調と切歌がマリアと合流する数分前
「イーッ!」
「しつこいデス、こいつ等!」
切歌の鎌が戦闘員を切り裂く。切り裂かれた戦闘員は緑色の泡になって消えてしまった。ノイズとは違い最初は戦闘員を殺す事に罪悪感を感じていた調も切歌も無数に現れる上に本気で殺しにくる戦闘員を倒す事で罪悪感が薄れていった。
「でも、切ちゃん。こいつらそんなに強くないよ」
ヘッドギア部分のツインテールから小型の赤い丸鋸を出し複数の戦闘員を倒した調がそう言った。切歌もそれには納得している。
「だいぶ数も減ってきたデス。このままマリアと合流を…」
まだ複数の戦闘員が居る中、切歌がそこまで言い掛けた時だった。目の前の壁を突き破り何かが来た。
「な、なんデスか!?」
「…新手?」
「戦闘員が随分とやられてるから来てみればガキどもか、俺が始末してやる」
壁を突き破ったそれはゴーグルのような目を輝かせた。
時間は戻り現在
『皆さん、緊急事態です!『フィーネ』と名乗ったマリア・カデンツァヴナ・イヴ氏に人質にされていた観客たちが警官隊に襲い掛かりました!!一体中で何が起きたのでしょうか?…!発砲音です!発砲音が聞こえました!!』
会場での騒ぎを聞きつけたテレビクルーが付近で取材をしていた時、カメラが会場前の道路は混乱に陥りつつある光景を捉えていた。当初は警官隊も人質が解放されたと思い込み無防備に近づいて襲われ武器などを奪われた。デッドマンガスにより殺人鬼となった観客たちは次々と警備していた警官隊や機動二課職員を襲い一部が野次馬の市民にも襲いだす。
中には警察のパトカーを奪って通行人を轢こうとするものまでいたが、
「やらせるか!」
指令室から救援に駆け付けた弦十郎が暴走するパトカーにパンチをしてひっくり返す。弦十郎の欠けた指令室はよけい右往左往とするがノイズではなく人間が暴れてるなら自分でも対処出来ると踏んでいた。しかし、
「殺す…殺す…」
引っ繰り返ったパトカーから出てきた元観客はどこで拾ったのか鉄パイプを持って襲い掛かる。
「…ふん縛るしかないか」
デッドマンガスによって気絶する事も無い殺人鬼化した観客の手足を縛る事にする弦十郎。見れば他の警察官も弦十郎を同じことをやろうとしている。そんな時にコンサート会場から轟音が響き何かが戦っている事が伺えた。
「彼女達に任せるしかないか」
出来れば弦十郎も会場に行って怪人と戦いたかった。しかし、響たちの事だ「私達の事より観客の皆を」というのが目に見えていた。そう考えた弦十郎はまた一人の殺人鬼化した観客をふん縛った。
余談ではあるが、弦十郎が拳一つでパトカーを引っ繰り返す映像が取れた為、ニュース映像はヤラセではないかと疑われる事になった。
「どうした装者ども!ゾル大佐を倒した力を見せてみろ!」
突然現れた二体目の怪人、ベアーコンガーが響に翼とクリスに襲い掛かる。響と翼が前衛で抑えつつクリスが後衛に回り援護射撃をする。が、ベアーコンガーの攻撃を完全にいなす事が出来ず翼の頬や肩にベアーコンガーの爪の傷が出来始める。
「こいつも…強い!」
「アタシの攻撃は直撃してるのに!?」
「だとしても!」
響の拳も翼の剣もクリスの射撃もベアーコンガーには全く通用してるようには見えない。ベアーコンガーの爪が二人のシンフォギアの一部が砕かれ響にも重い一撃を入れる。
「こんな化け物に!」
「化け物ではない、怪人と呼ぶんだな!」
ギルガラスの薙刀がマリアのマイクを弾き飛ばす。追撃を続けるギルガラスにマリアはマントを使って攻撃を防ぐのが精一杯だ。
「…この!」
「マリアはやらせないデス!」
調と切歌がマリアの援護をしようとするが、ギルガラスの薙刀と拳が二人を迎撃し、ステージの床に殴り倒す。薙刀の柄が切歌の側頭部をギルガラスの拳が調の腹部に減り込む。床に倒れる調は咳き込み切歌に至っては白目を剝いていた。
「調!切歌!」
倒れる二人の名を呼び駆け寄ろうとするマリアだが、目の前にギルガラスが立ち塞がる。
「!退けぇ!」
「先に死ぬのは貴様か?慌てなくてもあの二匹も纏めてあの世に送ってやる」
「舐めるな!」
