改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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戦闘員がそのままの姿で行動して何度見つかったか。

暑くなってきて案の定、書くスピードが落ちた。
後、パソコンが何度強制的に止まった……


160話 皆を取り戻せ!

 

 

 

 東京のとある港。

 嘗ては、船乗りが行き来し使われ賑わっていたがノイズの災害と他に利便性の高い港が造られ完全に寂れた場所。

 幾つかある港の倉庫も壁がボロボロだったり窓ガラスが無くなり荒廃している。

 嘗ては動いていた船も放置され海の潮風で錆びだらけになり今では魚の住処となっている。

 

 しかし、そんな場所に不釣り合いな物が寄港している。

 特異災害の本部である潜水艦だった。

 

 もう、誰も居なくなった港に一台の車が走る。

 車を運転してるのはゲルショッカーの戦闘員であり何か運んでいた。

 

 ゲルパー薬。

 ゲルパー薬、それはゲルショッカーの鉄の掟。

 裏切り防止の為に戦闘員や一部の怪人に接種させ三時間ごとに飲む事を義務にさせている。

 もし、飲まなければ三時間が経つと死ぬ。

 ゲルショッカーの恐るべき薬である。

 

 この車は、そのゲルパー薬を運んでいるのだ。

 

 

 

 

 

 その車が向かう放置された倉庫の中では、何人もの人影が動く。

 内部には簡素な椅子があり、子供マリアたち並行世界のシンフォギア装者たちと翼とクリスが座っている。

 そして、彼女たちの視線の先にはムカデタイガーとゲルショッカー戦闘員が居り、ゲルショッカーの用意した黒板の前に立つ。

 

「……遅い、ゲルパー薬はまだ到着せんのか!?」

「ギーッ! 報告ではまだとしか……」

 

 ムカデタイガーが傍らのゲルショッカー戦闘員に怒気交じりの声で怒鳴るように言う。

 対するゲルショッカー戦闘員も困った様子で返事をする。

 

「ムヒョオオオオォォォォォッ……ブラック将軍の命令変更でゲルパー薬が遅れるとは! まあ良い、コイツ等の洗脳は俺が居る限り解ける事はない!」

 

 翼たちはムカデタイガーの能力で洗脳されている。

 即ち、ムカデタイガーを倒さない限り翼たちの洗脳を解く方法はない。

 

 本来ならばこの方法で洗脳直後に用意されたゲルパー薬を翼たちに飲ませる筈だった。

 一度飲ませてしまえば仮にムカデタイガーが倒されても残された翼たちには三時間ごとにゲルパー薬を飲まないと死ぬ体だけが残る。

 仮に特異災害がゲルパー薬を造れるようになっても三時間ごとに接種するのは翼たちにとっても莫大な負担になる。

 

 本来はその計画であったが、ブラック将軍が突然の命令変更にゲルパー薬の生産が追い付かずに今に至る。

 だからこそ、ムカデタイガーは椅子に座るシンフォギア装者にゲルショッカーの心得を教えつつ時間を潰していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 港から少し離れた林の中。

 本来なら人っ子一人いない筈の場所に何人かの人間が潜んでいた。

 その内の一人は、双眼鏡で廃棄された港を見る。

 

「……居た、ゲルショッカーの戦闘員だ」

「……っと言うか本部が丸見えなんだけど」

「あれ、隠す気無いよね」

「罠って事?」

 

 双眼鏡で港を見ていた並行世界の翼の呟きに堂々と廃棄された港に本部である潜水艦が停められてる事に顔を引きつらせる並行世界のクリス。

 恐らくは、ゲルショッカーは秘密裏に動いておらず翼たちを助けに来る並行世界の響たちを始末する為のエサだと考えるマリア。

 

 潜水艦だけではない、ゲルショッカー戦闘員が港内を歩く姿も目立つ。

 相も変わらず、ゲルショッカーが本当に秘密結社か怪しくなる。

 

「……緒川さんが言ってた時間まで間もなくだけど」

「あのお爺さん、一人で行動するらしいけど大丈夫デスか?」

「ああ……あの爺さんは大丈夫だろ」

「寧ろ、私達が居ると邪魔になるかな……」

 

