「状況はどうなっている!?」
特異災害対策機動部二課仮説本部にて弦十郎の声が響く。
「響ちゃんが怪人を撃破!ですが…」
「これは…」
モニターには響の身体情報が映るが体温が上昇している。通常ではあり得ない程の温度だ。更にモニターに響の状況が映し出される。
「翼とクリスくんたちは!?」
「二人共現場へ急行してますがまだ時間が」
響が戦う現場にはクリスはヘリで、翼はバイクで移動していたが響達の下にはまだ幾分かの時間が必要だった。
「響くん…無茶はするな…」
今しばらく響一人に任せるしかない現状に弦十郎は机を叩くしかなかった。
「ハア…ハア…ウッ!」
ナマズギラーとの死闘を終えた響だが、10万ボルトの電流に胸のガングニールがより輝き手で押さえてるが溜まらず片膝を地面に付ける。その様子は蹲ってるようにも見える。
「…どうしたの?」
「様子がおかしいデスけど…今の内に逃げるチャンスデス」
理由は分からないが強敵の響がこの状態なら楽に逃げれると踏んだ二人だった、しかし、
「待てぇ、丁度いい。絶唱を使って立花響を殺せ」
「「!?」」
死神博士が待ったをかけた。二人に絶唱を使えと言う死神博士の言葉を当初は理解出来なかった二人だが、数秒もせずに理解する。切歌は顔を赤くして怒鳴る。
「ふざけるな!どうして私達が!!」
「…あの様子なら絶唱を使うまでもないと思うけど…」
「なに、貴様らの絶唱のデータも取っておきたいだけだ。これは命令だ、やれ!」
二人の抗議も死神博士はアッサリと却下し絶唱を使えと言う。其処まで重要でもないがデータ取りの為にやれと言われた二人は納得出来る訳もない。取り付く島もないがまだ抗議を続けようとした二人だが、
「お二人にプレゼントです」
「え?」
「こんな時にプレゼントって何考えてるデスか!?」
突然のウェル博士の言葉に戸惑うが手渡された物を見て目を見開く。
「これって…」
「LiNKER…」
それは緑色の液体の入った拳銃型の注射器だった。その中身は自分達の生命線でもあるLiNKERだ。手渡された二人はウェル博士の顔をジッと見る。ウェル博士の目がこれを使って絶唱を使えと言ってるように見えた。
「効果時間にはまだ余裕があるデスよ!」
「だからこその連続投与です。適合係数を上げれば絶唱による負荷もある程度は抑えられます」
「それはそうだけど…」
「そこまでして殺さないといけないデスか!?」
LiNKERを渡され絶唱の負荷はどうにでもなる。それでも二人は死神博士の命令を不服にしていた。立花響は既に苦しんで膝をじめんにつけている。それにも関わらず殺せと命令された。
調も切歌も当然人を殺すには抵抗があった。
「まだか?ならこれを使うか?」
ウェル博士と調たちの会話に業を煮やした死神博士が懐からある物を取り出しウェル博士に投げ渡す。
「これは?」
受け取ったウェル博士がそれを見る。それは自分が投げた拳銃型注射器と同じ容器をしていたが中身はどす黒い液体らしきものが入っていた。
「LiNKERとかいうオモチャを解析して私が作り上げた物だ。そうだな敢えて名前を付けるならば『SHOCKER』でどうだ?」
「…SHOCKER」
「どれだけ自己顕示欲が強いんデスか!?」
「…因みに性能は?」
「計算上、貴様らのオモチャの数十倍の出力は確保できる事は
死神博士が不気味に笑う姿に背中から寒気が走る調と切歌。死神博士が作り上げたSHOCKERは確かに強力ではあるだろう。しかし、完全に装者を使い潰す前提の物だ。
「先生、ありがたいですがこのような物は必要ありません。僕にも研究者のプライドがありますので」
「…ほう」
ウェル博士が死神博士に使用を断る。これには調も切歌もホッとするがウェル博士二人の耳元で囁く。
