改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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39話 ドクターウェル

 

 

 

廃病院の遥か地下。黒い全身タイツに覆面をした者たち…ショッカー戦闘員がモニターを監視する。

モニターには、響と翼にクリス、そしてウェル博士が映っている。

 

「さあ、ウェルよ。貴様の能力を見せるがいい」

 

黒いマントをした老人がそう呟く。そしてその背後には人ならざる者たちが騒ぎ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの爆弾テロは貴様が仕掛けたのか!?ウェル博士!」

 

「…まあ、そう言う事ですね。全てはこのソロモンの杖を手に入れる為に、ね」

 

少し沈黙しそう言って、ウェル博士はソロモンの杖から何体ものノイズを出す。何時の間にかケージに入っていた何かが反応するそぶりを見せる。

 

「バビロニアの宝物庫からノイズを呼び出し制御できるなどこの杖以外にありませんから。どうです?これがあれば世界を思うままに出来ると思いませんか?」

 

「ショッカーみたいな事を言いやがって!」

 

ウェル博士の言葉にキレたクリスが腰の部分のギアに小型ミサイルを展開する。途端、クリスの体に異変が走る。それにも関わらずクリスはウェル博士の出したノイズに向けて小型ミサイルを撃ち放った。

 

「うあああ!?」

 

途端にクリスが悲鳴を上げる。激痛がクリスの体に走ったのだ。それでも、クリスの小型ミサイルは着弾し廃病院の一角が吹き飛ぶ。

 

 

 

 

「報告通りAnti LiNKERにより装者達の適合値は減少しているようです」

「雪音クリスがシンフォギアのバックファイアーに蝕まれています」

 

クリスの様子は廃病院地下のショッカーアジトでも確認されている。戦闘員達の報告に黒いマントの老人は笑みを浮かべた。モニターには三人のデータが映し出されている。

 

「ウェルの奴め、中々の物を開発したではないか。合格でよかろう」

 

 

 

 

 

クリスのミサイルの爆炎から青白く光る塊が出る。直後に塊が崩壊し中からウェル博士が出てきた。なんて事は無いクリスのミサイルが直撃する前にノイズに自分を守る様、指示を出していたのだ。

そして、煙の中から響とクリスの肩を貸す翼が出て来る。

 

「どうなってんだ、何でこっちがズタボロなんだよ」

 

クリスの言葉に翼は思考する。

 

━━━この状況で強力な技を使えば、最悪そのバックファイアーで身に纏ったシンフォギアに殺されかねない。だが、いきなり何故適合値が落ちたんだ?…!立花の言っていた赤い煙!?

 

翼は先程、響が言っていた赤い煙の事を思い出す。毒ガスの類で無くシンフォギアに作用するガスだったならクリスや自分達がここまで苦しむのも納得する。

 

「!ノイズがさっきのケージを持って行ってます!」

 

響がチラっと空の方を見ると先程、自分達を襲って来た怪物の入ったケージが気球のように空を飛ぶノイズに運ばれていた。ノイズがこのまま行くと海の方に行ってしまう。

 

━━━さて、デモンストレーションとしては十分でしょう。後は…!

 

空を飛んでいくノイズを見送ったウェル博士が響達の方に視線を向ける。立花響が構え、肩に担いだクリスを下す翼にアッサリと降伏の意思を見せる。

 

「立花、その男の確保を!雪音を頼む!」

 

そう言い終えると翼は空を飛ぶノイズの方向に向けて走り出す。途中、アームドギアの剣を抜く。

 

━━━天羽々斬の機動性なら!

 

 

 

 

 

翼の行動は二課の方でも伝えられていた。

 

「翼さん、逃走するノイズに追い付きつつあります!ですが…」

「指令!」

 

翼の進む先は海だ。つもり陸路ではない。

二人のオペレーターの声に頷いた弦十郎。

 

「そのまま突っ込め、翼!」

 

弦十郎の檄が翼に送られた。

 

 

 

 

 

 

「了解!」

 

弦十郎の言葉に頷いた翼はそのまま、途中で途切れた道路まで走り一気にジャンプして足の部分のギアからブースターで飛ぼうとしたが推力が足りないらしく途中で落下する。

 

 

 

