改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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パソコンがクソ重くなったり強制終了が怖くて少しずつしか書けない。つまり時間が掛かる

後、今回長いです。


81話 二人の響 歌えっ! 「誰かのため」の唄

 

 

 

 

暗いまどろみの中、周りが騒がしい事に気付く。はて?目覚ましかなと思った時に人の悲鳴が聞こえて私は慌てて目を覚ました。…あれ?肩が痛い

 

「…うっ、私は一体…痛っ!?」

「あおいさん!?無茶しちゃ駄目だ!」

 

何時の間にか寝てたのか疑問に思った私が体を起こそうとした時、肩に激痛を感じる

その時、横から仕事仲間である朔也くんの声に一瞬だけ驚いた。何時の間に彼の横に?

 

「朔也くん!?私一体どうして…!?」

 

まさか、オペレーター仲間の朔也くんにお持ち帰りされたと考えた自分を殴りたくなった。傍から人の悲鳴と共に翼ちゃんの声が響いた

周囲が指令室という事で自分がどうなってたのか思い出したのだ

 

「私、急に首元を絞められて宙吊りにされて…」

「…後で雪音さんにお礼を言った方がいいですよ。彼女がカメレオン男の舌を撃ち抜かなかったら死んでたらしいからね」

 

そうだった、私は寝てたわけじゃない。首を絞められて気絶したんだ!

首元を触る私に拳銃を持った朔也くんが並行世界の装者である雪音さんが助けたと教えてくれた

 

 

死神カメレオンの舌に捕らわれた友里あおいだったが、死神カメレオンが絞殺す前にクリスが咄嗟にアームドギアのボーガンで舌を撃ち抜き友里あおいを解放したのだ。

尤も、落下した友里あおいは肩を痛めて、撃ち抜かれた死神カメレオンの舌は直ぐに回復してしまったが。

 

 

「嫌だわ…首にまだ舌の感触が残ってるわ」

「…災難でしたね」

 

私の言葉に朔也くんが愛想笑いをしている

朔也くんの表情から状況はよくないようだ

私達は物陰に隠れながら上の指令席付近で戦う翼さん達の様子を伺う。既に何人ものエージェントの死体が横たわっている

 

「如何した?シンフォギア装者たち、カカッテこい!」

 

「とんでもねえトリッキーな動きだ!!」

「性根の腐ったオートスコアラーと同じくらい厄介ね!」

 

カメレオン男の挑発に翼さんや雪音さんが攻撃するがカメレオン男はアッサリと姿を消して攻撃を躱して別の場所に現れたり透明なまま舌での攻撃に彼女達は苦戦を強いられている

何よりカメレオン男は地面だけでなく壁や天井に張り付いて不意打ちしてくるのでクリスちゃんやマリアちゃんも苦戦している

 

「またか、あのカメレオン野郎」

「あの消える能力を突破しないと私達には勝ち目がないわね」

 

そう、あの姿を消す能力さえどうにか出来れば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏。二人のそっくりな少女が互いの背後を牽制するように背中を合わせる。

彼女たちの視線の先には明らかに人外が二体佇んでおり少女たちを睨みつけている。

サボテグロンとドクモンドだ。

すると、サボテグロンが右手を上がる。

 

「イーッ!」「イーッ!」

 

瞬間、何処からともなく無数の戦闘員が現れ響達を取り囲んだ。

 

「また黒い奴等が!?」

「まだこれだけ戦闘員が居るなんて…」

 

「キィィィッ!戦闘員など幾らでも増やせるわ!」

「立花響!オリジナル諸共葬り去り、この世界をショッカーの物としてやるぅ!」

 

無数の戦闘員の数を見て驚く響達にドクモンドとサボテグロンがそう宣言した。

その時、響はサボテグロンの発言に引っ掛かりを覚える。

 

「待って、サボテグロン。『この世界』って言った?」

 

「言ったがどうした?まさか、まだ此処がお前が住んでいた世界と別だという事に気付いていないのか?」

 

「違うっ!此処が私達の世界じゃないと気付いたなら私達が今戦う理由は無い筈!それにこの世界の人達は関係ない……」

 

響はショッカーが此処が別の世界だと気付いたのなら休戦出来るのではと思いついた。

ほぼ自分一人の響に比べれば、どの位の規模か不明だがショッカーにも数の限界はある筈。それなら、一時的でもショッカーと休戦して元の世界に帰る方法を調べられるのではと考えた。

例え、憎むべき敵と言えど下手に別の世界で被害を出すよりマシだと判断してだ。

しかし、

 

「関係ないからどうした?我らショッカーがおてて繋いでランランランと協力すると本気で思ってるのか!?」

 

「それでも関係ない人達を巻き込むのは…」

 

「キィィィッ!なら今まで死んだ人間は我らと関りがあったと言うのか?」

 

「それは…」

 

この世界で暴れないよう何とか説得しようとする響だがドクモンドの言葉にぐうの音も出ない。

ショッカーは関係あろうが無かろうが邪魔だと判断すれば直ぐに殺人を犯す国際的犯罪組織だ。それどころか兵器の人体実験の為にも一般人を殺す。

この世界で同じことをするのは目に見えている。

 

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒ、ついでに言えば優秀なショッカー科学陣が元の世界に戻る方法を見つける筈だ。例え時間が掛かろうと、この世界を手土産にすれば首領もお喜びになる」

 

「…首領?」

「…こいつ等を束ねるトップ。何時もエンブレム越しで命令を下す正体不明の存在、私も声だけで姿を見たことは無い。やっぱり説得は無理か…」

 

サボテグロンの首領と言う言葉にヒビキがオウム返しすると響が現状分かってる情報をヒビキへと流す。

それと同時に休戦は不可能だと悟る。

 

「そう言う事だ、かかれえぇぇぇぇぇぇ!!!」

「「「「イーッ!!」」」」

 

サボテグロンの掛け声に今まで響達を取り囲んでいた戦闘員が次々と押し寄せる。

その手には刺突剣やナイフを持ち明らかに二人を殺すつもりだった。

 

