クウガ以来だけど戦闘が派手になったな…そして、展開が早い。総集編かと思った。
「アイツも元に戻ったようだな」
緒川が響と未来をゴムボートに乗せて特異災害対策機動部二課の仮設本部の潜水艦に戻るのを見守るクリス。二人が無事に緒川に保護されたり響の記憶が戻った様子に安心した表情をして、前々から考えて居た事を行動に移す為に翼の下へと行く。
「う…ここは…」
「目が覚めたか」
未来と響が緒川に回収され少しの時が過ぎる。響が目を覚ますと直後に横からの声に顔を向ける。其処には弦十郎の姿が映る。周囲を見渡すと此処は特異災害対策機動部二課の仮設本部にある医務室の一つだろ。
「し…師匠、…!その怪我!?痛っ!」
弦十郎の腕や体に無数の包帯に気付く響。慌てて飛び起きるが響の体にも無数の痛みが走る。
「もう少し、横になっていろ響くん。俺の方は大丈夫だ、ギリザメスとの戦いで負った怪我だ」
「…ギリザメス」
響の脳裏に、廃病院で翼と戦っていたギリザメスの姿が過る。チラッとだが翼とマリアの戦いを横目で見た響はギリザメスの実力は相当高いと考える。弦十郎のようすを見る限りギリザメスに勝ったんだろう。
「…ごめんなさい、師匠。私がショッカーに操られた所為で…」
響の口から謝罪の言葉が漏れる。響が攫われ脳改造されショッカーに操られてしまったのだ、響は自分を許せないでいる。翼やクリス、未来にも襲い掛かり殺そうとしていた記憶が朧げながら覚えている。未来を殴った感触も未だに残っていた。
あの時、死神博士から未来やみんなを守る為だったとは言え、ショッカーに捕まって翼とクリスを倒す尖兵にされてしまったのだ。響の心に後悔しかない。
「少し考えれば分かる事だったのに…ショッカーが師匠や翼さん達を邪魔な存在だと認識してる事を知っていたのに!私が壊した戦艦にも多数の人が乗っていた筈なのに…私は!!」
響は自分が情けなくて仕方が無かった。未来や友達を思う心をショッカーに利用され翼やクリス達を殺す為に戦わされた。その事が悔しくて…悲しくて響の目から涙が溢れる。
━━━特訓して強くなった筈だった、でも結果は…
「私の所為で…私の所為で…!」
自己険悪に陥り泣きじゃくる響の頭に暖かい物が置かれた気がした。横を見ると、弦十郎が響の頭を撫でていた。
「そう自分を責めるな。響くんの破壊した艦艇はノイズで乗員が既に全滅していたそうだ。特異災害にあるセンサーでも、あの時には生存者は居なかったそうだ。たぶん、俺が響くんの立場なら同じことをしていたと思う」
「師匠が…ですか?」
響は頭を撫でて来る弦十郎の顔を見る。その表情は今までより優しく見えた。
「俺だって聖人君子じゃない。今まで生きていた中で後悔も色々してきた」
━━━そうだろ、早瀬
弦十郎は嘗て自分の手で倒した早瀬五郎を思い出す。親友であり良きライバルで弦十郎に嫉妬してショッカーに自ら入った男を弦十郎は、早瀬五郎を手に掛けた事を未だに後悔していた。
━━━それにしても、「乗員は全滅していた」か、よくそんな事が言えるもんだ
弦十郎は、真実を響に言えないでいた。確かに艦艇はノイズに襲われ壊滅状態だったが本当に全滅したのかは不明であった。特異災害のセンサーも万能ではない。上手くノイズから隠れられた物も居たのかも知れない。仮に犠牲者が出ても響はショッカーに操られてただけだ。響が悪い訳ではない。
こればかりは、響に言うことは出来なかったのだ。弦十郎や特異災害の一部の職員以外は知らない事であり弦十郎たちはこの事を墓場まで持って行く気であった。
「指令、響ちゃんは…って良かった目覚めたのね!」
弦十郎が響の頭を撫でて暫くの沈黙の後にオペレーターの友里あおいが入って来た。そして、響の意識が戻ってる事に気付いて嬉しそうに近づく。