 もう直ぐ、緒川たちが行動を起こして囮になり自分たちは港に突入する。

 しかし、訃堂だけは「己一人で行動する」と言い、響たちとは別行動する事になった。

 訃堂の実力を知らないマリアたちは少し心配するが、訃堂の実力を知る並行世界の響たちは特に気にしない。

 寧ろ、訃堂が行く先のゲルショッカー戦闘員や怪人に憐れみすら感じている。

 

「ウェル博士、聞こえてますか?」

『はいはい、聞こえてますよ。 感度良好です』

 

 ギアに付けられている通信機に話しかける翼。

 直後にウェル博士の声で返事が来る。

 

 残念ならが、ウェル博士は戦力外として訃堂の息がかかってる施設で響たちのサポートとして通信している。

 日本政府の持つ監視衛生からこの港を見張り、おかしな動きがあれば響たちに伝えるのだ。

 

「博士の目から見て、ゲルショッカー戦闘員はどの位居るの?」

『外に出て監視しているだけでもかなりの数ですよ、建物内で待機してる可能性もあるから注意しなさい』

 

 ウェル博士がマリアたちに注意するよう言ったその時、港の端の方から爆発が起きる。

 

「爆発っ!?」

「緒川さん達か!」

「ゲルショッカー戦闘員どもが爆発した場所に移動したぞ!」

『外に居るゲルショッカー戦闘員たちが一斉に動いてますよ、気持ち悪いですね』

「私達も行こう!」

 

 通信を切った響たちが一斉に港内までブースターを使いダッシュする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 港にあった建物から炎が上がり、ゲルショッカー戦闘員たちが消火活動を行う中、別の建物の屋上に二人の人影が動く。

 一人は、一見侍の鎧のように見えるコートを着た男でもう一人はこの場には似つかわしく無い白いスーツを着た男だった。

 二人とも下のゲルショッカー戦闘員の動きを見てると何処からともなく緒川が現れる。

 

「兄上、捨くん! そっちの状況は!?」

「……建物に幾つか爆発物を仕掛けたよ」

「陽動は旨く行ってるが、相手の動きが思った以上に良い……」

 

 緒川の言葉に先ず白いスーツの男が答え武者風の男もそう返事する。

 彼等こそ、緒川の兄妹であり協力者だった。

 侍の甲冑のようなコートを着た方が兄の緒川総司でホスト風な男が弟の緒川捨犬だ。

 

「……怪人の姿は無いか……でもこのまま、響さんたちが行けるようもっとゲルショッカー戦闘員を誘導しないと」

「俺の部下達も陽動に徹している」

「僕の方も店の常連客の元傭兵や元軍人に手伝って貰ってるよ」

 

 緒川としては怪人までの陽動は出来なかったが、多数のゲルショッカー戦闘員たちの注意を引き響たちが安全に突入出来ればと考え二人の兄弟にそう言った。

 緒川たちは、そのまま港内で破壊活動をしてゲルショッカー戦闘員たちの陽動に徹する。

 その際に、ゲルパー薬を運ぶ車も爆発四散させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、翼や子供マリアたちの居る倉庫にも外での爆発した音が響く。

 

「……チッ、結局ゲルパー薬は間に合わんかったか、仕方ない……貴様ら外の邪魔者を殺してこい!」

 

 既に特異災害の生き残りが犯行作戦している事を悟ったムカデタイガーは、目の前に要る洗脳された翼たちに命令する。

 最早、ゲルパー薬を翼たちに飲ませる時間は無い。

 ならば自分たちの手で仲間である立花響たちを殺させる。

 仮に洗脳された翼たちが勝とうが負けようがムカデタイガーには如何でもいい。

 理想としては共倒れになって欲しいとも考えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟となった港内を走る響たち。

 普段は、人っ子一人居ない場所に青いタイツを来たゲルショッカー戦闘員が響たちに気付くと襲って来るが普段は複数居る彼等も混乱により疎ら状態で響たちの相手をしようとするが、数の居ないゲルショッカー戦闘員なら十分倒せる響たち。

