━━━昨日も響は見つからなかった
ある晴れた日の学校、私立リディアン音楽院高等科。
少女達が挨拶したり談笑を楽しんだりしているが一人の少女はそんな気分になれず机に伏していた。
小日向未来
行方不明となった立花響のたった一人の親友だった。
響、何処に居るんだろう?
私もおばさん達も心配してるんだよ
口の悪い人はノイズに殺されたとか男をつくって逃げたなんて言うけど響がそんな事する訳ない!
そんな響が一年半前に煙の様に消えてしまった
きっと何かあったんだと思うけど警察も未だに何も見つけられず、ワイドショーも情報提供を呼び掛けつつ憶測でものを言って私やおばさん達を傷つけるだけだった
駅前や、人通りの多い場所でチラシ配りをして一年
何の成果も無く、寧ろツヴァイウイングの惨劇の被害者の遺族が私達に怒鳴り散らす
おばさん達はみるみる痩せっていった
私は学生だからっておばさん達が手伝わせてくれるのは休日くらい
響…逢いたいよ。逢って抱き締めたいよう
もう、逢えないなんて私は嫌だよ…響!
「ヒナ、何か手掛かりあった?」
声のした方を見ると三人の友人が私に話しかける
声を掛けたのは黒鉄色のショートカットが特徴的な安藤創世さん
もう一人が、長い金髪が特徴の寺島詩織さん
最後の一人がツインテールの板場弓美さん
「ちょっと、大丈夫なの?」
「あ、うんごめん大丈夫」
弓美の言葉にそう返す
正直、ちょっと寝たい
「その様子じゃ全然みたいだね。やっぱり私達も手伝おうか?」
「そんな、悪いよ」
この三人からは以前から響捜索のチラシ配りを手伝うと言われていた
その度に私は断るようにしている
昔よりだいぶマシになったとはいえ生存者のバッシングを続けてる者も居る
何より、チラシ配りの最中に強引にナンパしてくる輩も滅多に居ないが存在する
それを考えると、どうしても三人を巻き込む事は出来なかった
「また断られたか」
「辛くなったら相談して下さいね。私達は小日向さんを応援しますから」
詩織の言葉に「うん」と返事をする
早く、響を見つけて三人の事も紹介したい
きっとこの三人なら響も直ぐに友達になれる
「あ、そうそう知ってる?今日転入生が来るって」
「転入生?この時期に?珍しいね。アニメみたい」
弓美の言葉に私も頷く
でも、転入生か。響だったらいいな。なんちゃって
「え~と…立花響です。…よろしくお願いします」
本当に響だった!!!
━━━めっちゃ見られてる!未来にめっちゃ見られてる!!
親友である小日向未来の居る教室に転入生として来た響は内心焦る。
なぜ、立花響が私立リディアン音楽院高等科に転入したのか、それは三日ほど前に遡る。
「え、学校ですか?」
「そうだ。このまま本部に籠りっきりで戦う時と修行の時しか外に出てないからな。このままでは不健康だ、だからせめて学校だけでもな」
一修行と映画の鑑賞が終了した弦十郎が響に学校に行かないかと誘った。
「私も学校には行きたいんです…けど、下手したら学校事体ショッカーに狙われる可能性が…」
先日、怪人の半分を倒したが残りは逃走。
その後、度々ノイズを倒した後に戦闘員が襲撃に来るが怪人達の姿が見えず特異災害対策起動部は警戒していた。
「その点に関しては問題ない。此方も幾つか対策してあるからな」
「本当ですか?なら私、学校に行きたいです!」
このやり取りで響は学校に行くことになった。
━━━だからってリディアンなんて聞いてないよ!それに未来の居るクラスだなんて!