「え…えーと、ご迷惑をおかけしました!」
あおいに向けて頭を下げる響。それを見てあおいは笑顔になるが、直ぐに表情を引き締め弦十郎に持ってきた書類などを渡す。
「響ちゃんの体ですが、心臓がちゃんと見えてます、あの特殊な金属はショッカーが外したみたいです」
そう言って、あおいは医務室のモニターを付けて映像を出す。それは以前に見た響の体内と同じ感じがした。違うのは心臓の様子がハッキリ映っていた事だ。
「幾つかの体内の装置が変更されてるけど心臓を蝕んでいたと思われるガングニールは完全に除去されてるわ。あの子の…小日向未来さんの使った神獣鏡のお蔭だと思うけど」
モニターに映る心臓は完全に健康体に見えた。それこそ周囲にある機械を無視すれば健康な人間の体の中だと思うほどに。
「未来…そうだ、未来!お礼を言わないと、師匠、あおいさん!未来は何処に?」
自分をショッカーから救い出し、心臓も元に戻った事に喜ぶ響は弦十郎たちに未来の居場所を聞く。しかし、帰って来たのは響と視線をズラス弦十郎とあおいだった。
「…え?」
その反応に響は思わず呟く。そして、嫌な予感が頭に過った。
シューコー…シューコー…
ベッドの上に人工呼吸器で呼吸する少女が横たわる。服は響と同じ入院服で腕には点滴が繋がり目を瞑って眠っているようだった。
「…これは…」
自分が居た病室から別の病室に移動した響はベッドの上で横になる少女を見て呟く。それは、紛れもなく…
「どうして…未来が…」
小日向未来だった。
あの後、緒川に保護された未来は緊急手術となり、響の目覚める寸前まで手術をされ人口呼吸器を付けられ安静にさせられていた。
「未来くんは響くんを助ける為に絶唱を使ったんだ」
「体内にあるLiNKERである程度までは軽減されたから翼ちゃんの時に比べれば軽症って言えるんだけど…」
その言葉を聞いて愕然とする響。未来の顔をソッと覗き込む、同時にまた目から涙が溢れる。
「私の所為だ…私の所為で未来が…」
響の呟きに何も言えない弦十郎とあおい。未来が無茶したのは確かに響の為だ、響を思って絶唱まで歌った以上弦十郎たちは何も言えないでいる。
その時、泣いている響の頬に暖かい手が触れてきた。また、弦十郎かあおいが慰めてるのかと思ったが、
「…泣か…ないで…響…」
「未来!?」
その手は未来の手だった、手術の影響でまだ痺れているが響の声で起きたのだ。
「未来くん…」
「良かった」
弦十郎もあおいも未来の意識が戻った事に喜ぶ。尤も、手術を終えて間もない為、未来の体には全身麻酔でろくに動けなかったが。
「未来…ごめんね。私の所為で…」
「謝らない…で、響。私…が響を助けた…いと思って…無茶した所為だ…から…」
「でも…でも…」
「私は…響をショッカー…から助けれて…満足してる…」
未来が笑顔を浮かべると響も泣きながら笑う。
その後、もう少し響と未来が久しぶりの会話をした後に未来の意識が途切れ眠りだす。まだ、手術が終わってそんなに時間が経っていないので当たり前である。
「未来…」
響が眠り未来の手をソッと触れる。死神博士の再改造手術の影響でまたもや力の制御が出来ない響はなるべく未来を傷つけないよう、少しだけ触れた。
「立花が意識を戻したと言うのは本当ですか!?」
すると、医務室の扉が開き翼が慌てて入って来る。あおいが口元に指を立てて翼を窘めた。
「済まない、立花が意識を取り戻したと聞いて…」
「翼さん、ごめんなさい」
響が翼に謝罪の言葉を口にする。操られていたとは言え翼を攻撃したのは事実だからだ。
その点、翼も承知している。
「謝る必要はない、全てはショッカーの所為だからな」