 

「何時もより戦闘員が少ないね」

「緒川さんたちの陽動が上手くいってるんだろ」

「このまま、この世界のアタシ等を操ってるムカデ野郎の場所まで行ければ……」

「……! そうは問屋が卸さないようね」

「セレナ……」

 

 順調に進んでいたがマリアの言葉と共に自分たちの前に誰かが立ち塞がってる事に気付く響たち。

 響たちの進路上には子供マリアと大人状態のセレナと不通のセレナが居る。

 思わず妹であるセレナの名を呟くマリア。

 

 更には、

 

「やはり生きていたか立花響! ムカデタイガーに変わって、この俺ウツボガメスがお前たちを地獄に送ってやる、ブアアアァァッ!!」

 

 響たちが訃堂の屋敷で見た魚顔の亀の甲羅を背負った怪人が現れた。

 

「コイツ……」

「……ウツボガメス」

「ゲルショッカーの改造人間」

 

 操られたシンフォギア装者たちが妨害する事は予想していた。

 しかし、怪人も出て来る事までは予想できなかった響たちは面食らいつつも臨戦態勢を取ろうとする。

 

「待って」

「此処は私達が受け持つ、お前たちは先に行け」

 

 すると、並行世界の翼とマリアが此処を受け持つと言う。

 即ち、ゲルショッカー怪人ウツボガメスと操られている三人のシンフォギア装者を相手にするという事だ。

 

「おい、先輩にマリア!」

「二人だけなんて無茶デス!」

 

「……全員で戦うにしても時間が掛かる」

「その間にこの世界の翼たちがゲルパー薬を飲まされるわ」

 

 並行世界のクリスや切歌が言う様に全員で戦えば勝てる可能性は高い。

 しかし、その分時間が掛かりムカデタイガーの下に行くのに遅れる。

 その間にこの世界の翼たちがゲルパー薬を飲んでしまえば助けられても手遅れに近い。

 

「でも……」

「遅れれば遅れる程、この世界の私がゲルパー薬を摂取させられる可能性が高い」

「だから、此処は私達に任せて行きなさい」

 

 渋る響だが並行世界の翼とマリアの言葉にやっと頷く響たち。

 しかし、簡単に響たちだけ通させる気など無いウツボガメス。

 

「この先に簡単に行けると思うな、やれぇ!」

 

 ウツボガメスの言葉に子供マリアたち三人は響たちに切り掛かる。

 尤も、子供マリアたちのアームドギアを止めたのは当然、翼とマリアだ。

 

「今だ、行けぇ!」

「年上の言う事は聞くものよ!」

 

「行った筈だ、簡単に行かせると……ムッ!?」

 

 翼とマリアの声に響たちは、開いた通路をダッシュで進む。

 当然、ウツボガメスが阻止しようと動くが首周りの違和感と引っ張る力に反応が遅れた。

 ウツボガメスの首には、幾つもの白銀に輝く金属片が蛇のように巻き付いている。

 そして、金属片の先には、

 

「あら、レディーを放置して何処に行こうとしてるのかしら?」

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ! 其処まで死にたいのなら殺してやる!」

 

 アームドギアを蛇腹状態にしたマリアが軽口を叩く。

 並行世界の翼の方は、子供マリアたち三人を相手にしつつウツボガメスの動きを警戒している。

 マリアの言葉にウツボガメスは響たちを追うのを止めマリアと並行世界の翼と戦う事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、並行世界の翼たちの気遣いで港内を走る響たち。

 ウツボガメスからは順調に奥へと進み事が出来たが、ゲルショッカー戦闘員たちとの遭遇率も上がっている。

 そして遂に、

 

「また、ゲルショッカー戦闘員かよ!」

「……今までより数が多い!」

「幾ら何でも居過ぎデス」

 

 一体二体とゲルショッカー戦闘員を倒してきた響たちの前に無数のゲルショッカー戦闘員が建物や物陰から姿を現し響たちの進行を妨げる。

 しかし、ゲルショッカー戦闘員だけなら、まだ突破も出来ると考えた響たち。

 だが、

 

