そこまで広い通路と言えない廊下。
そんな廊下にも何人もの人間が行き来し、何か作業をしている。
「オーラーイ!オーラーイ!」
「誰かレンチを取ってくれ!!」
「隔壁は其処じゃない!もう少し奥の方だ!」
あちらこちらで溶接や配線の接続をし、果てには大きな鉄の塊を一定場所に設置などもしていた。
彼らは、破壊された施設の修理と警備強化をしているのだ。その証拠に隔壁が幾つも設置されている。
「…忙しそうだな」
「しょうがないわ、敵に侵入を許したんだから」
そんな作業を横目に二人の人間が奥を歩いている。
クリスとマリアだ。元の世界で報告を終え休んだ後にまた、この世界に来ていた。
途中何度か、足止めを食らう中、予定より大幅に遅れて指令室へと来た。
「…あ、お二人さん、こんにちは…」
「…マリアさん、雪音さんいらっしゃい」
「え…ええ」
指令室に入った直後にオペレーター席に座る藤尭朔也と友里あおいがいらっしゃいと歓迎する。
尤も、二人の顔を見たクリスとマリアは絶句していた。何故なら、
「…凄いクマだな」
藤尭朔也と友里あおいも目の下にハッキリとしたクマが出来、目も血走っている。
恐らく、死神カメレオンの襲撃から碌に寝ていないのが分かる。
「ははは…スプリンクラーの所為で殆どのデータが吹き飛んで…」
「その復旧に手古摺ってるのよ。後先考えずスプリンクラーなんて使わない方が良いわね…」
特異災害対策機動部二課のパソコン類の殆どが水を被った。その結果、三分の一のコンピューターが壊れ七割近いデータも吹き飛んだ。
通信システムは勿論、職員のデータや食堂のデータに重要機密など様々だが一番痛いのは聖遺物の実験データや聖遺物に関するデータだ。
幸い、聖遺物の殆どは別の場所に保管されてるがやはり実験データが飛んだのは痛い。
藤尭朔也も友里あおいも手元にあるエナジードリンクを飲んでクリスとマリアを見る。若干引き気味のクリスとマリア。
「さっき通信システムの復旧がやっと終わってね…」
「…吹き飛んだデータのサルベージにどの位時間が掛かるかしら…」
「あ…はい」
二人の迫力に押され思わず返事をするクリス。マリアも汗を掻きつつ指令室の様子を見る。
其処には藤尭朔也や友里あおいの様にデータを打ち込む職員や、死神カメレオンとの戦闘で壊された機器の取り換えなどもしている。
忙しそうにしてる彼らを見ても何もできない二人は苦笑するしかない。
「戻った、ん?もう来てたのか」
「お、オッサンとアンタか」
二人が復旧中の指令室を見ていると指令室のドアが開き返事が聞こえる。
振り向くと司令官である風鳴弦十郎と翼が一緒に入って来た。
「あら、その恰好…」
マリアが珍しい物を見た風に口を開く。マリアの視線の先には何時もの腕まくりした赤シャツではなくちゃんとした黒スーツを着ている。
「ん?これか、上の連中の説明と殺された職員の家族に会ってたんだ」
「殺された…」
死神カメレオンとの戦闘に十人以上の職員やエージェントが殺された。
仕事上、ノイズの事件も扱う為に殉職は其処まで珍しい事ではない。しかし、未知の怪物と目される怪人に殺されたのだ。
守秘義務はあるが最低限の説明の為に弦十郎が遺族に頭を下げに行っていた。
「そう、遺族に…」
「尤も家族を殺された生き残りがノイズを殺す手伝いをする為に回された人員も多いんだがな…」
「そんな事、初めて知ったぞ!」
「君達の世界はどうかは知らないが特異災害対策機動部二課はあまり表沙汰に出来る組織ではないのは知っているだろう。その関係上、家族が居ない天涯孤独な職員やエージェントも多いんだ」
特異災害対策機動部二課とて、要は公務員である。基本的な仕事は政府の代わりにノイズを倒したり聖遺物の実験などを行っている。
決して安全とは言えないが人類守護の為の組織であり、政治家の顔色も窺わねばならない。
そして、其処で働く以上ノイズや聖遺物関係で殉職する事も珍しくはない。
大体が家族の居ない職員だが家族が残ってる場合は政府が支援する事も多い。
