改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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シン・仮面ライダーのPVを見ました。

原作リスペクトが多く面白そうだった。ただ怪人は初代の方が好きかな。蜘蛛男(仮)以外の怪人の造形がどうなるかちょっと楽しみ。


62話 撃槍

 

 

 

絶対に譲れない 夢が吠え叫ぶよ

正義の為に悪を貫け

 

マリアは、必死に歌う。死神博士が月の落下を加速させた為、人々の歌を束ねて月遺跡を動かす為に。

 

「ナスターシャ教授、まだ出力は上がらないんですか?月遺跡の様子は?」

『月遺跡は未だに沈黙。フォニックゲインの出力が予定地にならない…』

 

歌い続けるマリアの疲労にウェル博士は焦りナスターシャ教授に月遺跡がまだ動かないのか聞く。ナスターシャ教授の方も予想より手間取っている。予定していたフォニックゲインが集まらないのだ。

 

伝説に記そう 一瞬から永久―とわ―まで

覚悟は笑顔と共に 心のままに

誇りと契れ

 

そして、とうとうマリアの歌が終わった。疲労を隠せないマリアは息を荒げ床に膝を付ける。

チラッとウェル博士の方を見るが、ウェル博士は首を横に振ったのを見て奥歯を噛みしめ目から涙が溢れる。

 

「私の歌は誰の命も救えないの!?…セレナ!」

 

 

 

 

 

そのマリアの様子は全世界へと流れる。突然、月が落ちて来ると言ったりアメリカ政府が出て来たり都市伝説となっているショッカーの名が出たりと、見る人が見ればマリアの新曲のPVだと思われるだろうがマリアの涙声に誰しもが本気ではないかと思い始める。

 

「あの人、ビッキー達と同じだね」

「うん。誰かを助けるために歌っているね」

「あの人が言うように、このままだと世界はショッカーの物に…」

 

創世や弓美もマリアの様子を見続ける。彼女たちにはそれしか出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

「マリア…」

 

マリアが無く姿を見続けるウェル博士はどうしていいか分からなかった。マリアと違い自分は歌手ではなく科学者だ。何より年頃の女性を慰められる程、ウェル博士に人生経験がある訳ではない。

 

『マリア。もう一度月遺跡の再起動を!』

「無理よ、私の歌で世界を救うなんて!…最初から無理だったのよ!」

 

月遺跡の再起動に失敗したナスターシャ教授だが、もう一度マリアに歌うよう指示を出す。しかし、自分の歌が通じない事に心の折れたマリアはそれを拒否する。一度歌ったのに月遺跡はうんともすんとも言わなかった、もう一度歌っても無駄だとマリアは思っている。

 

『マリア、月の落下を食い止める為にはアナタの歌が…』

「待って下さい、ナスターシャ教授。マリアも消耗が激しい、少し休ませた方が…」

 

歌わせようとするナスターシャ教授の言葉にウェル博士が割って入ろうとする。今のマリアは歌を唄ってかなり消耗している。少し休憩を取るべきだと言おうとしたが背後のエレベーターが起動し誰かが上がって来る。

 

「「!?」」

 

死神博士が戻って来たのかと思う身構えるが昇って来たのは別人だった。

 

「さっきから騒がしいと思って来てみたが何だ?」

「此処でカラオケでもしていたのか?」

「それとも、男と女のお楽しみって奴か?どうなんだ?おい」

 

エレベーターから降りてきたのは三人の軍人だった。それぞれ三人の制服は違うが胸には幾つもの勲章が付けられていた。階級が高いのは明白である。

 

 

 

 

 

「何だよ…何が怪人だ。思いっきり人間じゃねえか!」

「あれは、アメリカの将校服と中国の将校服に…ロシアの軍服だな」

 

その様子を見ていた民衆の中に現れたのは人間だと言い、ミリタリー好きな民衆が制服で所属している国家を言い当てる。この事に民衆の目はマリアを疑い出す。

 

改造人間や怪人と言っていたが出てきたのは軍人、それも将校だ。どう見ても人外には見えない。その事にマリアを見守っていた民衆にも動揺が走る。

 

