改造人間 立花響のシンフォギア   作:一種の信者

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パソコンやっと取り替えた。

起動時にパスワード入力がウザい。モニターから音声が聞こえたのには地味に感動した。


89話 毒蝶の誘い

 

 

 

特異災害対策起動部二課指令室。

 

何時ものように職員が目の前のパソコンを操作しモニターにクリスとマリアにショッカー戦闘員とゴキブリ男の映像が流れる。

何人かの職員がモニターに映るゴキブリ男を見ないようにしてる中、クリスとマリアは指令室に備え付けてあるソファーに座ってボーっとしていた。

来て早々戦闘になったのだ。一日が経ったとは言え疲労が残っていた。

 

丁度、指令室の扉から司令官である源十郎が入ってきた。

 

「二人とも、来て早々ご苦労だった」

 

源十郎の口から労いの言葉が出る。

しかし、二人はその言葉を聞いても首を動かすだけである。

 

「…報告は終わったの?」

「ああ、今しがたな。現場に残された細菌も焼却処分が決まった」

 

特異災害対策起動部は現場に残された荷物の中でショッカーが街中にばら撒こうした細菌を見つけ直ぐに調査させていた。それでも処分するのはいささか早い決断とクリスは考えてた。

 

「いいのか? あれ回収して一日しか経ってないぞ」

「…実験の際、テストに使ったラットが瞬時に老化して死んだ。 それどころか他の予備のラットに研究員にも感染して全滅した。 それで上がもしも細菌が外部に漏れたら手に負えないと判断したんだ」

 

源十郎の言う通り調査を行っていた研究機関が細菌の感染を起こした。想像以上の感染力に国のお偉いさんは全てを処分する決定を下す。漏れた研究機関も火炎放射で徹底的に消毒される事が決定される。生き残った研究員も感染してる疑いから隔離され一週間ほど監視される。

源十郎の報告を聞いてクリスもマリアも思わず息をのむ。

 

「そんなに危ない物が…」

「ああ…結果的に研究機関の一つがマヒした状態だ」

 

マリアの言葉に答える源十郎。

ゴキブリ男の声である程度は知ってはいたがそこまでの物とは思っておらずクリスとマリアは言葉も出ない。

それもシンフォギア装者であるクリスやマリア、翼を狙ってではなく東京の大都市に無差別にばら撒こうとしたのだ。

 

「…そんなの、もうテロじゃねえか!」

「元々、世界征服や人類抹殺なんて言っていたから…」

「ある意味テロリスト以上よ」

 

嘗て、とある国で両親を失った事を思い出したのかクリスが叫ぶように独白する。

それに反応したのは特異災害対策起動部二課の職員である藤尭朔也と友里あおいだった。

一瞬、指令室の空気が重くなり沈黙が暫く続いた。人を老化させる細菌をばら撒く作戦を阻止されたショッカーが次にどう動くかが分からないのだ。

誰もが予想しなかったこれだけの細菌を用意したのだ、次は更なる恐ろしい作戦を実行してくるかも知れない。

誰もが脳裏にその事が過ったのだ。

 

 

 

「ん? 連絡?」

 

一つの連絡が藤尭朔也の下に送られる。そして、それが沈黙を破るきっかけとなった。

 

「…! 指令、エージェントの報告で立花響さんを見つけたそうです!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

誰しもがその言葉を聞いて藤尭朔也の方を向き、クリスやマリアに至っては立ち上がってすらいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

 

日がだいぶ沈みかけた時間帯。

学園近くの公園にあるベンチで一人の少女が座っている。この世界の立花響だ。

彼女の両脇にはパンパンになった紙袋がある。

 

「これだけあれば当分持つかな」

 

そう言って紙袋を撫でるヒビキ。つい先ほどヒビキは、寮に戻って着替えなどを持ち出したのだ。

廃ビルで寝泊まりして一日だが、やはりヒビキも年頃の娘。どうしても着替えが欲しかったのだ。特異災害対策起動部に連行される可能性はあったが、隙を見て寮に戻り数少ない着替えを紙袋に詰めてきた。

 

「…下着とか触られてないよね」

 