ギルガラスの言葉に憤慨したマリアは両腕を上に突き出して両手首部分のギアを一つにして槍となってマリアの手に納まりギルガラスへと向ける。
「ほう、アームドギアというやつか。面白い!」
『マリア!』
「マムは黙っていて、こいつは倒さなきゃいけないんだ!」
マムと呼ばれる女性の言葉を遮りマリアはガングニールの槍でギルガラスに立ち向かう。槍と薙刀で幾つもの火花が散り一見互角のようにも見える。
「さっきよりはマシだな、だがその程度か?」
「アームドギアを出したのに…まだ強い!」
ギルガラスは未だに余裕を見せていたがマリアは早くも焦りの色が見える。調はまだ無事ではあるが、薙刀の柄で側頭部を殴られた切歌が不味いと判断して焦りが出たのだ。
早く助けねばと思えば思うほど攻撃が雑になりギルガラスが有利となる。そして、激しい金属音の後にマリアの槍が手から離れてしまった。
「しまっ!?」
「ここまでだな、死ねッ!」
ギルガラスの薙刀の柄がマリアの足を強打させ床へと倒す。そして、薙刀の刃をマリアへと向けそのまま胸に刺されるかに思われた。
首をかしげて 指からするり 落ちてく愛をみたの
拾い集めて 積み上げたなら お月さまに届くの…?
歌が聞こえたと共に無数の赤い丸鋸がギルガラスに迫る。咄嗟にマリアへの攻撃を止め迎撃するギルガラス。其処には立ち上がる者が、
「調!?」
「マリアは…やらせない!」
DNAを教育していく エラー混じりのリアリズム
人形のようにお辞儀するだけ モノクロの牢獄
腹部を押さえ口から涎を垂らしつつ無数の赤い丸鋸を出し続ける調だが、ギルガラスには全く効果がない。手に持つ薙刀で次々と叩き落され体に命中しても碌に傷すら出来ない。ゆっくりと近づくギルガラスに恐怖した調は赤い丸鋸を出したヘッドギアから今までの奴より二つの大型の丸鋸を出してギルガラスに投げつける。
「だからそんな…世界は… 切り刻んであげましょう」
γ式 卍火車
ギルガラスは回避する事もなく大型の丸鋸を受けた。一瞬、倒したかと喜ぶ調だが、良く見ると二つの大型の丸鋸がギルガラスが同時に素手で止めていた。
「威力からして間違いないか」
そう言い終えると共にギルガラスが掴んでいた大型の丸鋸を握り潰す。
「!?」
「逃げて、調!」
自分の技をアッサリと潰された調が驚愕しマリアが逃げるよう叫ぶが、ギルガラスの拳が調の頭部を攻撃する。咄嗟にツインテールのアームでガードしようとしたが、アームごと粉砕されて床に倒れる調。尤も、アームを使わなければ調の頭すら粉砕されていた。
「う…アグッ」
調から苦しそうな声が漏れる。ギルガラスの足が調を仰向けにして胸を踏みつけたのだ。
「装者どもの攻撃を受けて分かったが…お前が一番弱いな」
「!?」
ギルガラスは調がこの中の装者で一番弱いと睨み真っ先に排除しようとした。実力も見抜かれた調もなんとか状況を打破しようとギルガラスの足の下で藻掻く。しかし、調がいくら力を入れてもギルガラスの足はビクともしない。
だが、それを見て笑ったギルガラスが少し足を浮かせた後に再び調の胸を踏みつける。
「ガフッ!」
悲鳴と口から血を漏らす調を見てギルガラスは何度も踏みつける。踏みつけられる度に短い悲鳴と血を吐き出す調。
「調!!」
マリアの悲鳴が木霊するがギルガラスは構わず調を踏みつけ続ける事を止めない。
「何度目で死ぬかな?ショッカーに逆らった事を後悔して死ね!」
最早、決着はついている。それでもギルガラスは調を攻撃するのを止めないのは見せしめとして殺す気だからだ。そして、トドメ刺そうとしてもう一度足を上げた時に片方の足に誰かが捕まった。マリアではない。マリアは、まだ床へと倒れていて手放したガングニールの槍を取ったところだ。
もう片方の足の方を見れば予想通り、意識を戻した緑のシンフォギアで鎌を武器にしていた切歌だった。
「調は…殺らせないデス!この命に代えても…」
「鬱陶しいぞ!このムシケラが!」
