改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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行きつけの本屋が来月、閉店する。…悲しい。


57話 少女の歌には、血が流れる。 悪の歌には、何が流れる? 後編

 

 

 

『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

咆哮を上げた響が二隻目のイージス艦を破壊する。その際にも死神博士の出したノイズを駆逐しながらだ。今の響に敵も味方もない、あるのは胸のガングニールの破壊衝動と辛い記憶だけだ。

 

響は暴れ続ける。最早何が憎いのかすら本人にも分からない。あるのは植え付けられた憎悪と破壊衝動だけだった。二隻目のイージスを破壊して沈めた後に響は一番大きな米軍の哨戒艦艇が目に入る。破壊衝動の赴くまま、それも破壊しようとした。

 

「待ちやがれ!」

「響!」

 

そんな響の前に立つ二人の少女。クリスと未来だった。尤も、響の記憶には残っていない。

 

『フウー!フウー!』

 

獣のような息遣いをする響、最早獣の威嚇音に近かった。その体から発する殺気に未来は愚かクリスすら冷や汗をかく。もう目の前の響は自分達の知っている響とは到底言えなかった。

それでも。未来とクリスは必死に響に話しかける。

 

「いい加減帰って来いよ馬鹿!何時までクソ爺に操られてる気だ!」

「響、学院に帰ろうよ。皆が響の帰りを待ってるんだよ。だから…一緒に帰ろ!!」

 

二人の声を聞き何か懐かしさを感じた響だが、死神博士の度重なる脳改造によりクリスと未来の記憶も消えてしまって居た。今の響には二人の声は届かない。

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

獣のような咆哮を上げる響は、両手を槍のように変形させてクリスと未来に突撃する。その行動に咄嗟に未来を横に付き飛ばした後に、クリスは未来の反対方向に移動すると両手からアームドギアのボーガンを出して響に攻撃する。

 

「馬鹿野郎ーーーー!!」

 

クリスは次々とボーガンの矢を響に撃ち込み、遂にはガトリング砲に変形させて小型ミサイルまで出す。しかし、暴走する響はクリスの攻撃を受けても怯みもせず、クリスを殺そうと攻撃する。

 

その光景を黙って見ていた未来。ダイレクトフィードバックは未来に撤退の指示をしていた。響が暴走している時点でダイレクトフィードバックは未来が響に勝ち目がないと判断してだ。このまま特異災害対策機動部二課の仮説本部の潜水艦に逃げるよう指示も出す。

しかし、未来はそれを無視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスは必死に響を攻撃する。全ては未来が安全に逃げれるようにだ。クリスとしては未来をこれ以上戦いの場に出したくなく、響とも戦わせたくなんてない。

 

━━━最悪、アタシがこいつを殺す!

 

これ以上、響をショッカーの意のままにさせたくないクリスは最悪、響の殺害も視野に入れる。何より響の体内の原子炉の核爆発も防ぎたかった。

 

━━━これはアタシにしか出来ない事なんだ!

 

クリスは響の説得を諦めてはいない。時間が許すギリギリまで声を出すつもりだ。だが、不可能だった場合は全力を以て響を殺す気でいた。例え、友達の未来に恨まれて、遺族に石を投げられてもクリスは自分が響を殺すつもりだ。

 

━━━アタシの手は、もう血で汚れて居るんだ。今更一人増えたって構わねえ!

 

『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「人の言葉も忘れちまったのかよ!」

 

ひたすら獣のような咆哮を出す響にクリスは目から一筋の涙を流す。もう、言葉すら通じない。そう考えるとクリスはとても悲しかった。

そして、そのまま響に大型ミサイルを撃ち込む。爆音と煙で視界が遮られる中、クリスは両腕のガトリング砲で響の居た場所付近に弾丸を撃ちまくる。

 

「少しでも、未来が逃げる時間を!」

 

クリスもこの攻撃で響を倒せるとは思っていない。未来を逃がす為に敢えて響に派手に攻撃して注意を引いたのだ。

 

━━━未来が無事に安全圏まで逃げれば最悪絶唱を使ってでも…『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

