改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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新 仮面ライダースピリッツのロンリー仮面ライダー編1巻を買いました。

色々と感想はありますが、この世界の響が皆を見送る事が決定しました。
改造人間、マジで年取らないんだな。
後、子供に遺伝するっぽい。(内部の機械とかの能力も遺伝されるのか?)


156話 響の一番長い日 後編

 

 

 

 

 

 

 シトシトと振る雨の中、最早朽ちたビル。

 ひび割れた壁にはヤモリが這い雨宿りしていた虫を食べ目をキョロキョロさせる。

 直後、異変を感じその場を離れた。

 

 

 

 

「パイロット、急いでくれ!」

「座礁はあのビルよね?」

「あの馬鹿、先走りやがって」

 

 特異災害の用意した政府のへり。

 乗員していた翼たちはパイロットを急かして廃墟となったビルに近づく。

 雨が降っているが、構わずヘリの扉を開け響の母親たちと未来が捕らえられてるだろう廃墟のビルを見る。

 

 恐らく、先に飛び出した響が既に突入してるだろう壁の一部から既に土埃が舞っているのを目撃する一同。

 

「既に立花が突入してるようだ!」

「アタシ等も、アイツの開けた穴から行くか?」

「いえ、全員で同じ場所から突入したら一網打尽にされる可能性があるわ」

「なら二手に分かれて屋上から……」

 

 クリスが響が開けた壁の穴に入るか聞くと、子供マリアが一網打尽を警戒する。

 ならば、セレナが二手に分かれる提案をしようとした時、ビルの中から轟音が聞こえた。

 

 翼たちが何事かと再び廃ビルに目を向けると、響が開けた穴の反対方向から轟音と共に煙が噴き出す。

 少なくとも、ただ事ではないが分かった。

 

「四の五の言ってる場合じゃねえ!」

「皆、行くぞ!」

 

「! 待て、最初に空いた穴に未来が居るぞ!」

「なら、私と雪音が小日向を助けに行く!」

 

 響が動いてる可能性が高い以上、早期に合流しようと追いかけようとするが、クリスが響の開けた穴から未来の姿を確認した。

 ならばと先に未来の保護しようと翼とクリスが行くと提案する。

 当初とは違うが、翼たちシンフォギア装者たちは二手に分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お母さんが死んだ! 

 憎い……! 

 お祖母ちゃんも殺された! 

 憎い憎い!! 

 お父さんも殺されて私の家族は全て居なくなった……

 憎い憎い憎い!!! 

…………殺してやるっ!! 

 

 自分の頭がカッとなってる事が分かる……このままじゃいけない事も頭では分かってる

 でも! 目の前のコイツだけは許せない!! 

 

「酷いなぁ~いきなり殴るなんて、お母さんたちにどんな教育されたの!? ぷんぷんっ!」

 

「お前がお母さんたちを語るなああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 怒りが私を支配している……心も目の前の偽物を殺せって言ってる

 体が黒くなってる……あの時と……カ・ディンギルの決戦と跡地での戦いと同じだ

 怒りに私の意思が飲み込まれる……

 

 

 

 

 響の顔も体も黒が塗りつぶしていく。

 最早、響は抑えられぬ怒りにより聖遺物ガングニールが暴走してるのだろう。

 しかし、黒く染まっても赤い眼はクローンの響を睨み続け獣の様に指が尖った腕を振り下ろす。

 

「あれ? 雰囲気が違う、しょうがない……変身」

 

 流石のクローン響も響の姿に驚くが直ぐに変身と言い、自分もシンフォギアを纏う。

 クローン響のシンフォギアも響と同じだが、腰にはゲルショッカーのシンボルである蛇に巻きつかれた鷲のエンブレムが彫られているベルトをしていた。

 

 黒く変色した暴走した響とゲルショッカーが造り上げた響のクローンのシンフォギア装者。

 互いの拳が交差する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丁度、二人のぶつかり合いはビルの反対側に来た特異災害のヘリでも目撃できた。

 壁が崩れ天井部分も崩落するが、黒く染まった響とベルトをしたクローンの響が交戦している。

 

「どういう状況だ、これ!?」

「立花響と立花響!?」

「恐らく片方はゲルショッカーが用意したショッカー響だろ! ベルトをしてるし」

「っという事は、あの黒いのがもう一人の私!?」

「……暴走してる」

 

