…ヤバい
フロンティアのブリッジにて響の登場はモニターで見ていた民衆をも驚かせる。
「ビッキーだ!」
「ショッカーなんかやっつけちゃえ!」
創世や弓美も響の登場に拳を握らせ応援する。その声は見守っていた他の民衆にも聞こえた。
「おい、あの娘って…」
「確か、三カ月くらい前まで女性とお婆さんが駅前とかでビラ配りしていた時のビラに書かれてた娘じゃないか?」
「行方不明だったっけ?」
「ああ、そう言えばやってたな。ある日から見なくなってたから忘れてたよ」
「その行方不明になっていた子が何であんな場所に居るのよ」
家族のビラ配りの際に響の姿を覚えていた者や、忘れていた者まで何故響がマリアの居る場所に居るのか分からない。結局、彼らは響達の動向を見守るしかない。
「立花響よ、此処へは何しに来た?まさか、ショッカーに戻りたくなったのか?」
「それこそまさかよ、死神博士」
突然ガラスをぶち破って現れた響に死神博士が邪悪な笑顔で言い、響も即座に否定する。死神博士も別段本気にしてはいない。しかし、心臓のガングニールを喪失してシンフォギアを纏えない響が何故此処に来たのか気になっただけだ。
「其処を退けぇ、融合症例第一号!」
「違う!私は立花響16歳!融合症例なんて名前じゃない!私はマリアさんを助ける為に此処に来たの!」
マリアの融合症例の言葉に反論して自身の名前と年齢を言う響。しかし、その事は頭に血が昇ってるマリアにはどうでも良かった。
「助けなんてどうでもいい!!マムはその男に殺されたんだ!だから私もそいつを殺す!」
マリアの悲痛な叫びに響も少し納得してしまう。ショッカーによって大事な人を奪われた。それは響も同じだったからだ。
「ナスターシャはまだ死んでいないぞ」
「「!?」」
その時、死神博士がやけに鮮明に聞こえた。その言葉はマリアを驚かすには十分であった。
「今はまだ遺跡内にも空気があり重力もナスターシャなら十分耐えられよう。…だがそれだけだ、やがては空気も無くなりフロンティアから供給されたエネルギーも切れ明かりも消えた暗闇の中徐々に酸欠となり死んでいく」
「!」
その言葉にマリアが死神博士を殺意を込めた視線で睨みつけ唇を嚙みしめる。響は気付く、これは死神博士の挑発でもある事に。
「空気が減っていく中、精神はどの位持つかな?酸欠で死ぬか発狂して死ぬか興味が湧かんか?死ぬ間際に何を考えるだろうな?きっとお前の無能さ加減に人選を誤ったと後悔して死んでいくだろう…マヌケにはお似合いだ。何しろ全ては無駄だったのだからな。フッハハハハ!!」
「…殺す!」
「マリアさん!」
「止めなさい、マリア!」
マリアは激怒した。自信が無能呼ばわりされるのはまだいい、敬愛し尊敬するナスターシャ教授の頑張りをすべて否定され踏み躙った死神博士を許す事は出来なかった。
止めようとしていた響を突き飛ばしウェル博士の制止も振り切ってガングニールの槍で死神博士に突撃するマリア。
━━━罠だろうがもう知ったこっちゃない!!刺し違えてでもこの男を殺してやる!!