未来を逃がそうとしていたクリスだったが、ガトリング砲の雨の中、響は咆哮を上げてクリスに飛び掛かる。その際に何発物ガトリング砲の弾に当たり黒くなったシンフォギアが宙を舞い、それでも響は止まらず黒く巨大化した手がクリスに迫る。

 

「クリス、後ろに飛んで!」

「!?」

 

突然の未来の声にクリスが後方へと飛ぶ。直後に暴走した響は鮮やかな紫の光線に飲み込まれる。

 

「これは…!」

 

その光線を見たクリスが光線の出所を見る。そこには両足のアーマーを円状に展開して今までの物より極太のレーザーを出して居る未来がいる。

 

流星

 

「グっ…私の撃てる最大限の光線だよ!これで元に戻って…『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』!そんな…」

 

未来は己の撃てる最大限の光線をダイレクトフィードバックの助けも借り撃ったが光りに呑まれた響。レーザーが直撃した、これで…と考えた未来だが、響がは咆哮を上げると共に光線を一瞬だけ掻き消しそこから脱出する。響の体は相変わらずドス黒く変色し目が赤いままだった。

 

━━━ウェル博士の言っていたことが間違っていたの?

 

ウェル博士の情報と違う事に愕然とする未来。さっきまで響の拳の装甲や足の部分のシンフォギアは分解できた筈なのにと考えてると、歯をむき出し威嚇する響は未来を完全に捉えて一気に未来へと飛び掛かる。未来にはその光景がとてもスローに見えた。

そして、響の腕が未来へと迫る。それを見続ける未来に諦めの文字が浮かぶ。

 

「させるか!!」

 

しかし、未来を守った者が居た。クリスだ。飛び掛かろうとした響にクリスは体当たりをして着地点をずらし未来を守った。体当たりされた響も態勢を立て直して獣のように四つん這いに着地する。

 

「何してんだよ、馬鹿!早く逃げろ、アタシが囮になるから!!」

 

響を警戒しつつ未来に叫ぶ様に言うクリス。しかし、未来は床に座り込み神獣鏡のシンフォギアを撫でながら言う。

 

「神獣鏡の光も効かないなら…もう響を元に戻せる手段が…」

 

未来にとって神獣鏡は響を戻す一条の光だった。ショッカーに脳改造された響を取り戻す為に、それこそ藁にも縋る思いでウェル博士の調整を受けた。しかし、その神獣鏡でも戻せないなら…

 

「よくは分かんねえけど、光線はアイツに当たってなかったぞ」

「!?」

 

クリスの言葉に未来は顔を上げる。そして、クリスは響に警戒しつつ言葉を続ける。

 

「あの光線はアイツのドス黒いシンフォギアに当たると共に消滅していたんだ。あの光線はアイツには届いてない」

 

クリスは見ていた。未来の放った光線が響を飲み込むが、未来の放った光線は響の黒いシンフォギアから出た黒い靄の様なものが掻き消したのだ。言うなればオーラーのようなものだ。

その話を聞いて愕然とする未来。

 

━━━私じゃ響に届かないの!?

 

いくら神獣鏡の光りがシンフォギアを分解しても届かなければ意味が無い。実質、響を戻せる手段はもうなかった。

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

「チッ、もう来やがった!コッチだ、コッチに来やがれ!!」

 

クリスは咆哮する響に何発か当てて挑発する。響はその挑発に乗りクリスを追う。去り際にクリスは未来に逃げろと言ってその場を離れる。未来は、それを黙って見る事しか出来なかった。

 

━━━もう、時間も無い。私じゃ響を助けられないの?…響が死んじゃう!そんなの嫌だ!でも私にはもう………!