「二人共、これ以上文句を言ってはいけません」
「でも…」
「デス!?」
SHOCKERの使用を断りホッとした調と切歌だがこれとそれは別だとしてウェル博士に文句を言おうとしたが、
「マリアを助けたかったらここは従いなさい」
この一言に二人は一瞬息を飲む。
「なんで…」
「そこでマリアの名前が出るんデスか!?」
「簡単ですよ、ショッカーはマリアを最終的に改造人間にするのが目的です。君達が失態を重ねて行けばショッカーはマリアを労せずして手に入れる口実を与えてしまう。僕はそれを阻止したいんです」
「「!?」」
その言葉に二人は驚き、反射的に切歌がウェル博士の顔を殴りつける。殴られたウェル博士は尻もちをつき眼鏡を地面に落とし口の端から血を流す。その様子を見た死神博士だが戦闘員にノートパソコンを持たせてデータ収集の準備に入る。
「最初から…最初からそれが目的デスか!?この外道!」
「…否定はしませんよ。全ては僕の見積もりの甘さが招いた結果ですからね」
「地獄大使がマリアの血を求めたのは?」
「恐らく、マリアを手に入れる準備段階でしょうね。君達が命令無視や失態を重ねていけば、より要求が重くなる筈ですから」
白衣の袖で血をふき取り眼鏡をかけ直すウェル博士。その言葉には今一覇気が無く目も泳いでる。その様子を見ていた調が何かに頷く。
「切ちゃん、使おうLiNKER」
「調!?でも…」
「ドクターの事は許せないけど今はマリアを守るのが先決」
「わ、分かったデス」
調の説得に切歌も首を縦に振るしかなく調と切歌はお互いの首に注射器を当てLiNKERを流し込む。そうして響の方に視線を戻した。響は響で何とか立ち上がろうとはしていた。
「やろう、切ちゃん」
「…絶唱デスか」
「気休めかも知れませんが適合ケースが上がれば上がるほど、ギアからのバックファイアーの軽減は過去の臨床データで証明されてます。なら、LiNKERを投与した今なら絶唱のバックファイアーも十分軽減出来ます!」
「…本当に気休めデスね」
切歌と調が不安そうな顔をした事で気休めを言うウェル博士
。色々と言いたいことはある二人だが今は死神博士の命令通り絶唱を使うしかない。そして、絶唱を口にする。
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
「!?」
胸を押さえつつ何とか立ち上がった響だが聞き覚えのある歌を耳にし目を見開く。そこで調と切歌が歌ってる事に気付いたのだ。
「これは…絶唱!?」
「やっと歌い始めたか。ウェルめ躾を怠るからこうなるのだ」
響はこの歌が絶唱だと知って驚愕し死神博士は戦闘員に持たせているノートパソコンを操作し調と切歌の絶唱のデータを取る。
Emustolronzen fine el baral zizzl
Emustolronzen fine el baral zizzl
「ナスターシャ教授…僕達は確実に地獄に落ちますね」
二人の絶唱を歌う姿を見るウェル博士がポツリ呟く。
絶唱を聞く響の脳裏に嘗ての天羽奏の最後の姿が蘇る。適合値の低さをLiNKERで補ってたが最後には文字通り体がボロボロになり死体すら残さなかった。ツヴァイウイングの惨劇で起こった悲劇は響は忘れた事はない。
Gatrandis babel ziggurat edenal
Gatrandis babel ziggurat edenal
「だ…駄目だよ!LiNKER頼り絶唱は装者の命をボロボロにしちゃうんだ!」
「女神ザババの神器の絶唱二段。さぞ素晴らしいデータが取れるだろう」
響の悲痛の叫びも死神博士は意に介さずノートパソコンの画面に釘付けとなる。死神博士にとって調と切歌の命がどうなろうと知った事ではない。