最早、マリアは自身の生存を考えてはいない。最悪、自分が死んでも死神博士を倒す気で突撃する。それを見ても歪んだ笑みを止めない死神博士。
「ゴースター!」
「アーブルッ!」
死神博士が一言怪人の名を呼ぶとゴースターが死神博士の盾となりマリアの鎗を受ける。
「なにっ!?」
金属の音の後にマリアは槍を持った腕に痛みを感じる。ガングニールの鎗はゴースターの体に弾かれマリアの態勢が崩れる。ゴースターはそれを見逃さずにマリアの体に拳を食らわせる。
ゴースターの拳の威力に吹き飛ばされるマリアだが、地面に足を引きずりつつも威力を殺す。何とか背後にあった水晶の柱にぶつかる事を防いだが、マリアの口から血を吐き出す。
「ゴホッ、ゴホッ!」
「マリアさん、しっかりして下さい!」
血を吐くマリアの姿を見て駆け寄る響。
「大丈夫、血を吐いただけよ「火炎弾!」!?」
大丈夫と言ったマリアだが、ゴースターの声と殺気に咄嗟に自分に駆け寄って来た響を突き飛ばし、その場を転がるように移動する。直後、マリアの居た場所と背後のクリスタルのような柱に燃え盛る火炎のほうな物がぶち当たりその場に火が付き僅かに光る赤い液体の様な物まで流れる。
「熱ッ!なにこれ!」
「…溶岩です!」
赤く燃える液体は溶岩であり水晶のような柱に掛かると炎を上げると同時に熱で溶けだす。それを見て背筋に冷や汗を流すマリア。
「正解だ。ゴースターはマグマの改造人間。骨も髪の毛一本も残らず燃え尽きるがいい!」
「火炎弾!」
「マグマって、もう動植物でもないわよ!!」
死神博士がゴースターの正体について語る。溶岩から作られた改造人間ということでゴースターはマリアや響に向かって溶岩の混じった火炎弾を吐き出す。辛うじて避けるマリアは、もう動植物でなく無機物の改造人間に文句を言いつつ動き回る。
ゴースターの火炎弾は、ろくにマリアや響に直撃しない、どれもギリギリで躱せる攻撃ばかりだった。ゴースターはまるで獲物を嬲るかのように火炎弾を撃ち続ける。
「気を付けなさい、マリア!溶岩を直接かぶれば幾らシンフォギアでも持つかは不明です、仮に持ったとしても中身のアナタは…」
水晶の柱の陰に隠れたウェル博士がマリアに気を付けるようアドバイスを送る。しかし、溶岩に触れた際の注意は言い淀んでしまう。少し考えれば分かる事だ、生身の人間が溶岩の熱に耐えられる訳がない。もし、ゴースターの火炎弾が直撃すれば…マリアは死ぬ。
「構わない!世界を守れないのなら、私の生きる意味なんて…」
世界を救うために今まで頑張って来た。しかし、ショッカーによって全てを台無しにされ自分達を引っ張ってくれていたナスターシャ教授も、ショッカーの手によりもう直ぐ死ぬ。
せめて、ナスターシャ教授の仇をとろうとしたがゴースターの耐久力に手も足も出ず逆に追い詰められる。マリアの心に絶望という文字が浮かぶ。
「意味なんて…後から探せばいいじゃないですか」
「お前…」
そんな、マリアに響は肩を叩いてそう言った。響もマリアの気持ちは分かるつもりだ、どことなく響はマリアを自分と重ねる。
「このままショッカーの好きにはさせない。だから…生きるのを諦めないで!」
嘗て、もう一人のガングニールの装者だった少女の言葉を口にする響。その言葉は響にとっても大事な思いの一つだった。
「フフフ…面白い、この状況をどう覆す気だ?立花響。最早、貴様に価値はない。此処で廃棄してやる!」
その言葉を聞いていた死神博士は不気味な笑みを浮かべる。そして、響の斜め向かいには、それぞれ反対側にゴースターとザンジオーがにじり寄る。
再改造された響だが、その改造は心臓のガングニールありきの物で今の響には戦闘員やノイズなら兎も角、怪人の相手は不可能と言えた。
「マリアさんの…借りますね」
「…え?」
その響の言葉はマリアには理解が出来なかった。
━━━借りるって何を?
マリアがそう思った時、響は目を閉じ口を開く。
Balwisyall nescell…
「聖詠!?」
「自棄にでもなったか!聖遺物もない貴様が聖詠を歌っても意味はあるまい!もういい、殺せ!」
「アーブルッ!」
「イギィ!」
響が聖詠を歌う事に驚くマリアと嘲笑する死神博士。そして、命令により響に飛び掛かるゴースターとザンジオー。最早、心臓にガングニールの無い響がもうシンフォギアを纏えない。その筈であった。
…gungnir tron!
