改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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152話 ゲルショッカー首領現る!? 響たちを狙う恐るべき策略

 

 

 

人里離れた山中。

訪れる人間もいない場所に放置された赤と黄色のラリー車があり、そこにヘリが不時着する。

そして、扉が開き源十郎や響たちが降りて来た。

 

「…車には何の仕掛けもありません、恐らく放棄したかと」

 

放置されていた赤と黄色のラリー車の中も調べた緒川がそう報告し持っていたペンライトを仕舞う。

わざわざアジトの前にこれ見よがしに置かれていたのだ、ゲルショッカー戦闘員が潜んでいたり爆弾を仕掛けてる可能性もあり、エージェントである緒川が調べたのだ。

 

調査の終えた赤と黄色のラリー車は、緒川の部下の別のエージェントが後を引き継ぐとして、源十郎はある場所まで行く。

 

「やはり、封鎖されていた出入り口が開いている」

「ここが入り口…」

 

斜面、絶妙に岩に隠されているが明らかに人の手が入っただろうという雰囲気の洞窟が開いている。

以前は、少しだけ彫られて放棄されていたが今では奥が見えない程深い。

 

一度、放棄されたと封鎖だけして放置した政府機関が悪いのか、発見された場所でのアジト再度の工事をしたゲルショッカーが一枚上手か、考える源十郎。

 

「それで? 入り口も発見したし全員で突撃する?」

「…馬鹿正直に入らないでミサイルとかで絨毯爆撃すれば?」

「いや…奴等は地下にアジトを造る事が多いからミサイルはあまり意味がない。 それに中の様子が分からん以上全員で行くのは危険だ、此処は…」

 

アジトにミサイル攻撃の提案をするアナザー調だが、ゲルショッカーのアジトは地下に多くミサイルが有効とは思えない源十郎。 更にゲルショッカーが民間人を捕らえてる可能性もあり下手に手を出せない事実もある。

 

広さも分からないアジトに全員で突撃は、源十郎としても無謀と言える。

それ故、チーム分けをし万が一の時があった時の為の備えとした。

その結果、

 

「私と…」

「私だね」

「それにアタシ等もか」

 

アジトに侵入するのは響たちと並行世界のヒビキたちとなり子供マリアたちは外で待機。

二人の響と翼にクリスと少しややこしいがチームワークに問題が無いと源十郎が選んだ。

更に、

 

「何も指令自ら行くのは…」

「相手は、わざと目立つ車で此処に来た。 罠が心配だがそれ以上に強い怪人が出た場合、俺の方が適任だろう」

「…まさか、最近戦ってないから運動代わりに…とか思ってませんよね?」

 

司令官である風鳴源十郎も響たちと共にアジトに侵入しようとしていたのだ。

ゲルショッカーの事だ、罠も大量にあるだろうが怪人がどの位居るか分からない以上、OTONAである自分も戦力に数えた。

 

決してゲルショッカーになってから禄に戦ってないとか存在感が今一だとかそう言うのは無い。

どちらにせよ、響たちと源十郎は整備された洞穴に潜入しそれを見送るセレナたちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ~、岩肌ばかりかと思ったけど整地された壁だ」

「奴等のアジトの典型例だな」

「はしゃぐな、馬鹿」

 

初めてアジトの中を歩くヒビキが物珍しそうにしてると、並行世界のクリスが落ち着けと言う。

一応、罠に警戒しつつ通路を歩くが進んでも罠どころかゲルショッカー戦闘員一人も出てこない。

 

「静かすぎるな」

「何を企んでるんだ、アイツ等」

 

思わず源十郎がそう言いクリスが続けて言う。

そうして奥に進んでいると大きな電子ロック式の扉が響たちの前に立ち塞がる。

 

「ぶち抜きますか、師匠?」

「お前な…」

「まあ、その方が手っ取り早いか…ロックが開いてる?」

 

響がガントレットの腕を振り回してそう提案する。

その提案に呆れるクリスだが、扉自体に何か仕掛けられてる可能性があり即答できなかった源十郎だが、扉の傍にある電子ロックに軽く触れると扉が開いた。

 

「…罠でしょうか?」

 

