改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

91 / 172
82話 秘密結社ショッカー

 

 

 

薄暗い部屋。敢えて電気が消されている。

その証拠に幾つもの機械音と人工の光が蠢きパソコンのキーを打ち込む音もする。

そしてその部屋には幾つもの呼吸音が聞こえ何人もの人間が居る事がわかる。

 

「…敵の組織名はショッカーか…」

 

其処に野太い男の声が響く。

声の主は風鳴弦十郎だが、居るのか彼だけではない。

翼は勿論、マリアにクリス、調に切歌、響と未来も勢揃いしている。

彼女たちの目はクリスやマリアが持ち帰った記録をモニターに映し出られ皆がそれに釘付けだった。

 

そのモニターには人間ではない怪物や被り物をつけた男が映っている。

カミキリキッド、死神カメレオン、そしてショッカーの大幹部地獄大使の姿だ。

 

「ええ、彼らが言うには並行世界から来たって」

「やはり並行世界か…」

「つまり並行世界の並行世界から来た敵か」

「…ややこしいデス」

 

マリアがそう付け加え切歌の表情が呆れているようだった。

死神カメレオンとの戦いの後、特異災害対策機動部二課で応急処置を受けたマリアとクリスは急ぎ自分達の世界へ戻り仲間や上司に何があったか報告したのだ。

 

そこで、マリアやクリスが撮った記録を皆で見る事になる。

最初は面白がって見物に来た調と切歌だったが場面が進むごとにマリアの手に抱き着き瞳を泳がせていた。

翼も未来も予想以上のショッカーの強さと残忍さに口元を押さえたりしてモニターに釘付けである。金髪の少女らしき人物も興味深そうに注目している。

唯一、立花響だけは最初から険しい顔つきでモニター見ていた。

 

場面が進むごとにそれぞれの装者や弦十郎が驚きの声を上げる。

 

 

 

「今度は蛾のような化け物じゃない!?」

「名前のフシからしてコウチュウ目カミキリムシ科に分類されるカミキリムシが元になってるようですね」

「ただのノイズとは言えアッサリ蹴散らすとは…実力は相当か?」

 

ドクガンダーではない別の怪人、カミキリキッドと名乗り更に別の怪人がいる事を示唆される弦十郎たち。

向こうの翼やクリス達がほぼ片付けたとはいえ、電撃のようなものを出して少数だがノイズの殲滅を行なったことに改めて驚く弦十郎と翼。

更に映像は続いていく。

 

 

 

「ショッカーの杖にショッカーノイズだと!?」

「あの人たち、先史文明期の技術を物にしてる?」

 

通常のノイズでも錬金術で作られたアルカ・ノイズでもなく、ましてやカルマ・ノイズでもない全く新しいノイズに驚く。何より、取り付かれれば死ぬのではなく、怪人と呼ばれる怪物となり使役されるのだ、脅威でしかない。

 

 

 

「人間に対するあそこまで敵意とは…」

「今まで戦った敵の中でもトップクラスの危険度だ」

 

カミキリキッドの関係ない人間に対する発言に眉を顰める弦十郎と翼。

完全聖遺物『ギャラルホルン』が稼働してからだいぶ経ち彼女達も大勢の敵と戦ったが此処までの人間に対する悪意は相当な物であった。

 

 

 

 

「怪物は兎も角、黒い連中は何者だ?」

「カミキリムシは戦闘員って呼んでたけど…」

「…文字通り戦闘をする為の要員と言う奴か。武器を失っても戦意が衰えないとは…」

「コイツ等もロボット兵とかデスか?」

「いや、動きが完全に生き物だ。恐らくは人間だと思うが…」

 

モニターに武器を失おうと反撃を喰らおうと翼たちに襲い掛かるショッカー戦闘員の姿にそれぞれが意見を出す。

倒れても倒れてもカミキリキッドの命令に逆らわず戦闘を続けるのだ。命の無いロボット兵とは訳が違う。だからこそ、クリスもマリアも戦い辛い相手と言えた。

 

 

 

 

 

 

