改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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80話 改造人間

 

 

 

「うわああああああ!!」

 

特異災害対策機動部二課本部の指令室に男の悲鳴が木霊する。翼やマリアと共に死神カメレオンと戦っていた黒服の一人が死神カメレオンの舌に胸を貫かれたのだ。

黒服の一人の悲鳴が木霊する中、何発もの銃声が響く。

尤も、姿を現した死神カメレオンの体は再び消えてしまった。

 

「撃てぇ、撃てぇ!!」

「止めろ!弾が跳弾して余計危険だ!!」

 

本部に侵入した死神カメレオンを排除しようと警備部の人間や黒服たちが拳銃を撃つが弦十郎が本部の内部という事で止めに入る。

弦十郎の言った通り、銃弾が壁に当たり跳弾となって辺りに散らばる。

 

死神カメレオンが本部に姿を見せて数分も経っていないが特異災害対策機動部二課は苦戦を強いられていた。拳銃程度の火器では死神カメレオンの体に傷一つ付ける事も出来ない。

しかし、場所が地下深くの、それも指令室という事でこれ以上の火力を持ち込む事も出来ない。

それゆえに、

 

「こんにゃろおおお!!」

 

クリスがアームドギアをガトリング砲に変えて腰のパーツから小型ミサイルのポッドを出すが、

 

「止めなさい、クリス!アナタの火力じゃ指令室が崩壊して皆生き埋めになってしまう!!」

「!?」

 

マリアの言葉にクリスが攻撃を中止する。

クリスのシンフォギアの特性は火力による制圧であり、ガトリング砲や小型ミサイル、または大型ミサイルなどの遠距離武器で敵を倒して来た。

しかし、その火力故にクリスのアームドギアと地下深くの指令室とは最も相性が悪いと言えた。

結局、クリスはアームドギアをボーガンに戻して死神カメレオンを牽制する事しか出来ない。クリスは完全に自身の火力を封じられた。

 

ならば、翼とマリアはというと、

 

「ハアアアアっ!!」

「貰ったぁ!!」

 

翼とマリアが剣を片手に死神カメレオンへと斬りかかる。特に避けたり防御する仕草を見せなかった死神カメレオン。このまま二人の剣が死神カメレオンに当たるかと思えたその時、死神カメレオンが一瞬にして消えて二人の攻撃が素通りする。

 

「クソっ!」

「またテレポート!?」

 

翼とマリアの口から愚痴が零れる。死神カメレオンは一瞬にして姿を消したのは一度や二度ではない。

指令室での戦いにより翼やマリアの攻撃は悉く死神カメレオンに避けられてしまって居る。

死神カメレオンのテレポートに苦戦している。

 

アァッアッアッアッ!

 

「!? ッグ!!」

 

背後から不気味な声に咄嗟にジャンプした翼だが、何かが素通りした時に肩から出血する。

間違いなく死神カメレオンの舌だ。

 

「翼!」

「心配するな、ただのかすり傷だ」

 

マリアの心配する声に翼がそう答える。

尤も、翼だけでなくマリアやクリスの体にも翼と同じ幾つもの傷がついている。

 

「アァッアッアッアッ…見たか、これぞショッカーによって強化されたカメレオンの能力よ」

 

「カメレオンはテレポートしねぇえええええ!!!」

「カメレオンって実際には体を保護色にして背景に溶け込んでるだけの筈よ!」

 

死神カメレオンの発言に思わずツッコムクリス。マリアも実際のカメレオンの生態を話して死神カメレオンのような能力でない事を指摘する。

 

「浅はかな人間らしい愚かな発想だ、実に貧困だな」

 

尤も、死神カメレオンも透明のままそう返答する。

 

「チッ!」

「好き勝手言ってぇ…」

 

死神カメレオンの言葉に舌打ちするクリスとマリア。相手の姿が見えない以上お互いの死角をカバーし合う。

その時、クリスの視界に拳銃を持った弦十郎の姿が映る。

 

「オッサンは素手で戦えないのか?」

「無理言うな!俺の腕っぷしは最低限の護身術程度だ!」

 

その言葉にクリスは内心舌打ちをして改めて警戒する。

 

「それが人間の限界と言う奴だ。偉大なるショッカーは人間の常識を遥かに上回る。やはり、地球は人間なぞより我らショッカーが手に入れるに相応しい。ついでにいい情報も得た、風鳴弦十郎は戦力にならんようだな」

 

「へっ、大口叩きやがって!」

「どっかの異星人を思い出すわね」

「…世の中、悪の栄えた試しは無いって言葉を知らないのか?」

 