「仮説本部、急速浮上!!」

 

 

 

そのまま落下して海に落ちるかと思われた翼だったが海中から突如何かが飛び出し翼がそれを足場にして再びジャンプする。翼が飛んだ後に海に着水する。

 

それは潜水艦であった。

新造された次世代型の潜水艦。それが特異災害対策機動部二課の新たなる仮説本部だった。機動性と機密性を上げショッカーに前本部を襲撃された前例から造られたのだ。

そして、仮説本部を足場にしてジャンプした翼は空を飛ぶノイズを切り裂いて倒した事でノイズが掴んでいたケージが落下する。

翼はそれを追ってケージへと近づく。海の近くまで来ていたウェル博士を捕まえていたクリスと響もそれを目撃する。

 

あと少しで翼がケージを掴むといった時に突如横から衝撃を受けて弾かれ海へと落下する。そして、翼が弾き飛ばされる前にいた場所に一本の槍があった。

 

「翼さん!」

 

突然の事に響は翼の名を叫ぶ。

そして、海の上に浮ぶ槍の柄に降り立つ一人の人物。丁度怪物のケージを掴むと同時に背後から太陽が昇る。その人物とは、

 

「マリア…さん…」

 

黒いガングニールを纏ったマリア・カデンツァヴナ・イヴだった。

 

「時間通りですね、フィーネ」

 

ウェル博士の言葉に響とクリスは驚愕する。

 

「フィーネだと?」

 

「終わりを意味する名は我々組織の象徴であり、彼女の二つ名でもある」

 

「まさか…じゃあアイツが…」

 

「そう再誕したフィーネです!」

━━━まぁ、どこまで本当かは知りませんけどね

 

心の中で呟くウェル博士。どうにもウェル博士自身、マリアが本当にフィーネであるか疑問でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、潜水艦を仮説本部にした特異災害対策機動部二課でもマリアがフィーネという情報を聞いていた。

 

「つまり、異端技術を使う事から『フィーネ』という組織になぞられたのではなく」

「蘇ったフィーネそのものが組織を統括しているっていうのか?」

「馬鹿な!?ショッカーが滅んでいない事は了子くんだって分かってるだろうに!」

 

二人のオペレーターの言葉に弦十郎が嘆くように呟く。なによりフィーネは二課以上にショッカーと敵対している。そんなフィーネがショッカーを放置して二課と敵対する理由が分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

マリアが登場してからその場が暫く沈黙する。海に落ちた翼は海面から顔を出し、クリスと響はウェル博士を捕らえたまま固まっている。それ程までにウェル博士の言葉は衝撃的だった。

 

「…嘘です、あの時了子さんは…」

 

響が思い出すのはゾル大佐との死闘の時に手を貸してくれた事と、アドバイスしてくれた事だ。

 

『三人とも何をしている。胸の歌を信じろ!!』

『私は最後までショッカーにいいようにされてしまった。何が終焉の巫女だ』

『なら、最後のアドバイス、胸の歌を信じなさい。クリス、後はあなたの自由に生きなさい!』

 

最後に優しく笑みを浮かべて砂の様に散っていった彼女の姿に嘘は無いと思いたい。

 

「リインカーネイション」

 

「遺伝子にフィーネの刻印を持つ者に魂を移し、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システム…」

 

ウェル博士の呟きにクリスがフェーネの終焉の巫女の説明をして響はジッとマリアの方を見続ける。そんな時にウェル博士は少し考えて居た。

 

━━━ただ、そうなると元の魂は何処にあるんだか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くの沈黙の後に海上から水しぶきが上がる。翼が足のギアで海上を滑るように移動して来た。それを確認したマリアは持っていたケージを上へと投げる。投げられたケージは間も無く消失するように消えるが翼はそれに構わず剣を振るいマリアと交差する。

 

「甘く見ないで貰おうか!」

 

剣を巨大化させ一気に振るい斬撃を飛ばす。

 

蒼ノ一閃

 

とっさにマリアもマントでガードするがマントの一部が裂けて海上へと抜けていく。その事に汗を浮かべるマリア。

 

「あ…甘くなど見て…!」

 