「頭脳破壊電波!?」

「そんな!?シンフォギアのバリアフィールドは極めて性能が高いのに!」

「…でも、マリアのあの苦しみよう、ハッタリなんかじゃない!」

「ええ、正直あれをまた喰らいたいとは思わないわね」

「フィーネを苦しませた兵器と言うのもハッタリじゃなさそうですね」

「それだけじゃなく、蜘蛛や蟹っぽいのも強いデス!」

「…下手なノイズよりずっと強い」

 

ムカデの怪人の頭脳破壊電波に苦しめられるマリアの姿に一同驚愕する。

結果的にマリアがムカデの怪人を倒したがモニターには辛い表情をするマリアに心配そうにする調と切歌も蜘蛛男やさそり男の戦闘力を見て強い事を確信する。

 

 

 

何より、弦十郎を驚かせたのはマリアへの憎しみだった。

 

「随分と恨まれてるな、マリア」

「濡れ衣よ!…でもフロンティアの事を知っていて私が暴露したって事は…あれね」

「ああ、たぶんフロンティアのシステムを使って民衆に訴えた時に暴露したんだろ」

「それって板場さんたちが見たって言う?」

「うん。たぶん、ショッカーの居る世界のマリアさんがショッカーの存在を暴露したんだと思う」

「…たく、裏で暗躍してる組織はこんなのばっかりかよ」

 

カミキリキッドのマリアに対する怨嗟の声に引きながらもモニターを見る。

蛾の怪人の裏切り発言にこの時、裏切ったのかと予想する弦十郎や翼。

 

 

 

 

 

 

「奴は向こうの立花の命を狙ってるのか!?」

「………」

「どっちかと言うと私達の命も狙ってるみたい」

「虫にストーカーされるなんて嫌デス」

「どうやら、連中は元の世界での俺達と相当やり合ってるようだな」

「そんな事言ってる場合ですか!?急いで向こうの響を保護しないと!」

「向こうで居場所が特定出来れば…」

 

遠くのビルが崩れ驚くクリス達にカミキリキッドが言い放った言葉の内容にそれぞれ反応するが響は黙って見てるだけで、未来が向こうの響の保護を訴える。

しかし、向こうの特異災害対策機動部二課も響の行方を掴んでない為、ショッカーより先に見つけねばならないが怪人の襲撃に今回は会えずじまいとなった。

 

 

 

 

 

続けて映像を見ると誰もが息を飲む。カミキリキッドの強さが予想以上だったのだ。それこそ、先に戦った蜘蛛男やさそり男にムカデラスと比べられない程に。

破壊光線だけでなく火炎を吐き炎がビルやアスファルトを溶かして、力自体も人間を圧倒している。現に数に有利な筈の三人の装者は完全に押されていた。

更に純粋に体のみでクリスやマリアの攻撃を受け付けない防御力も目を見張るものがある。

 

「マリア達が一方的に押されてる!?」

「あの虫、どんだけ強いんですか!」

「似たような攻撃をする奴は居たが…」

「複数同時でこれだけ押されるとは…」

「アタシの弾丸もミサイルもハサミで潰された」

「あの怪物、相当強かったわ」

 

翼は並行世界の装者だが、クリスとマリアは今まで多くの激戦を戦い抜いた猛者でもある。

その二人が居てもカミキリキッドへの対応は後手に回りいい様にされていた。

 

「でも、二人には…」

()()()()()があるデス!」

「ボクの計算ではイグナイトならあの怪物も倒せる筈です」

 

押される三人を見ても、装者たちの顔色は明るかった。

切歌のイグナイト発言に金髪の少女が付け加えるように言うとそれぞれが顔を見合し頷く。

イグナイトは彼女達の切り札の一つである。

その証拠にモニターのクリスとマリアも自身のシンフォギアのペンダントに手を掛けた。

だが、次の瞬間にはカミキリキッドが撤退する映像だった。

 

「…退いたか」

「きっとマリアたちの迫力に恐れを出したデス!」

「でも、撤退命令とか言っていたけど…」

「この時にショッカーの内部でも何かあったんだろ」

 

マリアとクリスがイグナイトを使う前にカミキリキッドが撤退した事に残念がる切歌たち。

次の映像には特異災害対策機動部二課地下本部に通されるシーンである。

 

