改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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今年は、後一回更新出来るか?


149話 日本海溝の戦い

 

 

 

「特異災害の本部、予定通りの航路を進んでいます!」

「もう、間もなく日本海溝に到達!」

 

何人もの戦闘員がモニターを凝視し報告し合う。

モニターには、日本地図と海の地図もあり、海の場所で小さなランプが光ると共に少しずつ移動している。

 

「海溝8000mの深さに到達すれば如何に立花響たちと言えど、命はあるまい。尤も、其処まで行く前に潰されるだろうがな…」

 

モニターを見ていたブラック将軍もそう言って口を端を吊り上げる。

今度こそ、響を始めとした特異災害とシンフォギア装者の最後だと思って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海。

それは、母なる存在。

 

海。

地球の表面の七割を占めると言われる。

 

その海の中、小魚の群れが散り散りとなるとその場所を進む何かが通り過ぎる。

その何かは海中で岩に当たろうが海底に当たろうが海藻やサンゴ礁を蹴散らそうがお構いなしに進みやがて、ある場所へと到着する。

海底の崖と崖の間、昼間の太陽の光すら届かない闇の世界。

 

海溝。

人類が未だに足を運ぶのに苦労する未開の世界。

無理に潜れば水圧という自然の力が適応できない生物を圧し潰し命はない。

そんな、海溝の上で()()()がゆっくりと沈んでいく。

 

 

 

 

 

 

「日本海溝!?」

「潜水艦ごとアタシ等を亡き者にする気か!」

 

「その通り!」

 

翼とクリスの言葉に答えるネコヤモリ。

その言葉に、響たちはネコヤモリの言動が信じられなかった。

ゲルショッカーが自分たちの事をこの世から抹殺したいのは分かってはいる。

だが、

 

「アナタ…正気!?」

「お前も死ぬぞ!」

 

改造人間とは言え、潜水艦を破壊すれば自身のネコヤモリすら海中に放り出され水圧で潰れる。

よしんば、潰れずとも海中に投げ出され沈む可能性が高い。

しかし、翼たちの声を聞こうがネコヤモリの表情は何一つ変わらない。尤も、変わった所で響たちが気付くかは…。

 

「だから、どうした!? お前たちを一網打尽で葬る事が出来るのならこの命、惜しくは無いわ!ニャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ‼」

 

「狂ってるわね」

 

自分たちとて命を賭けた戦いをしてきた事はあるが、逆に敵が此処までの戦いを挑むのもそう珍しくはない。

珍しくはないが、そんな相手と戦いたいかと言われれば誰もが「NO」と答えるだろう。

 

そんな時だ、船内から異音が聞こえると外が見える強化ガラスにヒビが入る。

海溝に沈む洗礼だろう。

 

「不味い、奴の言葉が本当ならこの船は日本海溝に沈んでるぞ!」

「潜水艦を操舵出来るのは指令室だ! 何人か指令室に行けっ」

 

今まで聞いたことない潜水艦の異音に窓の一つにヒビが入り状況を察した翼たちがそれぞれに指示を飛ばす。

少なくとも何人かのシンフォギア装者は指令室に急いだ方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねぇ! 風鳴源十郎!」

 

「くっ…!」

 

その頃、本部の指令室では正体を現した怪人…カナリコブラが右腕のコブラを源十郎に嗾ける。

何とか寸前でコブラを握り止める事が出来たが、コブラの口から滴る毒液が床に垂れ少し床が溶ける。

 

蛇に睨まれた蛙という言葉を知っていよう、そのカエルはお前だ!」

 

「意味の分からない事を…!」

 

カナリコブラの言葉を一蹴し、カナリコブラの福部を蹴り上げ右腕のコブラから脱出した源十郎。

怯んだカナリコブラに反撃しようとするが

 

ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼

 

「この音は…グワアアアアッ!!!!」

 

突如聞こえて来た異音に源十郎は両手で耳を塞ぎ悶える。

さっきまで感じていた頭が割れるような痛み。源十郎だけではない、倒れている職員たちの口からも苦痛の声が出ている。

 

「言い忘れていたが、俺の出す音波は人間の脳を破壊出来る。 俺のコブラハンドの毒で殺してやろうと思ったが止めだ! このままお前たちの脳を破壊してやる!!」

 

ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼

 

カナリコブラが自身の声の音量を上げ不気味な鳴き声が大きくなる。

その威力は、源十郎すら白目をむき職員の口から泡が出てモニターやガラスにヒビが入る。

このまま、カナリコブラの特殊音波で源十郎たちの脳が破壊されるのかと思われた時、指令室の出入り口が開いた。

 

「師匠、無事ですか!?」

「って何、この騒音!?」

 

入って来たのは、ヒビキやツバサにクリスといった何時もの三人に子供マリアと大人セレナに奏たちだった。

ヒビキの言い方からして、並行世界のヒビキたちだと確信するカナリコブラ。

 

「貴様ら程度が来たところで俺の性能を喰らい死んで行け!!」

 

ピピピピピピピュピュピュピュピュピュピピピピピピピュピュピュピュピュピュ‼

 

カナリコブラは、ヒビキたちに向け源十郎を苦しませた特殊な鳥の鳴き声を聞かせる。

 

「うわ、五月蝿い!」

「この音にオッサンたちはやられたのか!?」

「…だが、私達ならシンフォギアで十分耐えられる!」

 

カナリコブラの音波に文句を言う奏に音の危険性に気付いた並行世界のクリス。

しかし、ツバサの言う通り源十郎たちのようにはならずシンフォギアでカナリコブラの音波の性能を下げている。

つまり、ヒビキたちにとってカナリコブラの音波は「五月蝿い」だけだった。

 

「ほう、俺の音波が通用しないか…なら、俺のコブラハンドで毒にしてやる!」

 

地震の音波が通用しないとみたカナリコブラは、右腕のコブラを伸ばしヒビキたちに向け飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねぃ、キャットファイヤー!」

 

「うわ、炎!」

「また火?」

 

一方、本部の休憩所では響たちとネコヤモリの戦いが繰り広げられる。

ネコヤモリの吐く火炎に驚くアナザー翼にウンザリ気味のクリス。

吐かれた炎は響たちが避けるが、休憩室に備えている棚やソファーに燃え移る。

 

「急いで消すぞ!」

「はい!」

 

それを即消しに行く翼とセレナ。

現在、本部の潜水艦は潜行しており密閉空間となっている。

下手に燃え続ければ酸素が無くなり自分たちも危ない。

と、言うかこの炎自体危なく放置すれば可燃性のない筈の壁や天井まで吠え広がる。

 

ネコヤモリもそれを分かっていてワザと火炎を吐いているのだ。

 

「悪辣な猫だな!」

 

「ニャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ! 我らゲルショッカーは勝つ為には何でもするのだ!!」

 

響たちもネコヤモリとの戦闘で苦戦を強いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がガーン

ズズンー

 

「ふぁ~…さっきから何ですか、この音は」

 

本部の通路を歩くウェル博士が欠伸をしつつ呟く。

やっと、源十郎や政府高官に依頼された報告書を完成させ寝ていると突然の揺れと音で起きざるえなかった。

源十郎に抗議しようと通信を入れるが、呼び出し音はするが誰も出ずに仕方なく直接指令室に行き文句を言おうとしに来た。

 

「全く…人が折角久しぶりの睡眠を楽しんでいたというのに…!」

 

やがて、指令室に辿り着いたウェル博士が扉を開け文句を言おうとした時、何かが叩きつけられる音がし横の壁を見る。

其処には、傷らだけのツバサが壁に寄りかかっている。

改めて、ウェル博士が指令室を見ると、シンフォギアを纏ったヒビキと奏に子供マリアと大人セレナが鳥頭の怪人と戦い少し離れた場所でアームドギアのボーガンで援護する平行世界のクリスの姿を確認する。

 

「何時の間に…ヒィ!」

 

自分の知らない内にゲルショッカーの怪人が本部に侵入していた事に驚くウェル博士だが、戦いの余波で直ぐに物陰に隠れた。

 

「ああ、もう…こんな所で戦わないでほしいですね」

「………」

「おまけに場所が場所ですからシンフォギア装者たちが本気を出せてないですね」

 

