=響の居ないリディアン音楽院=
昼休み、昼食を終えた未来は次の授業の準備をする。
「ヒナ~、ニュースニュース」
「え、また?」
創世に呼ばれた未来は、手渡しされた雑誌の表紙を見た後に便せんされてるページを広げる。中には未来の予想通り秘密結社ショッカーの情報と目元を隠してるが大型モニターに映っていた響の写真が載っている。
未来の傍で覗いていた詩織が書かれてる内容を読む。
「なになに『悪の組織に立ち向かう少女を激写!世界的犯罪組織ショッカーとは!?』ですか」
「私達が幾ら訴えても信じなかった癖にね」
「あはははは……証拠ももってない私達が言ってたのとマリアさんに暴露された方じゃ圧倒的に後者を信じるよ」
乾いた笑いをしつつ、一通り目を通した未来は雑誌を創世に返す。内容は殆どが憶測だった。「歴代の首相の中にショッカーの信奉者が!?」とか「ショッカーと戦う謎の少女!その正体は!?」とか眉唾な物ばかりだ。
響の方も政府が用意した影武者でカバーストーリーも出来上がっている。
だからこそ、リディアン音楽院にマスコミは一人も来ていなかった。
「それは分かるけど…」
「私はそれより板場さんの方が気になりますね」
詩織が板場とは弓美の事であり詩織の視線が動く。その言葉に創世と未来も視線を動かした先には、
「マリアが宣戦布告してノイズを出した直後にショッカーの怪人が襲撃してきて、会場は大パニック。私達は混乱する会場を逃げ出そうとしたけどショッカーの怪人はそんな私達に目を付けた!」
「そ…それで弓美さんたちはどうしたんですか!?」
「怪人の猛攻でピンチに陥ったけどそこで響が怪人の顔面にパンチ!そこで私達は会場を離れる事に成功したの!!」
「「「「すご~い!!」」」」
何人かの同級生や下級生に会場での話をしていた。それもかなり盛っていた。
「あの子ったら調子に乗っちゃって…」
「私達普通に逃げられた筈なんですけど…」
「板場さんは、前にショッカーの事を話しても誰も相手にしなかったらしいし、その所為かも…」
創世と詩織が弓美の言動に頭を抱える。一応、装者の事は機密扱いなのだがうっかり響の名が出ている事に未来は止めるべきか悩む。取り合えず、後で緒川に報告しようと決める未来。
ふと、窓の外を見れば未だに空は暗く雪がちらつく。学校が再開して二日経つが未だに日本も世界も寒い。それでも少しづつクラスメイトは登校する。まるで自分は無事だという事を報告する為に。
現在、クラスの数は少ないがこれから徐々に元に戻るかもしれない。マスコミも健在で復興が始まっても居ない内からもう雑誌を出版しショッカーのゴシップを出して居る。
「…人間って逞しいね。響」
未来は、未だに学園に戻らない親友の名を呟く。その声が聞こえた創世と詩織も返事はしなかったが思いは一つだった。
=マリアたちの様子=
「いただきます」
「いただきますデース」
調と切歌がそう言って目の間のご飯を食べる。時刻は既に昼時、彼女達は現在小さなテーブルを囲んで食事をしている。そんな二人を横目に同じご飯を食べるマリア。因みにウェル博士は偉い人の下へ行って留守であった。
「…なんかもうスッカリ馴染んでるね」
その様子を見ていた響は苦笑いしながらも三人を見ていた。響が入れられ既に二日経つが腕は相変わらず拘束されている。
翼やクリスに未来も気にはなるが今はマリアたちの元気な姿を見て安心する響。
「…アナタは食べないの?」
そこでふと、調が響に質問する。声には出さないが切歌もマリアも響の方を見る。
響が此処に連れられて二日、三人とも響が物を食べてる様子がなかった事に気付く。
「…私は後で食べるよ。この腕の拘束だと食べられないし」
「……」