翼に言い返そうとしたが、翼がいきなり真正面に入り腹部を蹴られる。その事により二課の仮設本部である潜水艦の甲板の上に着地するマリア。腹を押さえて歯を食いしばっている。

 

「続きはベッドの上で聞いてあげる」

「…可愛くない剣ね」

 

マリアを追って翼も潜水艦の甲板に着地する。翼の言葉に苦笑いするマリアは右手を上げる。海上に浮いていたガングニールの槍がマリアの手におさまった。

その事で、翼もアームドギアの剣を構え二人が睨み合う。

 

「私は全力で戦っている!」

 

マリアが翼へと迫る。翼の剣とマリアの槍が交差し火花を散らす。距離をとる翼にマリアが槍を振り回す。

そして、翼が一気にマリアへと近づくが、

 

この胸に…「ガーブ、ガブ、ガブ、ガブーッ!」やど…「え?」

 

マリアが歌おうとした時に潜水艦の横から水しぶきが上がると共に何かが飛び出して翼に襲い掛かる。

 

「な!?」

 

咄嗟に剣を振るって何とか対応するがそれはマリアと翼の間に降り立つ。

 

「怪人!?」

「ショッカーかよ!?」

「…あれが」

 

それを見ていた響とクリスが反応する。初めて見る怪人にウェル博士もジッと見つめる。頭の前の部分と鼻の部分が異様に伸びており青白い体をした鋭い牙を持ち、腹部に金色のショッカーベルトを巻いていた。間違いなくショッカーの改造人間である。

 

「また、化け物!?」

「こんな時にショッカーの怪人だと!?」

 

マリアと翼も声に出す。まさに最悪な時にショッカーが乱入してきたのだ。

 

「俺はノコギリザメの改造人間、ギリザメスだ!風鳴翼、貴様の命貰い受ける!!」

 

ショッカーの怪人、…ギリザメスがそう言い放ち翼へと襲い掛かる。咄嗟に翼が剣でガードしようとするが、ギリザメスの鼻先に触れた剣が砕ける。

 

「!?」

 

「無駄だ、俺の鼻先のドリルはあらゆる物を砕く!」

 

そう言い放ったギリザメスはがら空きになった翼に蹴りを入れる。ギリザメスの蹴りをまともに受けた翼は甲板に倒れてしまった。

 

「翼さん!」

「ちっ、白騎士が今助けてやる!」

 

そう言ってクリスがアームドギアのクロスボウでギリザメスを狙う。しかし、

 

「危ない、クリスちゃん!」

 

響の言葉と打撃音に振り替える。其処には。

 

「戦闘員!?」

 

何時の間にか自分達に接近していた戦闘員たちがおり、響がクリスに襲い掛かった戦闘員を撃破したところだ。

 

「これが戦闘員ですか」

 

戦闘員を初めて見るウェル博士がまた感心するように呟く。

 

「イーッ!」「イーッ!」

 

そうしてる間にも戦闘員が次々と現れて響達を取り囲む。

 

「ショッカーめ、本格的にアタシ等の邪魔をする気かよ!」

 

「当たり前だ、装者ども!ウォォォォォッー!」

 

クリスの言葉に声たるように誰かが言うと、戦闘員が道を開ける其処から来たのは爬虫類の顔をした首の辺りに襟巻のような物がある怪人が現れた。

 

「また怪人かよ!」

「しかも、私たちの知らない怪人!?」

 

「俺は名は毒トカゲ男!装者ども、その男を渡して死んで貰おうか!」

 

毒トカゲ男の言葉に響とクリスはウェル博士の方を見る。ショッカーの狙いはウェル博士だと気付いた二人は毒トカゲ男と戦闘員達との戦闘に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショッカーが乱入してきただと!?状況は!」

「翼さんは現在、ノコギリザメの改造人間ギリザメスと交戦!押されています!」

「響ちゃんとクリスは戦闘員の集団との戦闘!毒トカゲ男の猛攻に押されています!」

 

ショッカーが乱入した事で二課本部も混乱していた。想定してなかった訳ではない、しかしショッカーの新しい怪人だとどうしても情報が足りずに後手後手に回るしかないのが二課の現実である。

 

「それにしても、ショッカーが次にウェル博士を狙うとは!」

 