 遠目だが、二人の響が戦いまたショッカー響が現れたかと思った一同。

 しかし、この世界の響が暴走してる事に気付く。

 暴走してる以上、敵味方見境ない可能性があるがカ・ディンギル跡地での暴走では敵だけを攻撃していた事を思い出した並行世界のツバサとクリスは、皆を説得して暴走する響の援護に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 朽ち果てたビルの壁が何かに当たり粉砕する。

 壁が砕けると共に土埃が舞う。

 何かが飛んできた先の方には拳を構えたクローンの響が居る。

 

「……来るか」

 

 そう呟くと共に待っていた土埃から轟音が聞こえると何か黒い物が飛び出す。

 暴走した響だった。

 

「がああああああああああああああッ!!!」

 

 飛び出した響は獣のような咆哮を上げ腕を槍のように尖らせクローンの響に迫る。

 しかし、クローンの響は響の突進を紙一重で避けすれ違いざまに響の顔に拳を叩き込む。

 

「攻撃も早さも上がってるけど、動きが単調だね。 その程度なら見て躱すのも余裕……でもな」

 

 ボクシングの動きをし、そう言うクローンの響。

 ゲルショッカーの装置により、大体の格闘術が使えるよう調整されている。

 

「防御力も想定より高いな……」

 

 クローンの響がそう呟くと、クローンの響の拳を受けた響が咆哮を上げる。

 どう見ても、大したダメージを受けてるようには見えない。

 咆哮する響に改めて拳を叩き込もうとしたクローンの響。 だが、

 

「!」

 

 目前に迫る響にカウンターを狙っていたクローンの響だが、嫌な予感がしたのか咄嗟にその場から離れる。

 直後、クローンの響の居た場所に赤い矢が何本も刺さる。

 

「これって……」

 

「……チィ! 不意をついた筈なのになぁ」

 

 その赤い矢を見て何かを悟るクローンの響。

 矢が外れた事を残念そうに言う並行世界のクリスが暴走する響の横に着地する。

 更には、並行世界のクリス以外の装者たちもクローンの響を囲むように着地し、クローンの響を包囲する。

 

「ガアアアアアアアアアアアっ!!」

 

「お願い止まって!」

「そのまま抑えてろ、立花! だが、なるべく顔は見せるな!」

「下手に見せるとお前が襲われるからな」

 

 暴走してる響をヒビキが背後から抑え込む。

 勝手に動かれるのも怖いが、同じ顔の並行世界の響を襲う可能性がある以上野放しには出来ない。

 並行世界の響に抑えられた暴走した響が咆哮を上げ、ビリビリした空気を感じる一同。

 

 クローンの響も自分を取り囲むシンフォギア装者たちを見回した後、翼たちに顔を向ける。

 

「酷いよ、()()()()()()()()()()() いきなり攻撃するなんて、私達親友でしょ!?」

 

「……何言ってんだコイツ?」

「喋り方は立花より若干幼く見えるな……」

 

 クローンの響の言葉に眉をひそめる並行世界の翼とクリス。

 腰のベルトでゲルショッカーの用意したショッカー響だとは分かるが、今までとは毛色が違う事に戸惑う。

 ウェル博士曰く、今までのショッカー響はショッカー好みの犯罪者のデータが人格として使われていた。

 それが、目の前のクローンの響はどっちかと言えば自分たちの知る立花響に近い。

 

「今更、懐柔策にでも来たのか?」

「……なら、腰のゲルショッカーのベルトは外すべきだったわね!」

 

 ゲルショッカーの目的は分からないが、響の偽物なら倒せばいいと子供マリアが槍でクローンの響に突撃する。

 子供マリアがアームドギアの槍をクローンの響に振り回すがクローンの響はガングニールのガントレットで防ぎつつ回し蹴りを子供マリアに放つ。

 

「!?」

 

 何とか躱した子供マリアがクローンの響から一旦距離を取る。

 その額には汗が流れる。

 その動きに子供マリア以外のシンフォギア装者とアナザー切歌が臨戦態勢に入る。

 尤も、暴走した響を抑えてる並行世界の響は別だった。

 