そう言って、翼は響の頭を撫でる。響はショッカーの卑劣な作戦で利用されていたに過ぎない。
「それから叔父様、指令室に戻ってください。斯波田事務次官より緊急連絡が来たそうです」
「分かった」
翼の言葉に弦十郎は急ぎ指令室へと向かう。
「緊急連絡って何でしょうね?」
「正直予想も出来ないわ。ショッカーがまた企んでるのかも」
響の言葉にそう返答する翼。正直、ショッカーの計画は想像以上の物が多い、規模も残虐性も。下手に予想するのは得策とは言えなかった。
「それにしても、ショッカーは遂にフロンティアを起動させたわ。恐らくこれまで以上の戦いになるかも…」
「ショッカーの企みなど私と雪音で払ってみせます。心配など無用です」
あおいの言葉に、そう言い切る翼。響はその言葉に反応する。
「私も戦います!」
「立花…お前は駄目だ」
「!? どうしてですか!」
響が自分も戦うと言ったが翼が許さなかった。その理由を聞こうとする響。
「お前の心臓にはガングニールは、もう無いんだ。シンフォギアを纏えないお前を戦いには出さん!」
「だ…大丈夫です!私、改造人間だからシンフォギアが無くったって戦えます!だから…!」
氾濫する響だったが、頬に痛みと共に体が動かなくなる。翼が響の頬をビンタした後に抱きしめたのだ。
「分かってくれ、もうお前を危険に晒したくはないんだ。…頼む」
「翼さん…」
響としてはここまで弱弱しい翼を見た事がない。翼の態度に最初は混乱した響だが、直ぐに納得もした。
━━━確かにシンフォギアの無い私じゃ戦闘員を相手にするので手一杯だ。前にも変身出来ない体で怪人と戦ってもビクともしなかった
響の脳裏に、嘗て旧リディアン音楽院で怪人軍団と戦った記憶が蘇る。大幹部であるゾル大佐が引き攣れた再生怪人たちに手も足も出なかった記憶が。
━━━私だけじゃなくてクリスちゃんも翼さんに説得してくれれば…駄目かな、クリスちゃん優しいし。…あれ?そう言えば…
そこで、響は仲間のクリスを思い出す。何時もはツンツンとしてるけど本当は優しい少女が来ない事に疑問に思う。
「あの翼さん、クリスちゃんは?」
「雪音か、アイツなら…」
響の質問に答える翼。それは海に浮かぶ響たちが緒川に保護されて間もなくの頃だった。
あれは、私がショッカーの怪人フクロウ男を倒した後だった。私を追ってFISの大鎌のギアを持った少女と鍔迫り合いが起きようとした時に海に異変が起きた。最初は岩が浮上してきたのかと思ていたが、真っ直ぐな石柱に自然で作られる訳が無い見事な円形の巨大な岩で作られた人工物が浮上したんだ
『これが…』
『フロンティア…デース』
海中から現れた想像よりも巨大な人工物に圧倒されていた。そんな私に雪音が近づいてきて銃を向けてきた
「え、銃をですか?」
「そうだ」
『何のつもりだ、雪音!』
『…これからやる行動を見逃してほしいだけさ』
そう言って、私に銃を向けたまま雪音はFISの装者と話し出した
『アタシはお前らに降伏する。だから、アタシも一緒にフロンティアに連れて行け』
「えええぇぇぇぇぇ!!」
「立花、うるさい。まだ終わってない」
「ごめんなさい!」
まあ、確かにあの時は私も立花と同じ反応だった。雪音がショッカーに本気で投降する気だったら叩斬ってやろうかとも思ったが、FISの装者が喋り出した
『仲間を裏切って私達に着く気デスか?信じられないデス』
『これが証明書だ。……なんてな、お前アタシに協力しろよ』
『協力?』
『お前、ショッカーに忠誠を誓ってる訳じゃないんだろ?アタシの目的はソロモンの杖と死神博士のクソ野郎だ』
『………』
『アタシの策が成功すればお前の仲間たちを助けられるかも知れないぜ』
