「私は…私はこんな事の為にフィーネを名乗ったんじゃない!…セレナ、私はどうしたら!」
死神博士の居ないフロンティアのブリッジ。ウェル博士に介抱されたマリアが肘と膝を地面につけて四つん這いになって床を叩く。マリアの力では叩く床も傷一つ出来ず、痛みがマリアに跳ね返るが今のマリアにはどうでも良かった。
ショッカーに…死神博士に騙されフロンティアへと連れてきて月を落とす事に加担させられたのだ。悔しくて仕方がない。
そして、ウェル博士もまた、マリアの様子を見て水晶の柱の様な物に背中を預けて座り込んでいた。
「何か…何か手を…考えろッ僕!」
片手で頭を押さえて、何か逆転の目は無いか考えて居た。しかし、フロンティアのシステムは死神博士が握り殆どのシステムはウェル博士やマリアじゃ動かせない。
「いっそシステムを破壊するか?駄目だ!それこそ月を止める手立てがなくなる!」
ショッカーに利用されるのなら、いっそフロンティアをシステム事破壊すべきかと考えたウェル博士はかぶりを振る。シンフォギアを纏ったマリアや自分がどこまで破壊できるか不明であるし、何よりフロンティアは月が落ちるのを止める最後の手立てでもある。簡単には諦められない。
『何時までウジウジしてるつもりですか!?』
マリアは泣きながら床を叩き、ウェル博士はああでもないこうでもないと考えて居ると通信機からナスターシャ教授の声がする。
「…でも、マム!私達は完全に騙されたのよ!」
「お恥ずかしい話です、アナタにショッカーの手を借りると提案した僕が完全に掌の上で踊らされたんですから」
ナスターシャ教授の叱咤にもマリアもウェル博士も落ち込み続ける。それだけ死神博士にしてやられたショックが大きかった。
『…なら、ずっとそこで落ち込みショッカーの企み通りになるのを見続けるつもりですか?ショッカーの野望を止めないのですか?』
「そんな訳…ないじゃない!…でも」
「フロンティアの操作権のない僕らに何が出来るって言うんですか!」
教授の言葉に奥歯を噛みしめたマリアが顔を上げて、ウェル博士もそれに続く。現状、何も出来ないとナスターシャ教授に訴えるウェル博士。英雄に憧れた自分が悪に操られていた事が悔しくて仕方なかった。
『落ち着きなさい、この短時間に死神博士がフロンティアのシステムを全て掌握したとは考えにくい。何か取りこぼしがある筈です』
その言葉にマリアがハッとした顔をする。確かに死神博士が操作していたのは短時間だった、それに月を落とす事に力を入れていた。なら
「成程、死神博士が取りこぼしたシステムを使って月の落下を防ぐ方法を探すのですか…分の悪い賭けですね」
『元々が分の悪い賭けですよ、他に方法が思いつかなかった以上は。此方でも月の落下を防ぎ方法を探します。だから二人共』
「…ええ、諦めないわ。マム」
ウェル博士の言葉にそう返すナスターシャ教授。マリアも頷き片っ端から操作盤やモニターになっている水晶に触れていく。一旦、通信を切りナスターシャ教授もフロンティアのシステムを調べる。
「立花とあの装者が一緒に!?止めなかったんですか!」
フロンティアを走り回っていた翼は本部からの通信で立ち止まり弦十郎からの報告に怒鳴るような声を上げる。改造人間とはいえ、響は病み上がりもいいところだ。
「気付いた時にはバイクに乗って飛び出した!?全く、想像の斜め上をいく!」
響きには安静にして仮設本部に居て欲しかったがバイクにまで乗って行ったことに驚きつつ腹も立てる。
「…了解です、直ぐに合流します!」
合流したら拳骨の一つでも食らわせてやろうかと考えた翼が通信を切る。思わずため息をつく翼はフロンティアを大分進んでいたが響との合流の為引き返そうとする。
「ノイズや戦闘員に深追いしすぎたか。…!」
「イーッ」「イーッ!」
今まさにバイクで引き返そうとした翼の前にまたもや戦闘員達が現れる。武器を持った戦闘員が翼の行く手を阻んでいる。
