━━━…此処は、何処だろ?
ヒビキが目覚めると体を起こし辺りを見回す。その際、掛けられていた毛布が横にずり落ちた。
ずり落ちた毛布に一瞬視線を向けるが直に部屋の中も見渡す。
「私の…部屋…?」
此処が寮の自分の部屋だと気付くがヒビキは違和感を感じていた。
何時の間にか自分が寝ていた事に不思議に思い、傍にあった時計を覗き込む。
「深夜…な訳ないか…」
カーテンで仕切ってる窓からは太陽の光が入り時間が夕方だと確信するヒビキ。
いくら何でもこんな時間まで寝てる筈もなく、服装も外に出かけるようのパーカーのままだった。汚れた後付きなのがちょっと泣けてくる。
「おかしい…何時もはろくに眠れてない筈なのに…!」
━━━思い出した!
寝ぼけた頭のヒビキだがやっと思い出した。
セミの化け物や黒づくめの男達が自分を殺そうとして、同じ顔と同じ名前を持つ自分と瓜二つの少女に助けられたことを。
ヒビキは居ても経ってもいられなくベッドから起き上がり部屋を出る。目的の場所は響を寝かせていた部屋だ。
引き戸を音を立てて開ける。
其処には予想通り目的の少女、立花響が居た。居たのだが…
「なに散らかしてるの?」
「あ、ごめん!もう直ぐ終わるから」
響が新聞や情報雑誌を広げてそれぞれに目を通している。あまりにも真剣な姿で見ているので声が欠け辛く感じ、床に落ちている雑誌を手に取って広げて見た。
「こんなの…私買ってないけど…日付は…一週間前?」
「…アナタを運んでる途中にゴミ捨て場で見つけて…」
響の返答を聞いて初めて雑誌から据えた匂いがしてる事に気付いたヒビキは手に持っていた雑誌を投げ捨てた。
「…最悪」
響の予想外の行動にヒビキはそう呟いた。
「…それで?何を調べてるの」
あの後、手が二チャッと感じたヒビキは手洗いをした後に再び部屋に来て雑誌や新聞を広げている響に質問する。響は視線を向けず調べ物をしたままだが、質問に答えるように口を開く。
「ちょっと気になる事があって…ねえ、今日って何月何日?」
「今日?確か×月〇日だけど…」
「…やっぱり」
ヒビキの言葉に一人納得する響。
気になったのか、ヒビキは一人納得している響に質問する。
「やっぱりって?」
「テレビの時は気付かなかったけど、私の記憶が確かなら今月はまだ●月なの」
「三カ月前?」
響の最後の記憶はショッカーアジトに単身乗り込みスーパー破壊光線砲を絶唱で相殺した日だった。
しかし、目を開けて見ればそこは三カ月も時が過ぎた東京。
自分と同じ顔同じ姿同じシンフォギアを持ったタチバナヒビキに隕石やショッカーとの戦いでボロボロになった筈の街がきれいに元通りになり、それどころか世界中に降り注いだ筈の隕石も無くなりショッカーの存在すら雑誌や新聞から消えている。
「ねえ…」
「なに?」
「アナタはあのセミミンガ…怪人を見たのはアレが初めて?」
「………」
未だにセミミンガに恐怖してるのかヒビキ黙ったままで静かに頷いた。
そして、響はその様子うを見てある一つの結論にいく。
「やっぱりこれって…」
「何か分かったの?」
「うん…今はまだ憶測だけど…」
響の口から出た言葉はヒビキの予想を超えた物だった。
薄暗い大部屋。
壁には左を向いた鷲が地球の上に描かれたマークが描かれ、その場に何人もの人影が蠢いている。
骨のマークが付けられた黒タイツ黒マスクの戦闘員も多く居るがそれ以上に目立つのは人外の者達だ。
その中には嘗て響達に倒された物まで居る。
「ふん、集まってるようだな」
そんな中、一人の声が聞こえ、それぞれが上を見ると一人の男がモニター近くに立っている。
「地獄大使、ご命令により戻りました」
アブルルルルッ!
キィーリィーッ!
ニィーチッ!