「イーッ!」

 

「このぉぉぉ!」

 

戦闘員のナイフを躱した響が御返しに掌底を叩き込み刺突剣を持って突撃する戦闘員にはカウンターの拳を浴びせたり、刺突剣を持つ腕を捕らえて別の戦闘員に投げ捨てたりする。最早、戦闘員との戦闘には慣れた響だ。数が多くても遅れはとらない。

しかし、

 

「イーッ!」

 

「ハアアアア!…!」

 

ヒビキは響と同じように戦闘員に対して反撃しようと拳を振ろうとしたが戦闘員の顔の寸前で止めてしまう。

僅かな躊躇いに戦闘員は刺突剣でヒビキの首元を切り裂こうとする。

 

「! 痛っ!?」

 

咄嗟に避けるヒビキだが、全てを避け切れず肩に僅かな切り傷が出来る。

痛みに動揺したのか。ヒビキの動きが止まり、チャンスとばかりに複数の戦闘員がナイフや刺突剣を握りヒビキへと群がる。

 

「しまっ!」

「危ない!」

 

目の前に刺突剣が迫っていたヒビキだが、背後から何か投げられえた。響が咄嗟に掴んでいた戦闘員を投げたのだ。

ヒビキへと殺到していた戦闘員達も投げられた戦闘員にぶつかり倒れた。

 

「大丈夫?」

「私…戦闘員を倒そうと思ったのに…人を殴ると考えると…」

 

響が心配そうにヒビキに話しかけるとヒビキの口から次々と弱音が漏れ自身の手を震わせて見る。

ヒビキは今までノイズと戦って来た。その中には当然人間型のノイズも居り倒したりしてきたが、ヒビキは戦闘員と目が合った瞬間、体が硬直した。

 

『人殺し!!』

 

嘗て、ツヴァイウイングの悲劇から生き延びたヒビキに浴びせられた罵声。

それが、脳裏に蘇り戦闘員を倒すのを躊躇ったのだ。

 

「…見て」

 

そのヒビキの様子に響が倒れた戦闘員の方を見るよう言う。

響の言葉にヒビキは言われた通りに倒れた戦闘員を見る。

 

「!?」

 

そして言葉を失った。倒れた戦闘員が緑色の泡を出して消滅していくのだ。最後には緑色の泡すら無くなりその場には何もなくなる。戦闘員が居た形跡すら

 

「…如何して…」

 

ノイズでも倒せば炭化して残るのに戦闘員は影も形も残らず消滅した。

その事がヒビキには信じられなく思わず呟く。

 

「戦闘員も怪人ももう人間だと考えない方がいい。それにこれがショッカーのやり方だよ、倒した戦闘員が秘密を漏らさないように…」

 

マリアの暴露によりショッカーが表舞台に引きずり出されたが戦闘員や怪人は秘密結社の頃から変わらなかった。戦闘員の大多数は敗北すると緑色の泡になって消滅するか怪人のように爆発四散する。

何方にしろ、痕跡はほぼ残らず灰となって残るノイズが可愛く思える。

だからこそ、響を始めとした特異災害対策機動部二課は戦闘員や怪人を人間として見ないことにした。戦闘員も怪人もショッカーの犠牲者とも言えるが、そうでもなければ弦十郎は兎も角、未成年の響達に元人間である怪人との戦闘は残酷過ぎた。

 

「浸っていていいのか?戦いはまだ思っていないぞ!」

 

「「!?」」

 

突如、上からサボテグロンの声をがして上を向くとサボテン棒を振りかぶったサボテグロンがジャンプし自分達に迫る。

そのまま、サボテグロンが響たちの前まで来ると同時に落下と共にサボテン棒を地面へと殴りつけた。

瞬間、響達の前のアスファルトが砕けると共に凄まじい量の土埃と地面の破片が響達を襲う。

 

「うわああああああ!!」

「サボテグロンの攻撃力が上がっている!?」

 

「ショッカーの強化改造を舐めて貰っては困る!」

 

以前に戦った時よりもサボテグロンの攻撃力が上がってる事に驚く響。

死神博士亡き後、ショッカー科学陣は更なる怪人の強化を図っており死神博士より遅いが着々と強化改造手術の腕を上げている。

その成果によりサボテグロンもまたパワーアップしているのだ。

 

「キィィィッ!お前の相手は俺だ!!」

 

「…人食い蜘蛛!」

 

「いけない!?」

 

「慌てるな、お前の相手は俺がしてやるぞ。オリジナル!」

 

サボテグロンの攻撃により響とヒビキは分断されてしまう。

響はサボテグロンが、ヒビキはドクモンドが立ち塞がる。ヒビキを助けに行こうとする響、立ち塞がるサボテグロン。ヒビキは一人ドクモンドと戦う事になる。

 

 

 

 

「キィィィッ!!死ねぇぇぇぇ!!」

 

「簡単に死ぬもんかああぁぁぁぁ!!」

 

ドクモンドと戦闘を行うヒビキは何とかドクモンドの猛攻を防ぎ切る。

尤も、攻撃してる余裕は無いので防戦一方だったが、まともな怪人との戦いは初めてのヒビキにとってこれは快挙に等しい。

 

「これならどうだ!?」

 

「糸?…!?」

 

ならばとドクモンドは口から糸を吐き手で振り回しヒビキの首のマフラーごと巻き付ける。

ドクモンドの力にヒビキは苦戦を強いられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つくづく愚かな奴だ!」

 

サボテグロンと戦う響。ヒビキと時とは違いサボテン棒を巧みに躱してほぼ互角に戦う。

ヒビキとは違い拳や蹴りで反撃するが、サボテン棒が響の攻撃を弾く。

ならばと一旦距離を取ろうとする響だったが、

 

「おっと、足元には気を付けろよ」

 

「?」

 

サボテグロンの妙な忠告に疑問に思う響だが片足が地面と違う感触を踏んだ。見るとそこにはアスファルトではなく場違いな丸いサボテンが置かれていた。

 

「何でサボテン…!?」

 

