改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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24話 カ・ディンギル

 

 

 

クリスが走る。もう直ぐフィーネの屋敷に到着する。クリスは色々と聞きたかった。フィーネの目的は何なのか?争いの無い世界を作るのは嘘だったのか?フィーネの屋敷ももう目と鼻の先、

 

「!?」

 

もう少しで屋敷に入れるかと言う所で突然クリスの腕が捕まれ森の中に引きずり込まれる。ショッカーかと思い歌おうとするが口元を塞がれ「シーッ!静かに」と耳元で言われる。ショッカーではない、聞き覚えのある声にクリスが振り向くと弦十郎が自分の動きを押さえていた。

 

「…何のつもりだよ」

 

口元を押さえていた手が動かされクリスが弦十郎に聞く。それに弦十郎は答える代わりにある一点を指さす。

 

「?…ヒっ!?」

 

指の先を追ったクリスが見たのは何人もの白骨死体だった。更に弦十郎は「窓の方」と言いクリスが窓から屋敷の中を見る。そこには、

 

「戦闘員…」

 

ショッカーの戦闘員が屋敷で動き回っている。

 

「ショッカーは先に動いていたようだ。何が目的か分からんが「フィーネ!!」って待つんだ!」

 

前のやり取りでフィーネはショッカーと敵対していた。そんなショッカー戦闘員が屋敷の中を闊歩している。フィーネに何かあったと感じたクリスが弦十郎の静止も聞かず屋敷に突入する。

 

 

 

 

 

「兎に角、何かないか探りな!フィーネの拠点なら聖遺物の一つや二つはある筈だ。それに逃げたフィーネが何をするのか探るのも私らの役目だ」

 

一方、屋敷の中では黒い体に虫の触覚がある蟻のような怪人、『アリキメデス』が戦闘員の指揮をとる。ネフシュタンの鎧を纏ったフィーネを追い詰めたものの後一歩で取り逃がしてしまったゾル大佐がアリキメデスにこの屋敷の調査を命じる。聖遺物の確保に失敗したショッカーとしては是が非でも入手したかった。フィーネの弄っていた機械からはもうデータはある程度取り出していたがまだ何かあるか調査も兼ねている。

 

「目ぼしい物は特にはありません!」

「此方もです。他に聖遺物の類も発見出来ません!」

「メイン以外のパソコンの方はロックされておりこれ以上の調査は不可能です。本部に持っていきますか?」

 

しかし、戦闘員たちの調査でも大した物は見つからない。ゾル大佐も正直其処まで期待はしていない。フェーネがシンフォギアの一つでも隠し持っていれば万々歳と言えた。

 

「ちっ、仕方ない此処を爆破して私らの痕跡を消した後にゾル大佐と合流を「お前ら、フィーネの家で何してやがる!」!?」

 

突然の扉からの少女の声に驚き見ると、ショッカーの拉致目標の一人雪音クリスが入ってき戦闘員の一人を殴り倒す。

 

「待てと言ってるだろう!」

 

少し遅れて、またショッカーの拉致目標である風鳴弦十郎と部下の黒服たちも入り戦闘になる。アリキメデスは戦闘員と自分の使役する殺人蟻を操り戦う。黒服の一人が殺人蟻に呑まれるが弦十郎の震脚で蟻や戦闘員が吹き飛ばされる。

 

「戦闘員も殺人蟻も吹き飛ばされた!?報告で聞いていたが此奴、本当に人間か!?こうなれば…!」

 

自分の不利を悟ったアリキメデスが撤退しようとしたが、次の瞬間屋敷は爆発に呑まれる。

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、つまらんな」

 

少し離れた丘。フィーネの屋敷も見える場所でトカゲロンがノイズ破壊ボールを踏む。先程の屋敷の爆発はトカゲロンが蹴り込んだノイズ破壊ボールだ。実は、トカゲロンはゾル大佐から密命を受けていた。

 

『トカゲロン、特異災害対策機動部二課の風鳴弦十郎が来たらアリキメデスが生きてようが死んでようが構わずノイズ破壊ボールを蹴り込め。奴では風鳴弦十郎を倒すのは無理だろう。アリキメデス諸共葬り去れ』

 

「任務終了。行くぞ」

 

トカゲロンは任務を果たしたとノイズ破壊ボールを設置する部下の戦闘員に撤収を命じる。トカゲロンはまたもアッサリと撤退した。それにしてもと、トカゲロンは思う。

 