『何を呑気に話しておるのか、それでも特異災害対策機動部二課の司令官か!愚息よ!』
「「「「!?」」」」
弦十郎の説明を聞いていた一同だが突然通信機に老人の声が響き皆がモニターに目を移す。
瞬間、モニターに着物を着た白髪の長髪をし顎髭を蓄えた老人が映る。
「チッ!」
「風鳴…訃堂…」
「御祖父様!!」
クリスとマリアは通信相手の正体に露骨に顔を顰め翼が大きな声で御祖父様と呼ぶ。
弦十郎も突然の通信に目が点となり、その反応に訃堂の機嫌は増々悪くなった。
「な…何故、アナタが…」
『護国の砦たる特異災害対策機動部二課の指令室に敵を招き、剰え怪しげな小娘どもに撃退させるとは…やはり、お前に司令官をやらすのは間違いだったか!!』
訃堂の言葉にクリスとマリアは内心舌打ちをし、弦十郎は汗を掻き訃堂の文句を聞く。
「ま、待ってください!御祖父様!そもそも、指令室に侵入した敵を倒した二人をその様に言うのは…」
『
「何だと!!」
翼が弁明しようとした時、訃堂はクリスとマリアに視線を向けて言い放ちクリスが文句を言う。
「もう一回行ってみろ!クソ爺!!」
『何度でも言ってやる!貴様らが並行世界から来た言うペテンを吐き、特異災害対策機動部二課を潰し日本を薄汚いアメリカの影響下に置こうとしてるのではないのか!?そもそも、ショッカーとやらもお前達が手引きしていたのではないか!?』
「御祖父様!!」
訃堂の言葉に思わず翼が激高の言葉が出る。
翼としては、並行世界から来て自分達の手助けをしてくれてる客人にその言い方は無いと思ってだ。
しかし、
━━━風鳴訃堂の考えも尤もね…
マリアは内心、訃堂の考えも理解出来ていた。
翼が一人、ノイズと戦ってる時に所属不明のシンフォギア装者が二人も現れ「自分達は並行世界から来た」と言い、ノイズ退治の協力をしてくれるのだ。
ありがたいが怪しい事この上ない。
更に、同時期に同じく並行世界から来たと言う秘密結社ショッカーが現れたのだ。
疑うなと言うのが無理である。
『今回の損失から出た人員は風鳴機関から出してやる。ありがたいと思うんだな』
「風鳴機関!しかし、それは…」
「爺さんの手駒かよ」
「要は私達の監視ってところね」
訃堂の人員を出すと言う言葉に眉を顰める一同。
風鳴機関の者、即ち風鳴訃堂の息のかかった人間と言う事だ。
出来れば拒否したい弦十郎だったが、大量に死人が出た以上、急ぎ人材の補充をしなければならず、また訃堂がわざわざ出してやると言っている以上即戦力の可能性も高く結局弦十郎に断る術は無かった。
『まったく、鍛錬もせず頭ばかりの愚息め!いい加減、ガラクタ作りは止めて一から鍛えろ!!』
「ガラクタッ!?ガラクタとは何ですか!!」
「また始まった…」
いよいよ話を終わりに差し掛かった頃に訃堂の口からガラクタと言う言葉が弦十郎に火をつけた。
通信越しでの二人の口論が始まり翼が呆れた目をする。
その事に目が点となるクリスと翼。
「おい、何だよ…」
「ガラクタがどうのって聞こえたけど…」
「…あれでも叔父様は、技術者で発明家でな、趣味が機械いじりや発明で特許を幾つもとっているんだ。御祖父様はそれが気に入らないようで…」
『ガラクタをガラクタと言って何が悪い!?悔しければ護国の役に立つ物を作ってみろ!』
「作ってもアナタが認めないんでしょうが!!」
「成程…」
「ハア…」
翼の説明を聞いて同じく溜息を付くクリスとマリア。
訃堂としては風鳴の家に生まれた以上、護国の為に尽くし体を鍛えて強くなって欲しかった。
対して弦十郎は、最低限鍛えただけで頭脳を生かし様々な発明をして護国の役に立とうとしたが、訃堂は弦十郎の発明品を悉くガラクタ扱いにして両者の仲はかなり悪かった。
クリスもマリアも翼と同じく呆れた目で二人の口論を見守った。下手に介入して仲が更に拗れる可能性もそうだが、翼曰く両者ともそこまで相手を憎んではいないそうだ。
━━━ぜってぇ嘘だろ
━━━少なくとも風鳴訃堂は本気で罵ってないかしら?