『…分かったデス』
FISの装者が返事をして一緒にヘリに飛ぼうとしてる所を私は止めようとしたが、
『アンタはアタシがしくじった時頼む。悪いな』
取り付く島もなく雪音はFISのヘリに乗り込んだ
「じゃあ、クリスちゃんは…」
「上手く潜入できてるといいが」
クリスの身を案じる翼と響。それだけ、クリスは危険を冒していた。
時間は少し戻る。
「暁切歌よ、なんだそれは?」
クリスを連れ帰った切歌に死神博士の第一声はこれだった。調の始末もせず敵の特異災害の装者である雪音クリスを連れてきたのだ。戦闘員が警戒態勢を取る。
「仲間を裏切って私達についた装者デス」
「雪音クリスだ、力を叩き潰せるのは更に大きな力だけ。アタシはこれ以上犠牲を出したくねえ」
そう言って、クリスは死神博士の前にギアのペンダントを差し出す。少し考えた死神博士は、戦闘員にペンダントを受け取らせ自分の手に握る。
「ふむ、本物のようだな。よかろう、貴様の事は認めてやろう」
ペンダントが本物のだと納得したクリスが入るのを認めた。
━━━相変わらず不気味な爺だ。あの値踏みするような目つき、今までの連中と違い過ぎる
クリスは死神博士の異質さを不気味に思う。両親が死んでから碌な目にあってないクリスは男の目つきに敏感になっている。ただでさえ発育の良い体だ、男達のスケベな視線を感じた事など一度や二度ではない。
しかし、死神博士の目はそれとは明らかに違う。一言で言えば不気味と言えた。
「…そうそう、暁切歌よ。医務室でウェルがお前を呼んでいたぞ」
「ドクターが、デスか?」
クリスにギアを返した死神博士が切歌にそう言った。その言葉で切歌は、医務室へと向かう。
それを見ていた死神博士の口の端が吊り上がる。
シンフォギアから普段着に戻った切歌は、医務室の前に居る。調を助ける前のやり取りで切歌はウェル博士の事を少しは見直していた。それでも悪感情の方がまだ強いが、
「ドクター?居ないですか?」
医務室へと来た切歌は部屋の中を見回す。ウェル博士どころか誰一人見当たらない。
「おかしいデスね…!」
切歌が中に入る辺りを見回していると扉が閉まりロックされる。直ぐに扉に駆け寄るが切歌の力では開かない。
「何が…「イーッ!」戦闘員!?」
いきなりの事で茫然としてると明かりが消え不気味な青い光が差し何処からともなく戦闘員が現れた。
「一体何のつもりデスか!?」
既に周囲を取り囲まれた切歌が戦闘員に語り掛ける。しかし、戦闘員たちは切歌の言葉に答えようとはしない。こうなればシンフォギアを纏ってこの場を切り抜けようとしたが、
「クォーッ、クォーッ」
突然、上から不気味な声に切歌が上を見る。そこには鳥のような嘴をした細長い二本の角を持った胴体が茶色がかった怪物が天井に張り付いている。
「怪人!?しまっ!」
切歌が突然の怪人に驚いた隙に複数の戦闘員が切歌を取り押さえる。その際、切歌のギアのペンダントが奪われた。
「離せ!離すデス!!」
切歌が拘束を解こうと暴れるが戦闘員の前ではビクともしない。成人男性以上の力を持つ戦闘員にシンフォギアを纏ってない切歌では、まさに大人と子供の差がある。その後、医務室のベッドへと強制的に寝かされた切歌は隙を見て逃げようとしていたが、手足を鉄の鎖で繋がれてしまう。
「何で…こんな…」
「愚かな小娘め、貴様の裏切り行為などとっくに死神博士に気付かれるわ!」
怪人の言葉に切歌は息を飲む。死神博士は、翼がフクロウ男との戦いで切歌が悉くフクロウ男の殺人レントゲンを邪魔していると確信していた。仮に裏切ってなくてもフロンティアの封印が解けた以上、マリアたちは用済みである。
━━━私の裏切りがバレていたのならあの銃使いの方も…
