改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

37 / 172
絶唱しないシンフォギア その1

 

 

 

=響、家に帰る=

 

ゾル大佐との死闘に勝利した機動二課。それから一月程が経ち街もだいぶ復興に向かっていた。そんな中、響がある一軒家の前に立って何か悩んでいた。

 

「響、いい加減覚悟を決めたら?」

「その通りだ、響くん」

 

そんな響の様子に付いて来ていた未来と弦十郎も呆れて言った。その言葉に響の目が泳ぐ。

 

「分かってるけど、一年半以上…二年近く行方不明だった私が何て言えばいいの?「ただいま」でいいの?それとも「こんにちは」?未来、この格好変じゃない?」

 

響が悩む。此処は響の家でありショッカーに攫われて以来久しぶりの実家だった。ショッカーも倒した事で響も母やお婆ちゃんに会えると思って実家まで来たのだ。最後に見たのは誹謗中傷のビラが貼られた家だったが今の家はそんなビラは何処にもない。少し安心した響。

しかし会いたい会いたいと思っていたが、いざ家の前まで来ると響の足が竦んでしまった。因みに響の格好は未来が選んだ物に特殊なワイヤーを仕込んだ服で未来と遊びに行くときに着る服だ。

 

「響くん、電話で今日帰ると伝えてるのだろう」

「おばさん達も首を長くして待ってるよ」

 

弦十郎と未来の言葉に深呼吸をして落ち着こうとする。因みに未来は付き添いで弦十郎は響の家族に改めて響の現状を説明する為に一緒に来ていた。

 

「…よし!」

 

自分の頬を叩いて気合を入れた響は実家の呼び鈴を押す。呼び鈴の音が木霊し響にとってそれは何よりも長く感じた。

 

「は~い」

「!?」

 

女性の声と共に扉が開く。中から響の髪と一緒の色をした女性が出てきた。母親だ。記憶の中の母親より少し窶れた姿だった。

 

「あの…その…」

 

「ただいま」と言いたかったが言葉が出てこず、しどろもどろになる響。しかし、女性はそれを見て噴き出した。

 

「…お帰り、響」

「!た…ただいま、お母さん」

 

ゆっくりと女性に抱き着かれた響の目から涙が出る。会いたくて会いたくてたまらなかった母とやっと会えたのだ。家の廊下の奥にはお婆ちゃんも居て同じく涙ぐんでる。

 

「良かったね、響」

「…そうだな」

 

様子を見ていた未来も弦十郎も涙目になる。この日、響が帰って来れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体今まで何処に行ってたんだい!あの人も居なくなって響まで…」

「響、よく帰って来たね」

 

家の中に入った後は、響は母親に何処に言っていたのか聞かれ言い淀む。お婆ちゃんは響の頭を撫でていた。改めてどう説明すればいいか分からない響だったが、

 

「その事なのですが…」

 

響の傍に居た弦十郎が話し出す。一応トップシークレット扱いの情報だったがショッカーを打倒したと判断し響の家族だった事もあり弦十郎は響の身に起きた事を話す。

 

その内容は改めて聞くと酷いものであった。響はショッカーと呼ばれる悪の秘密結社に拉致され改造人間にされ一年半もの間捕まって政府の特異災害対策機動部二課が保護した事を。

 

「…本気なんですか?」

「秘密結社だなんて…」

「これを」

 

半信半疑の家族に弦十郎は封筒を渡す。中を確認すると響のレントゲン写真と響の治療の写真に医者の検査報告であった。

 

「酷い!何で家の娘がこんな目に!」

「人のやる事じゃないよ!こんな事…」

「お母さん…お婆ちゃん…」

 

酷い現実を聞かされ泣き出す二人。こうなる事は弦十郎としても予想されていた。しかし、隠し通してもいずれは気付いてしまうとして今この場で二人に教えたのだ。

 

「お母さん…お婆ちゃん…こんな体にされた私をまだ娘として見てくれますか?…家族として見てくれますか?」

 

「「!?」」

 

その言葉に二人はハッとする。一番傷ついてるのは紛れもなく響だ。

響としても不安であった。人間でなくなった自分を家族が…母や祖母が家族として見てくれるのか?最悪、化け物と罵られ家から追い出される事も覚悟し目を瞑った。しかし、響の体に暖かさを感じ薄っすら瞼を開くと二人が響に抱き着いていた。