ショッカーが昔から科学者を拉致してる事は分かって来ていた。それなら同じ科学者のウェル博士も狙われるのはある意味、納得が出来る。

 

「ショッカーめ、何を企んでいる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガブガブガー!」

 

「くッ!?」

 

ギリザメスのカッター状に左腕を辛うじて避ける翼。そんな、翼に追撃するように口から火炎を吐く。これも辛うじて避けるが翼の息遣いが荒くなる。

 

━━━シンフォギアの出力は大分戻ったが、私一人でコイツを倒せる自信は無い

 

翼がチラっと響達の方を見る。

響達は響達で多数の戦闘員と毒トカゲ男の伸びる舌に苦戦する。あれでは援護も期待できない。

 

「よそ見するとは余裕だな、死ねぇ!!」

 

ギリザメスが此方に飛び掛かって来る。鼻先のドリルが此方に向かってき、咄嗟に後ろに下がって回避する。が、ギリザメスの鼻先が接触した甲板が爆発を起こし潜水艦が揺れる。

 

『翼、何とかギリザメスを引き剥がせないか!?』

 

弦十郎の声が無線から流れる。今のギリザメスの一撃で潜水艦の機能が大幅に破壊されてしまった。このままでは大破して本当に海に沈んでしまう。弦十郎の言葉に翼はギリザメスを睨む。

 

━━━この怪人もかなり強い!

 

「来ないのならコッチから行ってやるよ」

 

何時までも来ない翼に業を煮やしたギリザメスが近づこうとしたが、背中からの突然の一撃に止まり振り向く。

 

「マリア…」

 

「何のつもりだ?小娘」

 

ギリザメスが喰らった一撃はマリアのマントの一撃だった。潜水艦をも傷つける一撃だがギリザメスには傷一つない。

 

「「何のつもり?」そっちこそ突然出てきて私の獲物を横取りして何のつもり!?大人しく消えろ、化け物!」

「!」

 

ギリザメス相手に啖呵を切るマリア。翼はマリアの言葉の一部に反応する。

 

「チッ、生意気な、だが貴様は殺すなと命令されてる。今は風鳴翼の抹殺が先決だ」

 

マリアを無視して翼へと向かうギリザメス。この態度にカチンときたマリアはギリザメスを攻撃し出し翼もそれに続く。二人は無意識だが共闘してギリザメスの撃破を狙った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イーッ!」「イーッ!」

 

「イーイー五月蠅い!」

 

クリスが次々と飛び掛かって来る戦闘員をボーガンのアームドギアで打ち抜いていく。セミミンガの時のような戦闘員ではなく顔にペイントしたタイプやただのマスクタイプの戦闘員が主だったので何とか倒していた。

 

「フフフ、死ねぇぇぇ!!」

 

クリスが背中を見せた事で毒トカゲ男がクリスに向け赤い液体を吐き出す。クリスが気付いた時には遅く避けるのが間に合わない。ならばガードしようとしたが、

 

「クリスちゃん!?」

 

咄嗟に響がクリスを抱きしめて横に避ける。対象を失った赤い液体はクリスの相手をしていた戦闘員にかかる。

 

「イーッ!!?」

 

赤い液体がかかった戦闘員は苦しみ藻掻きそのまま溶けていった。それを目の当たりにしたクリスは顔色を青くする。もしも、響が助けに来ずガードしていたら戦闘員のように自分は溶けていた。正直、響に抱き着かれた箇所が痛むのは内緒だが。

 

「助かったぜ、っておい!博士はどうした?」

 

助けてくれた響に礼を言おうとしたが、確保していたウェル博士の事を思い出し聞くと響もアッという表情をする。振り向くとウェル博士は一人、響達と翼の戦いを交互に見て居り戦闘員も先ずは自分達を倒そうと標的を此方に向けていた。少しムカつくが逃げる様子もないウェル博士を見てホッとするクリス。

 

「惜しかったな、今度こそ死ね!装者ども」

 

「チッ!部下を巻き込んでも平然としやがる!」

「…ショッカーにとって戦闘員なんてその程度なんだよ」

 

部下の戦闘員を巻き込んだ毒トカゲ男だが何の躊躇もない様子に毒づくクリスにショッカーだからと納得する響。まだ多数の戦闘員が居る中、再び戦闘に入る。

 