━━━今日はやけにノイズ破壊ボールの爆発が小さいな…

 

立花響と戦った時に比べ爆発が小さい気がした。

 

 

 

 

 

トカゲロンが去った直後、破壊された屋敷では煙がもうもうと舞う中、職員と弦十郎そして崩れた天井の一部を片手で支えた弦十郎にもう一方の片手で守るように抱き寄せられたクリスがいた。

 

「…何が起こったんだよ?」

「衝撃は発勁でかき消した」

「…おっさんが人間か怪しくなったけど、そうじゃねえよ!」

 

クリスが藻掻いて弦十郎の腕から出る。

 

「何でギアを纏えない奴がアタシを守ってんだよ!普通逆だろ!」

 

持っていた天井の一部を捨てた弦十郎がクリスに向き直る。

 

「俺がお前を守ったのはギアの有る無しじゃなくて、お前より少し大人だからだ」

「大人!?アタシは大人が嫌いだ。死んだパパとママも嫌いだ!夢想家で臆病者、戦地で難民救済?歌で世界を救う?その結果、パパとママは殺されて娘のアタシは一人ぼっちだ!娘より夢の方が大事なのかよ!いい大人が夢なんか見てるんじゃねえよ!」

「大人が夢を…か」

「本当に戦争を無くしたいなら、戦う意志と力を持つ奴等を片っ端からぶっ潰した方が良い!特にショッカーみたいな奴等をな!それが一番合理的だろ!」

「それがお前さんの流儀か?なら聞くがそのやり方でお前は戦いを無くせたのか?」

「そ…それは…」

 

弦十郎の問いにクリスは渋い顔をする。

 

「いい大人は夢を見ないと言ったな。俺はそうは思わない、大人だから夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし力も強くなる。財布の中の小遣いも多少は増える。子供の頃の夢も大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。半面(しがらみ)も増えるがな、俺も子供の頃は自由に生きたいとも思ったが。お前の親はただ夢を見に戦場に行ったのか?違うだろ、歌で世界を平和にするって夢を叶える為、自ら戦場に行ったんじゃないのか?」

「何で…そんな事…」

「お前に見せたかったんだろう。夢は叶えられるっていう揺るがない現実をな」

 

弦十郎の言葉にハッとした顔をする。

 

「お前は嫌いと言ったが、お前の両親はきっとお前の事を大切に「笑わせてくれるね」!」

「!?」

 

クリスと弦十郎の横の瓦礫から声がし、アリキメデスが這い出る。咄嗟に弦十郎がクリスを庇う形で陣取るがアリキメデスが攻撃してくる気配はない。トカゲロンの攻撃でアリキメデス自身も瀕死の重傷を負っていた。最早、長くはない。

 

「夢や何だと言っているけど結局死んでりゃ意味無いんだよ。お前の親はただの無駄死にだ!」

 

「ち…違う、アタシのパパとママは!」

 

「違わないね!危険を承知で娘を連れてきて自分がおっちんでりゃ世話ないんだよ!両親が死んでお前がどんな目にあった!言ってみろ!」

 

「やめろ!!」

「アタシは…アタシは…」

 

「どんなに取り繕うが夢を見た馬鹿が死んだ事には変わりないさ。そしてお前に起きた現実は何一つ変わらない。両親を恨め憎め!あの世で罵詈雑言を吐き散らせ!…どうせお前たちも、もう直ぐ死ぬ。ゾル大佐はフィーネのカ・ディンギルを既に嗅ぎつけた!」

 

「カ・ディンギル?」

 

「フィーネが造り出した兵器までは分かっている。ゾル大佐の事だ、もう直ぐ場所も特定される。ショッカーがそれを手に入れた時がお前達の最後だ!!」

 

「!全員脱出しろ、急げ!」

 

何かに気付いた弦十郎が部下の黒服に退避するよう命令し、クリスを引っ張って割れた窓から脱出する。直後、アリキメデスの爆発で館の殆どが崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

アリキメデスの壮絶な爆発に屋敷は全壊。もう此処には用は無いと黒服たちが車に乗り込む。殺人蟻に呑まれた職員も急ぎ病院へと向かわせる。そして、クリスは弦十郎の車の前で立ち止まる。

 

「…本当にアタシも行っていいのか?」

「今更一緒に来たくない訳じゃないだろ」

「でも、アタシはお前達と敵対して…」

「なに、何時もショッカーとの共闘しかしてなかった気がするがな」

「…分かったよ、乗ってやるよ!」

 

