う。
その言葉に納得もする一同。
死神博士の「流れ星作戦」により地球には幾つ物隕石が落とされ多数の被害が出ている。
その中には住む家を無くした者たちも多く、それぞれ政府の用意した仮設住宅や無事だった親戚の家に避難などしている。
男の子の友達は後者で、恐らくこの周辺には居ないのだろう。
「えっと…じゃあ、このカナリアはお姉ちゃんたちが飼うのは?」
「おい、クリス!」
「ほんとう?」
男の子は飼えず、返すことも不可能である事からアナザークリスは唐突に自分たちが飼うと提案する。
これには、男の子もアナザークリスの提案に飛びつき、あれよあれよという間にアナザークリスがカナリアのカゴを持って帰宅しようとしていた。
「…止めなくて良かったの?」
「あの状態のクリスは止まらねえんだ」
「それにしても、あの子の言葉…どうにも棒読みみたいで引っかかるデース」
アナザークリスの行動にアナザー調が相方であるアナザー翼に問いかけるが、そう返答する。
男の子からカナリアを譲ってもらったアナザー組は本部へと戻っていく。
それを見送った男の子だが、その子供に近づく者がいる。
一見、普通の大人の男のようだが、男の子が振り返ると同時に頭を撫でる。
「坊主、よくやったぞ」
「ほれ…約束のご褒美だ」
男たちはそう言うと、男の子に紙袋を渡す。
紙袋の中身を確認する男の子。その中には飴玉の入ってる袋や全国展開している商品券や生活必需品の物品が入っている。
「わーい おじちゃんたちありがとう」
男の子の声から喜びが漏れると紙袋を持ってその場を後にする。
それを見届けた男たちは両手をクロスさせる瞬間、男たちの姿はゲルショッカー戦闘員へと変わった。
「作戦の第一段階は成功だ」
「…学院の方でも『猫』が無事、平行世界の立花響どもが保護した」
全てはゲルショッカーの策であり、学院の捨て猫や幼児を利用してあのカナリアを特異災害対策機動部二課へと運ばせるのが目的だ。
その為に、学院にクリスがよく行く中庭の一角に「ひろって下さい」と書かれた段ボール箱を用意し、生活に困っている男の子を利用し上手くカナリアをアナザークリスたちに渡るようした。
後は、作戦の第二段階が始まる夜まで待つだけだが。
「それにしても、あの小僧…終始棒読みだったな」
「子供なんてあんな物だろ」
「本部でペットを飼えだと!?」
特異災害対策機動部二課の本部である潜水艦の指令室に源十郎の声が響き渡る。
よく分からない事情で、この世界の響たちの制服を借りたヒビキたちがクリスと共に黒い猫を拾って本部に戻ったかと思えばアナザー翼たちが鳥かごに入ったカナリアも連れて来たのだ。
「お前らもかよ」
「アンタたちもか」
平行世界のクリスとアナザー翼がそれぞれ動物を持ってきた反応がこれであった。
ヒビキたちもアナザー組も自分たち以外が動物を持ち込んだ事には驚くが、何の相談もされなかった源十郎が一番ビックリしてるだろう。
「猫とカナリアか…本部で飼うのはちょっとな…」
平行世界のクリスやアナザー翼たちの提案に渋る源十郎。
別段、源十郎としても動物が嫌いではないが精密機械が多い指令室や、緊急時…ショッカーが本部に侵入した事もあり緊急時に流暢に動物に構ってる暇はない。
何より、本部で動物を飼う事を聞いた護国の鬼がどう反応するか。
「でもでも、家も無いこの子たちが可哀そうですよ!」
「…動物もそうですが、職員たちにも何か癒しが必要かと。例えばアニマルセラピーとか」
「うむ…」
源十郎とて分かって入る。
ショッカーが自分たちの前に現れてからというもの、ノイズだけの時とは比較にならない程のストレスが職員たちが感じている事。
ピピピピピピピュピュピュピュピュピュ…
「よく鳴くカナリアですね」
「でも可愛いですよ、こいつ」
鳴き声を上げるカナリアを見てる緒川とその部下。
緒川は不思議そうな顔で見ているが、部下はカナリアが可愛いと顔をにやけさせる。