アッサリと開く扉に翼が呟くように言う。

まるで、お膳立てされてるかのょうな不気味さを感じつつ扉を開ける源十郎。

万が一、罠が作動しても自身で対応する為だ。

 

扉の先は部屋になっており、床には赤く細長い絨毯が置かれ周囲にはよくわからない銀色に輝く棒が何本も置いてある。

壁には布が掛けられており薄緑色や薄いピンクと光、気味の悪い部屋に見える。

 

「悪趣味な部屋だな」

「あ、あれ!」

 

部屋を見たクリスの第一声に皆が頷くと共にヒビキがある物を見つける。

響の指差す方向には、二体のゲルショッカー戦闘員が槍を片手に持ち、その間には鎖で縛られたコートを着た女性がいる。

 

「あの人は…」

「桂木マリ?」

「!」

「おいっ!」

 

その女性の着るコートに見覚えのあった響がカフェで少しだけ喋った女性を思い出す。

しかし、響の知る桂木マリはゲルショッカーに魂を売り怪人になった。だと言うのに何故、アジトで処刑まがいな事をされてるのか疑問もあったが、響の言葉にヒビキが飛び出し並行世界のクリスが馬鹿と言う。

 

「ギーッ!?」

 

「邪魔ッ!」

 

飛び出したヒビキは、拳と蹴りでゲルショッカー戦闘員を倒す。

最初は、苦戦したゲルショッカー戦闘員だが何度も戦闘を重ねる内にヒビキだけでもゲルショッカー戦闘員を倒せそこまで脅威ではなくなった。

 

二体のゲルショッカー戦闘員を倒したヒビキは、捕らえられている女性の鎖を引き千切り床へと下ろす。

取り敢えず、「助けれた」と思いホッとするヒビキ。

その時、ヒビキを追う様に響たちと源十郎も部屋に入りヒビキと合流しようと近づく。

 

「一人で先走るな、立花!」

「もう一人の私、いきなり動くのは…!」

 

ヒビキの独断にツバサが文句を言い、響が続けて言おうとした。

その時、何かに気付いたのだろう、響はヒビキの下に急ぎ到着したかと思えば、ヒビキが助けた女性を蹴り飛ばす。

 

「えっ!?」

「「「ハアッ!?」」」

 

響の突然の行動にヒビキは愚か源十郎たちすら目が点となる。

ヒビキが女性を助け響がその女性を蹴り上げたのだ、当然と言えよう。

 

「一体、何を…」

 

ヒビキが響と蹴り上げられた女性を交互に見て「何をしたの!?」と問おうとした。

その時だ、蹴り上げられた女性の体が爆発四散し周囲に爆炎が広がる。

 

ヒビキは響が盾になり、翼たちも源十郎が前に出て皆をガードする。

やがて、爆発の衝撃も消えてヒビキが目を開くと蹴り飛ばされた女性は何処にも居なく辺りには殺い煤が残るのみだった。

源十郎が若干、火傷を負ったが元気なようだ。

 

「…あれは爆弾だよ、人形に爆弾を仕掛けて私たちを一網打尽にしようとしたんだ」

「!」

 

響の言葉に驚くヒビキ。

響は、ヒビキが助けた人から「カチカチ」と電子音が聞こえ、その人型が時限爆弾だと瞬時に判断したのだ。

事実、ヒビキは部屋の薄暗さの所為で助けた人物の顔もよく見えず、触り心地も人のような感触では無かったと今では言える。

 

『フフフ…惜しかったな、立花響!』

 

「この声!」

「…あそこ!」

 

突然の覚えのある声に響の目が丸くなり、クリスがある場所を呼び刺す。

其処には、布の敷かれた壁があるがその布に奇妙な影が写りだす。

ゲルショッカーのシンボルである蛇に巻きつかれた鷲のマークに何者かが立つシルエットだった。

 

『よく来た、立花響と並行世界のシンフォギア装者ども!』

 

「ゲルショッカー首領!」

「あれが!」

 

声の主の正体、それは忘れもしない全ての元凶…ショッカーとゲルショッカーを操る首領の声だ。

布越しに映る影に皆が一斉に身構え睨みつける。

 