元の世界での訃堂の行いややらかしを知っている二人は信じてはいなかったが。
その後、訃堂と弦十郎の口論を冷めた目で見ていたクリスとマリア。
訃堂もやっと気が済んだのか別の話題を出す。
「避難民が行方不明?」
『そうだ、生き残った自衛隊員が言うには避難用のバスが来て民間人全てが乗ったそうだが、何処にもバスから降りた者が見つからんず、それどころか、そのバス自体誰が寄越したのかも不明よ』
訃堂が話した内容、それは昨日起こった不可思議な事件。
数台のバスが百人近い住民を乗せ行方不明となったのだ。これには特異災害対策機動部二課も寝耳に水である。
「そんな話初めて知りました!」
『通信機も壊されてたのだ、当たり前だ』
翼の言葉に訃堂が言い捨てる。特異災害対策機動部二課の通信機が無事ならば弦十郎たちの耳にも入っていた可能性が高い情報だ。
「…で?何でその事をアタシ等に聞かせた?」
『ふん!ワシとしては護国と関係もない少数の民間人が行方不明になろうが死のうがどうでもいい。…だが、その裏に世界征服を目論むショッカーと言う連中が居るのなら面白くない。それだけだ』
そう言い捨てると訃堂は通信を切り静寂な空気が指令室に流れる。
「…ちっ、本当に護国以外どうでもいいんだな」
「そうでもなさそうよ、少なくともあの老人にはショッカーは邪魔な存在のようね」
舌打ちするクリスにマリアがそう返事する。
何しろ目的の為には万を超える民間人を犠牲にする事だって躊躇わない
そんな男がわざわざ通信で教えて来た以上、放置する事も出来ない。
「それにしてもバスだと?大胆な連中だ」
「連れ去った人々に何をするつもりだ」
「分かんねえけど…きっと碌な事じゃないぜ」
ノイズが一般人を攫う筈がなく、人を赤い煙に変えるアルカ・ノイズもこの世界には無い。
そうなれば、必然的に人々を攫ったのはショッカーの可能性が高い。
翼やマリア達が話をしてる途中、突如指令室に警報が鳴り響く。
「ノイズが出現!場所は…〇〇高速付近です!」
「おい、その場所って…」
「ええ、避難民たちが行方不明になったのも高速道路よ。場所は昨日より幾分か東京に近いわ」
「また、多数の避難民が高速道路を伝って避難してるようです!」
「この程度の距離ならヘリで十分間に合う。ショッカーが出て来るかも知れん、君達も出てくれるか?」
弦十郎の言葉に頷くクリスとマリア。
その直後に翼たちは弦十郎の用意した特異災害対策機動部二課のヘリに乗り込んだ。
同じ頃
昼間という事で人通りの多い街中。
仕事の為の外出だったり、用事があって歩く者。または学生なども多くが通行している。
そんな、街中に二人の影が動く。
「…あんなお店在ったかなぁ?」
「そんなにキョロキョロしてるとお上りさんみたいだけど…」
言わずと知れた二人の響だ。
ヒビキの方は何時もの灰色のパーカーにフードを目深く被り、響はこの世界に来た時の服装で歩いている。
因みに、響の服装は元の世界で未来やクリスと買った普段着だ。
部屋に籠ってばかりでは気が滅入ると響に言われ渋々外に出たヒビキ。出たのは良いが人通りの多い街中を歩きながらキョロキョロする響にヒビキが注意した。
「あ…ごめん」
心無しに燥いでいた響もその言葉に何とか落ち着く。その様子に溜息を付いたヒビキは響に疑問をぶつける。