響が聖詠を歌い終えた時、奇跡が起こる。
マリアの掴んでいた槍が光の粒子となり消え、続いてマリアの纏うシンフォギアも粒子として拡散。そして、響を中心に光りの粒子が集まる。
「なに!?」
「グワア!?」
「なにが起こったと言う!!」
その粒子に弾き飛ばされるように怪人が吹き飛ぶ。突然の事に、死神博士も何が起こったのか分からない。そして、その光りの粒子はドンドンと広がり、ブリッジを通り過ぎ調や切歌に翼やクリスにも届く。弦十郎と緒川と緒川も、フロンティアに来ている特異災害の潜水艦内部に居るスタッフも見ている。
更には、その光りはモニターで見守る民衆にも見届けられる。
「こんな事ありえない!融合者は適合者ではない筈。これはアナタの歌?胸の歌がして見せた事?ドクター、あの子の歌ってなんなの!?」
「…一言で言うなら奇跡ですね…」
響のようすに狼狽するマリアは同じく響の様子を見ていたウェル博士に聞く。ウェル博士も説明できず奇跡と言う他なかった。
「響ちゃんのあれは一体…」
特異災害の潜水艦、指令室のオペレーターの一人である、あおいがそう呟く。他の者もモニターの映像に釘付けで誰も答えようとはしない。いや、答えられないのだ。
「何時のも響です」
そんな中、一人だけ答えた者がいた。あおいが振り向くと其処には松葉杖で歩いてくる少女。頭や体中に包帯の巻かれた小日向未来だった。
「未来ちゃん!?寝てなきゃ駄目じゃない」
「ごめんなさい、でも響達が戦ってると思うと…私も見守りたいんです!」
病室を抜け出して指令室まで来た未来にあおいが りつけるが未来の気持ちも分かる。恐らく病室に戻れと言っても無駄だと確信する程に。
「しょうがない。私の席に座りなさい、無茶しちゃ駄目だからね」
「!…はい!」
あおいの言葉に喜ぶ未来はオペレーター席に座るとあおいと一緒に響達の様子を見守る。
暫く響を取り囲んでいた光りの粒子だったが、少しづつ中心に居る響へと集まり形となる。腕、足、頭部の耳当てとなり何時の間にかインナーを着て最後にはシンフォギアの姿となる。
「撃槍・ガングニールだあああああああああああ!!!!」
響の絶叫がフロンティアのブリッジに響く。響は再びガングニールのシンフォギアを纏う。マリアを…世界を守る為、死神博士との決着を付ける為。
「ガングニールに適合した?」
「それも、マリアより適性が高いようですね」
響がガングニールのシンフォギアを纏った事に驚くマリアとウェル博士。マリアもシンフォギアの姿から普段着の姿に戻る。しかしいくら、ガングニールの欠片が心臓にあったからと言ってこんなにアッサリ、ガングニールに適合出来た事が解せない。
パチッ、パチッ、パチッ…
そんな中、乾いた拍手のような音が聞こえマリア達が振り向くと死神博士が拍手をしている。
「死神博士…」
「…素晴らしい、それ用に改造していたとはいえ、他人の展開しているシンフォギアを奪いそれを纏うとはな。心臓にあったがゆえ適性が高くなったのか?元々適正があったのかは知らんが。…立花響、前言撤回しようショッカーに戻れ!貴様にはまだ無限の可能性がある、今なら幹部の席も用意しよう」
響がマリアのガングニールを纏ったのを見て、死神博士は嘗てゾル大佐が言ったように響にショッカーに戻る様言う。心臓のガングニールを失い、もうシンフォギアを纏えないと思っていたが、響の予想外の行動と結果にショッカーに呼び戻そうとする。
しかし、響は首を横に振った。
「断る。私はもうショッカーの好きにはされない、マリアさんを助けて
ハッキリと死神博士の誘いを拒絶する響。尤も、断られることを想定していたのか死神博士の表情は変わらなかった。
「人類?ムシケラ共を助けて何になる!?何よりショッカーの支配する世界にムシケラなど不要だ!」
「ムシケラなんかじゃない!皆、今日を生きてる!ノイズの蔓延る世界でも必死に生きてる人たちなんだ!そんな人たちを貴方達が好きにしていい理由はない!」