「また戦闘員か、いい加減数が多い…ッ!!」
戦闘員に注目していた翼だが、嫌な予感がし咄嗟にバイクから飛び降りる。直後に翼のバイクが赤い矢のような物が降り注ぎ爆発する。
「この攻撃は…」
翼が攻撃してきた大岩の上を見る。其処にはボーガンタイプのアームドギアを戻したクリスがいた。
「雪音、お前が来たか」
「悪いが、その首貰うぜ」
戦闘員に注意しつつ翼がクリスに話しかけクリスも答える。そして、戦闘員が一斉に翼へと飛び掛かる。
同じ頃、調と響の二人は翼が進んでいた場所とは少しズレている場所へと向かっていた。
「あそこにマリアさん達が?」
「分からない…だけどそんな気がする」
バイクに乗りヘルメットを被った響の問いに調が答える。しかし、調の曖昧な言葉に響は思わず「気がする?」と呟く。直後に自分達の前の地面が爆発して響はバイクを止め調もギアを解除して地面に立つ。
「攻撃!?」
「…!あそこ!」
調の声に響は遺跡のような建物を見る。其処には、
「クォーッ、クォーッ!わざわざ死にに来るとはな、裏切者どもめ。此処を貴様たちの墓場にしてやる!」
鋭い嘴をした二本の角を持つ翼の生えた怪人がいる。
「ショッカーの怪人?」
「俺の名はプラノドン、地獄に行っても忘れん事だな!!」
そう言い終えるとプラノドンは口から響と調に向けてロケット弾を撃ち込む。調はギアを使ってロケット弾を撃ち落とし響も辛うじて避ける。
「先ずは挨拶代わりだ、そしてお前達の為に用意した物がある。見ろ!」
プラノドンがその場から動く。その時に響と調がプラノドンの背後にもう一人いた事に気付いた。
「切歌ちゃん!?」
「切ちゃん!?」
二人の口からその人物の名前が出る。それは紛れもなく暁切歌だった。フードを被り首に巻いているマフラーが風になびく。
…Zeios igalima raizen tron
聖詠を口にしイガリマのシンフォギアを纏う切歌。相変わらず目の周りが紫色で顔色が悪い。
「切ちゃん!」
調の声に切歌の眉が少し動くがそれだけだった。切歌は武器であるアームドギアの大鎌を握り構える。
「…調…ショッカーに…戻るデス。…今なら…まだ…」
「ショッカーのやり方じゃ何も残らない、もっと酷い事にだって!それは切ちゃんだって分かってるでしょ!」
「それは…ウッ!?」
調と会話をしていた切歌が突如頭を押さえて苦しむ。
「何を流暢に喋っている?戦え、戦って裏切り者の立花響と月読調を殺せ!!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
傍に居たプラノドンが角を赤く光らせ切歌に命令をする。苦しむ切歌を見て明らかに異常な事が起きてると察する調と響。
「切ちゃん!?」
「プラノドン!切歌ちゃんに何をした!!」
「聞きたいか?死ぬ前に教えてやろう、この小娘には俺の電波を受信する装置を埋め込んだ!今の小娘は俺の操り人形だ!」
響の問いに自慢げに言うプラノドン。終いには大笑いをしてプラノドンの笑い声が辺りに響く。
「さあ、殺し合え!殺し合って地獄に落ちろ!!」
「そんな…切ちゃん」
「卑怯だよプラノドン!」
「馬鹿が!戦いなど勝てばいいんだよ!」
切歌が操り人形だと教えられて調は愕然として響は卑怯だと訴えるがプラノドンには何処吹く風だった。
操られた切歌が大鎌を振ろ翳して襲ってくる。調も響も何とか避けるが隙を付いてプラノドンが口からロケット弾を撃ち込む。連射も可能なプラノドンのロケット弾と操られた切歌の攻撃に翻弄される二人だった。
「くっ、如何すれば!?」
「アナタはマリアを助けに行って!切ちゃんと怪人の相手は私がする」
操られた切歌にどう戦えばいいか悩む響に先に行くよう促す調。その言葉に響は調の顔を見る。
「一人で戦うなんて無茶だよ!ここは…」
「
「いくさば?…いや、我儘言ってるのは調ちゃんじゃ…」