 そして、全ての装者がクローンの響を攻撃する。

 平行世界の翼とアナザー翼の剣が、奏と子供マリアの槍が、二人のクリスとアナザー調の援護の弾丸がクローンの響を襲う。

 

 流石のクローンの響も一撃二撃捌いても、無数の攻撃を全て捌くことは出来ず攻撃を喰らってしまう。

 しかし、多少のダメージを喰らおうとクローンの響を倒せる程ではない。

 

「固い!?」

「シンフォギアでも耐えられない筈なのに!」

 

 クローンの響の硬さに舌打ちをするアナザー翼とセレナ。

 これがノイズなら既に何十体も倒せる程の攻撃の量を叩き込んだにも関わらずクローンの響のシンフォギアは未だに健在だ。

 

「どうして!? どうして私を攻撃するの!? 私は響だよ!」

 

 何より、シンフォギア装者たちを混乱させたのはクローンの響の言葉だった。

 攻撃をする度に「止めてよ!」「痛いよ!」と泣き言を言うのだ。

 その泣き言も言うだけなら兎も角、しっかり反撃もしてる姿に並行世界の翼たちも頭に❓が付く。

 

「今までのショッカー響と違う?」

「もしかして、演技?」

「演技にしても腰のベルトで台無しだろ」

 

 思いもよらないクローンの響の泣き言に戸惑う並行世界のシンフォギア装者たち。

 演技をするにしろ、腰のゲルショッカーのエンブレムが入ったベルトの所為で本物の響では無い事は直ぐに見抜かれている。

 なのにも、目の前のクローンの響は自分たちと敵対する気が無いような事を言っている。

 全てがチグハグと感じ、子供マリアすら攻め手を落としてしまう。

 

「……そうか、まだ私が本物じゃ無いから。 ……だから皆ワタシを虐めるんだね」

 

「おま……何を言って……」

「虐め?」

 

「早く……早くオリジナルの()()()を私の物にしないと!」

 

「「!?」」

 

 クローンの響は発言に並行世界の翼とクリスが反応する。

 平行世界の響は、暴走する響を抑える事に集中し聞こえなかった。

 平行世界のクリスが聞き出そうとするが、それよりも早くクローンの響は平行世界の響が取り押さえてる暴走してる響に拳を振り上げ突っ込む。

 

 いきなりの事で、反応が遅れる並行世界のシンフォギア装者たち。

 そして、クローンの響の動きに気付いた暴走してる響も、抑えてる平行世界の響を振り払い腕を槍の状態にして突っ込む。

 

「うわっ!?」

「止めろ!」

「どっちを!?」

「間に合わないわよ!」

 

 慌てる並行世界の翼たちを他所に、腕のジャッキを既に引っ張り上げたクローンの響の拳と暴走した黒い腕の響の拳がぶつかり合う。

 今までにない轟音と衝撃波を生身で感じる平行世界のシンフォギア装者たち。

 ぶつかり合った腕の方は、未だに火花を散らしお互いの腕だったが暴走した響の腕の槍に亀裂が走る。

 

『なっ!?』

 

「勝ったっ! ……!?」

 

 暴走した響の槍状の腕の亀裂に息を呑むシンフォギア装者たち。

 クローンの響も勝利を確信した、瞬間だった。

 亀裂は暴走した響の槍だけでなく、クローンの響の腕にも亀裂が走り血が噴き出す。

 そして、驚きと痛みで腕を引いてしまう。

 

 直後、暴走した響の槍が砕けると其処から拳が飛び出しクローンの響の腕を粉砕して顔面にクリティカルヒットする。

 暴走した響の拳をまともに受けたクローンの響が後退りした瞬間、もう片方の暴走した響の腕がまたもやヒットする。

 右左右左と交互に暴走した響の拳がクローンの響を襲う。

 遂には立っていられなくなったクローンの響が瓦礫の上に倒れるが暴走した響の拳が止まることは無く、寧ろ腕の速さも力も上がっていきクローンの響の血が飛び散る。

 殴る音と共に暴走する響を中心にクレータが出来、徐々に大きくなるが殴るのを止めない響。

 同時に、暴走時の黒く変色した響の体も下の色に戻っていくが代わりにクローンの響の血が付く。

 

 その光景を黙って見守る並行世界の翼たち。

 暴走する響の余りの気迫に誰も止められないのだ。

 

