改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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44話 ショッカー、血の掟

 

 

「ネフィリムのエサは貴様だ!」

 

死神博士の宣言にネフィリムが咆哮を上げユニコルノスに近づく。その姿はまさに捕食者が獲物を襲うような姿であった。

この状況に響は愚か翼もクリスに弦十郎が驚愕する。それどころかウェル博士ですら初耳だったようだ。

 

「じょ…冗談ですよね。先生…」

「ウェルよ、私が冗談を言うのように見えるか?」

 

その言葉に顔を青くするウェル博士。死神博士は本気でユニコルノスをネフィリムのエサにする気でいる事に気付く。

 

「ふ…ふざけるな!何で俺をエサなんかに!?」

 

流石のユニコルノスもこれには納得がいかず死神博士に問いただそうとする。

 

「理由は単純だ。貴様が立花響に勝てなかった。ショッカー、血の掟を知らん訳ではあるまい!」

 

「ショッカー、血の掟!?」

 

死神博士の言葉に響が反応する。その反応に翼やクリスたちの視線が響に向かう。

 

「な…何だよその掟って」

 

クリスの質問に響はソッと答える。

 

「…ショッカー、血の掟。敗者には、あるのみ」

 

響の言葉にゾッとする翼達。つまり死神博士はユニコルノスを敗者とみてネフィリムに処分させようとしていたのだ。

 

「お…俺は負けて居ない!」

「あのまま戦っても貴様が立花響に勝てたとは思わんな。ならまだ生きてる内にネフィリムに食わせるだけよ」

 

ユニコルノスの言葉にも取り付く島もない返答をする死神博士。元々、死神博士はユニコルノスが響に勝てばよし、負ければネフィリムのエサにするつもりであった。死神博士にとってユニコルノスが必要ならまた再生すればいいだけである。その直後にネフィリムが咆哮を上げユニコルノスに近づく。

 

「な、舐めるな!!」

 

飛沫を出してネフィリムを化石にしようとするユニコルノスだが、その瞬間ユニコルノスの体が硬直し動けなくなる。

 

「何が…」

「あまり抵抗されても面白くないのでな。動きを封じた」

 

死神博士の手にリモコンのような物が握られていた。これでユニコルノスの動きを止めたのだ。そして、ネフィリムが大口を開けユニコルノスの悲鳴が響く。

 

「フフフ、この為にも貴様の体には金属類の類は入れずに改造したのだ。最後位役に立ってもらうぞ」

 

ユニコルノスの悲鳴に関心も無く呟く死神博士。その姿を見て顔を青くするウェル博士。

 

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!痛てぇ!!俺の体を食いちぎってやがる!ザンジオー、サイギャング!頼む助けてくれ!!」

 

ネフィリムに体を食い千切られていくユニコルノスが同じ怪人のザンジオーとサイギャングに助けを求める。尤も、二体の怪人は助けるどころかユニコルノスに目線も向けず口から笑い声を出していた。

 

「助けないのかよ!?」

 

思わずクリスがザンジオーに向かって助けないのかと聞く。しかし、ザンジオーは馬鹿にしたように

 

「助ける?ショッカーは選ばれた民。助けを乞う者など必要としない」

「そうだ、ショッカーに役立たずは必要ではない」

 

と言い放ち、サイギャングもそれに続いた。ザンジオーもサイギャングもユニコルノスを助ける気など毛頭ない。

 

「痛てぇ…痛てぇよ…ならシンフォギア装者に特異災害!頼む助けてくれ!もう悪い事はしない、何だったら俺の知っているアジトの場所も吐く!だから…死にたくねえよ…」

 

「!?」

 

「させるか!」

 

最早、同じ怪人にも頼れないと感じたユニコルノスが最早なりふり構わず響や翼にクリス、弦十郎に助けを求めた。翼とクリスがが固まる中、弦十郎が動こうとするがサイギャングが行く手を阻む為火炎を吐いた。これでは弦十郎でも助けるのは不可能だ。

そして、響もどうしていいか分からず動けないでいる。ショッカーの事だ、お芝居で自分達を騙している可能性があると考えたからだ。既にユニコルノスの手足は食われネフィリムは腹部に歯を突き立てる。ユニコルノスの一つ目に絶望が宿る。

 

「嫌だ…こんな最後は嫌だ…。これなら…まだお前らに…負けた方がマシ…だ…」

 

徐々にユニコルノスの声が弱まり遂に遂に息絶える。と同時にユニコルノスの体を完全に食い尽くしたネフィリムが再び咆哮を上げ響や翼の方を見る。

 

 

 

 

 

 

「あのイカレ爺、正気ですか!?道を踏み外してるにしても限度があるデス!!」

 

その頃、戦いの場から少し外れた場所に止まってるエアキャリアのモニターでマリア達が戦いを見守っていたが死神博士の外道過ぎる行為に切歌が叫ぶように言い手で壁を叩く。

手を組んでるとはいえショッカーは切歌にとっても敵でユニコルノスと親しい訳でもない。それでも、部下である怪人にあんな仕打ちをする死神博士に怒るのは当然とも言えた。

 