ギルガラスが再び薙刀の柄で切歌の顔を殴りつける。それでもギルガラスの足を離さない切歌。しかし何度も殴られてる内に鼻から血が出て顔にも痣が出来つつあった。そこで、業を煮やしたギルガラスが薙刀の刃を切歌へと振り下ろす。薙刀の刃が切歌に刺さるかと思われたその瞬間、黄色い風のような物が吹いて、切歌を狙った薙刀の刃が何もない床へと刺さる。ギルガラスが床を見ると倒れていた調も消えていた。その状況に茫然となるマリアだったが、
「間に合ったね」
ギルガラスから少し離れた場所から声がし其処に視線を向けると、
「…どうして」
「…私達を助けたデスか?」
「助けたかったから。じゃダメ?」
調と切歌を抱えた
ベアーコンガーと戦っていた響はギルガラスが薙刀で切歌を殺そうとしてるのを目にし居ても立っても居られなく助けにきたのだ。尚、三人でやっと持たせていたベアーコンガーの戦いが翼とクリスの負担が大きくなった。
「…偽善者!」
「調!?」
響の言葉に調がつい口走ってしまった。鼻を押さえた切歌が窘めようとするが、調だって分かってはいる。もし、響が助けなければ自分は愚か大好きな切歌もギルガラスに殺されていた。
それは分かっているが響のスタンスがどうしても許せなかった。
「かも知れないね」
「「!?」」
響の言葉に思わず驚く二人。言い訳の一つでもするのかと思っていた調は響を凝視する。
「私は…困ってる人を助けたい!特にショッカーに襲われてる人は、…でもショッカーは狡猾で今回みたいな事もしてくる。ルナアタックの英雄なんて言われたけど私に出来る事なんてたかが知れてる。…痛ッ!」
調を抱えてる腕に痛みが走る。気付いた調が響の腕から離れる。
「あなた、怪我をして…え?」
切歌を救う時にギルガラスの薙刀で切られたのだろう切り傷を見た調。手当の一つでもしようとしたが響の傷口からありえないん物が見てしまった。機械だ、チラリとだが見え調は思わず息を飲んだ。
暫く動けないで居た調は目の前の傷が高速で治っていくのまで見た。
「調?」
「…ごめんね」
「!?」
一瞬、響を疑った調だったが、様子のおかしい調に切歌が心配して響が一言謝る。その事に少なからずショックを受ける調。だが、まだ戦いは終わっていない。槍で立ち上がったマリアが再びギルガラスと戦い切歌を離した響もギルガラスへと向かった。
「まさか、あのショッカーが現れるとは…ですが思ったよりマリア達の数値は伸びてはいます」
マリアにマムと呼ばれた高齢の女性はモニターを見て渋い顔をする。モニターにはフォニックスゲインの波長と数値が書かれていた。
「ですがこれ以上はマリアも調も切歌も持ちそうにないですね。アレを使うしかないですか」
そう言い終えるとマムはあるスイッチを押した。
響の拳がギルガラスへと当たりマリアも槍のエネルギーを放出して援護をする。翼も剣の柄でベアーコンガーの爪を受け止めると背後に回っていたクリスが小型ミサイルを連続で撃ち命中する。
攻撃は激しく、響達の必死の攻撃にギルガラスもベアーコンガーも大分消耗してきている。それでも未だに怪人達が有利ではあった。正直、響達も怪人以上に消耗している。
その時だった。会場の中心が光り、其処から薄緑色の何かが増殖するように出てきて頭部部分が赤く光る。
「緑のイボイボ?」
呆気に取られた響が呟く。誰しもがショッカーの秘密兵器かと思ったがギルガラスとベアーコンガーの反応は渋い顔だった。
「増殖分裂型のノイズだと!?相手をするのが特に面倒な奴だ!」
「地下に何か搬入しているのは知っていたが、こいつか!」
増殖分裂型ノイズ。ノイズの中でも最も厄介だと言われる種類。確認されてる大型ノイズの中でも特に危険と言われ此奴が出た街は実質放棄されると言われる。
ショッカーでもこのタイプのノイズは面倒な存在として相手したくないノイズ、ナンバー1と言われている。
「これを使うなんて…マム?」
『三人とも此処は引きなさい。怪人の相手はそのノイズにさせます』
「でも…わかったわ。調、切歌」
マムの言う通り、マリアと調、切歌はその場を後にする。マリアとしては戦い怪人を倒したかったが調も切歌も怪人によって大ダメージを受けている。そして自分も無傷とは言えなかった。調はフラつきつつ腹部を押さえ偶に血を吐き、調を支える切歌は未だに鼻血も止まらず切歌の顔がギルガラスに殴られた箇所が少しずつだが腫れ上がっていた。「もう戦えない」マリアはそう判断した。調と切歌は最後に響の方を見た後にマリアに付いて行った。