人類をムシケラと言う死神博士に反発する響。元来、響は趣味が人助けと言うくらい善人よりな少女だった。それが、例えショッカーに拉致され改造人間にされようとその気質は変わる事はなく、だからこそ死神博士は響を再改造するさい脳改造も行いショッカーの操り人形にしようとしていたのだ。
「必死に生きてる?そうだな、日々の日常を生きてお前達を必死に迫害していたな」
「!?」
「…迫害?」
「………」
しかし、死神博士の「迫害」の言葉に目を見開く響とどういう意味か分からないマリア、そして何かに気付いたウェル博士。
「
ツヴァイウイングの悲劇。それは二年前に起きた風鳴翼と天羽奏のライブで起きた悲劇だった。突然のノイズの襲撃にパニックになった観客が大勢死ぬ事件となったが問題はノイズで死んだ人間ではなかった。パニックの起きた会場では誰もが我先にと逃げ出そうとして将棋倒しになったり倒れた人間を踏みつけて逃げ出そうとした為にノイズの被害以上に観客が死んでしまったのだ。
その所為で、この事件をマスコミが報じた事で世間では生存者のバッシングが行われ響もその被害にあってしまう。そして、この件で響は孤立し親友である未来が休んでた日にショッカーに拉致されたのだ。
ショッカーでも少し調べれば直ぐわかる内容だった。家には嫌がらせの張り紙や投石、学校でも一部の生徒以外響を邪魔者扱いし、極めつけはマスコミの張り付きである。正直、家を放火されてないだけマシに思える。
孤立している響を攫うのには絶好のタイミングでもあった。
「…ど、どうせあのバッシングもアナタたちが仕掛けたんでしょ!?」
「残念だが我々は何の関与もしていない。人間どもが勝手にお前達を叩き迫害しただけだ。まぁ、信じる信じないは貴様の勝手だがな」
響は、あのバッシングがタイミングよく起こった為、ショッカーが何か細工したのかと思ったが死神博士はそれを否定する。正直、響にはそれが嘘か本当かは分からない。
「…それでも私は信じる!何時か人と人が繋がる事を信じて!人は言葉よりも深く繋がれる、それを邪魔するあなた達を私は許さない!」
「ふん、これ以上言っても無駄か。トドギラー!」
「ブルルルルルルッ!!」
言葉で言っても無駄だと判断した死神博士は、一言怪人の名を呼ぶと上から一体の怪人が降って来る。その怪人は響も見覚えのある…ある意味忘れる事の出来ない怪人だった。
「トドギラー…」
響の脳裏に自分が捕まった時の記憶が蘇り響の体がこわばる。
「トドギラー、立花響を氷漬けにしろ!」
「俺の冷凍シュートと再び凍らせてやる!プルルルッ!」
トドギラーが口から幾つもの細かい雹を吐き出し響を氷漬けにしようとする。だが、響も一度見た以上簡単に当たる気などなくトドギラーの冷凍シュートを避ける。
上手く避けた響だが背後からの殺気に咄嗟に横に避ける。直後に夥しい火炎が響の居た場所を通り過ぎる。振り向くとザンジオーの口から炎が飛び出す。
「立花響。あの時の借り、返してやるぞ!」
あの時の借り。即ちカ・ディンギル跡地での敗北を取り返そうとし、響に襲い掛かる。二人の怪人に襲われる響、しかしトドギラーとザンジオーの攻撃は響にはかすりもしない。
━━━体が軽い!?怪人達の動きも分かる。…死神博士の再改造の所為か…
力もスピードも上がってる事に内心複雑な響だが、今は怪人との戦いに集中する。トドギラーの拳を受け流し、ザンジオーの蹴りを避けカウンターを決める。
「イケる。…!」
響が二体の怪人と十分戦えると判断するが、マリアの方を横目で見る。其処には自分の戦いを見ているマリアに背後から近づくゴースターを発見する。既にゴースターは拳を振り上げていた。
「危ないッ!」
「!?」
二体の怪人の攻撃を避けて響はマリアの方に蹴りを放つ。バキッという衝撃音にマリアが振り返ると響の蹴りとゴースターの拳が拮抗していた。
「アーブルッ!」