「気付いたか?雪音」

「ああ、声だけのなのにとんでもない圧だ…」

 

平行世界のツバサの言葉に平行世界のクリスも額に汗を流し答える。

完全聖遺物ギャラルホルンが起動してから様々な世界に行き、色々な敵勢力と戦て来たツバサと平行世界のクリスだが、声だけでここまでの圧力を感じるのも珍しかった。

 

「ゲルショッカー首領! 此処でお前を倒せばゲルショッカーは壊滅する、覚悟しろ!」

 

そう言うと、源十郎は急ぎシルエットの浮かぶ布を剥ぎ取った。

今まで、姿を見せず指令だけを送る首領が影越しとはいえ目の前に現れたと思たからだ。

立花響からの因縁に始まり多くの犠牲を出したが首領を倒せばこれで終わる。そう思っていた。

 

「…なっ…」

 

『慌てるな、風鳴源十郎!』

 

しかし、源十郎が布を取り払った先にあったのはゲルショッカーのレリーフだけで其処には誰も居ない。

それでも、どこからともなくゲルショッカーの首領の声が響いて来る。

 

『せっかく、お前たちを誘い込む為にこのアジトを完成させたのだ。 尤も、此処がお前たちの墓場となるがな!』

 

「扉が!」

 

ゲルショッカー首領がそう言い切った瞬間、扉が閉じる。

ツバサとクリスが急いで開けようとするが、扉はビクともせずクリスがアームドギアのガトリング砲で撃つ。

が、

 

「…無傷だと」

 

アームドギアのガトリング砲の弾が直撃しようが扉が破壊されるどころか傷一つ付いてない。

すると、天井部分から機械音が聞こえ三本の棒のような物が迫り出す。

 

『貴様らは、二度と再び外に出る事は出来ん!』

 

瞬間、三本の棒の先に光り出し響たちの周囲もその色に染まりだす。

警戒していた響たちも瞬時に自分たちの体に異変を感じた。

 

「うわああああああ……」

「く…苦しい…」

 

暑い…痛い…寒い…虚脱、あらゆる負の感覚が響たちの体を犯していく。

今までの敵の攻撃とは何もかもが違う不快感、それでいて体がバラバラになりそうな苦痛を感じていた。

響たちだけではない、源十郎すら苦痛に汗を流し蹲っている。

 

『その光は、ゲルショッカーが総力を挙げて造り上げた『シンフォギア装者分解光線』だ。 文字通り、貴様らは骨すら残さずこの世から消えてしまえ!』

 

響たちを襲う謎の光。

それは、ゲルショッカーが造り上げた「シンフォギア装者分解光線」の所為だった。

 

「随分とピンポイントな名前だな!」

「…だが、効果はあるのが…」

 

あまりにもそのまんま過ぎるネーミングにクリスが突っ込んでしまうが、効果は翼も感じてる通り長時間この光を浴びれば命はない。

しかし、抵抗しようにも体に力は入らず苦しみが支配し禄に動けずにいる響たち。

翼やクリスの持っていたアームドギアも数秒と経たず消滅した。

 

『貴様らを始末した後は、外にいる平行世界のシンフォギア装者も後を追う! 安心してあの世に逝けぇ!』

 

響たちを始末した後、外で待つ子供マリアたち並行世界のシンフォギア装者も中へと誘き寄せ、同じように「シンフォギア装者分解光線」でまとめて始末する事を画策する。

響たちや並行世界のシンフォギア装者を始末すればゲルショッカーに逆らう者はほぼ居なくなる。

そうなれば世界征服も達成できる。

 

「そんな…こと…させるかぁ!!」

 

蹲り脂汗を流していた源十郎が、その言葉に反応し渾身の力で床を殴りつける。

ハッキリ言って、この時の源十郎は床の破片で少しでも響たちの盾に出来れば十分だと考えていた。

しかし、源十郎も知らない想定外な事があった。

 

一つは、この部屋の床はそこまで厚くない。

もう一つは、とある理由により床の下には空洞が広がっている。

つまり、

 

『ぬっ!?』

 

「うおおおおおおおおお………ッ!!!」

「うわああああああ………ッ!!!」

 