「街の様子なんて大して違いは無いでしょ。アンタの世界では違ったの?」
「それは…」
ヒビキにとって、東京の街は見慣れてる上に今は2040年代だ。昔より色々便利にはなっただろうが響が珍しがる程でも無いと思っていた。
一方、響の方は街中を誰かと歩く事自体数える程しかなく、何より…
「今は隕石の所為で街もボロボロに…」
「…あの話…本当だったの」
死神博士との戦いで強行された流れ星作戦。
その影響で隕石が世界中に落とされ、当然日本も無傷では済まなかった。
地獄大使の居る基地へ移動中にチラッと見えたが街の悉くが廃墟となりその傍らには住む家を失った人々が政府の配給品に群がる光景を見ていた。
それでも、海外と比べれば日本は大分マシだと聞いている。
「………」
「………」
響の話を聞いてから二人は喋らず歩き続ける。何となく空気が重い感じもしていた。
━━━困ったなぁ…話が途切れちゃったよ。昔の私なら結構喋れてた筈なんだけど…あれ?この辺って…
「ねえ、もう一人の私」
「…なに?」
「お腹空かない?」
「あったあった、やっぱりこの世界でもあるんだね」
ヒビキの手を引っ張った響は商店街の方を歩き目的の店に到着する。
その店の名は、
「ふらわー?」
よく未来や創世たちと行っていたお好み焼き屋「ふらわー」だった。
響は街中を歩いてる時にふらわーの道順を思い出しヒビキを連れて一緒に来たのだ。響としては、正直同じ場所にふらわーがあるかどうかは半信半疑だった。
そこでもし、ふらわーが存在しなかったらそれはそれでヒビキに謝罪しただろう。
「うん!私が居た世界じゃ友達も絶賛していて美味しいんだって」
「? そう、でも残念だけど私はお腹なんて空いて…グウウウウゥゥゥゥゥ…」
響の言葉に若干引っ掛かりを覚えるヒビキだが今はそんなに気になれず、体よく断ろうとした時、丁度匂いに当てられたのかヒビキの腹部から合図が出てヒビキは何も言えなくなる。
響はこの事を見越していた。部屋に居る時もヒビキは簡単な軽食を摂るだけで済ましてしまい、響はまるで無理なダイエットをしてる様に見えて心配だった。
結局、ヒビキは響に腕を引っ張られ中へと入った。
「いらっしゃい!あら、初めて見る顔ね。奥の席にどうぞ」
ふらわーの中は響の記憶通りのおばちゃんが元気にお好み焼きを焼いておりサラリーマンや学生が一人ずつ居た。
「おばちゃん、豚玉一つ下さい!」
「あいよ!」
響の声におばちゃんは元気そうに返事をする。
二人が席に座るとジューと言う焼き音と香ばしい匂いがしてきてヒビキも思わず生唾を飲み込む。
そして、数分もしない内に二人の前に大きめのお好み焼きが運ばれる。
「はいよ、豚玉一丁!」
「…大きい」
「…相変わらず美味しそう、切ってあげるね」
そう言って、響は備え付けられていたヘラを使い丁寧に豚玉を切り分けヒビキの前に持って行く。
豚玉を目の前にしたヒビキは箸を掴んで切り分けられた豚玉を持ち上げ目の前に掲げた。
「いただきます…!」
あの事件以来、家を離れたヒビキが久しぶりに「いただきます」と言った事を思い出すと共に口に入れた豚玉に衝撃を受ける。
熱い!確かに豚玉の熱さにヒビキの口の中は火事のように熱い。がそれ以上に