「やっぱり、これって新曲のPVじゃねえのか?」

「なら、さっきの話は全部出鱈目?」

「でも、さっきの歌良いよな。リリースされたら欲しいよ」

「これは一体どういう事だよ!ギルガラスって怪人も全部出鱈目なのか!?」

「あれもショッカーなの?人間じゃん」

 

民衆たちの騒めきが辺りを支配する。モニターの声も十分大きいが民衆の混乱の声もまた大きい。次第にマリアへの視線が厳しくなる。

 

「…不味いね」

「空気がまた変わった」

「マリアさんの涙で信じかけてたのに」

 

マリアの必死の訴えとギルガラスの映像で見守っていた民衆だが、人間の…それも軍のお偉いさんが出てきた事でマリアの発言が一気に嘘臭く見えてしまい、再びマリアに会場での虐殺したのではと疑い出す。

 

全ては、新曲を売り出す為に目立つことをして話題を独占する為にやったかも知れない。普通ならば虐殺してのPRなどありえない。しかし、日本以外の国ならどうか?

日本は経済的に成功してる上にノイズの被害も皆無とは言えないが少ない。それにノイズへの対抗する武器もある。日本を取り巻く諸外国が面白く思わないのは明白と言えた。

現に、マリアの人気は外国では変わらない程高いままだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界的な歌手なんだろ?何か歌えよ」

「スタイルもいいな、ストリップとかやれよ」

「生憎、おひねりは無いがな」

 

ブリッジまで昇った三人は口々にそう言ってマリア達に近づく。下卑た笑いをして近づかれてマリアは一瞬怯むが直に目線を真っ直ぐにして口を開く。

 

「あなた達、それでも軍人なの!?守るべき国も民も見捨ててショッカーに降るなんて…恥を知りなさい!」

 

マリアの言葉がブリッジに響く。歌で心が折れている以上虚勢を張ってる事はウェル博士にも分かる。

国を守るべき軍人が、その仕事を放棄してショッカーに組してる事がマリアには許せなかった。しかし、そんなマリアの言葉を聞いて三人の軍人たちは笑い出す。

 

「ククク…面白い事を言う小娘だ。俺達が人間だと思って居やがる」

「歌手なんか止めて芸人にでもなればいい」

「最もショッカーの支配する世界には芸人なんか不要だがな!」

 

「あなた達は…一体…」

 

三人の雰囲気にマリアが後ずさりしようとするが背後にはフロンティアの操作盤があって不可能だった。

 

「そうだな、もはやこんな格好をする意味もあるまい」

「見せてやろう、我等の正体を!」

 

そう言って軍人たちは被っていた帽子を取り顔の前を隠す。直後に明るかったブリッジに一瞬だけ薄暗い緑色と赤色の光が照らされる。直後に三人の軍人たちの姿が変わった。

 

アーブルッ!アーブルッ!

ブルッブルルルルルッ!

イギィー!
      

 

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアア!!」

「人間が化け物になった!?」

「あれが怪人!?マリアが言っていたショッカーは実在するのか!?」

 

モニターでマリア達を見ていた民衆たちに悲鳴が出る。先程まで人間だった軍人たちが一瞬にして人外へと変貌したのだ。何の前触れもなく怪人となった事でマリアが真実を言っているのではと感じる民衆たち。

 

「私達の知らない怪人だ…」

 

静かに見守っていた創世が呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人は岩石のような体に後頭部から伸びたホースが口へと到達している怪人。もう一人は緑と黒が目立つ目が昆虫の複眼となっている体の所々から毛が生えた怪人。そしてもう一人はマリアも見た覚えのある目が赤い両生類のような怪人…

 

「ザンジオー!?お前は融合症例第一号に敗れたんじゃ…」

 

「改造人間は死なん!壊れた個所を修理すれば何度でも蘇る!」

 

それは、紛れもなく、あの夜カ・ディンギル跡地で戦い暴走した響に倒された怪人、ザンジオーだった。

その姿にマリアは愚か、ウェル博士も額に汗を掻く。改造人間に死は無いという事に驚愕する。そして、ザンジオーの他に二体の怪人に目を向けるウェル博士。

 

「…あなた方は…」

 

「ゴースター!」

「ハエ男!」

 

ウェル博士の質問に答える怪人が自身の名を言う。岩のような怪人がゴースターで虫の複眼がハエ男と名乗る。その時、ウェル博士の目に脱ぎ捨てられた軍服に目がいく。

 