「逃げるか!?」
ベアーコンガーが追いかけようとするが、タイミングよく餅のように破裂したノイズの一部がベアーコンガーの前に落ちそれがノイズとなる。そのノイズはベアーコンガーを攻撃し進路を妨害する。
「ノイズが怪人を狙ってる?」
翼の呟きに響もクリスも驚く。見れば空中に飛んだギルガラスにもノイズが襲い掛かり薙刀で払い除けてた。たまに響達にも襲うがあくまでも怪人達が目標のようだ。
「どうすんだよこれ」
「こいつの特性は増殖と分裂か」
「このままだと、此処から溢れ出しますね」
今は怪人が相手をしてるからいいが、倒しても倒しても増殖するノイズに打つ手はない。そんな折に会場の施設内にいた緒川から連絡が来て会場の周りは混沌としていてノイズを外に出すわけにはいかないと言われる。
「出すなって言われてもな」
「下手に攻撃しても増殖と分裂を促すだけだ。あの怪人のようにな」
翼の言葉に響達はベアーコンガーの方を見る。幾つのも分裂体に集られては力で叩くがその度に数が増えていく。
「絶唱。…絶唱を使いましょう」
響の言葉に翼もクリスも息を飲む。
「絶唱ってあのコンビネーションをやる気か?まだ未完成だぞ!」
「でも、それしか…」
「増殖力を上回る殲滅力で一気に倒すか。他に手はないだろうな…しかし怪人はどうするんだ?」
増殖分裂型のノイズを倒してもまだ怪人が残っている。ノイズが怪人を倒すまで待つという手段もあるが、その場合怪人達が逃走する可能性が高い。何より怪人達が暴れまわった後の後始末が出来る保証が何処にもない。
「はい、だから…」
響に一つ策があった。その説明に二人は驚く。
「本当にやる気かよ!?」
「ある意味、立花らしいと言えばらしいか。私は乗るぞ」
「ああ、分かった分かった。アタシも乗ってやるよ」
クリスが溜息をつくと改めて響と翼、クリスが顔を見合わせ翼とクリスが響の肩に手を置く。
「いきます、S2CA トライバースト!!」
響の掛け声に三人は目を瞑る。ノイズを相手にしているギルガラスもベアーコンガーもまだ気づいていない。
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
「この歌は!?」
「ん?なんだ!?」
響達が絶唱を口にしてギルガラスとベアーコンガーがやっと響達が何かをしようとしてる事に気付いた。
Emustolronzen fine el baral zizzl
Emustolronzen fine el baral zizzl
Emustolronzen fine el baral zizzl
「絶唱だと!?何をする気だ、小娘ども!」
「何をするのか知らねえが俺が引導を渡してやるよ!」
ベアーコンガーが響達を殺そうと近づくが、
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
「ええい、ノイズめ!邪魔をするな!!」
「このノイズども、俺達を敵として認識してやがる!」
途中でノイズがベアーコンガーの進路を妨害する。見て居られなかったギルガラスも響達に迫ろうとしたが、ベアーコンガーと同じくノイズの妨害を受ける。
Emustolronzen fine el zizzl
Emustolronzen fine el zizzl
Emustolronzen fine el zizzl
絶唱を唱え終わった直後に響達から強烈な光りが溢れ出し一番近くにいた分裂体のノイズが消し飛んだ。更に他の分裂体のノイズも消し飛ぶ。
「なんだ、このエネルギーは!?」
「話に聞いていた以上だぞ!?」
ギルガラスもベアーコンガーもこれには驚く。話に聞かされていた以上のエネルギーが辺りに渦巻きノイズを包み込む。
「グっ!」
「耐えろ、立花!」
「もう少しだ!」
響の苦しそうな声に励ます翼とクリス。