「…美味しい」
久しく味わってなかった旨味にヒビキは夢中となった。家を出て寮に暮らして以来、ヒビキは腹いっぱい食べる事がなかった。
腹に入れてもツヴァイウイングの悲劇後の悪夢に何度も吐いてしまい、それ以来ヒビキは簡単な携帯食などで少しだけ腹に入れてるだけだった。
だからこそ久しく忘れていた美味しいという情報にヒビキは人目を憚らず目の前の豚玉を食らい尽くす。
直後に響が切り分けた豚玉を渡してそれも貪り喰らう。その際にソースや食べかすが服に散らかるがお構いなしで響も少し驚いていた。
その様子はふらわーのおばちゃんも舌を巻く程だ。
高速道路。
道沿いには友里あおいが言った通りノイズから逃げる多数の避難民が移動している。
その避難民を誘導するのは特異災害対策機動部の黒服たちと多数の自衛隊員だ。
「急げ急げ!ノイズの数は少ないとは言えこっちに迫って来てるぞ」
「少しでも時間を稼げ!」
避難する人達を誘導しつつ持ってる銃を撃つ自衛隊員たち。
尤も、ノイズの位相差障壁の前に銃弾は通り過ぎるだけだ。それでも自衛隊員たちは僅かでも時間稼ぎの為に撃ち続けていく。
このままノイズに接触され炭化するかと覚悟した時だった。
上空からヘリの飛ぶ音が聞こえると共に青い幾つもの剣がノイズを貫いていく。
「特異災害対策機動部だ!彼女が来てくれたぞ!」
自衛隊員から歓喜の言葉が響いた。
「報告通りならノイズの数は多くはない。私一人でも問題は無い、お前達は避難民の方に」
「ああ」
「了解よ」
ヘリの中で翼はノイズは自分だけで対処すると言いクリスとマリアは万が一にと避難民の護衛をする事になりそれぞれがヘリを飛び出す。
「この程度の数なら!」
ヘリから飛び出す翼はそのままノイズの方に飛び、次々とノイズを切り捨てていく。
クリスとマリアの目から見ても本当に一人だ大丈夫そうだと判断した。
「おお、流石先輩だ」
「…感心してる場合じゃないわよ」
マリアの目に避難民の方に向かって行くバス群を捉えた。
念の為、特異災害対策機動部二課の本部に連絡しようとするが、
「繋がんない?修理は終わった筈じゃ…」
「…間違いない、妨害電波よ」
幾ら通信しようと繋がらない。その事にマリアが妨害電波と予想すると同時に現れたバスの正体も分かった。
何しろ、あのバス群が現れてから通信が不可能になったのだ。
そして、バスの一台がマリアたちの前に止まった。
「こちら、政府から派遣されました。急いでバスに乗って避難しますよ」
「それはありがたい」
「やったぁ!助かるぞ俺達」
バスから降りた運転手の言葉に自衛隊員と避難民が喜ぶ。ノイズから逃げる為に自分達の町を捨てたり避難民の保護や護衛をしていた自衛隊員も肩の荷が下りたと思ったのだ。
このまま避難民たちがバスに乗ろうとした。が、
「待って貰おうかしら」
マリア達が呼び止め黒服が避難民たちを抑える。
今まで、共にノイズを牽制した黒服たちの行動に自衛隊員も避難民たちも目が点となる。
「何か問題でも」
「ちょっと聞きたい事があっただけよ。あなた達、誰の要請で来たのかしら?」
「可笑しな事を聞きますね、〇〇大臣ですよ」
「なら命令書も持ってるわよね。見せて貰えるかしら」
「………」
