改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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作者は、「黒執事」のアニメオリジナルキャラも結構好きです。




今回は響にとって、とても辛い話。


155話 響の一番長い日 前編

 

 

 

『お母さん、この洗濯物どう干すの?』

『これはね、響…』

 

お母さんが忙しそうに洗濯物を干していた時に手伝ったベランダ……

 

『お父さん、お帰りなさい!』

『ああ響、ただいま。 これお土産な』

 

何度となく、お父さんが帰って来てた玄関も…

 

『お父さん、今日は私がテレビを見るんだよ!』

『頼む、響! この試合だけ、この試合だけ見せてくれ』

『アナタ、大人げないわよ』

 

よくお父さんと見たい番組が被った時、チャンネル争いしてお母さんが呆れていたお茶の間も……

 

全部燃えている……! そうだ、お母さんたちは!?

 

 

 

 

 

 

 

ハッと、響は周りの群衆を見回す。

普通ならば、これだけの数の人間が集まれば特定に人間を探し出すのに時間が掛かるが、響の改造された目は一瞬で目的の人物がいない事が分かる。

 

━━━この周囲にお母さんたちは居ない! まだ家の中に…!

 

群衆の中に母親たちを発見できなかった響の脳裏に「母親たちは火事で閉じ込められてるのでは?」と思い燃え盛る家に向かおうとした。

 

「待つんだっ!」

「!?」

 

しかし、響の動きを阻害するように突然誰かに羽交い絞めされる響。

咄嗟に後ろを振りかえった響が見たのは顔を歪ませて自分を止める源十郎の姿だった。

 

「し…師匠…」

「落ち着くんだ、響くん! 想像以上に炎が強い、いくら君でも!」

 

友里あおいの報告を聞いた響が本部から飛び出した直後、誰よりも早く響を追ったのが源十郎。

それなりに鍛えている源十郎も響に追いつくのに時間が掛かり、暫く人ごみを見ていた響にやっと追いついたのだ。

源十郎は即座に響が炎が燃える家に飛び込もうとしてる事に気付き、本気で響を止めたのだ。

 

「放して、放して師匠! まだお母さんたちが中に居るかも…」

「駄目だ…いくら君の体でもあの業火では…」

 

今にも炎で燃える家に飛び込もうとする響と止める源十郎。

見た目には、まだ十代の響と確実に三十台を超える源十郎。

傍目から見れば、少女を必死に抑えているおっさんという構図で周りに人間も注目していく。

 

「なに? この状況」

「やだ、変態かしら?」

「あの子って、立花さん家の響ちゃん?」

「白昼堂々人攫い!?」

 

あまりに目立つ行動に近所に住んでる人たちが響の存在に気付き、好奇な目に晒され中には動画を取ろうとしている。

それどころか、事案かと源十郎を通報しようする住人もいる。

 

「何してんだ、この馬鹿!」

「立花、とにかく一旦落ち着け!」

 

そうしてると、翼とクリスも響たちに追いつき源十郎と共に響を止める。

 

「…向こうの私、揉めてるな」

「家が火事になってんだ、慌てるなって方が難しいだろう」

「…遠くからサイレンが聞こえて来たな」

「私達まで行くとより目立つわ、離れて見守りましょう」

 

この目立つやり取りに、並行世界の響たちは遠目で響を見守る。

流石に自分たちが行けば同じ顔の人間が三人に増え、より悪目立ちしてしまうと思い離れて見守るしかなかった。

 

その後、幾つかの消防車が到着し消火活動を開始する。

消防隊の消火活動により、徐々に炎の勢いも落ちていき一時間も足らずに鎮火する。

 

 

 

 

炎が鎮火した事で最初居た野次馬も大分減り、並行世界の響たちも源十郎に合流する。

 

「私の…私の家が…」

「…鎮火はしたが、ほぼ全焼だな」

「並行世界とは言っても、私の家が全焼したのは…結構くるね」

「消防隊が調査してるな」

 

響の家は鎮火したとはいえ見るも無残、二階部分は完全に崩れ落ち柱の殆ども真っ黒な炭となっている。

これには、響も呆然とし並行世界のヒビキも如何言って良いか分からない。

 

そうしてると調査していた消防隊と警察官が源十郎に幾つか話している。

 

「そうか、分かった」

 