━━━…時間ですね、こちらもそろそろ…

 

「喰らえぇ!!」

 

「グっ!?」

 

ウェル博士がチラッと時計を確認した直後に毒トカゲ男と響の声がし見ると、毒トカゲ男の舌が伸び響の首を絞めていた。更に、

 

「うわああああああああああああああ!!!!!」

 

毒トカゲ男の舌から高電圧が流れ響を苦しめて悲鳴を上げる。何とか舌を解こうとする響だが高圧電流の所為で思うように体に力が入らない。

 

「!今、助けてやる!」

 

響の異変に気付いたクリスが響を助けに行こうとするが、戦闘員達がそれを阻止する。

 

「!退けえぇぇぇ!!」

 

クリスが必死に戦闘員を倒して響の下に行こうとするが思うように戦闘員が倒れもしない。セミミンガの時のような新型の戦闘員ではないが、適合値の低下したクリスは廃病院での無茶が祟る上に長時間戦ったことでの疲労まである。焦れば焦るほどクリスの攻撃が雑になり戦闘員の撃破率が下がる。…このままでは下手をすれば戦闘員達に負けるかも知れない。

 

「このまま死ねぇ!!」

 

━━━不味い!怪人が僕の予想以上に強い!流石にこれは想定外だぞ!

 

響の様子にウェル博士が若干焦る。その瞬間、

 

「イーッ!?」

 

突如、響く戦闘員の断末魔にクリスと翼、毒トカゲ男が声の発生した場所を見る。其処には何人もの戦闘員が赤い丸鋸に切り裂かれていた。更に毒トカゲ男の伸びた舌も切り裂き響を自由にした。

 

「ぎゃあああああ!?」

 

「…これで貸し借りは無し」

「イガリマーッ!」

 

緑色の大鎌を振るうシンフォギア装者、切歌が数人の戦闘員を切り刻む。

 

「アイツ!?」

「…あの子たち!?ありがとう!!」

 

調と切歌の乱入に一瞬、味方してくれるのかと期待したが、調の放つ無数の赤い丸鋸が戦闘員や怪人もろとも響達にも襲い掛かる。咄嗟にクリスの前に出て当たりそうな丸鋸を叩き落す。直後に響が調に礼を言い、調もそれに頷く。

その様子にクリスが響を呆れた目で見る。

 

「えーい、例の装者どもか!?よくも俺の舌を、邪魔をするな!」

 

「邪魔なのはお前たちデス!!」

「…倒す!」

 

切歌が大鎌のアームドギアで、調が地面を滑るように移動してヘッドギアから赤い丸鋸を出して次々と戦闘員を倒していく。

 

「ヌッ、調子に乗りおって!貴様らの抹殺命令があれば!」

 

調と切歌の攻撃を浴びる毒トカゲ男。

赤い丸鋸や大鎌の攻撃を受けても平気な毒トカゲ男だが、何度も受けてる内に片膝を地面に付ける。全く効いてなかった訳ではない。少しずつだがダメージが蓄積していたのだ。

 

━━━あの子たちに抹殺命令が出てない!?でも今は…

 

「クリスちゃん!」

「ああ、行ってこい!!…でも無茶すんな!」

 

毒トカゲ男がダメージを受けた事でチャンスと感じた響はクリスに声をかける。響の心情を悟ったのかクリスが返事をしそれを聞いた響は腰のブースターで一気に毒トカゲ男に接近する。

 

「立花響!貴様!」

 

響の突撃に毒トカゲ男が気付くが態勢を立て直すよりも響の速度が速かった。両手のギアを引き上げ一気に毒トカゲ男に両拳を叩き込む。

 

「ギャアあああああああ!!」

 

響の拳の勢いに吹き飛ばされ海に落ちた毒トカゲ男。直後に爆発して水しぶきが上がる。舞い上がる水しぶきが雨の様に降りその音以外、全ての音が置き去りにされた感覚が走る。

 

「…よっしゃ!」

 

最初に口火を切ったクリスだった。響が毒トカゲ男を撃破した事に喜び僅かに残っていた戦闘員達が逃げていく。

 