 しかし、

 

「もう止めて!」

 

 暴走した響から引き剥がされた平行世界の響が暴走した響の振りかぶった腕を止める。

 黒から戻った響だが、その目は未だに赤く、自分を止める響を睨みつける。

 その目には明らかに殺意が含まれていたが、響は身震いを一瞬しただけで暴走した響の腕を離さなかった。

 

「ハナセッ!!」

「駄目だよ、もう一人の私! これ以上はその子が死んじゃう……」

「殺ス為二ヤッテルンダッ!! こいつダケハ……こいつダケハッ!!」

「駄目っ! それじゃあゲルショッカーのやってる事と一緒だよ!!」

 

 平行世界の響には、この世界の響の怒りの原因を知らない。

 それ故、偉そうなことは言えないがこのまま暴走した響がクローンの響を殺してしまう。

 殺してしまえば、もうゲルショッカーと変わらないと平行世界の響は思ったのだ。

 

 しかし、いくら平行世界の響が説得の声を上げようと暴走した響は頑なに拒否する。

 

「……平行世界とは言え、あの馬鹿がああなるんてな」

「一体、この世界の立花に何があったんだ?」

 

「……仇だ」

 

 暴走し頑なにクローンの響を殴り続けようとする響の姿を見て、そう呟く並行世界の翼とクリス。

 響のお人好しの性格も知っているし、この世界の響の性格もある程度把握してはいるが、響がここまで相手を殴る事に固執している。

 その姿は、並行世界の翼とクリスも見た事が無い。

 

 その時、後ろの方から別人の声がし振り返ると未来を連れたこの世界の翼とクリスだった。

 

「未来っ! 良かった、無事だったか」

「……ああ、何とかな」

 

 未来の無事に喜ぶ並行世界のクリスに未来の代わりに答えるクリス。

 その時、並行世界の翼は翼たちから漂う冷たい空気に気付く。

 

「……何があった?」

 

「……響のお母さんとお祖母ちゃんが……殺された」

『!?』

 

 並行世界の翼の問いに未来が答える。

 その内容に並行世界の翼たちは愚か他のシンフォギア装者たちも驚愕の表情をし暴走した響も愕然とする。

 

 

 

 

 

 翼とクリスが未来を救助した際、未来が聞いたと言う悲鳴のした場所に響が行ったと聞いて翼が単身そこに向かった。

 クリスは念のためにと未来の護衛だった為、目撃したのは翼だけだったがその話を聞いてクリスと未来の顔色は悪くなった。

 翼曰く「人間の形をしていない」そうだった。

 

 

 

 

 

「……お母さんと……お祖母ちゃんが……」

「あ……ああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 思わぬ報告に並行世界の響の力が抜け暴走した響が解放されるが、並行世界の響の言葉を聞いた暴走した響の咆哮が辺りに響く。

 その声は怒りが主だったが徐々に悲しみが多くなり赤かった目から大粒の涙が零れる。

 咆哮も次第に響の鳴き声になり母親とお祖母ちゃんを呼び続ける。

 

「お母さん、お祖母ちゃん! 返してよ! 私の家族を返してよ!!」

 

 父も母も祖母も亡くした少女はひたすら泣き続ける。

 これには、並行世界の響たちは愚か、翼やクリス、未来すら響に何も言えない。

 だから、並行世界の響がそっと響を黙って抱きしめる。

 

 同情か、響故の気持ちか皆と繋がりたいと言う孤独が嫌いな少女だからだろうか。

 それとも、下手をすれば自分も同じだったかもと思ったが故か。

 泣き叫ぶ少女()を抱きしめ続ける。

 誰もが戦いは終わったと思った。

 

「……るいよ」

 

「ん!?」

 

 その時にか細い声が聞こえて来た。

 皆が一斉に声のした方を見ると、響に殴られ続けたクローンの響が響を睨んでいる。

 既に、響が殴って出来た負傷も消えつつある事がシンフォギア装者が臨戦態勢を取るがクローンの響は倒れたまま口を開く。

 

「ズルいよ! 何でオリジナルばっかり良い思いして私にはないの!? こんなのあんまりだよ!」

 

『…………ハッ!?』

 