疑問をそのまま口にした響だが、次の瞬間には踏んだサボテンが爆発を起こした。

同時に響の足に凄まじい痛みが襲う。煙が治まり足先を見ると足を覆っていたシンフォギアのブーツ事吹き飛んでおり人工皮膚もボロボロになり足の機械が目に入る。

 

「!?」

 

自分の足を確認した響が激痛も無視して急ぎドクモンドと戦うヒビキに目を向ける。

視線の先に居るヒビキが爆発に驚いてるようだが距離もあり戦闘中ということで響の足には気付かなかった。

その事にホッとする響だったが、

 

「…今のは…」

 

メキシコの花。嘗て俺がメキシコ中のダムを破壊した時に使った爆弾よ」

 

サボテンが爆発した事に茫然とした響の言葉に反応したのは当然、サボテグロンである。

メキシコの花、それはサボテグロンの武器の一つであり、手で放り投げる小型の物から地面に設置する大型のものまである。そのどれもが普通のサボテンにしか見えない爆弾である。

嘗て、サボテグロンはサボテン型爆弾…またの名をメキシコの花を使いメキシコを占領する事に成功したのだ。

 

「メキシコの花…!」

 

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒ、それにしても見事な物だ。俺が喋ってる最中にももう再生している」

 

爆発の時とは別の痛みを感じた響にサボテグロンは笑いながら言い放つ。

一瞬何のことか分からなかった響だが自身の足を見て納得した。片足の吹き飛んだ人工皮膚が再生を始めると共にシンフォギアのブーツまで再生していた。

響の体はシンフォギア運用前提で改造されている。

だから響のシンフォギアが破損すれば自動でシンフォギアごと修復されるのだ。

 

「俺の爆弾の爆発をまともに浴びて片足で済んだだけとはな、通常の人間なら体の半分は吹き飛ぶぞ。流石は今は亡き死神博士の最高傑作だ!」

 

「!」

 

言い終えると同時にサボテグロンは手に持つサボテン棒で座り込んでいる響の体に一気に振り抜く。

殴り飛ばされる響だが幾度の怪人との戦闘に即座に態勢を立て直して着地しようとした。

 

「ああ、言い忘れていたがこの路地には俺が設置したメキシコの花はまだまだあるぞ」

 

「なっ!? !」

 

サボテグロンの言葉に絶句する響だが着地した瞬間、背後から轟音と共に熱と衝撃波が襲う。

響は既にサボテグロンの術中に嵌っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?何、爆発が連続して起きている」

 

ドクモンドの糸に首を絡められたヒビキは路地裏に響く爆音を事が気になった。

首に巻かれているマフラーによりどくドクモンドの糸のダメージを軽減出来ていたからだ。

 

「知りたいなら教えてやる、あれは嘗てメキシコを恐怖のどん底に陥れた爆弾よ。それにしてもサボテグロンめ、随分と豪快にやる」

 

「爆弾!? あんた達そんな物まで!」

 

爆弾と聞いたヒビキは顔色を変えてドクモンドに非難するように言う。

余りにも堂々とした悪事にヒビキも黙ってはいられなかった。それに爆弾を使う怪人の相手をするもう一人の自分の事が心配でもあったが、

 

「他人を心配する余裕があるか、貴様も死ねぇぇぇ!!」

 

瞬間、先程まで地面で踏ん張っていたヒビキの足に浮遊感が襲う。

ドクモンドが首に絡まる糸を引っ張り振り回してヒビキを宙へと浮かばせた。そして、一気にヒビキを地面へと叩きつける。

 

「アガッ!?」

 

「キィィィッ!!」

 

その衝撃にヒビキの周りのアスファルトが陥没し口からも血を吐いた。

そして、それを確認したドクモンドはまた糸を使い響の体を振り回し何度もヒビキを地面へと叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア…ハア…ハア…」

 

幾つものメキシコの花の爆発をまともに受けた響。

その体は酷いもので、両腕や両足、腰のシンフォギアも破壊され響の顔の半分も爆発した炎を受け皮膚が剥げてしまい金属の骨が見えてしまって居る。

それでも、響の体は即座に回復を始め手足の皮膚やシンフォギアも再生していく。

再生した手を握り何とかまだ戦えると判断する響だが、

 

「仕掛けていた俺のメキシコの花、全ての爆発を受けて死なんか…なら俺が直接殺す!」

 

「ウッ…!?」

 

煙が晴れた瞬間、サボテグロンがサボテン棒を持っていない方の腕で響の喉を締め付けると共に壁に押さえつける。

その際、響の背後の壁にヒビが入り衝撃の凄まじさが分かる。

何とかサボテグロンの腕を振り解こうとする響。

 

「無駄だ、仮に俺の腕を脱出して俺達を倒せたとしても()()()()()()()()が我らショッカーに勝てると本気で思ってるのか?」

 

「一人…ぼっち…」

 

「気付いてるのだろ?この世界にお前を知っていて味方をする者など一人も居ない。特異災害対策機動部二課の風鳴翼も雪音クリスもマリア・カデンツァヴナ・イヴもお前を知らないのだからな!!」

 

━━━得意災害にクリスちゃんとマリアさんが!?

 

サボテグロンの発言に初めて響は特異災害対策機動部二課の存在と翼やクリスたちの事を知る。

経緯は分からないが自分が居なくてもクリスやマリアが特異災害対策機動部二課に入ってる事を嬉しく思う反面、響の表情が曇る。

 

━━━そうか、この世界にも師匠が…

 

響としては、出来ればこの世界の特異災害対策機動部二課に合流して共にショッカーと戦いたい気持ちがある。

しかし、その為には…

 

「合流出来る訳ないよな、その体は俺達と同じなのだからな!調べれば直ぐに分かる事だ」

 

「クッ!」

 

響の不安を的中させるサボテグロン。

上手く特異災害対策機動部二課に保護されれば良いが立花響が二人いる。自分が別の世界の立花響だと説明して信じて貰えるのか?