ウェル博士が愚痴り、同じく壁に寄りかかってる源十郎もカナリコブラの音波の所為で何も言えない。

 

戦いは、カナリコブラが優勢だと素人でも分かる。

此処は指令室であり、特異災害本部の中心部だ。ゲルショッカーにとっては敵の中枢部で暴れない理由がない。

 

「カナリコブラっ! 場所を変えて戦って!」

 

「嫌なこった!ヒュヒュヒューーッ!!」

 

何度か、ヒビキが場所を変えて戦おうとするが、そんな提案に乗るカナリコブラではない。

寧ろ、戦う場を指令室に限定しヒビキたちが逃げる素振りをすれば倒れている職員や源十郎を攻撃する。

これでは、ヒビキたちも本気を出せず日本海溝からの脱出も出来ない。

 

「…ゲルショッカーの怪人は明らかに此処に陣取ってますね、何が目的なんでしょう?」

「…ツバサたちが言うには…ゲルショッカーはこの本部を日本海溝に沈める気だと…」

「何ですって!?」

 

源十郎の言葉を聞いたウェル博士は、カナリコブラがヒビキたちに夢中になっている隙に源十郎の指定席と言える指令の席に着くと直ぐにコンピューターを起動させ端末を操作する。

数秒程、弄っているとウェル博士の額から汗が流れた。

 

「! 海面から既に500mを過ぎてる!?」

 

「「「「!?「え?」」」」」

 

ウェル博士の声にヒビキたちシンフォギア装者が一斉に反応し、カナリコブラが満足そうに頷いている。

 

「ウェル博士、それって…」

「おい、クソ眼鏡! これ以上沈んだらどうなる!?」

「…世界的には、潜水艦の最大潜行出来るのは500mだと言われています!それ以上は、水圧に押しつぶされる可能が高い…!」

 

ウェル博士が説明してる最中に、指令室の壁が凸になり何かの轟音が響き、指令室を照らしていた灯りも赤い非常灯が照らしサイレンのような音も響く。

 

「圧壊による影響が…このままでは()()()()()()()()()()()()

「「「「「!?」」」」」

 

このまま、本部の潜水艦が潜行を続ければ水圧に押しつぶされ全員命はない。

シンフォギアを纏っていようが、水圧に耐えられる保証がない。

 

ヒビキたちは本部が牢獄のような状態になってしまう。

 

「ウェル博士、其処から浮上は出来ないんですか!?」

「…無理です、エンジンやバラストの操作はあの怪人が陣取ってる席でないと…」

 

その言葉に、ヒビキたちはカナリコブラの居る場所を見る。

その席には、レバーと幾つかの光るボタンがありその前に陣取っているカナリコブラが鋭い眼光をしている。

つまり、カナリコブラを倒すか退かすかしない限り本部の潜行は止まらず、このままでは全員あの世逝きという事だ。

 

「これで分かっただろう、貴様たちに残されたのは暗く冷たい海底での死だぁ!」

 

カナリコブラはそう言い終えると右腕のコブラハンドの口を開けヒビキたちに見せびらかす。

その時、轟音と共に指令室の壁が盛り上がり時間はあまりない事を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした? シンフォギア装者ども。 掛かってこんのか?」

 

その頃、本部の休憩スペースでネコヤモリと戦っていた響たちは纏うシンフォギアは煤だらけとなっている。

ネコヤモリが火炎を吐く度、消火作業に動き火を消していたからだ。

尤も、火炎を吐かずともネコヤモリには苦戦強いられてはいた。その理由は、

 

「隙あり!」

 

ネコヤモリの後ろに回り込んでいた翼がアームドギアの剣で切りかかる。

しかし、翼の動きに感付いていたネコヤモリはアッサリと翼の攻撃をいなし左腕の吸盤状の指を翼に接触させる。

途端、翼の口から小さな悲鳴が上がると共に抵抗も弱々しくなる。

 

「馬鹿め、俺のヤモリ吸盤はあらゆるエネルギーを吸収出来る。 それはお前たちのフォニックゲインも同様だと教えた筈だ!」

 

ネコヤモリのヤモリ吸盤。

それが、響たちをより苦戦させていた。

 