響の答えに何となく察するマリア、響の力ならその程度の拘束など意味が無い筈。なのに響が甘んじて拘束される理由を考えるマリア。反面、切歌と調がジト目で響を見る。
少し考えた調がスプーンを一掬いして響の前に出す。
「調ちゃん?」
「…食べられないなら食べさせてあげる。アーン」
調は響が自力で食べられないのなら食べさせてあげようと親切心で響の口に料理の乗ったスプーンを突き出した。その様子にマリアが驚き、切歌は響に羨望の視線を向ける。
「駄目だよ、調ちゃん。調ちゃんのご飯が減っちゃう、調ちゃんは育ち盛りなんだから」
「…大丈夫、後で切ちゃんから貰う」
「え!?」
調からの強奪宣言に切歌は目を丸くする。それを見て「調に取られた分は私があげようかしら」と考えるマリア。断れる雰囲気じゃなくなった響は仕方なく口を開けて調が付き出したスプーンを口に入れる。
口の中に固形物が入る。触感からして米だと思うが味を感じれない舌ではその正体が分からない。結局、何度か噛んで飲み込むしかなかった。
「美味しい?」
「…うん、とっても」
嘘だ。調に気を遣っているが響は匂いは感じるが味は一切しない。ショッカーがそういう風に改造したからだ。
気付かれぬよう響の言葉に調が微笑み切歌が頬を膨らませる。それを見て勘違いかとホッとするマリアだった。
「…戻りました。後、調くんあまり意地悪をしないように」
其処へ扉を開けて戻ったウェル博士が一言言う。すると、切歌も調もウェル博士の方を見てジト目で睨む。
「あ、どうも…」
「…お帰りなさいドクター。外での用事はもう終わったの?」
調と切歌の反応に響が挨拶をしてマリアがお帰りと言う。その反応にウェル博士は、空いてる席に座り数枚の書類をテーブルの上に乗せた。
「日本政府の上層部やアメリカ政府の高官と話してきました。予想通り世界中が大混乱のようですね」
ウェル博士の言葉にジト目で睨んでいた調と切歌も直ぐに真面目な顔をし、マリアと響もウェル博士を見つめる。
その後、聞かされたのはアメリカを始めとした幾つもの国家が死神博士の流れ星作戦による被害とショッカーが暴かれた事による混乱だった。
日本にも多数の隕石が落下したが大国であり領土も日本以上の国は特に被害が出ていた。アメリカもその一つだ。
「アメリカ政府は日本政府にマリアたちの身柄を引き渡すよう要請してるようです」
「…そう」
「マリア…」
ウェル博士の報告を聞いて落ち込むマリア。全世界に対しての宣戦布告、何よりアメリカ政府にとっての『不都合な真実』を知っている自分達はアメリカ政府にとって都合が悪いのだろうと考えるマリア。恐らくは口封じも兼ねて裁判と言う茶番をして死刑にするだろうと考える。
マリアの落ち込みに響は訳が分からなかったが、何となく察した調と切歌がマリアの心配をする。
「…たぶん勘違いしてると思いますが、あなた達はアメリカ本土では英雄ですよ。文字通り」
「え?」
「はい?」
悲壮感漂う空気を壊したのもウェル博士の言葉であった。
「恐らく、マリアはアメリカ政府が僕達を死刑にしようとしてると思ってるでしょうが、アメリカにそんな元気はありません」
アメリカにはマリアを死刑にする事は出来なかった。アメリカ全土に隕石が落下しアメリカ国民に多大な犠牲が出て、更にはマリアを死刑にしたがる政治家も生き残ったネットの情報からショッカーとの繋がりが証拠と共に暴露されてしまい逮捕者や市民にリンチにされる者が続出、アメリカの機能は大幅に低下してしまった。隕石のパニック、ショッカーの存在の暴露、政治不安が重なり、寒い中アメリカでは暴動が起き、政府の支援もないなか犯罪組織ショッカーと戦ったマリアを英雄視する者が大量に出た。
「…っと言う訳で、アメリカはマリアを裁く事なんて出来ません。いや~何処が流した情報でしょうかね~」
