改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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G編、いよいよラストバトル


70話 死神博士の正体!? 恐怖の流れ星作戦!!

 

 

 

「フッハハハハ…フッハハハハ!!」

 

死神博士の口から笑い声が出る。部下の怪人たちは全滅し、切り札と思われたショッカー響も壊滅しもう死神博士の手駒はない筈だった。

響や翼たちも思わず汗が流れる。笑う死神博士の迫力に装者の誰もが動けなくなる。

 

「…ゴクッ!」

 

翼も無意識に息を飲む。装者の誰もが死神博士に注目している。

そして、死神博士は取り外した黒赤のマントを自身の前に持ち響からの視界から一時姿を消す。直後、死神博士の居た場所に白い怪人が現れる。

 

「ギィーッ!装者ども今度はイカデビルが相手をしてやる!」

 

その姿は、軟体動物門頭足類のような頭部をし、上半身からはイカの足のような触手が何本も生え全体的に白い。本当にイカのような怪人だった。

 

「死神博士が!」

「…怪人になった!?」

「死神博士も怪人だったの!?」

 

死神博士がイカデビルに変身したのを見て度肝を抜かれるマリアと切歌、調。反対に響達は落ち着いていた。

 

「死神博士もゾル大佐と同じ…」

「改造人間だったのか」

「それがお前の正体か、クソ爺!」

 

ゾル大佐が黄金狼男になったことで、まさかとは思っていたが死神博士も改造人間だったことに納得する翼と響。クリスの発言に笑う死神博士。

 

「そうだとも!これがこの俺、イカデビル様の姿だぁ!!」

 

「死神博士と随分と性格が異なるわね」

「…口調まで変わってる」

 

死神博士の性格が変わった事に少し驚くマリアたち。その時、切歌がイカデビルの左腕がない事に気付く。

 

「マリア、イカデビルの左腕が!」

「左腕が無い?切り落とされた感じだけど」

「きっと地下で師匠がやったんですよ!」

 

既に死神博士が左腕を失ってる事に気付き、地下で先に戦った弦十郎と緒川がやったと考える響。真相は分からないが死神博士を倒すチャンスだと考える。

 

「腕一本失った状態で戦うつもりか!クソ爺」

 

「慌てるな、最後にもう一つ。お前達に見せてやろう!」

 

クリスの言葉に反論したイカデビルは右腕にある物を掴む。それは一見岩のように見えて中心部から赤い光が脈動するように光る。

 

「あれは…」

「何なの?」

 

翼と響はイカデビルが握る得体の知れない物体に警戒する。一方、マリアやクリスたちにはそれに見覚えがあった。

 

「ネフィリムの…」

「心臓だと…」

 

ネフィリムの心臓。ウェル博士がフロンティアを起動させる為に回収した完全聖遺物。前に見た時よりも赤い光が禍々しくなっていた。

 

「そんな物どうするつもりデスか!?」

「…あのエネルギー量…下手に扱えば私達どころかこの星も危険…」

「人質のつもりか、クソ爺!!」

 

マリア達の発言に翼と響も息を飲む。下手に攻撃すれば地球自体も危ないという事だ。それでは攻撃すら出来なくなる。

 

「舐めるな、そんなつまらん戦い方はせん。何より、俺様ならこのエネルギーを有効に使える!」

 

そう言うとイカデビルは右手に持ったネフィリムの心臓を腰のショッカーベルトに付ける。直後、ネフィリムの心臓から幾つもの管が血管のように張り巡らせる。

 

「自分の体に!?」

 

「ネフィリムよ、その力を俺様に寄こせぇぇ!!」

 

ネフィリムの心臓の赤い光と禍々しい黒が白いイカデビルの体を侵食する。途中、切り落とされた左腕部分にも染まっていき左腕ごと再生する。更には、周辺の土が盛りあがりイカデビルの体を包み始める。翼や響にはそれが最初に出てきたネフィリムの姿が蘇る。

 

「死神博士がネフィリムに取り込まれた!?」

「…違う、逆だ!ネフィリムの力を死神博士が取り込んだんだ!!」

 

先程のネフィリムの倍近い大きさの土塊から巨大化したイカデビルが出て来る。白かったイカデビルの体は所々黒くなり赤い光も漏れ出す。

 