S2CA トライバースト。三人の絶唱を響が調律し一つのハーモニーと化し、その力は普通の絶唱以上の力がある。半面、響への負荷が絶大でもある諸刃の剣。
「こんなの…へいき、へっちゃらだーーー!!」
響達のエネルギーが虹のような光りとなり辺りを包み、其処を中心に光りがノイズに当たるとノイズが消滅しだす。
「ノイズが!」
「消えた!?」
その力を目の当たりにした怪人達も驚愕する。
響達の出した光は会場の外まで見えた。警官隊も野次馬も弦十郎もその光を見て唖然とする。暴れている殺人鬼化した観客の取り押さえも完了したが警官隊や機動二課職員に多数の犠牲者を出した。幸い、一般市民の方は無事ではあった。
そして、その光りは未来たちも同様に見ていた。
「響」
未来が響の無事を祈る。
響達のトライバーストの虹が最初に出てきた増殖分裂型に接触し周りに付いていたブヨブヨが弾け飛び骨組みが現れる。そして、ノイズの頭部付近に赤く光るコアらしきものが現れた。
「あれのコアが露出した!?」」
ベアーコンガーが増殖分裂体のコアを確認して驚く。ショッカーでも増殖分裂型のコアを見た者は居ないからだ。
「はあ!」
しかし、そんなベアーコンガーに斬りかかる者がいた。翼だ。響から手を離した翼がベアーコンガーに斬りかかったのだ。
「ぬ!?」
突然の事に驚くベアーコンガーだったが、翼の剣ではベアーコンガーの体を斬れない。せいぜい傷つけるのがやっとだ。それにも関わらず翼はベアーコンガーに攻撃させまいと次々と剣でぶん殴り翼の蹴りがベアーコンガーの顎に入り少しだけ浮かせた。
「こんな物で、俺が「まだだ!」たお…!」
空中で態勢を立て直したベアーコンガーだったが、次にクリスが両腕のガトリング砲と小型ミサイルの連続攻撃でベアーコンガーを攻撃する。しかし、それでベアーコンガー倒せる程ではない、せいぜいベアーコンガーの体を浮かせ少し移動させる程度だ。
「無駄だ!こんな豆鉄砲で俺を倒せると思うな!」
ベアーコンガーがクリスに言い放つ。この銃撃が止んだら直ぐに翼もクリスも殺す気でいた。
「バ~カ、アタシの目的はお前を倒す事じゃねえ。お前を良い位置に置く為にやってたんだよ」
「良い位置だと!?…!俺の後ろにノイズのコア!?」
クリスの言葉に最初は意味が分からなかったベアーコンガーだが、背中に何か感触がして振り返ると其処には響達のS2CAの影響でコアが露出した増殖分裂型のノイズが居た。
「今だ!」
「あいつ等をぶちのめしてやれ!」
翼とクリスの声に響は両腕に付いていたギアを片手に持っていき、体のギアも少し形が変わる。虹のように広がっていた光も響の元に集まり内部のギアが回転する。
「何だ、何をする気だ!?」
ベアーコンガーが声を無視して腰のブースターで一気に飛び上がり一気に拳を構える。
「これが、私達の絶唱だああああああああ!!!」
そして、響はベアーコンガー諸共大型ノイズのコアを殴りつける。
「こんな物でショッカーの怪人を倒せると…」
「倒す…お前達を絶対に倒す!!」
響の声と共に腕のギア部分が開いて回転する。その拳にベアーコンガーの体が耐え切れなくなりヒビが入る。そのヒビが全身へと広がり、
「こんな馬鹿なあああああ!!」
響の拳に耐えきれなかったベアーコンガーが爆発する。更に響から放たれた拳のエネルギーが竜巻のようになり怪人の後ろに居たノイズのコアを破壊する。
「馬鹿な、これがシンフォギアのエネルギーだと言うのか!?」
空を飛んでいたギルガラスもその竜巻の様なエネルギーに巻き込まれる。そのエネルギーは遥か上空まで伸び宇宙にまで達しようとしていた。
「アレが…」
「…奇麗」
「言ってる場合じゃないデスよ、調。…痛ッ」
会場の近くのビルの屋上で会場の様子を見てたマリア達が呟く。調に肩を貸していた切歌も顔に痛みが走る。
「それはあなたもよ、切歌。…顔が腫れてきてるじゃない!急いで戻るわよ」
響達の戦いを見届けたマリアは調を負ぶって急いで戻る。マリアの背中に負ぶさった調は光の治まりつつある会場の方を見る。自分が偽善者と言ってしまった響がどうにも気になったのだ。
