「さて、これからどうしよう?」少年は一人、難しそうにごちた。
たとえこの海が今まで少年の行いゆえに流されたヒトの血と涙、あるいはそうした末の
彼は勃起していた。
生理現象であった。むしろ彼がこのような彼の理解を超えた異常なる世界へといきなり放り出された異常な状況下においてですら、冷静沈着じみた異常な自儘さを発揮していたのは、ここまでの性的発奮をしていたのは、彼がついさっきまでその身で超常的現象にして思春期の男子にはまったくもって衝撃的な体験をしていたからであった。
平たくいうのなら彼の性癖ドストライクの少女が全裸で巨大化して、乳首解禁したそのあとにプラグイン(直喩)しちゃってからのクリームパイ(暗喩)ののちにバケツで作ったプリンのごとく
そうしていたらあらよあらよと知らぬ間に世界大変貌、すべてがすべて赤い海と死に還ってしまった。少年はどういうわけか取り残されて、そのままである。
知らない間に世界が滅ぶ……というか還元して、少年一人を取り残していった。わけわかめである、いや、ほんとに。
これが本当のボッチ、シン・ボッチであろうか。ということは俺がこの世界の現状においてはアダムであり、イブのもととなる存在ということなのであろうか。いやしかしながら俺は自分自身から生まれた存在と事をなしたくはない、俺の純潔はもうちっとばかし劇的に、かつ浪漫チックにエロスを伴って失われるべきなのである。
そういや生物は危機的状況に追い込まれると、その生殖能力の真価を発揮せしめるという。なるほど、そういうことか、なら致し方ない。
彼は恥を一切捨てる決意を──つまるところ人間的良識・倫理を自覚を持ったうえであえて自分という存在から消し去ることを──決意した。
それほどまでに、それほどまでに。
自我が、リピドーが、炸裂せんとしていた。
なにがシン・ボッチであろうか、チン・ボッキである。
ああ、あの超巨大にして美大なるなめらかな青白き、幽玄さすらも含んだ富士山にも当然勝る、あの
首が、落ちる。ドン、と紅海が慟哭する。
あの光景を、俺が忘れることは決してないだろう。
何度も夢にもみるだろう。
幾度も思いだし、妄想し、思い返し、味わい尽くすように堪能するだろう。
全身にピタリと張り付くようなプラグスーツが、邪魔でしょうがない。勃起のあまりにも頑強さに、股間に生地が引っ張られていて全身の姿勢が自然と前のめりになる。歩きづらいことこの上ない。
少年は自分の着慣れた、あの
なぜか自分が、記憶が、意志が、意思が、ひどく曖昧だった。曖昧模糊で寝起きざまの頭みたいだった。コーヒーかコーラでカフェインを補給しなければと、やはり漠然と思った。
けれども股間にいまだに屹立として存在する、諸悪の根元にしてヒトという生命のかたわれを生産し、放出する器官は、膨張し硬化しては少年に避けがたい肉体的苦痛を与え続けていた。
チンコ痛いねん。
そういや勃起し続けるとチン子は腐ってしまうとどこかで聞いたことがあるな、と少年はおもいだし、戦慄した。
早く抜かねばならない。その決意が再び少年と彼の陰茎を確固たるものにした。
だがまずはションベンをしたい。
少年は白い小便をする前に水っぽい方の小便をすますタイプだった。間違えて、我慢できずに男で潮吹きとか御免被る。
なぜ小便がしたいのかといわれても。生理現象であるので、しかたがない。強いていうのなら、出すタイミングを逃したのだ。その結果少年は数時間ほど膀胱と括約筋の悲鳴に耐えなければならなかった。
だいたいすべてが突然にすぎたのだ。フリーダムすぎた。
これまでのことを回想するとともに、少年はいきなり不機嫌になった。躁鬱じみているくらいの気分の変わりようであった。
彼はそのままこれまでの不満を練り返すように思い返し、いちいち悪態をついてみせた。
だいたい、人様がなんでか身ぐるみはがされかけたレイプ風味な格好のまま放置された、クソ生意気女(仮)のあのひんにゅーを見てガチめに吐いたり、なんか死んだはずの惚れていた女が生き返っていて気が狂いそうになったり、やべーヤツ……、とにかくやべーヤツがいきなり出てきて精神崩壊しそうになったり……。そこまで追い詰められているというにもかかわらず、義務だの責務だの、人類の希望だのといって戦わせるだけのおとなども。
もうなにもかもイヤになるぜ、とっととみんなくたばれ。
そう思っていた。
そんなときにいきなり虐殺じみた戦争ですよ。
あれーおかぴーぽー。ねえ、ねえ、ねるふとじえいぐんてきょうりょくかんけーにあるんじゃないのおー!?