「フッハハハハ!素晴らしい、ネフィリムの力は予想通り馴染むぞぉ!!俺の頭脳ならばネフィリムの力を操るなど造作もない!」

 

巨大化したイカデビルが笑い流暢に喋る。その様子に響達の顔色が優れない。

 

「一体どうなってんだよ!?」

「死神博士がネフィリムの心臓を取り込んだ…」

 

「そうだ!立花響のデータとユニコルノスのデータにより聖遺物と怪人の融合を考えていた!ナスターシャ教授とウェルのデータは実に役立った、これこそが聖遺物合体怪人、ネフィリム・イカデビル!!」

 

「合体聖遺物怪人…」

「ネフィリム…」

「イカデビル…」

「欲張りセットもいいとこデス!」

 

死神博士は、以前から聖遺物と怪人の融合も研究していた。動植物の能力の他にも聖遺物の能力も持たせ戦力にするのはショッカーも見過ごせなかった。

だからこそ、立花響のデータと立花響とは違うパターンでユニコルノスを作った。そして、聖遺物の権威のナスターシャ教授とネフィリムの心臓を持ち込んだウェル博士により死神博士の研究は加速した。

エネルギーを蓄えたネフィリムの心臓を心臓を取り込む事により、今のイカデビルの力は本来の何十倍にも跳ね上がっている。後は、立花響や風鳴翼らを始末してこの力を首領に見せて世界征服を進めるだけだ。

 

「そして、お前達は思い知るだろう。イカデビルの本当の恐ろしさをな!」

 

そう言うと、巨大化したイカデビルの体に付いたイカの足の触手が一斉に響達へと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その頃、フロンティアの施設から一台のジープが走り出す。運転席には緒川が乗り、荷台には右腕のあった場所に包帯が巻かれた意識のない弦十郎と、その弦十郎の容態を確認しているウェル博士が乗っている。そして、隅には響の乗って来たバイクも固定されている。

 

「ウェル博士、指令の容態は!?」

「流石、ショッカーに狙われただけはありますよ。普通ならショック状態に落ちいてもおかしくないのに安定しています。…ですが、急いでください。こういうのは早めに治療した方がいいんですから」

 

ウェル博士の言葉を聞いて、緒川がスピードを上げる。特に舗装もされてないフロンティアの道だが緒川のドライビングテクニックによりあまり揺れは感じない。

その時、遠くの方で爆発が起こる。

 

「マリアたちが無事だといいのですが…」

 

怪人達が全滅しショッカー響たちと戦ってるのか?それともショッカー響を倒して死神博士と戦ってるのだろうか?と心配するウェル博士。

電波状況の悪い現状、向こうの様子が分からない。弦十郎たちが持っていた通信機もショッカー響の自爆により壊れてしまっている。

 

「ふ~…!」

 

思わず溜息をつくウェル博士だったが、背後からの落下音にビクっとなる。振り向けばフロンティアの力で浮いていた岩石が落ちて来たようだった。よく見れば周りの浮いていた岩石も次々と落ちている事に気付く。緒川が上手く岩石の浮いていない道を選んでる為に自分達の振ってこないのだ。

 

「フロンティアの最後と言ったとこでしょうか…」

 

フロンティアは完全聖遺物言える建造物だ。それが崩壊する事に感慨深くなるウェル博士だが、このままショッカーに使われるよりはマシと考えを変える。

その時、大きな影自分達を包み光が途切れる。上を見たウェル博士の目に入ったのは赤く焼ける岩石の塊だった。

 

「うひゃああああああああああああああああああああっ!!!」

 

みっともなく悲鳴を上げてしまうが、突然目の前に岩石が落ちてくれば悲鳴の一つもあげるだろう。

直後に、緒川はジープのハンドルを切る。今まで安定していたジープに凄まじい負荷がかかり荷台にいたウェル博士と弦十郎にも襲い掛かる。弦十郎は一応固定されていたがウェル博士は頭も体もあっちこっちぶつける結果となった。

緒川のドリフトで赤く燃える岩石を避け切り緒川が「ふ~」と息を吐く。

 