 

「一つだけあった…」

 

響を助けられないと感じた未来は絶望しかけたが脳裏に今までの響達の戦いを思い出し一つの可能性に行きついた。しかし、それは危険な物だと未来も知っている。知っているからこそ未来は己の命を賭ける事にした。

 

『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「さっきより早えッ!?」

 

クリスは焦る。未来を逃がす為、暴走する響の牽制をしていたが戦う内にクリスの動きを覚えたのか響の攻撃に対応が遅れていた。更に、疲労してるとはいえ響の動きも段々と早くなっている。

 

そして、次の瞬間には響はクリスの最後に回り鎗上の腕を振るう。間一髪で避けるクリスだが持っていたガトリング砲の片方を破壊される。

そして、響の更なる追撃に目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

突如、クリスの耳に聞き覚えのある歌詞が聞こえる。暴走していた響も歌の方が気になったのか、クリスを握り潰そうとした手を止めていた。

そして、それはクリスだけではない。戦闘を見ていた者達は皆、耳を疑っていたのだ。それは紛れもなく絶唱だったからだ。

 

 

 

Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 

 

 

「!?止めろ!!未来、それを歌うな!!」

 

クリスの目は絶唱を歌う者をアッサリ見つけた。未来だった。

絶唱を歌う未来を止めようとするクリス。だが、未来は構わず歌い続ける。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 

「止めなさい、小日向未来!それを歌ってはいけない!!」

 

「ここにきて絶唱か!面白い、素人も同然の小娘が絶唱を歌えばどうにかなると思ってるのか!?」

 

エアキャリアを操縦していたマリアの声とモニタリングしていた死神博士が楽しそうに言う。死神博士にとっては未来の行動など悪あがきにしか見えなかった。

 

『止めるんです、小日向未来! それは…神獣鏡は君に絶唱を使えるように調整はされてない!! いくらLiNKERを使ってるとは言え、このままでは君の命が!』

 

未来の通信機にウェル博士の声が木霊する。ナスターシャ教授の治療を終えて、モニターで未来の様子を見ていたウェル博士は、未来の絶唱を止めようとしたのだ。

 

━━━ごめんなさい、ウェル博士。それでも私は響を救いたい!例えこの命がどうなろうと!!…お願い、私に答えて神獣鏡!!

 

Emustolronzen fine el zizzl

 

未来はウェル博士に心で謝罪して、絶唱を歌い切る。直後に未来の体にエネルギーが波のように押し寄せてくる。直後に未来は強烈な光りに包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

「未来ぅぅぅぅぅぅぅッ!!」

 

「自滅しおったか、あの小娘!」

 

クリスが未来の名前を叫び、死神博士は未来が自滅したと判断して笑いだす。

マリアは目を逸らし、ウェル博士は奥歯を噛みしめる。

徐々に光りが治まっていく中、誰もが未来の生存を諦めかけた。が、

 

「…え?」

 

「なん…だと…」

 

クリスが目を疑い、死神博士は言葉も出なかった。率直に言えば未来は無事だった。それどころか、神獣鏡のシンフォギアが少し変わていた。頭部付近にあったバイザーが消え、紫の色もだいぶ明るくなり腕付近にあった帯も白くなっている。それは…

 

「まさか…エクスドライブだと!?」

 

死神博士が驚愕の声を出す。『エクスドライブ』旧リディアン音楽院でのゾル大佐との決戦のおりに姿を見せた響たちの奇跡。ゾル大佐が敗れた事でショッカーとしても注目はしていたが、

 

「馬鹿な、エクスドライブは相当な量のフォニックゲインが必要な筈!いくら、雪音クリスや風鳴翼が歌っていたとは言えエクスドライブになれる程では無かった筈だ!それこそ絶唱を使おうとも…まさか、あの小娘!?」

 

ノートパソコンで未来のエクスドライブの原因を探ろうとした死神博士だが、悉くがエラーや詳細不明という文字しかでず、嫌な予感が死神博士の脳裏に過る。

 

「あの小娘、この土壇場で奇跡を起こしたというのか!?」

 

「…奇跡」

 

死神博士の驚愕する声にマリアも反応する。未来は姿が眩しく羨ましくもあった。

 

「おのれ、こうなれば!ギリザメス、フクロウ男、小日向未来を殺せ!」

 

エクスドライブを覚醒した未来を危険視した死神博士が残った怪人に未来を抹殺するよう命令を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの光は?」

 

未来の光は仮説本部の甲板で戦っている弦十郎の目にも入る。直後に指令室から未来が絶唱を使ってエクスドライブした事が伝えられる。

 

