改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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絶唱しないシンフォギア その2

 

 

 

=引っ越し=

 

「ねえ、響。一緒に住まない?」

「…え?」

 

未来の突然の発言に目が点となる響。何故その話になったか、そもそもの始まりは特異災害対策機動部二課から聞かされた情報だった。

 

 

 

「…新しいリディアンですか?」

「そうだ、カ・ディンギルの跡地は使えんからな。政府が廃校になった学校施設を買い取って新生することになった」

 

弦十郎の口からリディアン音楽院の再開を聞かされる。一月ほどの準備に時間が掛かり元々居た生徒の多くも転校や自主退学して数を減らしていたが未だ多くの生徒がリディアンの再開を望んでいた。

 

また学校に行ける。ちょっと嬉しくなった響は、早速この情報を未来に伝えたが未来も既に知っていた。そして、学校の近くに寮も作られる事を教えられた響だったが未来の冒頭のセリフであった。

 

「私と…一緒に?」

「そう。…嫌?」

「ううん、嫌じゃないよ。でも」

 

未来としてはもう、響を狙うショッカーも打倒して平和に暮らせると思っていたし、響としても親友の未来と一緒に住むのは賛成するところではある。しかし、少し悩む響に未来は「どうしたの?」と考えた。

 

「でも、なに?」

「私、力加減が今一だから未来の大事な物を壊しちゃう可能性が…」

「なんだ、そんな事?私にとって響より大事なものなんてないよ」

「そう…ふぇ!?」

 

未来の予想外の言葉に驚く響。結局、未来の圧力に押された響は一緒に住むことを了承した。

 

 

 

そして、引っ越し当日

 

「ひ…響、無理だったら無理って言ってね!業者の人を直ぐに呼ぶから!」

「こんなのへいき、へっちゃらだよ。大袈裟だな未来」

 

二段ベッドを片手で持ち上げてる響に未来は汗を流しつつ見守った。その後も、響は本棚やタンスにテーブルといった重い物を次々と部屋の中に運び、引っ越し業者を唖然とさせる。結局その後も響が重い物を全て運んで引っ越し終了。業者は茫然としながら帰り響は未来とダンボールから小物など取り出し飾りつけなどした。

そして夜となる。

 

「ねえ、響。一緒に寝よ」

「…突然過ぎない?未来」

 

夜も更けそろそろ寝る時間となった頃に未来が一緒に寝ようと誘う。見れば自分のベッドの寝る場所に幾つもの荷物が置かれ横になる事は出来そうにない。

 

━━━もしかしたら、未来に謀られたかな?

 

自分としては問題ないが、もし本当に謀られたら未来は策士だと思う。

 

「その…私、寝相が悪いしもしかしたら未来を潰しちゃうかも…」

「昔、寝た時はそんな事なかった筈だけど」

「う…」

 

響が断ろうとするが悉く未来に潰される。結局、響と未来は二段ベッドの上で布団に入っていた。

 

「じゃ、お休み響」

「うんお休み、未来」

 

電気を消して二人は目を瞑った。こうして今日という日は終わり翌日となる。

 

 

 

 

 

…筈だった。

 

一時間が過ぎ未来が静かに寝息を立ててる事を確認した響は静かに未来から離れベッドから降りる。真っ暗な部屋の中の筈がまるで電気がついてるかのように移動した響は椅子に腰かける。

 

「やっぱり、未来と一緒でも眠れないか」

 

響は、ショッカーに改造されてからまともに寝て居ない。改造手術の時に脳を弄られた影響でろくに睡眠をとれなくなっていた。極度の肉体的疲労や重度の精神的ショックなら一時的に意識が無くなるが、単純に気絶してるだけだ。幸い、響の体の機械が脳をリフレッシュさせている為問題はない。

結局、響は電気も点けず本を読んで暇潰しをして朝を待つ。暗いが問題はない、その気になれば響の目は光の無い闇の中だろうが昼間の様に見る事も出来る。

 

「…こんな事思いたくないけど、便利な目だな」

 

響の呟きが空しく闇に消える。響は今日も眠れなかった。

 

「響…」

 

布団の中に居た未来が薄目を開け響の名を呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=カラオケ=

 

「え~本日は忙しい所、まことにすまないと思っている。しかしゾル大佐打倒の処理が終わった為、やっと皆を労をねぎらえる。今日は二課の奢りだジャンジャン歌ってジャンジャン食べるといい」

 

「「「「「「「「「「おおおおーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」

 