源十郎の殴った箇所の亀裂が一気に広がり崩れ源十郎や響たちが重力に逆らえず落ちていく。

やがては、部屋全体の床が崩れ響たちは誰も居なくなりシンフォギア装者分解光線も停止した。

 

『風鳴源十郎め、相も変わらず人外な力をしおって…。 まぁいい、下にはブラック将軍がいる。 逃げ場など何処にも無いわ』

 

誰も居なくなった部屋で首領の声が木霊する。

 

 

 

 

 

 

 

一方、外で待つ子供マリアたちの耳にも何かが破壊される音が響く。

 

「何、今の!?」

「アジト内から破壊音?」

「通信は?」

「…駄目ですね、何時も通り妨害電波が出てるようで」

 

戦闘でも起きてるのか、響たちが侵入したアジトからの破壊音。

そして、何時も通りの妨害電波にアジト内に何かが起こったのは明白だった。

 

「いっそ、アタシ等も中に突入するか!?」

「…中が分からないのは危険すぎる」

「でも、先輩を見捨てるのは反対デース!」

「…どうやら、中に入る必要はないようね」

 

奏やアナザー切歌が中に入る事を提案するが、子供マリアがアームドギアの槍を取り出しそう言った。

皆が、子供マリアの視線を追うと何時の間にか誰かが岩の上に立っている。

ソイツは、カブトムシのような銀色の角を生やし肩や左胸には棘の生えた鎧のような物があり左腕は動物の蹄をし茶色い体毛に覆われた人型だ。

 

「ゲルショッカーの改造人間!」

「見たことないタイプだ」

 

「ヴエエエエーーーーッ! 俺はイノカブトン、首領からお前たちを始末しろとお達しだ。 死ねぇい!」

 

怪人…イノカブトンがそう言うと何処からともなく無数のゲルショッカー戦闘員が現れ待機していた奏たちに襲い掛かる。

外で待機していた緒川と並行世界のシンフォギア装者たちにも戦いが起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、源十郎のお蔭で間一髪の危機から脱した響たちは地下深くまで落ち地面に着地する。

 

「翼さん、クリスちゃん、大丈夫!?」

「何とか…」

「…こっちもだ」

 

響が翼とクリスの名を言い「大丈夫?」か聞く。

シンフォギアが体を守ったのか、結構な落下速度だったが翼もクリスも平気そうだ。

源十郎の方も既に立ち上がり周囲を見回し、もう一人の自分たちの方は、「お尻が割れた…」と自分の臀部を押さえてる並行世界のヒビキと呆れた様子の平行世界の二人。

 

内心、もう一人の自分を情けないなと思いつつ自分も周囲を見回す響。

何処となく見覚えがると思った時、翼が口を開いた。

 

「此処は一体…」

「…ねえ、クリスちゃん」

「…ああ、似てやがる」

 

源十郎を始め、並行世界のヒビキたちも落ち着きを取り戻し周囲を見回る。

そこは、体育館並みの広さに灯りがあるかなり広い場所ではあるが奥には一際目立つ物があった。

嘗ての響とクリスも似た場所を見た覚えがある。

それは、蛇に巻きつかれた鷲の巨大なエンブレムとその前に立つ古い軍服の男…ブラック将軍がいる。

間違いなく、響とクリスが来たショッカーのアジトと瓜二つだった。

 

「ブラック将軍!」

 

「首領の用意した「シンフォギア装者分解光線」を掻い潜るとはやるではないか、だが此処がお前たちの終着点だ!」

「ファンファンファンファンッ!」

 

ブラック将軍が持っている鞭を振ると響たちの前にイソギンジャガーが現れ鳴き声を上げる。

それが合図かのように響たちも臨戦態勢に入りイソギンジャガーを攻撃する。

 

一見、6対1の戦いに響たちが有利かに見えたがイソギンジャガーは響たちの攻撃を受けようが触手を響たちの方に伸ばす。

当然、響たちも回避するがその内の一本の触手が平行世界のクリスの脚に巻き付いた。

 

「しまっ!?」

「雪音!」

「クリスちゃん!?」

 

足を捕われたクリスの体が床に叩きつけられる。

衝撃によってシンフォギアにヒビが入り一部が砕け、クリスの口から赤い液体が零れる。

 