「未来くんが…俺達は何処まで無力だ」

 

未来が絶唱を使った事に落ちこむ弦十郎。未来だけではない、翼もクリスも、そして響も成人もしてない子供たちに無理させていると後悔する。そして、それを待ってたとばかりにギリザメスが弦十郎の背後の海面から飛び出し弦十郎に飛び掛かる。

 

「死神博士の命令でお前にかかりっきりという訳にはいかなくなった。俺の自慢の鼻でお前の心臓を貫いてやる!!」

 

死神博士から小日向未来への抹殺命令にギリザメスは、さっさと弦十郎を始末しようと背中から不意打ち

し自慢の鼻のドリルで弦十郎の心臓を貫こうと飛び出した。

 

『指令えええええええ!!!』

 

それに気付いたオペレーターが指令と大声をかけると同時にギリザメスの影と弦十郎の影が重なる。その影は弦十郎の体を突き破ったように見えた。

 

「な…なんだと?」

 

驚愕した声が上がる、しかしそれは弦十郎の物ではなかった。逆だった、驚愕の声を発したのはギリザメスだった。

 

「待っていたぞ、この時を」

 

驚愕するギリザメスに弦十郎は淡々と言った。二人の姿は一見、ギリザメスの鼻が弦十郎の体を貫いたように見えたが正面から見ればよく分かった。

ギリザメスの頭は弦十郎の脇で捕らえていた。ギリザメスが鼻で体を貫こうとした瞬間に僅かに体をズラしてギリザメスの鼻を脇に通させそのまま捕らえただけだ。

 

「お前が俺に止めを刺そうとした瞬間が、お前の最大の油断となった」

 

「ほざけっ!こんな拘束、直ぐに解いてやるわ!!」

 

ギリザメスが力ずくで弦十郎の拘束を解こうとするがビクともしない。ならばと、左腕のカッターで弦十郎を切り刻もうとした。

 

「ハア!」

 

だが、力を溜めて精神を手中していた弦十郎はありったけの力を腕に込め一気にギリザメスの顔面に一撃を入れる。その一撃はギリザメスの鼻のドリルを粉砕し、重い一撃がギリザメスに入る。

 

「ギャアアアアアアアア!!」

 

鼻を折られたギリザメスが断末魔を上げる。拳の一撃で弦十郎の拘束から抜けたギリザメスは酔っ払いの様な動きで後ろに下がっていく。

 

「俺の…俺の鼻が!!」

 

自慢の鼻のドリルが粉砕されたギリザメスが立ち往生する。逃げる事も継戦するただフラフラとしていた。そして、それを見逃す弦十郎ではない。

 

「そこだ!!」

 

隙だらけのギリザメスに弦十郎が飛びまわし蹴りを入れた。蹴りは見事にギリザメスの首に入り「ゴキッ」と言う音がした。蹴りを入れられたギリザメスは抵抗することも出来ず海へと投げ出される。泳ごうとするギリザメスだが、手足をジタバタさせるだけで海へと沈む。そして、突き出した手も完全に沈むと爆散して海水をぶちまけた。

 

爆発の巻き込まれた海水を浴びた弦十郎は一息をつく。ギリザメスを撃破した。その事で指令室はお祭り騒ぎとなった。

 

「傷が海水で沁みる…」

 

地味に傷の痛みに悩む弦十郎は足を引きずりつつ仮説本部の医療室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しつこい!」

「デース!」

 

甲板で二人の少女が剣と大鎌で戦う。剣と大鎌が交差する度に火花を上げる、翼と切歌は未だに戦っていた。そこへ、翼の背後に回ったフクロウ男が殺人レントゲンを出そうとした。

 

「殺人レントゲ…またか!」

 

翼を狙って殺人レントゲンを出そうとしたが寸前の時に翼が大鎌を蹴り切歌と場所を入れ替える。死神博士に暁切歌も殺せと言われてない以上、勝手に殺す事はフクロウ男には出来ない。

 

「あの小娘め、邪魔ばかりしおって!」

 

