「誰だよ、電気を消したの!?」
「何も見えねえぞ!」
「痛い…痛い!!」
観客たちが口々に騒ぎ出す。混乱が広がり誰もが暗いと喚く。
「…一体、何が起こったデスか?」
「みんな、おかしい」
観客達が誰もが
「…死神博士より連絡を伝える。此処を出るから付いて来いとの事だ」
二人にサングラスを渡した男が伝える。状況が良く分からない中、二人はあれよあれよと言う内に出入り口まで誘導され死神博士と合流して外に出る。当然、会場にオーロラを流した亀男も一緒だ。
「ま、待てぇ!翼さん、私が止めてきます!未来は此処の人達の事をお願い!」
「待つんだ、立花!クッ!」
咄嗟に止めようとした翼だが、それよりも早くにショッカーと二人の少女を追う響。その直後に翼は会場で蹲っているクリスの下に行く。
「雪音、ショッカーだ!追うぞ!」
「あ…ああ」
翼がクリスの手を握って響を追いかける。この時、翼は失念していた。何時ものクリスなら翼に言われずも怪人を追うのに今日のクリスは翼に声を掛けられるまで蹲っていた事を、亀男の
「響、頑張って」
翼とクリスを見届けた未来は響の名を呟く。心の中で無事に帰って来てと願う。
「ちょっと、未来!何があったのよ!」
その時、舞台袖から板場を始めとした友人と何人かの参加者が出て来る。彼女らは舞台袖の奥に引っ込んでた為亀男のオーロラを見て居らず助かったのだ。
未来は、無事な女生徒に応援を頼み、一緒に目の見えなくなった観客たちを介抱する。
その頃、切歌と調は死神博士に付いて行っていた。オーロラを出したカメストーンともう一人のコートを着た者も一緒だ。それ故に良くも悪くも目立つ。
「待てぇ!」
「ふん、やっと来たか」
そんな中、何時の間にか前方に回り込んでいた響が死神博士の前に立ち塞がる。後ろを見ればクリスの手を引いた翼もやって来る。
「みんなに何をしたの?」
響が真っ先に口を開いた。カメストーンのオーロラを見て皆に異変が起こったのだ。ショッカーが何かしたに違いないと響は考える。
そして、響の質問を聞いて邪悪な笑みを浮かべる死神博士。
「フフフ、簡単な話だ。会場の人間はカメストーンの「殺人オーロラ光線」を見たのだ」
「殺人!」
「オーロラ!」
「光線だぁ!?痛ッ!」
「…ウソ」
「デス!?」
死神博士の言葉に響達は愚か切歌と調まで驚く。しかし、その反応を無視して死神博士が話を続ける。
「殺人オーロラ光線を見た者は先ず目が見えなくなり、そこから腐って最後に全身が溶けて死ぬ。分かり易かろう?」
その言葉に翼もクリスも息を飲む。切歌と調は顔を青くし響は歯を食いしばる。ショッカーがまたもや虐殺を企んでいたのだ。それも生徒たちが楽しそうに浮かれる秋桜祭で。それが響には許せなかった。
「…お前は一体…」
「おっと、名乗り遅れて居たな。私の名は死神博士、ショッカーの大幹部の一人だ」
翼の質問に答える死神博士。予想以上の大物に響が口を開く。
「大幹部!?なら地獄大使と同じ」
「その通り、地獄大使と並んでショッカーの最高幹部と言われている」
それを聞いた、翼やクリスがペンダントを握る。それに反応して切歌と調もペンダントを掴む。しかし、その姿を見て死神博士が笑いながら言う。
「周りを見たらどうだ?野次馬どもが居る中で変身するつもりか?」
死神博士の言葉に響と翼が周りを見る。死神博士や亀男の姿や歌姫である翼の姿に野次馬が集まって来ている。迂闊に変身すれば翼がシンフォギア装者だとバレてしまう。
「だが、それはお前達も同じはずだ。秘密結社なのだろ!」
翼が指摘するが、死神博士はそれを鼻で笑う。