「テメェー、並行世界のアタシを離せ!」

 

そう言うとクリスは両手に持つガトリング砲を乱射しイソギンジャガーの触手を撃ち落とす。

イソギンジャガー本体に比べ、イソギンジャガーの触手にそこまでの耐久が無かったのか千切れた触手で平行世界のクリスが解放される。

 

しかし、千切れた触手は瞬時に生え変わり更には二本三本とイソギンジャガーの触手が増え響たちに迫る。

 

 

 

 

 

 

一方、源十郎は一早くブラック将軍に迫り拳を振るう。

しかし、源十郎の拳を片手で防ぐブラック将軍。

 

「ふん、貴様も参加しないで良いのか?」

 

「お前をノーマークには出来んので…な!」

 

イソギンジャガーを響たちに任せ、自分はゲルショッカーの大幹部ブラック将軍の相手をする事にした源十郎だが想定以上にブラック将軍がやり手だった。

咄嗟にジャンプしてブラック将軍が握った手を無理矢理放すと、源十郎の居た場所にブラック将軍の指揮棒が突き刺さる。

一瞬でも、源十郎の判断が遅ければブラック将軍の指揮棒が突き刺され殺されていただろう。

 

「どうした?小僧。 貴様の力はこの程度か?」

 

「俺を小僧呼ばわりか…親父以来だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうこんな事止めようよ!」

「…え?」

 

イソギンジャガーの独壇場な戦闘に一人の少女の声がし、響たちの視線が集まる。

視線の先には並行世界のヒビキがイソギンジャガーに向け口を開いたのだ。

戦ってるイソギンジャガーも響たちを警戒しつつ視線をヒビキに向ける。

 

「ファンファンファン…何だ、命乞いか?」

 

「違う! ゲルショッカーの為に戦うなんて良くないよ!」

 

ヒビキの言葉を命乞いかと思ったイソギンジャガーの言葉に否定するヒビキ。

 

「この世界の私から聞いたよ、アナタはこんな戦いを起こす人じゃない! ゲルショッカーの為に戦うなんて悲しいよ!」

 

ヒビキの言葉に平行世界のツバサとクリスは「あちゃ~」という反応をしながらも互いの顔を見合う。

ヒビキの長所であり短所…それは、良い人…或いは人が良いと言える程のお人好しであり正義感がある。

言葉が通じるなら力でなく、言葉での和解がヒビキにとって重要と言えた。

 

それ故に、ヒビキはイソギンジャガーを説得した。

 

「…平行世界の立花響は随分と平和主義のようだな、言葉だけでどうにかなる段階はとっくに終わっている!」

 

「でも、人間だった時の貴女は()()()()()()()()()()()()()()に生きてたんでしょ!? 今の姿を亡くなった()()()()()()()()…」

 

「今の姿を亡くなったお父さんが見たら悲しむ」そう言いたかったヒビキだが言葉を続けられなかった。

イソギンジャガーがヒビキの死角から触手を動かし首元に巻きつけ引き寄せたのだ。

 

「お前が父を語るなぁぁぁぁーーーーーッ!!!!」

 

イソギンジャガーの口から怒号が漏れるが、その声は無機質な低い声から女性の声に変わっている。

更には首に巻き付く触手の力も上がりヒビキの首を絞める。

 

「あ…ぐ…」

 

「どうやら、平行世界のお前は大して失った物は無さそうだな!? なら、当然失った者の悲しみなど分からんだろう!!」

 

もはや、イソギンジャガーの目は完全にヒビキにターゲットを絞り翼やクリス…そしてもう一人の響を無視して首を締め上げたまま床や壁、天井に叩きつける。

 

「立花っ!?」

「クッソ、放しやがれ!」

 

ヒビキの言葉にキレたイソギンジャガーの猛攻に平行世界のツバサとクリスが響を助けようとイソギンジャガーへと攻撃し、少しずつだがイソギンジャガーの体にも傷が出来、ダメージも入っている。

それにも関わらず、攻撃するツバサたちを無視してヒビキを執拗に攻め続けるイソギンジャガー。

 