Emustolronzen fine el zizzl
Emustolronzen fine el zizzl
二人が絶唱を歌い終わると共に目を見開く。
「シュルシャガナの絶唱は無限軌道から繰り出される果てしない斬撃。これを使えば幾らあなたでも…」
足や手から大きなノコギリが回転して出て来る。これが調の絶唱だ。
「続き、刃の一閃で対象の魂を両断するのがイガリマの絶唱。そこに物質的な防御手段などありえない」
手に持つ大鎌が更に巨大化し鋭利になる。これが切歌の絶唱だ。
「恨んで貰って結構デス!」
「私達はあなたよりマリアを選んだ」
調と切歌は響とマリアを天秤にかけマリアを選んだ。例え響を殺してでもマリアをショッカーから守ると誓ってるのだ。それが時間稼ぎにしかならなくても…
二人の絶唱がお目見えになり死神博士もこれに邪悪な笑みを浮かべる。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「え?」
「なんだと?」
突然もう一つの絶唱のフレーズが聞こえて来る。ウェル博士だけでなくノートパソコンの画面を見ていた死神博士も歌の出所に視線を向ける。
Emustolronzen fine el baral zizzl
視線の先には響が居て絶唱を歌っていたのだ。これを見て調も切歌も歯を食いしばる。
「面白い!絶唱に絶唱をぶつけようというのか!?やって見せろ!」
死神博士は、響が調と切歌の絶唱に絶唱をぶつけて相殺しようとしてると睨んだ。これでより多くのデータを取れると喜ぶ死神博士だが、
「…違う」
響の目的は別にある事に気付いたウェル博士が呟く。確信は無い、それでも報告書などで呼んだ響の性格上、ただ絶唱を使った訳ではないと考えた。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「?」
「エネルギーが!?」
異変を感じたのは既に絶唱を発動していた調と切歌だった。絶唱で唱えたエネルギーが吸い取られるような感覚がしたのだ。
Emustolronzen fine el zizzl
そして、響いが完全に絶唱を歌い切るとそれはより顕著になる。
「エネルギーレベルが絶唱発動まで高まらない?」
「如何言う事デスか!?」
「何だ!?何が起こった!?」
二人の姿が絶唱を唱える前までに戻る。ウェル博士は言葉も無く茫然とし死神博士が慌てるようにパソコンを操作する。そして一つの結論に到達する。
「まさか、立花響が…!?」
何かに感づいた死神博士が再び響の方を見ると先程よりもより胸の輝きが増し温度の所為か響の周囲の空気が歪み始める。
「セット!ハーモニクス!」
響の言葉の後に衝撃波が駆け回る。胸のオレンジ色の光から技かな黒い光も漏れ響が苦しむ。既に響の周りの空気は熱され足の周囲が燃え上がる。
「二人に…絶唱は使わせない!」
そいう言うと、響は会場でのギルガラスの戦いの時に見せた両腕を合わせて両腕についていたギアを右腕に集中させ一つとする。そして、一気に拳を上に突き出す。直後、響の拳から虹色の竜巻が出て上空へと昇る。
「間違いない!立花響め、あの二匹の絶唱のエネルギーを取り込んだな!!」
響の行動を見てそう確信する死神博士。その目はまるで新しいオモチャを見つけたような目だった。
「あれって…」
「あの時の…」
「皆さん、今の内に」
響が出した虹色の竜巻は未来たちも見ていた。誰もがその竜巻を見る中、詩織がチャンスとばかりにこの場の後にするよう言う。確かにあの目立つ竜巻がある以上逃げるチャンスではある。
弓美や創世が頷く中、未来は心配そうに虹色の竜巻出す響の方を見ていた。
「ねえ、皆。死神博士の言っていた事…本当なのかな?」