「うへ~」
「ドクター…あなたは…」
白々しいウェル博士の態度に調と切歌が顔を引き攣らせマリアも片手で頭を押さえる。今一要領が掴めない響はただウェル博士とマリアの会話を聞くだけだった。
「ああ、そうそう。僕が日本政府上層部と話す時に同席していた脳筋の頬が腫れてましたね」
「脳筋?」
ウェル博士の言葉に誰だろうと考える響だった。
=風鳴家=
ウェル博士がマリアたちの居る独房に帰る前、古いながらも立派な屋敷ともいえる日本家屋に数人の人間が集まっていた。
その上座に居る白い長髪の老人が正座をし、その正面に弦十郎が座っている。
「…報告は以上です」
「そうか」
その老人こそ風鳴一族の長にして弦十郎の父であり翼の祖父、風鳴訃堂だった。
この場には、弦十郎の他にも翼に緒川、眼鏡をかけた初老の男こと弦十郎の兄であり翼の父『風鳴八紘』も座り訃堂のようすを見ていた。
弦十郎が何故、訃堂たちに現状を説明した理由はフロンティアの激戦の報告と響の釈放を要請する為である。第二次大戦中諜報機関、通称『風鳴機関』を組織していた訃堂なら政治家たちに働きかけ響の釈放も出来ると考えてだ。
「それで腕を一本失ったのか?」
「…はい」
訃堂の言葉に弦十郎はもう無くなってしまった右腕をなぞる様に触る。右腕を無くして数日もしないが弦十郎は何とか日常に馴染もうとしている。ショッカー響の自爆により右腕は完全に吹き飛び探す時間も無くウェル博士の応急処置により命は助かったが右腕を失った。たまに幻痛が起きるのが弦十郎の悩みでもある。
「この…馬鹿者がっ!!!!!!」
「グッ!?」
直後、訃堂の怒鳴り声と共に頬に強い衝撃を受ける弦十郎。
「指令!?」
「叔父さま!」
緒川と翼の声がすると共に体に浮遊感を感じ、強い衝撃が弦十郎の体を襲う。
弦十郎に何があったのかと言えば、訃堂に殴られたのだ。しかも思いっきり。
しかし、その威力は尋常ではなく屋敷の壁という壁が破壊され弦十郎が吹っ飛ばされていく。やっと止まったかと思えば冷たい水の中に落ちてしまう。
「ゴホッ!ゴホッ!…池!?」
訃堂の拳の威力は強く、弦十郎は外の池にまで吹っ飛ばされてしまう。
季節は初夏に変わろうかという時期だが、隕石の影響で外の気温は雪が降る程の低温であり、これには弦十郎も堪える。急ぎ池から出て這いつくばってると誰かの気配を感じた。
「立て、立てと言っておる!!」
「親父…」
弦十郎が顔を上げると顔に青筋を浮かべた護国の鬼がいる。見ただけでも分かる、怒っていた。
「待て、オヤジ!!」
「叔父様!!」
弦十郎で出来た穴から翼や八紘が走って出て来る。正直玄関に行くよりもこの方が早かった。
尤も、訃堂は気にせず弦十郎を無理矢理立たせる。
「お前は何処まで未熟なのだ!!敵の策略に嵌り腕一本、剰え最終決戦では医務室のベッドで寝をって!仮にも日本の護国を司る風鳴の一族か!!特異災害対策機動部二課の司令官か!!」
「…申し訳ありません、響くんと同じ顔でしたので保護しようと…」
「その甘さがショッカーにつけこまれたのだと何故分からん!!強くなったのは肉体だけであったか!」
そう言って、訃堂は手を力強く握り振りかぶる。翼も緒川もその拳で弦十郎を殺すのではと錯覚する程の気迫を感じた。
「落ち着いて下さい!!」
「御爺様、それ以上は叔父様が死んでしまいます!!」
緒川と翼が訃堂の説得を行う。しかし、訃堂は目線を緒川や翼に視線を向けただけで拳を下ろさなかった。
「そこまでにしておけ、オヤジ。弦を殺したい訳ではないんだろ」
必死で止めていた緒川と翼の耳にもう一人の声が聞こえた。弦十郎の兄であり翼の父である八紘だ。
「お父様…」
「ショッカーとの戦いはまだまだ続く、弦も戦力としては大事だ」