ネコヤモリの言う通り、ネコヤモリの吸盤状の指は触れる者のエネルギーを奪い取る。

その力は、シンフォギアを纏った響たちが再び聖詠を歌う事になる程だ。

離れれば火炎、接近戦では吸盤状の指で響たちは不利な戦いを強いられる。

ついでに言えば、狭い休憩スペースでは響たちの大技すら使えない状態だった。

 

「クソ、狭い場所がここまで戦い辛いなんて…」

「アタシもミサイルが使えれば…」

 

思わずアナザー翼とクリスが愚痴る。

何時もの彼女たちなら、火力や縦横無尽に動き相手を倒せるが、此処は潜水艦内だ。

更に、日本海溝を潜航し続ける以上、下手をすれば自分たちの攻撃で潜水艦を破壊して水圧に潰される可能性が高い。

反対に、ゲルショッカーの怪人ネコヤモリは響たちを始末すればいい。

全力を出せない響たちが押されるのは当然と言えた。

 

「これは、不味いデスね」

「…どっちにしろこのままじゃ静水圧で潰される。…切ちゃん」

 

 

 

「翼さんを離せ!」

 

「ふん、立花響め…耐えられず飛び出してきたか! まあいい、貴様のエネルギーも俺の吸盤が吸い取ってやるわ!」

 

翼を助けようと響が飛び出し拳を振るう。

響の行動を呼んでいたのか、ネコヤモリは即座に反応し響の拳を受け止め逆に左腕の吸盤の指で響を掴もうとする。

 

「立花響、貴様のシンフォギアが消えた時が貴様の…ニャガッ!?」

 

今まさに、響の首筋に左腕の吸盤をくっ付けようとしたネコヤモリ。

しかし、突如自身の顔に衝撃と痛みが走り態勢を崩してしまう。

その隙を響は逃さず倒れた翼を連れてネコヤモリから離れる。

 

「え、切歌ちゃん!?」

 

そこで響は誰がネコヤモリを攻撃したのがアナザー切歌だと理解する。

 

「…切ちゃん、リミッターの一部を解除。もって数分」

「分かったデス」

 

アナザー調の言葉にガッツポーズで答えるアナザー切歌。

そして、アナザー切歌は天井や壁を飛び回りネコヤモリの周りを回り続ける。

 

「ニャアアアアアアアアアアアッ!! 小娘如きが、そんな動きで俺を錯乱できると思ってるのか!」

 

そう言い放つと共にネコヤモリは、目の前を飛ぶアナザー切歌の腕を掴む。

幾ら早く動こうが密閉空間での動きは制限されてる上にネコヤモリの目にはアナザー切歌の動きもハッキリと見える。

 

「切歌ちゃんの腕が…」

「アイツ…」

「…大丈夫」

 

アナザー切歌が捕まったと思った響たちが切歌の名を言うがアナザー調だけは「大丈夫」と言い切る。

その訳は、

 

「な、腕だけだと!?」

 

ネコヤモリは、自分の握った物がアナザー切歌の腕しかない事に気付く。

何てことは無い、アナザー切歌が腕を切り離しただけだ。

 

「しまった!並行世界の暁切歌は生身では…」

 

「今更気付いても遅いデス!!」

 

切り離した片腕だけでなく両腕の先を緑色の刃先がある物体に変えたアナザー切歌がネコヤモリの体を切る付け更に壁や天井を飛び回り繰り返しネコヤモリを切る付ける。

最初は、そこまでのダメージも無かったネコヤモリだが繰り返すうちに同じ場所を切り裂かれ傷がドンドン深くなっていく。

 

「ニャアアアアアアアアアアア!? こ…これは…」

 

「狭い場所なら戦うようはあるデス!」

 

繰り返す内にアナザー切歌のスピードは上がり、徐々にネコヤモリの体の傷は増えていく。

そして、

 

「これでトドメ!」

 

ネコヤモリにトドメとばかりに、アナザー切歌がネコヤモリの懐に潜り腕の物体を接触。

直後に、ネコヤモリの体を薄緑色のエネルギーが貫通しネコヤモリが断末魔を上げる。

 

「よし、効いてるぞ!」

「…このまま切ちゃんがネコヤモリを倒せそう」

「…! 不味い、此処でネコヤモリの体が爆発すれば…」

 