光りの治まった会場ではシンフォギアから普通の服に戻った響がその場に座っていた。
「無事か!?立花」
響と同じく普通の服に戻ったクリスと歌う時の姿に戻った翼が響に駆け寄る。その事に響は「大丈夫です」と言った後にクリスが響を立たせる。
そんな時だった、上から何かが落ちてきた。警戒するクリスと翼だったが、
「…ギルガラス」
響の言葉に翼とクリスはギョッとする。確かによく見ればさっきまで戦っていた怪人の片割れギルガラスだ。尤も背中にあった両方の翼は引き千切られ両腕も両足もズタボロになっていた。よく見れば体から火花も散っている。
「…アタシ達の勝ち…だよな」
「その筈だ…」
ギルガラスは響の作ったエネルギーの竜巻に呑まれボロボロとなり会場に落ちてきた。今一勝った気になれないクリスだがそんなギルガラスに響が近づいていく。
「おい」
思わずクリスが制止しようとしたがそれよりも早く響がギルガラスの横に行き顔を覗き込む。
「…貴様らか…体が動かん…俺は負けたようだな…」
「ギルガラス、皆を治せる解毒剤を渡して」
今にも死にそうなギルガラスの言葉を無視して響は解毒剤を渡すよう言う。響自身、ギルガラスが持っている可能性は低いと思っていた。しかしゼロではない。
「…解毒剤か…いいだろう…俺のベルトを調べてみろ」
ギルガラスの返事に響はギルガラスのショッカーベルトを調べる。其処でショッカーベルトから赤い液体の入った小瓶が出てきた。
「これが…」
「…そうだ…解毒剤だ。…尤も…数人分しか…ないがな…」
「数人分!?」
響が愕然とする。響の記憶ではギルガラスの命令で会場を出た観客は100人は居たからだ。これでは圧倒的に足りない。成分を調べて機動二課本部で量産するしかない。
「…一つ、良い事を教えてやる。…俺の…デッドマンガス…で殺人鬼に…なっていた奴に…解毒剤を…使えば…そいつの…殺人鬼になっていた…時の記憶は…そのまま残る…」
「「「!?」」」
「…一体何人の…人間が正気のままで…いられるかな…」
「なんて悪辣な!?」
「お前らこそ正気じゃねえ!!」
ギルガラスの言葉に意味に気付いた翼とクリスが罵倒する。しかし、それを冷ややかな目で見るギルガラス。
「…ショッカーの怪人…に悪辣や正気か…なんて聞くのは…100年遅い。…俺の体力も…ここまでか…先に地獄で…待っているぞ…」
「「!?」」
翼とクリスがギルガラスの言葉を聞き終えると同時に響の体を引っ張り距離を開ける。瞬間、ギルガラスの体は爆発し木端微塵となり破片が辺りに散らばる。衝撃波の風が響達を通り過ぎる。ギルガラスの爆発した場所を見て、その光景に響達は戦いが終わったと実感する。ギルガラスを倒した。
しかし、響は浮かない顔をして赤い液体の入った小瓶を見つめた後に会場を見回す。戦いで気にしてる余裕が無かったが今なら分かる。夥しい数の人の死体が。翼もクリスも少し見た直後に目を逸らす程の悲惨な光景だった。
今日、会場に居た数万の人間がショッカーに殺された。響の胸に悔しさが溢れる。
「…戦いには勝ったが…これでは実質、我々の負けだ!」
「畜生、ショッカーめ!アタシ等の油断を付きやがった!」
翼とクリスの悔しそうな言葉に響も頷く。少なくともショッカーの初期目的は達成している。自分達ショッカーの再始動を響達に知らせる最悪な狼煙として。
━━━ショッカー首領の声がゾル大佐と違う事をちゃんと説明できていたら!
響は悔やんでも悔やみきれない気持ちで一杯だった。
そして、そんな響を見つめる怪しい影が……
ショッカーの所為でマリア達にも被害が、ギルガラスの調への発言はGXのミカの所為という事で。
増殖分裂型うんぬんはかなり適当。調べても絶唱でしか倒せないしか出てこなかった。
悪役が凶悪であればあるほど倒した時のカタルシスは大きくなる。
次回予告
我等が立花響にショッカー本部が送った次なる使者は怪人「セミミンガ」
ラジオ局を占領したショッカーは風鳴翼の名を使い殺人音波で虐殺を行ない日本を大混乱に落とそう企んでいた。響達は殺人音波を止められるのか?
次回「悪魔の歌」にご期待ください。