Eー1でクリアで引き上げましたけどね。
後演習だろうと実弾です…大破描写ありますしね。
ジャム島基地近海。
深海棲艦が比較的出現しにくいこの場所で、
互いを高め合う為の戦いが始まろうとしていた。
広い海域に二隻の母艦、そこに構える二人の提督。
そして演習を前に麟の艦隊と豪の艦隊が向き合う。
そんな中、豪の艦隊の旗艦、長月が口を開いた。
「始める前に自己紹介と行こうか、駆逐艦長月だ。
主に潜水艦型の対処や夜戦での雷撃の任務が仕事だ。」
「私は島風だよ、早さでは誰にも負けないんだから!」
多くの戦いを経験して、磨かれた経験と自信。
装備は軽量ながらも性能は高く、質も上々だろう。
それ故の火力と速度、何よりも自信を伺わせる二隻。
「電です、魚雷や副砲での援護が得意です。」
「雷よ、主砲での殲滅と夜戦強襲が役目なの。」
「古鷹といいます、偵察と高火力での殲滅が任務です。」
それと比べれば麟の艦隊は未だ戦闘経験は少なく、
配属されて間もないし、装備も良いとは言えない。
しかし、麟は静かに長月たちを見据えている。
(長期戦になると高確率で敗北は必至、短期決戦を挑もうにも
速度で勝る島風と経験豊富な長月達が相手だと分が悪い…。)
(だったら、こっちが打てる手は、少ないけど、
だからこそ、【その手を絞れる】。)
(逆に言えば、その絞った作戦が父上に読まれてることも
考えなければいけないけど、だからどうした。)
(こっちはまだまだ経験の浅い弱小艦隊だ、
負けるなんて道筋は最初から見えている。)
無表情に、しかし内心で戦術を組み上げながら
少しづつ熱く湧き上がる物を感じている。
(それでも、だからと言って、負けるつもりで挑む
理由には至らない…!)
麟はその瞳で鋭く豪達を捉えると
電に、雷に、古鷹に、自らの艦隊に指示を出す。
(今できる私の全力を、父上にぶつける!)
『父上、参ります…!』
「さて、娘のお手並み拝見と行くか。」
豪も自らの信頼する二隻に指示を出す。
「では、行くぞ!島風、遅れるなよ?」
「それを私に言うの?だったら遅れるのは長月だね!」
互いに軽口を叩きながらそれぞれ配置に着く。
「足手まといにならないように、しっかり援護します!」
「演習でも、全力で行くわよ!」
「お二人の援護を無駄にしません、偵察機、発進!」
主砲副砲が入り乱れる中古鷹は偵察機を上空に飛ばす。
「ん?敵機が確認できているのに、何故偵察機を…?」
偵察機には小規模の装備が積まれているだけで艦爆や
艦攻装備はついていない。
「懸念すべきものは撃ち落とすべきか。
長月、対空砲で撃墜を。」
「了解だ…!?」
「させないのです!」
偵察機を撃ち落とそうとする長月を電が止める。
「勿論、あんたの相手は私よ?」
「む、私を止めようとするんだ?できるの?」
雷が島風を止める。
「う、これは不味い流れだな、古鷹に誰もついていない。」
『ここまでは作戦通り、でも…。』
麟の艦隊が優勢に見えるがここで出るのが経験の差だ。
長月や島風は隙が出ようものなら偵察機、もしくは
一番の火力である古鷹を狙う。
それをさせないために果敢に攻める電達だが
搭載されている燃料や弾薬は無限ではない。
無駄な攻撃をすればするほど消耗して行く。
攻めれば攻めるほど後になれば不利になるのだ。
更に実践経験の多い長月達は電たちの攻撃を
なるべく最小限の動きで被害を少なく抑える。
「どうした?ただ攻めるだけでは私には当たらないぞ?」
「同じ駆逐艦なのに、これほど差が開くなんて…。」
電はただ驚いた、駆逐艦はたしかに種類が多いが
島風のように性能が突出した艦は少ないからだ。
いくら攻撃しようとも簡単に処理される、
被弾したかと思えば持ち前の動きで直撃を避けられる、
今の電が火力不足なのもあるが、実力差が明白だ。
「ほらほら、私に一発でも当ててみたら?」
「もう、なんて早さなの!?」
雷も似たようなもので、主砲を撃てども
着弾までの間にあっさりと直撃を避けられる。
「疾きこと島風の如しってね。」
「それは風でしょうが!」
魚雷を放っても同じく躱される。
「攻撃はその程度か?ならこちらから行くぞ!」
「今まで攻撃された分倍返しで行くよ!」
防衛に努めていた長月達だったが、一転して攻勢に移る。
「はにゃぁ!?」
「くっ…弾速が早い!?」
攻めに転じられて困るのは麟の艦隊だ、