「一つ質問をしたいんですが…見た所、その服に付いていう勲章は本物ですね。それを授与された人は何処に?」

「!」

 

ウェル博士の質問にマリアもハッとする。マリアは知らないが確かに勲章が本物なら授与した本人が居る筈だ。わざわざ、怪人が勲章を授与する程、潜入していたとも思えない。

 

「とっくの昔に魚のエサだ」

「我等としては、階級の高い人間は都合が良かったぞ」

「兵士を洗脳するのにも役に立ったわ」

 

聞かれた事を簡単に喋る怪人達。

こうも怪人が人間に紛れて行動できる事にショックを受けるマリアとウェル博士。同時に各国の軍でも大きな衝撃がはしる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギイィィィィィィッ!!」

「ウオッォォォォォォォォォッ!!」

 

「この野郎!」

「慌てるな、雪音!冷静に対処すれば問題ない!」

 

フロンティアにある洞窟のような場所で翼と雪音は怪人とノイズを相手に大立ち回りする。蜘蛛男や蝙蝠男が一斉に襲い掛かるがクリスの銃撃と翼の剣の前に次々と倒れていく。ノイズも同様に倒すさまは二人の成長が伺える。

 

「ふむ…やはりショッカーノイズから生み出された怪人の力は想定以下だな。見た所、初期に作られた怪人に毛が生えた程度か。それに知能も獣以下か。これでは再生怪人の方がまだ使える」

 

死神博士の目は駆け引きの連携も無く真っ直ぐ翼やクリスに突っ込んで行ったり仲間諸共火炎で焼き殺そうとする姿だ。

 

「これでは魂の無い人形もいいとこだ。数だけ揃える目的なら、それも良かろうが…」

 

怪人達が次々と敗れていくさまを見る死神博士がそうぼやく。まんおじして翼とクリスに見せたショッカーノイズだが、そこから生み出される怪人の力が想定より低く低脳な事に落胆している。本来ならばギリザメス級の怪人がわんさか生み出される予定であった。

 

「まぁいい…今は、質より量という事で目を瞑るが…だが改良の余地はある。っという事か…ん?」

 

その時、懐に入れていた通信機から呼び出し音が響く。

 

「何か用か?」

『死神博士か?ワシだ、地獄大使だ。急ぎフロンティアのブリッジに戻れ!』

「緊急事態か?」

『侵入者だ!特異災害の司令官と忍者が乗り込んできた!戦闘員や洗脳した兵士に相手をさせてるが、神出鬼没に攻めて来る。ブリッジで誘導を頼みたい』

 

 

 

 

 

フロンティアのとある通路

 

「撃てぇ!撃てぇ!」

 

戦闘員やアメリカ、中国、ロシアとわずさまざまな軍服を着ていた軍人たちがマシンガンを乱射する。彼らの目標は通路の奥に居る弦十郎と緒川だった。

 

「俺が出る、緒川!」

「はい!」

 

一瞬、射撃が止まったのを見計らい弦十郎が通路に出て来る。直ぐに兵士や戦闘員が発砲しようとするが、

 

「ハアッ!」

 

弦十郎が床を一気に踏み抜く。直後に弦十郎を中心とした衝撃波が放たれ兵士や戦闘員に襲い掛かる。大多数の戦闘員や兵士はこれで倒れるがこれに耐えるタフな者も居る。そういう時は、

 

「はい、お疲れ様!」

 

背後に回った緒川に当て身をされ意識を奪われる。この方法で弦十郎と緒川はフロンティアの奥へとドンドン来ていた。更には、

 

「う…此処は?俺は訓練途中で…」

「指令、どうやらこの兵士も洗脳されてたようです」

「…またか」

 

洗脳が解けた兵士を介抱しつつ状況説明などして特異災害の潜水艦へと誘導していた。取り合えず、制服を着ている軍人たちは生きて捕らえ洗脳されてない者は洗脳されていた兵士に簀巻きにされた運ばれる。

弦十郎の暴れっぷりに地獄大使と怪人達は通路を潰され行動を著しく制限されていた。

 

 

 

 

「特異災害どもめ、もうそこまで来ていたか。分かった」

 