その姿に、源十郎は久しく見てなかった部下の笑顔に深く考え答えを出す。
「仕方ない、躾はするんだぞ」
「「「やったーーーーーッ!!」」」
源十郎の言葉にヒビキたちだけでなく、一部の職員にも喜ぶ者がおり…特に女性職員が黒い子猫やカナリアを群がる。
「ただいま、戻りました」
「こんにちは…?」
「何? この騒ぎ」
寄り道でもしたのか、学院で何かやっていたのかこの世界の翼と響、未来が本部に顔を出すと浮かれている職員やはしゃぐヒビキたちが」目に入り何事かと思ったそうな。
「っで? コイツを飼う事になったってか?」
「はい、私達の居ない間に…」
本部の待機所にて、奏が子猫を撫でながらそう言って溜息を吐く響の背中を叩く。
そんな響の様子を見て苦笑いをする未来に、並行世界の自分に謝られている翼の姿が映る。
響としては自分の居ない間にペットを飼う事が決まり、翼は翼で勝手に決めた事を並行世界の翼に謝られていた。
此処にアナザーツバサたちが居ないのは僥倖かも知れない。
もし居れば、謝る翼と謝れる翼に傍観する翼と更にカオスな事になっていただろう。
結局、カナリアは指令室に鳥かごが設置され、黒猫は休憩所で飼われる事となる。
そしてその夜。
時刻は深夜を周り、本部の職員の半分は眠りシンフォギア装者たちも休眠をとっている。
平行世界のシンフォギア装者も本部に備え付けられた寝室で眠りに落ちている。
電気の消えた休憩所に黒い子猫が歩み部屋の真ん中に来ると止まる。
ニャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ……
不気味な猫の鳴き声が響くと同時に、子猫の姿は消え代わりに二足歩行する何かが出てくる。
大きな目が怪しく光り、左肩には両生類のような生物。顎には白い髭が
なんと、クリス達の拾って来た黒い子猫の正体はゲルショッカーの怪人ネコヤモリだったのだ。
「シンフォギア装者め、まんまと俺を拾い本部に連れて来てくれるとはな。 ペット作戦…ブラック将軍の想定通りよ」
ブラック将軍の作戦。 それは、黒い子猫に扮したネコヤモリをペットとして響たちに拾わせ寝静まった頃に本性を現し響たちの抹殺を図る作戦である。
「今なら、寝ている立花響以外のシンフォギア装者の首を掻っ切るだけだ」
右手の爪を翳し指を動かすネコヤモリ。
早速、翼たちの殺害に移ろうと動こうとしたネコヤモリ。
「ニャッ!?」
しかしその時、休憩室の電灯が点きネコヤモリが驚きの声を上げ休憩室の出入り口を見る。
其処には、シンフォギアを纏ったクリスに他のシンフォギア装者たちも居る。
「向こうのアタシの言う通りかよ」
「クリスちゃん、凄い!」
「シンフォギア装者ども!? 貴様たちは眠っていた筈じゃ!」
突然のクリス達の出現に慌てるネコヤモリ。
それぞれが部屋に戻り就寝したのを確認していたのもあるが、こうも簡単にバレた事に驚く。
「猫の怪人、貴様の事は雪音が気付いていたんだ」
「流石、先輩」
「何だと、何時だ!何時、気付いた!」
平行世界のクリスが真っ先に黒い子猫の正体に気付いたと聞かされ、「何時、気付いた?」と聞くネコヤモリ。
少なくとも、子猫に化けてる時にバレるような心配はないと断言できる。
「あのな…子猫はな、甘える時は顔もペロペロ舐めて来るんだよ!」
平行世界のクリスも嘗て猫を拾った事がある。
その時、短い間だが世話をしており猫に何度も顔を舐められている。
クリスも最初は普通の子猫だと思っていたがヒビキが甘えられるどころか引っかかれ、甘えたと思えばどこかぎこちなさを感じて警戒していたのだ。
「しまった! 怪人としてもプライドが邪魔をし小娘の顔を舐めなかった所為か!」
クリスの指摘に己の失態に気付いたネコヤモリ。
怪人の正体に気付いた平行世界のクリスに喜ぶヒビキたち。
「ゲルショッカーの怪人!これでお前の企むもご破算だな!」
翼がそう言うと、ネコヤモリの周囲を取り囲むシンフォギア装者たち。