なにせ未だに強い攻撃や被弾を受けたこともなく
被害を被った時の立ち回りが不十分なのだ。
『…やっぱりか。』
麟もそのこと念頭に置いていたがやはりそこは経験の差、
島風の連装砲や長月の的確な攻撃であっさりと被弾をもらい
電と雷は中破まで追い込まれた。
『でも、こちらもある程度の被害は承知の上。』
『賭けにも等しい攻撃だけど、それでも
これはこっちが切れる最高の札。』
『ただじゃ負けてあげないよ、長月、島風。』
麟は古鷹に指示を出す、麟の切り札。
重巡の火力を活かせる高火力砲。
『古鷹!』
「了解です!弾着観測射撃、開始します!」
古鷹の火力は昼戦ならばここの誰よりも高いが
長月と島風の前には全く通らないだろう。
「行きます、全砲門、一斉発射!」
だが、現在その命中精度を補う偵察機が居る。
古鷹の火力を確実に命中させる、麟の切り札だ。
「援護するのです!」
「司令官の作戦、絶対に成功させてみせるわ!」
それだけでなく、中破まで追い込まれようとも、
その援護をする電と雷。
麟達の執念の切り札は長月と島風に突き刺さる。
「くっ…いいのを貰ってしまったな…!」
長月は大破まで追い込まれた…が。
「いたた、よくもやったね、魚雷発射!」
島風を止めるまでは叶わなかった。
不意を打たれたように魚雷は古鷹に命中する。
更に、大破した長月が偵察機を対空砲で撃墜。
「あぐっ…これ以上の戦闘は厳しいですね…。」
『…これ以上の戦闘はできませんね、父上、こちらの降参です。』
「うむ潮時だな、演習を終了する、全艦母艦に戻ってくれ。」
双方の艦隊が母艦へと戻る、演習の結果は、戦略的敗北。
格上相手にしては上々とも言える結果だろう。
『電、雷、古鷹、お疲れ様。』
母艦へと戻ってきた電たちを麟は優しく出迎えた。
「司令官さん、すみません、負けちゃいました…。」
「私達がもう少し上手に立ち回れていたら…。」
『何を言っているの、寧ろ私の中では勝ちに等しいよ。』
「「え?」」
頭に疑問符を浮かべるように首を傾げる二隻。
『長月と島風にあんなにできたんだ、これ以上を
期待するほうがどうかしてるよ。』
「提督…。」
『古鷹、ありがとう、古鷹の攻撃があったから
長月達を追い込められた、電と雷の援護があったから
父上にあそこまで食い下がれたんだ。』
麟は誇りに思う、自分の自慢の艦隊を。
「司令官さん!」
感慨極まって麟に抱きつく電。
『うわっとと…。』
身長差もそれほどなく電を受け止める麟。
「司令官、また照れた顔をしてるわよ。」
『…?』
「気がついてないようですね…。」
自らの表情の変化にも気がつかない麟。
それがどこか可笑しく、雷と古鷹は小さく笑った。
『む、馬鹿にされてる…?』
「そんなことないわよ♪」
少し不機嫌になる麟を雷は微笑ましく笑う。
『でも皆、武装も服がボロボロだね、
基地に戻ったら入渠と着替えをしないとね。』
「はいなのです!」
演習が終わった麟の艦隊、その母艦の光景は
敗北したのにも関わらず、微笑ましいものだった。
そして、その麟の母艦を見つめる豪達。
「随分、いいのを貰ったな、長月。」
「ああ、少し油断していたのかもな。」
武装を解除し、敗れた服も気にせず麟達を見据える長月。
「うーん、麟も随分指揮が上達してたね。」
「そうだな、駆逐艦を囮にして重巡で狙ってくるのは
読めていたが、まさか偵察機をああ使うとは。」
それほど被害のない島風は武装を解除して座り込んでいた。
「解っていたがあいつは型に嵌まった作戦はしない、艦娘を
無理に使わない戦略と消耗、被弾もなるべく避ける方針だ。」
「だがそれは司令官の作戦でもあるな。」
「そうだね。」
「まったくあいつめ、俺の戦闘方針をそっくり真似したな。」
してやられた顔をする豪だがその顔は誇らしげだ。
「あいつらなら、麟を任せられるか?司令官。」
「…そうだな。」
「むー…次は絶対に負けないんだから。」
「おいおい島風、勝ったのはこちらだぞ?」
「でもなんか勝った気がしません…。」
「まあ、駆け出しの提督にここまでやられたんだ。
また鍛え直しは確実、だな。」
「ふん、望むところだ。」
「もっと速くなって、次の演習では完勝しちゃうんだから!」
豪の艦隊も何かしら得るものはあったようだ。
こうして、麟と豪の親子演習の幕は閉じた。
次はいよいよ…。