バスの運転手から聞いた政治家はマリアも知っている相手だった。ならばと、命令書を見せろと迫る。
その言葉に運転手は黙秘した。
「どうしたのかしら、見せて貰えるわよね。本当にそんな要請がされていたら」
「マリア!」
すると、他のバスに移動していたクリスが大声を出してマリアの名を呼ぶ。
その手にはバスの運転手と同じ格好をした案山子が引っ張られていた。
「他の運転手は存在しない!ソイツ以外は全て人形だ!」
「…これは如何言う事かしら」
クリスとマリアの行動に混乱する避難民たち。それとは別に運転手に銃を向ける黒服たち。
マリアとしては、バスの関係者をハッキリさせる為にクリスに別のバスを調べてもらっれ居たが一人以外全部が人形だとは思わなかった。
「フフフ…ハッハハハハハハハハ…ウルルルルルルル!!」
突然、笑い出した運転手は被っていた帽子を取り外しゆっくりと顔の前に持ってくる。
瞬間、運転手の姿から緑色の肌に白く大きく飛び出した目玉、首元に蛇が巻かれた怪人が現れた。
「蛇!?」
「ば、化け物だ!!」
「撃てぇぇぇ!!」
正体を現した怪人を見てパニックになる避難民たち。対照的に怪人の姿になった運転手に銃弾を浴びせる自衛隊員と黒服たち。
直後、マリアは嫌な予感を感じ飛び上がった。瞬間、白い煙が黒服や自衛隊員を飲み込んだ。
「「「「うわああああああああああああ!!」」」」
「!?」
白い煙を浴びた者達は次々と倒れていく。
マリアやクリスが助けようとするが、
「なっ!?」
「溶けてる!?」
煙を浴びた者の体が崩れまるで燃える発泡スチロールのように溶けてしまう。
あまりの事態に茫然とするクリスとマリア。
「攫えんのならばもういらん。この海蛇男様が貴様ら諸共地獄に送ってやるぅ!!」
自らを海蛇男と名乗った怪人が白い目でマリアたちを睨みつける。
「ごちそうさま」
結局、響が切り分けた豚玉を全て平らげたヒビキは水を飲んでやっと落ち着いた。
久しぶりに感じる満腹感に満たされるヒビキはグッと伸びをする。
「アンタ凄い食べっぷりだね、見ていて気持ちよかったよ。何だったらもう幾つか焼いてあげようか?サービスするよ」
「…いえ、もうお腹いっぱいで…ありがとうございます」
ヒビキの食べっぷりにお好み焼きを焼いていたおばちゃんも気分が良くヒビキにお代わりをするか聞いて来た。
尤も、今まで小食で過ごしていたヒビキの胃は一杯一杯で丁寧に断る。
自分と居た時は目が座り不満顔だった表情が今は満足感に満たされ見ていた響は少しだけ笑い来てよかったと思う。
「ふら、口の端にソースが付いてるよ。…口に端どころじゃないけどね…」
「ありがとう。うわ、手や袖とかにも付いてる」
がっついた事でソースで口元や手を汚したヒビキに響が御手拭きを渡し拭き取ると改めて自身の服にソースが飛び散ってる事に気付く。
ふう、と息を吐いたヒビキが熱さの所為か食べた事によって発生した汗を拭う為、フードから顔を出した。
「あら?アンタたち似てるね。双子かい?」
フードを外したヒビキの顔を見てそう聞いたおばちゃん。
当然だ。響とヒビキは同じ顔で同じ背丈だ。事情が分からない人が見れば双子と勘違いする程に。
「い、いえ違います。その…親戚です、親戚」
おばちゃんの反応に響がそう言い切る。