「それに大丈夫…操られてる所為か切ちゃんの動きが何時もより散漫。怪人さえ何とかすれば切ちゃんも十分助けられる」
調の言葉に響は「なら二人で」と言うが調は首を横に振る。
「今、マリアを助けられるのはアナタだけ。…お願い、私とシンフォギアを繋ぐLiNKERもまだ余裕がある。だから
「…了子さん…うん、分かった」
調の言葉に嘗てのフィーネとの最後のやりとりを思い出す。真剣な目で響にお願いと言う調の言葉に響も頷かざるえなかった。その間にもプラノドンのロケット弾が降り注ぎ切歌もアームドギアの大鎌を振る。
「調ちゃん、無理しちゃ駄目だからね。マリアさん達には調ちゃんも必要なんだから」
「!」
響の言葉に少しだけ驚く調。表情には少しだけ笑み浮かべてる。
一瞬の隙を付いた響はプラノドンのロケット弾の爆風で倒れたバイクを起こしてエンジンを吹かす。バイクのエンジン音が響くと同時に響は先へと進む。目標はフロンティアで一番高い塔だ。
「簡単に行かせるか!!」
その行動を見逃す気はなく、バイクで移動する響を追おうと空へと羽ばたくプラノドンだが小さな赤い丸鋸が行く手を阻む。
「チッ!小娘、貴様!!」
「アナタの相手は私。切ちゃんを操った事…絶対許さない」
「ほざけ!そんなに死にたいなら先ず貴様を血祭りにあげてやる!」
プラノドンの注意を惹く為に敢えて挑発する調。尚、本気で許す気はない。そして、挑発にのるプラノドンは切歌と共に調へと襲い掛かる。
翼のクリスの戦いは一進一退であった。クリスがアームドギアを二丁拳銃にして翼へと撃ち、翼も剣で弾を弾いて最小限の動きでクリスの間合いを取る。
その間にも戦闘員は二人の攻撃の流れ弾などが当たり消耗していく。
「戦況は五分か、あの小娘手を抜いてるな」
翼とクリスの戦いを棒付きの双眼鏡で眺める死神博士が呟く。傍には新しいノートパソコンを持った戦闘員が居り死神博士がノートパソコンのキーを押す。ノートパソコンのモニターには雪音クリスと書かれた文字と女性の体と思しき図形にメーターの様な物まで書かれている。
「これではデータ取りにもならんなぁ…なら奴を向かわせるか」
ノートパソコンに映ってるのはクリスの身体及び戦闘でのデータであった。クリスが出撃前に死神博士がクリスに首にチョーカーの様な物を取り付けている。クリスには逃走した時の爆弾と言っていたがもう一つの目的があった。
それこそが戦闘データの収集である。データは響が捕まった時にタップリと取っていたが響とクリスの差異を見る為、それに戦闘データはいくらあっても困らないからだ。
とは言えクリスが手を抜いてる事は死神博士にとって面白くない。
それゆえに発破をかける事にした
「スゥノーオオオ!!」
「「!?」」
翼とクリスの睨み合いの最中に突如、不気味な声がし翼は殺気を感じてその場から動く。
直後に、翼の居た場所に大岩が降って来た。一瞬でも移動が遅れたら翼は潰されていただろう。
「クッ…何のつもりだクソ爺!!」
それを見たクリスは背後に向かって叫ぶ様に怒鳴る。尤も怒鳴られた本人…死神博士は笑みを浮かべている。
「死神博士!?それに、また知らない怪人?」
翼もクリスの叫びで始めて死神博士が其処に居た事をしった。更に死神博士の横には白い毛むくじゃらで頭部や顔部分に毛が無い黒い肌の怪人が居る。
「なに、ただの助っ人よ。このヒマラヤで捕まえ改造した雪男、スノーマンがお前の助っ人だ」
「スゥノーオオオ、風鳴翼!此処で死ねぇ!!」
死神博士にスノーマンと言われた怪人がジャンプして翼たちの前に降りる。翼もクリスもスノーマンを不気味さに声を失う。
助っ人とは言ったがスノーマンにはクリスが不審な真似をした場合殺せとも言われている。
「雪男だぁ?」
「ショッカーにはこんな物まで居るのか!」
スノーマンが大岩を持ち上げ翼へと投げつける。