 

「馬鹿ね…響は響だよ…」

「そうだよ…誰が何と言おうとね」

「お母さん、お婆ちゃん」

 

二人の言葉と行動に響が未来や弦十郎の目も気にせず泣いた。響にとっても久しぶりの大泣きに未来も弦十郎も貰い泣きしかけた。どの位泣いていただろうか?外も大分日が落ちて時間も経つ。

 

「お母さん、お婆ちゃん。お父さんの事で言わなきゃいけない事があるの」

「洸さん?」

 

一頻り泣いた響は意を決したように話す。最初は不機嫌だった二人も話し手を進めていく内に二人の顔が青ざめていく。

 

「…ということなの」

 

響の発言は終わった。二人は暫しの沈黙し未来と弦十郎がハラハラと見守る。

 

「…そうあの人が」

「失踪したんじゃなくて拉致されていたなんて…」

「…お父さんは私を守る為に…」

 

夫が、義息が逃げた訳ではなく、拉致されて殺されていた。娘の響を守る為にとは言え、命を落とした。一瞬、悲しそうな顔をしたお母さんが響に笑顔を向ける。しかし、響には笑顔が無理してるように見えた。

 

「家の孫はまだショッカーに狙われとるのか?」

「…ご安心ください。ショッカーの首領格を撃破しました。もう響くんが狙われる事はないかと」

 

弦十郎の言葉に二人はホッと胸をなでおろす。

その後、響の母が弦十郎や未来に夕飯を一緒にどうかと誘うが、弦十郎は仕事で未来は家族に会いたくなったとして辞退。響は一晩泊まった後に機動二課に出向くことになる。尚、響の家族が響の好物を沢山作ろうとしたが、響がもう流動食ぐらいしか受け付けない事を話すと二人は愕然とする。

いたたまれなくなった響は早々に自分の部屋へ向かう。響の部屋は当時のまま残されたままでまるで時が止めったような錯覚をする。

 

暫くベッドで仰向けになっていた響は本棚から一冊の本を取り出す。それはアルバムだった。小さい頃の自分や父と母、お婆ちゃんが写ってる姿をひたすら見ていた。時間が暫く過ぎた頃だろう。

 

「洸さん…洸さん!」

 

下の階に居た母の泣き声が聞こえる。お婆ちゃんの声はしなかったけど恐らく母に寄り添ってるのだろう。

 

「…お母さん…やっと泣けたんだ…」

 

響の声が部屋に静かに響く。ショッカーに奪われた歌は取り戻せた。しかし、取り戻す事が出来ない物はどう足掻いても取り戻せない。響の胸に悔しさが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=拠点制圧=

 

薄暗い通路、何人かの武装した男達が進む。ドアの前に止まると男たちは爆弾を設置し爆破してドアを破った。

 

『此方、Bチーム。制圧完了』

『此方、Dチーム。戦闘員の排除に成功し制圧しました』

 

通信機からの報告に緒川は一先ず安心する。ハリケーン・ジョーの残した情報でショッカーの拠点を制圧する為にチームも編成し公安との連携もされ無事制圧も終わりつつある。一つ目の拠点は早々に抑える事に成功した。尤もその拠点には戦闘員も科学者も居らずパソコンの機械も壊されていた。

現在、緒川達が居るのは二つ目の拠点だった。少数ながら戦闘員も配備され此処が重要拠点と思われた。

 

『此方、Aチーム。…制圧は出来ましたが緒川さんに見てほしいものがあるんですが』

「見て欲しい物ですか?分かりました」

 

拠点の完全制圧も終わりの頃に通信機から緒川を呼び声に反応しAチームの居るある地下室へと向かった緒川。無事にたどり着いた場所には何人かの人間がおり中には戻してる物もいた。そんな中、チームの隊長が緒川を見つけて敬礼した後、見つけた物を説明する。

 

「…見て欲しいというのはこれです」

「こ…これは…」

 

そこにあった物を見て緒川が顔を顰める。其処にはガラスで出来た人の頭ほどの大きさのシリンダーに満たされてる液体。そして、液体の中には、

 

「これは…脳みそ?」

「脳髄一式と言ったとこですね。殆どが生命反応が無くなっていますけど。この仕事をやってきて長い方ですけどこんな物見た事が無い。臓器売買のブローカーだってこんな事しませんよ」