弦十郎の挨拶が終わると一同が一斉に声を上げた後にメニューを見たり機械を操作したりする。

 

ゾル大佐との死闘の後処理がやっと終わった二課は政府お抱えの施設を借り切り、響達を呼んで遅れていた祝勝会をやっていた。ちゃっかり創世や詩織、弓美も参加していたが誰も気にしない。尤も、カ・ディンギルの解体はろくに進んでないが。

 

「よくもまあ、こんなどんちゃん騒ぎが出来るな」

「何だ、クリス。お前も楽しむだけ楽しめ、こんな機会でもないと楽しめんぞ。金の事なら気にするな、経費で落ちる」

「…それでいいのか?公務員」

 

既に酒を飲んで軽く酔っていた弦十郎の言葉にクリスが呆れながらも突っ込む。

 

「どうだ、雪音。楽しんでるか?」

「ん?お前らか」

 

クリスが声のした方を見ると翼と響が自分に近づいて来た。翼は幾つかの料理を並べた小皿を持ち、響は水の入ったコップだけ持っていた。

 

「ボチボチってところだ。そっちは?」

「私はそれなりだな」

「私も。どっちかと言えば皆が楽しそうにしていたら私も楽しいよ」

 

クリスが「そんなもんかね」と思いつつ周りを見る。取り付けてあるカラオケで楽しむ者や仲間内で集まって楽しむ者に料理にしか興味が無い者までいた。殆どが職員だが弓美たちがカラオケの取り合いなどもして未来が引き攣った笑みを浮かべる。

 

「そう言えば、クリスもリディアンに通うらしいな」

「え?本当、クリスちゃん!」

「…嬉しそうな反応をしやがって。その通りだよ来週から通う事になった」

「えへへへ、よろしくね。クリスちゃん」

 

響の嬉しそうな反応に満更でもないクリス。居心地良いなと内心思いつつ取った料理を食べる。カラオケの方を見れば未来が歌ってた。

 

━━━あの争奪戦に勝ったのか?

 

弓美たちが悔しそうな顔をしてる以上、ジャンケンでもしたんだろうと納得したクリス。

 

 

 

その後、少し時間が経ち

 

「はい、響」

「え?」

 

何人かの歌を聞きながら壁の花になっていた響だったが其処に未来がマイクを渡しにやってきた。

 

「もう歌えるようになったんでしょ?私、響の歌が聞きたいな」

「未来…うん!」

 

本当は久しぶりにカラオケで歌いたかった響は未来の誘いに乗りカラオケで歌う。その歌に未来や創世たちは愚か翼やクリスも静かに聞いていた。途中に弦十郎や職員たちも次々と響の歌を聞き出す。

 

「…良い歌だ…な…」

「…そう…だな…でも…」

 

 

 

 

 

「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」

 

 

 

 

 

 

「…何の歌だ?」

「分からん。あんな歌あったかな?」

 

クリスと翼が響の謎の歌に頭をひねる。

その場に居る全員…未来すら知らない歌を歌う響。凄い早口で歌う響に皆が感心する。歌い切った後には全員が拍手をするがやはり何の歌か分からない。

 

「す…凄かったよ、響」

「うん、胸の奥から出た歌なんだ」

 

若干引き攣った笑みを浮かべた未来が響を褒める。響も嬉しそうに未来に話す。その後もカラオケが続きオオトリは弦十郎が務めた。

 

「これで今日は終わりだな」

「そうだな…でも…」

 

 

 

 

「パンチーンゴー ンガァンホンチー ペンチョチョッ ヤッサンティ…」

 

 

 

 

「…あれもカラオケにあるのか?」

「あるんだからあるんだろ。…たぶん」

 

翼が弦十郎の歌に頭を抱え、クリスは引き攣った笑みを浮かべる。

弦十郎の歌に皆が微妙な反応をする。響や未来もどう反応していいか分からない。最後は今一盛り上がらなかったところで解散する事になった。

こうして祝賀会は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=お風呂=

 

「何だか最後は盛り上がらなかったわね」

「私、あの歌初めて最後まで聞いたよ」

 

祝賀会も終わり日も暮れかけてきた中、弓美や未来が寮に帰る準備をしている。響達はもうとっくに終わって後は二人位だった。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

あと少しで準備が終わる頃にあおいが響たちの下へ来た。見ると翼も一緒だった。

 

「どうしたんだよ」

 