「何だ、アイツ?」

「…恐らくは怒りで平行世界の立花に執着してるんだろう…待て、もしかしてこれが立花の狙い!? なら、私達も続くぞ!」

 

並行世界のヒビキには悪いが、イソギンジャガーを倒すチャンスだとこの世界の翼とクリスも援護しつつイソギンジャガーに攻撃を集中する。

そんな様子を暫く見ている響も静かに頷くと行動に入る。

 

二人の翼と二人のクリスの猛攻を受けるイソギンジャガー。

少しずつ体力を削られるが、イソギンジャガーは意地でもヒビキを離さない。

 

「そのお花畑な頭、俺の電磁キバで噛み砕いてやる!」

 

だからこそ、ヒビキを早く始末しようと触手で首を締め上げたヒビキを一気に自分の下に引き寄せる。

更には口元の触手もヒビキの拘束に使う。

 

「イソギンジャガー触手絞めっ!」

 

口元の触手も加え、そのままイソギンジャガーの口の牙でヒビキの体を手繰り寄せる。

このままでは、ヒビキの頭はイソギンジャガーの牙に砕かれるだろう。

()()()()()()()()()()

 

「させん!」

「食らえ」

 

この時、二人の翼がイソギンジャガーの触手に蒼ノ一閃で青い斬撃を飛ばし触手を切断。

切断されヒビキを拘束していたイソギンジャガーの触手の触手も力が抜けた事で解放されるが重力に逆らえず落下。

 

「またーーーっ!?」

 

触手から解放されたヒビキだが、またも感じる無重力感に衝撃に目を瞑るが直後に無重力感も消えると共に温かい物を感じた。

ゆっくりと瞼を開けると、自分の顔が自分を覗き込んでいる。

一瞬、「鏡?」と考えたヒビキだが、直ぐに平行世界の自分だと思い直し慌てて自分の脚で立ち上がる。

急に自分の腕から離れたヒビキに響はキョトンとした目で見て、離れたヒビキは顔を赤くして乾いた笑いで誤魔化す。

 

 

 

 

「たちばなひびきぃーーーーーーーッ!!!」

 

その時、呪詛の如く自分の名を聞いてビクッとなるヒビキ。

振り向くと血走った眼で此方を睨むイソギンジャガーだが、体には翼の剣が幾つも突き刺さりクリスに撃たれた銃創もある。

翼たちの猛攻にイソギンジャガーの回復力が追い付いていないのが目に見えて分かった。

 

「よくやった、立花! 怒りで我を忘れた者は脆い物だ!」

「それが狙いだったのかよ!?」

 

翼の発言にクリスは納得した表情をする。

突然、説得を始めたヒビキの行動に眉をひそめた二人だが、決壊はイソギンジャガーを激怒させヒビキにだけ攻撃を集中し隙だらけになった。

これがヒビキの狙いだと思ったのだ。

 

「…ち…違…」

 

尤も、本気で説得していたヒビキは「違う」と訂正したかったが戦いの最中でヒビキの声が届かない。

ちょっと悲しくなったヒビキ。

 

「…大丈夫、アナタが本気だったのは私は知ってるから」

「もう一人の私…」

 

そんなヒビキの心情を察したのは、響だった。

あの説得は本気の言葉でイソギンジャガー事、自分と同じ迫害を受けた桂木マリと戦いたくなかったのだろう。

もし自分がショッカーに拉致されず改造人間にもされて無く桂木マリの経験を聞けば、恐らく同じ行動をしていただろうと考える響。

 

「でも、説得はもう遅いよ。 あの娘はゲルショッカーの改造人間にされる事を納得して改造されたんだ、ゲルショッカーの為に死ぬ事も覚悟してる」

「………」

「…私達で終わらせるしかない、例え繋げなくてもこの拳で」

「…うん」

 

響の言葉を受けヒビキも首を縦に振るう。

その目には先程と違いハッキリと力強かった。

 

 

 

 

 

「邪魔をするなぁーーーっ!!」

 

「此処までのダメージを受けて動けるだと!?」

「とんでもねえ怪物だな!」

 

