響がショッカーで改造手術を受け一週間後、死神博士の改造手術も終わり響はショッカーの訓練所へと来ていた。
「ヒィヒィヒィヒィ、お前が立花響か?俺はお前の担当教官のサボテグロンだ。首領にお前を戦えるよう仕込めと言われている」
響の前に全身緑の口元が赤いショッカーのベルトをしている怪人が訓練所に先に居た。名前からしてサボテンの怪人だろうと考えた響はサボテグロンに頭を下げる。
「よろしくお願いします!」
「…カラ元気でないといいがな」
元気よく挨拶する響にサボテグロンは訝しげに喋る。
━━━この娘、本当に脳改造を受けてないのか?聞いた話では拉致された後にショッカーに入りたいと言ったらしいが…
サボテグロンは響が積極的にショッカーに入った事を怪しんでいた。脳改造も受けずにショッカーの為に働けるのか疑問もあった。
━━━…まあいい、首領も死神博士も認めた以上俺がとやかく言うことではない。仮にショッカーを裏切っても俺の所為では「ところで教官」ない…
思考に耽っていたサボテグロンに響が話しかける。
「何だ?」
「私はもう
全てを失った響はもう立花の苗字を使う気はなかった。自分を捨てた家族や親友だと思っていた女と一緒に居た
「ほう~」
内心サボテグロンは驚いていた。
━━━小便臭いガキかと思えば、気合はいっちょまえか…いいだろう
「いいだろう、徹底的に鍛えてやる」
「はい!!」
サボテグロンの言葉に響は笑顔で返事をする。そしてサボテグロンの戦闘訓練が始まった。
「遅いぞ!そんな動きで敵を殺せるか!」
「はい!」
サボテグロン自らが組み手をしたり、
「ヤー!」
「イーッ!」
「もっと腰を入れろ!そしてもっと周りを見ろ!」
複数の戦闘員と戦わせたり
「ハア、ハア…」
「ペースが落ちてるぞ!もっと体力をつけろ!」
ひたすら訓練所の中を走らせたり響を鍛えに鍛えていた。そうして、その訓練を何度も繰り返していく内に想定よりもドンドン力を上げている響にサボテグロンも驚く。
━━━この娘、最初は改造された体に振り回されていた筈が今では大分力を制御している。それも予想以上に速い、慣れたのか?流石は死神博士の最高傑作ではある
ショッカーの怪人にはかつてナチス・ドイツで研究されていたと言われる動植物の能力を移植手術もちいた技術を使っていた。サボテグロンならサボテン、蜘蛛男は蜘蛛と、そんな中、響は動植物の能力は移植されず人間としての能力のみ上昇させていた。全ては響の心臓にあるガングニールの欠片の為だ。
聖遺物ガングニール。聖遺物とは世界各地で神話や伝承で登場する超常の超常の性能を秘めていると言われる武具だ。現在では製造不可能と言われいる
ノイズ。人類共通の脅威と言われ有史以来から確認されてると言われる者たち。人間のみを襲い触れた人間諸共炭素化する能力を持つ。更に位相差障壁が更に厄介であった。これによってノイズは世界をまたぎ物理干渉を無効にし人間の持つ兵器では傷一つ付ける事が出来ない。一部例外もあるが、それはおいそれとは使えない手だった。
そして、ショッカーにとってもノイズは面倒くさい相手だった。これまで何度も作戦中にノイズが乱入しては失敗を繰り返し、ショッカーもノイズ対策をしなければならなくなった。
しかし、聖遺物の確保に失敗したショッカーは別の形でアプローチするしかなかった。そう改造手術だ。ショッカーの持てる技術をより高め怪人をさらに強くし、ノイズに対抗しようとした。その結果はノイズの位相差障壁一時的無効に出来る技術を得たがそれだけだった。強い怪人も2~3体のノイズを倒したら灰になって消滅する。基本的に群れで現れるノイズにはこれは致命的だった。何より割に合わない。それなら戦闘員を大量に作り突撃させた方がマシだった。
やはり、聖遺物の確保は急務と思われた矢先に一つ情報が送られてくる。聖遺物の欠片が立花響の心臓にある事が。首領は直ぐに立花響の確保を命令して蜘蛛男が雨の中、学校の屋上で泣いていた立花響を確保し、アジトへと連れ込み徹底的に響の体を調査を行った。その結果、ショッカーにとって興味深い事が分かった。立花響の心臓の聖遺物が融合を始めている事を。本来なら心臓だけを取られ聖遺物の欠片を研究しようとしていたショッカーにある考えが浮かんだ。それが、立花響の改造手術だ。
ショッカーとしては、改造人間として狙う人間は優秀な頭脳と強靭な肉体を持った者が理想で立花響はどちらにも該当するとは言い難かった。それ故に、当初ショッカーは響に期待もしていなかった。怪人にしその後に脳改造して洗脳すればいいかと思ってた程だ。しかし、事前の情報と違い響は自らショッカーに入りたいと言い出したのだ。ショッカーとしては、立花響が改造人間としてどの位役に立つかは未知数だが、同時に心臓の聖遺物の調査も出来ると考え響を洗脳せずにいたのだ。