『…………』

 

「ゲッ、別の世界のアタシと先輩かよ!?」

「あれが、もう一人の風鳴翼さん?」

「向こうのクリスさんは随分と優しそうデス」

「奏さんと向こうの調ちゃんまで……」

 

 ゲルショッカー戦闘員たちの横からスッと姿を現したアナザー翼たち。

 先程の子供マリアたち同様、シンフォギアを纏いアームドギアを握っている。

 そして、

 

「此処から先は立ち入り禁止だ」

 

「黒服?」

「あれって、特異災害の職員デスよね?」

「……いや、あの雰囲気には覚えがある」

「正体を見せろ!」

 

 何処からともなく、特異災害対策機動部の職員である黒服がゲルショッカー戦闘員たちの開けた道から出て来た。

 その人物は如何見ても特異災害の職員のエージェントの制服である黒いスーツを着ていた。

 一見、自分たちの所属するエージェントにも見えるが黒服から漂う気配に響が声を荒げる。

 

 瞬間、黒服が顔を歪める程の笑みを浮かべ笑いだし腕を交差する。

 黒服の姿が一瞬にして、異形の怪物となる。

 

「コイツも見たヤツだ!」

 

「このナメクジキノコが、お前たちに引導を渡してやる!」

 

 黒服の姿から正体を現したナメクジキノコがそう言うと、アナザー翼たちが一斉に襲い掛かる。

 アナザー翼のボードの様な剣を響が弾き、アナザークリスの弾丸とやり合うクリス。

 奏とアナザー調のコンビと戦う調と切歌。

 更には、

 

「クソ、ゲルショッカー戦闘員の援護がウゼー!」

 

 離れた距離からゲルショッカー戦闘員の投げる石や手裏剣や銃に邪魔される。

 操られた装者自体の動きは訓練時より落ちているが、その分ゲルショッカー戦闘員の援護で補われている。

 響たちが、アナザー翼を気絶させようとすれば直ぐにゲルショッカー戦闘員が弾幕を張りチャンスを潰す。

 先にゲルショッカー戦闘員を倒そうとすれば、アナザークリスが邪魔をし逆にゲルショッカー戦闘員たちの集中砲火される。

 

 更には、

 

「クッ……並行世界の調と戦うなんて……」

「切ちゃん、後ろ!」

「!?」

 

「ギャギャギャギャッ! 隙だらけだぞ、シンフォギア装者!」

 

「しまったデス! ウッ……」

 

 アナザー調の攻撃を躱していた切歌の足元に不気味な色のゲル状の物体が近づいているのに気付いた調が切歌に知らせるが、一歩遅く不気味なゲル状の物体がナメクジキノコになり切歌の首を絞める。

 アームドギアの鎌のイガマリで抵抗する切歌だが、怪人の力の前では無抵抗に近い。

 寧ろ、切歌と近すぎる為、力が入ってない。

 

「待ってて、切ちゃん! ……!」

 

 ナメクジキノコに首を絞められている切歌を助けに行こうとする調だが、アナザー調と奏が邪魔をする。

 その間にも抵抗が弱まっていく切歌の姿に珍しく調が「どけ!」と声を荒げる。

 しかし、操られた彼女たちがその程度で退く訳がない。

 その間にも、切歌の首を締め上げるナメクジキノコ。

 

「シンフォギア装者とは言え、ただの小娘! このまま首を圧し折って「もう一人のアタシに汚い手で触るなデス!」グゥ!?」

 

 そのまま切歌の細い首を圧し折ろうとしたナメクジキノコだが、アナザー切歌が片腕を引き抜きナメクジキノコの頭部に腕のショットガンを撃ち放つ。

 予想外の事にナメクジキノコの手が切歌の首から外れ、解放された切歌は咳き込みつつ息をする。

 

「大丈夫デスか? もう一人のアタシ」

「だ、大丈夫デス!」

 

「……驚いたぞ、並行世界の暁切歌が人間では無いと聞いていたが腕に仕込み銃があるとはな。 だが、そんな豆鉄砲で俺を倒せるか!」

 