「…凄い」

「まあ、私達のお蔭でもありますデス」

 

その光景を見ていた調と切歌も素直に褒める。目的は果たした、ソロモンの杖も取り戻しウェル博士に近づく。

 

「時間ピッタリ帰還ですね。助かりましたよ」

「助けたのは貴方の為じゃない」

 

一応礼を言うウェル博士に冷たい態度の調。元より期待していなかったウェル博士は両手を広げてヤレヤレの態度をする。

 

「これは、手厳しい。…本当にね」

 

 

 

 

 

「クリスちゃん」

 

響が地面に座り込むクリスに肩を貸して立ち上がらせる。適合係数の低下に戦闘員軍団との戦闘で消耗したクリスにもう戦えるとは思えない響は調や切歌に視線を向ける。

 

「一体どこから?」

 

突然現れた調と切歌に響は辺りを見回す。周囲には隠れられそうな場所はない。海から来たにしては調と切歌の体が濡れて居ない。その時、響の目が何かを捕らえるが響自身には分からなかった。

 

 

 

 

一方、二課本部でも突然現れた調と切歌に慌てていた。

 

「伏兵が潜んでいたのか、周辺の策敵はどうなっている!」

「それが…」

「センサーの類はギリザメスによって破壊されてレーダー類は壊滅してます!わずかに残ったセンサーにも不具合が!」

「…なんて事だ!」

 

ギリザメスの攻撃の余波が二課の仮説本部の潜水艦は多大なダメージを受けた。こうなれば一旦ドッグにもっていて修理するしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、毒トカゲ男が敗れたか!」

 

一方、ギリザメスも毒トカゲ男が敗れた事に気付き、翼とマリアを睨みつける。

翼は両膝を甲板に付け息を乱し、マリアも脇腹を押さえて同じく息を乱している。二人はギリザメスに大苦戦していた。切り裂く左腕のカッターに鼻先のドリル、そして火炎を吐く能力に二人は確実に追い込まれていた。しかし、どういう訳かギリザメスはマリアに積極的に攻撃せず翼ばかり狙い、マリアを無視し続けていた。

あまり攻撃が効かないとはいえマリアの攻撃を受け続けるギリザメスは面白くも無い。

 

━━━私の動きに合わせてくるなんて、この剣やるじゃない!

━━━シンフォギアの出力は戻ったが…このままでは

 

二人の息が乱れてるがギリザメスはまだやる気である。反対に翼も何とか剣を握るがマリアに至っては自身のシンフォギアが重いと感じていた。

そんな時にマリアに通信が入る。内容は引き上げだった。

 

「時限式ではここまでなの!?」

「!」

 

マリアの呟きに嘗てのパートナーの天羽奏を思い出す。

 

━━━時限式!?まさかLiNKERを…!

 

突如、上から強風とヘリの音が聞こえる。翼が周囲を見ても何も無かった筈が突然現れたヘリにマリアが乗り込む。

 

「これで、あの女は消えた。風鳴翼を…帰還命令だと!?」

 

それを黙って見ていたギリザメス。邪魔をするマリアが居なくなり翼を抹殺しようとするが、本部より帰還命令が出て舌打ちをしつつ海へとダイブする。

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、響達の方でも、調と切歌が響とクリスを見つめ合う。

 

「あなた達の目的は何なの?」

 

「私達は正義では守れない物を守る為」

 

響の質問にそう返す調。直後に響達の下に強風が吹き上を見るとヘリがフックを落としていた。切歌がウェル博士を担ぎ、調と共にフックを握る。そして、そのまま海の方に向かうヘリ。

唖然としていた二人がそのまま見てとヘリは空へと消える。それも丸で空の色にとけるように。

 

こうして、廃病院での戦いは終わった。新しく姿を見せた仮説本部の潜水艦が早々ドック入りになったが…

 

 

 

 

 

 

響達から逃走したマリアたちも順風満帆とはいかなかった。

弦十郎も舌を巻く程の異端技術を使っていたが、絶対とは言えない。何よりマムが咳き込み押さえた手に血が滲んでいた。マム自身も時間が無いと分かる。

そして、格納庫では回収したウェル博士に一撃を入れる切歌。

 