身体検査などもすれば響の体が普通の人間でない事もバレてしまう。

元の世界では受け入れられたが、果たしてこの世界の特異災害対策機動部二課が改造人間である響を受け入れてくれる保障は何処にも無い。

最悪、この世界の特異災害対策機動部二課が敵に回り自分をショッカーの一味として処分されるかもしれない。

 

━━━それは…嫌だな…

 

『お前もショッカーの怪人だったのかよ!?』

『最低! もう二度と私に話しかけてこないで!化け物!!』

 

響の脳裏に嘗てクリスと未来に言われた言葉が蘇る。今は和解出来たが響にとってあの言葉はトラウマに近く二度と聞きたくない。

翼やクリス、マリアか弦十郎が響を殺す可能性もある。

元の世界に戻りたい響だが直ぐに合流出来る訳が無かった。

 

「お前が元の世界に戻れる訳が無い、だから…全てを諦めて死ねぇ!!」

 

「私は…諦めない!!」

 

今まさにサボテグロンがサボテン棒で響の頭をかち割ろうとした瞬間、響から眩い光と共にサボテグロンが弾かれ距離を取る。

 

「ぬっ!?」

 

咄嗟に響の首を絞めていた手に視線を向けるサボテグロン。見れば手に電気の様な物が走り動きがやや鈍い。

 

 

何故 どうして? 広い世界の中で

運命は この場所に 私を導いたの?

繋ぐ手と手 戸惑う私のため

 

「ちっ、馬鹿の一つ覚えみたいにまた歌うか!もういい、やれぇ!戦闘員ども!!」

「「「「「「イーッ!!」」」」」」

 

サボテグロンの声に何処に居たのか再び何処からともなく現れる戦闘員達は命令通り歌う響に襲い掛かる。

 

受け取った優しさ きっと忘れない

その場しのぎの笑顔で 傍観してるより

 

数に勝る戦闘員が一斉に響に襲い掛かる。しかし、響は先程よりもキレのいい動きで次々と戦闘員を返り討ちにしていく。

剣で斬りかかろうとした戦闘員は胸に掌底を食らわせ、拳で襲おうとする戦闘員はクロスカウンター、背後から来た戦闘員は飛びまわし蹴り。

 

「さっきよりも動きが良くなってるだと!?」

 

これにはサボテグロンも驚く程動きが良かった。

 

本当の気持ちで 向かい合う自分でいたいよ

きっと どこまでも行ける 見えない 未来へも飛べる

 

響はそのまま複数体の戦闘員を殴りつける。器用にほぼ同時に複数の戦闘員の顔面にパンチを入れていく。

ならばと、上から飛び掛かる戦闘員もいたが、腰のブースターで飛び上がりアッサリ戦闘員の背後をつくと先程まで殴っていた戦闘員諸共拳で貫く。

これで、サボテグロンが連れて来た戦闘員は壊滅する。

 

この気持ちと 君の気持ち 重なればきっと

We are one一緒にいるから Hold your hand心はいつでも

今を生き抜く為に 私たちは 出会ったのかもしれない

私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ 微笑みをSing out with us

 

「ほざけぇ!笑うのは我らショッカーだけで十分だぁ!!」

 

戦闘員が全滅したサボテグロンが響の脳天目掛けサボテン棒を叩き込もうとする。

響も直ぐに反応し、負けじと拳で立ち向かう。

サボテン棒と拳がぶつかり合い激しい火花が起こり響の額に汗が流れる。

 

「諦めてしまえば楽になるぞぉぉ!!小娘っ!」

 

「…アナタの言う通り諦めたら楽になるかもしれない。…でも諦めたら私はもう皆に顔を合わせられない!!」

 

急ぎたくて いつだって不器用で

遠い憧れに まだまだ近づけない

でも1つだけ 分かってきたことはね

「誰かのためになら 人は強くなる」

 

響は思い出す。ショッカーに拉致される前の事を

幸せだった頃の家族を、親友である小日向未来との日常を

改造人間になった後の特異災害対策機動部二課に入ってからの日々を

 

「だから…諦めるもんかあああああああああああああああああああ!!!!」

 

「!?」

 

響の拳がサボテグロンのサボテン棒を弾き飛ばすと腰のブースターで勢いをつけて一気に顔面を殴り抜く。

今まで以上の拳の威力に吹き飛ばされるサボテグロン。

その行先は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ!」

 

ヒビキの体がビルの壁に叩きつけられる。既に体中傷だらけで口からも血が垂れている。

首に巻かれているマフラーもドクモンドの糸の所為か血で赤く滲んでいる。

 

「キィィィッ!そろそろ抵抗する力も無くしただろう。苦しかろう、今直ぐ食い殺してやる!」

 

そう言うと、ドクモンドは糸を引っ張る。途端、ヒビキの体は叩きつけられた壁から引き剝がされゆっくりとドクモンドの方に引っ張られる。

 

最早、ヒビキに抵抗するだけの力は無い。

 

 

 

 

━━━ああ…私死んじゃうのかな。…裏切られるのが怖くて他人を遠ざけてたけど…こんな最後か。お父さんもお母さんも今何してるんだろ。お婆ちゃんも元気かな?…最後に会ったのって何時だっけ?

 

 

殺されそうだと言うのにまるで他人事のように思考が巡るヒビキ。ドクモンドの戦いで糸で拘束され地面に壁に叩きつけられていたのだ。疲労と痛みにヒビキは衰弱している。

このまま、ドクモンドの手に掛かるかと思われた時

 

~♪

━━━音…が…く…?