此処は双子という事にしておけば角も立たないと思うが万が一ヒビキをよく知る人物に知られれば面倒な事になると判断して親戚という事にした。
「親戚?へえ、親戚でもそんなに似てるんだね」
響の言葉に納得したのか、おばちゃんは二人を何度か見た後にそれ以上追及せず厨房に戻って行った。
それを見届けた二人はホッと胸を撫でおろす。
少し焦った響は自分の傍にある水を一口飲み、ヒビキの方は頼むつもりか暇潰しか注文のデザートを覗き込んでいる。
このまま時間が過ぎるかと思われた時だった。
『…番組の途中ですが、ここで臨時ノイズ情報をお伝えします。現在ノイズが出現したのは○○高速付近。繰り返します、現在ノイズが出現したのは○○高速付近です。皆さまノイズにご注意してください!』
「「!」」
「あれ、○○高速ってそこそこ近いじゃない。大丈夫かしら」
店内に設置されていたラジオからノイズに関する情報が流れて来た。サイレンが鳴ってない以上、この辺りでは無いが響とヒビキはお互いの顔を見合わせ頷き合う。
「おばちゃん、お愛想!」
二人は急ぎ支払いを済ませてノイズの居る○○高速へと行こうとする。
もしかすれば、特異災害対策機動部二課の翼たちと鉢合わせするかも知れないがその時はその時だ。
助けを求める人が居る限り無視する気など響にはない。そして、ノイズへの復讐も諦めていないヒビキ。
「あら、此方の方の会計をやっちゃうから」
しかし、運が悪くサラリーマン風の男性が先に支払いをしていた。
出鼻を挫かれた二人は割り込む訳もいかず並ぶしかない。見れば先に居た学生も既に支払いを済ませてるようで、もう店内にはいなかった。
「はい、丁度。ありがとうございました。」
「ごちそうさん」
サラリーマンは直ぐに支払いを終え店の引き戸に手をかけ響達の番となった。
このまま急いで支払いを済まそうとしたが、
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
「「「!?」」」
突如男の悲鳴に響たちもおばちゃんも入り口の方を見た。
途端、引き戸が倒れ先程会計を済ませたサラリーマンが倒れる。更には、
「ちょ、お客さん大丈夫かい!?」
「何アレ?トゲ?」
サラリーマンの背中には先端部分が白く灰色をした巨大な槍のような物が突き刺さっている。
おばちゃんが介抱しようと近づいたが、
「ヒっ!?」
「!?」
「なっ!」
響たちもおばちゃんも今度こそ言葉を失った。
倒れたサラリーマンが着ていた背広ごと溶け白い煙を噴き出すと骨だけが残った。目の前の人間が理科室にある骨格標本のようになりおばちゃんたちは愚か響たちも唖然とする。
「け、警察!」
「ねえ…これって」
「うん」
目の前で人が骨になった事でおばちゃんは慌てて警察に電話しようとし、響とヒビキも互いの目を見合わせ頷いた。
━━━間違いないショッカーだ
響がそう確信した直後、
「で、電話が通じない!?どうして…!」
「電気がおかしい!」
ふらわーの店内の明かりが消え不気味な光りが点滅する。
慌てるおばちゃんに不気味な光りに足が震えるヒビキ。そんな中、響はジッとその場に佇む。
━━━これは間違いなくショッカーの仕業だ。次は何をしてくる?…!