「特異災害の装者だけじゃなく、仲の良かった調と切歌まで!どうしてっ!?」
フロンティアのブリッジに調と切歌、翼とクリスの戦いの映像が流れる。その様子に愕然とするマリア。
「…見たところ、切歌くんは操られ雪音クリスに至っては強制されてるようですね。どちらが倒れてもショッカーの懐は痛まないということですか」
ウェル博士も忌々しそうに調と切歌の戦いの様子を見る。どちらも怪人がサポートしているがあわよくば二人共消そうとしてるのだろうと察した。
「私の所為だ…こんな物を見る為に戦って来たんじゃないのに!」
マリアの目から涙が零れる。切歌は洗脳され仲の良かった調と殺し合いをさせられ、クリスは強制的に戦わされる。マリアはこんな物を見たかった訳ではなかった。
ウェル博士は、それを視界の端で見つつフロンティアの操作盤や水晶を触り続ける。マリアを慰める暇があれば少しでもフロンティアのシステムを探ろうとしていた。
『マリア、ドクター』
その時、通信機からナスターシャ教授の声がし、マリアが顔を上げウェル博士も操作盤を触るのを停止する。
「マム!?」
「ナスターシャ教授、何か進展でも?」
『今、其処に居るのは二人だけですか?それなら聞きなさい。フロンティアの情報を解析して月の落下を止められる手立てを見つけました』
「え?」
「やはり、死神博士は全てのシステムを掌握してなかったのですね。それでナスターシャ教授、その方法とは?」
ナスターシャ教授の報告にマリアが驚き、ウェル博士も自然と笑みを浮かべる。
『最後に残された希望…それはアナタの歌です。マリア』
「私の…」
「歌…ですか」
響は直走る。途中、戦闘員の妨害が何度起きようとノイズが邪魔をしようと響はバイクを走らせる。
「退けぇ!!」
「イーッ!?」
響の邪魔をしようとした戦闘員が響の蹴りに沈む。妨害されようとスピードを緩めない響は目標のフロンティアの中心部である塔に近づきつつあった。その途中に戦闘員の投げナイフが響の被っていた翼の予備のヘルメットの一部が砕かれて響は頭部は半分近くヘルメットから出ていた。
「胸の歌がある限りィィィィィ!!」
それでも、響は次々と戦闘員やノイズを蹴散らし進む。全ては死神博士との決着と調との約束、マリアを助ける為に。
アタシの弾丸を弾くアイツ。アイツとは何度も模擬戦をしているから想定通りの動きだ。このまま
「スゥノーオオオ!!」
「クッ」
「チッ」
そう思った矢先に雄叫びを上げるスノーマンの姿にアイツは怯み、アタシは舌打ちをする。急いでその場を離れると思った通り大岩が降って来た
「何故、ショッカーに組した。雪音」
「……」
「その沈黙が答えか!」
アイツの言葉に黙ってる事しか出来ないアタシだ。いきなり言われても正直ちょっと困る。取り合えずコッチは首元に赤い光を点滅させるチョーカーのような物を見せつつ動く。アイツもそれに気づいてある程度察しがついたようだ。それでもクソ爺に気取られないようアイツは芝居交じりで話す。アタシの視界の外に居るスノーマンの所為で会話は肝が冷えるが
その後もアタシがジャンプしつつアイツを銃撃しアイツも負けずに接近戦を仕掛け剣と銃が火花を上げる。そこに再び大岩を投げ込むスノーマンにアタシ等二人は同時に避ける
「スノーマンめ」
「悪いが、アタシの十字架を誰かにおわす訳にはいかないんだよ!?」
正直これは本音だ。アタシは罪を償わなきゃいけない。その為にも死神博士からソロモンの杖を取り戻す。
でも、その前にアタシとアイツは戦いつつスノーマンを間に入れて戦う。これで不慮の事故という事でスノーマン自身を攻撃する為だ。あわよくばこれでスノーマンを倒せれば御の字だ
「なにっ!?」
その攻撃にスノーマンは驚きつつ攻撃が命中する。アタシの銃弾やアイツの斬撃が直撃するけどスノーマンの体には傷一つ付かない!?攻撃が全て命中したのに…硬い?違う、柔らかい!?