特異災害対策起動部の人間が自分の部屋に入ったのは知っているが何を触られ調べられたかは分からない。下手すれば自分の下着も入念に調べられたかもしれない。

一応下着の位置は変わってなかったが念のため、後で洗おうと誓うヒビキ。その時、自分に近寄る気配を感じる。

 

「!」

 

視線を紙袋から正面に移す。

正面には何時の間にか銀髪の少女と薄いピンクの長髪の女性が自分の前に仁王立ちしている。一瞬誰だと言おうとしたヒビキだが、銀髪の少女の顔に僅かながら覚えがある。

エージェントの報告を聞いて急いできたクリスとマリアだ。

 

「…あんた…」

 

「よう、覚えていてくれたか?」

 

正直忘れかけていた。しかしその娘は間違いなく自分がノイズと戦闘中に割り込んだ少女だ。

ヒビキは念のためにと警戒しつつ相手を見る。すろと、銀髪の少女の横にいた薄いピンク色の髪をした女性が口を開いた。

 

「あなたが立花響さん…よね?」

 

「そう、だけど…誰?」

 

「そう身構えないで、私達も装者よ。 前に一緒にノイズと戦ったでしょう?」

 

「………」

 

ヒビキは答える事はなかったが、あの時銀髪の少女の他にもこの女性もいた気がする。

最もあの戦いからだいぶ時間が経つ上に厄介な連中の所為で記憶が曖昧になっているが。

 

「…それで? 何の用?」

 

「その…良ければ一緒に特異災害対策起動部に行かないかしら」

 

ヒビキの質問にマリアは一瞬躊躇い言葉を濁して二課へと誘う。

本当ならショッカーに狙われてるのか?とか、妙なノイズを見たのか?とか色々聞きたかったが、もしショッカーの存在を知らなければ自分たちが怪しく見られると思ったのだ。

 

「…イヤ」

 

そしてヒビキの答えはシンプルだった。その目は冷たく、マリアどころかクリスすらそんな目をしてるとは到底信じられなかった。

 

「おい!「待って」…」

 

ヒビキの様子に思わず声を荒げるクリスだが、マリアが落ち着くよう言うと再びヒビキに語り掛ける。

 

「その…どうして嫌なのかしら。 もしかして翼が嫌い?」

 

「……そうじゃないけど…あんた達もあいつ等の仲間じゃないの?」

 

その言葉に二人は理解する。ヒビキは自分たちを特異災害対策起動部二課とは思わずショッカー()として見ている事を。

 

「待てよ、アタシ等はあいつ等とは関係ねえ! むしろアタシ等だって襲われて…」

 

「やっぱりあいつ等の事を知っていたんだ!」

 

クリスが弁明しようとするが、それよりも早くヒビキは紙袋を握りベンチから立ち上がって走り出す。

二人が呆然としてる間にヒビキの姿はアッサリ見えなくなった。

 

「取り付く島もなかったわね…」

「あ…ああ」

━━━…オッサンに聞いていたけど、あいつでもあんな暗い顔するんだな…

 

何とかヒビキと接触した二人だがヒビキにアッサリ逃げられ溜息の一つもつく。

一旦、特異災害対策起動部二課本部に戻ろうかと考えた時、

 

「あの~すいません」

 

「「!」」

 

女性の声に突然呼ばれた二人が振り向く。そこには何時の間にかおかっぱ頭の二十代位の女性が立っていた。

この女性がクリスとマリアに話しかけてきたのだ。

 

「な…何か?」

 

「いえ、二人が響ちゃんの知り合いみたいで…思わず」

 

「響ちゃん!? あんたアイツの知り合いなのか!?」

 

女性の発言にクリスが食いついた。ヒビキを説得する力になるかと思ったからだ。

その後、ヒビキの事を聞く二人だが、

 

「詳しい話なら私の屋敷にどうぞ、特異災害対策起動部二課のお二人さん」

 

「!?」

「あ…ああ」

 

立ち話もなんだと、女性は二人を自分の住み屋敷へと案内する。

ふと、クリスが立ち止まりヒビキが走っていった方向に目をやる。其処にはもうヒビキの姿は見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走る。私は走る。まるで何かから逃げ出すように逃げている

暫く走ったからか、息をするのが厳しい上に汗も掻いて気持ちが悪い

気付けば私が寝泊まりしている廃ビルが目の前にあり、振り返ると誰も居らず周りには私だけのようだ

……これでいい、あの二人がショッカーと関係してるかは分からないけど今は誰かと一緒に居たくはない!