「危ない!」
「!?」
神経を研ぎ澄ませていた響は咄嗟にヒビキの手を掴み引っ張る。直後にヒビキの居た場所に天井や壁、床から幾つもの大きなトゲが通り過ぎる。もし、響に引っ張られなければヒビキの体中に突き刺さるところだった。
「これって…」
「い…一体何が起こってるんだい!ノイズでも現れたのかい!?」
自分が狙われ助けられた事に茫然とするヒビキに自分の店や天井から見た事がないトゲが生えた事にパニックになるおばちゃん。
「アイヤヤヤヤヤヤヤ!どうだ、立花響。俺様の針の味は?」
「!?」
「何だい、この不気味な声!」
突然聞こえて来た不気味な声にパニックになったおばちゃんがフライパンとお玉を持って右往左往し、ヒビキも不安そうな表情をする。
それと同時に四方八方から針が飛び出す。
「既に殺人ビールスの準備は完了した。東京どくろ作戦の前に景気づけに死んで貰う!」
「殺人ビールスに東京どくろ作戦!?一体それは…」
主犯格と思われる声に反応した響は質問しようとするが、声は答える事がなく次々と壁から針が飛び出す。
更に、飛び出した針は宙を舞い響たちに迫る。
「針だけ動かせる!?なら!」
「え?」
「ちょっと!?」
もうこの場は危険と判断した響はヒビキとおばちゃんを抱えて走る。
走る先にはサラリーマンが倒れた時に倒れた引き戸のある出入口だ。
そのまま空いてる方に向かった響だが、あと少しというところで何本もの針が飛ばされた事に気付き、咄嗟に響は破られていないもう一つの引き戸に自分の体をぶち当てて扉を粉砕する。
その際、ヒビキとおばちゃんには残骸が当たらないよう響の体で守った。
扉を破った響は二人を抱えたまま勢いのまま外に飛び出し周辺を見る。
「ほう?俺の針の包囲網を破るとはな」
「お前がショッカーの新しい改造人間か!」
「さっきから何なの?…ヒっ!化け物!」
響の目の前には体中に鋭い針が生え目の近くに赤い飾りの様な物が付いた不気味な存在…怪人がいる。
「その通り、俺の名はハリネズラス!貴様らを地獄に送る者だ!!」
怪人…ハリネズラスが名乗ると同時にふらわーの店舗が爆発を起こし火が店を包み込む。
茫然とするおばちゃんにヒビキ。
ヒビキを元気づけようとしていた時に最悪なタイミングでのショッカーの襲撃に響は自分の迂闊さに奥歯を噛み締める。何よりショッカーが堂々と人目のある商店街で真昼間から自分達を襲って来たのが完全に予想出来なかった。
━━━人目を避けようとするショッカーがどうして!
響は知らない。既に特異災害対策機動部二課とショッカーが二度の戦闘が起こり本部に強襲された事を。
響はしらない。地獄大使が堂々と特異災害対策機動部二課に宣戦布告し人目を忍んでも意味が無いと判断した事を。
今、高速沿いと商店街で二つの戦いが起ころうとしていた。
劇中でも怪人が本性を現す時、よく帽子を顔の前に翳す姿、自分は好きです。
またもや、ショッカー怪人の同時攻撃。そして、おばちゃんにとばっちり。
何だかグレ響のトラウマが増えてる気が…
ゲームでもグレ響の飯事情とかやってないと思うし。LOST SONG編は飛ばし飛ばしだったから少し分からない。
グレ響がテレビ版響のように食べる姿が想像が出来んかった。
そして、今回訃堂が登場。
ゲームの翳り裂く閃光だと出番も無かったのですが本部が襲われた事で通信してきました。家族仲は…
海蛇男が乗っていなかった他のバスですが海蛇男が操ってました。
劇中でも無人トラックや無人ヘリ(燃料ナシ)を操っていたし出来るでしょう。
次回予告
海蛇男「よくも俺様の邪魔をしてくれたな、シンフォギア装者どもめ。だがお前たちなど俺様のガスでシンフォギアごと溶かしてやる。そして俺の見せる幻影に苦しむがいい!
次回「驚異の幻影攻撃!?海蛇男のプリズム・アイ」諸君、次こそがシンフォギア装者の最後だ!」