「言っていた事?…響の寿命が縮まったって事?」
「ただのハッタリ。…って言えれば良いんですけどね」
「こればっかりじゃ私達には分からないよ」
未来の脳裏に死神博士が言っていた「余計に貴様の寿命を縮めたな」の言葉が引っ掛かった。未来の胸にこのままでは本気で響とのお別れになると思うとこの場から離れる事が出来なかった。
そして、その少女たちを見つめる複数の戦闘員が居る事に気付かなかった。
そして、その光景は上空に待機しているエアキャリアに乗っていたマリアとマムも目撃する。響の映るモニターをみて驚愕するマリア。
「吹き荒れる破壊のエネルギーを無理矢理…」
「繋ぎ繋がる事で絶唱をコントロール出来るあの子にとって、これくらい造作もないという事ですか。ですが、それをショッカーに見せてしまって吉と出るか凶と出るか」
「マム?」
ナスターシャ教授の深刻そうな表情を見たマリアがマムと呟く。マリアには何故そこでショッカーの名が出たのか気になったのだ。
その時、エアキャリアの計器に何か反応をした。レーダーに青い物と赤い物が映ったのだ。
「この反応は」
「不味いですね」
調や切歌の絶唱のエネルギーを全て放出した響は息を荒げる。それは先程よりも深刻であった。
その直後だ、
「アッ!?」
掲げていた腕が爆発し響が再び地面に膝を付けた。更には体から幾つもの火花が散りバチバチ音もする。
━━━胸、だけじゃない!?……頭が割れそうに痛い!変な警告音も…聞こえる。…「エラー」って文字と「オーバーヒート」って文字が交互に出て来る。お願い…もう少しだけ…動いて…私の体…
響は既に限界を超えていた、ただでさえ胸のガングニールで熱暴走していたのに加えナマズギラーの電撃を浴び、止めに調と切歌の絶唱を空へと打ち上げたのだ。響の体は何時負荷で爆発しても不思議ではない。
腕の爆発もギア部分が爆発しただけだが腕の人工皮膚が剥げて中から金属片が見え血が垂れている。更に胸からオレンジ色に輝く結晶も生えてきていた。
「ククク…苦しそうではないか、立花響!」
「死…神…博士…」
響の苦しむさまを見て笑う死神博士の言葉に響は何とか顔を上げ視線を送る。正直、響は今直ぐ倒れたい衝動にかられている。指一本動かす事すら辛い。
「最早、貴様に価値はないと思っていたが訂正しよう。さっきの「ハーモニクス」とやらを見て興味が湧いた。味方だけでなく敵の絶唱も操れるとはな。ショッカーに戻れ、立花響。戻ればその体も直してやろう」
「「!?」」
死神博士の言葉に調と切歌が驚く。よくは分からないが響もショッカーに関わていたという情報を手に入れる。
「…誰が…あんた達の…下に…なんか…」
当然、響は拒否する。響としても体の限界は分かっているつもりだ。このままでは取り返しのつかない事になるかも知れない。それでも響はショッカーに戻る気などサラサラ無かった。
しかし、拒否された死神博士は笑顔を崩さずに居る。
「そうか、断るか。ならこれならどうかな?」
「何度…言われよう…と「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」こと…!?」
響が断ると言い掛けた時だった。聞いた事ある声の悲鳴が背後から聞こえてきた。響は言うことを聞かない体を何とか動かし後ろを見る。そこには、
「イーッ!」
「大人しくしろ!」
「離して…離して!?」
「汚い手で触らないで!」
未来や創世に詩織、弓美の全員が戦闘員に捕まっていた。弓美や創世が暴れるが戦闘員には今一効果がなく戦闘員の武器が未来たちに向けられる。
「み…みんな!?」
「見ての通り人質だ。ありきたりな手だが貴様には有効であろう?」
「!?」