代表してクリスが引き止めるあおいに質問する。すると、あおいは笑みを浮かべて話す。

 

「此処のお風呂も貸し切りに出来たの。皆も入って行きなさい、大きいお風呂よ。当然、女の子限定♪」

 

あおいの言葉に皆が一斉に目の色を変える。…響以外…

 

「大きいお風呂だって!?」

「折角だし入って行く?」

「いいですね」

 

弓美や創世に詩織も目の色を変えて風呂に興味心身だ。クリスも満更ではない。翼が一緒ということは同意してるという事だろう。未来が響に近づく。

 

「響、大きなお風呂だって!久しぶりに一緒に入ろうよ!」

「え…あ…えっと…」

 

未来の言葉に戸惑う響。響としてもお風呂は好きな方だ。未来と一緒にも入りたい程だ、しかし響にはとある事情もあり出来るだけ一人で入りたかった。そんな、響を見てピンとくる未来。

 

「大丈夫だよ、響。胸の傷だって皆は気にしないよ」

 

未来は響が嫌がる理由が過去にツヴァイウイングのライブ中の事故で負った胸の傷だろうと思っていた。退院した後に響から見せて貰った事がある。

 

「……」

 

未来の言葉に沈黙する響。結局、響は未来に引っ張られて風呂の脱衣所へと行く事になった。未来としても少し強引だと思っていた。

 

━━━ごめんね、響。でも私はもっと響が皆と仲良くなって欲しいの。…でも響、胸の傷そこまで気にしていたかな?

 

お互いに和解出来た響と未来だが、響にはまだ壁のようなものが感じて心配していた未来。この際だからその壁も取ってしまおうと考えたのだ。ただ、自分の記憶では響はそこまで胸の傷を気にしていた記憶がない。…後に未来は知る、自分がどれだけ軽率な行動をしたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お風呂♪お風呂♪」

「わあ、広いですね」

「此処は政府でも自慢のお風呂だからね」

 

素早く服を脱いだ弓美、詩織にあおいが体を洗ったり湯船に浸かったりする。翼もゆっくりと寛ぎクリスは初めてなのかおっかなっびくりで色々と見渡す、途中でタオルを巻いたまま湯船に浸かろうとして翼に注意を受ける。未来はそれに笑いつつ響が入って来るのを待つ。

 

それから間もなく脱衣所の扉が開き、響が入って来た。その姿はタオルで胸の部分を隠していた。そして、そのまま、かけ湯をして風呂に入ろうとするが。

 

「おい、風呂にタオルをつけたまま入るのはマナー違反なんだぜ」

 

クリスが先程、翼に言われた事をそっくり響に言う。その言葉に響はビクっと反応する。しかし、タオルを取ろうとはしなかった。その反応にクリスは湯船から出て響へと近づく。

 

「お前の胸の傷は未来から聞いてるよ。変な目で見ねえから取っちまえよ」

 

そう言い終えると、クリスは響のタオルを素早く抜き取った。響は一瞬アッという顔をしたが直に目を伏せてしまった。「何か響の様子がおかしい」と感じた未来も湯船からでて響へと近づく。

途中、クリスの口があんぐりとしているのが気にはなったが未来は改めて響の胸を見る。

 

「!?」

 

未来が口元を押さえた。

 

━━━違う!!昔の響の傷じゃない!!

 

未来の記憶では響の傷は5センチぐらいの物でしかなく白い線みたいなのがチョンと付いてるだけだった。

しかし、今の響の胸には蜘蛛の巣のような線が肩や首筋まで広がり背中で合流している。シンフォギアの時はインナーで隠れてて見えなかっただけだ。

 

「響、その傷跡!?」

「これ…改造手術の跡なんだ。ショッカーに掴まって改造人間にされた時の」

 

そこで、初めて未来は響が頑なに一人で風呂に入ろうとしていた理由を知った。

その後、響も湯船に入り他の皆も響を囲うように湯船に浸かる。皆、それぞれ響の傷跡を見たりする。そして、響が語りだす。

 

「…これでも大分、傷跡が目立たなくなってきたの。最初は酷かったんだ、顔や手先に足先、お腹にも手術の傷跡が残ってて一年ぐらいしてやっと消えたんだ。でも胸の傷跡はどうしても消えてくれなくて…」

 

響は鏡を見て胸の傷跡を見るたびにショッカーに捕まっていた悪夢を思い出し、未だに心がショッカーから逃れられずにいた。やり場のない怒りと悲しみが響を襲うのだ。それゆえに、この傷を知っている者はフィーネだけだった。