 アナザー切歌の声に切歌が「大丈夫」と返答する。

 しかし、アナザー切歌のショットガンを受けたナメクジキノコはピンピンとしてそう言い切る。

 ならばと、切歌がイガマリをアナザー切歌は腕を鎌状にして同時に切り掛かる。

 が、

 

「クッ!」

「またデスか!?」

 

 二人の鎌がナメクジキノコの当たるかと思えた瞬間、ナメクジキノコの体は一瞬にして溶け二人の切歌の攻撃は空振りする。

 ゲル状態となったナメクジキノコは地面のコンクリートの亀裂に入り込み気配が消える。

 

 響たちは、操られた仲間と遠距離で援護するゲルショッカー戦闘員に神出鬼没のナメクジキノコに苦戦していた。

 隙を見せれば切歌のように背後や真下から現れ不意打ちをしてくるナメクジキノコには特に。

 

「おい、英雄メガネ! ムカデ野郎の居場所は!?」

『それが人に物を聞く態度ですか!? ……港倉庫街の奥、ウツボガメスにナメクジキノコ、操られた装者が出てきているのがその建物です。

 恐らく其処に……』

 

 監視衛星でゲルショッカーの動きを見ていたウェルは、怪人たちが拠点替わりで使用している建物を見つけた。

 怪人や操られたシンフォギア装者が出て来た建物がそうだと当たりを付け並行世界のクリスに教えた。

 

「おい、馬鹿二人! 此処はアタシ等が受け持つから先に行け!」

「クリスちゃん!?」

「……馬鹿って私も?」

 

 ウェル博士の情報を聞いてクリスが二人の響に先に行くよう言う。

 このまま戦っていても時間が掛かる上に時間が経ち過ぎればゲルショッカーが何をするか分からない。

 万が一、ゲルパー薬を残った装者が摂取すれば面倒になる。

 

 それに、奏たち並行世界のシンフォギア装者たちを洗脳したムカデタイガーを倒せば子供マリアたちの洗脳は解け一気に形勢逆転出来ると踏んだ。

 

「でも、クリスちゃん!」

「でももヘチマもねえ、ムカデ野郎を倒さないとコイツ等の洗脳が解けねえんだぞ!」

 

 愚図る並行世界の響に奏の槍をガトリング砲で受ける並行世界のクリス。

 ただでさえ数に勝るゲルショッカーに洗脳された仲間たちまで戦わせられてるのだ。

 時間が過ぎれば自分たちがドンドン不利になっていくのは明白と言えた。

 

 クリスの言葉に二人の響は視線を合わせ頷く。

 

「分かった、行って来る!」

「クリスちゃん、無理しないでね!」

 

 二人の響がそう言うと港の奥の方に走って行く。

 途中ゲルショッカー戦闘員が邪魔をしようとするがクリスの銃弾がそれを許さなかった。

 

「ギャギャギャギャッ……ふん、二匹の立花響を行かせたか」

 

 響の姿が肉眼で確認できなくなった頃に廃墟の隙間からゲル状の物体が出て来てナメクジキノコの姿になる。

 しかし、二人の響を追おうとはしない。

 それに気付く並行世界のクリス。

 

「なんだ、追わなくて良いのか?」

 

「抜かせ、立花響が二匹程度ならムカデタイガーを倒すことは出来ん! お前たちが死ぬのが早いか立花響たちが死ぬのが早いか、違いがあるとすればそれ位だ! ギャギャギャギャッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 並行世界の翼やクリスから大分離れた港倉庫街。

 最早、整備すらされなくなり地面のコンクリートが裂け雑草や名の知らぬ花が咲いている。

 その上を歩く一人の老人。

 その老人は古風な着物を着ているが傍らにある日本刀の刀と鞘で普通の老人でない事が分かる。

 すると、老人が足を止めその場に立ち尽くす。

 瞬間、ゲルショッカー戦闘員が物陰から姿を現し短剣で老人を襲う。

 