「クッ…マリアさんをやらせない!」
ゴースターが拳に更に力を入れたが、響はもう片方の足でゴースターの顔面を蹴る。その衝撃にゴースターが顔を押さえつつ後ずさりする。
「ほう、成程…怪人どもマリアを狙え!ソイツが立花響の弱点だ!」
「!?」
響の行動を見てマリアが響の弱点だと判断する死神博士。今のマリアにはガングニールのシンフォギアを纏ってない以上、怪人と戦う事は出来ないと踏んだ指示だ。
そしてその指示は響には実に効果的だった。人助けが趣味の響なら自身より誰かを助ける為に全力で動く。マリアを絶え間なく攻撃すればマリアを守る為に響は怪人の攻撃からマリアを庇い反撃する事も出来ず最後は…。
そして、響は死神博士の予想通りマリアを守る為に動き続ける、ザンジオー、ゴースター、トドギラーの攻撃からマリアを守る。上手く攻撃を躱しているが怪人達の攻撃を全て躱し事が出来ずに居た。その攻撃は躱せばマリアに当たるように調整され響が受け止めるしかない。
「アグッ!」
「いいぞ、嬲り殺しにして動けなくしろ!」
怪人達の攻撃で悲鳴を上げる響。その姿を見て自分の無力さに打ちひしがれるマリア。見てる事しか出来ないウェル博士。
「…僕に戦う力が無いのが悔やまれますね」
「私にもっと力があれば…セレナ」
ろくに体を鍛えてない、寧ろ運動は不得意なデスクワーク派のウェル博士と響にガングニールのシンフォギアを渡したマリアでは怪人と戦うのは無謀と言えた。一応、懐には妹の形見がありそれを握るが、
「フフフ…所詮、貴様たちなど我等ショッカーの敵ではないわ。大人しく地獄にでも「そこまでだ、死神博士!」ゆく…もう来たか!」
突然の声に皆が一斉に声の出所に目を向ける。其処には、
「…師匠!」
「響くん、よく頑張った!だが、後で説教だ!」
「響さん、そのシンフォギアは!?」
「ごめんなさい、師匠!これはマリアさんのガングニールが私の歌に答えてくれて…!」
エレベーターで此処まで来た弦十郎と緒川が急いで響達の下へ向かう。途中、弦十郎の説教と言う言葉に顔を青くするが緒川の質問に答える響。それを忌々しそうに睨む死神博士。
「五月蝿いドブネズミどもがまた来よったか。…ハエ男、何時まで遊んでいる!追加のドブネズミは、お前が相手をせい!」
「ブルーッ!」
死神博士の声に響のバイクの下敷きになっていたハエ男が飛び出し、弦十郎と緒川の前に立ち塞がる。それと同時に無数の戦闘員が弦十郎と緒川の前に立ち塞がる。エレベーターとブリッジまでのには細い橋がかかり両側には深い穴が広がる。これでは、弦十郎たちも戦闘員を無視する事は出来ない。
響きには三体の怪人。弦十郎と緒川の相手はハエ男と多数の戦闘員がする。
「死ねッ!」
ハエ男が弦十郎に口から白い泡状の液体を吐き出す。それが危険な物だと直感した弦十郎は避けると再びハエ男が白い泡状の液体を吐き出す。
「指令!これを!」
「イーッ!?」
ハエ男の攻撃に気付いた緒川が捕らえていた戦闘員を弦十郎の方に押し出す。そして、押し出された戦闘員にハエ男の泡が当たると、その戦闘員は爆発して消滅した。それと同時に緒川が囲んでいた戦闘員を倒しては穴へと落ちていく。
「緒川、気を付けろ。あの泡に触れたら死ぬぞ!」
弦十郎と緒川がハエ男と戦闘員たちとの激闘が行われてる最中、死神博士はイラついていた。
「騒がしい、これでは落ち着いて操作する事も出来ん。仕方ない」
ブリッジの操作盤のある反対方向にある短い階段を下りて床にネフィリムと一体になった左手を付けると自動的に穴が開く。その穴は死神博士が通れる十分な穴だった。
「!…待てぇ、死神博士!逃げるのか!」
その様子に気付いた弦十郎の声に他の者も死神博士に視線を飛ばす。
「愚か者が、私は貴様たち程暇ではないのだ」
視線を無視するように死神博士は、そう言って穴の中へと入る。直後に死神博士の開けた穴も塞がった。
━━━死神博士が逃げた!?でもこれなら…!