「下手うちやがって!連中にアジトを押さえられて、計画実行まで何処に身を潜めればいいデスか!?」

 

座り込むウェル博士に胸倉を掴む切歌がそう捲くし立てる。あの廃病院が自分達のねぐらであったのだ。それを失った以上、もう安心して休める場所などない。

 

「お止めなさい、こんな事しても何も変わらないわ」

 

一応止めるマリアだが、目は完全に怒っていた。その言葉に切歌は舌打ちをして手を放す。

 

「…やれやれ、いい訳の一つも許されないとは思いませんでしたよ」

 

ウェル博士はウェル博士で立ち上がってそう言い切る。それに切歌の目は更に鋭くなった。

すると、格納庫に備え付けられているモニターにマムの姿が映る。

 

『虎の子を守りきれたのが幸いとは言えますが、アジトを押さえられネフィリムに与える餌も無くなったのは我々にとっても痛手です』

「その事なんですが、僕に提案があります」

 

これからどうするべきかと悩むマムにウェル博士がそう言い放つ。マリアも調も切歌も睨む中マムは「提案?」と聞き返す。

 

「ええ、提案です。()()()()()()()()、少し僕とお話しましょうか?」

 

ウェル博士の眼鏡が怪しく光り、マリアたちに嫌な予感をさせた。その後、ウェル博士と二人で話をするナスターシャはある決断をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、戦闘の終わった響達はドッグ入りした潜水艦の中、二課仮説本部に居る。

 

「無事でよかった、三人とも」

 

突然のショッカーの乱入があったが無事に帰って来た事を喜ぶ弦十郎。

しかし、響もクリスも暗い顔をしていた。それどころか本部の人間達にも暗い顔をしてる者がいる。

 

「…師匠、了子さんとは分かり合えなかったんでしょうか?」

 

マリアが新しいフィーネと聞いてまた彼女と戦うのかと意気消沈する響。そして、それはクリスも同様だった。

そして、本部の人間達が暗いのもこれが原因だった。

 

「結局通じ合えないのかよ、アタシ等!」

「…通じないなら通じるまでぶつけてみろ!言葉より強い物を知らぬお前達ではあるまい!」

「…言ってる事は全然わかりませんけど、でもやってみます」

 

弦十郎の励ましに感銘を受けた響がやる気を出しクリスも呆れながらも気力を回復させる。今度戦う時に語れるよう励もうとするが、

 

「マリアは櫻井女史ではない」

 

そんな中、翼の言葉に固まる一同。そんな様子を見ても翼は言葉を続ける。

 

「マリアは櫻井女史ではない。ただの騙りだ」

 

翼の言葉に驚愕する一同。誰しもが「え~!!」叫ぶ。それも潜水艦の外まで、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━そして、話に出てきたマリアは、

 

「くっ!」

「マリア…」

 

調と切歌がマリアに抱き着く。明らかに周りを怖がっていた。

 

ブルルルルル

            スゥノーオオオ

                         エエエー

 

明るいとは言えない薄暗い部屋。見た事も無いコンピューターがそこかしこにあり黒づくめの男達に異形の怪物たちの泣き声。

そして、極めつけは、

 

『ようこそ、マリア。並びにフィーネの諸君!我等、ショッカーは君達を歓迎しよう!!』

 

あの日、大型モニターで聞いた不気味な声が気味の悪い音と共に緑色の光が点滅して流れる。二人を庇う姿勢のマリアも背中に冷や汗が流れる。

そして、静かにショッカー首領の声を聞くウェル博士とナスターシャ教授。

 

━━見慣れない人達に囲まれていた。

 

現在、マリア達はショッカーのアジトに来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




歌を強制キャンセルされるマリア。
そして、マリア達がまさかの…

ギリザメスがアッサリ撤退しましたが、ショッカーの目的はウェル博士の作った物であり今回の響たちは二の次でした。



次回予告

我等が立花響にショッカー本部が送る次なる使者は怪人「カメストーン」
秋桜祭で盛り上がるリディアン音楽院での大虐殺を狙うショッカーに響の怒りが炸裂する。響はカメストーンを倒せるのか?
次回「悪夢の秋桜祭!殺人オーロラの恐怖!」にご期待ください
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