 

ヒビキの耳に軽快な音楽が聞こえて来る。

誰かが近くで歌ってるのかと思い、今の自分との雲泥の差に羨ましくもあるが、ヒビキは不思議とその音楽を聴いて胸に暖かい物を感じた。

 

「さて…それでは食事にして ドガッ!! 何だぁ!?」

 

ドクモンドの声が何かがぶつかる音がして途切れ自分を引っ張る力も消える。

何か起こったのかとヒビキは体力の消耗した体でドクモンドの方に視線を向ける。

その視線の先には

 

「立花響め!想定以上に力を上げてるのか!?」

「キィィィッ!何のつもりだサボテグロン!」

 

吹き飛ばされたサボテグロンがドクモンドに衝突して糸の力が弱まったのだ。

ぶつかって来たサボテグロンにドクモンドが文句を言うが、サボテグロンはその言葉を無視してヒビキの居る方とは別の方を見る。

そこに丁度、腰のブースターで降り立つ響が見えた。

 

「まだ、始末してなかったのか!」

「…その言葉、ソックリそのまま返すぞ」

 

ドクモンドとサボテグロンが響に向き合い戦闘態勢を取る。

そして、響から漏れる音楽と歌がヒビキの耳にハッキリと届く。

 

今の私のすべてで 放つ歌声で

君の悲しみを 僅かでも消すこと出来たら…

その手 握っていたいよ 永遠、それよりも長く

 

「ここは任せて休んでて」

「…何で…歌ってるの」

 

響がヒビキに休んでる様言うが、ヒビキは響から出る音楽と歌に引かれていた。

サボテグロンを警戒しつつ響は口を開いた。

 

「シンフォギアは装者の心次第で強くなる。胸の奥から湧きだす歌をうたうと勇気が出るの」

「勇…気…」

「少し前にね、ある人に言われたの『胸の歌を信じなさい』って。だから私は胸の歌を信じて戦う」

 

━━━胸の…歌…

 

失くさないで 崩れないで…彼方には希望

We are one信じていたもの Hold your hand闇が隠しても

光を忘れぬよう 私たちは 出会ったのかもしれない

私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ 優しさをSing out with us

 

「ごちゃごちゃ喧しいぃ!死ねぇ!!」

「キィィィッ!!」

 

響が言い終えると同時にサボテグロンとドクモンドが飛び掛かる。

響は単身でサボテグロンとドクモンドの相手をする。

 

君と紡ぐ 絆こそ 道標(みちしるべ) 迷い捨てて 強くなる

その場しのぎの笑顔で 傍観してるより

本当の気持ちで 向かい合う自分でいたいよ

 

歌う響の動きは素人目のヒビキでも唸る程の動きを見せる。

サボテグロンの拳や何時の間にか握っていたサボテン棒を避け、糸で拘束しようとするドクモンドを躱してカウンターに顔面に拳を叩き込む。

 

「キィィィッ!」

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒッ!」

 

「!?」

 

しかし、徐々に響が押され出す。サボテグロンは前の時より更に強化改造されている。

それに加えて、響はドクモンドと戦ったことは無い。再生怪人の時も別の装者が倒している。それ故に初めて戦うドクモンドの動きとサボテグロンとの戦いが徐々に押され出す。

その結果

 

「隙ありぃぃぃ!!」

 

「!? しま…」

 

ドクモンドの動きに釣られ一瞬の隙が出来、それを見逃さなかったサボテグロンが響の腹部にサボテン棒がめり込む。

地面を引きずりつつ倒れる事は無かったが口から血を吐く響。そして、歌も止まってしまった。

 

━━━マズいっ!早く歌わないと!

 

きっと…どこ…カヒュ…

 

急いで続きを歌おうとする響だがその口からは酷い呼吸音が聞こえる。

恐らくはサボテン棒の攻撃で体の一部にダメージが入ったのかもしれない。回復するには少し時間が掛かる。

 

「シンフォギア、敗れたり!!」

「シンフォギアの弱点は歌えなければ性能を発揮出来ん。ならば、やりようは幾らでもある!」

 

ショッカーとしても今までの戦いでシンフォギアの性能はある程度は知っている。

幾ら、強くてもシンフォギア装者はただの小娘、歌えなくすれば戦力は著しく下がる。

サボテグロンとドクモンドが勝利を確信した。

 

 

 

 

きっと どこまでも行ける

見えない 未来へも飛べる

この気持ちと 君の気持ち

 

「「!?」」

 

だからこそ、背後から聞こえて来た歌に驚く。

そして、それは響もだった。三人の視点が移動する。移動した先には

 

「もう一人の立花響が歌っているだと!?」

「馬鹿な、あの小娘は俺との戦いで心が折れた筈だ!!」

 

怪人達の驚愕する声が出る。

目の前でドクモンドにズタボロにされたこの世界の立花響が歌い立ち上がったのだ。

 

「もう一人の…私…」

「…歌うのは久しぶりだな…でも不思議、体の痛みが軽減されてる。これなら私も!」

「うん!」

 

重なればきっと

We are one一緒にいるから

 

歌うヒビキの姿を見て、響もまた歌の続きを歌う。

二人の声が響き合いハーモニーとなり二人の傷の痛みが消えていく。

 

「この期に及んでまだ歌うか!」

「キィィィッ!所詮は死にぞこない、止めを刺してやる!!」

 

歌う二人の響の姿に舌打ちするサボテグロン。

だが、所詮は無駄な足掻きと判断して二人に襲い掛かる。

 

Hold your hand心はいつでも

今を生き抜く為に

 

「キィィィッ!?」

「なんだとぉ!?」

 

それ故に、サボテグロンとドクモンドは驚愕する。響達の攻撃が早さも強さも上がっていた。

サボテン棒をギリギリで躱して肘打ちにドクモンドの蹴りを避け裏拳を浴びせられる。

 

私たちは 出会ったのかもしれない

 

サボテグロンとドクモンドに二人の蹴りが同時に命中する。

その威力に体が宙に浮くが、怪人達が別の所に注目していた。

 

「一体何だ!?今のは完全に体の動きが合っているぞ!?」

「まさか、歌と共に動きまでシンクロしてるのか!?」

 

態勢を立て直したドクモンドとサボテグロン。二体が驚いたのは響と並行世界のヒビキが同じ動き同じタイミングで蹴りを放った事だ。

自分達の知っている立花響なら兎も角、怪人戦は素人の筈のヒビキが此処までの動きが出来る事が理解出来なかった。

 

私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ

微笑みをSing out with us

 

初めて一緒に歌う筈の二人は一フレーズも外すことなく背中と背中をくっつけポーズまでとる。

 