その言葉に響は死神博士に怒りの視線を送る。しかし、殺気もろくにない視線では死神博士には何の効果もない。
「さぁ、立花響。友を見捨てて私の命令に逆らうか、友を助け私と共にショッカーに来るか選ぶがいい」
「グっ…」
響は先程のように即答出来なかった。自分の身を犠牲にする事は出来るが友達を…親友を見捨てる事など響には出来なかった。それは死神博士も見抜いている。響はどこまでいこうと甘い少女でしかない。
仮に断る事が出来ても今の響は満足に動くことが出来ない。未来や創世達を始末した後に無理矢理連れて行く事も出来る。
何故、死神博士は最初からそうしないのか?答えは簡単、それでは面白くないからだ。響にショッカーに逆らった事を後悔させ心を蹂躙する。それが死神博士の目的でもあった。
「さあ、選ぶがいい」
「私…は…私は…」
死神博士が不気味な笑顔で響に選択を強要する。その姿に調も切歌も軽蔑の眼差しを送るが大して気にもしない死神博士。響が出した結論は…
「戻り…ます…」
「何だと?聞こえんなぁ」
「ショッカーに…戻ります…戻らせてくだ…さい!だから…未来や皆には…手を出さない…で下さい!!」
言う事を聞かない体で死神博士に土下座の様な姿勢をする響は息も絶え絶えで懇願する。響は未来たち…友を選んだ。ショッカーが約束を守るかは分からない。それでも響には未来たちが少しでも長く生きて欲しかった。
「フフフ…フッハハハハハハハハハハハハハハッ!!聞いたかウェルよ、あれだけ我等に逆らっていた立花響も私の前にとうとう跪いたぞ!」
「…邪悪過ぎるデス」
「…悪趣味」
死神博士のやり方に調も切歌も、そしてウェル博士ですらドン引きしている。調も切歌もFIS時代にここまでの外道は見た事が無い。
「さて、連れていく事にあたってその熱を冷ましてやろう。トドギラー!」
「ブルルルルッ!!」
名前を呼んだ直後に一体の怪人が死神博士の横から現れる。一見セイウチに見えなくもない怪人が響の傍に行く。
「喰らえ、冷凍シュート!」
ある程度、近づいたトドギラーは口から雹を吐き出し響に浴びせる。最初は熱した鉄板に水を掛けたような音と水蒸気が上がる。しかし、それも徐々に治まり響の熱が下がりだす。
━━━ごめんね、未来…約束…守れそうに…な…
「切ちゃん…」
「心なしか寒いデス」
トドギラーの冷凍シュートの影響は調や切歌にも届いたようだ。息を吐くと白くなっている。
そして、響からの水蒸気が治まり体からの火花も治まるとトドギラーも冷凍シュートを止めて響の体を持ち上げる。既に響の意識は飛んでいて抵抗も出来なかった。
「終わりました、死神博士」
「よくやったぞ、トドギラー。貴様はエアキャリアに立花響を運び込め」
「ハッ!ところであの人質どもはどうするので?」
「殺せ、もう用はない」
『!?』
死神博士の言葉に誰もが絶句する。未来たちを捕らえたのは響の心を折る為に利用したに過ぎない、それが達成された以上無理に生かしとく理由は無い。それが死神博士の…ショッカーの考えだった。
そして、死神博士の命令を受けたトドギラーは一足先にエアキャリアから伸びたフックを使いエアキャリアの内部に乗り込む。
「待って!?」
「約束を破るつもりデスか!?」
流石に、これには文句を言う調と切歌。いくら何でも非道という言葉が二人の脳裏に過る。一時的にショッカーと手を組んでるがこんな事は納得できない。
「約束?そんなもの守って、何がショッカーか。どこまでも甘い小娘どもだ」
「「!」」
死神博士の言葉に二人が背筋がゾクッとする。ショッカーにとって約束など大して価値も無い。価値があるのは如何にして相手を利用しつくすか?それだけである。
戦闘員に未来たちの抹殺を指示しようとした死神博士だが、それより先にナスターシャ教授から通信が入る。