そう言って、死神博士は地獄大使からの通信を切る。死神博士が翼とクリスを始末しようと更にソロモンの杖からノイズを大量に出して新しいショッカーの杖からショッカーノイズを出そうとした時だった。

 

「先輩伏せてろ、アーマーパージだ!!」

「!」

 

いい加減、戦闘員や怪人の多さに辟易したクリスがアーマーパージと言う。言葉の意味に直ぐに気付いた翼が急ぎ地面に伏せる。直後に、クリスの纏っていたシンフォギアは一気に砕けて破片が四方八方に飛ぶ。

 

「ギエエエエェェェェェェェ!?」

「グワアアアアアアアアアアア!?」

「イーッ!?」

 

クリスのパージした破片は次々と怪人も戦闘員も貫ぬいて倒す。周りを取り囲んでいた怪人達の半分は倒して爆発を起こす。死神博士にも破片が飛ぶが、持っていたソロモンの杖で叩き落し事なきを得るが、クリスのパージと怪人の爆煙の所為で視界が悪くなる。

 

「…この煙に乗じて逃げたか?」

 

戦闘員と怪人も多数倒されたが未だに多くの怪人が居るのがこの洞窟だ。形勢不利とみて逃げてもおかしくないと考える死神博士だが、突然目の前の煙から裸のクリスが飛び込んでくる。

 

「なっ!?」

 

「ソロモンの杖を返せぇ!!」

 

クリスの予想外の行動に驚く死神博士。その隙にクリスがソロモンの杖を握って奪おうとするが死神博士も黙ったまま渡す気はなくソロモンの杖を引っ張り合う。

 

「ええい!破廉恥な小娘が!最近の若者は恥じらいというものが無いのか!?」

 

「そんな事より、ソロモンの杖を渡せ!」

 

裸のクリスの思い切った行動に驚く死神博士。胸も全て丸出しな娘の行動に破廉恥とまで言う。

 

その光景に戦闘員は愚か獣並みの思考しか持たない怪人達も茫然とする。傍目から見れば裸の少女と老人が杖の取り合いをしてるのだ。どう動けばいいのか分からず混乱している。そしてそれを見逃す翼ではない。

 

「ソロモンの杖はお前達が持っていちゃいけないんだ!だから、返せぇ!」

 

「…そんなに欲しければくれてやる!」

 

クリスの必死さに死神博士は手を離し腹に蹴りを入れる。正直ソロモンの杖はまだ利用価値があるが、このままでは特異災害に何処まで攻め来られるか分かったものではなく、今は急いでブリッジに戻る事を選んだ。

 

「うわっ!ゴホゴホッ…」

 

蹴られたクリスも地面に倒れ咳込みつつソロモンの杖は離さず握っていた。そんなクリスに何体かのノイズが迫る。

 

「させるかぁ!」

 

しかし、一体のノイズもクリスに触れる事が出来ず、翼の剣に切り裂かれた。更には怪人達も動き出すが悉く翼に切り捨てられる。その間に死神博士は洞窟から姿を消した。

 

ノイズと怪人が殆ど倒されたのを確認したクリスはペンダントを握る手を上に翳す。その途端、素っ裸だったクリスの周囲に光が集まり服を形成してクリスはリディアン音楽院の制服姿へとなる。

 

「やったな、雪音。ソロモンの杖を確保したな」

「…ありがとう、先輩」

 

まるで自分の事のように喜ぶ翼にクリスは顔を赤くして礼を言う。周囲を見た所、残っていた戦闘員も怪人も全て翼が倒したようだ。

 

「一人で勝手な事をして…ごめんなさい」

「気に病むな、私も一人では何も出来ない事を思い出した。何より、こんな殊勝な雪音を見れただけ良好だ」

 

クリスの謝罪に翼がそう返す。恥ずかしがり顔を更に赤くするクリスは話題を誤魔化す為に口を開く。

 

「それよりも、死神博士が逃げちまったけど追わないのか?」

「…いや、今は立花との合流を急ごう。本部にもショッカーの杖とショッカーノイズの事を伝えなければ」

 

翼の発言にクリスが頷く。ショッカーの新たなる力はそれだけ厄介とも言えたのだ。二人は急ぎ洞窟の出口へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

 