「はえぇ、潜水艦の前はこうなってたデスか」

「…懐かしいな、世界は変わろうと本部の内部は変わってないな」

 

ほんの少しの映像だが弦十郎を始めとした最初の特異災害対策機動部二課メンバーである翼も懐かしい物をみた気分になる。

 

「はあ?そんなもんデスか?」

「ああ、チビッ子は居なかったし知らないのも当然か」

「…クリス先輩、タマに意地悪」

 

旧本部の事を知らない切歌にクリスがそう返し調が頬を膨らませる。

その姿を見て口元がにやける響と未来。すこしだけ空気が和らいだ。

しかし、モニターの次のシーンで指令室の空気が緊張する。

 

「地獄大使!?」

「名前はふざけてるけど…モニター越しでも凄い迫力…」

「へ…変な被り物をした変な強面なオッサンデス」

「…違うよ切ちゃん、あの目や雰囲気…普通の人じゃない」

「ああ…少なくともあの身のこなし…ただ立ってるだけとはいえ只者ではない。それにしても大幹部自ら連絡するとは…」

 

切歌が強がりを言うが調が即座に訂正し弦十郎が地獄大使をただのコスプレ野郎ではないと感じた。

言葉には出さないが翼も地獄大使の姿を見て汗が一筋流れ、響も奥歯を噛み締める。響には分かった、目の前の男は今までの敵以上に話し合いが通じない事を。

そして地獄大使の声にも聞き覚えがあったのだ。

 

「夢の声と同じ…」

「…響」

 

そんな響を心配そうに見る未来。

そして、地獄大使の要求に更に憤る装者たち。

 

「…酷い!人をムシケラ扱い」

「今まで色々な悪党と戦ってきましたデスけど、ここまで悪い奴も珍しいデス!」

「最終目標は世界征服もアタシ等の嫌いなタイプだ」

「向こうの俺もアイツ等に手を貸すのは反対したか、ならばよし!」

「恐らくだが、例え連中に立花を引き渡しても約束を守るとは思えんな」

「同感ね」

 

ほんのわずかな時間だが、地獄大使の言葉と思想に辟易する一同。

他人をムシケラ扱いし巻き込もうと知った事ではない。

もし、彼女達に嫌いな物ランキングがあれば間違いなく上位を狙えるだろう。

 

 

 

 

 

こうして、地獄大使と向こうの特異災害対策機動部二課は交渉が頓挫し物別れとなる。

しかし、あおいの悲鳴に装者たちはビクッっと反応した。

 

「向こうのあおいさんが!?」

「既に敵が侵入している!?」

「…ショッカーは最初から交渉が頓挫するのを呼んでいたのか?」

「うぇ~、カエルみたいで気持ち悪い」

 

天井にぶら下がり舌を出してあおいの首を絞めて持ち上げる姿に引く装者がチラホラ居り、オペレーター席に座るこの世界の友里あおいも無意識に自身の首元を触る。

ショッカーの奇襲攻撃に驚いてしまう一同。

クリスが咄嗟にアームドギアを取り出して死神カメレオンの舌を撃ち抜きあおいを救出して指令室が安堵するが、それも直ぐに静まり返る。

たった一人の怪人に職員はおろか装者である翼やクリス、マリアも苦戦させられていた。

更には、死神カメレオンの舌が職員の胸を貫く度に同じ顔の職員が凍り付く。

 

「たった一人にここまで殺られるか!」

「動きがトリッキー過ぎデス!!」

「場所が場所だからマリア達がイグナイトを使えない!」

 

場所が地下である以上、クリスは火力を封じられマリアも自由に戦えない。向こうの翼もノイズとしか戦って来ておらず圧倒的に経験がない。

そして、問題は死神カメレオンの能力だ。

 

「ガリィ並みに器用な化け物ですね」

「ええ…戦いにくさは性根の腐った人形並みだったわ」

 

死神カメレオンの姿を消す能力に翻弄されていた。

いかに、歴戦を戦い抜いたクリスとマリアでも完全な奇襲攻撃に消える能力、力を発揮するには最悪な場所とあり、死神カメレオンの攻撃に傷を増やす。

人が殺される映像に装者たちが眉を顰める。

 