報告を聞いた源十郎はそう言うと響たちの方に向かう。

 

「今しがた聞いたが、焼け跡からは誰も見つかってないそうだ。 一旦本部に戻ろう」

 

未だに火元は分かってないが響たちはゲルショッカーの仕業だと確信している。

とは言え、このままこの場に留まっても意味がないと源十郎が判断し響たちに本部に戻るよう言う。

響は静かに頷き、皆と一緒に特異災害対策機動部二課本部へと戻る。

 

空は、相変わらず雲行きが悪く一雨降りそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♬~

 

此処はとある廃墟地帯。

昔は、巨大な複合施設のあった大型のビル。

嘗ては栄えていたがそれは昔の話、ノイズの出現に不況などの煽りもあり閉鎖され10年以上放置され中は荒れ放題。

今では不良やホームレスすら近づくことが無い。

 

ロンドン橋が 落ちる 落ちる 落ちる~♪

 

そんな場所に何処からともなく少女の歌のような物が聞こえる。

歌が聞こえて来た建物の部屋に三つの椅子があり縄で縛られた女性たちが意識が無いのか俯いている。

丁度、外では雨が降り出し、雨粒が荒れ放題の建物を伝い水の一粒が縛られた少女の頬に当たる。

 

「…! ん…んん…」

 

それが合図のかのように少女は目を覚ました。

最初は、寝惚けて目の前で歌を口ずさみながら下手な踊りを踊っている少女が目に入る。

 

「…響? …その踊り変だよ…?」

 

目覚めたばかりで頭が働いてなかった少女…未来がそう呟いた直後、自身の違和感に気付く。

何故、自分は座ってるのか? 何故、自由に体が動かないのか? 此処は一体何処なのか?

それらが、未来の頭に過り周囲を見渡す。

 

見た事ないボロボロの壁に埃を被ったソファーやテレビだった物の残骸。

更に、青タイツで派手な響たちの宿敵であるゲルショッカーの戦闘員たち。

そして、横には自分も知る親友の母親とお祖母ちゃんが居る。

 

「響のお母さんにお祖母ちゃん!?」

 

未来の声に、意識を失っていた二人も目を覚まし未来と同様周りを見渡す。

その様子は未来同様の反応をし未来とも視線を合わせた。

自分たちがゲルショッカーに捕まったという事だ。

 

 

 

 

 

 

「あっ、目が覚めたんだ」

 

混乱する未来達の下に聞き覚えのある声がし視線を向けるとさっきまで踊っていた響らしき人物が話しかける。

その姿を見て、響のお母さんとお祖母ちゃんが「響?」と呟くが未来はキッと睨みつける。

 

「違う、あれはゲルショッカーが用意した偽物」

 

ショッカーが創り出した忌むべき存在、ショッカー響の事は響や源十郎からも聞き映像も見て未来もある程度は知っていたが、こうして本物のショッカー響を見ると胸が締め付けられる想いがした。

確かに見た目は自分の知る響と瓜二つと言える、しかし纏う空気や言葉の中に決定的な違和感を感じている未来。

 

「…偽物か、まあまだ偽物だね。 でももう直ぐ私が本物の立花響になるんだ~♪」

 

「…へ?」

 

未来には言っている意味が分からなかった。

自分たちを浚ったのが、響たちへの牽制や脅しだろうと推察していたが、目の前のショッカー響が本物の立花響になるなんて考えた事も無い。

 

未来だけでなく、響の母親と祖母も意味が分からず頭の上に❓が浮き上がる。

 

「私は考えたの、生まれた場所のゲルショッカーで虐められるのは私が本物の立花響じゃないから。 私が本物の立花響になればきっと、首領もブラック将軍も優しくしてれる」

 

「…虐められてた?」

 

ショッカー響の言葉の全てが未来には意味が分からなかった。

そして、ショッカー響の言葉の節々に見た目以上の幼さも何となくだが感じていた。

その時、誰かがこの部屋に入って来た。

 

「…まったく、まだそんな戯言を言っているのか」

 

「…誰?」

 

入って来たのは長髪を後ろに束ねた初老の男だった。

男の顔を知らない未来が「誰?」と呟くが男はそれを無視してショッカー響に一瞥し溜息をつくと直ぐに壁にもたれかける。

まるで、それ以上ショッカー響と話す気が無いようだった。

 