人外の一人…怪人がそう言うとそれぞれの怪人も鳴き声などを上げ、地獄大使がそれを見つめ居ていた。
「しかし、地獄大使。何故我らを呼び戻した?」
「偵察の途中だったんだが」
「本部と連絡はついたのか?」
怪人達から口々に地獄大使への質問が飛ぶ。
その様子に地獄大使は持っていた鞭を地面に叩きつける。
「落ち着けッ!先ずはこれを見るがいい」
そう言って地獄大使はモニターに指をさす。モニターには洞口や林の様子が映り丸で自然を紹介する番組を見てる気分になった。
その映像を見て嫌な予感を感じる怪人達も続々と出始まる。
「ワシの記憶が確かなら此処に本部があり首領を始めとした親衛隊も居る筈だが…ワシがついた頃には本部の影も形も無い。放棄したにしては人工物があった形跡すら見つからん」
「…つまりどういう事だ!?」
「落ち着けと言っておろう!各支部との連絡不能、消えた本部、何時の間にか復興した街。極めつけはこれだ!!」
地獄大使の言葉と共にモニターにアル物が映る。
「…月?」
「ただの
モニターに映ったのは真ん丸とした月だった。見る人間が見れば見事な満月と言えるが怪人達にそんな風流を感じる気はない。月の映像が流れたからといってどうしたという反応だった。
その時、一人の怪人が何かに気付く。
「…待てぇ!おかしいぞ」
「何がだ?」
「月が欠けていない!!」
そう。モニターの映像は
ルナ・アタック。約数カ月前に起きたフィーネの造り上げたカ・ディンギルの砲撃により月は欠け欠片が隕石群となり月の周りを回っている筈であった。
しかし、映像の月は欠けた様子もなく満月のままであった。
「地獄大使、これは一体…」
「ワシも空を見上げるまで気付かんかった。間違いなく月が欠ける事も無い本物の満月だ」
地獄大使の言葉にその場に居た怪人や戦闘員がざわつく。
欠けていた筈の月が元に戻っている。人間が何かした訳ではない筈だ。ならシンフォギア装者が?と考える怪人たち。
その怪人達の様子に地獄大使は再び口を開く。
「優秀な頭脳を持つショッカー科学陣により調べさせたが、現状二つの可能性が考えられるそうだ」
「二つ?それは一体…」
「一つはルナアタックが起きる前の世界に来た可能性だ、所謂タイムスリップと言う奴だ。フィーネがカ・ディンギルを撃つ前ならば月も元に戻っていると言う事だ」
その答えに怪人や戦闘員の一部が納得する。何らかの要素でタイムスリップしたのなら、その可能性も高いと考える。
恐らく、原因はスーパー破壊光線砲と立花響が歌った絶唱がぶつかった時に発生した虹色の光だろう。
しかし、一部の怪人は違うと直感する。
「尤も過去に来た可能性は低い。それなら本部はあの場所にある筈だからな。余程の事が無い限り本部を他に移す事も無いしワシの記憶にそんな物はない。それに、捕らえた現地人を尋問したところ過去どころか三カ月も過ぎている」
過去ではなく未来。
三カ月の間、全員が気絶していた筈はなく、基地の損害も最低限で済んでいる。
それに世界にショッカーの存在を知られた以上放置されたとは考えられない。
「そして二つ目は科学陣が最も有力視している。それは…」
「並行世界?」
「うん、前に未…親友と見に行った映画でそういう話をしてる話を思い出したの」
それは、響がショッカー拉致される数カ月前に見た映画の話だった。
その映画では事故によりもう一つの世界である並行世界に流れ着いた主人公が亡き妻と会い元の世界に帰るかの選択を迫られる内容だった。そこでは元の世界で起こった大事件は発生せず別の事件となり時が流れているのだ。
主人公は、最初は並行世界に戸惑った様子がまんま自分のように感じられる響は此処が並行世界だと考えたのだ。
尤も、言われたヒビキは響を可哀そうな目で見ていたが、
「並行世界なんて…ドラマや映画じゃないんだから…」
「…私も最初は有り得ないと思った。ショッカーや今までの戦闘がただの夢でアナタはただ私に似ている同姓同名のそっくりさんだと思おうともした。…でもアナタも見たでしょ、ショッカーの改造人間セミミンガや戦闘員を」
「…それは」
『このセミミンガ様を忘れたか?此処で会ったが百年目、今度こそ地獄に送ってくれる!』
『愚かな人間よ、死ねぇ!!』
『随分と呆気ない、貴様の首はこのセミミンガ様が頂いた!』
あの時のセミミンガとのやり取りを思い出しヒビキは身をすくめて抱きしめる様に両手で自分の体を抱く。
少なくともセミミンガはヒビキの事を敵視し殺意すらあった。
その恐怖や逃げる時に足が縺れて倒れた時の痛みを思い出し夢ではないと確信する。
「最後に傷」
「…傷?…!?」