「……ちょっと僕はデスクワーク派でデリケートだって言ったでしょ…」

「すいません。僕もできるだけ頭上に瓦礫が無いルートを選んだんですけど…さっきの奴は突然現れて…」

 

あっちこっちぶつかったウェル博士が緒川に文句を言う。緒川もこれには平謝りだ。

「まるで隕石のようだ」と発言する緒川。その言葉に体をぶつけたウェル博士は改めて周囲を見渡す。

周りは相変わらず宙に浮く瓦礫が落ち、周囲には地割れが起きる。その時、ウェル博士の目はある物を捕らえた。

 

「空から何か振ってきてますね」

「流れ星でしょうか?流星群には時期が違う筈ですけど…」

 

空から幾つもの光り筋が見えたのだ。まるで流星群のごとく、空の彼方に落ちていく。

 

━━━落ちる岩石…隕石…流星群…流れ星!?まさか

 

「急いで本部に向かってください。もっと早く!」

「これでも急いでいるんです!」

 

ショッカーにいた時、データを漁ってるときにある作戦を思い出すウェル博士。杞憂であって欲しいがそれを確かめる為にも急いで特異災害対策機動部二課の仮設本部である潜水艦へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロンティアの真下の海域。海面から何かがぶつかる音がした直後に海中にて黒い細長い建造物がゆっくりと潜航する。

 

「地獄大使、我々の潜水艦は無事海中に到着しました!」

 

戦闘員の報告に「うむ」と答える地獄大使。この潜水艦こそフロンティアの底に人工重力装置GXを取り付けた潜水艦隊の一隻だった。

フロンティアは既に高高度を超える高さを飛んでおり通常の潜水艦では、この高さから落ちれば一溜まりもない。しかし、地獄大使の乗る潜水艦はショッカーの技術の結晶であり無事高高度からのバンジーを成功させ潜航する。

 

「各潜水艦も無事に着水。それぞれ海底のアジトを目指します」

「それはいいが、今回の戦いで大分怪人を磨り潰した。暫くは戦力の回復を図らねば…」

 

戦闘員は兎も角、多くの怪人が撃破され各国の軍や政府に潜入していた人員も使いショッカーの戦力も大分目減りしている。だから地獄大使は暫く水面下を潜り戦力の回復を考える。

 

そう考えて居た時、潜水艦の真横に衝撃がはしる。

 

「フッ、始まったか」

 

衝撃に一部の戦闘員が慌てる中、地獄大使が死神博士の計画が始まった事を悟り笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緒川の運転で弦十郎たちは無事潜水艦へと到着した。しかしどうにも様子がおかしい。人集りが出来潜水艦の開いてる格納庫付近で何かやり合っていた。

 

「頼むよ、保護してくれ!」

「だからそれは我々の一存では…」

 

良く見れば皆軍服を着ているが結構バラバラでそれぞれ違う国の軍人のようだ。オペレーターの藤尭朔也が軍人たちの応対をしている。そこへ、緒川の運転するジープが割り込み軍人たちが道を開けた。

 

「ただいま戻りました!指令を急いで医務室に!!」

「指令が!分かりました!」

 

弦十郎が負傷し片手を失った情報は直ぐに仮設本部にも知らされ誰もが信じられないと驚く。

通信で特異災害対策機動部二課のエージェントを呼び弦十郎が慎重に運ばれようとしていた時に緒川が周囲の軍人たちを改めて見回す。

 

「藤尭さん、この軍人たちは?」

「それが…よく分からないんですよ。突然やって来て保護してくれの一点張りで…」

「俺達だって分かんねんだよ!気付いた時にはこの変な島で妙な物を作ってたりしてよ、聞けば日にちも随分と過ぎてるんだ!」

 

軍人たちにしても意味が分からなかった。よく訓練で活動しているが今回は何時の間にかフロンティアで働きよく分からない建造物を作り帰る手段も無い。

藤尭朔也も緒川もどういうことか意味が分からなかったが話を聞いていたウェル博士はある一つの結論に辿り着く。

 

「恐らく洗脳されてたようですね」

「洗脳!?」

「それ本当ですか、ウェル博士!」

「怪人の中には人間を洗脳する者もいるそうです。ほぼ間違いないかと」

 