「本来なら処刑されるところだが、それでは面白くもないと死神博士が言うのでな。お前には我等、ショッカーの奴隷となり特異災害の装者どもを始末して貰う」
「誰がお前達なんかに!」
バレた以上、もうショッカーに従う気の無い切歌。これではマリアを助けるどころか足を引っ張ってしまうと感じた切歌は自分の舌を噛み千切って自害を覚悟した。しかし、切歌の口に布が押し込まれそれは不可能となる。
「ン゛ーーー!!」
「言っただろ、簡単に死なれては面白くないと。おい!」
「イーッ!」
怪人が呼ぶと白い科学者の服を着た戦闘員が何かを持って近づいてくる。切歌の目には小さなゴミのようなものが見えた。
「これは受信カプセルだ。これより、この受信機のカプセルをお前の鼓膜付近に設置する。これには俺の出す電波を感知してお前に強制的に命令を下す。逆らう事など出来んぞ」
「!?ン゛ー!!」
怪人の言葉を聞いて暴れようとする切歌。戦闘員が切歌の耳を上向きにしようとするが切歌の抵抗で上手くいかない。力を入れ過ぎて切歌の首の骨が折れてしまえば元も子もない事は戦闘員も分かっておりあまり力は入れられない。
「ええい、大人しくしろ!!」
見かねた怪人が苦戦する戦闘員に代わり、切歌の頬に拳を入れる。怪人の拳をくらった切歌の体から力が抜けグッタリとする。その間に白服の戦闘員が急いでピンセットでカプセルを切歌の鼓膜に設置する。
設置が完了した後に、怪人の二本の角から赤い光を出すと切歌が絶叫を上げる。繋がれた鎖からの金属音の音で切歌の苦しみは並ではない。
「うわあああああああああああああああああああああ!!」
「苦しめ、苦しむがいい。この部屋は防音になっている以上助けなど来んわ。クォーッ!」
━━━調…マリア…助けて…
心の中で助けを求める切歌。しかし、怪人の言う通り助けは来なかった。
そして、時間は戻り死神博士やマリアは浮上したフロンティアに上陸した。エアキャリアから出たマリアとクリスが周囲を見渡す。
「ここが…」
「フロンティア…」
「観光でも、しに来たのか?さっさと進め」
そんな、二人に死神博士が一喝する。マリアもクリスも渋々歩き出す。道中、洞窟のような入り口を見つけ中に入る。暗い中、舗装された通路だった事で人が作った事がわかる。
複数の銃を持った戦闘員と死神博士、マリアたちのクリスが歩く。そして死神博士の傍にはフードを目深く被った人物も何時の間にか居た。今は、念の為にとクリスは先頭で戦闘員が銃で威嚇しながら歩いている。
「切歌、大丈夫なの?」
歩いてる途中にマリアが切歌に声をかける。切歌に何時もの元気がない事や目の付近に青い斑点のようなものが出来て心配だったのだ。
「心配…いらない…デス。何時も…どうり…デス」
「そ、そう」
心配いらないと言う切歌にマリアはそれだけしか言えなかった。マリアも暗がりで切歌の状態もよく見えてないが、それ以上に精神的に一杯一杯だ。そんなやり取りを見て死神博士は不気味に目を光らせる。
「もっと、早く歩け!」
銃を持った戦闘員が先頭を歩かされてるクリスに銃口を押し当てる。
「痛ぇな、分かってるよ!」
「雪音クリスよ、変な動きをすれば戦闘員の放つ銃弾が容赦なく貴様の体を貫く。許可なく歌う素振りを見せても殺す!」
前を歩くクリスに死神博士が冷酷に言い放つ。その言葉は全くクリスを信頼してない事が伺える。
━━━クソッ、やっぱ直ぐには信用しねえか。当たり前と言えば当たり前だけど。…それにしても…
クリスは先頭を歩きつつ、横目で後方の死神博士の方を見る。視線は死神博士の横にいたフードを目深く被った人物だ。
━━━アイツ、何時から付いて来てたんだ?正体は?新しい怪人か?体つきからして女か?