 

「…どうせみんな独り、誰も辛い時に助けてなんてくれない」

 

みんな私から離れていった。クラスの仲の良かった子や友人だった子、仲の良かった近所の人達さえ私たちを邪魔もの扱いした

そして未来も…?

 

━━━わたし…今誰の事を考えてたんだろう…

 

とても大事な温かいモノだったような…

 

「あ、お帰り!」

 

何時の間にか私は泊まっている廃ビルの部屋に到着していた。見れば自分と同じ顔同じ声をした少女…もう一人のワタシが声を掛けている

返事をしようとした私だが…

 

「何してるの?」

「え?掃除」

 

もう一人のワタシが何処からか手に入れた大きなゴミ袋に床に散乱していたゴミを片っ端から入れていたようだ。中身の無いお菓子の袋に空き缶空き瓶、壁や天井から剥がれたコンクリートに虫の死骸

取り敢えずは部屋を少しでも快適にする為だろうけど

 

「…箒が見つからなくて掃き掃除までは出来なかった」

「……アンタを見てると自分の悩みが馬鹿々々しくなる」

 

どうせみんな独り、誰も辛い時に助けてなんてくれない。 …でも何でだろう? この子を見てるだけで不思議と胸が温かくなる。 もしかしてもう一人のワタシと一緒に居ればもう一度他人を信用出来るかも

 

「布団も少しだけ干すことが出来たから今夜はグッスリ眠れるかも」

「…それはありがたいんだけど…よく見ると鳥の糞がついてるんだけど…」

 

…やっぱり気の所為かも知れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園から其処まで離れてない距離に古い屋敷が見える。

クリスが何処となくフィーネの住んでいた屋敷を思い出しつつ二人は女性の案内で内部に通される。

 

「さあ、ごゆっくり」

 

「それで早速だけど…」

「立花響の事を教えてくれるかしら」

 

部屋に通された二人はソファーに座りつつヒビキの事を聞こうとする。部屋の中には骨董品の鎧に剣や槍の等身大模型に壁には無数の蝶の標本。不気味なことこのうえない雰囲気に二人はさっさとヒビキの情報を聞いて帰ろうとしていた。

しかし、そんなこと知ってか知らずか女性は笑みを浮かべて「お茶を入れてくる」と言って部屋を出て行ってしまう。

 

「クリス…気づいてる?」

「ああ…それにしても不気味な場所だ」

 

マリアの語り掛けにクリスが頷くと改めて部屋を見回す。

鎧武者の甲冑に西洋の鎧に蝶の標本。それだが不気味に見えて仕方なかった。

 

「珍しいでしょ、アマゾンの奥地にいる毒蝶もあるのよ」

 

その時、二つの紅茶の入ったティーカップを乗せたトレイを持った女性が入ってきてそう言い放つ。

二人は大して興味も湧かないが「へぇ~」と返事をする。

 

「さあ、どうぞ」

 

「その前にあいつの事を聞かせろよ」

「…そうね」

 

目の前に置かれた紅茶を一瞥したクリスがそう言ってマリアも続く。

二人とも出された紅茶には指一本触れようともしない。

 

「積もる話もありますが、先ずは紅茶を。 とある国での最高級品ですのよ」

 

「そんなに進めるのならあなたが飲めば」

 

マリアの言葉に笑みを浮かべていた女性の顔が一瞬で真顔になる。

更に、マリアの代わりにクリスが続ける。

 

「いい加減正体を現したらどうだ!」

 

「正体? はて、何のことやら…」

 

しかし、クリスの言葉に惚ける女性。その姿にイラっとくるクリス。

だが、ここでマリアが決定的な事を言う。

 

「あなた、どうして私たちが特異災害対策起動部二課の者だって知っているの?」

 

「いや、さっき立花響と話してる時に『一緒に特異災害対策起動部二課に行かないかしら』の言葉を聞いていたから…」

 