「…また殺されたデス!」

「アイツ等、アタシ等だけじゃなくて向こうの職員も皆殺しにしようとしてたんだ…」

「戦ってる時は必死で気付かなかったけど…酷いわね」

「…人って殺されるとああなるんだ。…ウッ!」

「いかん!子供が見て良い物ではない!」

 

クリスやマリア、向こうの翼だけが戦っていた訳ではない。

特異災害対策機動部二課には銃を持つ職員やエージェントが居り彼女達の為に援護しようとするが死神カメレオンが次々と殺していく。

舌で胸や頭を貫き、首の骨を折られるか引き千切られる。

今までノイズに殺された人達しか見た事がない装者にはショックが大きく調が口元を押さえる。

彼女達とて目の前で人が殺される事は多々あった。しかし、そのどれもが死体がそのまま残る事は無く大体が炭か死体事消えるか錬金術師が作ったアルカ・ノイズによって赤い煙のように消えてしまう位だ。

 

調の反応に弦十郎が装者たちの多くは未成年だと思い出し映像を切ろうとする。

 

「待ってください、師匠!」

「響くん!?」

 

響が弦十郎に待ったをかけた。

その目は弦十郎が見ても力強さを感じる程である。

 

「映像はこのままで、私達は…少なくとも私はこの先の映像を見ないといけない」

「響!?」

 

響の発言に未来も思わず響の名を叫ぶ。

未成年の少女には…成人していても人が殺される映像など見せてはいけない。

大人である弦十郎もそう判断してる。が、響の目から見える覚悟に弦十郎は頷く。

 

「…本気か?ノイズとは違い人間の死体が映ってるんだぞ」

「此処で目を逸らしたら私は多分後悔すると思うんです。奴等…ショッカーとの戦い方を少しでも知りたい」

「…そうね、私も連中と戦う為に見ておきましょ」

「…ならアタシもだ」

 

全員が全員、向こうの世界へ行ける訳が無い。防衛の為に何人かは残っていないといけない。

それでもこれから、先ショッカーとは何度となく戦う事を装者たちは確信する。ショッカーの目的に最終目標。何より、ショッカーの大幹部である地獄大使は自分達を抹殺しようとしたのだ。

 

「調、切歌…席を外しなさい」

「ああ、チビッ子には刺激が強すぎる」

「…嫌デス!」

「切ちゃんと同じ」

 

マリアとクリスが調と切歌に退席するよう言う。人間が何人も死ぬ映像を見て正直顔色も良くない。

自分達より更に年下の二人に残酷な映像を見せるのは酷だと判断してだ。

しかし、マリアやクリスの言葉に逆らう調と切歌にマリアの目が見開かれ二人を見る。

その事に弦十郎が溜息を付き頭を掻いた。

 

「…仕方ない、本当は俺達が無理にでも止めるべきだろうが…敵の情報を得る為だ。ただし、気分が悪くなったら直ぐに言うんだぞ」

「…!はい!」

 

響達の意志に根負けした弦十郎。

敵であるショッカーの情報を少しでも得たいのは弦十郎も同じだ。また、皆の視線がモニターに集まる。

 

 

 

「…こうしてるともどかしいデス」

「姿を消す能力。単純だけでやられると対策し辛い」

「こういう時は周り事吹っ飛ばせば楽なんだけどなぁ…」

「地下指令室が完全に仇になってるわね」

 

地下の決して広いとは言えない場所。

下手に火力を使えず逆に敵は縦横無尽の攻撃により職員とエージェントは殺され翼やマリア達に傷が増えていく。

響達も、このままではジリ貧かと思ったその時、モニターに異変が起こる。

 

「…天井から何か振って来た?」

「あれ水デスよ」

「水?そうか、スプリンクラーか!」

「見てぇ!カメレオン男の姿が!」

 

未来の声と共にモニター向こうの水が死神カメレオンの体を伝い流れ透明ながら姿を現す。

 

「そうか、カメレオン男は実際に消えてる訳じゃなく…」

「姿だけ決していた訳デスね!」

「重要な施設には基本的にはスプリンクラーが設置されている。地獄大使め、向こうの特異災害対策機動部二課を侮ったようだな」

「これも、向こうの友里あおいさんのお蔭よ」

「え?」

 