ウェル博士も全てとはいかないがある程度の怪人の能力は見聞きしている。恐らく、ウェル博士が持っているデータチップにもその怪人のデータがあるかも知れない。

そして、その答えに困ってるのは緒川と藤尭朔也でもある。本当に軍人たちが洗脳されていれば助ける必要があるが特異災害対策機動部二課の仮設本部である潜水艦は日本政府の肝いりで最新鋭の潜水艦だ。

おいそれと他国の軍人を入れるのには躊躇いがある。が、

 

「…入れてやれ」

 

その言葉に皆が一斉に振り向くと担架に乗せられた弦十郎が何とか上半身を起こそうとしている。

 

「指令、傷に障ります!」

「俺の事はいい…それよりも此処は間も無く崩壊する。…ここで彼らを助けなければ皆死んでしまう」

 

緒川の言葉にも弦十郎は軍人たちを助けろと言う。確かにフロンティア自体、崩壊の一途をたどり宙に浮く岩石が落ち切り崩落も起きている。落ちれば下は海だろうが真っ逆さま、高度も高すぎるゆえに助からない。

 

「でも…」

 

だからと言っても緒川としても即答できない。緒川は特異災害対策機動部二課のエージェントであり情報を取り扱う事も多い以上簡単には「はい」とは言えない。

 

「全ての責任は俺がとる。だから彼らも助けるんだ」

「指令は右腕を失ってもそう言うんですね。…分かりました」

 

結局、弦十郎に押し切られその場に居た軍人の全員が特異災害対策機動部二課の潜水艦へと保護された。尤も百人近い数の所為で骨が折れ藤尭朔也が押し合いへし合いが起きぬよう誘導し弦十郎は医務室へと運ばれる。

 

「あれ?ウェル博士は?」

「アンタらと一緒に居た眼鏡の科学者ならとっくに潜水艦へと乗ったぞ」

「何時の間に!?」

 

その時になってようやく緒川がウェル博士が居ない事に気付く周囲を見渡していると軍人の一人が弦十郎と緒川がやり取りしてる間に潜水艦に乗った事を聞き大声を上げて驚く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響…」

「ネフィリム・イカデビル…なんて禍々しい姿。…さっきのネフィリムよりも大きい」

 

藤尭朔也が席を外した司令部ではモニターを見る誰もが息を飲んだ。死神博士が正体であるイカデビルへと変わりネフィリムの心臓を取り込み巨大化し響達と戦っているのだ。

 

『この野郎!!』

『クリスちゃん、援護を!』

 

クリスのエクスドライブのイチイバルを巨大な弾薬庫にして幾つもの弾丸やレーザーをイカデビルに撃ち込み、その隙に響が拳を巨大化させ羽で一気に加速して拳を放つ。

しかし、拳は命中するがイカデビルの体には傷一つ存在しない。勿論、クリスの攻撃も一緒だった。

逆に火球と触手が響達に反撃する。

 

「響…クリス…」

 

イカデビルに返り討ちにされて二人の名を呼ぶ未来。翼もマリアも必死に攻撃していたが、響達と似たような結果だった。エクスドライブのシンフォギアすら圧倒する姿に誰もが絶望を感じていた。

その時、指令室のドアが開く。藤尭朔也が帰って来たのかと後ろを振り向くと其処には友里あおいの予想だにしない人物だった。

 

「ウェル博士!?」

 

あおいの言葉に未来も振り返る。其処には確かに弦十郎と緒川が確保に行ったウェル博士。

 

「失礼、少しその席を借りますよ」

 

挨拶もソコソコにウェル博士はそう言ってあおいが止める間も無く藤尭朔也のオペレーター席に座りコードを弄りだす。そして懐に入れていたデータチップを差し込む。その途端、モニターにショッカーのマークと共に様々な資料が映りだす。印の付けられた日本や世界地図、怪人の能力データや作戦の内容など多岐に渡る。

 

「怪人の製造法?」

「何これ…アイス計画…液体火薬…F作戦…大蔵省金保管所襲撃結果報告書…奥山村壊滅作戦…ウェル博士、このデータは一体…」

「僕がショッカーのアジトで手に入れたデータですよ。全体の大部分をコピー出来ましたが…全てとは言い切れません」

 