「ククク…もう直ぐその必要もないのだよ」
「何だと!?」
「特別に教えてやろう、ショッカーでは近々ある特別な作戦が行われる。それが成功すれば最早、我々は隠れて行動する必要が無くなるのだ。即ち我々の時代が到来する!!」
「作戦だって!?」
「それは何だ、答えろ!死神博士!!」
クリスが作戦という言葉に反応し翼が怒鳴るように質問をする。
「そこまで答える気はない。ユニコルノス!カメストーン!」
「エエエーーー!!」
「ガァァー、ルルッ!!」
二人目のコートを着込んでいた者も正体を現す。それを見て更に野次馬が集まりだす。
「おい、何かやってるぞ」
「気合の入ったコスプレだな」
「見ろよ、風鳴翼だ!」
「分かった、きっと何かの撮影よ!」
「カメラどこ?カメラ!」
「!?」
「しまった!」
野次馬の人だかりが奇麗に響達を取り囲む。これでは翼がシンフォギアを纏えない。逆に死神博士は逃げるなり野次馬を巻き込むなり好きに出来る。
「さて、もう一度聞こう。変身するのか?しないのか?」
このまま死神博士を逃すのは論外だ。何より、このままではカメストーンの殺人オーロラ光線を見てしまった観客たちが死んでしまう。最悪、翼抜きで戦おうかと考えた響だが、
「もういい、私も覚悟を決めよう」
「翼さん…」
そう言って、翼はペンダントを握り響が翼の名を呟く。それに感心する死神博士。
Imyuteus ameウ~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~!!
今まさに、翼が聖詠を口にしようとした時、学園のスピーカーから警報が鳴る。更に、
『ノイズが現れました!ノイズが現れました!住民は直ぐに最寄りのシェルターに避難して下さい。繰り返しま…』
放送でノイズが現れたと言う。これには響達は愚か死神博士も反応する。しかし、一番反応したのは、
「やばい、早く逃げるぞ!」
「シェルターは何処だ!?シェルターは!」
「ママ!」
「こっちよ。早く避難するわよ」
あれだけ集まっていた野次馬たちが次々とシェルターに逃げていく。その様子を見て響達もシンフォギアを纏えると思ったがノイズを放置してショッカー怪人の相手をしてよいのか考える。その時、通信機から緒川の声がする。
『間に合いましたね。これでシンフォギアを纏って戦えますよ!』
「緒川さん!?『間に合いましたね』ってこれは、まさか」
『はい。まあ誤情報なんてあんまり珍しくありませんから』
「…感謝します!」
緒川が偽の警報を鳴らした事に防人として複雑ではあったが、これで人目を気にせずシンフォギアを纏える、と判断する翼。
Imyuteus amenohabakiri tron
Balwisyall nescell gungnir tron
…Killter Ichaival tron
翼が先に聖詠し響も続く、そしてクリスも何か躊躇いつつ聖詠を口にしてシンフォギアを纏う。
「周辺にノイズが反応は無い。…特異災害対策機動部二課め、やりおったな」
死神博士は何時の間にか戦闘員が用意したノートパソコンを打ち込み周辺にノイズが出たのか調べていたがノイズの反応が無いと分かると改めて響達の方を見て鼻で笑う。
「カメストーン、貴様は赤いのと青いのを相手にしてやれ。立花響、お前の相手は聖遺物怪人2号のユニコルノスがやる!」
「聖遺物怪人2号!?」
死神博士の聖遺物怪人に反応する響。
「そうだとも、貴様のデータを参考にしつつ貴様の時とは違うアプローチをして完成させた怪人だ!」