クリスが唾棄する様に言い、マリアは嘗て戦った敵を思い出し翼が辺りを見回して強気な発言をする。

とはいえ、姿も捕らえられない敵を相手にしてるのだ。ここまで戦い辛い相手も珍しいと感じる二人。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

再び指令室内に悲鳴が木霊し皆が声の発生源に目を向ける。

そして、クリス達が見たのは銃を構えていた黒服の頭を背後から掴み握り潰す死神カメレオンの姿だ。

その光景にクリスやマリアだけでなく指令室に居る全ての職員が奥歯を噛み締める。

 

「この世界もショッカーが貰い受ける。だが、ショッカーが支配する世界にシンフォギア装者などもういらん。この場に居る者、須らく皆殺しだ!」

 

━━━もういらん?

「やれるもんならやってみろぉぉぉぉ!!」

 

死神カメレオンの言葉に引っ掛かりを覚えるマリアだが、応急処置をした翼がアームドギアの剣を片手に死神カメレオンに斬りかかり、クリスもボーガンで援護する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小雨が降る路地裏。

 

「カハッ!?」

 

ガングニールのシンフォギアを纏ったヒビキが路地の壁に叩きつけられゆっくりと地面に落ちる。

ヒビキの周りはまさに荒れ放題といえる位激しく所々ヒビ割れている。

そんなヒビキの下に近づく者がいる。

 

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒ…やはり俺達と戦って来たオリジナルより弱いな」

 

下卑た笑い声をしてサボテグロンがヒビキを見下す。

セミミンガの時の様に逃げはしなかったヒビキだが、やはりノイズと怪人との違いに戸惑いサボテグロンの武器であるサボテン棒に滅多打ちにされてしまった。

ノイズとだけ戦って来たヒビキが怪人と戦う事などほぼ初めての上にサボテグロンを始めとした怪人達はシンフォギア装者との戦いに慣れ切り、怪人と碌に戦った事が無い装者など敵でもない。

何とか睨みつけるヒビキだがサボテグロンには何の効果も無い。

 

「私が…アンタたちの追ってる…立花響じゃないって…知ってる癖に…」

 

口の中が切れたのか端から血を垂らしつつサボテグロンに話しかける。

 

「どからどうした?「自分は関係ないから助けて下さい」か?出来ん相談だ!言った筈だ、我らショッカーに逆らった者は何者であろうと地上から抹殺する!とな。これは決定事項だ、ついでにオリジナルの立花響も必ず見つけ出して殺す!」

 

「ど…どうしてそこまで…」

 

ヒビキには信じられなかった。人殺しになんの躊躇いもないのもそうだが、サボテグロンから溢れる程の殺意に背筋が寒くなる。

戦闘はノイズしか経験がないヒビキでも恐れる程の殺気に思わず声を出したのだ。

 

「知りたいのなら後で地獄に来るオリジナルから聞くのだな。それでは死んで貰うぞ」

 

「アグッ!?」

 

ヒビキが苦しそうな短い悲鳴を上げる。

サボテグロンがヒビキを無理矢理立たせる為、髪を掴み持ち上げたのだ。

激痛とサボテグロンの力に立ち上がらされたヒビキは痛みに耐えきれずサボテグロンの腕を振り解こうともがく。しかし、怪人であるサボテグロンの力の前にビクともしない。

 

「弱々しい抵抗だ。お前が本当に立花響か疑う程にな、…待てよ、アッサリ殺しても面白味が無いか?」

 

何かを思いついたサボテグロンは髪を持ち上げてる腕を振り、ヒビキを地面へと投げる。その際、ヒビキの頭部から「ブチィブチィ」と言う音が聞こえ宙に何本ものヒビキの髪が舞う。

 

「痛っ!…一体何を…」

 

「ちょっとしたゲームをしようじゃないか。内容はそうだな…俺から逃げ切ればお前の勝ち。逆に俺のサボテン棒に殺されればお前の負け。言わゆるハンティングゲームと言ったとこだ、シンプルだろ?」

 

サボテグロンの発言にヒビキはまたも背筋を寒くする。サボテグロンが自分を直ぐに殺さず嬲るつもりなのを理解したからだ。

事実、サボテグロンは姿形が似ているヒビキに憂さ晴らしするつもりだった。少しずつ追い詰め手足を失ったヒビキを最後に殺し、その死体をオリジナルである自分達がこの世界に来た元凶と思われるオリジナルの響に見せつけるのだ。

 

「それ、逃げて見ろ。ドブネズミのようにみっともなくな!」

 

 

 

 

 

 

怪人が私に逃げろって言ってくる。たぶん、言葉通り私を徹底的に追い詰めて殺す気だ

…死にたくない…セミの怪人の時もそうだったけど、私がこんなに生きたがりだとは思わなかったな

それにしても、向こうの私はとんでもない奴等に命を狙われてるみたい。…正直逃げたい

でも!