ウェル博士の言葉は、あおいにとっても衝撃だった。このデータの中には有名な物が多々あり子供の頃騒ぎになったり、警察も迷宮入りにせざるおえなかった事件ばかりなのだ。それは未来も同じであった、テレビの特番でミステリーとされていた内容ばかりなのだ。そのミステリーも全てショッカーが行っていたのなら納得も出来る。

その場に居た職員の誰もが息を飲む中、ウェル博士だけ更にデータを漁っている。それはショッカーが企てたり予定している作戦内容だった。

 

「海底地震作戦…違う。火山噴火作戦…これも違う。五〇七計画…違う。人口地震作戦…違う。人類皆殺し作戦…これは装者たちに阻止されましたね。世界暗黒作戦…違う。流れ星作戦…これだ!!」

 

幾つもの資料を読み漁っていたウェル博士が目的の物を見つけ熟読し目を血走らせる。あおいも未来もウェル博士に続いて読み顔を青ざめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア…ハア…」

 

マリアが肩で息をする。巨大化したネフィリム・イカデビルに苦戦してるのもある。だがそれだけではない、怪人軍団に巨大化したネフィリム、ショッカー響など連戦続きだ。そのどれもが激戦というレベルでマリアも響達も消耗している。

既に響が何度目かの突撃をするが効果はない。

 

「固すぎデス!」

「マリア…どうすれば…」

 

イカデビルの腕に弾き飛ばされても何とか体勢を立て直してマリアの近くによる切歌と調。エクスドライブでも勝ち目が見えない事に弱気になりマリアに相談する。

尤も、聞かれたマリアもそれを知りたいのだが、

 

『マリア、聞こえますか!マリア!!』

 

その時、通信機から聞き覚えのある声がし耳を傾ける。

 

「ドクター!?」

 

その声はウェル博士の物だ。特異災害対策機動部二課の通信機を使って話しかけている。しかし、慌てていたのか、その通信はマリアだけでなく翼や響たちにも届いていた。

 

『マリア、聞こえているのならいいんです!マリア、急いでネフィリム・イカデビルを倒してください!!』

「…それが出来れば苦労はない」

「好き勝手言ってくれえるデス」

 

ウェル博士の「イカデビルを倒せ」と言う言葉に切歌と調は腹を立てた。助言なら兎も角、ただ倒せと言われて倒せれば苦労はない。言葉には出さないが翼とクリスもウェル博士の言葉に腹を立て響は苦笑いを浮かべる。

 

「ドクター、そうしたいのは山々だけど…『いいから早くッ!このままでは世界は本気で終わってしまう!!』!?…どういう事?」

 

珍しくウェル博士が恥も外聞も無く喚くようにマリアに訴えた言葉に思わず聞き返す。何より、月の落下を防いだ筈だ。

 

『死神博士は、既に流れ星作戦を決行していたんです!』

「流れ星作戦?」

「クソ爺にしちゃメルヘンチックな名前だな」

「流れ星…」

 

流れ星作戦と言う名に、翼もクリスも顔を見合わせる。名前だけ聞けばどういった作戦かは分からないが響だけ嫌な予感がしている。

 

『よく聞きなさい!流れ星作戦というのは隕石誘導装置を使って流れ星化した隕石を地球に落下させ地上に居る全ての生命体を根絶やしにする恐ろしい作戦です!!』

「「「「「「!?」」」」」」

 

ウェル博士の言葉を聞いて、その場に居た装者全員が息を飲み黙り込む。それ程、ウェル博士の言葉が信じられなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

ウェル博士が、マリアたちに通信する少し前、

ビルの大型モニターの前に集まっていた群衆は未だにモニターの方を見ている。

 

「続報とかないかな?」

「立花さん、無事だといいんだけど」

「きっと無事だよ。ビッキーたち」

 

そこには当然、響の同級生で友人の創世と詩織、弓美もいる。本当はとっとと移動したかったが、またモニターに響やマリアが映るかもとその場で待っていたのだ。

その考えは道行く群衆も同じで未だにその場で祈るような者もいた。

 