切歌が絶唱を歌う。必死に拒んできたがプラノドンの何度目かの電波や暴力により憔悴した切歌に最早、プラノドンに逆らう気概はもう無かった。その証拠に切歌は体だけでなく顔にも打撲の痕が痛々しく残っている。せめてもの抵抗か切歌の目から涙が溢れている。

 

「馬鹿め、素直に絶唱を歌って居ればこんな目にあわなかったものを!手間を掛けさせやがって!」

 

切歌に無理矢理、言う事を聞かせたプラノドン。尤も、切歌に暴力を振るってストレスの発散もしていたので±ゼロと言ったとこだ。

 

「切…ちゃん…」

「!?」

 

倒れていた調が意識を取り戻し立ち上がる。ふらつきつつも真っ直ぐ切歌の方を見る。その姿に一瞬だけ切歌が絶唱を言い淀む。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「ちっ、意識を取り戻したか。あのまま眠ていれば楽になったものを」

 

意識を取り戻した調にプラノドンが毒ずく。その言葉に怒りを覚えるが切歌の意識は調べに集中している。

 

Emustolronzen fine el zizzl

 

そうしてる内に、切歌は絶唱を歌い切る。直後に切歌の体に緑色のオーラが纏う。

 

「…絶唱によって…繰り出される…イガリマの刃…は相手の魂を刈り…取る!そこに…防御手段なんて…存在しない。…だから…逃げて…調…」

「嫌だ、私は逃げない!絶対に切ちゃんを助けてみせる」

 

「やれるものならやって見ろ!!」

 

イガリマを巨大化させ、その柄の部分に乗った切歌がまるで魔女の箒のように動かし調に迫る。すれ違いざまにイガリマの鎌の部分が調を切り裂こうとするが、間一髪で調は避ける事に成功する。

それからは、切歌の攻撃を避け続ける。避ける事に集中してるのか、調はろくに反撃をしない。

 

「所詮は口だけか!体力が尽きた時が貴様の最後だ!」

 

切歌から少し離れた場所で空を飛ぶプラノドンがそう宣言する。悔しそうな表情をする調だが、脳裏に気絶していた時の女性の会話を思い出す。

 

『兎に角、あの緑の娘の攻撃を躱し続けなさい』

『切ちゃんの攻撃を?』

『そうだ。プラノドンは好戦的ではあるが慎重に動いている。常に安全圏から緑の娘を命令してな、無様に逃げ回って奴の油断を誘え…恐らくチャンスは一度だ』

 

女性の言葉通り反撃を一切せず調は逃げ回る。しかし、調は体力がある方とは言えず徐々に切歌の攻撃を捌き切れずにいる。

そして、遂に…

 

「調!?」

 

切歌の悲鳴と背中からの衝撃により調は悟った。切歌のイガリマが自身の背中を貫いた事を。

 

「やったぁ!死んだ、死んだぞぉ!!」

 

その光景はプラノドンの目にも入る。切歌がイガリマを手放して調を抱きしめ咽び泣くがプラノドンにはどうだっていい。邪魔な小娘が死んだ以上、切歌も抵抗できないようう痛めつけて死神博士に持って行くだけだ。フィーネがいるという脳髄さえ無事ならショッカーの野望も十分叶う。

 

そして、地面に直地したプラノドンはゆっくり調を抱きしめた切歌へと近づく。

 

「調…調…」

 

「泣きわめくな、何れはお前も同じ場所に逝くんだ。悲しむ必要は…「逝くのはお前だ!」!?」

 

今まさに、切歌を押さえようとプラノドンの耳に調の声が響くと同時に巨大な丸鋸が自分へと迫るのが見えた。反射的に何とか避けて後方にジャンプする。頭上に大型の丸鋸が通り過ぎて肝が冷えたのもそうだが、直後にプラノドンは信じられない物を見た。

 

「調…」

 

「馬鹿な、何故貴様が生きている!?小娘の大鎌の刃は確かに貴様の背中に突き刺さったのだぞ…なのに何故生きている!?」

 

其処には、切歌のイガリマで死んだと思われた調が立ち上がってプラノドンを睨んでいた。これもまた。女性の策である。

 

 

 