「その程度の攻撃が効くと思うなぁぁ!!」
「!?」
攻撃されたスノーマンが一切怯まずにアイツを剣の刃越しに殴り飛ばした。予想はしていたが強い怪人だ
私の丸鋸と切ちゃんのイガリマの大鎌が衝突する。激しい火花越しに切ちゃんの顔が見えた。
「正気に戻って切ちゃん!あんな怪人に負けないで!!」
「しら…べ…」
私の声に切ちゃんも僅かに声を出す。息も絶え絶えで良く見ると汗が凄い、それ程までプラノドンの電波は強力なんだ
「説得など無駄だ、死ねぇ!!」
またプラノドンが私に向け口からロケット弾を撃ってくる。切ちゃんの大鎌を弾いて何とか避けるけど正直辛い。あの娘には切ちゃんの動きが散漫て言ったけど、プラノドンがその部分をカバーして隙が少ない
「どうすれば…!」
私がどうすれば切ちゃんを相手にしつつプラノドンを倒せるか考えて居た時、プラノドンの放ったロケット弾が切ちゃんの方に向いて進んでいた!プラノドンがとくに気にしてない事からワザと切ちゃんの方に撃ったと理解した時、私は居ても立っても居られず切ちゃんの方に飛び出していた
「切ちゃん!?」
「え?」
私が咄嗟に切ちゃんに飛び掛かって地面に押し倒す。このままロケット弾をやり過ごせるかと思ったが、私達の近くで爆発し足に激痛が走った
「ああああああああああ!!!」
「し…調…!」
私の悲鳴に切ちゃんが声をかけてくれる。それが嬉しかったが物理的な痛みで正直それどころではない。足の方を見ると左足のシンフォギアが砕かれて生身の足にロケット弾の破片が刺さっている。これじゃあ移動もままならない
「クォーッ、クォーッ!やはり庇ったな、お前達の様なタイプはこの手に限るぜ!」
痛みに悶える私にプラノドンが嬉しそうに言い放つ。やっぱり、私を狙って切ちゃんを攻撃したんだ。…許せない!
「調…私を殺して…デス…」
「切ちゃん?」
私が痛み意識が朦朧とする中、切ちゃんが突然何か言いだした。…殺して?