正体不明の人物を警戒するクリスだが、露骨すぎると考え軽愚痴を言って誤魔化す。
「チッ、信用しねえな」
「当たり前だ。裏切者は何度でも裏切る、貴様はフィーネを裏切って特異災害対策機動部二課についたのだからな。…ああ、すまんな。お前が無能だったからフィーネがお前を切ったのだったな」
それだけ言って死神博士が笑い出す。暗い通路の中、死神博士の笑い声が木霊する。
奥歯を噛みしめたクリスが横目で死神博士を睨みつけマリアたちも死神博士に冷たい視線を飛ばす。
少し歩いたマリアたちは一際広い場所で、細い通路の奥に巨大な丸い球体のようなものが安置されている。
「ここがジェネレータールームです」
ナスターシャ教授の言葉に一同が巨大な球体に目を向ける。それは一見、巨大なオブジェにも見える。
「付いて来い、ウェル」
「はい」
そのオブジェに死神博士とウェル博士が近づいていく。そのオブジェの下もまで行くとウェル博士は厳重に閉まっていたケースを開け赤く光る物体…ネフィリムの心臓を取りだす。
「これです」
「ウム」
ウェル博士から渡されたネフィリムの心臓を受け取る死神博士はそのオブジェクトにネフィリムの心臓を張り付けた。ネフィリムの心臓は付けられた瞬間、千切れていた管がまるで血管のようにオブジェに張り付き、オブジェ自体が黄色く輝く。
そして、更に輝きが増すと共に周囲にあったクリスタルも光り出しエネルギーを供給してるように見える。
「これが、ネフィリムの心臓の力?」
マリアが驚きつつそう言う。
「心臓だけとなっても、聖遺物を喰らい取り込む性質は変わりませんか…卑しいですね」
「なぁに、我々には相応しい力よ」
ウェル博士が呟き、死神博士が答える。輝くフロンティアのジェネレーターを薄ら笑いを上げる死神博士を軽蔑の視線を送るウェル博士。
エネルギーが遅れられてフロンティアの外は植物が咲き始める。その事に気付いたのか、ナスターシャ教授が「エネルギーがフロンティアに行き渡った」と報告する。
「それでは、我々はブリッジに向かうとしよう。ナスターシャ、貴様は制御室での管理だ」
「…了解しました」
死神博士やウェル博士らはブリッジに向かい、ナスターシャ教授は戦闘員と共に制御室へと向かう。
「どうした貴様も付いて来い」
死神博士の言葉にクリスが振り向く、クリスの目には死神博士がフードを目深く被った人物に話していた。会話の内容からしてフードの人物もフロンティアのジェネレーターの光を見ていたのだろう。
「…はい」
「!?」
フードの人物の声を聞いたクリスは一瞬体が固まった。
━━━今の声…まさかな…
クリスにとってその声は聞き覚えのある声だったのだ。
「アイツ…な訳無いよな」
クリスがボソッと言う。その声はどこか不安に満ちていた。
その頃、特異災害対策機動部二課の仮設本部の指令室では弦十郎が緊急連絡をしてきた斯波田事務次官と話をしていた。そして、その内容は弦十郎としても信じられないものだった。
「…事務次官、もう一度言ってください!その情報は確かなんですか!?」
『そうだ。今日の早朝に奴さんからの緊急連絡だ、アメリカの艦隊の一部が命令無視で行方をくらませた。更にロシア、中国、ヨーロッパの艦隊の一部が失踪した』
「…その艦隊がこの海域に来ると言うのですか?」
『絶対とは言い切れねえ、何しに来るのかも分からねえが嫌な予感がしやがる』
そう言って、斯波田事務次官はソバを啜る。アメリカを始め各国の海軍が勝手に行動する、ショッカーがフロンティアを手に入れた事と関係あるのか考える弦十郎。
『それから未確認だが、どうもその軍艦には無数の核弾頭が積んであるそうだ』
「!?」
最後の、斯波田事務次官の爆弾発言に言葉を失う弦十郎たちだった。
フロンティアの天辺付近にある階層、エレベーターの様な物に乗って死神博士とウェル博士、そしてマリアが降り立つ。此処がフロンティアのブリッジのようだ。巨大な紫色のクリスタルのような物の中に、濃い青色をし変な模様のある球体の下まで歩いていく。