 

緒川の前に脳みその入ったシリンダーが二桁程あり、どれも人間の物と思われる脳みそが入れられていた。その殆どが壊死し崩壊してたが一つだけ生きてるようにも見えた。

 

『誰か…居るの…か?』

 

突然の声に緒川とチームの隊長が互いに顔を見合わせ互いに指を指し互いに首を振った。緒川と隊長の声でない。ならと、緒川が生きている脳の入ってるシリンダーに目線を送る。そのシリンダーは先程より光ってるように見えた。

 

『誰か…居るなら…答えてくれ…一人は…辛いんだ…』

「つかぬ事を聞きますけど…あなたはその状態で喋れるんですか?」

『良かった…白川くんも大隅くんも…死んでしまってずっと…孤独だったんだ。…その言葉使い…君はショッカーでは…無いようだね』

「はい、僕達は政府の特異災害対策機動部二課のエージェントと公安の混合チームです」

『おお…やっと政府が…動いてくれたか。…申し遅れた…私は緑川弘…元、城北大学…教授だった…男だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緑川教授だと!?」

 

緒川の報告を政府の用意した簡易指令室で聞いた弦十郎の声が荒立つ。

 

「知っているんですか?」

 

あおいの言葉に弦十郎は頷く。

 

「彼は生化学の権威と飛ばれていた天才だ。彼のお蔭で今の生化学があると言っても過言ではない。だがしかし、緑川教授は70年前に突如行方不明となりノイズに殺されたと言われていたが…」

『行方不明の科学者の…大多数はショッカーに拉致…されたと思って…いい。奴等は…狡猾で…ノイズの…仕業に…見せかける事も…多かった。奴らが…私達を…こんな風に…したのは…私達の…知識を…奪う為だ…脳だけになってしまえば抵抗すら出来ない…』

 

弦十郎の前にあるシリンダーから緑川の声がする。簡単な事情聴取が終わった後に、公安から特異災害対策機動部二課に回されたのだ。

その言葉を聞いて弦十郎の額に汗が流れる。緑川が言った「白川」と「大隅」も天才的な科学者と言える人物だった。

 

『それにしても…風鳴か…フフフ…』

「?何か」

『いや…昔の…友人を…思い出してな…最後に…会いたいと…思ってたが…70年か…流石の彼も…もう生きては…いないだろう』

 

緑川の諦めたような発言にその場の全員が言葉を無くす。聞けば70年間も脳髄だけでシリンダーの中で生かされていたのだ。その苦しみはどれ程の物だったか想像すら出来ない。

 

 

「弘!!」

 

 

そんな空気の中、扉が開かれると共に緑川を呼ぶ声が響く。

 

「親父…」

 

弦十郎が呟く。入って来たのは風鳴訃堂だった。

 

『その声…訃堂か?…生きていたんだな』

「それは此方のセリフだ、馬鹿者!突然消えよって!」

 

訃堂は周りの目を気にせず緑川の脳の入ったシリンダーへと近づきそっと触れる。

 

『訃堂…ルリ子がどうなったか…分かるか?』

「ああ、お前が突然失踪して落ち込んでおったがモトクロスの選手の若者が励まして結婚した。孫にも恵まれ10年前に逝った」

『そうか、それだけ…聞けて良かった。すまない…訃堂、君との…約束…守れそうに…ない』

「!何を言っている…貴様の…頭脳とワシの武で日本を守ろうと誓い合ったではないか!!」

『すまない…もう限界みたいだ…最後に…君の…声を…聞けて…よかった…』

 

シリンダー内の緑川の脳が崩壊を始める。公安が特異災害対策機動部二課に渡したのもこれが原因だった。寿命だ、脳外科の医者も70年間も持っていたのは奇跡だと言うほど緑川はずっと耐えていた。

緑川の死を見届けた訃堂は、一筋の涙が流れ機動部二課から出ようとした。

 

「親父」

「何も言うでない。…何も」

 

この時、弦十郎は訃堂の初めて人間らしいところを見た気がした。

 

 

 

 




響が無事に家に帰り、仮面ライダーの有名な博士が脳みそで見つかる話です。
そして、無駄に広がる訃堂の交友関係。
設定では、訃堂と緑川は竹馬の友で共に日本を守ろうと言っていた親友です。


訃堂何歳だ?(100歳越えは確実らしいけど)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。