「…私を…殺して…このままショッカーに…操られるなんて…嫌デス…」
「そんな事言わないで!私、切ちゃんが居なくなるなんて…嫌だよ!」
「…どっちにしろ…時間の問題…デス。私が私である内に…お願い…デス」
「切ちゃんが切ちゃんである内に?どういう事?」
「…私の中に…フィーネの魂が…覚醒しようとしてる…ようなんデス。施設に…集められた…レセプターチルドレン…でしたから…こうなる可能性は…あったデス」
切ちゃんが苦しそうに言っている姿を見て、私は全てに合点がいった。あの時、切ちゃんが不安そうに居ていた事や何かを伝えようとして途中でやめた事を
「だとしたら、私は尚の事、切ちゃんを救ってみせる」
「…調…」
「塗りつぶされないよう、ショッカーの魔の手から大好きな切ちゃんを守る為に!」
「…私だって…調の事が…大好…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
私と話してる途中で切ちゃんが両手で頭を押さえて苦しみ出す!私は咄嗟にプラノドンの方を見ると予想通り二本の角から赤い光が点滅している。
「プラノドン!!」
「くだらん話は止めろと言った筈だ!だが、良い情報を聞いた。フィーネの魂はその小娘に入っているのだな、貴様を始末した後はその小娘の頭を切り開いて脳髄を取り出してやる!!」
プラノドンの口から恐ろしい言葉が出る!切ちゃんの脳髄を取り出す!?そんな事させない、切ちゃんは私が助けるんだ!
「そんな事、やらせるもんか!!」
「片足がそんな様で何が出来る?空も飛べん人間風情が!!」
確かに、私の片足は負傷して動きが鈍くなってはいる。でも、私のシュルシャガナにはこういう使い方もある!
私は素早く頭部のパーツから大型の回転ノコギリを取り出して私の体の上下に配置させる。途端に私の足は地面から離れて宙を飛ぶ
「なにっ!?」
「これなら足の負傷も関係ない。お前を倒せる!」
「ええい!小娘が生意気な、地獄に送ってやる!!」
私が宙を飛んだことに驚くプラノドンは口からのロケット弾を牽制として私に撃ってくる。絶対に負ける訳にはいかない!
調や翼が激戦を行なってる頃、フロンティアのブリッジではマリアとウェル博士がナスターシャ教授の作戦を聞き終える。
「私の歌で何をすると言うの?マム」
『目的は月の遺跡を起動させる為です』
「月?」
『月は、地球人類から相互理解を剥奪する為、カストディアンが設置した監視装置』
「嘗て、フィーネが言っていたバラルの呪詛ですか」
ウェル博士の言葉にナスターシャ教授は頷くと更に話し続ける。
『ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動出来れば…』
「月を公転軌道に戻す事が出来る。ということですか?」
『そうです…!』
突如、ナスターシャ教授の声から咳き込む声と何かを吐き出す音が響く。マリアだけでなくウェル博士も焦る。
「マム!」
「待っていてください、ナスターシャ教授。直ぐにそちらに『なりません!』!」
十中八九、病でナスターシャ教授が吐血したと気付いたウェル博士が治療する為に制御室へと行こうとするがナスターシャ教授が待ったをかける。
『私の事はいいです、それよりもドクターはマリアの補佐を』
「マム!そんな事言わないで!」
『自分の体です、自分が一番知っています。アナタの歌で…世界を救いなさい、マリア!』
「ナスターシャ教授…」
「マム…分かったわ」
「準備は完了です。もう直ぐ全世界にこの映像は流れますよ、そっちの準備はいいですか?」
「ええ、何時でもいいわ。これでも世界の歌姫って言われたから」
「映像が流れるまで後5秒です。何で僕はADみたいな事してるんでしょ?」
ナスターシャ教授の言葉通り、マリアはこれから世界に歌を広める為に皆の前に出る。ウェル博士は、ADみたいな扱いに若干不満だがマリアのサポートにはいる。
そして、ウェル博士の指が三本から二本になり一本となって全ての指を曲げた。
「私はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。月の落下の被害を最小限にする為にフィーネを騙った者だ」
マリアの映像が全世界へと流れる。全ては月の落下を止め人類を…世界を救うために。
原作とは違い無理矢理戦わされる切歌。
百合の間に挟まるプラノドン…許せねえ。
因みに、切歌のセリフの殆どは演出です。仮面ライダーの劇中では、エミと滝が受信機を耳に入れられて命令させられてましたが、エミはそのまま、滝は一度逆らいましたが切歌のようにはなりませんでした。