 

「ほう?逃げず俺と戦おうと言うのか」

 

私は拳を握り構える様にサボテン男に向き合う。その事にサボテン男は私に感心したようだ。

正直怖い!ノイズとの闘いじゃこんな殺意なんて感じなかった。だとしても!

 

「私は…もう逃げない!お前達からこの世界を守る!」

 

今までこんな世界に価値があるとは思わなかった。ツヴァイウイングのライブ事件の後から世間は生き残った私達を叩き友達も離れて家族もバラバラになった

そして、自棄になった私は極力他者との関係を断ってきた。それに関しては後悔はないつもりだ

でも、お節介なクラスメイトに私を助けようとした婦警さん。…そして赤い銀髪の娘に並行世界から来たという私…

今なら、分かる気がする。この世界も捨てたもんじゃないって事が。だから…

 

「お前達にこの世界を渡すもんか!!」

 

「フフフ…さっきより目に力が入ったか。いいぞ、そう奴は好きだ。貴様が覚悟を決めたのなら改めて名乗ろう、俺の名はサボテグロン」

 

サボテン怪人が名乗った。ほぼそのまんまだなと言うのが私の感想だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私はサボテグロンと改めて戦う事になった。が、

 

「アグッ!? グブッ!? エグッ!?」

 

「どうした!どうした!拳も動きも遅い!ド素人丸出しの動きだぞ!」

 

幾ら戦う事を決心したとはいえ、相手はノイズじゃない怪人だ。ノイズなら蹴散らせる拳も蹴りも全て避けられたり防がれたりして逆にカウンターを決められてしまう。ハッキリ言って滅多打ちにされた

セミの怪人で分かっていたけど、コイツ等ノイズより遥かに強い!改めて向こうの私はよくこんな相手と戦えるなと他人事のように考えてしまう

ノイズなら基本的には単純な攻撃や体を伸ばして突進する事が殆どだが、サボテグロンは違う。フェイントを混ぜた棍棒の攻撃に足払いや棍棒を持っていない方の腕での手刀や拳

ノイズしか戦ってこなかった私じゃ手も足も出ない

 

「そして、また隙が出来る!」

 

「!?」

 

私が必死に動いてる隙を狙ってサボテグロンの棍棒がお腹に!?ゴリッって音が!?

 

「アガ…アア…ゲボ…!」

 

…苦しい…息が…

 

「気合があろうが…所詮この程度か。オリジナルに比べ遥かに弱いな」

 

倒れている私を見下すサボテグロン。その目は「期待外れ」と書かれている。やっぱり私じゃ無理なのかな?心を奮い立たせても強くなんてなれない…

でも、そんなの関係ない。私がやらなきゃ…またあの娘…もう一人の私にだけ戦わせるのは駄目だ!

 

「ふん…俺のサボテン棒を受けてまだ立ち上がるか」

 

息を整えて私が立ち上がるとサボテグロンはまたも感心したような声を出した。正直、観察されてる気分がして仕方がない。正直、横になったままになりたいけど…そんなの許されない!

ここで立ち上がれなかったら私は私じゃなくなる!私だって戦え『キィィィッ!』…!?

 

突然背後から不気味な鳴き声と何かを砕く音がして振り向こうとしたけど、とてつもない力が私の体を押さえ付けた!

 

「何のつもりだ、ドクモンド!この立花響は俺の獲物だぞ!!」

「黙れっ、サボテグロン!こういうのは早い者勝ちだ!俺の掘った穴に引きずり込んで食い殺してやる!!」

 

サボテグロンの仲間!?新手が現れるなんて!?

私が何とかドクモンドと言われた奴の拘束を解こうと暴れる

 

「このっ!」

 

「それが抵抗のつもりか?片腹痛いわ!」

 

私の足がドクモンドの体を蹴るが体勢の所為か大してダメージになっていない。それどころか私の体は少しずつ何時の間にか開けられた穴に引きずり込まれる!