「ネフィリムに聖遺物を与えるって…そういう事?」

 

「フフフ…死神博士め、中々合理的な考えだ」

 

それぞれがユニコルノスに同情的な表情をする中、一人の人物が死神博士の手腕を褒める。

 

「楽しそうですね、地獄大使」

 

それは、マリア達の護衛という監視で残っていた地獄大使だ。ナスターシャ教授の言葉にそれぞれの目が地獄大使へと向く。

 

「あなた達は自分の味方を容赦なく見捨てるの?」

 

「それがどうした?ショッカーに役立たずは必要ない」

 

思わずマリアがそう口にするが地獄大使はにべも無くそう言い放つ。それに少なからずショックを受けるマリアは立ち眩みを起こす。

 

「「マリア!」」

 

切歌と調が直ぐにマリアの傍に言って体を支える。今マリアは重度の貧血であった。その原因はマリアの体を支えている切歌と調である。

 

 

 

 

事は響達がカ・ディンギル跡地に来る一時間前、地獄大使の二人の処刑を聞いたマリアが地獄大使に土下座をしたのだ。

 

『お願いです、二人の処刑を止めて下さい!』

 

『ほう、貴様にも劣る適合値の二匹を庇うのか?』

 

地獄大使が土下座するマリアの前に歩く。手には愛用の鞭を弄る。土下座をするマリアに全く関心のない地獄大使。

 

『この二人は私の家族でもあるんです。もう、私は家族を失いたく無いんです!!』

『…マリア』

『デス…』

 

『家族への愛情か、くだらんな』

 

マリアの言葉に嬉しく思う切歌と調だが、地獄大使は馬鹿にするように言う。調や切歌が悔しそうに地獄大使を睨みつける。

 

『なら、お前がその二匹を助けるために何が出来る?』

 

『なんでも!』

 

マリアの決心は固かった。それこそ、この場で裸になれと言われれば脱ぎ、踊れと言われれば踊る程に。そして、それを聞いた地獄大使の顔は邪悪な笑みが浮かぶ。

 

『ならば貴様の血をショッカーに献上しろ』

 

地獄大使の言葉にマリアが頷く。そして戦闘員の一体がマリアを何処かへ連れて行く。

 

 

 

 

 

こうして、マリアはショッカーに血を大量に抜かれたのだ。

 

「マリア、無茶しちゃ駄目!」

 

調の言葉にゆっくり頷くマリア。

 

「マリア、少し休みなさい」

 

マリアの体調を見かねたナスターシャ教授が休むよう言う。しかし、マリアは首を横に振る。

 

「…私達は此処で見てる様言われてる。そうでしょ?」

 

マリアが地獄大使に向かって聞く。実質、此処で待機するよう命じたのは地獄大使だからだ。

 

「その通りだ、やっと自分達の立場が分かったようだな」

 

マリアの言葉に満足気に答える地獄大使。その場に居るマリア達に睨みつけられるが気にもしない。

 

「人の命を弄んで…」

「私達、正しい事をするんデスよね」

「間違ってないのなら…どうしてこんな気持ちに…」

「あなた達…」

 

マリアや切歌に調が口々に弱音を吐く。何よりマリアにとって会場での無意味な虐殺が後を引いていた。そんな三人にナスターシャ教授が何か言おうとするが言葉が出てこない。

 

「くだらん事で悩みおって、正しい事にしたいのなら勝つのだな。歴史は勝者が作る者だ、それが愚かな人間どもの築いた歴史よ!」

 

地獄大使がそう言い放つと高笑いを上げる。誰もが地獄大使に軽蔑の眼差しを送る中、マリアはモニターを見てあることに気付く。

 

━━━あれ?あの怪人どこかで…

 

懐に大事そうにしまってあったギアのペンダントを触りそう考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニコルノスを喰らい尽くしたネフィリムに異変が起こる。体に取り巻いていた光りが赤く輝き出したのだ。

 

「か、完全聖遺物ネフィリムは言わば自立稼働する増殖炉!他のエネルギー体を暴食し取り込むことで更なる出力を可能とする!」

「どうやら始まるようだな」

 

ウェル博士がネフィリムの説明し死神博士が閉める。その直後にネフィリムの体が膨張し体から赤い光が飛び出す。

 

「聞こえるぞ、覚醒の鼓動が!この力がフロンティアを動かすんだ!」

 

ウェル博士が言い終えると共に成長したネフィリムが雄叫びを上げる。その姿に翼もクリスも弦十郎も冷や汗を流す。そんな中、

 

「…それだけの為に自分の部下を食べさせたの?」

 

響が死神博士に質問するように言う。その声に翼たちの視線は響に向かい無理矢理テンションを上げていたウェル博士も響に視線を向ける。

 

「それがどうかしたか?」

 

死神博士の返答は簡素な物だった。その言葉は響には到底、許せる物ではなかった。

 

「どうして!?…どうしてそんな酷い事が…」

 

響の目から涙が一筋流れる。響は今までショッカーの怪人や戦闘員を倒してきた。そして、ユニコルノスはも敵でショッカーの企みを打破する為に戦った。学院の時と今回で二度も…しかし、最後は味方だと思っていた死神博士に裏切られネフィリムのエサにされたのは響としても同情してしまう。