皆が静かに聞く中、響が最後として言う。

 

「ごめんね、こんな気持ち悪い物を見せちゃって。もうみんなの前じゃ脱がないから安心して」

 

そう言い終えると響は湯船から立ち上がり出ようとした。

 

「まっ!」

 

呼び止めようとする未来に翼、クリスとあおいも響を止めようとするが何て声を掛けていいか分からない。下手な言葉は響を余計に傷つけるだけだからだ。

 

「そんな事ない!アンタの…響の傷はカッコいいよ!!」

 

風呂場に大声が木霊する。クリス達が声のした方を見ると叫んだのは弓美だった。

 

「ありがと、お世辞でも嬉しいよ」

「お世辞なんかじゃないよ!それに胸の傷は響の所為じゃない、全部ショッカーが悪いんだ!響が気にする事じゃないよ!」

「そうだよ!ビッキーの傷はカッコいいよ!気持ち悪くなんてない!私が保障する!」

「そうですよ、立花さん!少なくとも私達はあなたの傷を気持ち悪いとは思いません!」

 

それに、頷いたクリスや翼、未来も続く。

 

「そんな物、気にするな。お前はお前じゃねえか!」

「立花、そんな傷の事は気にするな。少なくとも私は立花に敬意を払う」

「クリスちゃん、翼さん」

「響…」

「…未来」

「ごめんね、響。知らなかったとは言え、響が嫌がってたのを無理矢理。…私、最低だね」

 

知らなかったとはいえ、響の傷を皆に見せてしまった。未来の心に後悔が押し寄せる。しかし、響の未来の涙を指で拭くと笑みを浮かべる。

 

「そんな事ないよ。未来の気持ちは分かってたしそれがとても嬉しかった。…もうちょっとだけお風呂に入ろうか」

 

響としても未来がお節介焼きなのは知っている。昔と変わらない未来に新しい友達の説得で湯船に入りなおす。その目じりから液体が流れた。その日、響は久しぶりにゆっくりと親友と風呂に入ってリフレッシュ出来た。

 

 

 

 

 

 

 

響の時は過ぎていく。まるで、ショッカーに捕まっていた間の青春や日常を謳歌するように。

 

 

そして…

 

 

 

「ソロモンの杖の護送?」

「そうだ」

 

再び、時代が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=???=

 

「これより、XXX回目の実験を行います」

 

科学者と思しき人物が薄暗い部屋の中で呟く。周りには同じ姿の科学者に黒ずくめの男たち…戦闘員が居る。

そして、科学者の前に液体が満たされた容器の中に灰が積もっていた。科学者が手に持っているフラスコの液体を灰へとかける。暫しの沈黙の後、灰に変化が現れ容器の液体が減っていくと共に灰が集まり肌色をしていく。そして、最後には容器の液体が空となり女性の姿が其処にあった。

 

「ここは?」

 

「お喜びください。『スーパーXアルファー液』の実験は成功です。首領」

『よくやった、これでノイズに殺された者も復活できる。早速、ノイズに殺された物理学者のエドワード博士と数学者のケインズ博士の復活を急ぐのだ。女は改造人間研究室へと送れ』

「はっ」

 

その日、悪の組織が画期的な発明をする。しかし、世間がそれを知る事はなかった。

 

 

 

 




響の胸の傷のイメージは新仮面ライダーSPIRITSの一巻に出る一文字ですね。一文字のように感情が高ぶっても顔に傷跡が浮かばない代わりに胸の手術跡は消えない設定です。響の傷跡は13話でもちょろっと出てます。

次回からG編スタート。

弦十郎が歌ってたのは彼の代名詞になりつつある「英雄故事」ですね。文字だけじゃ何歌ってるのか分かんねえや。英雄故事がカラオケにあるのか?…しらない。

最後にまた設定を

スーパーXアルファー液

過去にショッカーが入手した死者を蘇らせる「Xアルファー液」だったが、ノイズに殺され灰となった者の復活は不可能であった。しかし、ノイズに殺された科学者の知識を欲したショッカーは諦める事無く「Xアルファー液」の改良を進めていた。
「スーパーXアルファー液」の完成によりショッカーは灰によって人間の保存方を思い付きそれを目的としだす。

これで、ショッカーは灰になっても復活できる。




原作でも、政府関係者が被害者やノイズの灰を機械で吸い取ってるけど、吸い取った後どうしてるんだろ?
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