 響たちはクローンの響の言葉を理解出来なかった。

 クローンの響からは子供の癇癪に近く、本当に自分たちと敵対してるか、本当にゲルショッカーの刺客なのか疑いも出て来る。

 更には、自分のした事も理解出来てるのか分からない。

 

「ね……ねえ、アナタは……」

 

「やだやだやだっ! 翼さんもクリスちゃんも皆優しくしてよ! 一人ぼっちはイヤだよ!!」

 

 並行世界の響がクローンの響に声を掛けようとするが、クローンの響はひたすら癇癪を垂れ流す。

 まるで、小学生の低学年が仲間外れにして不満を注意にぶちまける如く。

 

 並行世界のシンフォギア装者は愚か、並行世界の響も正気に戻った響すらドン引きする。

 そして、クローンの響の視線は未来へ向かう。

 

「未来っ!」

 

「!?」

 

「私達、親友だよね! お願い、手握って! 一緒に遊びに行ったり一緒に寝たりお風呂に入りたいよ!!」

 

「「「うわ……」」」

 

 並行世界のシンフォギア装者たちも此処まで醜い一方的な主張を聞いた事が無い。

 並行世界の響すらクローンの響を汚物を見るような目で見ている。

 少なくとも、並行世界の響にとっては、嘗ての人形よりも話したくも無い感情だった。

 

「ふざけないでっ! アナタなんか響じゃない、私の事を親友なんて言わないで!!」

 

 大きな少女の声が響く。

 皆の視線が一斉に声の主……未来へと向かう。

 

 未来は許せなかった。

 響の父親を殺し響の体を改造して人間でなくしたショッカーを。

 更に響きの母親と祖母を殺したゲルショッカーとゲルショッカーの用意した目の前の響の偽物を。

 そんな偽物に「親友」だと言われ毛が逆立つほどの怒りを未来は感じクローンの響の言葉を全て否定する。

 

 未来に否定されたクローンの響は暫し呆然とする。

 やがて、

 

「……ウソだ……嘘だよ、未来が私を否定するなんて……ねえ、皆!」

 

 未来に否定されたのが認められないクローンの響は、翼やクリスに並行世界の響たちに声を掛けるが帰って来たのは沈黙と冷たい視線だけだった。

 それだけでだが、クローンの響はそれで全て悟る。

 

「イヤダ……イヤダイヤダ! コレじゃ、何のために私は……アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァっ!!」

 

「うおっ!?」

「次は何だ!?」

 

 癇癪を起こしていたクローンの響だったが、突然の悲鳴に頭が痛くなる翼たち。

 次は駄々でもこねるのかと考えたがクローンの響が胸を抑え苦しそうにしている。

 一瞬、自分たちの気を引く為の仮病かと思ったがクローンの響の体から煙のような物が出ている。

 

「おいっ!」

「これは……」

 

 クローンの響の叫び声は続き、とうとう体から炎が上がり広がっていく。

 流石の、響たちもこれには目を丸くし急いで消火作業をしようとした。

 

 

 

「存外役に立たんか」

 

 その時、何処からともなく聞き覚えのある声に皆の視線が一斉に動く。

 視線の先には、瓦礫の上で此方を見るブラック将軍の姿が。

 

「ブラック将軍!」

 

 誰かがブラック将軍の名を言うが、ブラック将軍は意に返さずクローンの響に視線を送ってる。

 

「ゲルパー液が切れたか、呆気ない幕切れだな」

 

「はっ、こんな見え見えの偽物なんかに今更引っかかるかよ!」

「目論見が外れたな、ブラック将軍!」

 

 目的は分からないが、クローンの響を利用し自分たちを混乱させ同士討ちでも狙ったのだろうと判断する翼たち。

 しかし、その手には引っかからないとブラック将軍に言うクリス。

 だが、クリス達の言葉を聞いてもブラック将軍の笑みは崩れなかった。

 

「偽物? 心外な、それは紛れもなく立花響だ。 ……まあ正確には立花響のコピーだがな」

 

『!?』

「コピーだと!?」

「一体如何言う事だ!」

 

「……もしかして」

 

 ブラック将軍の言葉に反応する響たちを他所に、未来は思い出した。

 つい先ほど、奇妙な老人が話した響のクローンの事を。

 