ヒビキにそう言うと、響は来てる服の襟部分を引っ張りある物を見せる。
それは、ツヴァイウイングのライブの時に受けた傷であり天羽奏のシンフォギア、ガングニールが砕けた時に刺さった破片だった。
傷を見せられたヒビキは、無意識に自分の胸部分の中央をさする。
全く同じ傷跡がヒビキの胸にもあるのだ。
「この傷は翼さんや奏さん、ツヴァイウイングのライブの時に負った傷だよ」
「!? 私と同じライブ!?」
「全く同じかは分からない。でも奏さんが守って砕けたガングニールの破片が刺さったのは私だけの筈だよ。アナタは?」
「…あの時、私以外に近くで負傷した人はいない」
そう。
天羽奏が守ったのは一人であり、それは立花響だ。他の人間はノイズに殺されたか、ノイズから逃れる為パニックになり出入口や非常口に向かったかだ。
響もヒビキも自分の周りに怪我した人が居た記憶はない。尤も、緊急事態だったため確かかと問われれば苦しいが。
二人が全く同じ傷がある現実は変わらないのは確かだ。
並行世界。ヒビキとしてもにわかには信じがたい事だが現に自分と同じ立花響が目の前に居る。
━━━並行世界なんて信じられない!でも、私そっくりの娘に怪人と呼ばれる怪物たち。…それじゃ…
ヒビキの呟きに今まで何とか笑っていた響も笑みが消える。
そんな響の変化に気付かないか気付いても無視してるのかは不明だがヒビキの口から次々と響に対する怨嗟に近い言葉が出る。
「アンタがあいつ等…ショッカーって組織とこの世界に来た所為で私も命が狙われる事になったんだ!!関係ない筈の私が……皆アンタの所為で!!」
ヒビキの人生はツヴァイウイングのライブで壊れたと言っていい。
生き残った事でバッシングされ、生存者という事で嘗ては仲の良かった筈のクラスメイトからも迫害。近所でも嫌がらせをしてくる者が現れ家族はノイローゼになってしまった。
それでもヒビキは生きていた。一度はノイズに殺されてもいいと考える程には追い詰められてはいたが、ガングニールのシンフォギアを手に入れてからはノイズと戦って来た。
殆どはノイズに対する復讐心で戦って来たのだろうが、少なからずヒビキが救って来た人が居るのも事実だ。
そんな日々を過ごしていたヒビキがある日、突然命を狙われることになったのだ。
「何で私までアンタのとばっちり受けないといけないの!?殺し合うなら他所でやってよ!」
「………」
ヒビキの言葉に響は何の反論もしない。
何となくだがヒビキの気持ちも分からなくない響。突然、悪の結社に命を狙われ理不尽に襲われたのだ、突然拉致され改造人間にされた響も同じような感覚だったかも知れない。
━━━私だって来たくて来た訳じゃないんだけどなぁ…
響も決して並行世界に着たい訳ではなかった。ショッカーのスーパー破壊光線砲から日本を守る為に絶唱を歌い気付いた時にはこの世界に着てしまった。ここでも響は選択する事すら出来なかった。
その後も、ヒビキの文句は続くが、
「! …ごめん、少し頭を冷やしてくる」
言い過ぎたと思ったのか急に冷静になったヒビキが部屋を後にする。
ふと溜息をついた響も散らばった古新聞や雑誌を集めて縛りゴミ捨て場に捨てに行く事にした。
特異災害対策機動部二課。
私立リディアン音楽院高等科地下に作られた対ノイズの為に結成された政府機関。
その指令室にて、メディカルチェックを終了した翼、クリス、マリアが司令官である風鳴弦十郎と話している。
「体の調子はもういいのか?」
「ええ、シンフォギアのお蔭で少し火傷した程度よ」
マリアの発言に翼とクリスも首を縦に振り弦十郎始めとした職員たちもホッと胸を撫でおろす。
カミキリキッドの放つ火炎や電撃を受けてもシンフォギアのバリアフィールドの性能は高く装者の体を守っていた。尤も火炎が直撃していればバリアフィールドが持ったかは不明だが。
「だが、これでハッキリした。あのカミキリムシはアタシ等の事を知っている!」
「フロンティアにエクスドライブまで知っていたわね」
「私にはそれが何だか分からんが、連中はそんな事おかまいなしか」
「…困ったものだ。敵は君達に恨み骨髄で下手なノイズを遥かに超える強さに残酷さ」
そう言って、弦十郎はモニターに映し出されてる映像を見る。
指令室のモニターにカミキリキッドの姿と多数の戦闘員に彼らが「ショッカーノイズ」というノイズの姿も映っており、最後にはショッカーノイズが取り付いた人達の姿も映る。
「…クソ…」
クリスが思わず顔を顰めた。ノイズと戦ってる以上、人が死ぬのを見るのは初めてではないが慣れる物では無い。更に言えばこの様にして殺されるのは初めて見た。