「ふう~、今日の所は此処までだ」
「ハア…ハア…ありがとうございました」
━━━模擬戦でも俺が押され出している。一月経ったとはいえ想定外だ。最早、俺では訓練相手にもならんか…死神博士に要請してみるか
サボテグロンが響を鍛えだして一月、今日の訓練が終わったと言って響を休ませる。響の体にはサボテグロンが付けた傷が幾つもあったが10秒もせずに全てが治ってしまった。己の限界を悟ったサボテグロンが死神博士にある要請を出す事を決めた。そして、響はシンフォギアと呼ばれる姿から通常の服装に戻る。今の響はショッカーから支給されたジャージを着ていた。運動により汗だくの響は戦闘員が用意した水を貰う。
「…ありがとう」
「イーッ」
響に礼を言われた戦闘員は一声鳴いてその場を去って行った。気付けばサボテグロンも既に移動してこの場に居なかった。一人休憩する響。
「今日の訓練は終わったのかい?響」
そんな響に声を掛けてきた者が居た。視線を向けた先には青いタイツを着て胸には幾つもの黒と黄色のリングが書かれ目が複眼になってる女性怪人。
「蜂女さん、はい今日の分は終了です」
響が笑顔で答える。響にとって蜂女はこのアジトで一番仲の良い怪人だった。ショッカーには女性の怪人は少なく響も同性という事もあり、何より自分より先輩という事もあってよく目をかけてもらっていた。
「他の怪人に虐められてないよね?もし居たら私に言いな、とっちめてやるから」
響と接する内に姉御肌になった蜂女がそう言った。ショッカーは良くも悪くも実力主義と言える。世間では男女平等と叫ばれる中、ショッカーには関係ない。実力さえあれば幹部や大幹部となるが一番偉いのが首領という事は変わりない。
「フフフ…」
「笑う事ないじゃない」
蜂女の言葉に思わず笑ってしまった響。その反応に少し不機嫌になる蜂女。響はショッカーのアジトが居心地が良く感じた。
アジトのとある一室。戦闘員はおろか怪人でも入室を許されない部屋で死神博士が立っていた。死神博士の前にはショッカーのシンボルである地球の上に鷲のマークがある。そして鷲の胸が緑色に光り首領が喋る。
『死神博士、聖遺物怪人の方は順調か?』
「お喜び下さい、首領。立花響の力は想定以上に高まってます。現在の時点で初期の怪人達を上回りつつあり、実践投入はそう遠くないかと」
『ほう、如何やらショッカーに入りたいと言ったのは本気のようだな』
「それから、首領。サボテグロンより報告です。「もう俺に教える事は何もない。代わりの教官を派遣してくれ」だそうです」
『そんなにか、ならば中東よりあの男を呼び出す。奴ならば、聖遺物怪人の力をより伸ばせる筈だ』
「と言う訳、今日よりお前の教官となったゾル大佐だ。大佐と呼んで構わんぞ」
「は、はい!」
数日後に響は軍服を着てアイパッチをした男、ゾル大佐の前に立っていた。サボテグロンから近々、別の教官が来ると聞いていたが人間の姿で来た事に驚いた。
「首領はお前に期待してるようだ。せいぜい励むのだな」
「首領が?…はい!」
ゾル大佐の言葉に響はより気合を入れる。その日から響の訓練はより実践的になった。戦闘員の代わりに複数の怪人と戦い、武器の適性を見られたり簡易な爆弾の作り方や潜入工作のやり方、そして、ゾル大佐得意の変装術など色々仕込まれた。
そして、半年の時が過ぎる。
「あの~大佐、次は何を?」
響が椅子に座って聞く。現在、響の前には学校にあるような黒板が置かれゾル大佐が黒板の前に立っている。
「何を?決まっている、座学だ。戦闘訓練は十分やった、貴様も幹部を目指すのなら勉強しろ」
「勉強…私、別に幹部になりたい訳じゃ「向上心の無い者をショッカーに必要だと思うか?」…やります」
勉強が苦手な響。まさか悪の組織で勉強させられるとは思わなかった。内容は主に戦術や戦略、部下の戦闘員をどう動かすか、人間の効率的な殺し方に拷問の仕方に心理学。敵地に潜入した後の破壊工作等々…結果は、
「…落第点だな」
「…久しぶりの勉強だったんで…」
響は座学が苦手だと知ったゾル大佐は今後の事を考える。
━━━座学は諦めるべきか?優秀な副官をつければ幹部としてもやっていけると思うが…戦闘は悪くはない。戦闘能力のみ伸ばすか
「…久しぶりなら仕方あるまい。よくやったぞ響」
「あっ…」
褒めるゾル大佐は響の頭を撫でる。元軍人であるゾル大佐は飴と鞭を響に与える。響のやる気を保つ為に。
━━━脳改造していれば、この様な手間の必要ないのだがな…
内心面倒に思いつつもゾル大佐は己の職務を全うする。一方、撫でられた響はゾル大佐の武骨な手の感触に懐かしさを感じた。
━━━この感覚…昔同じことをされた…優しかったお父さん…!