「ウェル、例の物を」
死神博士が「例の物」と手を出す。ウェル博士は懐から拳銃型の注射器を出した。その中にはある液体が入っていた。
「それは?」
「LiNKERですよ、ただしネフィリムの細胞を混ぜた特別性です」
マリアの質問に答えるウェル博士。それを受け取った死神博士は左腕の裾を捲り上げる。
「今更ですが先生、本当に僕が打たなくて良かったんですか?」
「構わん、私の体でネフィリムの力を実験するのも面白い」
元々は、この注射はウェル博士が自分自身に打とうとしていたが、そこに待ったをかけたのが死神博士だ。死神博士自身は己の体でネフィリムの実験と言っているが真相は果たして。
そして、死神博士が注射器を腕に付けて一気にトリガーを引くと一気に中身の液体が腕の中へと入る。直後に死神博士の腕が肥大化し裾の一部と白い手袋が破れる。その腕はネフィリムと同じ灰色をし二つの角のような棘が生え二の腕の方には赤くひかっていた。
マリアは不気味な物を見るような目をし、ウェル博士は小さく笑みを浮かべていた。
「フム、ではさっそく」
変化した腕を軽く開いたり閉じたりした後に変な模様の球体に触れる。瞬間、球体が光ると共に球体の周りにあった紫色のクリスタルからオレンジ色の光が出る。
「…鳥之石楠船神」
「とりの…なに?」
死神博士の呟きに反応したマリアが何を言ったのか尋ねる。ウェル博士も眼鏡を弄って聞きたそうだった。
「フロンティアの本来の名だ。嘗て、カストディアンどもが使っていた星間飛行船。首領の言っていた通りだった!」
何が可笑しいのか死神博士が笑いだす。マリアもウェル博士もその姿は不気味に感じていた。その時、死神博士は空いた手から通信機を取り出す。
「潜水艦隊、準備はどうだ?」
『イーッ!人工重力装置GXの取り付け完了しました。フロンティアのエネルギー供給問題なし!そちらで制御可能です!』
「人工重力…」
「装置GX…?」
聞かされてなかったのか、マリアとウェル博士は通信機からの人工重力装置GXの言葉に反応した。尤も、二人の反応を無視した死神博士は更に笑い声を上げる。
「では、飛ばす事にしよう」
死神博士の言葉に黙って見ていたマリアとウェル博士だったが直後にフロンティア全体が巨大な揺れが起きる。モニターとなっているオレンジ色に光るクリスタルには少しづつだがフロンティア自体が海面から飛び出している光景が映る。
『死神博士、一体何をしてるのですか!?』
制御室に居たナスターシャ教授が何をしてるのかと連絡してくるが死神博士はその質問を無視する。
その時、オレンジ色を出すクリスタルの一つに海を渡り此方に近づく艦隊の映像が出る。
「地獄大使め、予定通りだ。聞こえるか私の声が!」
艦隊の映像を確認した死神博士はブリッジからナスターシャ教授やクリスに聞こえるよう通信を繋げる。
「これより、フロンティアを改め『ショッカー大要塞フロンティア』と名付ける!最早、我々に敵は居ないのだ!フッハハハハハハハハハハハハハ!!」
ショッカーの目的。
それは、嘗てカストディアンが使っていた星間飛行船『フロンティア』を稼働させ巨大な飛行要塞として使用する計画だった。
怪人製造プラントや核ミサイルの発射所を設置して一大拠点にする予定である。
響たちはこの恐ろしい計画を阻止する事が出来るのか?
未来は無茶した為、暫く医務室から出られません。
響がアメリカの海軍を手に掛けたかは不明です。
そして、切歌に迫るショッカーの魔の手。一体、何ノドンの仕業なんだ?
絵面が完璧に犯罪ですが原作の仮面ライダーのショッカーも同じような事をしてるので。
人工重力装置GXですが詳細なデータが分からなかったので地球の地軸を弄れるのなら物体を浮かす事も出来るんじゃないかと思って使いました。
首領は一応、フロンティアの真の名を知っている設定です。
クリスが気にするフード姿の正体は!?