「プーっ! 戯言じゃないもん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「?」」」

 

未来達には目の前のショッカー響の言っている意味が本気で分からない。

未来たちが唖然としてると部屋の中にゲルショッカー戦闘員が入っていきショッカー響の前に来る。

 

「ギーッ! 準備が完了しました」

「そうなら、直ぐにお母さんとお祖母ちゃんを運んで」

 

ショッカー響がそう命令すると何人かのゲルショッカー戦闘員が椅子に座る響の母と祖母を椅子ごと持ち上げて運んでいく。

 

「待って、二人に何をする気!?」

 

「? さっきの話を聞いてなかったの? ()()()()()()()()()()()()()

 

「思い出を!?」

 

ショッカー響の返答に未来はますます訳が分からなくなる。

今まで、ショッカーは人間やその命を奪う事はあったが形のない「思い出」を奪うと言うのだ。

 

「そう、私がオリジナルになる為にこう考えたの。

思い出を奪い取れ 奪い取れ 奪い取れ~♪ 思い出を奪い取れ~ さあ~そうしましょう~♪」

 

ショッカー響が未来の前でロンドン橋の替え歌を披露する。

ただの趣味の悪い替え歌と言えるが、歌うショッカー響が未来をおちょくる姿と目の本気にゾッとする未来。

 

そうしてる内に響の母親と祖母はゲルショッカー戦闘員に連れてかれショッカー響も部屋から出る。

未来はそれを唖然と見守る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

未来達の縛られた場所から少し離れた部屋。

連れてかれた響の母親と祖母は、縛られた椅子から動かされ二つの台の上に寝かされる。

ご丁寧に両腕と両脚、首元を鉄の拘束具を付けられる。

響の母親と祖母は大の字にされ、怯えた目でショッカー響を見ている。

 

「わ…私達を如何するつもり?」

 

「んん~…お母さんたちにはオリジナルの私との思い出を教えて❤ 全部の思い出を聞き終えたら頭の中にある想いでも貰うから」

 

まるで子供が親におねだりする姿に響の母親と祖母は冷や汗を流す。

特に、ショッカー響のエンマタイプの釘抜と電動ノコギリを持ってる事に恐怖を感じていた。

 

「コレ私も初めて使うけど安心して…()()()()使()()()()使()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つい先ほど、例のエージェントの死体が確認されたそうです」

「…そうか」

 

特異災害対策機動部二課本部。

響たちと共に本部に戻った源十郎は、響の母親たちと未来の捜索を命令し響の家を護衛していたエージェント達の所在を確認していた。

しかし、伝えられた情報は源十郎の期待には遠く及ばなかった。

 

「オッサン、何か分かったか?」

 

丁度、本部で待機していたクリスたちが司令部に入りそう言った。

クリスの問いに気まずそうな表情をする源十郎だがクリス達と共に来た響の姿を見て覚悟を決める。

 

「今しがたエージェントが殺されていた報告が入った、響くんの家族を護衛していた職員は全滅していたようだ」

 

『………』

 

響の家を警護していた特異災害の職員は居た。無論、怪人には勝てないだろうが響たちが到着するまで響の母親と祖母を護衛するのが任務だった。

しかし、何時も通りの定期連絡が途絶えた事に不審に思った職員は地元警察と協力し捜索。

結果は、血や服の一部が発見され最後には無残な遺体となっていた事で何者かと争ったと考えられる。

響の家を燃やされた事と肉親と親友の行方が不明になった事で十中八九ゲルショッカーがやったのだろうと推測される。

 

「…緒川が一時離脱したのが痛いな…」

 

響の護衛をしていたエージェントたちは、緒川の部下で腕も緒川より劣るが中々の者たちだった。

しかし、そんな彼等すらエマージェンシーをすること無く全員が殺された。

もし、緒川が入院していなければ結果は変わったかも知れない。

 

そして、響の母親たちと未来が何処に連れてかれたかも不明だった。

 

「今更、ゲルショッカーがアイツの肉親を狙うなんてな…」

「思えば連中らしい手よ…大方、立花響に対する人質ってとこね」

 

響の肉親が狙われた。

思えば、今までの敵の殆どはそう言う手を取らない敵が多く並行世界のシンフォギア装者も油断はあった。

事実、この世界の響の母親たちが拉致された時、並行世界のヒビキたちの中には「その手もあったか」と思った者が居る程だ。

 