直後、少し離れたビルが爆発炎上する。それと同時に警報が鳴り響く。

 

「なに!?何が起こったの!?」

「皆さん、空を!」

 

詩織の言葉に創世と詩織、言葉につられて周りの人間も上を向く。空から幾つもの赤い火球が降り注ぎビルや家に直撃する。

 

街は一瞬でパニックに陥った。

 

 

 

 

 

 

『皆、ウェル博士の言葉は本当よ!』

 

「未来?」

 

割り込むように小日向未来が通信して直ぐにあおいへと変わる。その声はウェル博士よりも焦ってるようだ。

 

『さっき回復した通信によると既にアメリカ、中国、ユーラシア大陸とアフリカにも隕石が降り注いでいるの!このままじゃ本当に地上の生命体は根絶やしにされる!』

『現在、政府も一般市民をシェルターに避難させてますがノイズ用のシェルターでは長く持ちません!一刻も早く誘導装置の破壊か、イカデビルを倒すしかありません!』

 

あおいと兵士の誘導も終えた藤尭朔也もまた血相を変えて翼たちに報告する。

既に世界中に隕石が降り注ぎ日本だけでなく各国もパニックに陥っている。金持ちも貧乏人も関係なく隕石は平等に降り注ぎ次々と人々が殺されている。

 

「!」

「立花!?」

「おい、待てよ!」

 

逸早く響がイカデビルへと飛び出し翼もクリスもそれに続く。出来る事ならマリアも駆けだしたかったが、ウェル博士にまだ質問がある。

 

「ドクター…時間は?」

『およそ30分が限界でしょう。…これだけの隕石が30分以上地球に降り注げば人類が生きてようが隕石の影響で空に舞う塵の所為で()()()()()()()()()()()()()()()

 

嘗て地球で繁栄していたとされる恐竜が絶滅した原因とされる氷河期、それが人類に待ち受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上昇し続けるフロンティアはとうとう大気圏を抜け宇宙へと到達する。これ以上留まるのは危険だと判断した特異災害対策機動部二課も仮設本部である潜水艦に搭載されてるミサイルを使い下の岩盤を破壊、下の海に着水を試みる。本来なら司令部や重要な場所だけ搭載された上層部を守る為に下層部を切り離したかったが保護した軍人が多すぎそれも出来ない。結局、上層部に付けられたパラシュートで少しでも衝撃を逃がすしかなかった。

 

そして。フロンティア付近に残った響と翼が必死にイカデビルに攻撃を加えている。

 

「死神博士、誘導装置は何処だ!?」

 

「フフフ…気付いたようだな。見てみろ此処からなら世界が終わる姿も見えよう」

 

響の言葉にもイカデビルは笑いながら言う。確かにこの場所なら宇宙から降る隕石が地球に落ちていくのも見える。

 

「させるかよ!」

 

地球に飛ぶ隕石を破壊するクリス。しかし、一つ二つ壊しても次から次へと隕石は地球へと接近する。

 

「無駄だ、隕石は幾らでも宇宙を漂う。それにお前達が作った隕石もまだ大量にあるぞ!」

 

「私達が…」

「作った隕石…」

「!月の欠片かよ!」

 

イカデビルの言葉に愕然とする響と翼にクリス。イカデビルが落としてる隕石を自分達が作ってしまった事にショックを受けている。

 

「お前達に礼を言おう。これだけの隕石があれば人類の殲滅など楽に出来る!!」

 

響の目に隕石が大気圏に突入して大地に当たるのを目撃する。落ちると共に砂ぼこりが起き響の脳内に人々の悲鳴が幻聴として流れた。そして、それは翼とクリスも一緒だった。

 

「私達の所為…」

「我々が月の欠片を砕いたから…」

「ショッカーに利用されたのかよ…」

 

イカデビルの言葉に心に悲鳴が上がる。自分達は世界を、人類を守る為に戦って来たのにその所為で人類が滅ぼうとしている。その事実が三人の重しとなっていた。三人の目元から涙が零れる。

 

「その通りだ!お前達が頑張れば頑張る程状況は悪くなっている。だから…大人しく死ねぇ!!」

 

好機とみたイカデビルが尖らせた触手を出して一気に三人の下に向かわせる。串刺しにして止めを刺すつもりであった。

 

━━━私達って一体…

━━━我々の戦いは無駄だったのか?