既に何度も殺人レントゲンの邪魔をされたフクロウ男は切歌に苛立つ。まるで風鳴翼を守ってるような行動だがと考えた時、未来のエクスドライブの光りが飛び込んでくる。

 

「何だ、今の光は!?」

「デース…」

 

強烈な閃光に翼も切歌も攻めるのを止め、光りが出た方に注目する。此処からでは未来の様子が見えない以上、何が起きたのか分からなかった。指令室に聞こうにも甲板で暴れたギリザメスが数新施設の一部を破壊して、現在復旧作業の真っただ中だ。

 

「…大鎌の小娘、貴様は風鳴翼の相手をしておけ!俺はシンフォギアをエクスドライブさせた小日向未来を殺しに行く!」

 

死神博士からの指令を貰ったフクロウ男が切歌に翼の相手をするよう言う。その言葉に翼は「小日向がエクスドライブを!」と驚く。

 

「あの小娘の骨を貴様への土産にしてやるよ!」

 

そう言って、フクロウ男は高笑いして、その場から離れ光の出所に高速飛行していく。

 

「待てぇ!」

 

翼が呼び止めようとするが、当然フクロウ男が従う訳が無い。その時、翼の目にある物が映る。それは戦闘機を飛ばす為のカタパルトだった。

 

「これだ!」

 

直ぐに、翼はカタパルトの上に乗り剣を突き立てるとカタパルトが高速移動し翼はそれを利用して大ジャンプしてフクロウ男を追う。

 

「…正気デスか?あの人」

 

一人残された切歌がそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

空を飛ぶフクロウ男。目標の小日向未来を殺す為に移動しもう少しで未来の姿を確認できると思った矢先に背後から殺気を感じて身をひるがえそうとした。

 

「ハア!」

 

青い影がフクロウ男に迫り、ギリギリで剣を避ける。

 

「風鳴翼!?貴様、どうやって!」

 

その影が翼だったことに驚くフクロウ男。報告では旧リディアン音楽院で飛行怪人と戦闘したとの記録があったが、それも巨大な剣を出して、それを足場にしたに過ぎない。なのになぜこの空に翼が飛んでいたのかフクロウ男には予測も出来なかった。

 

「こうなれば貴様を先に白骨にしてやる!殺人レント…」

 

「遅い!」

 

フクロウ男が翼に向け殺人レントゲンを撃とうとしたが、それよりも早く翼は足のブレードを展開して回転してフクロウ男の目を切りつける。切り付けられた目の痛みに思わずフクロウ男は両手で目を押さえた。

これで、もうフクロウ男は殺人レントゲンを使えなくなった。

 

「止めだ!」

 

勝機と見た翼は持っていた剣を大型にして一気にフクロウ男に青い斬撃を叩き込む。

 

蒼ノ一閃

 

目を切り付けられ対応も出来なかったフクロウ男は翼の蒼ノ一閃をまともに喰らい、海に叩き落される。暫くの沈黙の後に爆発した事で翼はフクロウ男を倒したと判断して甲板に降りる。

 

 

 

 

 

 

ショッカーの怪人達は全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(暁光)…苦しむキミの明日(あす)を (永愛)…嘆く過去の涙を

照らし乾かすような 存在になりたい (I believe you)

 

「アイツ…やりやがった…」

 

未来の様子にクリスは安堵する。それどころか絶唱を使ってエクスドライブするなんて本当に初心者かと疑う程だ。

 

例えどの世界の 違うキミに出会ったとしても

待ってるいつでも必ず (I love you)

 

「…良い歌だ」

 

未来の歌に聴き惚れるクリス。未来の光を浴びてると心なしか疲労も消えたように感じる。

そして、対照的に響は未来を警戒する。暴走している響にとってエクスドライブ化した未来の光りが不快で心地よかった。

 

『何ダ、コノ光…不愉快気持チイイ反吐ガ出ルアタタカイ…

 

不愉快な気持ちにも安心できるような気持ちにもなり響は心がバラバラになりつつ、懐かしむ思いも強くなる。

 

「絶対譲らない!」と

再びキミに歌う

 