『そして体力が尽きかけた時に敢えて刺されろ。そうすればプラノドンもお前を殺したと思い、ノコノコと近づいてくる。そこで攻撃するんだ』

『でも、切ちゃんのイガリマを直接喰らえば、私は…』

『…私に考えがある。…兎に角、本気であの娘を救いたいのなら私の言う通りにしろ』

 

 

 

「…フィーネのお蔭だよ」

 

「フィーネだと!?フィーネの新しい器はそっちの小娘ではなかったのか!?」

 

調の呟きにプラノドンが反応する。今まで切歌がフィーネの受け皿だと思っていたが、どういう訳か調がフィーネと言いプラノドンは混乱するが、

 

「まあいい、こうなれば二匹とも捕らえて本部に連れて行く!その小娘を捕らえろ!」

 

この際、どっちがフィーネの器か分からないプラノドンは二人共捕らえようと切歌に命令を出す。しかし、

 

「…?どうした俺の命令を聞け!」

 

プラノドンが幾ら命じても切歌は動かず、痺れを切らしたプラノドンは電波を出して強制的に従わせようとした。しかし、切歌はゆっくりと立ち上がって首を振って肩を鳴らす。どう見ても操れてるようには見えなかった。

 

「何故だ、何故操れん!…!」

 

未だに受信装置は切歌の鼓膜に設置され、操れる筈。なのに切歌は命令しに従う素振りが見えない、そして、プラノドンはある物を目撃する。それは白と灰色をした真ん中部分に赤い物が付いた二本の飾り、プラノドンは急ぎ、自身の頭部を触り、ある筈の二本の角が無い事に気付く。

 

「俺の角を!何時の間に!?…まさかさっきの攻撃は!」

 

「そう。あれはアナタの首を狙った物じゃない。切ちゃんを操る角を狙っただけ」

「…感謝するデス、調。やっと五月蝿いのが消えて体も自由になりました」

 

調の中に居たフィーネはプラノドンのカラクリを見抜いていた。プラノドンの角が発する電波が切歌を操っている。だから、プラノドンの角を切り落せば弱体化、あるいは無効に出来るのではと呼んでいた。

 

「おのれぇ!許さん、許さんぞ小娘ども!こうなれば二匹とも殺してやる!!」

 

「それは」

「こっちの台詞デス!」

 

「!?」

 

調と切歌の声にプラノドンが目を見開く。二人の気迫が今まで以上に高まっていた。

 

「調を…」

「切ちゃんを…」

「傷つけた事を…」

「操った事を…」

 

「「絶対に許さない!!」デス!!」

 

━━━これが、小娘の気迫だと言うのか!?

 

二人の気迫に負けたプラノドンは、咄嗟に空中へ逃れようと飛ぶ。空中戦なら空を飛ぶ自分に軍配があるしもしもの時は撤退も容易になると考えたからだ。

 

「簡単に飛ばせると思うデスか!」

 

切歌がイガリマを振るい射出した鎖がプラノドンに巻き付き鎖の端がアンカーとなって地面に刺さる。

 

「これでは飛べん!?」

 

今度はプラノドンが体の自由を奪われた。なんとか振り解こうと藻掻くが、更に日本のアンカーが自身の両脇に刺さり、プラノドンが切歌の方を見る。其処には大型化したイガリマの刃があり、切歌はその刃の背後にいる。それはまさにプラノドンの目から見てもギロチンと言えた。

 

「これで終わりデス!」

 

そう言った直後に切歌の両肩にあるシンフォギアがブースターとなり加速し、切歌の足元の刃も加速する。

 

断殺・邪刃ウォttKKK

 

「こんな…こんな筈が!!クォーッ!!」

 

次の瞬間には、切歌のイガリマの刃がプラノドンに直撃。プラノドンの胴体が真っ二つとなる。

 

「これはオマケ、持って行け!」

 

γ式・卍火車

 

切歌のイガリマに切り裂かれた勢いで宙を飛ぶプラノドンの上半身に調がヘッドギアから出した巨大な二枚の回転ノコギリを放つ。巨大な回転ノコギリはそのままプラノドンの上半身に到達すると巨大な爆発が起こり、残された下半身も爆散する。

 

「終わったよ…フィーネ」

 

調が自身の体の中に居た女性に終わったと報告する。しかし、返事はない。もう女性の魂は調の体には無かったからだ。

 

 

 

 