観客も生徒の居なくなった学院の敷地内で三人の装者と二体の怪人の戦いが起こる。
「死ねぇ!!剣の装者に銃の装者!」
カメストーンが背中の甲羅を外して投げつける。その甲羅は真っ直ぐ翼たちの下に迫る。
「クッ!」
「うわああああ!!」
咄嗟に避ける翼だがクリスが甲羅をまともに受けてしまう。倒れるクリスを抱き抱える翼。その間に甲羅は宙を飛びカメストーンの背中に戻る。
「何をしている、雪音!何時もだったら、
「わ、悪い…」
翼の言葉にクリスは謝りつつロングボウを向ける。
「!…雪音…お前…」
「フッハハハ、こいつは傑作だ!銃の装者が既に俺の殺人オーロラ光線を見て目が見えてない事に気付かんとはな!!」
「くっ!」
カメストーンの言葉に翼は歯噛みする。クリスの様子が殺人オーロラ光線を放たれた後からどうにもおかしいと思っていたが盲目にさせられていたとは…尤も翼も人の事は言えないが、
「ついでに言えば剣の装者、貴様も片目が見えて居ないな。さっきから動きがおかしいぞ」
「!?」
翼にとって、その言葉は図星だった。響に言われて咄嗟に片手で防ごうとしたが両目を守るには少しばかり時間が間に合わずつ現状、翼は片目を失明していた。
「ククク、お前達が溶けて死ぬのを待つのもいいが、せめてもの情けだ。これで殺してやる」
そう言い終えるとカメストーンは何時の間にか刺突剣を握り翼に向けた。
「フフフ、赤いのと青いのは事実上戦力外。まともに戦えるのはお前だけのようだな立花響」
翼やクリスの様子を見て笑みを浮かべる死神博士。視線を立花響の方に向けると、
「グハッ!」
「どうだ?俺の威力は分かったか?」
ユニコルノスの膝蹴りを腹部で受けた響が悲鳴を上げ、地面に倒れ込む。一つ目しかないユニコルノスだが、その目が笑っているとハッキリ分かる。
何とか立ち上がる響だが、両手は腹部を押さえていた。ダメージがかなりきているのだろう。
「そうだ、立ち上がるがいい。お前は俺の手によって殺されるのだからな!」
その瞬間、ユニコルノスの口から液体のような飛沫を噴射する。嫌な予感がした響は防御せず避け後ろに在った気に掛かる。直後に飛沫が掛かった気が石のようになってしまう。
「!木が石になった!?」
「化石だ。ユニコルノスの飛沫に触れた生命は全て化石に閉じ込められるのだ」
響の疑問に答える死神博士。化石に閉じ込められると聞いた響はよりユニコルノスに注意して戦っていた。だが、次の瞬間に翼とクリスの悲鳴が聞こえて翼たちの方を向く。
響の目はカメストーンの猛攻にクリスを守りつつ戦う翼だった。カメストーンの持つ刺突剣を剣のアームドギアで受けて立つ翼だが、動きが何時もより散漫になっている翼の体にカメストーンの刺突剣が傷をつけていく。
「翼さん!クリスちゃん!」
二人を助けに行こうとする響だが当然、黙っていかせるショッカーではない。ユニコルノスが突然響の前に現れる。
「邪魔をするなぁ!!」
響が叫ぶように言う。それでもユニコルノスは退く事は無く戦いは続く。
「フフフ、それでいい。それが立花響の最大の弱点だ」
焦る響の姿を見てほくそ笑む死神博士。
目の見えなくなったクリスに片目が見えない翼は当然、カメストーンに苦戦する。その悲鳴を聞いた立花響は攻撃より二人を助けに行こうとするがユニコルノスに悉く邪魔をされる。その事より立花響はユニコルノスに集中出来ず攻撃がおざなりとなり、余計にユニコルノスを倒せなくなる。
「大丈夫ですから…誰か濡れタオルを!」
その頃、未来や創世たちは会場で苦しむ人達の介抱をしていた。何人かの目の見えなくなった観客や審査員を床に寝転がせ濡れタオルを瞼に当てていた。