「! 調子に乗るな小娘如きがぁぁ!!」

 

響達の行動にサボテグロンは隠し持っていた最後のサボテン爆弾…メキシコの花を投げつける。

投げられたメキシコの花はそのまま響達に迫り爆発を起こす。

 

サボテグロンとしてはこの爆弾で響かヒビキが負傷すればと考えて居た。

生身であるヒビキに爆弾が直撃すれば死ぬ可能性が高く、またはヒビキを響が庇えば響も無事では済まない。

どちらにせよアドバンテージが握れると判断していた。

 

「これだけの爆発だ、奴等もただではすまい」

 

ドクモンドもこれには賞賛の声を出しサボテグロンも煙が晴れるのを待つ。

 

♪~

 

「音楽だと!?」

 

何処からともなく音楽が聞こえて来る。それも立花響たちが歌っていた曲の物だと確信した。

そして、煙が晴れると案の定響達の姿が其処には無い。

 

「あの爆発で無事だと言うのか!」

「何処だ!?何処にいる!?」

 

響達が居ない事に慌てて周囲を見回すが音楽が聞こえるが姿は何処にも見えない。

 

「! 上だ!!」

 

サボテグロンの声にドクモンドが上を見る。空には完全に太陽が昇り切り太陽から黒い粒の様な物が見えた。

 

優しさをSing out with us

 

「これが!」

「私達の!」

「「ガングニールだあああああああああああああああ!!」」

 

二人は太陽を背にして腰のブースターで加速し足を突き出す。その姿はまさに上空から下に居る怪人へと迫る一撃となる。

そして、響達の蹴りは怪人達の胸に直撃する。

 

「キィィィッ!!!」

「ヒィィィッ!!!」

 

ドクモンドとサボテグロンがそれぞれの悲鳴を上げ響たちの蹴りに吹き飛ばされ地面を転がる。

反面、攻撃した響達は体力を消耗したのか二人共肩で息をしている。二人共、最早体力の限界でもあるのは明白だった。

 

正直これ以上戦えない。それが二人の考えであり転がる怪人がもう立ち上がらない事を祈る事しか出来ない。

だが、蹴りを喰らったドクモンドの姿を見て生唾を飲み込む二人。しかし、どうにも様子がおかしい。

 

「キィィィッ…雪音クリスだけでなく…こんな素人同然の小娘ごときに…」

 

ふらつき悪態をつくドクモンドは自分の掘った穴に倒れ込み爆発する。爆発した時に発生した風が頬を撫でて響はやっと一息つく。

 

「…倒せた…」

「…本当に?」

 

響の言葉にヒビキが呟く。あれだけ協力で残忍なドクモンドが本当に死んだのか疑わしいからだ。自分達を油断させまた背後から奇襲するのではと戦々恐々だった。

 

そして、サボテグロンもまたふらつきつつも立ち上がる。

 

「ヒッヒッヒッイッヒッヒッヒ…見事だ、立花響。…だが残念だが此処で俺を倒しても変わらん!既に地獄大使は世界征服の為に動き出しているのだ!」

 

「地獄大使?」

「…地獄大使までこの世界に…」

 

「…良い事を教えてやる、地獄大使が居る限り俺達は何度でも蘇る!コノ意味…いずれ貴様らも思い知る…!」

 

そこまで言うと、サボテグロンはゆっくりと倒れドクモンドのように爆散する。

最後まで悪態をつく姿はヒビキは唖然とする。そんな中、

 

 

 

「おい、爆発音が聞こえたぞ!」

「警察呼べ、警察!」

「何だ、テロか!?」

 

 

 

「あ、不味い」

 

響達の戦闘音や怪人の爆発音を聞いた一般人たちが騒ぎ出す。

特異災害対策機動部二課が来るかも知れない事に響は撤退を提案し、これ以上の面倒事はゴメンなヒビキもそれにのる。

響達が撤退した後、警察が来て謎の爆音事件としてテレビを賑わせる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響達が決着を付けた頃、特異災害対策機動部二課指令室では、何人もの呼吸音がする。

 

「ハア…ハア…」

「…ハア…」

 

呼吸音の主は風鳴翼やマリアである。傍にはボーガンのアームドギアを掲げるクリスも居る。

そして、彼女たちの目の前には、

 

「並行世界の装者がこの程度の腕か、大した事なし!」

 

無傷の死神カメレオンが指令の席の上に立ち装者たちを見下している。

死神カメレオンとは対照的に翼とマリアの体には幾つもの傷が作られ血が滴り落ちる。ほぼ三対一の戦いでここまでの差をつけられたのだ。死神カメレオンが見下すのも仕方がない。

既に死神カメレオンに反論する程の体力も消耗した翼とマリアは何とか睨み付けクリスは歯嚙みする。

 

「そろそろ止めを刺してやる!」

 

そう言うと、死神カメレオンは再び姿を消しマリア達が身を固める。

下の階で見守っていた朔也とあおいも何か力になれないかと考える。

 

「カメレオン男がまた消えた!」

「このままじゃ嬲り殺しよ。何か手は…?」

 

これ以上の戦えば装者たちが殺されると焦るあおいの目にある物が映る。

それは、死神カメレオンの舌で胸を貫かれたエージェントの死体だ。正確には死体じゃない、死体から流れた血がピチャッという音を発したのだ。

血が滴った訳ではない。まるで誰かが踏んだように感じたのだ。

 

「気のせい?…!」

 

あおいが血に注目した時、気付いた。翼やエージェントの物でない地を踏んだ後を。

 

━━━あの足跡は雪音さん達じゃない、かと言ってウチの職員の物でもない。…ならあの足跡は…!