 刹那、何時の間にか刀を握っていた老人とゲルショッカー戦闘員が交差し一陣の風が吹く。

 直後ゲルショッカー戦闘員の体がグラつき地面へと倒れる。

 

「……何時までこのような雑魚を寄こす気だ? ゲルショッカーめ」

 

 老人……風鳴訃堂がそう言う。

 不動が今まで歩いた場所には何人ものゲルショッカー戦闘員が倒れ各所で燃え上がっている。

 

 響たちと別行動してから、訃堂は特に隠れもせず港内を歩き回っていた。

 緒川たちの動きで、訃堂の下に来るゲルショッカー戦闘員は少なくはあったが訃堂の刀は出会ったゲルショッカー戦闘員を次々と切り捨てる。

 

「……ほう、やっと尻に火が付いたか」

 

 瞬間、訃堂の前に何者かが降り立つ。

 降り立った衝撃に地面のコンクリートは完全に陥没するが訃堂の前に現れた人物は特に気にする様子もない。

 その男は、赤いシャツにピンクのネクタイ、服越しでも分かる筋肉にライオンの鬣のような赤い髪。

 風鳴弦十郎、特異災害の司令官であり訃堂の息子の一人だった。

 

 弦十郎もまたゲルショッカーに洗脳されているのだ。

 訃堂に対し何も言わず拳を向ける。

 

 沈黙、二人の男の視線が交差し場には奇妙な静けさが流れる。

 次の瞬間、二人の体が消えたと思えば金属音が断続的に響き、建物の一角が崩れる。

 崩れた事で生じる煙から誰かが出て来た。

 訃堂と弦十郎だ。

 

「……愚息のクセに随分と思い切りが良い、理性が無ければここまで手を焼くか」

 

 僅かな戦闘で訃堂がそう呟く。

 動き自体は洗脳されたシンフォギア装者と同じ感じだったが、洗脳された事で身内に対する甘さが消え弦十郎の実力で訃堂と戦う。

 甘さの無い弦十郎が此処まで戦えるのは訃堂としても予想外と言えた。

 

「翼にいった通り、殺す気で戦う他あるまい……」

 

 そう言った訃堂は先程より目をカッと見開き刀を握る力を上げ弦十郎に切り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 走る……走る。

 二人の少女に額から汗が流れそのまま地面に吸い込まれる。

 目の前には、この港内でも最大の大きさを誇る巨大な倉庫。

 その倉庫の出入り口の扉を蹴破り中へと入る二人の響。

 

 蹴破った倉庫の中は、薄暗く奥も良く見えない。

 だと言うのに、倉庫内で立っているムカデタイガーの姿はハッキリと見えた。

 

「……立花響が二匹という事は、あの時に助かっていたか。 まあいい、此処で死ねば帳尻が会う!」

 

「……ムカデタイガー」

「この世界の翼さんや皆の洗脳を解いて!」

 

「誰が解くか! 貴様らは此処で死ぬのだ、ムヒョオオオオォォォォォッ!!」

 

 この世界の響を始末し損ねた事を知るムカデタイガーだが、大した反応をせず改めて「殺す」と言う。

 対する響たちも洗脳した翼たちを元に戻すよう言うが、当然拒否するムカデタイガー。

 

 最早言葉は不要。

 二人の響が一気にムカデタイガーに飛び掛かり拳や蹴りを放つ。

 ムカデタイガーも二人の響を叩きのめそうと反撃する。

 

 一瞬の間に響の拳をムカデタイガーが逸らし並行世界の響の蹴りを避ける。

 反対にムカデタイガーの蹴りを受ける響と触覚を伸ばし並行世界の響の足に絡ませ勢いよく地面へと叩きつける。

 

「痛~~~ッ!!」

「強い!」

 

 地面に叩きつけられた並行世界の響は涙目で背中を押さえ、ムカデタイガーの実力に改めて舌を巻く響。

 ゲルショッカー新たなる怪人の力に響だけでなく、それ以上に数多の敵と戦った並行世界の響すら苦戦を余儀なくされる。

 

 そして……それは並行世界の響だけではない。

 

 

 

 

 

 

「このッ!」

 