死神博士がこの場を離れた事を確認した響は殴りかかるザンジオーの腕を取りブリッジの外に投げ捨てる。ブリッジのガラスを突き破りザンジオーは外へと放り出された。
「!?」
「なんのつもりだ!立花響!」
響の突然の行動に驚くゴースターとトドギラー。響の行動が読めず動きが散漫になる。そして、その隙を響は見逃さなかった。
響が、トドギラーに中国拳法の鉄山靠を食らわせまたもやブリッジの外に追い出す。それを確認した響はトドギラーの近くに居たゴースターも同じように投げ飛ばそうとする。
「重ッ!」
ゴースターの体重に少し顔を顰める。ゴースターの体重は優に200キロを超える、普通ならば人間一人が持ち上げるのは相当苦労するが響なら余裕であった。ゴースターを投げ飛ばす事に成功した響も移動しようとする。そう、響の狙いは戦う場所を変えてマリア達の危険を減らす事が目的だった。
「師匠、怪人達を外に放り投げました!これから私も出て怪人達を倒してきます!」
「そうか、分かった!」
ハエ男と戦う弦十郎の耳に響の声が聞こえ、それを了承する。確かにこのまま此処で戦えば響は十分に力を出せないだろうと考えられた。
そして、響がそのまま割れたガラスからフロンティアの外へと飛び出そうとした時、
「待ちなさい!」
「?」
響を呼び止める声が聞こえ振り向くと其処にはマリアが居た。声の主はマリアだった。
出来れば、直ぐにでも怪人の追撃に行きたかった響だが、マリアの表情がまるで迷子で不安になってる子供のように見えて放置出来なかった。
「何ですか?」
「どうして…どうしてアナタは戦えるの?あいつ等の戦力を知ってるでしょ!」
マリアの口から弱音と響たちへの疑問が湧き出る。死神博士に裏切られ利用され歌っても月の落下の阻止は不可能だった。更にはシンフォギアを纏った槍の一撃もゴースターに弾かれ意味が無かった、マリアの心が折れるのも無理はない。
「……」
「あいつ等は月を落として人類の抹殺を企んでるのよ!それに怪人達は死ぬことが無いんでしょ!?…勝てる訳が無いわよ…」
「…それでも戦わなきゃいけないんです」
「え?」
「私もショッカーに拉致されて体を改造されて人間じゃなくなった…それでも私はこうして生きている。この命がある限りショッカーと戦い続けるって」
「……」
「それに調ちゃんにお願いされたから、マリアさんを助けてって。…ああ、勘違いしないでください。調ちゃんのお願いがなくても、私はマリアさんを助けに言ってますから」
「…そう、調が…」
「本当は諦めたら楽になるかも知れない。脳改造されて私が私じゃなくなって今の私が消えればショッカーを怖がる事はないかも知れない。でもそれじゃダメなんです!だから、行ってきます」
響の決意を聞いたマリアは響から視線を外す事は出来なかった。
そんな、響は石柱を足場にしてフロンティアのブリッジから出ていく。外に投げ飛ばした怪人達の追撃の為に、
「ええい、ゴースターどもの役立たずめ!こうなれば俺がマリアを殺してやる!!」
「そんな事…」
「俺達がさせるものか!」
響がゴースター達を外に投げ出した事にハエ男が代わりにマリアを殺しに行こうとするが、戦闘員の包囲網を破った弦十郎がハエ男に接近する。
しかし、その行動はハエ男に読まれていた。