 

一つの可能性が浮かんだあおいは急ぎ、空いている指令室の席に着きコンソールを弄る。

この時、この席の職員は何事かという顔をしたが、時間の惜しいあおいはそれを無視した。

 

「あおいさん!?どうしたんです?」

 

あおいの突然の行動に驚きつつ、本人に聞く朔也。

 

「カメレオン男は消えてはいるけどこの世から完全に消えた訳じゃない。ならやりようはある!」

 

喋りながら答えるあおいは、コンソールのキーを恐ろしい速さでタイピングする。それは一つの賭けでもあった。

 

翼とマリアがお互いの死角をカバーしあい、少し離れた所で壁を背にしてボーガンを構えるクリス。

姿を消す相手を警戒してるが、死神カメレオンは縦横無尽に壁や天井にも表れる。

しかし今回の死神カメレオンはマリア達の真横に移動していた。

 

━━━これだけの至近距離だ、避けられまい!

 

今まさに舌でマリアの頭を狙おうとした時、体に何かが落ちて来た。

 

━━━何だ?…水?

 

落ちてきた物に触れた死神カメレオンはそれが水滴だと理解する。

 

「うわ!?冷てえ!」

「何で水滴が…」

 

その水滴はシンフォギア装者の彼女達も気付き疑問に思う。

外なら天気が変わりにわか雨も振ろうが此処は地下の特異災害対策機動部二課指令室だ。雨が降る訳が無い。

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリ!!

 

 

 

そう疑問に思った時、指令室内にけたたましい警報が鳴り響く。

 

「何だよこれ!警報か!?」

「新しい敵でも来たの!?」

「落ち着け、二人共!これは火災警報だ!」

 

突然の警報に慌てるクリスとマリアだが、長く特異災害対策機動部二課に勤めている翼が火災警報だと知らせる。

途端、天井から夥しい量の水が降り注ぐ。

 

「うわ!?」

「この水はスプリンクラーの?」

 

スプリンクラー設備から出る水に打たれる装者たち。それだけでなく、指令室のコンピューターにも水がかかり一部が停止する。

 

「でも…スプリンクラーが?…!」

 

スプリンクラーの水でびしょ濡れになる翼だがある事に気付き。アームドギアの剣を一気に振るった。

 

 

 

 

「アウッ!?」

 

瞬間、斬撃音と短い悲鳴が漏れる。その事に反応したのはクリスとマリアだが、下の階に居るあおい達もそうだ。

 

「やっぱりね」

「やっぱりって?」

「あのカメレオン男は姿を消せたけど本当に消えてたわけじゃない。居所さえわかれば皆で倒せるわ」

「なるほど、そういう事か」

「指令!」

 

あおいの言葉と翼たちの方を見て理解する朔也。スプリンクラーの水が降り注ぎ誰もがびしょ濡れになる。それは姿を消す死神カメレオンも例外ではない。

透明な体に水が流れハッキリと姿が見えた。

あおいは、血の流れた床を姿の消した死神カメレオンが踏んだことに気付き指令室のシステムを弄りスプリンクラーを作動させたのだ。何時の間にか装者たちの邪魔にならないよう移動した弦十郎もあおい達のほうに合流している。

尤も、スプリンクラーの水の所為で、指令室の一部の機械が壊れたりしてデータが吹っ飛んだが命には代えられない。

 

 

「よくは分からないけど…」

「これなら十分戦える!」

 

翼が死神カメレオンに一撃を与えた事にクリスとマリアも気付き、改めて武器を構える。

未だ、スプリンクラーの水は治まることなく死神カメレオンの姿を翼たちに見せている。

 

「何故俺の姿が…水か!?」

 

「遅えんだよ!!」

 

翼の一撃を食らいクリスやマリアの視線に死神カメレオンはやっと自分が補足されている事に気付く。

クリスが遅いと言い放つと共に持っていたアームドギアをガトリング砲に変えて無数の弾丸を撃つ。咄嗟にガードする死神カメレオンだが、クリスの猛攻に押される。更に、

 

「私達が居るのを…」

「忘れて貰っては困る!!」

 

どの位置に居るのか分かればこちらの物と翼とマリアも攻撃に加わる。

翼の剣とマリアの短剣、クリスの援護が死神カメレオンに次々と命中していく。姿を消す能力を打ち破られた死神カメレオンが数に勝る翼たちに最早勝ち目はない。

 

「仕方ない、撤退する!」

 

今度は自分が壁を背にした死神カメレオンが撤退しようと壁に体を付ける。途端に死神カメレオンの体が壁の中へと吸い込まれるように入って行く。

 

「奴は壁抜けまで出来るのかよ!?」

「その能力で此処に潜入したのか!」

「ここは任せて!」

 

ここにきて死神カメレオンの新たな能力に驚く翼とクリスだが、いち早くマリアが反応して短剣を蛇腹モードにして死神カメレオンに投げつけるように振るう。

蛇腹じょうになった剣はそのまま死神カメレオンの体を見きつける。

 

「なっ!?小娘如きの力で俺を引きずり出そうというのか!」

 

「その通り!」

 

マリアが死神カメレオンの体に巻きついた剣を引っ張る。だが、マリアが幾ら力を入れても死神カメレオンはドンドン壁の中へと入って行く。マリアだけでは力が足りないのは明白だった。

 

「コイツ…予想以上に力がある…!」

「私も手伝おう!」

 

見かねた翼もマリアの蛇腹剣を引っ張る。翼が加わった途端、死神カメレオンの壁の中への移動が止まった。

 

「た…たかが二人程度で俺と同じ力だと!?さては貴様らゴリラの生まれ変わりか!?」

 

「…なん」

「…だって?」

 

死神カメレオンの言葉に翼とマリアの額に青筋が浮かぶ。

同時に死神カメレオンを引っ張る力が強まった。この時、死神カメレオンは己の発言を後悔する事になる。

 

「「誰がゴリラだぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

二人の息が合わさり蛇腹剣を思いっきり引っ張り死神カメレオンの体が壁から引きずり出され宙へと舞う。

 

「クリス!」

「待ってたぜ!!」

「待ってた?…ブッ!?」

 

死神カメレオンを引きずり出したマリアはクリスに声をかけた。クリスの発言に疑問を感じた翼もクリスの方を見ると思わず噴き出した。

クリスが何時の間にかシンフォギアから大型ミサイルを出してたのだ。

そして、クリスは躊躇う事無く宙を舞う死神カメレオンに標準を合わせ大型ミサイルを撃ち込んだ。

 