 並行世界の翼のアームドギアの剣がウツボガメスの背中を切り付ける。

 しかし、刃はウツボガメスの背中の甲羅にアッサリ弾かれる。

 

「俺の性能を舐めるなよ! 風鳴翼」

 

「翼、一旦離れなさい!」

「!?」

 

 並行世界の響の剣を弾いたウツボガメスは翼の方に向き直る。

 アナザー翼たちの相手をしていたマリアがウツボガメスが何か仕掛けると直感し並行世界の翼に距離を取るよう言う。

 直後、ウツボガメスの口から大量の黒いガスが吐き出される。

 

「黒い煙? 煙幕か?」

「! 見て、ウツボガメスの援護に来たゲルショッカー戦闘員が煙に飲まれて骨になったわ!」

 

 一瞬、ウツボガメスの吐くガスを黒い煙に肩透かしを食らった気分になる並行世界の翼。

 直後にマリアは見た、ウツボガメスの吐いたガスの前まで移動したゲルショッカー戦闘員が黒い煙を吸って一瞬で骨だけになったのを。

 

「気付いたか、シンフォギア装者ども! これぞゲルショッカーの開発した俺の能力、殺人スモッグだ!!」

 

「殺人スモッグ!?」

「相変わらず物騒な名前ねえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャギャギャギャッ! どうしたシンフォギア装者ども!」

 

「また、ゲル状になったデス!」

「もぐら叩きかよ!」

 

 並行世界のクリスと切歌がナメクジキノコの動きに翻弄される。

 並行世界クリス達もナメクジキノコや洗脳されたアナザー翼たちに苦戦を強いられている。

 単純に操られたシンフォギア装者が多いのもあるが、神出鬼没に現れるナメクジキノコの動きに並行世界のクリスたちは大苦戦する。

 

 操られたシンフォギア装者を相手にすれば隙ありと背後から攻撃し、ナメクジキノコを相手にしようとすればゲル状になり隙間に隠れる。

 単純な手であるが、並行世界のクリスを始め調と切歌も翻弄され体力を奪われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どの戦いも、響たちが押されている。

 

 

 

 

 

 

 

「「うわあああああッ!!!」」

 

 倉庫に場面が戻り、二人の響が倉庫の壁に叩きつけられる。

 衝撃に耐えきれなかった倉庫の壁は崩壊して、二人の響は外へと転げまわる。

 

「イタタタタ……」

「! 危ない!」

 

 体中、擦り傷らだけになった体で起き上がる響たち。

 直後、響の声に咄嗟に二人がその場を離れる。

 瞬間、響たちの居た場所に夥しい炎が行き過ぎる。

 

「また、火炎!?」

「……分かってはいたけど強い!」

 

「そらそらそらっ!! ドブネズミのように逃げ回れ!!」

 

 何とかムカデタイガーの火炎から逃げる二人の響。

 尤も、響たちもやられてばかりだけではなく拳や蹴りで反撃するがムカデタイガーには大したダメージを与えられてるようには見えない。

 

「ムヒョオオオオォォォォォッ! 貴様ら程度の力で俺を倒す事など不可能だ!」

 

「今のままじゃ無理か、なら」

 

 並行世界の響が胸のペンダント……ギアを握る。

 丁度同じ頃、同じ並行世界の翼とクリスも胸元のギアに触れ、掴む。

 

「「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」」

 

 そして、同時にイグナイトを起動した。

 

 

 

 

 

 

 




XVでも弦十郎と訃堂の戦いは別次元感あったよね。

今回も、怪人が複数に居るので当然の如く響たちも分かれて行動。
内訳は、

 並行世界の翼とマリアはウツボガメスと洗脳された子供マリアに大人セレナとセレナ。

 並行世界のクリスと調に切歌はナメクジキノコと洗脳されたアナザー翼とアナザークリスに天羽奏にアナザー調。

 二人の響ではムカデタイガー。

この世界の翼とクリスは何処に?


そして、当然の如く単独で行動する訃堂。
洗脳された弦十郎を抑えれるのはこの人くらいか?
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