━━━アタシたちの戦いで余計に被害が…

 

自分達の戦った結果、隕石を大量に作り出した事を知り戦意がグラつく。イカデビルの言葉で心の折れ掛けた響も翼もクリスも回避行動も防御もせず迫りくる触手を見る。

そのまま触手が翼たちの胸に突き刺さるかに思えたが、

 

「翼たちは!」

「やらせない!」

「デース!!」

 

「ぬっ!?」

 

剣を持ったマリアにイガリマをシンフォギアのパーツを合体させロボットのように操る調、巨大化したイガリマでイカデビルの触手を切り裂く。

翼たちを守り切ったマリアは直ぐに振り返り翼とクリス、響に平手打ちする。

 

「敵の言葉に乗せられるな!」

 

マリアの一喝が翼たちの耳に入る。

 

「マリア…」

「マリアさん、でも…」

「…アタシ達が戦ったから隕石が大量に出来たのは本当なんだ…」

「なら、あのまま月の欠片が地球に落ちてきても良かったの?」

「「「…」」」

 

クリスの泣き言にマリアが反論し三人は黙ってしまう。確かに隕石が月の欠片のままだったら被害がとんでもないことになっていただろう事は想像に難しくない。マリアに叩かれた頬が熱く感じる三人。

 

「今更、過去を悔いてもどうにもならない。それは私もあなた達も同じことよ!それでも、このままじゃ月の落下を命を賭けて止めたマムが浮かばれない!!お願い…私と一緒に…戦って…一緒に死神博士を…倒して…」

「マリア…」

 

三人を説得するマリアは感極まり涙を流す。ナスターシャ教授が命を賭けて月を止めたのに地球は今大ピンチだ。恐らく自分だけではネフィリム・イカデビルを倒す事は不可能だと判断して翼たちに改めて共闘を願い出る。

 

「フッハハハハ!この俺様を倒すだと!?馬鹿も休み休み言うんだな…そうだついでに月も落としてしまうか!ネフィリムのエネルギーを使えば誘導装置の出力も上がり月を隕石ように操れるだろう!」

 

「死神博士っ!」

 

この期に及んでまだ月を落とす事を画策するイカデビルの言葉にマリアが反応する。ただのハッタリか、本当に月を落とすのかはマリア達には知る由もないが無視できるほどマリアにも余裕がない。

その時、イカデビルの顔に青い斬撃が飛び込んでくる。

 

「ぬ?」

 

「やれやれ、防人が戦いを躊躇うとはな。やはり私もまだ未熟か」

「翼さんだけじゃないですよ。私も死神博士の口車に乗せられてました」

 

マリアの叱責に改めて戦う事を決めた翼と響、そしてクリスも、

 

「ようは隕石を操れねえようにすればいいんだろ。…ならよ!」

 

クリスが取り返したソロモンの杖を起動させる。

 

「バビロニア、フルオートだああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ソロモンの杖から水色の光を放つ。その光りはレーザーのように動きイカデビルの横をすり抜ける。

 

「ふん、今更ノイズを出して挟み撃ちにでもする気か!?ネフィリムの力を取り込んだ俺様にノイズ程度が相手になると思ってるのか!?」

 

「勘違いすんじゃねえ、アタシの目的はお前の後ろだ!」

 

「後ろだと!?」

 

クリスの言葉にイカデビルも背後を見る。ソロモンの杖からの光に地球ではない別の空間が映る。

 

「バビロニアの宝物庫だと!」

 

「エクスドライブの出力で無理矢理開けてるのか!」

 

イカデビルが驚愕の声を出し翼がクリスが無理矢理力を使ってる事を知る。

イカデビルにはその空間に見覚えがあった。ショッカーノイズを作る為に何度か足を運んだ異次元空間、またの名をバビロニアの宝物庫。

クリスはエクスドライブの力を使いソロモンの杖でバビロニアの宝物庫のゲートを開けたのだ。

 