弦十郎の意地悪そうな言葉にクリスは頬を膨らませつつも弦十郎の車に乗り込む。

 

「あ、そうそう。これも渡しとこう」

「…通信機?」

 

後部座席に座ったクリスに弦十郎が運転席から投げ渡す。それは特異災害対策機動部が使っている通信機だった。

 

「限度額内なら公共機関も使い放題、買い物も出来るし自販機にも対応している。便利だぞ」

 

弦十郎の説明にクリスは複雑な顔をして通信機をしまった。

 

「それにしても、カ・ディンギルか、ショッカーももう動いている。これ以上後手に回る訳にはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リディアン音楽院。

廊下にて未来と響が歩く。トカゲロンとの闘いの傷も二日程で完治しアッサリ復学した響は未来と廊下で歩きながら喋る。その最中に校歌が聞こえる。

 

「♪~~ゴホッ!ゴホッ!」

 

釣られて響も鼻歌で校歌を歌ってみたが咳き込み歌うのを止める。

 

「響、大丈夫!?」

「大…丈夫、口に出して歌うよりはマシだから。…私、鼻歌も歌えないんだね」

 

響が悔しそうに呟き廊下の窓の外を見る。外には何人もの生徒が行き交いリディアン音楽院の校歌も流れている。

 

「響…」

 

外の景色を見続ける響に未来が呼ぶ。

 

「心配しないで、未来。ただリディアンの校歌を聞きたいだけだから」

「校歌を?」

「うん、リディアンの校歌を聞いてると心が落ち着く。皆が居る場所だと思うと安心できるだ。私が居ても良いって思えるから…私が入学して一月も経ってないのにね」

 

響の声は楽しそうであり何処か寂しそうだった。

 

「…響」

 

未来が響にどう声を掛けようか考えて居ると響の通信機が鳴り出る。相手は弦十郎だった。

 

「はい、響です」

『翼です』

『……よう』

「え?クリスちゃん!?」

『クリスは俺が通信機を渡して本部に連れてきた。そして収穫もあった』

 

その後、弦十郎が先程、屋敷で起こった事を説明する。

 

『そうですか…ショッカーが』

「カ・ディンギルも気になりますね」

『その辺、知っていそうな了子くんと連絡が取れない。何かあったのかも知れない』

『まさか、ショッカーが』

 

翼が了子がショッカーに襲われたかと心配する。その瞬間に本部の警報がなる。

 

『こんな時にノイズだと!』

 

本部のモニターには今までにない程の大規模のノイズが映し出される。

 

「はい、分かりました」

「響」

「ごめん、午後の授業出られそうにない。翼さんとクリスちゃんも居るから大丈夫だよ」

 

通信機の電源を切った響が未来に返事をする。少し迷った後に未来は口を開く。

 

「約束して響、必ず帰って来るって」

「未来?」

「どんなに離れていても私、待ってるから!響の帰って来る場所に私待ってる」

「私の帰る場所…分かったよ、未来。私はどんな事があっても必ず未来の下に戻るから。…流れ星を一緒に見る約束ってまだ有効?」

 

その言葉に未来は頷く。それを見た響は笑みを浮かべた後に急ぎ現場に行く。途中、ノイズは東京スカイタワーに集まってると聞き本部から寄越されたヘリに乗る。

 

「あ、クリスちゃん」

「よう、元気そうで安心したよ」

 

中には既にクリスが乗っており響に少し話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノイズが東京スカイタワーに集まりつつあるそうです!」

「カ・ディンギルとは東京スカイタワーではないでしょうか?」

 

薄暗いショッカーのアジトにノイズが出現した情報が流れる。地図を睨むゾル大佐が手で黙る様合図を出す。戦闘員たちはピタッと静まる。代わりに鷲のエンブレムの胸が光り首領が話す。

 

『それで?スカイタワーがカ・ディンギルなのか?』

「ノイズの動きは明らかに陽動じみています。この動きは典型的な囮ですね。狙いは別かと」

 

首領の問いにハッキリ答える。ノイズの動きを陽動と読んだゾル大佐の脳裏にカ・ディンギルの情報が巡る。

 

━━━カ・ディンギルとは古代シュメールの言葉だった筈。確か天を仰ぐ程の塔を意味していたが……スカイタワーでは足りん。…そう言えば特異災害対策機動部二課本部に妙な違和感があったな。あの変なエレベーターシャフト、異様に深い本部、櫻井了子がフィーネ……!成程、そうか。それにあそこには…