それは、切歌の大鎌が調の背中に突き刺さった直後だった。

 

『魂を両断する一撃ってやっぱり並みじゃないわね』

 

そう言って、女性は己の手を見る。その手は光が漏れると同時に女性の体からも漏れて徐々に体が崩れていく。調はそれを見て直感した、イガリマの一撃でもうフィーネは転生が出来ない事を。

 

『私を庇ったの?どうして』

『…私は十分生きてきた。良くも悪くも長く生きてきたわ、もう十分かと思っただけよ。そうそう、あの子に伝言…と言うより遺言を頼むわ。“今日を生きるあなた達で何とかなさい、亡霊には何も出来ない。私が言うのもアレだけど悪党どもに負けるな”って』

『あの子…立花…響…』

『いつか未来に人と人が繋がれる…そんな未来の為に…』

 

徐々に体が薄れていき、やがては女性の姿が消え調は目を覚ましたのだ。

 

 

 

「きっと…きっと伝えるよ」

 

女性とのやり取りを思い出した調は決意を固める。

 

「調!」

「切…ちゃん…」

 

その時、シンフォギアの姿から普段着に戻った切歌が調に抱き着く。その目からは涙が溢れていた。

 

「良かった…良かったデス!調…」

「切ちゃん…ただいま」

 

切歌の涙声に調がそう返事する。プラノドンに操られ戦わされて絶唱を歌わされっとやりたい放題されたがプラノドンを倒して、やっと自由になったのだ。暫く、二人で抱き合ってると調が口を開く。

 

「ショッカーの好きにさせる訳にはいかない、一緒にマリアを助けに行こう」

「…うん。今度こそ調と一緒に皆を助けるデスよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…ソロモンの杖をもう少し手元に置きたかったが…まあいいだろう。アレのデータはとりつくした」

 

フロンティアのエレベーターに乗る死神博士が一人呟く。雪音クリスにソロモンの杖を奪われたがフロンティアがある限り取り返しは幾らでもきく。フロンティアを完全に要塞化すれば世界征服も目前と言える。だからこそ、特異災害の邪魔は目障りであった。

 

そして、フロンティアのブリッジに着いて目にしたのは、シンフォギアを纏ったマリアと怪人の姿に戻ったゴースターとハエ男、ザンジオーたちだった。

 

「お前達、持ち場を離れて何をしている?」

「し、死神博士!」

 

先程まで、マリア達に威張り散らし下品な言葉ばかり言っていた怪人達が一斉に直立不動する。それを見ていたマリアもウェル博士は唖然とする。そしてモニターで見ていた民衆も死神博士の不気味さに身の毛がよだつ。

 

「ち…違うんです、死神博士。この娘がブリッジで歌っていたので様子を見に来ただけです!」

 

ハエ男が死神博士にそう言った。それに頷くゴースターとザンジオー。怪人達としても死神博士の機嫌を損ねたくはない。老体ではあるが怪人作りの名人の名は伊達ではない。万が一の時は再生手術で蘇りパワーアップの出来る以上、ショッカー大幹部の死神博士の機嫌は大事であった。

 

「歌だと?」

 

その報告を聞いた死神博士はマリアとウェル博士の顔を交互に見る。

 

━━━何が目的で歌った?我等、ショッカーの策に騙され絶望したからか?いや、小娘の目は完全には死んでいない。何かあるのは確かだが…まあいい、今は特異災害の動きを掴むのが先だ

 

マリアたちの目的が分からず一旦棚上げした死神博士は、そのまま操作盤の方に近づく。進路上の怪人は当然避け、マリアも死神博士の不気味さに道を譲る。そうして死神博士は楽々と操作盤の前に移動できた。

 

『待ちなさい、死神博士!』

 

「…ん?」

 

このまま死神博士がフロンティアの操作盤を弄るかと思われた時、フロンティアの通信機から待ったの声がする。ナスターシャ教授だ。

 

『お聞きなさい、死神博士。フロンティアの機能を使って集束したフォニックゲインを月へと照射しバラルの呪詛を司る遺跡を再起動出来れば月を元の機動を戻せるのです!』

 

「フォニックゲイン…成程、だからマリアが歌っていたのか。そのような機能は動かさせはせん、第一誰が月を落とすのを加速させたと思っている」

 