「痛い…痛い…!」
「お母さん、何処にいるの?痛いよ…」
それも目の痛みを訴える人は減る事は無い。何人かの生徒が救急車を呼ぼうと携帯や学院の固定電話で救急車を呼ぼうとしてるが、
「駄目、やっぱり通じない」
「こっちも駄目」
携帯は悉く圏外で有線での電話も電話線が切られてるのか通じなかった。外へ助けを求めようとした生徒も放送でノイズが出たと聞いて外に出る事が出来なくなっていた。
「響、大丈夫かな?」
忙しい中、未来は響の事を考える。元凶となったカメストーンを倒せば元に戻るかは分からない。だけども無事に戻って来てほしいと考えて居た。
「酷過ぎる光景デス」
切歌と調は響や翼たちの戦いを見ていた。死神博士からは先に戻っていいと言われたが響達の事を気にした切歌と調は響達と怪人の戦いを見守っていた。
翼は目の見えないクリスを庇い何とかカメストーンの攻撃からクリスを守るが次第に翼の傷が多くなり、響は二人が気になってユニコルノスに集中出来ず、ユニコルノス攻撃をまともに喰らい出店の一つに突っ込んでしまう。そして、戦闘員にノートパソコンを持たせて何かのデータを取る死神博士。
状況は完全にショッカーに有利だった。
「…切ちゃん、私もう我慢できない!」
Various shul shagana tron
響達を見続けてきた調が聖詠を口にしてシンフォギアを纏い、響の下に突っ込む。
「調!?ああもう!」
Zeios igalima raizen tron
「しょうがないデスね、調は」
口では文句を言っていたが口元に笑みを浮かべる切歌。調を追う。
「うわああああああ!!」
響が今度は別の出店に吹き飛ばされ、衝撃により出店にあった調理器具が響にのしかかる。何とか立ち上がろうとしたが、
「化石になってしまえ!!」
「…しまった!」
目の前には既にユニコルノスが口から飛沫を出す。まだ、態勢が整っていない響では逃げる事は出来ない。響がもう駄目かと思った。
その瞬間、響の目前に巨大な回転ノコギリが縦状態で展開され、それが響の身を守った。
「!?」
「何だと!」
怪人が驚く声を上げ、響も声には出さないが非常に驚いていた。響の前に巨大の丸鋸を展開していたのは調だった。
「これで、貸一つ」
チラッと響の方を見て無事なのを確認した調が呟く。直後に盾にしていた巨大な丸鋸が化石に包まれ出し調がそのパーツを切り離す。切り離された丸鋸は砕けて消える。
「ここまでのようだな、死ねぇ!!」
傷だらけになり片膝を地面に付けた翼にカメストーンがトドメを刺そうと刺突剣を振り上げていた。片目も見えずクリスを守る為に無茶をした翼にもう打つ手は無かった。
クリスも援護はしようとしてカメストーンの声を目標に撃っていたが偶に翼の悲鳴が聞こえる度に何度も躊躇いアームドギアのボーガンが撃てなくなる。そうこうしてる内に翼のダメージが大きくなり動きが鈍るとカメストーンがトドメを刺そうとしたのだ。
最早、無茶をし過ぎた翼にこの一撃を防ぐ事は出来ない。カメストーンの刺突剣が一気に翼へと迫り金属音が響く。
「お前は…」
「貴様は!?」
「邪魔させてもらうデース」
刺突剣の一撃は緑色の鎌に阻まれる。カメストーンが刺そうと翼へのトドメは邪魔された。暁切歌の手によって、
この日、二人の少女がショッカーに反旗を翻した。
因みにカメストーンが戦わず逃げた場合、翼とクリスは死にます。
ショッカーの襲撃時点で秋桜祭も滅茶苦茶に。
切歌と調は此処でショッカーを裏切るのか?