八紘の説得が効いたのか訃堂は振り上げていた拳を下ろし、弦十郎の右腕を触る。一瞬、傷口を握る気かと思った弦十郎だったが訃堂の顔を見て唖然とする。
訃堂の顔から何かが流れ地面に落ちる。
「…儂もお前も護国の為に生きている、必要とあらばこの命も投げ出さねばならん。それだけは忘れるな」
「…はい」
「…無くした腕は…痛むか?」
訃堂の言葉に弦十郎は首を横に振る。今は訃堂に殴られた頬の方が何倍も痛みを感じていた。
=偉い人達の会議=
「っと言う訳で、我々は響くんの身柄を渡して欲しいのですが」
訃堂とのやりとりから少し時間が経ち、弦十郎は政府の重鎮たちのいる会議の場で響の身柄を渡すよう要求し、訃堂に書かせた許可書も見せる。
眼鏡をかけた政治家の一人がその書類に目を通す。
「信じられんな…あの鬼が許可を出すとは…」
「国の為なら民間人すら犠牲にする男が…何か変わったのかね?」
そう言って、別の政治家が弦十郎の顔を見る。その顔は訃堂に殴られた所が腫れている。
訃堂の性格をある程度知っている者なら、この許可書は信じられない物だった。訃堂は典型的で最も過激な国粋主義者だ。国を守る名目の為ならそれこそ自国の国民は愚か自身の血族すら生贄にしかねない危険な男だ。
それ故に、訃堂の考えに共鳴し忠誠を誓う者達も居るのだが、
「あの鬼の事だから、立花響の体を調べ上げ国民全てを改造人間にするのかとも思ったが…」
「…或いは自身を改造し、未来永劫自身の手で日本を守るかと思ったが私は…」
「容易に想像がつくのが恐ろしいな」
政治家達からボロクソの評価だが、それ以上に国粋派には真の防人扱いされてるのが厄介である。聞いている弦十郎が苦笑いをし、オブザーバー扱いで呼ばれたウェル博士がげんなりした顔をしている。
「あの鬼の事は置いといて、いまは立花響を釈放するかどうかだろ。先生も待っているぜ」
その評価を中断させたのは斯波田事務次官だった。珍しくソバも食べずにいたので他の政治家も面を食らっている。
「そ…そうでしたな、早速会議をしましょう」
寂しくなった頭をハンカチで触りながら手元にある資料を見る。資料の内容は日本及び海外での隕石の大まかな被害と響達と死神博士の死闘のデータにウェル博士が入手したショッカーの作戦や技術の内容である。
「日本に比べて海外の被害が大きいな」
「暴動も起こっている。恐らくその被害も入れてるのでしょう」
「やはり…ショッカーと繋がっていた政治家や官僚、資本家が軒並み捕まったのも大きいだろう。まあこちらも何人かの政治家が死んではいるが…」
生き残ったネットの情報で世界の財政界の重鎮たちが軒並み逮捕されたのも大きいと言えば大きい。しかし、そればかりではない。中には国の経済を支えていた政治家や官僚も軒並み潰された事で各国の治安が崩壊しつつある。辛うじて国の体制は保っているが復活には時間がかかる。
当然、日本も無傷では済まなく何人かの政治家が死んで政界はパニックになっている。それでも他国と比べれば幾分かマシではある。
「だが、これでショッカーの実体も表に出て改造人間を作っていた中心人物、死神博士も倒し弱体化は余儀なくされる筈だ」
「…問題は、奴らが手段を択ばずテロに走る事なんだが」
政治家たちとしてはショッカーが弱体化するのは望ましい。寧ろ国際的犯罪組織である以上壊滅して欲しいのが本音だ。だが、自棄になって掌サイズの核爆弾でテロをやられては堪った物ではないのも事実だ。
「それから国連から非公式だが連絡が来た」
「国連?国連の連中が何を言って来たんですか?」
「特異災害対策機動部二課を解体して国連直轄にしたいそうだ。これなら日本国内だけでなく海外でも活動してもいいと言って来てる」