響の脳裏に嘗ての父親との思い出が蘇り頭を振る。いきなりの事にゾル大佐も思わず手を離した。
━━━何だいきなり、親しげにし過ぎたか?小娘の扱いなんか分からんぞ!
「…大佐!」
「何だ?」
「…お父さんと呼んでいいですか?」
「駄目だ」
響が顔を赤くして願うがゾル大佐は拒否する。並みの男なら響の可愛さでいけるだろうが、ゾル大佐はショッカーの大幹部。下手に部下達に見られれば威厳が台無しになると考えた。しかし、断られた響が目に見えてテンションが落ちてる事に気付く。まるで叱られた犬のようだ。
━━━そんなに落ち込む事か?このままでは訓練への影響も出るか……そう言えばこのアジトに到着した時にある報告を受けていたな…
ゾル大佐はアジトに到着し響と会う前に戦闘員からある報告を受けていた事を思い出しニヤリと笑う。
「だが、そうだな…テストをして合格すれば考えてやっていいぞ」
「本当ですか!?」
思わぬ返事に響はゾル大佐に迫る。逆にゾル大佐はちょっと引いた。響の頭には座学のテストの可能性が丸ごと抜けていた。ゾル大佐は響と共に訓練所を後にし戦闘員に例の三人を部屋に連れて来るよう命じる。
そして、部屋に到着して中に入るとそれなりの広めの部屋に三脚の椅子に三人の人間が縛られて座らされていた。体つきから男一人女二人その内の一人は年がいっている事が何となく分かった。どの人間も頭にずた袋を被せられ誰かは分からない。
「あの、大佐これって…」
「お前の為に準備した物だ。これを付けろ」
そう言って、ゾル大佐は響に戦闘員のかぶる覆面を渡す。理由が今一分からない響だが命令である以上、覆面を被る。被り終えた事を確認したゾル大佐は戦闘員にずた袋を取れと命令し戦闘員はその通りにやった。
「!?」
響は息を飲む、ずた袋から出た顔はあの時消えた響の家族たちだった。ショッカーにとって政府が力も貸してない失踪した者を探すなど造作もない。お父さん、お母さん、お婆ちゃんの三人は口に布の猿轡をされ「ン゛~~~」と何か言っている。
「それも取ってやれ」
ゾル大佐の命令でやっと三人の猿轡が外される。
「一体なんだよ!?」
「此処は何処なんですか!?」
「家に帰しておくれ!」
三人は口々に喋る。怒ってるようで内心は不安だらけの父親。何処に連れてこられたのか不安で仕方ない母親。純粋に家に帰りたいと訴えるお婆ちゃん。そんな三人をゾル大佐はにやつきながら喋る。
「ようこそショッカーに、君たちに来て貰ったのは他でもない。お前達の娘について聞きたい事があってな」
三人は響と聞いた瞬間、嫌な顔をする。
「む、娘?俺達に娘なんていないよな?なあ母さん」
「…そうよ。私達に子供なんて居ないわ」
父親と母親は響の存在を否定してお婆ちゃんも頷く。それを間近で聞く響は何を思うか?