「そう言えばオッサン、石屋の事を知っている口ぶりだったが…」

 

ふと、並行世界のクリスが源十郎が石屋恭二の名を知ってる事を思い出す。

 

「そう言う君たちこそ、石屋さんを知ってるんだ?」

 

クリスの問いに源十郎は逆に問い返す。

お互いに目配せをした後、クリス達が自分たちの知る石屋恭二の事を教えた。

 

 

 

 

「…世界蛇…ウロボロス…石屋さんがそれの幹部…」

「想像できませんね」

「これも並行世界ってヤツですかね?」

 

クリス達から聞いた石屋恭二の情報だったが、源十郎は想定していた以上の情報に眩暈を覚える。

 

「それで? アナタの知る石屋は?」

「…ああ、俺の知る石屋さんは元々俺の上司だった」

 

子供マリアから源十郎の知る石屋恭二の事を聞く。

特に隠すことも無く源十郎はこの世界の石屋の過去を話し出す。

 

曰く、

 

元々は源十郎が所属していた公安のトップであり、日本の防諜に大いに貢献した人間だった。

源十郎も石屋に公安でのノウハウを叩き込まれ、それを特異災害でも遺憾なく発揮している。

そんな人物だった石屋だが、源十郎が公安を止める少し前に公安を止め隠居し家族とともに住んでる。

 

っという情報だった。

 

「石屋が公安のトップ…」

「…似た様なの無かったか?」

「初めてあの男に会った時、特異災害の指令みたいになっていたな」

「ああ、一番初めの時だったっけ? …ベルちゃん…」

 

源十郎の話を聞き、嘗て敵対した時のウロボロスを思い出す一同。

何となく、源十郎の話と似てる部分がある気がする。

その時、並行世界のヒビキが誰かの名前を呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで…お母さんたちと未来は…?」

 

源十郎の説明が終ると響が口を開く。

その内容は、肉親と親友の行方だったが、源十郎はただ首を横に振るしかなかった。

火事の跡から人間の死体は見つからなかった。ならば、家に居た筈の響の母親と祖母、親友の未来の行方が不明になっている。

本部にも戻らず、寮や実家にもそれとなく情報収集したがどちらにも居なかった。

 

首を横に振る源十郎を見て内容を悟った響の表情はより暗くなる。

 

「目撃者も居ない、手掛かりもなし…」

「…八方塞がりかよ」

 

「いや…」

「奴等の事だ、もう直ぐ…」

 

響の母親たちと未来の行方が途絶えた事に頭をかかえる子供マリアとアナザー調たち。

しかし、翼とクリスは諦めておらずある確信もあった。

 

その直後に、

 

「…! 指令、本部にハッキング! 外から映像が来ます!」

 

突如、司令部にサイレンが響くと共にオペレーターの友里あおいからの緊急報告が入る。

そして、本部のモニターには大きくブラック将軍の顔が映りだす。

 

「…ほらな」

「…目立ちたがり屋?」

「秘密って何だろうな?」

 

『これはこれは御機嫌よう、特機部二の諸君に忌々しいシンフォギア装者ども』

 

映像に映るブラック将軍が喋り出す。

映像越しとはいえ、ブラック将軍の顔と声に思わず胸元のペンダント状態のギアを手にするヒビキたち。

 

「ブラック将軍、こうして俺たちに話しかけてるって事は響くんの家の火事は…」

 

『わざわざ吾輩が答えてやる必要があるか?』

 

特に言及はしないが、聞き返すことも無くニヤ着いた笑顔でそう答えるブラック将軍。

だが、それだけで皆が確信した。

立花響の家を放火し響の母親と祖母、未来を拉致したのはゲルショッカーだという事を。

 

瞬間、響は映像に映るブラック将軍を睨みつける。

 

「お母さんたちと未来を返せっ!」

 

『返せと言われて素直に返すバカが何処に居る?』

 

響の訴えもブラック将軍には暖簾に腕押しだった。

元より、敵対してる響の言葉など聞く気もない。

 

『…だが、そうだな…其処の並行世界のシンフォギア装者どもの首と引き換えなら返してやっても良いぞ』

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

「いやだっ!」

 

だからこそ、ブラック将軍は響が絶対できない交換情感を出した。

自分の肉親や親友の為に「並行世界から来たシンフォギア装者を殺せ」それがブラック将軍の提案だった。

 