海外、特に国連とパイプを持つ政治家の一人が語る。世界に日本のシンフォギアの情報が流れた以上、国連としても放置は出来ない。何より、ショッカーの情報の所為で国連も繋がっていた職員が次々と逮捕されたのだ。ショッカーが暴露され二日三日経つが世界どころか国連すらボロボロであった。
「内政干渉という事で断れませんか?シンフォギアは日本の金で作った物だ。簡単に外国に流すなど…」
「いえ、向こうはシンフォギアを取り上げる気はないそうだ。まぁそんな元気はないでしょうね。彼らとしては世界を跨ぐ世界的犯罪組織ショッカーも何とかしたいそうです」
「…要は、体のいい番犬ではないか!!」
世界征服を狙うショッカーは日本だけでなく世界中に支部を持つ。日本の特異災害対策機動部二課はシンフォギアの力でショッカーの怪人と戦って来た。(一部例外あり)
だからこそ、世界ではショッカーを二つの見かたをしている。
即ち、現代兵器で倒せるか否かだ。ノイズには位相差障壁が存在し余程の大火力でもないと現代兵器でノイズを倒すのは不可能に近い。現れたら逃げるか生贄の人間を特攻させる以外、ある程度の時間経過でしかノイズの相手は不可能。日本の場合は、櫻井理論と了子が作ったシンフォギアのおかげでノイズを倒す事には成功している。
ならば、怪人はどうか?ノイズと違い、怪人は銃弾や爆弾は当たる、しかしノイズ以上の耐久性あるのも確かだ。少なくとも日本が公開したショッカーの怪人のデータにはそう記載されている。
そして、国連はショッカーに対して軍をぶつけるよりも日本のシンフォギアを方を選んだのだ。
尤も、それを聞いた政治家達はご立腹でもあったが、
「断るべきだ!これで受けては日本は世界の笑いものだ!」
「然り!自国は自国の人間が守るべきだ。第一、装者の殆どは未成年だぞ!」
「待て、そう決めるのは早い。下手に断れば国連での日本の立場が悪くなるかも知れん」
「…上手くいけば日本の発言力も高まる。という事ですか」
会議では、ほぼ半々の政治家が国連の申し出を受ける派と断る派に分かれた。
反対派は、一々日本から出て世界各国に派遣されては響たちの身体共にどう転ぶか分からない。何よりマリア以外は未成年だ。何より外国に派遣してる間に日本が被害を受けるのは堪った物ではない。
賛成派は、これが日本の名声に繋がると考えたからだ。国際上、日本は未だに他国に舐められてる事が多く、先のスカイタワーでの米国政府の独断がいい例だろう。独立国である筈の日本内部でこの様なことをされては本当にいい笑いものである。
「風鳴指令、君はどうなのだね!?」
反対派と賛成派の意見がぶつかり合う中、弦十郎にも飛び火する。見れば他の政治家も弦十郎に視線を向け集中している。
「じ…自分ですか?」
その光景に若干だがたじろぐ弦十郎。
「そうだな、我々がとやかく言っても仕方あるまい」
「特異災害対策機動部二課の指令である君の意見も聞きたいものだ」
それぞれの政治家の視線が『分かってるな?』という意志が感じて溜息を出し真っ直ぐ見つめる。
「自分は…受けるべきだと進言します。活動範囲が広がれば響くんたちが動きやすくなるのは確かですから」
その言葉に賛成派は胸をなでおろし、反対派は苦虫を嚙み潰したような表情をする。彼らの予想では護国の鬼である訃堂の意をくみ反対するものと思っていた。反対に賛成派の方はホッと胸を撫でおろす。
「俺としちゃ、先生の意見も聞きてえな」
その時、賛成派であった斯波田事務次官がオブザーバー役のウェル博士にも聞く。つまらなそうに見ていたウェル博士が「僕?」という反応をする。
「事務次官、それは越権行為では?」
「彼はあくまでもショッカーの内部事情を知るオブザーバーの筈ですが」