━━━不愉快な歌(優しい歌)ダ…分からナイ…アノ光りガ怖イ!マトモニ浴びレバ私ガ消エルかも…

 

響の胸や脳裏に未来に対する安心感とも不安感ともいえる感情が入り混じる。命令では小日向未来を殺すよう指示されてるが頭のどこかでそれを拒否している。そんな感じだった。

 

守られるのではなく

守る為に歌う (信じて)

 

「響、今あなたを縛る鎖を解いてあげるから!」

 

未来が力強く行って響に向き合う。反対に響は少し怯えていた。

 

『イヤだ…ソノ光りハ嫌ダ!ソノ光ハ私ヲ消光ダ』

「…大丈夫だよ、響。これはあなたを悪夢から戻す光りだから」

 

目に見えて怯える響に未来は優しく語りかける。まるで、泣いている幼い迷子の少女をあやすように。

 

『悪夢?』

「そう、それから私の想いとみんなの想いもぶつける」

 

(聖煌)…もう二度と泣かせない

(響信)…すべてを抱きしめたい

 

未来は確信に近い思いを感じていた。この力なら響の心臓のガングニールを取り除くことが出来ると。

 

『!?』

 

「あっ、待てコラ!」

 

しかし、響は未来から逃げるように移動する。脚部のジャッキを使って無理矢理空へと逃げる。追いかけようとしたクリスを未来が止める。

 

「大丈夫だよ、クリス。神獣鏡なら追いかけれる!」

 

そう言って、未来は響の後を追いかける。

そして、未来はアッサリと響に追いつく。響のガングニールは足のジャッキと腰のブースターで無理矢理飛ぶのに対して未来の神獣鏡は飛行も出来るタイプだ。空での追いかけっこでどちらが有利か語るまでもない。

 

「ちょっと痛いかも知れないけど…我慢してね、響!」

 

未来は扇を出して円形にする。それが丁度丸い鏡のようになると足のギアからパーツが飛び出しそれが未来の前で円形となる。更に鏡のようにした扇が幾つにも分身して未来の円形を囲むように周囲に展開される。

直後に、そこから先程よりも威力が高そうなレーザーが撃たれた。

 

暁光

 

どんなキミだっていい わたしには最愛 (I trust you)

 

未来のレーザーは今度こそ響を飲み込む。一瞬、目を瞑る響だが、痛みが殆どない事に戸惑う。それと同時に、脳裏に焼き付いていた迫害された記憶に変化が生じた。

 

━━━ソウだ…確か二私ハミンナに生き残った事ヲ責メラレタ…だケド私ノ味方をシテクレタ人もイタ。何で忘れてタンダロウ

 

死神博士に消された記憶が一部蘇る。それでも、まだ全てを思い出してはいなかった。

 

未来のレーザーが治まると響の体を纏っていた黒い影が消え去り海面へと落ちていく。

 

「やった!?」

 

響の体を纏っていた黒い靄みたいなものが消えてる事に喜ぶ未来。しかし、

 

『まだです!』

「!ウェル博士?」

 

通信機からウェル博士の声が響く。

 

『まだ、立花響の心臓にあるガングニールは消えていません!これではどちらにしろ!』

「なら…!」

 

ウェル博士の説明と響が未だにガングニールのシンフォギアを纏ってる事でウェル博士の言葉に頷く。もう一度響に暁光を撃とうとした未来だが胸の痛みと共に食道から鉄の味がする液体が流れて吐き出す。

 

「これは…血?」

 

思わず咳き込み手に付いた液体を見て未来が呟く。

小日向未来は血を吐いていた。無理に絶唱を歌った代償で未来の体に限界が来ていたのだ。絶唱を使いエクスドライブを起動させ無理矢理動かしたツケが回って来た事を未来は感じてた。

 

「お願い、もう一発だけ!」

 

何とか、響に向けて撃とうとするが先程とは違いギアの動きは鈍く、展開していた扇の鏡も元の扇に戻ってしまう。

 

━━━駄目だ、もう撃てない!これじゃ響を助けることも…!