響としては、親友である小日向未来を巻き込まない為にもリディアンではない別の学校に行くだろうと予想していた。更に、歌えない自分にリディアンって嫌がらせかなと疑う。
弦十郎達にとっては久しぶりに親友と会いたいだろうと気を使い、何よりとある事情によりリディアンは政府との結びつきもあり、少数ながら自衛隊も居る。ショッカーも簡単には手を出せないと踏んでいた。
悲しいすれ違いが発生していた。
「ねえ、あの娘…小日向さんが探していた人じゃ」
「確か一年半前から行方不明になっていたとか」
「一年半も何してたんでしょ?不潔ですわ」
教室内がザワザワと騒ぎ出す。
小日向未来が立花響を探していた事は、学院でも結構知られていた。
何しろ、未来自身が学院でチラシを配り情報提供を呼び掛けてたくらいだ。
「なにかあの視線と似てるよ」
奇異な目で見られる響だが、少なくともツヴァイウイングの時の様な悪意は感じられない事で内心ホッとする。
紹介も終わり授業に入るが響には別の問題が起こる。
「見たことない数式と漢字が一杯ある…」
勉強に全くついていけないのだ。
ショッカーに捕まってる間、勉強などやらせても貰えなかった以上仕方ないが。
響の転入初日の授業は散々だった。
「響、ちょっと来て!」
「あ、未来久しぶりってちょっと!?」
休み時間となり、他の生徒が響に話しかけるより早く未来が響の手を取り教室を出る。
戸惑う響だが、親友が一年半ぶりに姿を現したのだと納得する。
響にその気が無ければ未来の力では響を動かすのは不可能だ。
未来が向かったのは人通りの無い屋上近くの階段の踊り場だった。
「響!一年半も何処に行ってたの!?心配したんだよ!」
涙目になりつつ未来は本当に嬉しそうに響に抱き着く。
教室で抱き着かない分自重していたようだ。
「うん、ごめんね。未来」
久しぶりの親友とのやり取りに響も涙目になる。
抱き合って喜びあいたい。いっぱいお喋りしたい。一緒にお風呂に入りたい。
無理だ。ショッカーを倒さない限り
「昨日だっておばさんと一緒にチラシを配ってたんだから!」
「…え?なにそれ、知らない」
響が特異災害対策機動部に入って一月。
響と弦十郎達の間でとんでもない齟齬が発生していた。
響は、弦十郎達政府の人間が自分が生きている事を伝えてると思い。
弦十郎達も響や他の職員が連絡しているだろうと思い込んでいた。
更に、響の家族のチラシ配りもショッカーの目を欺く為の行動と勘違いしていた。
悲しいすれ違いがまたもや起きていた。
「その様子じゃ家にも帰ってないんだね。直ぐに電話して安心させようよ!」
後で、師匠の弦十郎に相談しようと考えていた響に未来がそう言う。
今にも、携帯を取り出して電話しようとする未来を止める。
「駄目!今教えるのは駄目なの!」
響が慌てて未来の肩に触れる。
「痛っ!響、痛いよ!」
「ご、ごめん!?」
未来の痛がりに慌てて手を引っ込める響。
慌ててたとは言え、そんなに力は入れてなかった。寧ろ力なぞ入れていない。
それにもかかわらず未来の肩から「メキィ」という音と感触を感じていた。
━━━やっぱり力の制御が上手くいかない。師匠と特訓しても何も変わらなかった。……私、もう未来と触れ合うことも出来ないんだ…
少なからずショックを受ける響は自分の手の平を見る。
師匠である弦十郎に特訓を願い出て幾日が過ぎるが力の制御が上手くいかない。
戦い方が上手くなっただけである。
特訓の最中に弦十郎の腕に触れただけで骨折させかけた事もある。
急遽弦十郎は、響にタマゴを手で別の器に移す訓練をさせるようになったが、少しでも触れるとタマゴが潰れてしまう。未だに一つも成功していない。
尚、潰れたタマゴは特異災害対策機動部が責任もって処理していた。
おかげで職員の中には「タマゴはうんざり」と愚痴を漏らす者も出始めている。
━━━こんな手じゃ誰かと手を握る事も……
立花響は孤独が嫌いだった。
一時は、迫害されても家族や親友が居た。
しかし、ショッカーに拉致され体を改造された際は一年以上の孤独を味わった。
世界制覇を目指すショッカーの事など理解できる訳も無く、異質な怪人達や戦闘員に響がコミュニケーションを取ろうとしても、善人よりの響とショッカーの操り人形である怪人も戦闘員も話が合う訳がない。
結局、ショッカーを逃げ出すまで響は孤独を味わい尽くした。
━━━1人は嫌だ。……でも、
「ひ、響。如何したの?」
「ごめん未来。暫く私に話しかけないで…」
「!何で…」
「聞かないで、詳しくは言えないから!」
それだけ言って響は一人階段を降りる。
気付けば授業の時間はとっくに過ぎていた。
「待って!響、待って!」
響の背後から未来が必死に呼び止めようとする声が聞こえる。
しかし、響は止まらない。
もし止まったら、未来が追い付いたら、全てを話してしまうかも知れない。
シンフォギア装者として特異災害対策機動部に入った事や悪の秘密結社に捕まり改造人間にされたなど。
━━━でも、未来が酷い目に合う方がもっと嫌だ!