斯波田事務次官の言葉に反対派の政治家たちが反論する。只でさえ反対派が不利なのだ、これ以上の賛成派の有利は面白くも無い。
尤も、そんな反応をしても斯波田事務次官や他の賛成派の議員は無視したが、
「そうですね。僕としては賛成です」
「ほう…何でか教えてくれるか?」
「そこの脳筋…風鳴指令が言っていた活動範囲もそうですが…皆さん、今回のフロンティアが動いた場所がアメリカ本土の中心や中国の国内でしたら特異災害対策機動部二課は動けましたか?」
「…無理だな。フロンティアが浮上したのは海の上で比較的日本から近かったおかげでもある」
特異災害対策機動部二課は当然、日本の組織であり海外で動く権利なぞある訳が無い。
ウェル博士の言う通り、フロンティアがアメリカや中国、ロシア…或いは地球の裏側で日本の手が届かなければ当然、特異災害対策機動部二課が動ける訳が無い。
もし、ノイズの相手を出来る特異災害対策機動部二課が動かなければショッカーの野望も止めれたか怪しいのが事実だ。そして、ショッカーの野望が叶う時は人類が死滅する可能性が高い。
「ええ、ただの日本の一組織では不可能。
「…国連ならある程度は当事国の反対も無視出来る。ってことだな?」
斯波田事務次官や他の政治家もウェル博士の言いたい事が分かった。海外で活動するには特異災害対策機動部二課では不可能に近いが国連の一組織になればその無茶も出来る。
何しろ相手は神出鬼没のノイズに世界中で暗躍するショッカーだ。その程度の自由は握っておきたかった。
そして、それを聞いていた反対派の議員も賛成に傾きかけ、後はウェル博士に対する質問がある位だった。
その内容も、
「ショッカーの怪人はまだ要るのか?」
「マリア達の戦う映像を見た限り、僕の記憶では数体の怪人が姿を見せていません。それに彼らは死んだ怪人を蘇らせ再生怪人としても使役してるんです。考えるだけ無駄でしょう」
「ショッカーの元締めを本当に知らないのか?」
「残念ながら、首領を名乗る者は何時も鷲のレリーフから部下や大幹部に指示を送ってました。僕らがショッカーに居る間は影も形も見る事が出来なかった」
「立花響の体に何か細工はされてないのか?」
「…本格的に調べたいのならそれ用の検査機とか用意して下さい。恐らく、立花響の体を見れるのはショッカー以外では僕しかいないでしょうね。あとで要望書でも書いておきますよ」
こうして、大まかなウェル博士の質問が終わり、響も近日中に釈放する事となる。弦十郎とウェル博士や議員もその場を解散しようとした。
直後に、一人の議員の携帯が鳴る。死神博士の流れ星作戦で電波状況は果てしなく悪いが、完全に使えないでもなく太陽が顔を出せば元通りに使えることで持ち続けてるものが多い。
「何だ?…ノイズが酷くて聞こえんぞ!…中国…独断…ショッカー?…!」
電波状況の悪い中での報告に携帯に耳を傾ける議員の顔に汗が流れる。そして電話を終えた議員は真っ直ぐに弦十郎や斯波田事務次官に目線を送る。
「皆さん、今しがた入った情報です。中国が中国内にあるショッカーのアジトに解放軍を送り制圧する気のようです。ご丁寧にカメラを持ち込み、全世界同時中継するつもりですよ」
政治が難しい。
参考にしようにもシンフォギアや仮面ライダーに政治家の話すシーンは少ない。
斯波田事務次官と弦十郎が話した印象ぐらいしかない。
携帯とテレビは普通に使えます。ただし、流れ星作戦の所為で携帯はノイズ。テレビも画面が途切れることが多くなりますが。
原作だとマリアを死刑にしようとしたり、GXでは脅迫した米国政府ですがこの世界ではそんな元気はありません。普通にマリアに泣きついて来ます。
恐らく、今年の投下はこれで終わりだと思います。
来年もよろしくお願いします。21年 12月26日
…寒い