突然、即断る響。

想定通りと唇の端を吊り上げるブラック将軍。

暫しの睨み合いが続き時が流れる。

 

『ククク…さて、そろそろ良かろう。 逆探知は済んだかね?』

 

「「「!?」」」

 

強制通信を逆探知。

特異災害対策機動部二課本部の施設ならそれ位の事は出来るが、敵の大幹部が看破してる事を教える事に驚く源十郎たち。

 

それは即ち、自分たちの居場所を教える事と同義だ。

直後、通信が消えブラック将軍の顔も消え何時ものモニターになる。

 

「…逆探知は?」

「はい…○○の○○…」

「また、廃墟地帯か」

 

「!」

「あっ、馬鹿!!」

 

場所は分かった、後は何時も通り敵陣に向かうだけだが。

そう思った時、逆探知した場所を聞いた響が飛び出しクリスが反応する。

しかし、止める間もなく響は本部から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア…ハア…」

 

シトシトと雨が降る。

未来の居るフロアも風化及び経年劣化で雨漏りがしてる場所がある。

その所為で、湿度も上がりジメジメとした空気が未来を襲う。

しかし、真に未来の心を削ってるのは別の物だった。

 

あgたbjhfdkhbdじぶjーーーーーーーッ!!!

 

「ひっ!?」

 

奥の通路から聞こえる獣のような悲鳴。

響の母親と祖母が連れてかれた後から聞こえてくる。

悲鳴の声に聞き覚えのあった未来は悲鳴の主も分かり余計に神経を削っていく。

 

「…悪趣味な事だ」

 

「! あ…あなた達は一体如何してこんな事を!?」

 

壁を背にして微動だにしない初老の男…石屋に未来が叫ぶように言う。

石屋の言葉に反応したのもそうだが、まるで他人事のように言う事が未来には許せなかった。

 

「響と同じ外見の娘にこんな事やらせるなんて…そこまで響が憎いの!?」

 

未来には分からない。

他人を自分の駒にし悪い事をさせるのを。

親友の響を拉致し、体を改造した事も。その響を殺そうとする事も未来には理解出来ないししたくもない。

 

未来の悲痛の訴えを聞いた石屋は一瞬だけ未来を見ると溜息を一つ漏らし口を開く。

 

「…ブラック将軍が話していたが、ゲルショッカーは少し前…ある事に悩んでいた」

「………」

 

石屋の言葉を黙って聞く未来。

同じくその場にいるゲルショッカー戦闘員が止めないという事は漏らしても問題ない情報だという事だろう。

 

「何故、性能が上回っているショッカー響がオリジナルの立花響に負け続けるのか?

計算上、能力も身体もオリジナルを凌駕する筈だったが、エクスドライブを除いても勝率が低すぎる

より高性能なショッカー響を造るにしてもこのままでいいのかと考え…ある提案が上がった」

 

「提案?」

 

「『オリジナルの人格でショッカー響を造る』そうだ」

 

「!? でもそれって!」

 

「当然、元の立花響がゲルショッカーに従う訳がない。 それにゲルショッカーが保管してある立花響の記憶も限界があった。 其処でブラック将軍は更に考えた『立花響の心を壊す』事にした」

 

その説明を聞いて今度こそ声を出せなくなる未来。

彼女にとって最悪の中の最悪。

そんなショックを受ける未来だったが石屋は独り言のように喋り続けていく。

 

 

曰く、

 

ショッカー時代に立て続けに敗れ続けたショッカー響にブラック将軍はショッカー響の人格に犯罪者のブレンドを止め、元の立花響の記憶を埋め込む。

当然、元来の立花響の性格ではゲルショッカーに協力するどころか、敵となりもう一人の立花響が出来るだけだ。

だからこそブラック将軍はショッカー響の元になる立花響としての心も人格も破壊する事にした。

 

やり方は、響の記憶を持った立花響クローンにあらゆる拷問凌辱をしたのだ。

死ぬ一歩手前まで追い詰め、ダメになった体は脳を移植し精神が崩壊すれば直ぐに戻す。それを何度も繰り返した。

更には拷問の最中や少しの隙間時間にオリジナルとなる、本物の響が友人や仲間と楽しく遊んでる姿(盗撮)を見せ続けた。

 