響の未来の思う気持ちをショッカーに気付かれる訳にいかない。
━━━さようなら、私の「陽だまり」………
教室に戻った響は教師に怒られた後に席に着き、未来も遅かった為怒られる。
その後、歌の授業があったが、
「仰ぎ見よ太~♪、ゴホッ!ゴホッ!」
「…立花さん、苦しいのなら見学してなさい」
「いえ、私は大丈……分かりました」
歌を歌おうとする響が何度も咳込む姿に見学するよう言う教師。
続けて欲しかった響だが、教師の目が明らかに「邪魔」だという目をしていた。
響は大人しく空いてる座る。
「歌唱の授業で見学って聞いたことないけど」
「喉が弱いのかしら?」
「…て言うか歌えないのに何でこの学校に転入したのかしら」
響の様子に生徒たちが軽くざわつく。
響に同情的な者、否定的な者、無関心な者と色々居る。
「響…」
小日向未来が響の名を呟く。
「はぁ~」
結局、どの授業も散々な事になった響は帰り支度を始める。
「ねえ、ビッキー」
本部に戻ったらチラシ配りをするお母さん達の事を相談しようと、
「ビッキーてば!」
「え!?」
考え事をしていた上に聞きなれない名前に驚く響。
呼ばれた方をみると三人の同級生と思しき女学生と申し訳なさそうな表情をした未来がいた。
「ビッキーって、私?」
「そう、響だからビッキー。良いあだ名でしょ」
未来の友人、創世の自信満々の姿に呆気にとられる響。
苦笑いする他の二人と未来。
その後、三人と響が自己紹介などした。
「それで、響さん。この後どうでしょう?フラワーっていう美味しいお好み焼き屋さんでお食事でも」
「悪くないわね」
「おお、良いね。行こうよビッキー!」
一緒に食事に三人。
響と未来が教室に戻った時に違和感を感じ喧嘩でもしてるのかと考え仲直りさせようと考えだった。
未来が語っていた響なら間違いなく乗ってくると思った、
しかし、
「…ごめん、私用事あるから」
そう言って足早に教室をでる響。
三人が止める間もなく姿が見えなくなった。
「ちょっ…早や」
「振られたか」
「小日向さんが言っていた人物像と随分と違いますけど」
未来が話していた響と今の響との差異に驚く三人。
「響……何があったの?」
昔の響との違いに不安になる未来。
また、自分の前から居なくなるのではないか?と思うほど。
「皆揃ったようだし、仲良しミーティングを始めましょうか」
響は未来達と別れた後、本部に来ていた。
其処には既に風鳴弦十郎、風鳴翼、櫻井了子が居て響が最後だった。後、オペレーターコンビ。
そして、了子が先程の発言を口にした。
「ここ一カ月、ノイズの発生がいくらなんでも多すぎる」
「そう言えば、響ちゃんはどのくらいノイズの事を知ってるのかしら?」
「…テレビや昔授業で習ったくらいですね。話し合いが出来ない、人間を優先的に狙ってくる。…そう言えばショッカーがノイズを偶に変な風に呼んでいたような…」
「変な?」
「どんな風に言っていたの?」
「確か…埃をかぶった兵器と」
「兵器?」
「…ショッカーはノイズの事を私達より知ってるのかしら?」
「分からん。ノイズには未だ謎が多い」
ショッカーがノイズをどの位知ってるのかは分からない。
どちらにせよ敵であることには変わらない。
「只今戻りました、指令」
「緒川か、何か掴めたのか?」
扉が開き1人の青年が入る。
特異災害対策機動部二課のエージェントである緒川慎次である。
「はい、ショッカーの犠牲者のご遺族との接触に成功しました」
「犠牲…者…」
「遺族か」
緒川はネットの片隅にあったショッカーという情報を頼りに遺族との接触し情報を得ていた。
その内容は信じられない物が多かった。
「ショッカーの勢力は、すでに世界規模であり、アメリカ、東南アジア、中近東、ヨーロッパ、アフリカ、世界中のテロや内戦を操作してるようで、眉唾ですがあのナチスの深層部とも繋がってたそうです」