「ほう、つまり貴様らには娘は居ないという事だな?」
「そ…そうだ!」
娘である響の完全否定。此処まではゾル大佐の想定通りだ。
━━━立花響の再調査で判明した事だが、…やはり人間の絆などこの程度よ。さて、仕上げに入るか
「らしいぞ、もういい覆面を取れ」
ゾル大佐の言葉に響は戦闘員の覆面を取る。
「響!?」
「なんでお前が!?」
まるで幽霊を見たような反応する三人にゾル大佐は響に一本のナイフを投げ渡す。
「これは…」
「お前がトドメを刺せ。そしてショッカーに対する忠誠を見せてみろ」
響はまだ人を殺した事が無い。本当にショッカーに忠誠を誓ってるか親殺しをさせようと考えたのだ。
暫く、ナイフを見ていた響はゆっくりと三人に近づく。
「止めて、響!」
「止めなさい!」
「待つんだ、響。お前だけを残したとは言え、僕達は親子じゃないか!」
さっきまでと違い、響を娘として説得する三人。それを聞いて黙って近づく響に楽しそうに観察するゾル大佐と戦闘員たち。そして、響は父親の前に立つ。
「ねえ、何で私だけ置いてったの?」
「悪かった!仕方なかったんだ!でも一部に響の顔写真が流出していて響だけ顔が割れていたんだ!それを母さん達に相談したらお前だけを置いていく事になって…」
「あなた!」
「洸さん!」
家族が響を捨てた理由、それは響の顔写真がネットに流出していたのだ。ご丁寧にツヴァイウイングのライブの悲劇の生き残りの情報付きで。これでは新天地に行っても響を連れて行けない。仮に連れて行っても暫く家から出す事も出来ない。もう今の生活に耐えられなかった家族はアッサリと響を見捨てる事を決め数日掛けて貴重品を移し夜中の内に出て行ったのだ。
それをただ聞いていた響は持っていたナイフで父親の縄を切る。
「響、分かってくれたんだな」
縄を切られた父親が自由になった手で響を抱きしめる。それをつまらなそうに見るゾル大佐。
━━━ふん、やはり身内を庇ったか。小娘ではこの程度だろう、後で脳改造を「アガッ!?」申請…
考え事をしていたゾル大佐の耳に呻き声が聞こえ視線を戻す。戻した先には娘に抱き着く父親とその父親の腹部を刺している娘が居た。それも一度ではない、何度も何度もナイフを腹に突き立てる。遂に床に倒れた父親は腹を押さえ苦しそうにして響を見つめる。
「いやああああああああああああああ!!」
「響…」
母親が叫びお婆ちゃんは絶句し、父親が響の名を呟く。
「もう遅いよ。私ねショッカーに入ったの。ショッカーの改造人間として世界を征服して首領に褒めてもらうの。だから、さようならお父さん」
床に倒れた父親の頭を思いっきり踏みつける。改造人間である響の踏みつけに頭蓋骨は粉砕され辺りに血や脳漿が飛び散る。それを満足そうに眺めるゾル大佐。頭を潰された父親の体は虫の様に痙攣する。
「あ、悪魔!お前は悪魔だ!よくも洸さんを!」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」
夫を殺された母親が響を罵り、お婆ちゃんは念仏を唱える。それを冷めた目で見る響は二人も殺害した。
部屋の中は三人の血で赤く染まり中央に響が帰り血で濡れている。
「やった、やったんだ!私をゴミの様に捨てた奴等を殺してやったんだ!!あははははハハハハハっははははははっはっははははははっはっはっははっはっはははははははッはッははッはは!!」
「ハハハ、よくやったぞ。これでお前はショッカー軍団の一員だ」
響の狂気じみた笑い声にゾル大佐の拍手がなる。三人の死体を片付ける戦闘員はなるべく見ないように早急に行動する。
響は気付かない、見開く両目から大量の涙が出てる事を。ゾル大佐も指摘しない、響の心が壊れようがショッカーには何の関係も無い。心が壊れて使えなくなればそれこそ脳改造すれば問題ないとさえ考えている。
今日、一人の少女は悪魔となった。
パラリラリラ~
響はレベルが上がった。
力が上がった。素早さが上がった。体力が上がった。知能が少し上がった。器用さが上がった。論理感が下がった。人としての何かが下がった。狂気を覚えた。ショッカーへの忠誠度が上がった。ショッカーへの依存が爆上がりした。情緒が不安定になり始めた。
ゾル大佐の信用度が上がった。
死神博士の信用度が上がった。
首領の信用度が上がった。
怪人達の信用度が上がった。
現場に居た戦闘員は若干引いた。
本編では敵対する怪人も此方では響に親切だったりします。