「やっと近くまで来たな!喰らえぇ!」
自分の近くにまで接近した弦十郎にハエ男は口から白い泡状の液体を吐き出す。マリアを殺す発言も自分の吐き出す液体を避け続ける弦十郎への罠であった。少女たちの命を大事に思う弦十郎ならばハエ男の発言を聞けばいの一番で飛び出してくる。後はこっちに来る弦十郎に白い泡状の液体を吐き出すだけだった。
「指令!」
少し離れた緒川が気付いたのか、懐から拳銃を取り出しハエ男に向けて何発も発砲する。しかし、弾丸の悉くがハエ男の体に弾かれる。
「馬鹿め、そんな豆鉄砲で俺を倒せるか!?死ねぇ!」
「ぬっ!」
弦十郎の目にハエ男の口から白い液体が飛び出すのが見えた。弦十郎は反射神経のまま飛び上がり空中を回転して何とかハエ男の爆発性の泡を避ける。目標を失った泡は地面に接触すると小さな爆発を起こした。
そして、飛び上がった弦十郎はハエ男の背後に着地するが無茶な体勢で飛んだ為、体のバランスを崩し直ぐには立ち上がれない。
「今の咄嗟の行動は褒めてやる!だが、貴様の死ぬ時間が少し伸びただけだ!!…?」
体勢の崩した弦十郎に止めを刺そうと振り返ろうとするが体が動かなかった。ハエ男がいくら動こうと藻掻くが指一本動かす事が出来ない。その時、ハエ男の目に自分に銃を撃った緒川の顔が見える。その顔はしてやったりとした表情をしていた。
「貴様か、忍者もどき!俺の体に何をした!?」
「知りたいのなら自分の足元を見る事ですね」
緒川の言葉に「足元だと?」と言い視線を下に向ける。足元には緒川が撃った弾丸が拉げて落ちてるだけ。…いや、一つだけおかしいのがあった、一発の銃弾だけがハエ男の陰の中に打ち込まれてる。
「まさかこれは!?」
「そう影縫いです」
あの時、緒川が拳銃でハエ男を撃った時一発だけハエ男の体に当たらずハエ男の影に軌道を変えて打ち込んでいた。ハエ男は知らない間にとっくに動きを封じられていた。
「馬鹿な、影縫いは風鳴翼の専用の技ではないのか!?」
「リサーチが足りませんね。元々、翼さんの影縫いは僕が教えたものです」
緒川のその言葉にハエ男が罵声を浴びせ何とか動こうとする。しかし、
「悪いが此処でお前は終わりだ!」
後ろからの声と背中からの衝撃、そして腹部の違和感によりハエ男が自分の腹を見る。そこには一本の腕がコードや肉片と共に生えていた。
「おのれ…風鳴弦十郎…!」
「こっちもお前に構ってる余裕はない。ついでに言えばお前よりギリザメスの方が強敵だった!…さらばだ」
「貴様…!」
腕の持ち主は弦十郎で背中から腕を貫通させていた。勝負はあった、腕を引き抜かれたハエ男は緒川の影縫いが解けたのか体から力が抜け橋の横の穴へと落下し直ぐに爆発音が響きた。
戦闘員も殆ど撃破した事で弦十郎たちは勝利したが、死神博士を取り逃がしてしまった。
シンフォギアGの13話を見返して気付いた。あっ、ガラスなんて無いや。
ブリッジのガラスの部分はオリジナルということで。
響達の大立ち回りはバッチリモニターに映ってます。
それにしても、響ってモニターで思いっきり自己紹介してるんだよね、よく平凡に学校に行ってたな。マスコミや野次馬が押し寄せそうなのに。
GXだと響の親父がモニター見て響に似てるなって言ってるけど声が出ず歌だけ流れてた?それだと、マリアが演説していたし…。