「ナチスだと!!」
「あ、歴史の授業で聞いた事あります。でも100年ぐらい前ですよね」
「ナチス。第二次世界大戦時にあらゆる戦争犯罪を起こしたと言われる組織。今でも欧州連合じゃタブーとされてる」
「厄介な話だ。アメリカともなるとますます『デュランダル』を渡せなくなった」
「デュランダル?」
響のよく分からないという反応に皆が説明する。
曰く、欧州連合が所持していたが経済が破綻して日本に譲渡。
完全聖遺物と呼ばれ響や翼が所持する聖遺物より希少らしく。
現在は本部の地下のアビスと呼ばれる場所で保管されている。
それをアメリカが安保を盾に引き渡すよう迫り、既にここ数カ月で数万と言うハッキングを受けている。
一度機動すれば装者じゃなくても扱う事が出来る。
ただし、起動させるにはかなりのフォニックスゲイン…歌が必要である。
「完全聖遺物って事は、ショッカーも…」
「狙ってくるだろう。間違いなく」
「最後に遺族の一人である石神氏曰く」
『警察も…マスコミも…信じてくれない。このままじゃいつか……世界はショッカーに征服されちまうぞ!!』
「…やっぱり誰も信じてくれないんですね」
「しょうがないわよ。人は何時でも起きてしまってからしか認めないのよ。自分達が被害に会うまでね」
「…正直、俺も戦闘員を見なければ疑っていたかもしれない」
ショッカーが存在する事など一般人には分からない。
秘密結社や世界征服など創作の世界だけの話だと信じて疑わない。
その後、マネージャーモードに戻った緒川は、仕事ということで風鳴翼を連れて退室。
残ったメンバーはソファーに座り喋っていた。
「それにしても如何して争いって無くならないんでしょ?ショッカーがテロや内戦を操作してる情報を公開すれば……一般人じゃなく師匠や了子さんが言えば皆ショッカーを倒すために団結出来ると思うんですけど」
「無理だな」
「ええ」
響の言葉に無理だと断言する弦十郎と了子。
「緒川の情報が正しければショッカーの影響力は絶大だ。良くて我々の虚言。下手をすれば我々がショッカー呼ばわりされ潰される。そうならなくても秘密を暴かれたショッカーが如何動くか予想がつかん。隠れる必要が無くなれば堂々とテロ活動を行なうかも知れん」
「それだけじゃないわ。ショッカーの技術は予想より高いわよ。自力で核兵器も作れる程に」
「核…兵器…」
「そんなにか?」
「あの後も、響ちゃんの体を調べて分かったんだけど心臓の近くに超小型の原子炉を確認したわ」
「へっ!?」
「原子炉だと!?」
弦十郎の言葉にその場に居た人間達の視線は響に集まる。
自分の胸を触る響。
「ああ、安心して放射線とかは一切漏れてないわ。っというか心臓を囲う未知の金属と接続されていて強制的にアウフヴァッヘン波形を発生させ原子炉のエネルギーを使ってより力を高めてるようね」
「そんな事可能なのか!?」
「私だって知らないわ。聖遺物に関しては此方が上だけど、他の技術はどのくらいショッカーが上回ってるのか未知数ね。これを公表すれば世界の原子力事情も一変するわ。でも…」
「核兵器の小型化か…」
「ええ、スーツケースどころかポケットに入る核兵器ってね。ショッカーがその気になれば一般人に化けた戦闘員で主要都市だけ核攻撃も出来るかも」
この日、特異災害対策機動部二課はショッカーの恐ろしさを再認識した。
響がリディアンに転入する話。
本当はクリス戦まで行こうかと思ってたんですが学院パートが長引いた。
響が友達と活動出来るのは…Gからかな?
今年で、初代仮面ライダーの放送から50年らしいですね。
あんまり関係ありませんけど、仮面ライダー一号の特殊能力図解によれば小型原子炉は股間についてるようです。