 

自力ではもう撃てない事に途方に暮れる未来。最早、響を助ける手段がもう無いかに思われた。その時、未来の目はエアキャリアから射出された小型ユニットが目に入る。

小型ユニットは、未来の出したレーザーを反射させ海面に向けて射出されようとしていた。

 

「あれだ!」

 

未来は最後の賭けにでる。神獣鏡のシンフォギアを動かして海面に落ちる響をキャッチする。響の放出する熱で未来の顔を歪めるが構わず未来は響を抱えてレーザーの通る地点に飛び込む。

 

「帰って来て、響ィィィーーーーーーーッ!!!」

 

未来の絶叫と共に小型ユニットからの神獣鏡のレーザーが二人を飲み込む。レーザーは二人のシンフォギアを破壊して海面へと到達して海中を進む。

 

 

 

 

 

「ヌ!?」

 

ノートパソコンを弄っていた死神博士が思わず叫ぶ。響をコントロールしていたノートパソコンがエラーという文字を起こすと爆発して停止したのだ。

 

直後に、海中から強烈な光りが溢れる。神獣鏡のレーザーではない。神獣鏡によってフロンティアの封印が解けた。

 

「ええい、シンフォギア装者殲滅作戦は失敗した!心臓のガングニールが取り外されベルトの意味もなくなった!立花響も特異災害対策機動部二課に取り戻されたようだが、まあいい。心臓のガングニールを失った立花響はもうシンフォギアを纏えん!改造人間だろうと、アレはシンフォギアを纏って始めて真価を発揮出来るよう設計してある。地獄大使に連絡しろ、フロンティアの封印は解かれたとな!」

 

死神博士の命令に戦闘員は「イーッ」と返事をするとコックピットから出る。不機嫌そうな死神博士も何か用事があるのかコックピットを後にしてマリアが一人残される。

 

「…良かった」

 

一人残されたマリアがボソッと呟いた。それは偽ざる本音でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…何だろ?体がユラユラしてるみたい。まるで昔、お母さんと一緒にお風呂に入って湯船に浮んで遊んでた頃を思い出す。…でも冷たいしお湯じゃないからプールかな?でも、潮の香もするから海?あれ、私何時海に来てたんだろ?

 

「…ここは…」

「響、良かった目が覚めたんだね!」

 

この声と匂いは未来だ。あれ?私って未来と一緒に海に来てたんだっけ……違う…わたしは…

 

「…ごめんね、未来。手間を掛けさせたみたいだね、全部思い出したよ」

 

私は、あの時ショッカーに捕まって死神博士に脳改造されて翼さんやクリスちゃんを襲ったんだ。それで、海の上で未来とも戦わされた…自分が情けない

 

「本当に悪夢…みたいだったよ」

「大丈夫…だよ、響…悪夢は終わったの」

 

その言葉を聞いて私は安心した。意識を戻して少ししてから体が痛い、人工筋肉を無理矢理動かした所為かも…駄目だ…意識が…

 

 

 

響が気を失う。この時、響は気付かなかった。霞む目と逆光で未来の顔がよく見えなかったのだ。見て居れば悲鳴の一つでも上げただろう。未来は口や目から出血していた。まるで、クリスと初めて戦い翼が絶唱を使った後と瓜二つだった。

意識が途切れそうになる未来は、その度に必死に意識を保っていた。ここで意識を失えば二人共海に沈んでしまう。

 

その時、モーター音の音が近づき未来が振り向くと緒川がゴムボートで此方に近づくのがわかった。それを確認した後、未来の意識は途切れ緒川が急いで二人を回収した。

 

 

 

 




未来、まさかの絶唱&エクスドライブ。

以前のあとがきで歪鏡・シェンショウジンと永愛プロミスの話をしても誰もアドバイスをくれなかったので二曲とも歌わせました。

その所為で話が長くなった。

響の脳改造も未来の神獣鏡で正気に戻りました。
尚、XD版と違い、響のS2CAのサポートも無かったので、未来は翼と同じく緊急手術。ですがLiNKERで絶唱をある程度軽減できてはいるので一期翼ほどではありません。


兎に角、響の奪還。
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