攻撃を続ける二組の翼とクリス。

剣が突き刺さろうが、小型ミサイルが直撃しようがなりふり構わずヒビキを狙い続ける姿に戦慄する。

遂には、ツバサの天ノ逆鱗を繰り出すが触手の無い左腕で防がれる。

 

「なにぃ!?」

「コイツ、不死身か!?」

 

流石のこれには平行世界の翼とクリスも驚く。

今までもタフな敵はいたが、イソギンジャガーは一際丈夫なようだ。

その時、二つの黄色い輝きがイソギンジャガーへと迫る。

ヒビキと響だ。

 

「アイツ」

「そのまま叩き込め!」

 

「立花響ーーーーッ!!」

 

「…ゴメンね、アナタの心に土足で踏み込んで…」

「でも、ゲルショッカーの為に戦うなら私達の敵…そこは同情しない」

 

イソギンジャガー…桂木マリを悲しそうに見る二人の響の拳が同時にイソギンジャガーの胸を貫く。

二人の響の拳を受けたイソギンジャガーは、その勢いに吹き飛び壁に激突し一部が崩れる。

轟音が響くがやがて静寂になり、響きたちも二組の翼とクリスも固唾をのんで見ている。

 

その時、瓦礫の一部が動くと誰かが立ち上がった。

その姿はイソギンジャガーになる前の桂木マリの姿だった。尤も、体中に血の跡があり息も絶えかけているが。

 

「此処まで…か」

 

しかし、桂木マリの口からは先程の激昂の時とは違い、どちらかと言えば穏やかさが混じってる。

まるで、肩の荷が下りたように。

 

「治療を、今ならまだ間に合うよ!」

 

そんな様子にヒビキが治療を呼びかけるが首を横に振る桂木マリ。

 

「…私は負けた…ゲルショッカーは…任務を果たせない…負けた怪人は許されない…それに後悔は無い。 …さようなら…お節介さん…」

 

ヒビキの説得も拒否した桂木マリはそう言うとゆっくりと倒れた。

響の目には死ぬ間際だと言うのに笑顔の桂木マリと「お父さんと同じ場所に行けないのが…心残りかな」という小さな声が聞こえ、直後に爆発が起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イソギンジャガーめ、あれだけの改造を施して負けただと!? おのれぇ、シンフォギア装者どもめ!!」

 

源十郎と戦っていたブラック将軍もイソギンジャガーの敗北を悟り奥歯を噛みしめる。

手に持っていた鞭を捻じ曲げ響たちに呪詛の混じった声を出す。

 

「貴様たちの作戦は失敗したようだな、ブラック将軍!」

 

源十郎もイソギンジャガーが敗れ、ゲルショッカーの策が失敗した事を悟りブラック将軍に挑発交じりで指摘する。

それをブラック将軍は、忌々しそうに源十郎を睨みつける。

 

「ならば、貴様らだけでもこのアジト諸共消え去るがいい!」

 

そう言うと、ブラック将軍の姿はアッサリと消えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったな!」

「イソギンジャガーを倒せたな」

 

一方、イソギンジャガーとの戦いを終えた翼とクリスが喜びの声を出し互いに称賛する。

それを疲れた表情で見る並行世界のツバサとクリス。

其処に近づく二人の響だが、ヒビキの表情は優れず泣きそうな状態だ。

 

「私…救えなかった…あの娘」

「…しょうがないよ」

 

やはり、イソギンジャガーの人間態だった桂木マリの事を気にして落ち込んでいる。

響は慰めながらも「仕方ない」といいヒビキと一緒に歩く。

正直、如何慰めていいか響には分からず翼たちの方に歩いていたが直ぐに気にする余裕も無くなる。

 

響たちの居るフロアが揺れ出し一部が崩れ出す。

その揺れもドンドン強くなり翼たちの表情にも焦るが見えだす。

 

「何!?なになに!?」

「急いで脱出するぞ! ブラック将軍が何かしたようだ!」

「師匠!」

「また、このパターンかよ!」

 

突然の事に慌てるヒビキ、其処にブラック将軍と戦っていた源十郎が合流して状況を説明しクリスが項垂れながらも状況を理解する。

そして、急いでアジトから脱出すべくクリスが大穴を開け逃げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外では…

 