マリアの言葉にあおいが素っ頓狂な声を出した。

死神カメレオンの位置が特定された後は、翼やマリアにクリスの攻撃が次々と命中する。

数の差からいっても既に死神カメレオンに勝機が無いのは誰からも分かる。

 

「よし!そのままいくデス!」

「頑張って翼さんマリアさんクリス!」

「あ、カメレオン男が壁の中に体を入れた!?」

「そんな能力まであるのか!?」

「あっ、マリアさんが短剣をあの伸びる奴に変えてカメレオン男に巻き付けた!」

「アレって蛇腹って言うらしいよ、響」

「おお、マリアと翼が伸びた短剣を引っ張ってカメレオン男を引きずり出そうとしてるぞ!」

「…でも、中々引っ張り出せない」

「頑張るデス、マリア!…おお、二人がゴリラの力でカメレオン男を引きずり出したデス!「切歌、後でちょっとお話しましょうね♪」「そうだな、私も同行しよう」何故!?」

 

切歌の自爆を他所にモニターには宙を舞うカメレオン男にクリスが大型ミサイルを撃った。

 

「ちょ!?クリスちゃん!」

「あんなの撃ったら危ないんじゃ!」

「まあ、見てろって」

 

地下という狭い空間だろうと構わず大型ミサイルを撃った事で響や未来が目を見開きクリスに何か言おうとしたがクリスは自信満々な態度に頷くとモニターを見る。

映像には丁度、死神カメレオンが大型ミサイルに接触し、そのまま壁に挟まれ減り込む。

 

「爆発しないデス!?」

「雪音、あのミサイルは…」

「アタシが出したミサイルだぞ、爆発するかしないかはアタシが選べるんだよ」

「初めて聞いた!!」

「…まぁ、クリスの出したミサイルに乗る事が多いから…ね」

 

クリスの口から語られる衝撃の事実に響が絶叫しマリアがボソッと口にした。

緊急時、クリスの出すミサイルに乗って移動する事も多く、クリスがそういう細工をしていてもおかしくはないかと考える弦十郎たち。

 

「それは兎も角、カメレオン男を倒したか」

「そうですね、イグナイトを使用しなくても怪物を倒せました!」

「…倒せはしたんだ」

 

調と金髪の少女の声で本部を襲った死神カメレオンは倒された。

しかし、倒した本人であるクリスの顔はあまり喜んでいない。

その理由が直ぐに分かった。翼達はモニターの映像を見て絶句し、響は奥歯を噛み締め手を力強く握り締める。

 

「と…溶けてる?」

 

誰かの声が指令室で木霊した気がする一同。

クリスが倒した死神カメレオンに近づいた時、死神カメレオンの体は溶けて行き水の様に液体となり見るみるうちに体が崩れ最後には死神カメレオンの居た痕跡すら消えてしまった。

また、死神カメレオンが姿を消したのかと思いアームドギアを展開する翼たちだが、何時まで経っても攻撃が来ず死神カメレオンを倒したと判断した。

 

「あの爬虫類を倒した、で間違いないのか?」

「多分そうだと思う。一応カメレオン男の溶けた液体を持って帰ったけど…何か分かった?エルフナイン」

「…それが全く、分析した結果動物のDNAしか見つかりませんでした」

 

マリアが金髪の少女…エルフナインに回収した体液を渡していた。

それを元にして分析したエルフナインだが大した情報を得る事は出来なかった。

 

「あのカメレオン男もそうデスけど…まだ仲間が居るみたいデス」

「うん、自分より強い怪人軍団がまだ居るって」

「怪人…」

「それが敵の構成員の名か、怪しい人物と書いて怪人ならこれ以上合う名前はないだろう」

「それで、指令。増員をお願い出来るかしら?」

「アタシ等だけじゃ少し厳しいそうなんだ」

 

映像を全て見終わった指令室では、電気が付き周りが明るくなる。

そして、マリアとクリスが向こうの世界での活動で人手を出して欲しいと言う。

ただのノイズだけならまだいい。ショッカーと言う世界征服を企む組織が出た以上、向こうの翼だけでは荷が重くこの先の戦いで勝てるか不明だった。

その事は弦十郎とて理解している。しかし、弦十郎もおいそれとは頷けない理由があった。

 