女性が何気なく話すがマリアもクリスもお互いの顔を見て頷く。

 

「ねえ、クリス。 私、()()なんて言ったかしら?」

「いいや、言ってねえ」

 

「……」

 

マリアの問いとクリスの答えに女性の顔の笑みが消える。

 

「何故アナタが二課の存在を知っているのかしら?」

 

「そ…それは…ニュースで見て…」

 

「残念だが、ニュースで取り扱われるのは特異災害対策起動部()()の方だ。 二課は政府間でも極秘扱いなんだよ!」

 

S・O・N・Gの前、即ち特異災害対策起動部は政府機関でありノイズが現れた場合の避難誘導に被害状況の処理などをしており、報道からも一般人に伝えられる特異災害対策起動部のイメージでもある。それが一課だ。

対する二課はシンフォギアの所持上、世間に公表できない部分がありこれが後に国連の組織となる。報道では絶対に一般人に漏れることはない。

 

「だと言うのに、アナタは二課の存在を知っていた。 正体を現しなさい!!」

 

「…フフフ…ホッホッホッホホホホホホホホッ!!」

 

マリアの発言に追い込まれた女性だが一転し笑い声を上げだす。

その様子にクリスもマリアも黙って見詰めつつペンダントのギアに触れている。

 

「抜かったね、二課が世間に秘密にされてるのを忘れていたよ」

 

「ま…待ちなさい!」

 

マリアの制止を無視して女性はそれだけ言うと部屋を出て扉を閉める。

その迫力にマリアとクリスは唖然としていた。

 

「何なの? あの迫力…」

「怪人と対峙した時くらいの迫力だ」

 

瞬間、部屋の電気が消え外の明かり入った時、二人は息をのむ。

部屋の中が先ほどまでとは違い、誇りまみれで甲冑や西洋騎士の鎧にクモの巣が幾つも出来ており、まるで何年も放置されていたようにも見える。

 

「何だよ!?これ」

「私たちは幻覚を見せられていたの!? 兎に角、外に!!」

 

マリアが逃げた女性を追おうとし、クリスもそれに続く。

扉を開ける二人だが、またもや二人は息をのんだ。扉の外には女性が仁王立ちしている。しかも、目元には薄い青い線が走り、口元は血のように赤い口紅が身も元まで走っており口が裂けてるようにも見えた。

 

「!? アナタは!」

 

「驚いても遅い! イイヒヒヒヒヒヒッ!!」

 

不気味な鳴き声を出した女性が手をクロスさせると一瞬にして昆虫のような触覚に左肩には巨大な蝶の羽のような物が生え虫特有の顎、腰にはショッカーベルト。女は一瞬にして怪人へとなった。

 

「怪人!?」

「怪しいとは思ってたが女の怪人か!!」

 

「ショッカーはアマゾンの毒蝶に私の命を注ぎ、改造人間ギリーラを作ったのだ。 死ねぇ!!」

 

「!?」

 

嫌な予感を感じたマリアはクリスの手を引っ張り急ぎ扉とは逆方向に進むと紅茶の入れられたカップの置かれたテーブルを蹴り上げ盾のようにする。

直後、ギリーラが口から何かを吐き出すと盾にされたテーブルに突き刺さり針部分が貫通し二人の頬を掠める。

 

「この屋敷諸共死ねがいいぃ、小娘!!」

 

 

 

 

 

 

 




敢えてショッカーの罠に飛び込むクリスとマリア。

ちなみに紅茶の中は睡眠薬が入っており、地獄大使は二人を捕獲しようとしてました。理由は当然、ギャラルホルンの情報です。

滝と九条みわ(ギリーラの人間体の名前)とのやり取りを再現しようと試みた結果。

やっとクリスとこの世界のヒビキが再開し会話しました。
原作だとEV5-3のイベントです。




次回予告
クリス「ショッカーめ!アタシ等を罠に嵌めた気でいただろうが最初からわかってたんだよ!お前たちの目的が何かは知らねえけどアタシとマリアで阻止してやる!! …何打!?息が…次回『毒蝶の罠』 アタシたちの歌が封じられる!?」
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