戦う場所が場所である以上慎重に動くが子供マリアに並行世界のセレナも居る。
ゲルショッカーの怪人とはいえ、これだけの人数差が居れば勝てると誰もが考えた。
だが、その直後。
大きな音と振動により、赤い光とサイレンのような物が響き渡る。
「何デス、今の!?」
「本部が揺れたぞ!」
地震とかではない、本部である特異災害対策機動部二課の潜水艦は海中にあるのだ。
この振動で仮眠していた職員も起きたのか通路で人の声が聞こえてくる。
すると、再び艦内に激しい振動が起きた。
「ニャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!! 始まったか!」
「猫の怪人、テメェー何か知っているのか?」
「改めて名乗ろう、俺の名はネコヤモリ! そして、何時から特異災害対策機動部二課本部に潜入してるのが俺だけだと言った?」
先程とは逆に焦りだしたクリスの問いに堂々と答えるネコヤモリ。
その姿と本部の振動でハッタリではないと感じる一同。
「俺以外にも居ただろ? 本部に運ばれた鳥がな」
「まさか、あのカナリア!?」
ネコヤモリが怪人の姿に戻る少し前。
最低限の人員と源十郎が居る指令室にて、彼等にとって何時も通りの業務だと思ってはいたが。
ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼
その日は何時もと違っていた、歩く職員の姿はふら付き熱くも無いのに額からも汗が流れる。
ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼
「頭が…」
「私も…」
遂には、誰ともなく頭痛を訴え席に倒れ込み虫の息となる。
ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼
「皆…しっかりするんだ…うっ!頭がわれそうだ…」
異変に気付いた源十郎が注意を呼び掛けるがその顔に余裕はない。
それどころか、他の職員同様強烈な頭痛に襲われ指令室にうつ伏せになる。
遂には、指令室で意識のある人間が居なくなると、あれほど鳴いていたカナリアがピタッと泣き止むと爆発し白い煙が出る。
そして、煙が治まるとカナリアの居た鳥かごは消え黄色い鳥のような顔をし右手がコブラの怪人が現れた。
「ヒュルヒュルヒュルヒュル、ちょろいもんだ」
怪人は気絶させた職員たちを見回しそう言うと、操舵系のシステムがある装置の方に行き機会を触る。
目的の場所をインプットさせスイッチを入れるとエンジンが始動し全速力で向かう。
その最中に海中の岩に接触したのか激しい揺れが発生する。
「う…ハッ! お前は一体…」
その振動で意識を取り戻した源十郎。
怪人の姿を見つけ声が出る。
「目が覚めたか、運の無い。 このカナリコブラが地獄へと案内してやろうというに!」
「司令部に怪人が居るだと!」
「お前たちの目的は一体…」
「俺たちの目的はお前たちを地獄に案内する事だ」
「地獄だと!?」
「…行き先は?」
「日本海溝」
ゲルショッカーの目的。
それは、響たちの乗る特異災害対策機動部二課本部の潜水艦をジャックし日本海溝に沈め水圧で響たちごと特異災害を葬る作戦だった。
響たちはこのピンチを脱する事が出来るのか!?
危うく、怪人に顔を舐められそうだった平行世界の響。
卒業したのに再びリディアン音楽院の制服を着る翼とクリス。
挿絵でもあればサービスになりますかね?
絵心無くて書けないんですけどね。
今回は、XDのメモリーカードのS12ー241の天使の微笑みのストーリーを流用してます。
そのお蔭で、黒い子猫が怪人だと見抜く平行世界のクリス。
アナザー組にカナリアを渡したのはサラセニアン回の子役が元ネタ。
棒読みの子供をシンフォギアに出したかった。
劇中にもネコヤモリは猫に化けていたし子猫にもなれるだろう。
地獄=日本海溝。
尚、猫の絵は届いてない。