 その後、ブラック将軍の口から語られるクローンの響の正体を聞く一同。

 ブラック将軍が話していく内に愕然としていく一同、響たちに至っては顔色すら悪くな未来は答え合わせを聞いた気分になる。

 

「……あれが……あれがあいつ自身だって言うのかよ!」

「冗談にしちゃ笑えないわね」

 

「ククク……いくら否定しようがその失敗作の中身は立花響の思い出と性格だけよ。 尤も、その思い出もショッカー時代に立花響が捕らえられていた間の物だけだがな」

 

 ブラック将軍が語るクローンの響の情報は未来が効いた通りの物だったが、伝えられてない情報もあった。

 クローンの響の思い出は立花響の記憶が使われていたが、それはショッカーが立花響を拉致し監禁してる一年半程度だった。

 つまり、クローンの響には中途半端な思いでしか無かったのだ。

 

「でも、それが一体……」

「……随分とえげつないマネをするわね」

「悪趣味にも程がある!」

 

 アナザー翼がクローンの響の中途半端な記憶の意味が分からないようだったが、子供マリアやアナザークリスがそれの真の意味に気付きブラック将軍を睨みつける。

 

「え? 如何言う事!?」

「つまり、あの馬鹿の偽物には中途半端な記憶しか無くてアタシ等の事も未来の事も知らないって事だ」

「付け加えるなら、苦しい時の思い出しかない立花響に友達と楽しそうにしてる別の立花響の姿を見せる」

「……たぶん、その時の私の心は地獄だよ」

「!?」

 

 今一、子供マリアたちの説明を聞いても分からなかった並行世界の響に説明する一同と最後の響の言葉でやっと理解した。

 

「まぁ、そこまで労力のかかったクローンも所詮はゴミだったという事だ」

 

 クローンの響の真の意味を理解したシンフォギア装者たちの表情を見たブラック将軍は、満足そうにそう言いのける。

 そう、ブラック将軍はクローンの響が勝とうが響たちシンフォギア装者たちが勝とうがどちらでも良い。

 クローンの響が勝てば復讐にかられた残ったシンフォギア装者たちと戦い、負けても響の母親と祖母の殺害で十分目標は達成されている。

 

 見れば、ゲルパー液の切れたクローンの響も完全に燃えカスとなり、この世から消滅していた。

 ブラック将軍の様子からして既に用済みだと気付く響。

 

「ブラック将軍っ!!」

 

「今更になって親類の殺された怒りか? どうした、何時ものように歌ってみろ?」

 

 響がブラック将軍の名を叫びジャッキを引っ張って突撃する。

 突然の動きに並行世界の響たちが動けなく呆気に取られていたが、ブラック将軍だけは先程の笑みを崩さず響の拳がくるのを見ていた。

 背中のブースターも火が噴き、響の動きが加速しその拳がブラック将軍に届いたかに見えた。

 

「イノカブトン、トゲ車っ!」

 

「!?」

 

 しかし、寸前に回転する者が響に当たると共にぶっ飛ばされ、直後にブラック将軍の横に誰かが現れる。

 吹き飛ばされた響は瓦礫に突っ込み並行世界の響たちが声を出す。

 

「もう一人の私っ!?」

「あれはっ!」

 

 ぶっ飛ばされた響を呼ぶ並行世界の響。

 突然現れた者の正体を見る翼たち、それは。

 

「予定より遅かったな、イノカブトン」

「……ハッ!」

 

 響の邪魔をしたのはイノカブトンであった。

 イノカブトンの姿を確認した翼たちの目付きが変わると共にそれぞれがアームドギアを握り臨戦態勢に入る。

 

「さて、ここは退く事にしよう」

 

「「「なっ!?」」」

 

 ブラック将軍の口からアッサリと撤退の言葉に絶句するシンフォギア装者たち。

 このまま此処で戦うと思っていたから余計にだ。

 これには、瓦礫に吹っ飛ばされた響も瓦礫を押しのけ出て来る。

 

 その時、翼たちの前に上から何かが降って来た。

 土埃が舞う中、その落ちて来た者はギロリとイノカブトンを睨みつける。

 

「待ってくれ、石屋さん!」

 

「……風鳴か」

 

 何と、降って来たのはヘリで響たちに指示を出していた源十郎だった。

 源十郎の声にイノカブトンが反応する。

 