そして、私はドクモンドの姿を見た

それは巨大な緑色の目をし首元には黒い体毛を生やして蜘蛛のような牙を持っている

 

「キィィィッ!それにしても立花響と本当にそっくりだな。実に美味そうじゃないか!」

 

「美味そう!?」

 

コイツ、私を食べる気!?「食い殺してやる」は比喩でも何でも無かった!?

 

「知ってるか!?サボテグロン。若い女の血肉は格別に美味いそうだ!」

「チッ…グルメ評論家気取りか?人食いが」

 

文句を言っていてもサボテグロンがドクモンドを追い払おうとしない!?そうか、仲間だから基本争わないだけか!

つまり、ドクモンドが私を食い殺すのは確定!?

 

「嫌だ…嫌だ!こんな化け物に食べられたくない!!死にたくない!!」

 

食い殺される!そう考えた時の私の口から声が出ていた

生きたい!それが今の私の想いだ!ノイズに殺されるのは覚悟していた筈なのに化け物に食い殺されるのは嫌だ!

でも、いくら抵抗してもドクモンドの拘束を解く事が出来ずに逆に穴に引きずり込まれ既に腰まで埋まってしまった!

駄目だ、逃げ出せない。これじゃあの娘…もう一人の私に謝れない

 

『全部、アンタの所為だ…』

『殺し合うなら他所でやってよ!』

 

脳裏に私がもう一人の私に言った暴言が木霊してくる。走馬灯ってやつかな?

私の人生ってやっぱり碌でもなかったな…

 

「ゴメン…ね…」

 

今更謝っても許されない。それは頭でも分かってはいる…それでも私はもう一人の私への謝罪の声が漏れた

せめて…生きて謝罪したかった…

 

「誰に対する謝罪かは知らんが年貢の納め時と言う奴だ!それでは頂くとしよう」

 

とうとう首元まで引きずり込まれて私の頭にドクモンドの手が触れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きる事を諦めないで!!!」

 

「キィィィッ!?」

 

あの娘の声と共に私を押さえ付けていた力が無くなった!?後ろを見ると空中に吹き飛ぶドクモンドの姿が…それに…

 

「フウッ、間に合った!」

 

私と同じ姿をし同じ鎧を纏っているもう一人の私が…

 

「…何で…助けたの…」

 

あれだけ酷い事を言ったのに…アンタの事情はそれなりに知っていたのに…

 

「…私さあ、皆からお人好しだとか言われて…前にショッカーに捕まった親友…友達二人にも同じような事を言われた気がするけど…これは私がやりたい事なの!」

「…やりたい事?」

「ショッカーやノイズに襲われてる人が居たら一分一秒でも早く助けたい。最速で!最短で!真っ直ぐに!」

 

そう言ってもう一人の私は拳を突き出す。私にはそれが眩しく見えた

それにさっきの言葉「生きる事を諦めないで!」…。私も静かに頷き立ち上がる

 

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒッ!オリジナルも来たようだな、面白くなりそうだ!!」

「キィィィッ!よくも俺の食事の邪魔をしたな!殺してやるぅ!!」

 

もう一人の私の姿を見つけたサボテグロンが笑いながら近づき、私を食べるのを邪魔されたドクモンドが激昂した声を出して近づいてくる

…ハッキリ言って状況は絶望的だ。でもどうしてだろう?

背中が暖かいとさっきまでの絶望が嘘のようだ

 

「コイツ等は私が引き受けるからアナタが逃げて!」

「…嫌だ」

「!?」

 

もう一人の私が私に逃げてと言うが断った。断った瞬間、もう一人の私の顔の表情が面白かったのは内緒だ

 

「…私も戦う!」

 

それが私の返事だった

 

 

 

 

 




対戦ゲームだと檄弱な死神カメレオンですが、場所によってはとんでもなく凶悪です。あまり出番は無いですが壁抜けも出来ます。
戦う場所が指令室という事でクリスの火力が封じられました。劇中だと深淵の竜宮も壊してるから仕方ないね。

サボテグロンは劇中だと仮面ライダーとの戦いを楽しみにしていたので今回は少々武人肌になってます。
そして、ショッカーは自分達と同じ改造人間となった立花響の方をオリジナルと呼んでます。立花響と呼ぶとややこしいからだと思われます。
この世界の立花響がドクモンドに文字通り食われそうになりました。アイツ、劇中でも二人ほど貪り食ってるらしいです。

ピンチのヒビキをまたも救う響。ある意味鉄板だろうか。
怪人と戦う響の発言を聞いてこの世界のヒビキも戦う事を決意。
尚、怪人戦は素人のためまだ弱いです。
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