「そうか!ゲートの向こう、バビロニアの宝物庫にイカデビルを格納できれば!」

「隕石を操る事も出来ない!」

「デース!!」

 

マリアたちもクリスの目的を理解して異次元空間であるバビロニアの宝物庫にイカデビルを送り込めば隕石の操作も出来ず流れ星作戦を阻止出来ると考えた。

 

「人を殺すだけじゃねえって、やって見せろよ!ソロモオオオオォォォォォォンッ!!」

 

クリスの言葉に答えるようにソロモンの杖の力は更に高ぶり完全にバビロニアの宝物庫のゲートが開く。

 

「ヌッ!?引っ張られてるだと!!」

 

イカデビルの体が徐々にだがバビロニアの宝物庫に引っ張られる。抵抗するイカデビルはソロモンの杖を持つクリスを攻撃してソロモンの杖を弾き手に入れようとするが、それよりも早くマリアが掴む。

 

「死神博士、アナタに明日は渡さない!!」

 

クリスに代わり今度はマリアがソロモンの杖の力を使う。バビロニアの宝物庫のゲートが更に広くなりイカデビルを引っ張る力が強くなる。乗っていたフロンティアの残骸もとうに吸われイカデビルも吸われかける。

 

「こうなれば!!」

 

イカデビルの手がマリアへと迫り避けるマリアだが、死角からのイカデビルの触手に捕まる。振り解こうとするが両手を塞がれたマリアの力では触手を切ることも出来ない。そのまま引っ張られていくイカデビルとマリア。

 

「「マリア」」

 

翼たちと一緒に居た調と切歌がマリアの名を叫ぶ。

 

「来ては駄目!私が格納後、ゲートを閉じる。イカデビルは私が!」

 

「愚か者が!貴様を片付けた後、再びこの世界に戻るだけよ!バビロニアの宝物庫など既にショッカーが支配している!!」

 

「!?」

 

マリアは自信を犠牲にしてでもイカデビルをバビロニアの宝物庫に閉じ込めようとした。しかし、イカデビルの言葉に背筋が凍る。ショッカーは既にバビロニアの宝物庫に入り込み、ノイズの全てを掌握している。

マリアを殺した後は、残ったソロモンの杖で外に出ればいいだけだ。

 

「結局、私は罪を償う事も出来ないの?全ての命を守る事も…」

「なら、マリアの命は私達が守ろう」

 

共にバビロニアの宝物庫に飛び込められる事を覚悟するマリアの独り言に誰かがそう返す。目を開けて見ると其処には翼の姿が、更にクリスや調に切歌も集まった。

 

「あなた達…」

「どっちにしろ、あのクソ爺ならバビロニアの宝物庫に閉じ込めようと出て来そうだからな」

「決着は向こうで付ける。あれを見ろ」

 

翼に促されイカデビルの方を見るマリア。そこにはオレンジ色に光り輝く者が、

 

「立花響、貴様!」

 

「死神博士!絶対にアナタを倒す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

=NGシーン=

 

「装者ども、これを見ろ!」

 

「干したイカと…」

「ビール?」

 

「イカとビール…イカ…ビール。イカデビル!!」

 

「「「「「……」」」」」

「どうすんだよ、この空気…」

 

 

 

 




イカデビルの所為原作以上の大被害がシンフォギア世界を襲う。
死神博士が変身後、性格が変わってるように見えますが原作通りです。

次回決着。



それでは設定でも、


ネフィリム・イカデビル

死神博士ことイカデビルがネフィリムの心臓を取り込んだ事によりネフィリムの力を手に入れたイカデビル。
大きさはネフィリム以上ネフィリム・ノヴァ以下。
ネフィリムの心臓がフロンティアのジェネレーターを喰らった姿を見て思いついた。
前々から聖遺物と怪人の融合を考えて居た死神博士は響のデータとユニコルノスデータを使い怪人とネフィリムの融合を企んでいた。死神博士の頭脳によりネフィリムの飢餓感を抑え制御している。
能力はイカデビルとネフィリムの良いとこどり。隕石誘導装置もパワーアップし月も落とせる…らしい。





FISの実験での暴走時に施設のエネルギーが吸われてると言ってたので、その逆も出来るかなと思いました。
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