やがては、クローンの立花響も壊れだし映像の響と自分を同一視し始める。

最後にブラック将軍がクローンの響に「オリジナルになりたいか? 苦しいのも痛いのも嫌か? ならば奪え! オリジナルから全てを奪えば立花響の仲間たちもお前を迎え入れ、我らも貴様に対する仕打ちも無くなるだろう」と言われた。

 

 

 

 

 

「それが…それがあの響なの?」

 

石屋の話を聞き、やっと出た未来の声が震える。

あまりにも惨いゲルショッカーの仕打ちに最初は蔑んでいたクローン響があまりにも哀れでならない。

悲しい、あまりにも悲しい事実に未来の瞳から涙が零れる。

 

話をした石屋も未来の反応に溜息を一つする。

瞬間、

 

壁の一部が破壊され埃と水飛沫が飛ぶ。

突然の事に驚く未来。

反面、フロア内に居たゲルショッカー戦闘員は直ぐに臨戦態勢をとり濛々と舞う誇りの中に入っていく。

打撃音とゲルショッカー戦闘員の声がするが、数秒もせず治まると土埃から誰かが出て来る。

 

「…! 響っ!」

「未来!」

 

現れた人物が親友の響だと知り一気に安心する未来。

見れば、ゲルショッカー戦闘員も全員殴り倒され、さっきまで話していた石屋の姿も無い。

この場には、自分と響しか居ない事が分かる未来。

直ぐに未来の拘束を解く響。

 

「未来、お母さんとお祖母ちゃんは?」

「えっと、通路の奥に連れてかれて…!」

 

この時、未来は「しまった!?」と思った。

響が助けに来たことで緊張も解け喜びもした事でうっかり響の母親たちが連れてかれた場所を教えてしまった。

あの断末魔が聞こえた奥の方を。

 

「ひび…」

 

未来が響を止めようと声を掛けようとしたが、それよりも早く響は未来が教えた通路の奥へ突っ走る。

幸い、響を追って特異災害のヘリも近くまで来ていたので未来の保護も用意だろうと響は敢えて未来を残して奥へと行く。

 

そして、未来の言ったフロアの前まで行くと扉を蹴破る。

響の蹴りで扉が豪快に開くと響は「お母さん! お祖母ちゃん!」と言うが瞬時に響の目がカッと開く。

同時に額から嫌な汗が流れる。

 

フロア内は赤い液体がが飛び散ったのか、壁や床、天井に赤いシミが着き台の上にはバラバラにされた肉の塊。

響は認めたくなかったが、匂いから鉄も感じ動悸が激しくなる感じがした。

 

「ア…アア…」

 

ペンチや注射器、ハサミのような物にも赤い液体が付着し滴っている。

やたら粘ついた赤い液体が床へと落ちる音が響に聞こえる。

 

「アアア…」

 

そして、奥の方には薄暗い部屋の中、自分と同じ顔した少女が手に二つの球体らしき物を持っている。

直後、雷が落ちたのだろう一瞬だけ明るくなり響の目が()()()()()()()()()()()()()()()()()自分に似たもう一人の響…クローンの立花響が佇んでいる。

 

「あっ、もう来たんだオリジナル。 ちょっと聞いてよ、お母さんたちに色々質問していたのに途中で喋らなくなったんだよ。

だからこれから、頭の中を開けて思い出を貰おうと…」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!」

 

クローンの響が喋っていたが、響の絶叫と共に繰り出す拳に強制的に黙らされる。

響の拳は確実にクローンの響の顔を殴りぬく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もし、このショッカー響にガリィみたいな能力があれば生きたまま思い出を取り出す事も可能だった。
でも無いので物理的に奪おうとしました。
もちろん、ブラック将軍がクローンの響に言ってる事は全部デタラメです。

シンフォギアで最後まで家族が無事なのは、響と未来くらいで後は死亡や不明が多い気が。

元々、この作品の響の両親の死は決定していました。
何しろ、この作品の響は昭和ライダーの設定をぶっこんでいるうえにショッカーやゲルショッカーが目障りだと思っている響の親を放置するかと言うと…。

前回の感想で、この響がサイコパスっぽいと言われた正体がこれです。
ゲルショッカーの徹底した拷問凌辱で何度も心を壊され一部が幼児退行してる所為です。
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