 

「立花…」

「あいつ…」

 

響の心情に気付く翼たちが響の名を呟く。弦十郎も察してしるが我関せずの二体の怪人。黙って眼鏡を触るウェル博士。

響は良くも悪くも優しく正義感が強い。出来る事ならショッカーの怪人とだって戦いたくない甘ちゃんである。それでも世界征服の野望を持つショッカーは倒さねばならない敵だ。

 

「下らん事を言いおって、立花響。貴様は思い違いをしているぞ」

 

「思い…違い…」

 

「ユニコルノスは対貴様を想定して作った物だ。それが貴様を倒せない時点で奴は役に立たん。既にお払い箱となった。だから、最後にネフィリムのエサとしての役割を与えたのだ。役立たずを使えるようにした所謂、リサイクルというやつだ」

 

「役立たず…」

 

「全く、おかしい事を言う。元はと言えば、ユニコルノスも貴様も私が作り上げた改造人間。それを貴様は口を開けば正義だの、愛だの、平和だの、小賢しい事をほざきおって。『ショッカー』が作った物は『ショッカー』の為に尽くせばいいものを!」

 

「あの爺…!」

「なんて奴だ!」

 

死神博士のあまりの自分勝手ぶりに怒りが燃えるクリスと弦十郎。しかし、翼は死神博士の言葉に引っ掛かりがあった。

 

()()()()()()()()()()

 

 

「あなたが私を改造した…」

 

そして、それは響も聞き逃しが出来なかった。響は震える声で死神博士に聞く。

 

「そうだとも。私がお前を改造した死神博士だ。私の異名を教えてやろう、『怪人作りの名人』だ」

 

その言葉を聞いて響の体が震えだし息が荒くなる。弦十郎や翼が響の傍に居たら気付いたかも知れない。その目に怒りが宿っていた事を。

 

━━━この人の…この男の所為で私は…私は!!

 

「さて、折角だ。成長したネフィリムには更に貴様らの聖遺物を…」

「せ、先生!立花響の様子が!」

 

話は終えたと判断した死神博士がこの際、邪魔者の響たちをネフィリムに食べさせようかと考えて居たが傍に居たウェルが大声で死神博士に呼び掛ける。

ウェル博士の声に死神博士が改めて響に視線を戻すと響の胸の部分が山吹色の輝きが溢れ出し黒い影のような物が響の体を包み込む。

 

「ほう」

「一体、あれは!?」

 

「そんな…まさか…」

「何だよ、ありゃ…」

「暴走だと!?」

 

響の様子に死神博士は笑みを浮かべウェル博士は汗を流して茫然とし、翼とクリスは顔を青くし弦十郎が「暴走」と口にする。

 

「怒りでガングニールの制御を外したか!?丁度いい、その状態での貴様の性能も見ておきたかったところだ!!」

「イーッ!」

        「イーッ!」

                   「イーッ!」

 

直後に四方八方から再び戦闘員が現れ、更に死神博士はソロモンの杖からノイズを出す。

 

「まだこんなに居やがったのか!?」

 

その数に驚くクリス。声には出さなかったが翼と弦十郎も内心驚いている。

 

「かかれぇ!!」

 

死神博士の声に戦闘員やノイズが一斉に響へと襲い掛かる。黒く暴走した四つん這いで獣のように吠え一体の戦闘員に飛び掛かり腕を振るう。次の瞬間には戦闘員の上半身が消えていた。

それからの戦いは凄惨であった。戦闘員やノイズを次々と蹴散らしているが、戦闘員の体を引き千切ったりノイズを切り裂いたり戦闘員の頭を握り潰すなど普段の響では絶対やらないような戦い方だった。

 

「立花!?」

「酷ぇ戦いだ…」

 

その戦い方に思わず声を出す翼に響に軽く引くクリス。その声に響が翼たちの方を見るが直に戦闘員やノイズに突進する。

 

「ふむ、どうやら敵味方の区別ぐらいは出来るようになったか?パワーもスピードもゾル大佐が報告した以上に上回っている。流石は私の最高傑作だ」

「そんな事言ってる場合ですか!?先生」

 

響の残虐ファイトを間近で見ていたウェル博士が慌てた様子で言う。このままでは戦闘員もノイズも全滅して響の矛先がこちらに向くと思ったからだ。

 

「慌てるでない、しかし戦闘員やノイズだけのデータではあまり意味がないか。ザンジオー、サイギャング、お前達も加われ!何なら立花響を殺してもいいぞ!!」

 

死神博士の言葉に翼や弦十郎の相手をしていたザンジオーとサイギャングが響の方に視線を向ける。

 

 

 

 




ショッカー、血の掟。

PS版のゲームのショッカーストーリーではスキップしない限り何度も聞くフレーズです。

そして、初めて響が自分を改造人間にしたのが死神博士と知りました。

響の片腕が食われなかった代わりにユニコルノスが目の前で食われ自分を改造した元凶が現れたことで響は暴走しました。
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