「…正直、増員は難しい。ノイズの出現が予想以上で、協力者に過ぎない未来くんすら無理に出て貰っているのが現状だ」

「…そう」

「…暫くはアタシ等だけか」

 

完全聖遺物ギャラルホルンが起動しシンフォギア装者は並行世界に行ける様になった。一見、良い事の様に思えるが問題がある。

並行世界のノイズが無尽蔵に現れるようになったのだ。

シンフォギアでなければノイズとの戦闘は絶望的であり、元々特異災害対策機動部二課も対ノイズを想定し組織され国連に移籍し名前を変えても本質は変わらぬままであった。

人類守護。それが響たちの使命とも言える。

 

だからこそ、自分達の世界を放置する事は出来ない。それはマリアやクリスだけでなく皆、分かってることである。

 

「…師匠、なら私が」

「響!?」

 

出せる戦力が無いと言おうとした弦十郎だったが、其処に響が自ら名乗り出て傍に居た未来が驚く。

未来だけではない、周りに居た装者達も目を見開いていた。

 

「無茶だ、響くんは病み上がりですらないんだぞ!」

 

弦十郎の声が指令室に木霊して何人かの装者が首を縦に振る。

響が再び倒れ数日も経っていない上に映像を見続け疲れたのか調や切歌並みに顔色が悪い。

 

「平気…へっちゃら…です」

「何処がだよ!?」

「指令の言う通り無茶をするな、立花!」

「でも…」

「…暫くは様子見だ、ノイズの出現が落ち着いた頃を見計らって援軍を送る。悪いが二人は少し休んだ後また言ってくれるか?」

「ええ」

「任せとけ」

 

体調の戻らない響の強がりに弦十郎はこの話を打ち切る。

フラつく響は未来が医務室へと運びクリスとマリアは仮眠室で休む事にする。切歌と調もマリア達に付いて行った。

皆の様子を見続けた弦十郎は思わず溜息を付く。

 

「…辛いものだ」

「やはり戦力は回せそうにないんですか?」

「ない袖は振れぬとはよく言うものだ。本当に俺が若い頃はもっと色々出来ると思っていたが…」

 

弦十郎としても、出来れば困ってる人々を助け世界征服を企むショッカーを潰したいとも思ってる。

しかし、その為に自分達の世界を危機に晒す事も出来ない。

結局、自分は安全な場所で年端も行かない少女たちに命令する事しか出来ない事を苦々しく思わざるえなかった。

 

 

 

 

 

 

そして、翼も指令室を出た後に暫しの沈黙が辺りを支配する。

 

 

「それにしても、秘密結社ショッカーか。データは?」

「駄目ですね、何も引っ掛かりません」

「此方も同じく」

 

沈黙を破ったのは弦十郎だ。

組織の名前を知り弦十郎は改めてオペレーターの藤尭朔也と友里あおいに何か分かったか聞いたが帰って来た答えは弦十郎の期待通りではない。

二人が幾ら探ろうと、ショッカーという存在や怪人など全く出てこない。せいぜい、パヴァリア光明結社のノーブルレッドがそれに近いがショッカーのように此処まで人外の姿をしていない。

エージェント達にも調査はさせているが、存在自体してないようで自分達の世界には存在しないとしてホッとする弦十郎と上層部。

 

「指令、戻りました!」

 

丁度、その時調査部に所属してる緒川が戻って来る。

緒川には別の方法で色々調べて貰っていた。

 

「調査した結果ですが、ショッカーという秘密結社は確認できず、地獄大使を名乗る男の正体も不明でした」

「…そうか、なら俺達の世界には居ないと考えていいか」

 

緒川の報告にホッと胸を撫でおろす弦十郎。

弦十郎の心配は自分達の世界にもショッカーと呼ばれる秘密結社が存在する可能性だった。

もし自分達の世界にもショッカーが存在するのなら無視する事はできない。そう考えた弦十郎はオペレーター達や緒川に調べさせていた。

その結果、ショッカーの影も形もない事に安堵し並行世界に集中できる。尤も、秘密結社である以上あまり油断も出来ないが

 

「ボクやキャロルの記憶にもショッカーと言う言葉は聞いた事ありません」

 

暫く考え事をしていたエルフナインもショッカーと言う組織を聞いた事ないと発言し弦十郎は目の前の事に集中する事にする。即ち、並行世界の問題だった。

 

━━━…だが少々気になる。カメレオン男が言っていた「シンフォギア装者などもういらん」とはどういう意味だ。…まさか、ショッカーにもシンフォギアを使う少女が居るのか!?