 

「ふふふ、読めた。各員に通達!動ける者は俺に続け!目標は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカイタワー周辺では四体の空を飛ぶ巨大な飛行型ノイズが小型のノイズを吐き出す。其処へ到着した響とクリスがヘリから飛び出す。

 

「変身!」

「Killter Ichaival tron」

 

響とクリスがシンフォギアを装着し一体の大型飛行ノイズを倒す。丁度、仕事で学園に居なかった翼も合流しノイズを次々と倒す。しかし、順調とは言い難かった。クリスと翼の体が何度もぶつかり合う。

 

「さっきから何だよ、引っ込んでな!」

「あなたこそいい加減にして、一人で戦ってるつもり?」

 

何度もぶつかり合ったクリスがとうとう翼に文句を言う。クリスの言い方にカチンときた翼もクリスに文句を言う。その間にもノイズは響が倒している。

 

「こっちはスタンドプレーが当たり前だったんだよ。即席でチームプレーを求められても困るね」

「それは…そうだけど…」

「大体、あんたの動きだってな!」

「フフ…」

 

ある程度ノイズを倒した響が二人に近づきやり取りを見て噴き出した。

 

「立花!?」

「おい、何がおかしいんだよ」

「あ、ごめん。二人のやり取りがおかしくて…まるで何年も付き合いのある友達みたい」

「え!?」

「なに!?」

 

響の予想外の言葉に二人は互いの顔を見て響に向き直る。それが響のツボにハマってまたクスっと笑う。もう半ば、自分には無理だろうと諦めた光景に響の目から涙が出そうだった。

 

「ん」

「え?」

 

と、突然クリスが響に手を出し響は一気に困惑する。見ると、翼もクリスの様に響に手を出していた。

 

「なに、自分だけ黄昏ているんだよ」

「立花も私達の仲間だ」

「ほら、お前も手を出せ」

「でも…私が握ったら二人の手が…」

 

響も大分、力の制御が身について来たとはいえ未だに油断すると物を破壊してしまう。もし、翼とクリスの手を握りつぶしたらと考えたら響は怖くて仕方なかった。

 

「良いから、お前は手を出すだけで良いんだよ!」

「そうだぞ立花」

「…分かった」

 

二人の言葉に響はオズオズと二人に手を差し出す。その瞬間、二人は響の手を握った。

 

「あ…」

「良いか?力を入れるんじゃないぞ」

「立花の手を握るなら私達だって出来る」

 

クリスと翼の手が響の手を握りしめる。最早、人間としての硬さではなかったが二人の温もりが感じられ響の目から涙が出る。

 

「お前が握れないんだったらアタシらが握ってやる」

「立花が、自分の力に怯えるなら代わりに私達がどうにかする。そうだろ」

「…はい!」

 

二人の言葉は響にとってどこまでも嬉しかった。その後、残った飛行型の大型ノイズをどう倒すかと話し合った時にクリスがショッカーのアジトの時に使った長射程広域攻撃で殲滅する事を提案。翼は知らないが見ていた響が賛成して作戦開始。無事、ノイズの殲滅に成功した。

 

「やったな」

「当たり前だ」

 

クリスと翼がノイズの殲滅に喜ぶ中、響は辺りを警戒するように見回す。

 

「どうした?立花」

「まだノイズが居ると思ってるのか?」

 

響の様子に二人が声を掛ける。

 

「ショッカー仕掛けてこないのが不思議で、これだけの戦いをショッカーが放置するとは思えないんです」

 

響の言葉に翼とクリスも辺りを警戒する。横やり上等なショッカーだ。突然襲い掛かってきても不思議じゃない。そんな中、響の通信機から呼び出し音がかかる。

 

「はい」

『響!?学校が…リディアンがショッカーとノイズに…』

「未来!」

 

途中で切れたが響の耳には確かにショッカーと聞こえた。

 

 

 

 




やっぱりショッカーのお蔭でクリスは丸くなっている。原作では響から握った手もクリスや翼が率先して繋ぐ。

あんまり関係ないけどシンフォギアの原作10話で弦十郎が夢云々言ってるけどその夢に付き合わされたクリスが酷い目にあったのは無視なんだろうか?


最後に、活動報告でお知らせもあるんで良ければ見て行ってください。
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