「イノカブトン角えぐり!」

 

「うわあああああああああああああっ!!」

「緒川さん!」

 

イノカブトンとの戦闘により緒川の腹部にイノカブトンの角が突き刺さる。

戦いは子供マリアや天羽奏を始めとした平行世界のシンフォギア装者がゲルショッカー戦闘員を全滅させたがイノカブトンには苦戦を強いられていた。

 

 

 

攻撃力に防御力もそうだが、機動力も並みではない。

特に

 

「イノカブトンとげ車!」

 

「また来たぞ!」

「こっちの攻撃が効かないデス!」

「…避けて!」

 

イノカブトンが体を丸めて突撃する「イノカブトンとげ車」。

一見、ふざけてるようだがその能力には、子供マリアも苦虫を嚙み潰したようような表情をさせる程の能力だった。

 

体を丸めて転がる速度は普通に早く奏もセレナも捉えるどころか自分の方向に転がらない様にするのに必死だった。

更には、イノカブトンに生えている棘や角がシンフォギア装者の傍を通り過ぎる時、シンフォギアを破壊し時には装者の体に傷を作る。

そして、まともに受けようとすれば纏うシンフォギアを完全に破壊し止めようとした装者の命も危ない。

そんな攻撃だった。

 

想定以上の力を持っていたイノカブトンに子供マリアたち並行世界のシンフォギア装者たちはズタズタにされ、それぞれのシンフォギアも砕かれボロボロにされる。

 

 

 

そして、何とか援護していた緒川にイノカブトンの角が突き刺さる。

 

「ふんっ!」

 

「緒川さん!」

 

角に突き刺さった緒川を振り回して飛ばすイノカブトン。

咄嗟に奏が、緒川の体を受け止めるが腹部から血が流れ続ける。

 

「…強い」

「私達の方が数が多いのに」

「単純に強いヤツはこれだから!」

 

角から緒川の血を垂らすイノカブトンの姿に子供マリアも冷や汗を流す。

小細工や数に頼る敵ならまだやりようはあるが、単純に強い敵の厄介さはイヤと言う程身に染みている。

 

「くそ…血が止まらねえ…」

「早く病院に…」

 

「慌てる必要はない、貴様らも直ぐに後を…撤退命令だと? イソギンジャガーめ、破れたか」

 

今まさに、大人セレナたちに襲い掛かろうとしていたイノカブトンだったが、動きが急に止まった。

その様子にアナザー調たちは迂闊に攻撃せず見守っていると「また会おう」と言い姿が消えた。

少し時間が経ち、イノカブトンが撤退したと気付きホッと胸をなでおろすとアジトの方から轟音と煙が上がり人影が慌てて出て来た。

響たちだった。

 

その後、合流した響たちは負傷した緒川を緊急のヘリに乗せ本部へと戻った。

後日、政府の調査隊がこのアジトを調べようとするが、入り口からして崩壊しており断念せざるおえなかった。

 

 

 

 

 




イソギンジャガーの回の人形爆弾とV3のオマージュ「シンフォギア装者分解光線」の罠と地下のブラック将軍の三段構えの罠でした。


やっぱり、シンフォギアのクロス物だと響の説得とか書きたいですね。

問題は、響が説得できるタイプがゲルショッカーに居ないとこかな。(最終的にアダムにも塩対応だったし…
まあ、原作の響の説得に耳を傾ける怪人は想像できないけど…洗脳だけなら効果はあるか?

桂木マリにとっては、ヒビキの説得は挑発として受け入れられました。
尚、これが無かったらイソギンジャガーのフィジカルに押され響たちは苦戦を続け、その間に地上の並行世界のシンフォギア装者はイノカブトンに全滅してるとこでした。

まあ、この作品の響だと先ずショッカー相手に説得とかしないから翼とクリスの勘違いが発生という事で。

原作のイソギンジャガーは、仮面ライダーに変身装置を破壊され元に戻りましたが、この作品のイソギンジャガーは、がっつり改造手術されているので元に戻っても死ぬだけです。

撤退命令を受け、さっさと帰ったイノカブトンですが、原作だと仮面ライダーの脚を負傷させた後勝手に帰ってます。
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