 

戦闘中に死神カメレオンが発した言葉が気になる弦十郎。

答えが出ないまま弦十郎は報告者や上層部に今回の事を説明しに行った。

 

この日、特異災害対策機動部二課改め国連直轄Squad of Nexus Guardians…縮めて「S.O.N.G」は並行世界に存在する組織、秘密結社ショッカーを知る。しかし、現状彼らに出来る事は何もない。

引き続きクリスとマリアが対処に当たるが現状増援を出すのは難しくノイズの出現が治まって来てからと考えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛っ!?沁みる!!」

「動かないで傷の手当てが出来ない」

 

少女の悲鳴が漏れると共に少女と同じ声がジッとしているよう言い、少女は断続的な短い悲鳴を漏らす。

此処は、とある学院の寮であり戻って来たばかりの二人の少女は怪我をしてる方の少女に常備薬の傷薬を塗っていた。

二人の正体はサボテグロンとドクモンドと戦った並行世界の響とこの世界のヒビキだ。

 

帰宅後、響がヒビキの体の傷に気付き部屋に設置されていた常備薬を使い傷の手当てをする。

最初は抵抗していたヒビキもドクモンドに地面に叩きつけられた痛みがぶり返して結局折れることになる。

内出血したのか、背中の一部が青くなってるが其処まで重症ではないと判断して響は簡単に包帯も巻いていく。

 

「ねえ…」

「ん?何?」

「…ショッカーの事を教えて」

 

包帯を巻いてる途中にヒビキは響に語りだす。沈黙に耐えられなかったのか単純に知りたいだけかヒビキの口から「ショッカーを教えて欲しい」と言われ響は言葉を詰まらせる。

 

「………」

「お願い…今回の事で私も連中に狙われるのが確定した…少しでも情報が欲しい」

「…分かった。でも私も全部知ってる訳じゃないけど…」

 

ヒビキの覚悟に響は頷きゆっくりと自分とショッカーの因縁を話す。尤も、自分が拉致され改造人間にされたのは伏せてるが、

響の口から出て来るショッカーの情報にヒビキは度肝を抜かれる。殆どが予想以上だったからだ

 

「地獄大使や首領だけじゃなくてゾル大佐に死神博士って言う大幹部まで居て…。全ての人間を改造人間にして世界を手に入れようとしていて邪魔な奴等は皆殺し…」

「私の居た世界でも暴れまわってた。奴等の所為で殺された人は百や千じゃ済まかったよ」

 

ヒビキの予想以上に凶悪な組織であるショッカー。それでも響が向こうで勝ち続けた事に関心もしている。

 

「私の世界に居た翼さんやクリスちゃんが一緒に戦ってくれて凶悪な怪人軍団も撃破出来たんだ」

「…ふぅーん」

 

ヒビキの脳裏に翼と言う人物は特異災害対策機動部二課の風鳴翼だと考えたがクリスと言う名前に心当たりはない。

暫くは別世界の自分と共闘すると考えるヒビキ。

 

「…ねえ、もう一人の私」

「…なに?」

「特異災害対策機動部二課に行く気はない?」

「…嫌」

 

暫く黙っていたヒビキだったが、口から出た言葉は拒絶だった。

 

「…悪いけど私はまだ、他人を信用できない。それに前に風鳴翼さんの言葉を無視して…今は会わせる顔がない」

「そう」

 