ミサイルは正確に死神カメレオンに当たるとそのまま壁へと直進していく。

 

「馬鹿め、俺を倒そうとこのミサイルでは地下ごと吹き飛ぶ!そうなればお前らも無事ではあるまい、この勝負我々の勝利だあ!!」

 

尖端に当たりミサイルに運ばれる死神カメレオンが勝利を確信すると同時に壁に激突する。

クリスの出したミサイルは大型でショッカーの記録でも大型のノイズを一撃で破壊できる代物だ。それが地下で爆発すれば結果は目に見える。職員は全滅し装者もただでは済まないだろう。

 

その筈が…

 

「な…なぜ爆発しない!」

 

ミサイルは指令室の壁に激突し死神カメレオンの半身を押しつぶしたがそれだけだった。壁に減り込むだけで爆発が一切しない。

 

「バ~カ、アタシが出したミサイルだ。爆発するかどうかはアタシが決めれるんだよ」

 

クリスは今まで多くの敵と戦い大型ミサイルを出すのも一度や二度ではない。時にはミサイルの上に立ち移動代わりに使う事もあり爆発の有無はクリスの設定次第なのだ。

これには大量の汗を流した翼や特異災害対策機動部二課の面々もホッとしている。序でにスプリンクラーの水も止まっていた。

 

「おのれ…忌々しいシンフォギア装者どもめ…だが覚えておくがいい…ショッカーには俺を超える怪人軍団がまだまだ居る事をな」

 

「おい、その話をもっと詳しく…ゲッ!?」

 

死神カメレオンからもっと情報が引き出せないかとクリスがミサイルの上に立って近づくが、彼女が目にしたのは体が溶けて行く死神カメレオンだった。あまりの不気味な光景に茫然としてると死神カメレオンの体は完全に溶けきり消滅する。

 

 

 

 

 

その日、特異災害対策機動部二課は敵が指令室に侵入し交戦、多くの職員が殺される中並行世界のシンフォギア装者の手助けにより撃退という報告が上にされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の中、地獄大使が何かを睨んでいる。視線の先には世界地図が映っていた。

 

「世界征服を目指すには先ず何処から手を付けるべきか。世界の盟主気取りのアメリカを責めるか、暗黒大陸となった欧州にすべきか。…いや、やはり先ずは世界の先駆けとして日本か…」

 

地獄大使は世界征服のプランを考えて居た。東アジア方面で暗躍していた地獄大使だが、首領への手土産の為にもこの世界での世界征服を考えねばならなかった。

もし、ここに策略家のゾル大佐やマッドサイエンティストの死神博士が居ればもう少し楽になった可能性はあるが無い者を強請っても仕方がない。

その時、戦闘員が血相を変えて報告してくる。

 

「イーッ、立花響の抹殺に行ったサボテグロン並びドクモンドが戦死しました!」

「そうか」

 

戦闘員の報告に地獄大使は短く答える。地獄大使もそこまで期待はしていない、せいぜい立花響にプレッシャーを与えればと考えて居た。

 

「カメレオンからの報告がない事を考えれば返り討ちにされたか?まあいい、最低限の仕事はした」

 

あわよくば特異災害対策機動部二課の者を皆殺しに出来ればと考えたが、早々上手くはいかない。それでも死神カメレオンは最低限の働きはしたと褒める。

 

「本拠地が襲撃された以上、今まで以上の警備に人を残さねばならん。即ち特異災害対策機動部二課の動きが鈍くなるということよ」

 

地獄大使としては死神カメレオンが特異災害対策機動部二課を全滅させようが正直、どちらでも良かった。

失敗しても、一度襲撃されたのだ二度三度あるかもしれないと考えれば警備を強化するか何処かに本拠地を移すかで人手は取られる。即ち特異災害対策機動部二課の動きは鈍化する可能性が高くなる。

そうなれば、ショッカーが断然有利になると考えほくそ笑む地獄大使。

 

直後に地獄大使の脳裏に引っ掛かる物を覚える。

 

━━━それにしても妙だな、ワシが態々連絡したとはいえ、特異災害の者達は並行世界の事を疑わんかった。まるで、前にもそんな事があったような反応だ

 

やはり、並行世界から来たのか!?

お前達が元の世界に戻り何をしようとしている?

…要はプリル教会みたいな事か!

 

連絡した時の弦十郎やシンフォギア装者たちの反応を思い出すが如何にも引っ掛かりの正体が掴めない。

結局、地獄大使は特異災害対策機動部二課や装者たちの監視を強めるよう言い放つ。

更に地獄大使は付け加える様に言う。

 

「総員に通達だ、悪魔祭りの生贄を集めろ!」

 

 

 

 

 

 

その日より、日本だけでなく世界中で人間の行方不明事件が爆発的に増える。

 

 

 

 

 

 




「諦めない」というフレーズで響に「knock_outッ!」を歌わせようとしましたが楽曲コードが見当たらず断念。なら無印で歌って無かった「私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ」の歌詞にしました。
JAやNexで検索しても見つからない時はフリーにならないかな…

サボテグロン及び死神カメレオンとの決着を目指してたら思った以上に伸びた。

仮面ライダーの劇中だと倒した戦闘員は爆発したりそのまま消えたりする事が多いですがこの作品ですと緑色の泡となって消滅します。その方がインパクトがありそうなんで。

ヒビキことグレ響はまだ響が改造人間だとは知りません。
個人的な意見ですがグレ響が戦いながら歌ってるイメージがない。

響が特異災害対策機動部二課とクリスとマリアの存在を知りました。
尚、響はクリスとマリアがこの世界の人間だと思ってます。ギャラルホルン知らないからしょうがないね。

そして、やっとサボテグロンがメキシコの花を使いました。やっぱりサボテグロンといえばメキシコの花ですね。…自爆はしなかったけど。

響が何だか遊戯っぽくなってる。その内「相棒」と言い出す?
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