「何故だ、何故ゲルショッカーなんかに手を貸している! 貴方ほどの人が……何故!」

 

 イノカブトンの人間体である石屋恭二。

 その人物は嘗ての公安での源十郎の上司であり、源十郎も唸る程のやり手であった。

 そんな人物がゲルショッカーに協力してる事が納得できない源十郎はどうしても石屋自身に問いただしたかった。

 

「俺には……俺にはアナタがゲルショッカーに協力するなど信じられない! まさか、洗脳でもされたんじゃ!」

 

 必死に訴える源十郎の姿を見るイノカブトン。

 すると、イノカブトンは人間体の石屋に戻り改めて源十郎と目を合わせる。

 

「石屋さん!」

 

「風鳴、お前は俺を過剰評価しているだけだ。 俺は俺の意思でゲルショッカーに入った」

 

「! 何が……何がアナタをそうさせた!?」

 

 石屋からハッキリと自らゲルショッカーに入ったと聞いた源十郎はショックを隠し切れずにそう言う。

 源十郎の記憶には嘗ての上司であり、責任感も能力もあった尊敬すべき御仁だった。

 その男からハッキリと言われた事で怒りや悲しみといった感情が渦巻く。

 

 源十郎の突然の説得に軽く混乱する翼たち。

 そして、源十郎と石屋のやり取りを欠伸して見るブラック将軍。

 

「……昔の俺は死んだ。 二年前のあの日にな……」

 

 石屋はそれだけ言うと、ブラック将軍と共に姿が消える。

 辺りには雨の中、響たちだけ取り残された。

 

 響はブラック将軍が完全に消える足の力が抜けゆっくり地面に倒れる。

 

「! 立花っ!!」

「おい、どうしたんだ!?」

「まさか、ブラック将軍が何かしたデスか!?」

「……いえ、たぶん心労が重なった事とブラック将軍が退いた事で緊張の糸が切れたのね」

「! 急ぎ救急ヘリを急げ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブラック将軍が退いた事により、響たちが辛うじて勝利した。

 しかし、ゲルショッカーは遂に響の母親と祖母を惨殺し、天涯孤独の身になる響。

 怒れ響、その怒りを力にしてゲルショッカーを倒すのだ。

 ゲルショッカーが滅びるその日まで。

 

 

 

 

 




本編響もXDでも絶対言わなかっただろう、響の「殺してやる」
大事な物を奪われ続けた少女のぶち切れ、元の響も同じ目に合えばどうなるか?

ゲルショッカー響が子供っぽい自分勝手な性格に見えますが、そういう風にゲルショッカーが調整しました。
そもそも、この作戦自体戦略性は無く響に対する報復兼嫌がらせ、でしかありません。
それもあって、ゲルショッカー響はアッサリ倒されるのも計算通りと言えます。
尤も、ブラック将軍としては一人か二人位のシンフォギア装者を葬りるかと思ってました。

そして、原作より暴走する響。
テレビ版の敵より響の精神を削ってくるから仕方ない。


それでは、最後にゲルショッカー響の設定でも。




ゲルショッカー響。

ショッカー時代から製造されたショッカー響の改良版。
スペックだけなら、オリジナルの立花響を越えてるのに何故勝てないのかゲルショッカー科学陣とブラック将軍が真剣に考えた結果、思考を本来の立花響のものをトレースする方法だった。

しかし、元来の響の性格を植え付ければ当然ゲルショッカーの命令を聞く可能性は低い課題が出る。
そこでブラック将軍は、あらゆる拷問凌辱で響の精神を破壊し並行し植え付ける立花響の思い出はショッカー時代に幽閉されていた物だけを使う事になる。

その結果。ほぼ響の人格でありながら目的の為には残虐な事も出来るゲルショッカー響となった。
尚、中途半端な記憶と響の従来の性質である「繋がる」により、本来の響以上に他者との繋がりにこだわり執着していた。

最後に、ショッカー響以上に立花響のクローン体を使い潰しコストも爆増した為、従来のショッカー響の方がゲルショッカーには需要がある為、ゲルショッカー響の量産計画は敢え無く打ち切られた。




こんな感じです。

後、144話の獣のような悲鳴の正体もクローンの響の物です。
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