他人への不信感により他者を拒絶するヒビキ。本人も本当は特異災害対策機動部二課に合流出来れば心強い味方になるかもとは思うが、まだ他者を信用する事は出来ない。

尤も、話を振った響も内心ホッとしていた。

もしヒビキが乗り気で特異災害対策機動部二課に行けば言い出しっぺの自分も行かなければならず、体の秘密を知られる可能性が高い。

そうなれば、自分を人間扱いしてくれるか不明だ。

 

━━━変に同情されるのも嫌だな…

 

だがそれ以上に他者が自分を可哀そうな物を見るような視線は嫌だった。

ショッカーから逃げ出し特異災害対策機動部二課に保護された時も疑いの目を向けられた事もあるが、それ以上に同情の視線があった。

多分悪気は無いのだろうが同情するような視線だけは響は慣れなかった。内心、元の世界に帰りたいと思いつつ自身の胸元に触れる。

 

結局、響はショッカーの説明をしてその日を終えた。自分が拉致され改造人間にされた事を隠していたのは心が痛かったが何れはヒビキにも打ち明けるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本、某所

普段は車が行き交う高速道路。だが、現在は別の物が走っている。人だ。

老若男女問わず、皆何かから必死に逃げ出そうとして、自衛隊や警察が避難民が行く方とは逆方向に銃などを撃っている。

銃を撃つ先に居たのはノイズだ。

 

「皆さん、こっちに避難してください!!」

 

自衛隊の人間が拡声器を持って人々を避難誘導している。彼らは突如出現したノイズから避難していたのだ。

此処が東京ならばノイズと戦えるシンフォギア装者の風鳴翼が来てくれるが、あいにく此処は都内ではない。

ノイズは人類を脅かす認定特異災害。つまり災害であり何処で出現するのかは分からない。

それは、当然シンフォギア装者の手の届かない場所にも出現する。そうなれば一般人は逃げ警察や自衛隊がノイズの相手をするしかない。

 

「バスが来たぞ!!」

 

警察官の一人がそう叫んだ。

避難民たちや別の警官が見ると何台ものバスが此方に近づいてくる。

 

「やった、バスだ!政府が俺達を助けに来てくれたんだ!」

 

背広を着て外回りしていたと思しきサラリーマンが歓喜の声を出す。一般人にとってノイズは死、そのものであり恐怖は並みではなかった。

正直、バスの速度でノイズから逃げ切れるかは疑問ではあるが走るよりはマシと言えた。

 

そして、バスに合流した一般人たちは次々と乗車してその場を離れて行く。

 

「我々が時間を稼ぎます。その間に!」

「…分かりました」

 

自衛隊の一人が運転手にそう言うと、その場を後にしバスの扉が閉まる。

そして、ゆっくりと発信してその場を後にした。

 

この時誰もが気付かなかった。バスの運転手たちが邪悪な笑みを浮かべていたのを。

 

その後、自衛隊と警官隊の活躍で多数の殉教者を出しながらもノイズの撃退に成功した。

それは良かったのだが問題もある。

百人近い避難民を乗せた何台ものバスが行方不明になった。そして、警察が調べると政府どころか何処のバス会社もバスを出した記録が無かった。

 

 

 

 

 

 

 




何だか総集編みたいな流れに。
XD世界でのS.O.N.G関係者に怪人達を見た反応が書きたかった。
そして、いずれは本編の響の悲劇もS.O.N.G関係者が知る事に…。
尚、直ぐには援軍を増やせない模様。

響達の方はまだ積極的に特異災害対策機動部二課に接触しません。

シンフォギアって基本死体は残りませんよね。せいぜい、ガリィに吸い殺された連中やノーブルレッドのミラアルクが翼を挑発する為に少女や訃堂が撃った八紘ぐらいか。

XD本編は何処まで終わらせるべきか?
いっそ、XV全て終わらせといてゲルショッカー編でキャロルやパヴァリア光明結社の事を伝えて対策しようとするけどデストロンやGOD機関が出現しておじゃんの方が面白いか?


特異災害対策機動部二課時代にノイズが地方とかに出ていた場合どうしてたんだろうか?
S.O.N.Gなら潜水艦が本部ごと移動できるし装者をミサイルで撃ち出せるけど、東京の地下でそんな事出来るか?
と思ったら、一話でヘリ使ってた。でも、未来曰く直ぐ近くだったらしいけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。