翼がそう言うと、休憩スペースの壁や天井を見る。

ネコヤモリの炎でかなりのダメージを受けていた壁は、アナザー切歌が飛び回った事で更にダメージを受けすこずつ拉げており備え付けられた窓ガラスもヒビが入り水が少しづつ漏れ出す。

もう、此処は駄目だと班出した翼。幸いなのは、此処の休憩スペースは本部の一角でしかないという事だ。

 

「総員退避、隔壁を下ろして損傷を最低限にする!」

「え!?」

「は、はい!」

「切ちゃん、急いでコッチに!」

 

翼の退避命令に響たちは急いで休憩スペースから退避。

全員が出た事を確認した翼が扉近くのガラスのカバーをしてあったレバーを引く。

直後に、休憩スペースの出入り口から鉄の塊…隔壁が降りてロックする。

瞬間、ネコヤモリが爆発し衝撃が本部を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「! この揺れは!?」

「何処かで爆発でも起きたんですか!?」

 

指令室に居る源十郎とウェル博士も大きな爆発が起きた事に気付く。

その影響か、ただでさえサイレンで五月蝿かった指令室に更なる警告音が響きく。

 

『危険! 危険! 潜行レベルが危険粋、早急に浮上を要請! 繰り返す…』

 

遂には、機械音で船内全てに危険を知らせるコールがかかる。

もう、あまり本部には時間がない。

 

 

 

一方、カナリコブラとの戦いをしてるヒビキたちも焦りが出始める。

ただでさえ、本気を出し難い彼女たちはアームドギアをあまり出せずヒビキとツバサに奏と子供マリアが接近戦を仕掛けるしかなく、大人セレナとクリスは援護に回っている。

 

「死ねぃ、立花響!」

 

「!?」

 

中途半端に攻めていたカナリコブラが、一瞬の隙を突きヒビキにコブラハンドで噛みつきにいく。

咄嗟に、腕のガントレットでガードするヒビキだが、コブラの顎と毒液によりガントレットは潰れていきヒビキの腕の皮膚に到達しつつある。

噛まれていない片方の腕でコブラを引っ張ろうとするが上手くいかずヒビキも涙目になりつつある。

 

「今だ、ツバサッ!」

「分かった!」

 

しかし、周りの仲間がそんなヒビキを放置せず、奏の槍がカナリコブラのコブラハンドに突き刺し、更にツバサが剣でコブラハンドを切り落とす。

切り落とされた事で、コブラハンドの力が抜けヒビキは今度こそ腕に噛みついていたコブラを引き離す。

 

一方、腕を切り落とされたカナリコブラは切断された腕を押さえ苦しがる。

 

「よし、邪魔な蛇を切り落としたぞ!」

「後はアイツを倒すだけ!」

 

「…俺を倒すだと? 馬鹿め!」

 

カナリコブラのコブラハンドを切り落とし、流れがコッチに傾いたと思った奏たち。

子供マリアが「後は、カナリコブラを倒すだけ」と言うが、カナリコブラが「馬鹿め」と言う。

一瞬、ハッタリかと考えるヒビキたちだが、カナリコブラが続けて口を開く。

 

「周りを見てみろ! 俺を倒せばどうなるか位、想像できるだろう!」

 

カナリコブラの声にヒビキたちは警戒しつつ周りに目をやった。

周りは何度も見た事がある潜水艦の本部の指令室だ。

尤も、カナリコブラとの戦いで何処もかしこも傷だらけの機器に亀裂の入った壁や天井。

幸い、カナリコブラの音波で倒れた職員は大人セレナが避難させ無事だったが。

 

「まだ、気付かんか!? 俺を倒せば発生する爆発に此処は耐えられると思うのか!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

ここに来て、やっとヒビキたちもカナリコブラの言葉の意味を理解した。

此処まで、損傷した指令室で大きな爆発が起これば窓も壁も吹き飛び、海水が雪崩込み潜水艦は終わる。

シンフォギアを纏った自分たちなら助かる可能性があるが、他の職員は全滅する可能性が高い。

 

「テメェー!」

 

「ヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ! これで分かっただろ、お前たちは俺を倒すことも出来ず、このまま日本海溝の水圧に潰され海の藻屑になるのだ!!」

 

指令室はカナリコブラとの戦いで無視できない程のダメージを受けている。

仮に、カナリコブラを倒し爆発すればこの部屋もただでは済まない。

しかし、カナリコブラを放置することも出来ず、拘束しようにもそうなれば自爆する可能性もある。

ヒビキたちが動けずに居ると、サイレンは更に響き指令室のガラス部分にヒビが入ると共に海水も漏れ出す。

最早、猶予はない。

誰もがそう判断すると、

 

「アマルガムッ!!」

 

その時、誰かの声が聞こえると全員の視線が向くとクリスの周りが黄金に光ると腕から黄金の花が咲く。

そして、黄金の花が散ると通常のシンフォギアから金色の混じったシンフォギアに変わりボーガンだったアームドギアも大型の赤と金色の混じった弓となる。

そして、その弓をカナリコブラに向け弦を引くと赤い矢が生み出される。

 

「き…貴様!」

 

「クリスちゃん!?」

「雪音!?」

 

予想外の行動にカナリコブラどころか、仲間である並行世界のヒビキたちすら驚く。

下手にカナリコブラを倒せば本部の指令室は吹き飛ぶ可能性が高いことはクリスも聞いた筈だ。

 

「安心しろ、アタシ様に考えがあるんだ!」

 

そんな、二人の様子に平行世界のクリスはそう言い放ち矢を打ち放す。

矢は寸分狂わずカナリコブラへと接近し、胴体部分に突き刺さる。

 

「がッ!? 馬鹿め、これで俺は死ぬがお前たちも道連れ…なッ!?」

 

平行世界のクリスの行動に驚いたカナリコブラだが、どちらにせよ特異災害とシンフォギア装者たちも死ぬと思っていたが、改めて並行世界のクリスの方を見ようとした時、赤い壁のような物がある事に気付いた。

そして、その壁は自分を囲う様に展開されている。

 

「な…何だ、これは!?」

 

「アタシのバリアさ、これでお前の爆発も最小限になる筈だ」

 

∀∀・デ・レ・メタリカ

 

平行世界のクリスは、アマルガムになる事で打った矢にバリアフィールドを発生させカナリコブラだけを閉じ込めたのだ。

これで、カナリコブラが爆発しても被害は最小限になると考えてだ。

 

「雪音クリス、貴様! …!?」

 

怒声を上げようとするカナリコブラだったが、それよりも早く体の限界が出たのかクリスの作ったバリアフィールド内で爆散する。

バリアフィールドを維持させる平行世界のクリスだが、カナリコブラの爆発も凄かったのか平行世界のクリスから汗が滲み出る。

やがて、爆炎も治まり平行世界のクリスがバリアフィールドを解くと僅かな煙が出るだけだった。

カナリコブラを倒した。

 

その結果に源十郎たちもヒビキたちもホッと一息つくが警告音が響くと直ぐに現実に戻る。

ウェル博士と意識を取り戻した職員が席に戻って操作し、バラスト内にあった海水を排出し、舵もきって潜水を中止させ浮上を開始。

本部の潜水艦は十数分ほど掛けて海面に到着すると日本政府に連絡し事の顛末を伝える。

 

その後、本部の潜水艦は修理され職員全員無事に地上へと戻った。

 

 

 

 

 

 

辛くも、ゲルショッカーの企みを突破した特異災害対策機動部二課。

しかし、ゲルショッカーの大幹部ブラック将軍の次なる魔の手が迫る。

 

 

 

 




人間の脳を破壊(毒殺)。

場所が場所だけに響たちは本気を出せてませんでした。
ワンチャン、本部が崩壊しようと響とアナザー切歌だけは脱出のチャンスはある。
海面に浮かぶとは限りませんが…。

ゲルショッカーの計算では、怪人が敗れても二体分の爆発が起これば特異災害対策機動部二課の本部を破壊出来ると考えてました。
結果は、ネコヤモリは翼が隔壁を下ろし最小限に治めカナリコブラは平行世界のクリスのアマルガムになって発生させたバリアで防ぎました。
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