ナスターシャ教授の説明にマリアが歌っていた理由が分かった。当然、月を落とすのが目的の死神博士がそのような事を許す訳が無い。

 

「それよりも、その言い分。ショッカーに忠誠を誓う気はないのだな?」

 

『当たり前です。我々が動いてたのは世界を救う為、断じてショッカーの為などではない!』

 

「そうか…ならばもういい。死ねぇ」

 

ナスターシャ教授の返事を聞いた死神博士は操作盤の一部を押す。直後にナスターシャ教授のいるエリアが揺れ出し火を噴いて空へと昇る。それはまるでロケットのように。

 

「マム!」

「ナスターシャ教授!」

 

その光景を見ていたマリアとウェル博士がナスターシャ教授の名を叫ぶ。

 

「ショッカーに逆らう者は必要ではない、本来なら怪人を向かわせ殺してやるが…貴様の今までの功績を称えその遺跡を棺としてやろう。宇宙で孤独に死ぬがいい!」

 

そう言い終えると死神博士は笑い出す。

元々、ショッカーにとって、ナスターシャ教授はフロンティアに来た時点で用済みであった。しかし、ナスターシャ教授の頭脳には様々な聖遺物のデータがある以上簡単に始末するのは勿体無いと言えた。だからこそショッカーに忠誠を誓うのなら生かしておいても良いかと思っていたが本人が拒絶した以上、切り捨てただけだ。

 

「…有史以来、数多の英雄が人類支配を成しえなかったのは人の数が多すぎたから。支配する為には管理できるまで人を減らす気ですか?」

 

ナスターシャ教授の居る遺跡が宇宙に飛ぶのを横目にウェル博士は、死神博士に質問をする。ショッカーの目的の世界征服に人間がどこまで生き残れるか知りたかったからだ。

 

「自惚れるな、ウェル。我等の支配する世界に人間など不要だ、だからこそ月を落とし生き残った者も殲滅する。そうやって地球はショッカーの物となるのだ、英雄すら必要ではない」

 

ウェル博士の質問に死神博士の答えは冷酷であった。

最早、ショッカーは人間を必要とはしていない。今までの活動で様々な人種の細胞のサンプルを取っており必要になればクローンで増やす方向にいっていた。ショッカーは完全に人類を見切っていた。

 

「そんな事はどうでもいい!!よくもマムを!!」

 

そんな中、マリアは死神博士を睨みつけアームドギアの槍を取り出し突きつける。その目は完全に怒りに支配されていた。

 

「その反応、貴様もショッカーに逆らうか?マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

 

「そうだ!」

「待つんです、マリア!」

 

激情にかられたマリアが槍で死神博士に突撃する。ゴースターを始めとした怪人も臨戦態勢を取り不利と悟ったウェル博士が止まる様言うがマリアにその気はない。例え差し支えても死神博士を倒す気だった。

 

 

 

 

 

「ちょっとまった!!」

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

突然の声と共にブリッジのガラスがぶち割れ何かが中に飛び込んできた。それは間違いなくバイクだった。

 

「ブルルルル!?」

 

そのバイクが勢いよく飛び込んできたハエ男にぶち当たると共に壁へと接触事故を起こして、マリアと死神博士の間に誰かが降りる。

 

「むっ!?」

 

「お前は融合症例第一号!」

「違う、私の名前は立花響!マリアさんを助けに来たの!!」

 

それは間違いなく立花響だった。一部が砕けヘルメットの役割が果たせなくなったヘルメットを投げ捨て死神博士を睨みつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改造人間は死なん(二回目)。尚、ショッカー墓場。

怪人達、モニターに映ってる事に気付かずに人間体からの返信&死神博士の蛮行。
原作でも、ウェル博士は気付いて無さそうだったので。

ショッカーノイズから生み出された怪人はスピリッツのバダンの再生怪人のようなタイプですね。いわゆる人間の魂がない怪人です。


そして、調と切歌がプラノドンと決着。
原作でいう十二話も終わってもう直ぐ原作の「G」での最終回に近い。

ところで、アニメを見返して気付いたんですけど、もしかしてイガリマってフィーネやシェム・ハの天敵じゃない?魂を刈れるなら転生者にとってこれ程怖い物はない。
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