「ショッカーノイズ…」
「一般人を巻き込むことを躊躇いもしないか。悪辣過ぎる!」
「組織の名はショッカーか、何か分かったか?」
ショッカーの名を呟いた弦十郎オペレーター席に座ってるこの世界の藤尭朔也と友里あおいに何か情報が掴めたか聞く。
「…駄目です。該当する物が何一つありません」
「…こちらもです、国際的犯罪組織の線を洗いましたが…」
「そうか。…君達はどうだ?」
帰って来た言葉に弦十郎は肩を落とす。アレだけ堂々としていたのだ、こっちの世界で行動していれば何かしらの情報が掴めるかと思ったが結果は何も無し。
そこで、弦十郎は並行世界から来たクリスとマリアに聞いてみた。
「…知らねえ」
「同じく、ショッカーなんて組織は初めて聞いたわ」
結果は同じではあったが。
その様子を見ていたマリアが続けて口を開く。
「連中は私達だけじゃなくて二課に所属していない立花響も狙っているわ」
「!そうだ、アイツは無事なのかカミキリムシの奴が仲間が襲ってるって言っていたぞ!」
「…正直、何も掴めていないのが現状だ。破壊された廃ビルを調査している警察官の報告では行方不明になった婦警の制服しか見つからんかったようだ」
その報告にクリスはヤキモキしつつ街中を探すべきかと考えた。
その時、オペレーター席に座っていた友里あおいがある報告をする。
「その事なんですが妙な反応が…」
「妙な反応…」
「はい、実は翼さん達が戦ってる時にガングニールが三回起動したらしく…」
そう言うと、あおいはコンソールを弄りモニターに映る地図に二つの点を付ける。
一つは間違いなく崩れたビルのある路地裏だった。そして、もう二つは場所が違うが路地裏から少し離れた所にある。
「三回?」
「アイツ、三回もシンフォギアを起動させたのか?」
「それが、ノイズが少数ですが路地付近にも出現していて立花響さんはそれを相手にしていた可能性が…」
特異災害対策機動部二課の予想ではノイズを相手にしていた響がノイズを倒してシンフォギアを解除した直後にショッカーの襲撃を受けて再びシンフォギアを纏たのではと予想する。
「それでも…三回?」
「正直、怪物たちからもガングニールの反応がしてるので確かとは言えませんが、特に強い反応がこれでして…」
「結局、何も分からないと言う事か…」
弦十郎の言葉に皆が溜息をつく。ノイズや変わってしまった立花響に新たなる敵ショッカーの存在は特異災害対策機動部二課やクリスとマリアに重く圧し掛かる。
クリスとマリアもノイズ以外と戦って来たがカミキリキッドの強さや残虐性はトップクラスと言っていい。
「アイツの情報はまだ集まんないのか?」
「アイツ?…ああ、立花響くんの情報か。すまない、何しろ昨日の今日だからな」
特異災害対策機動部二課としても、立花響の消息や背後関係などを洗っていたが時間が短い事もあり碌に情報が無い。
済まなそうな表情をする弦十郎を見て何度目かの溜息をつくクリスにマリアは言う。
「これは一回戻って本部に報告した方が良いわね」
「また、トンボ返りか!」
「ある程度、敵の情報を手に入れたのよ。本部に報告するなり救援を送ってもらった方が良いわ。切り札はなるべく残して置きたいし…」
マリアの言葉にクリスは反論できずにいる。
強敵のカルマノイズもそうだがカミキリキッドの戦闘はかなり危なくほぼ圧倒されていた。
自分達も切り札があるとはいえ多く選択できる事は悪い事ではない。
二人が、また自分達の世界に戻る事を決意する。
直後だった。
ヴ~~~~~~~~~~~~~!!!
特異災害対策機動部二課本部に突如サイレンの様な物が流れ職員たちが慌ただしくコンソールを弄る。
「何事だ!?」
「が…外部からハッキング!!何者かが本部のシステムに入り込んでいます!!」
「モ…モニターとスピーカーが乗っ取られました。映像来ます!!」
非常灯の明かりが飛び交う指令室にクリスやマリア、それどころか翼ですら何が起こったのか分からずオペレーターの二人の報告の直後、指令室のモニターに突如虫の様な触覚を生やした被り物らしき物をしている男性が映る。
「「「………」」」
「な…何者だ?」
皆が唖然とする中、弦十郎だけが何者だと聞いた。
それを見ていた男は口の端を引きつらせる。
やっと響とショッカーが此処が並行世界ではと気付くました。
響の部屋ですが、無印を見る限り二段ベッドでドアといったしきりが無さそうですね。XD見ても、ヒビキの部屋は使いまわしされてる絵だし未来が居ないのでドアがある部屋ということで。
そして、地獄大使は何のために特異災害対策機動部二課にコンタクトを取ったか。