『此方に向かう二つの反応を感知、恐らく天羽々斬とイチイバルです。急ぎ撤退を』
「チッ…まあ良かろう、収穫はあった。戦闘員たち、その小娘どもを始末しておけ」
舌打ちをしつつ死神博士は戦闘員い命令を下した後、フックで上空に待機していたエアキャリアに乗り込む。それを見ていた調と切歌も渋々だがウェル博士を抱えてエアキャリアに乗り込み、エアキャリアは未来たちの前で姿を消した。
「響!?響!?」
目の前で響を連れ去られた未来が響の名を叫び戦闘員の拘束を暴れる。
「離して…離して!」
「殺せ!」
「イーッ!」
死神博士の命令を受けた戦闘員が刺突剣を片手に未来の前に来る。もう間もなく装者の翼やクリスが現場に到着してしまう。その前に未来たちを抹殺するつもりだった。
「よくも…よくも響を!」
「イーッ!?」
しかし、戦闘員たちの目的は叶わなかった。未来は拘束している戦闘員の足を蹴り拘束を解くと目の前に居た戦闘員に拳を浴びせる。
「イーッ!?」
未来の拳を受けた戦闘員は引き飛び痙攣した後に緑色の液体となり消滅した。それを見ていた戦闘員は創世や詩織の拘束を解き未来に襲い掛かる。
「小日向さん!」
詩織の声に未来は振り返り迫る戦闘員の一人に回し蹴りを食らわせ更に他の戦闘員にも拳と背中の体当たりで倒していく。その姿はどこか響と似ていた。
「凄い…」
「凄いよ、ヒナ。あれだけの戦闘員を倒すなんて」
「…凄くなんてないよ」
創世の言葉を否定する未来。その目は悲しみに満ちていた。
「響を助けたくてずっとあの人の下で特訓していたのに。…それなのに私は肝心なところで動けなかった」
未来は響がトカゲロンに負けた後、ずっと弦十郎に鍛えて貰っていた。一時はゾル大佐を倒して中断もしていたがショッカーの再始動で再び特訓していたのだ。弦十郎も未来の腕を褒めていたが戦闘員に捕まった時に足が竦んでしまった。
「何が響を助けるよ!何も出来なかった…なにも…」
「ヒナ…」
未来の絞りだす声に創世も詩織も弓美も何も言えなかった。人質にされたのは自分達も同じだ。未来に何かいう権利などない。未来は一人泣き続ける。
「悪い、遅れた!ショッカーは!?あいつは何処に居るんだ!?」
「立花は?立花は無事か!?」
それから間もなくクリスと翼が到着したが周りには戦闘の痕跡はあるがショッカーや響の姿が見つからない事に焦る。そして、未来たちに事の顛末を聞き二人の顔色が悪くなる。
「チクショウ!間に合わなかった…チクショウ!!」
「立花…」
響は連れ去られショッカーも撤退した。この日の戦いは特異災害対策機動部二課の大敗北と記録される事となる。
攫われるのは未来ではない、響だ。…原作で未来が攫われる展開はまだ先だけど…
原作では響を見てパニクったウェル博士と調と切歌だけだった+既に避難していたので人質にはなりませんでしたが極悪度の高いショッカーが見逃さずに未来たちを人質にして響を屈服させました。
ウェル博士が改心したようにも見えますけど目的の為にショッカーに近づいたら予想してたよりやばくて焦りだす。そんな感じです。
響から生えてきたあの結晶って何でしょうね?劇中、響が言っているようにカサブタでいいのか?弦十郎も体組織としか言って無さそうだし。…ガングニールの成分とか無いんだろうか?
SHOCKER
ウェル博士が手土産として持ってきたLiNKERを解析してショッカーが作り上げた劇物。
LiNKERに比べ装者の適合値と能力を爆発的に上げるだけでなく、適性の有無に関係なくシンフォギアを使わせることが出来る。更には性別すら関係なくシンフォギア装者に仕立て上げれる事も可能。
半面、LiNKERとは違い副作用が比べ物にならない、適合率の有無に関わらず注入すれば一時間後に確実に死ぬ。