こちとらトイレの個室に閉じこもるのが日課になってんじゃィ。ぜんぶ新人くんにまかせてんだよ、おれのことはほおっておいてくれよ。
え、しんじん君じゃなくて
ちなみに少年はクソのまえに小便をすますタイプであった。で、あるからにしてこのとき小便よりもさきにクソをすませたのには、それなりの危急さが今回のクソにはあったとわかるであろう、具体的には下痢だった。
それゆえに神は……紙は絶対不可欠であった。プラグスーツは基本、服の上からではなく素肌に纏うようにして装着する。つまるところ──尻を拭くことなくクソをしたままにプラグインするということは──そういう事態につながる。
(参考ながら、生理の時の女子どもはプラグインしたあとには全身からあの独特としかいいようのない、しみったれた生理臭を漂わせていたため、作戦後にしんじん君やらその他の男に近づかれることを極端に嫌っていた。つまりは──そういうことである)
しかもクソが固形ならまだしも、液状となると実に問題である。全身からの臭いどころか、実物が全身にまとわりつくもしれぬ。そもそも地上で、トイレに引きこもっていたこのときですら潔癖性の少年にとってケツの違和感と嫌悪感はすさまじいものだった。
それだからとっくのとうに永久引退を宣言していた少年は、やっとの交渉のすえ手に入れたトイレットペーパーひと切れ(やっぱ
そんで、一方的虐殺(受け身)である。ふ・THE・けるな。あれは実に辛かった。
そもそも相手が使徒とかいう化け物相手であり、人類のためであるとかなんだとかいう大義名分があったからこそ、少年はいままで苦闘に激闘、大戦闘に熱闘、遂には死闘にいたるまでの辛酸たる道のりをあゆんでこれたのである。
それがなんということであろうか、今度の相手はティムポじみた頭部にヌルヌルスマイルつきの、どうにも万人にとって生理的悪寒ばかりを味あわせるような、生命というものに真っ向から顔面にドロップキックを食らわせているようなゲテモノであった──それも多数、それもおかわりつき。
回復機能付きとか聞いてねえぞクソが。しかもなんで
くたばれ(直球)
……いや、みんなくたばったのかしらん?
はてしなく、とめどなく、ただただ穏やかに波を立てている、紅い海を睥睨して、そう思う。
その海水とでもいうべきなのであろう液体は、見れば見るほどに、近づいて五感で感じ取るほどに、あのモノホンのエヴァが毎回毎回、出撃のたびに注入していた脳漿じみた液体によく似ている──そんな気がした。
「ま、なにはともあれ」周りに人はいないようであるし。
やることをなさなければならない。
少年の下半身はすでに一種のしびれ、けいれんすらも起こし始めていたのだった。股間の少し上あたりの、肉体的な三角州とでもいうべきなのであろう、その内部に膀胱を収める部位においては奇妙な冷たさが
我慢の限界であった。
少年はこれ見よがしにプラグスーツを脱ぎ始めた。彼のプラグスーツはヘルメット付きであったが、彼はこれまでの血なまぐさいいざこざの中ですでにそれを破損し、放棄していた。緑色と白色により構成された厚手のプラグスーツ、その前側にあるジッパーを乱暴な手つきでおろし、上着というべき部分を脱いだ。そうしてやっと露わになったベルトというべき、ズボンというべきであろう部分を腰に固定していた帯をワンタッチではずし、それごとズボンを脱ぎ捨てた。
そうして彼は放尿した。
ため込み、我慢していたせいであろうか。彼の尿はひどく黄色かった。まるでLCLみたいだあ。彼はそう思いつつ、自分の創り出した生暖かく黄色い有機的な液体が自身の尿道を勢いよく通過してゆき、外界へと排出される──そうして同時に下腹部の重圧感がへしゃげるように失せてゆく──そんな快感を心行くままに、存分に味わった。
じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ。そんな音ともにわずかな波紋が赤い海へと波及してゆく……
じつに。愉快であった。爽快であった。露出狂といわれる、昨今めっきり見なくなったトレンチコートの変態も、こんな快楽を味わっていたのならばそんな反道徳的行為に夢中になるのも致し方在るまい。全裸のまま、いまだに勢いよく放尿しながら──少年は自分を肯定した。
そうして、遥かというには近い、されど遠いことには変わらない──そんなぐあいの距離に、とある人工物を見つけた。
それは、赤い巨人であった。
しょんべんするだけで4500文字つかう主人公……